説明

ガス発生器

【課題】作動初期に瞬時に所望のガス出力が得られるシリンダ型ガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器1Aは、ハウジング10、点火器30、複数の粒状のガス発生剤53、複数の粒状の伝火薬27およびフィルタ60を備える。ハウジング10は、ガス噴出口12が周壁に設けられた長尺筒状の円筒状部材11と、軸方向の一端部を構成するホルダ20と、軸方向の他端部を構成する閉塞部材14とを含む。ガス発生剤53は、ハウジング10の内部の空間のうち、閉塞部材14寄りの位置に配置され、伝火薬27は、ガス発生剤53が配置された位置よりもホルダ20寄りの位置に配置され、フィルタ60は、伝火薬27が配置された位置よりもホルダ20寄りの位置に配置される。ガス発生剤53は、ハウジング10の内部に挿入された第1密閉容器70に封入されており、伝火薬27は、ハウジング10の内部に挿入された第2密閉容器80に封入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺略円柱状の外形を有するガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で車両等に装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張・展開させることにより、展開されたエアバッグで乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にガスを発生させてエアバッグを膨張・展開させる機器である。
【0003】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、「シリンダ型」と呼ばれる構造のガス発生器が存在する。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置や助手席用のエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。なお、長尺円柱状の外形を有するガス発生器としては、このシリンダ型ガス発生器以外にも、いわゆるT字型ガス発生器と呼ばれるもの等が存在している。
【0004】
一般に、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器および伝火薬等が配置され、軸方向の略中央部にガス発生剤が収容されるガス発生剤収容室が設けられ、軸方向の他端部にフィルタが収容されるフィルタ室およびガス噴出口が設けられる。上記構成のシリンダ型ガス発生器においては、点火器が作動することによって生じた火炎が伝火薬の燃焼を介してガス発生剤に伝達され、これによりガス発生剤が燃焼して高温高圧の燃焼ガスが発生する。発生した高温高圧の燃焼ガスは、ハウジングの軸方向に沿ってガス発生剤収容室からフィルタ室に流入し、フィルタを通過してガス噴出口よりハウジングの外部へと噴出される。ガス噴出口から噴出された燃焼ガスは、その後エアバッグの膨張・展開に利用される。
【0005】
上記構成のシリンダ型ガス発生器の具体的な構造が開示された文献としては、たとえば特開2005−313812号公報(特許文献1)や特開平11−78766号公報(特許文献2)等がある。これら特許文献1および2には、両端が閉塞された長尺円筒状のハウジングの内部に仕切り板を配置することにより、ハウジングの内部の空間を複数の粒状のガス発生剤が配置されるガス発生剤収容室とフィルタが配置されるフィルタ室とに区画されたシリンダ型ガス発生器が開示されている。当該シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向に沿って延びる中空開口部を有するフィルタが利用され、フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁に燃焼ガスを噴出するためのガス噴出口が設けられている。
【0006】
また、上述した構成とは異なる構成を有するシリンダ型ガス発生器として、特開2006−205893号公報(特許文献3)に開示のものがある。当該特許文献3に開示のシリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部および他端部にそれぞれ点火器が配置され、軸方向の略中央部に一体に成形された円柱状のガス発生剤成型体が配置され、このガス発生剤成型体と上述した一対の点火器との間にそれぞれ円筒状のフィルタが配置され、この円筒状のフィルタが配置された部分のハウジングの周壁にガス噴出口が設けられている。当該特許文献3に開示のシリンダ型ガス発生器にあっては、上記構成を採用することでガス発生剤成型体の軸方向端面からガス発生剤の燃焼が開始するように構成し、一対の点火器を同時に作動させるか、または時間差もって作動させるか、あるいは一対の点火器のいずれかのみを作動させるかを選択することで車輌の衝突の程度に応じてそれに見合った所望のガス出力が得られるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−313812号公報
【特許文献2】特開平11−78766号公報
【特許文献3】特開2006−205893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般にガス発生器においては、衝突直後に瞬時に所望のガス出力が得られることが重要である。シリンダ型ガス発生器においても例外ではなく、燃焼ガスがハウジングの内部において滞留することなく直ちにフィルタを経由してハウジングの外部へと噴出されることが必要である。特に、作動初期においては、エアバッグを膨張・展開させるために多量の燃焼ガスがエアバッグ内に導入される必要があるが、この作動初期に燃焼ガスがハウジングの内部において滞留した場合には、エアバッグ装置の初期性能が損なわれることになってしまう。
【0009】
ここで、上記特許文献1および2に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器とした場合には、複数の粒状のガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室の点火器側の端部においてガス発生剤が燃焼を開始することになり、生成された燃焼ガスは、未燃焼のガス発生剤が充填された領域を経由してフィルタ室に達することになる。そのため、作動初期において物理的に燃焼ガスが生成される位置とフィルタ室との間の距離が遠くなるばかりでなく、未燃焼のガス発生剤が燃焼ガスの流動を阻害することとなってしまう。したがって、作動初期に燃焼ガスがハウジング内部において滞留してしまうことになり、所望のガス出力を得ることが困難になってしまうおそれがあった。
【0010】
