説明

ガス状プラズマ滅菌装置

本発明は、特定のノミナルパワー(P)のマイクロ波源でイオン化することによりガス状プラズマを生成する装置に関するもので、前記装置は、供給回路から電力を受けるマグネトロン(7)を備えている。前記装置は、前記供給回路から前記マグネトロン87)へ供給される電力(P)が前記マグネトロン(7)のノミナルパワー(P)の1/4を越えないものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の滅菌装置、特に、ガスプラズマを使用するタイプの滅菌装置に関する。
【0002】
前記プラズマを使用する滅菌技術において、ガスそれ自体殺菌特性をもたないガスが使用され、該ガスは、十分に高い電界にさらされて、イオン化され、ガスの分子が分離される。該プラズマの下流で作られたガスは、“ポスト放電”ガスと呼ばれ、滅菌特性をもつ。このガスは、処理チャンバに入り、そこで滅菌すべき器具類に対し滅菌作用を加える。
【0003】
この技術の従来技術においては、電界を発生させ、その密度をプラズマ発生に十分なもの、即ち、高周波電流(HF)とマイクロ波を発生させる二つの主な方法が提案されている。
【0004】
高周波電流技術は、摩耗する電極を使用し、これで装置の良好な安定性を得ることができず、その結果、装置を永久的に調節しなければならない欠点を有している。
【0005】
マイクロ波技術は、これらの欠点をもたないかわりに、いくつかの拘束条件、特に、耐久年数およびマイクロ波を発生させるマグネトロンの周波安定性の点で拘束をうける。
【0006】
マイクロ波源は、マグネトロンからなり、このマグネトロンのエネルギーを導波管に供給し、このエネルギーをエネルギー吸収空洞共振器へ送り、この共振器でなんらかの仕事を行うようにすることが望まれる。したがって、この空洞部は、送られてくるエネルギーの一部を吸収し、残りのエネルギーをマグネトロンに向け反射させる。前記マグネトロンの耐用年数は、この反射されるパワーに直に関連する。前記パワーが強ければ、前記メグネトロンの温度が上昇し、最終的に壊れてしまう。
【0007】
また、マイクロ波によるプラズマガスの励磁は、厳しい安定した周波数を必要とし、これは、共振空洞が非常にこまかくチューンされた品質係数を有し、これによって周波数シフトの場合、前記デバイスは、性能が低下し、ついでガスプラズマへ送られたパワーは、前記デバイス機能を維持するに足るものではなくなってしまうことが知られている。
【0008】
産業規模でガスプラズマを発生させることが望ましい場合、特に、医療器具類の滅菌のための得られたポスト放電ガスを使用するためには、前記マグネトロンが医療産業部門で一般的に容認される耐久時間に匹敵する長い耐用時間をもたねければならない点が重要である。しかしながら、定義によれば、前記共振空洞において吸収されるパワーは、滅菌すべき器具類のマスに応じて必然的に変化してしまう。したがって、前記マグネトロンは、そのトータルパワー(ほとんど空の空洞共振器に相当する)で、不可逆性の損傷を受けずに数多く何回でも動作できることが重要である。
【0009】
本発明の目的は、すぐれた操作安定性とマグネトロンの最高の耐久性を確実なものにすることで、これらの欠点をなくしたガスプラズマをつくるためのマイクロ波発生器を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、決定されたノミナルパワーのマイクロ波源を用いてガスをイオン化することによりガスプラズマをつくる装置であり、この装置は、供給回路から電気エネルギーを受けるマグネトロンを備え、供給回路により前記マグネトロンへ供給されたパワーが少なくとも前記マグネトロンのノミナル出力の1/4に等しいものであることを特徴とするものである。この出力は、前記マグネトロンのノミナル出力の1/10から1/4の間にあることが好ましい。
【0011】
また、好ましくは、前記供給回路によりマグネトロンへ供給される電力は、前記マグネトロンの反射係数により倍加される前記マグネトロンのノミナルパワーの1/4以下である。
【0012】
本発明の装置は、前記マグネトロンへ供給される電力を制限できる手段を備え、これで温度が80℃を越えないようにするものである。
【0013】
本発明の特に興味をひく点は、製造コストレベルの点であり、家庭用製品市場で入手できる回路に頼ることができ、これらは、大量生産されるものであるから特に競合できる価格になる。このような回路の一つの欠点は、医療滅菌部門のような領域に同じものを使用したい場合、まず第1には、これらの電力は、800Wのオーダーであるのに対し、滅菌のためには、処理キャビティで吸収される電力は、わずかに100Wであり、第2には、それらの信頼性が低い点である。
【0014】
余剰の電力については、前記回路をそのように使用することは考えられないことは当然理解できることであり、なぜならば、反射された電力は、700Wのオーダーのもので、これでは、直ちにマグネトロンを加熱させ、破壊してしまうからである。
【0015】
前記回路を使用するためには、したがって、それらの出力を制限する必要がある。さらに、マグネトロンが作動開始するには、ピーク電圧が3〜4kvのオーダーの比較的高い値のものを必要とする。
【0016】
したがって、マグネトロンの作動開始に必要なピーク電圧に特に有害にならずに、この出力制限を行うことが可能でなければならない。
【0017】
本発明によれば、前記マグネトロンに供給される電力は、制限を受け、該マグネトロンに反射されるエネルギーを制限し、この制限によって、必要な作動時負荷を減少させずに行えるようになっている。
【0018】
前記マグネトロンへ供給される電力を減らす一方で前記ピーク電圧を十分な値に維持する点で特に興味がある一つの態様は、電圧ダブラを使用することであり、この電圧ダブラは、二次巻線の端子部分でダイオードとキャパシタを直列に配置し、さらに、十分に低い値のキャパシタを用いて電圧を下げるようにする。これらの条件のもとでは、前記マグネトロンに供給される電力は、十分に減少し、高い信頼性を保証すると共に作動開始ピーク負荷を保持することを保証することが判明している。
【0019】
マグネトロンは、定常波レシオ(SWR):
SWR = 1+r/1−r
rは、放射出力に対する反射出力のレシオに等しい反射係数である前記マグネトロンの最大許容出力を特徴とする係数を特徴とするものである。
【0020】
したがって、マグネトロンにより熱的に発散できるエネルギーは、その出力に比例する。したがって、マグネトロンのための平均SWRは、4のオーダーであり、相当する反射係数rは、0.6であって、これは、800ワットのノミナルパワーのマグネトロンの許容できる反射出力は、480ワットに対し、300ワットのノミナルパワーのマグネトロンに対するこれと同じ値は、180ワットにすぎない。
【0021】
これらの条件のもとでは、所定の作業、例えば滅菌に必要な出力は、100ワッットであれば、そして、前記装置が100%問題無しに受けたパワー(空の共振エンクロージャーの場合と実質的に関係する)を消滅することがでれば、必要になるすべてのものは、前記マグネトロンに供給される電力Pが以下の値を越えないものであることである:
= P ・ r
は、前記マグネトロンのノミナルパワーである。
【0022】
注目すべき点は、ノミナル電力が約800ワット家電用のマグネトロンのタイプを使用すると、許容反射パワーは、480ワットであり、これによって、100Wを必要とする滅菌目的のためのプラズマを信頼度高く確実に発生できる。
【0023】
したがって、これらの条件のもとでは、前記マグネトロンの温度上昇は、かなり低く、これによって、前記マグネトロンに供給される電力がそのノミナルパワーの1/10から1/4の間であるとき、優れた周波数安定度が得られることが判明している。
【0024】
限定されない例として、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら以下に記載する。
【0025】
図1は、前記マグネトロンにガスプラズマを発生させるのに必要とするエネルギーを供給することができる供給装置を示す。このガスプラズマは、そのポスト放電ガスを介して滅菌機能を確実にすることを特に意図している。
【0026】
この供給は、必須的には、約10の比率をもつ電圧ステップアップ供給変圧器1からなり、これによって、220Vのピーク対ピーク供給電圧で、二次巻線におけるピーク対ピーク電圧は、約2200Vになる。二次回路1bにおいて、端子A,Bの間でコンデンサCとダイオードDが直列に配置され、マグネトロン7が接続されている。このマグネトロンは、導波管8により空洞共振器9に連結されている。
【0027】
前記ダイオード7DとコンデンサCは、電圧ダブラを形成し、変圧器1の出力電圧を2倍にするもので、これは、コンデンサCがポジティブな交番の間にチャージされ、交番がネガティブになったとき、前記コンデンサの電圧がその電圧値に付加されるからである。
【0028】
前記コンデンサCの値に関して前記マグネトロン7へ前記供給回路から供給される電力Pの変化を示す曲線をプロットした。したがって、図2においては、電力Pは、前記コンデンサの値で低下することが分かる。したがって、家庭用マイクロ波オーブンへの供給のために通常使用されている値である0.9μFのコンデンサCに対しては、供給された電力は、約900Wであるのに対し、前記コンデンサCの値が0.1μFへ低下すると、この電力は、100Wまで低下し、これは、ガスプラズマのポスト放電ガスを用いての滅菌目的のために生成されるガスプラズマの特定領域において使用の電力に相当する。このことは、特に興味を惹く点であって、なぜならば、仮に前記電力が全部反射されたとしても、その値は、許容範囲の戻り電力、即ち、800Wのノミナルパワーのマグネトロンにとり480Wの値以下になるからである。
【0029】
したがって、コンデンサのような簡単で低コストの部品に置き換えるという単純な置換操作で、低コストの市場提供可能なものに適合させ、変えることができることが確認されており、これによって、特に医療および産業部門における集中的な使用を意図しているマグネトロンの供給を信頼度が高く、かつ効率的に保証できるものである。
【0030】
また、図3に示された曲線は、前記マグネトロン供給の端子AS,Bにおける電圧変化を示す。交番開始においてピーク電圧は、良好に維持され、これで、適切な開始負荷をもつマグネトロンを提供できる。
【0031】