一方、上記特許文献3に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器とした場合には、一体に成形されたガス発生剤成型体の点火器側の端部に隣接してフィルタ室が設けられているため、ガス発生剤成型体が燃焼することによって生成された燃焼ガスが直ちにフィルタ室に流入することになり、フィルタを経由してハウジングの外部へと噴出されることになる。したがって、作動初期に燃焼ガスがハウジング内部において滞留することがなく、直ちにガス噴出口から燃焼ガスが噴出されることになる。
【0011】
しかしながら、上記特許文献3に開示の如くの構成を採用した場合には、一体に成形された円柱状のガス発生剤成型体がハウジング内部に装填された構成であるため、上記特許文献1および2に開示の如く複数の粒状のガス発生剤をハウジング内部に充填した場合に比べ、その表面積は著しく小さいものとなってしまう。その結果、上記特許文献1および2に開示の如くの構成とした場合に比べ、燃焼時において生成される単位時間当たりの燃焼ガスの量が大幅に低下してしまうことになり、作動初期に所望のガス出力を得ることが困難になってしまうおそれがあった。
【0012】
したがって、本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、作動初期に瞬時に所望のガス出力が得られるシリンダ型ガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、点火器と、複数の粒状のガス発生剤と、フィルタとを備えている。上記ハウジングは、軸方向の一端部および他端部が閉塞された長尺筒状の部材からなる。上記点火器は、上記ハウジングの内部の空間に面するように上記ハウジングの上記一端部に取付けられている。上記複数の粒状のガス発生剤は、上記ハウジングの内部の空間のうち、上記ハウジングの上記他端部寄りの位置に配置されている。上記フィルタは、上記ハウジングの内部の空間のうち、上記ガス発生剤が配置された位置よりも上記ハウジングの上記一端部寄りの位置に配置されている。ここで、上記フィルタは、上記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空開口部を有する筒状の部材からなり、上記ハウジングは、上記フィルタが配置された部分の周壁にガス噴出口を有している。上記ガス発生剤は、上記ハウジングの内部に挿入された第1密閉容器に封入されており、上記伝火薬は、上記ハウジングの内部に挿入された第2密閉容器に封入されている。
【0014】
上記本発明に基づくガス発生器は、上記ハウジングの内部の空間のうち、上記ガス発生剤が配置された位置よりも上記ハウジングの上記一端部寄りの位置でかつ上記フィルタが配置された位置よりも上記ハウジングの上記他端部寄りの位置に配置された複数の粒状の伝火薬をさらに備えていることが好ましく、その場合には、上記伝火薬が、上記ハウジングの内部に挿入された第2密閉容器に封入されていることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、上記ハウジングの上記一端部に上記フィルタの一方の軸方向端部が押し当てられるとともに、上記ハウジングの周壁を内側に向けてかしめることで上記フィルタの他方の軸方向端部が径方向に挟持されることにより、上記ハウジングに固定されていることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記第1密閉容器および上記第2密閉容器が、上記ハウジングの軸方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記第2密閉容器が、上記第1密閉容器の内部に配置されていてもよい。
【0018】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、振動による上記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材が、上記第1密閉容器に収容されていることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火器が、作動時において着火する点火薬が収容された点火部と、上記点火薬を着火させるために上記点火部に接続された端子ピンとを含んでいる場合に、上記点火部が、上記ハウジングの上記一端部寄りに位置する上記フィルタの上記中空開口部に内挿されていることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づくガス発生器は、上記第1密閉容器および上記第2密閉容器が収容された薬剤収容室と上記フィルタが収容されたフィルタ室とに、上記ハウジングの内部の空間を軸方向に区画するとともに、上記薬剤収容室と上記フィルタ室とを連通する連通孔を有してなる仕切り部材をさらに備えていることが好ましい。
【0021】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材が、上記フィルタの上記薬剤収容室側の軸方向端面を覆う環状板部と、上記環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空開口部内に向けて連続して延び、上記フィルタの上記軸方向端面寄りの内周面を覆う筒状部とを含んでいることが好ましい。その場合には、上記連通孔が、上記筒状部の内周面によって規定されることになる。ここで、当該連通孔は、上記環状板部から遠ざかるにつれてその開口面積が変化していることが好ましい。
【0022】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記筒状部が、上記環状板部から遠ざかるにつれて上記連通孔の開口面積が減少または増加するように徐々に縮径または拡径していることが好ましい。
【0023】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材が、上記ハウジングに嵌合または遊嵌されていることが好ましい。
【0024】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に巻き回したものか、あるいは内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に押し固めたものであることが好ましい。
【0025】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材と上記フィルタとを上記ハウジングの軸方向に沿って当該軸方向と直交する面に投影した場合に、上記フィルタの投影領域の内縁が、上記仕切り部材の投影領域の内縁よりも内側に位置していないことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作動初期に瞬時に所望のガス出力が得られるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す正面図および右側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は右側面図である。また、図2は、本発明の実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図であり、図1(A)および図1(B)に示すII−II線に沿った模式断面図である。まず、これら図1(A)、図1(B)および図2を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの外観構造および内部構造について説明する。
【0030】
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺略円柱状の外形を有しており、外殻部材としてのハウジング10を有している。ハウジング10は、円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20を含んでいる。円筒状部材11は、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材14は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、円筒状部材11の軸方向の一方の開口を閉塞することでハウジング10の軸方向の一端部を構成している。閉塞部材14は、その周面に後述するかしめ固定のための溝14aを有しており、当該溝14aは、閉塞部材14の周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。ホルダ20は、円筒状部材11の軸方向と同方向に沿って延びる中空部22を有する筒状の部材からなり、円筒状部材11の軸方向の他方の開口を閉塞することでハウジング10の軸方向の他端部を構成している。ホルダ20は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための溝21を有しており、当該溝21は、ホルダ20の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。
【0031】
これら円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20は、いずれもステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材からなり、かしめ固定によってそれぞれが連結・固定されている。具体的には、円筒状部材11の一方の開口端に閉塞部材14の一部が内挿された状態で、閉塞部材14の周面に設けられた溝14aに対応する部分の円筒状部材11の周壁を径方向内側に縮径させて当該溝14aに係合させることにより、円筒状部材11に対する閉塞部材14のかしめ固定が行なわれ、円筒状部材11の他方の開口端にホルダ20の一部が内挿された状態で、ホルダ20の外周面に設けられた溝21に対応する部分の円筒状部材11の周壁を径方向内側に縮径させて当該溝21に係合させることにより、円筒状部材11に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれる。
【0032】
これらかしめ固定は、いずれも円筒状部材11の周壁を径方向内側に向かって均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、円筒状部材11の周壁には、かしめ部13a,13bが設けられることになる。上記八方かしめを利用すれば、かしめ固定する2つの部材間に特にシール部材を介装させずとも気密性を相当程度確保することができる。
【0033】
図2に示すように、円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20によって規定されるシリンダ型ガス発生器1Aの内部の空間には、主として、点火器30、伝火薬27、ガス発生剤53およびフィルタ60が収容配置されている。以下、順にこれらを含む内部構成部品のそれぞれについて詳細に説明する。
【0034】
ハウジング10の軸方向の一端部を構成するホルダ20の中空部22内には、点火器(スクイブ)30が配置されている。点火器30は、火炎を発生させるための点火装置であり、点火部31と端子ピン32とを含んでいる。点火部31は、ハウジング10の内部の空間に面するように配置されており、後述するフィルタ60の中空開口部61にホルダ20が位置する側から内挿されている。点火部31は、その内部に作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン32は、点火薬を着火させるために点火部31に接続されている。
【0035】
より具体的には、点火器30は、一対の端子ピン32を挿通・保持する基部と、基部上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入された端子ピン32の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0036】
衝突を検知した際には、端子ピン32を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には3ミリ秒以下である。
【0037】
ホルダ20と点火器30との間には、樹脂成型部24が位置している。樹脂成型部24は、点火器30をホルダ20に固定するための部位であり、ホルダ20の表面と点火器30の表面とにそれぞれ固着してこれらの間の隙間を気密に封止している。樹脂成型部24は、たとえばインサート成型によって形成され、その原材料としては、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等が利用可能である。
【0038】
ハウジング10の内部の空間のうち、ホルダ20に隣接する領域には、フィルタ60が配置されている。フィルタ60は、ハウジング10の軸方向と同方向に延びる中空開口部61を有する円筒状の部材からなり、その一方の軸方向端部がホルダ20に押し当てられて当接しており、他方の軸方向端部が円筒状部材11に設けられたかしめ部13cによって径方向に挟持されている。円筒状部材11に設けられたかしめ部13cは、上述した八方かしめによって形成され、より詳細には、円筒状部材11にフィルタ60が内挿された状態で円筒状部材11の周壁の所定位置を径方向内側に向けて縮径させることで形成される。
【0039】
上述したように、フィルタ60の上記一方の軸方向端部側に位置する中空開口部61には、点火器30の点火部31が内挿されている。また、フィルタ60の外周面は、円筒状部材11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ60を利用すれば、作動時において、フィルタ60が配置された領域を流動する燃焼ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的な燃焼ガスの流動が実現可能となる。