本発明によれば、図4に示すように、前記マグネトロンへの二重交番供給を行うこともできる。この構成においては、直列の二つのダイオード、即ち、第1のダイオードの出力側は、第2のダイオードの入力側に接続されている第1のダイオードD1と第2のダイオードD2と二つのコンデンサC1,C2を備えるループが提供される。変圧器1の出力端子Eは、前記二つのコンデンサC1,C2の間に接続されており、他方の出力端子Fは、抵抗Rを介してダイオードD2の入力側に接続されている。前記マグネトロンは、第1のダイオードD1の入力端子A’と第2のダイオードD2の出力端子B’の間に供給されている。前記アッセンブリーは、前記二つの電圧ダブラを蓄積し、端子A’,B’の間に供給された電圧は、コンデンサC1,C2の端子における電圧の和である。ポジティブ交番の間、コンデンサC1は、ダイオードD1を経てチャージする。交番がネガティブになると、コンデンサC2は、ダイオードD2を経てチャージする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】発明装置の説明図。
【図2】供給手段におけるコンデサの容量値に関するマグネトロンへ供給される電力の変動を示す曲線。
【図3】図1に示されたタイプの装置におけるマグネトロンの端子における時間との関連における電圧の変動を示す曲線。
【図4】本発明の実施例の変形の説明図。
【符号の説明】
【0033】
A,B 端子
C コンデンサ
D ダイオード
1 電圧ステップアップ供給変圧器
1b 二次回路
7 マグネトロン
8 導波管
9 空洞共振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のノミナルパワー(P)をもつマイクロ波源によるガスのイオン化によりガスプラズマを生成する装置であって、該装置は、供給回路からその電気エネルギーを受けるマグネトロン(7)を備えており、前記供給回路により前記マグネトロン(7)へ供給されるパワー(P)は、前記マグネトロン(7)のノミナルパワー(P)の1/4以下であることを特徴とするもの。
【請求項2】
前記供給回路により前記マグネトロン(7)へ供給される前記パワー(P)は、前記マグネトロン(7)のノミナルパワー(P)の1/10から1/4の間にあることを特徴とする請求項1における装置。
【請求項3】
前記供給回路により前記マグネトロン(7)へ供給される前記パワー(P)は、前記マグネトロンの反係数(r)により倍加される前記マグネトロンのノミナルパワー(P)のプロダクトの1/4以下であることを特徴とする請求項1における装置。
【請求項4】
前記装置の温度が80℃を越えないような前記マグネトロンに供給されるパワー(P)を制限できる手段を備えていることを特徴とする前記請求項のいずれか一つにおける装置。
【請求項5】
前記マグネトロン供給手段は、電圧ダブラ手段を備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一つにおける装置。
【請求項6】
前記電圧ダブラ手段は、供給変圧器(1)の端子において直列配置のダイオード(D)とコンデンサ(C)からなり、前記マグネトロン(7)は、ダイオード(D)の端子で供給されることを特徴とする前記請求項のいずれか一つにおける装置。
【請求項7】
前記コンデンサ(C)の値は、0.1μFに近いものであることを特徴とする請求項6における装置。
【請求項8】
前記電圧ダブラ手段は、直列の二つのダイオード、即ち、第1のダイオード(D1)と第2のダイオード(D2)からなり、二つのコンデンサ(C1)(C2)の第1の出力側は、第2の入力側に接続し、変圧器(1)の一方の出力端子(E)は、前記二つのコンデンサ(C1)(C2)の間に接続され、他方の出力端子(F)は、抵抗(R)を介して前記第2のダイオード(D2)の入力側に接続され、前記マグネトロン(7)は、前記第1のダイオード(D1)の入力端子(A’)と前記第2のダイオード(D2)の出力端子(B’)の間に供給されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つにおける装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−525952(P2008−525952A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547570(P2007−547570)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003223
【国際公開番号】WO2006/070107
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(505475057)ソシエテ プール ラ コンセプシオン デ アプリカシオン デ テクニク エレクトロニク−サテレク (5)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE POUR LA CONCEPTION DES APPLICATIONS DES TECHNIQUES ELECTRONIQUES−SATELEC
【住所又は居所原語表記】Zone Industrielle du Phare, Avenue Gustave Eiffel 17, F−33700 Merignac, FRANCE
【Fターム(参考)】