【0040】
フィルタ60は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材あるいは金属線材を編み込んだ網材を巻き回したものやプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。このように金属線材を円筒状に巻き回したり押し固めたりしてなるフィルタ60は、その内部に空隙が含まれることになり、上述した燃焼ガスの流動を可能にする。フィルタ60は、発生した燃焼ガスがこのフィルタ60中を通過する際に、当該燃焼ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってこれを冷却する冷却手段として機能するとともに、燃焼ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
【0041】
フィルタ60が配置された領域に対応する部分の円筒状部材11の周壁には、ガス噴出口12が設けられている。このガス噴出口12は、シリンダ型ガス発生器1Aの内部において発生した燃焼ガスを外部に放出するための穴であり、円筒状部材11の周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。
【0042】
ハウジング10の内部の空間のうち、ホルダ20が位置する側とは反対側のフィルタ60に隣接する領域には、薬剤収容室が形成されている。この薬剤収容室には、フィルタ60が位置する側から順に、複数の粒状の伝火薬27が封入された第2密閉容器80および複数の粒状のガス発生剤53が封入された第1密閉容器70が配置されており、これら第2密閉容器80および第1密閉容器70は、いずれも円筒状部材11に内挿されている。
【0043】
第2密閉容器80は、有底筒状のカップ部81と、当該カップ部81の開口を閉塞するキャップ部82とを含んでおり、これらカップ部81とキャップ部82とが組み合わされて接合されることにより、その内部に形成される収容空間84が当該第2密閉容器80の外部から気密に封止されている。カップ部81およびキャップ部82としては、プレス加工等によって成形された銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)が利用される。また、カップ部81とキャップ部82との接合には、ろう付けや接着等が好適に用いられる。
【0044】
第2密閉容器80の収容空間84には、上述したように複数の粒状の伝火薬27が充填されている。伝火薬27は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬27としては、後述するガス発生剤53を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬27は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用できる。バインダによって成形された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状が含まれる。
【0045】
第1密閉容器70は、有底筒状のカップ部71と、当該カップ部71の開口を閉塞するキャップ部72とを含んでおり、これらカップ部71とキャップ部72とが組み合わされて接合されることにより、その内部に形成される収容空間74が当該第1密閉容器70の外部から気密に封止されている。カップ部71およびキャップ部72としては、プレス加工等によって成形された銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)が利用される。また、カップ部71とキャップ部72との接合には、ろう付けや接着等が好適に用いられる。
【0046】
第1密閉容器70の収容空間74には、上述した複数の粒状のガス発生剤53に加えてクッション材52が収容されている。より詳細には、第1密閉容器70の収容空間74のうち、閉塞部材14が位置する側の端部部分にクッション材52が配設されており、第1密閉容器70の残る収容空間74を充填するように複数の粒状のガス発生剤53が収容されている。
【0047】
ガス発生剤53は、点火器30によって点火された伝火薬27が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤53は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0048】
粒状に成形されたガス発生剤53の成型体の形状には、たとえば、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものが含まれる。また、成型体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成型体も利用できる。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤53の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤53の形状の他にもガス発生剤53の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成型体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0049】
クッション材52は、成型体からなるガス発生剤53が振動等によって破砕されることを防止するための破砕防止部材に相当し、好適にはセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用される。
【0050】
ハウジング10の内部の空間のうち、フィルタ60が位置する側とは反対側の薬剤収容室に隣接する領域には、クッション材51が配置されている。当該クッション材51は、上述した各種の内部構成部品をハウジング10内部において軸方向に固定するための部材であり、同時に上述した内部構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収するための部材でもある。クッション材51は、ハウジング10の軸方向の他端部を構成する閉塞部材14と、第1密閉容器70とによって挟み込まれている。クッション材51としては、たとえばセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用可能である。
【0051】
なお、シリンダ型ガス発生器1Aのホルダ20が配置された側の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。この雌型コネクタは、シリンダ型ガス発生器1Aとは別途設けられる衝突検知センサからの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器1Aの搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器1Aが誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン32への接触が解除されるものである。
【0052】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの特徴的な構成を要約すると、以下の通りとなる。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、ハウジング10、点火器30、複数の粒状のガス発生剤53、複数の粒状の伝火薬27、およびフィルタ60を主として備えている。ハウジング10は、長尺筒状の円筒状部材11と、軸方向の一端部を構成するホルダ20と、軸方向の他端部を構成する閉塞部材14とを含んでいる。点火器30は、その点火部31がハウジング10の内部の空間に面するようにホルダ20に取付けられている。複数の粒状のガス発生剤53は、ハウジング10の内部の空間のうち、閉塞部材14寄りの位置に配置されている。複数の粒状の伝火薬27は、ハウジング10の内部の空間のうち、ガス発生剤53が配置された位置よりもホルダ20寄りの位置に配置されている。フィルタ60は、ハウジング10の内部の空間のうち、伝火薬27が配置された位置よりもホルダ20寄りの位置に配置されている。ここで、フィルタ60は、ハウジング10の軸方向に沿って延びる中空開口部61を有する筒状の部材からなり、ハウジング10は、フィルタ60が配置された部分の周壁にガス噴出口12を有している。ガス発生剤53は、ハウジング10の内部に挿入された第1密閉容器70に封入されており、伝火薬27は、ハウジング10の内部に挿入された第2密閉容器80に封入されている。
【0053】
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂し、火炎が点火部31の外部へと流出する。
【0054】
点火部31から外部へと吹き出した火炎は、フィルタ60の中空開口部61を経由し、第2密閉容器80に達してこれを溶融または破裂させる。これにより、第2密閉容器80内に収容された伝火薬27は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。
【0055】
発生した多量の熱粒子は、第1密閉容器70に達してこれを溶融または破裂させる。これにより、ガス発生剤53が着火されて燃焼し、多量の燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスは、フィルタ60の中空開口部61内をハウジング10の軸方向に沿って流動し、その後流動方向を変えてフィルタ60に進入し、当該フィルタ60を経由することで所定の温度にまで冷却され、ガス噴出口12からシリンダ型ガス発生器1Aの外部へと噴出される。ガス噴出口12から噴出された燃焼ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
【0056】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、ガス発生剤53が収容された領域のうちの点火器30側の端部からガス発生剤53の燃焼を開始させることができるため、作動初期において燃焼ガスが生成される位置とフィルタ60との間の距離を近くすることができるばかりでなく、生成された燃焼ガスの流動が未燃焼のガス発生剤等によって阻害されることも防止でき、生成された燃焼ガスを直ちにフィルタ60が収容された領域に流入させ、その後フィルタ60を経由させてガス噴出口12からハウジング10の外部へと噴出させるようにすることができる。加えて、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、複数の粒状のガス発生剤53を第1密閉容器70を用いて封止した状態でハウジング10の内部に配置しているため、ガス発生剤53の表面積を非常に大きくすることができ、生成される燃焼ガスの単位時間当たりの量を多くして作動初期に必要な量の燃焼ガスを得ることもできる。したがって、作動初期に瞬時に所望のガス出力が得られる高性能のシリンダ型ガス発生器とすることができ、エアバッグ装置の高性能化に寄与することができる。
【0057】
また、上述したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1密閉容器70および第2密閉容器80にガス発生剤53および伝火薬27をそれぞれ封入した構成であるため、予めこれら薬剤を密閉容器に封入しておくことにより、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業が容易化するのみならず、別途ハウジング10に気密処理を施すことも不要になり、部品点数の削減と構成の簡素化が可能になる。したがって、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、作動初期に瞬時に所望のガス出力が得られる高性能のシリンダ型ガス発生器を安価に製作することができる。
【0058】
図3および図4は、本実施の形態における第1および第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。次に、これら図3および図4を参照して、本実施の形態にける第1および第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1B,1Cについて詳説する。
【0059】
図3に示すように、第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Bは、薬剤収容室に収容配置される第1密閉容器70および第2密閉容器80の構成において上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aと相違している。具体的には、上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、ガス発生剤53が収容された第1密閉容器70と伝火薬27が収容された第2密閉容器80とを別々に構成し、これをハウジング10の内部において軸方向に並べて配置した構成としていたが、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、伝火薬27が収容された第2密閉容器80をガス発生剤53が収容された第1密閉容器70の内部に封入している。ここで、第1密閉容器70のキャップ部72は、第2密閉容器80のカップ部を兼用している。このように構成することにより、上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合に得られる効果に加え、さらに組立作業を容易化できる効果を得ることができる。
【0060】
図4に示すように、第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Cは、上述した第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Bと粉砕防止部材としてのクッション材52が配置された位置において相違している。具体的には、上述した第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、クッション材51が第1密閉容器70の閉塞部材14側の端部に配置された構成としていたが、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、これを第1密閉容器70のフィルタ60側の端部に配置している。このように構成した場合にも、図4に示すようにクッション材51の略中央部に開口部を設けることにより、作動初期において生成される燃焼ガスの流動がクッション材51によって阻害されることが防止できるため、上述した第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Bとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。以下においては、この図5を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dの内部構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0062】
図5に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dは、ハウジング10の内部の空間の所定位置に仕切り部材としての仕切り板40を有している。この仕切り板40は、フィルタ60が収容された領域と薬剤収容室との境界部分に配置されており、ハウジング10の内部の空間を軸方向に区画している。仕切り板40は、フィルタ60の閉塞部材14側の軸方向端面を覆う環状板部41と、当該環状板部41の内周縁からフィルタ60の中空開口部61内に向けて連続して延び、フィルタ60の上記軸方向端面寄りの内周面を覆う筒状部42と、当該筒状部42の内周面によって規定され、フィルタ60が収容された領域と薬剤収容室とを連通する連通孔43とを含んでいる。仕切り板40は、フィルタ60の軸方向端部に予め取付けられていることが好ましく、シリンダ型ガス発生器1Dの組立時において、円筒状部材11に設けられるかしめ部13cによって軸方向に移動不能に固定される。
【0063】
この仕切り板40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成され、シリンダ型ガス発生器1Dが作動した際に薬剤収容室の内圧を維持しかつフィルタ60の破損を防止する圧力隔壁として機能するものである。
【0064】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合の効果に加え、作動時において圧力隔壁としての仕切り板40によって薬剤収容室の内圧が高く維持されてガス発生剤53の燃焼が促進される効果が得られる。また、上記構成を採用することにより、薬剤収容室にて生成された高温高圧の燃焼ガスを仕切り板40に設けられた連通孔43によって減圧させてフィルタ60が収容された領域に流入させることができるため、フィルタ60の破損が未然に防止できるとともに、当該連通孔43の大きさを適宜に調節することにより、ガス噴出口12から噴出される燃焼ガスの流量を適宜に調節することが可能になる。したがって、高性能でかつガス出力の調整が容易に行なえるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0065】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図であり、図7は、図6に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り板が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図である。なお、図7(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図7(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。ここで、図7(A)および図7(B)中においては、燃焼ガスの流動方向を矢印Gで示している。以下においては、この図6、図7(A)および図7(B)を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eの内部構造について説明するとともに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eの仕切り板の構成、組付け構造および作動時における当該仕切り板の挙動について詳細に説明する。なお、上述した本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器1Dと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0066】
図6、図7(A)および図7(B)に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eにおいては、フィルタ60が収容された領域と薬剤収容室との境界部分に配置された仕切り板40の筒状部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(薬剤収容室から遠ざかり、筒状部42の先端に向かうにつれて)連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径した円錐板状の形状にて構成されている。
【0067】
この仕切り板40は、円筒状部材11に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11には、当該仕切り板40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り板40の環状板部41の外周端が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り板40の環状板部41の外周端と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
【0068】
仕切り板40は、フィルタ60の薬剤収容室側の端部に取付けられており、フィルタ60と上述した伝火薬を収容する第2密閉容器80とによって挟み込まれることで円筒状部材11の内部において支持されている。なお、仕切り板40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
【0069】
図7(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Eが作動した作動開始直後においては、薬剤収容室にて生成された高温高圧の燃焼ガスの推力(すなわち、薬剤収容室の内圧の上昇に伴って生じる圧力、図中矢印Aにて示す力)を受け、仕切り板40の環状板部41が、円筒状部材11の軸方向に沿ってフィルタ60側に向けての力を受ける。これにより、仕切り板40の環状板部41は、フィルタ60側に向けて移動を開始し、仕切り板40と円筒状部材11とによって囲まれたフィルタ60の部分(すなわち、フィルタ60の薬剤収容室側の端部近傍部分、図中に示す領域R1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによって円筒状部材11の軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0070】
ここで、フィルタ60の内部には、金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された空隙が存在するが、図7(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域R1においてさらに密に充填された状態となるとともに、円筒状部材11の径方向に沿って広がろうとして仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り板40の筒状部42には、上述した内圧の上昇に伴って円筒状部材11の大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印B1にて示す力)が加わっているため、仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印C1で示す力)が円筒状部材11とフィルタ60との接触部分(図中において示す領域D1)に加わることになる。これにより、当該円筒状部材11とフィルタ60との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り板40がさらにフィルタ60側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0071】
ここで、上記反力(図中矢印C1で示す力)は、円筒状部材11の径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、円筒状部材11の広い範囲に仕切り板40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り板40の移動量は僅かで留まることになる。したがって、移動後の仕切り板40とこれに伴って押し固められた部分のフィルタ60とによって実質的に圧力隔壁としての機能が確保されることになり、薬剤収容室の内圧が高く維持されるとともにフィルタ60の破損が防止されることになる。したがって、円筒状部材11にかしめ加工を施して仕切り板40を固定せずとも、仕切り板40が圧力隔壁として十分に機能することになる。
【0072】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eにおいては、仕切り板40の筒状部42が、フィルタ60の薬剤収容室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図7(B)中に示す領域R2に位置する部分のフィルタ60の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り板40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに燃焼ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ60の有する燃焼ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0073】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eにおいては、仕切り板40とフィルタ60とを円筒状部材11の軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ60の投影領域の内縁が仕切り板40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、薬剤収容室側から仕切り板40およびフィルタ60を平面視した場合に、フィルタ60が仕切り板40によって完全に覆い隠されるように仕切り板40およびフィルタ60の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り板40の連通孔43を通過した高温高圧の燃焼ガスは、フィルタ60の内周面を沿って流動することになるため、燃焼ガスが直接フィルタ60に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0074】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eにおいては、作動時において仕切り板40が上述した領域R1に位置する部分のフィルタ60によって保持されることになるため、当該仕切り板40のみによって燃焼ガスの推力に耐え得るように仕切り板40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り板40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0075】
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Eの如くの構成を採用することにより、上述の本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器1Dとした場合の効果に加え、仕切り板40の取付けのためにハウジング10にかしめ加工を実施することが必要なくなるという効果や仕切り板40を薄型化できるという効果が得られる。そのため、シリンダ型ガス発生器全体として見た場合に、性能を低下させることなく、短尺化や小径化、軽量化することが可能になる。また、上記構成を採用することにより、仕切り板40をハウジング10にかしめ加工する作業も不要となり、製造コストを削減することもできる。したがって、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0076】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り板が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図8(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図8(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fは、上述した本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器1Eと仕切り板40の構造および組付け構造のみにおいて相違しており、他の部分については同様であるため、当該他の部分についてはその説明を省略する。なお、図8(A)および図8(B)中においては、燃焼ガスの流動方向を矢印Gで示している。
【0077】
図8(A)に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fにおいては、フィルタ60が収容された領域と薬剤収容室との境界部分に配置された仕切り板40の筒状部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(薬剤収容室から遠ざかり、筒状部42の先端に向かうにつれて)連通孔43の開口面積が増加するように徐々に拡径した円錐板状の形状にて構成されている。
【0078】
仕切り板40は、円筒状部材11に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11には、当該仕切り板40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り板40の環状板部41の外周端が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り板40の環状板部41の外周端と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
【0079】
仕切り板40は、フィルタ60の薬剤収容室側の端部に取付けられており、フィルタ60と上述したガス発生剤52を収容する第2密閉容器80とによって挟み込まれることで円筒状部材11の内部において支持されている。なお、仕切り板40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
【0080】
本実施の形態の如くの仕切り板40の構成および組付け構造を採用した場合にも、上述の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器1Eとした場合と同様に、仕切り板40が薬剤収容室の内圧を維持しかつフィルタ60の破損を防止する圧力隔壁として機能する。以下においては、その理由について詳説する。
【0081】
図8(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Fが作動した作動開始直後においては、薬剤収容室にて生成された高温高圧の燃焼ガスの推力(すなわち、薬剤収容室の内圧の上昇に伴って生じる圧力、図中矢印Aにて示す力)を受け、仕切り板40の環状板部41が、円筒状部材11の軸方向に沿ってフィルタ60側に向けての力を受ける。これにより、仕切り板40の環状板部41は、フィルタ60側に向けて移動を開始し、仕切り板40と円筒状部材11とによって囲まれたフィルタ60の部分(すなわち、フィルタ60の薬剤収容室側の端部近傍部分、図中に示す領域R1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによって円筒状部材11の軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0082】
ここで、フィルタ60の内部には、金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された空隙が存在するが、図8(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域R1においてさらに密に充填された状態となるとともに、円筒状部材11の径方向に沿って広がろうとして仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り板40の筒状部42には、上述した内圧の上昇に伴って円筒状部材11の大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印B2にて示す力)が加わっているため、仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印C2で示す力)が円筒状部材11とフィルタ60との接触部分(図中において示す領域D2)に加わることになる。これにより、当該円筒状部材11とフィルタ60との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り板40がさらにフィルタ60側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0083】
ここで、上記反力(図中矢印C2で示す力)は、円筒状部材11の径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、円筒状部材11の広い範囲に仕切り板40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り板40の移動量は僅かで留まることになる。したがって、移動後の仕切り板40とこれに伴って押し固められた部分のフィルタ60とによって実質的に圧力隔壁としての機能が確保されることになり、薬剤収容室の内圧が高く維持されるとともにフィルタ60の破損が防止されることになる。したがって、円筒状部材11にかしめ加工を施して仕切り板40を固定せずとも、仕切り板40が圧力隔壁として十分に機能することになる。
【0084】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fにおいては、仕切り板40の筒状部42が、フィルタ60の薬剤収容室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図8(B)中に示す領域R2に位置する部分のフィルタ60の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り板40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに燃焼ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ60の有する燃焼ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0085】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fにおいては、仕切り板40とフィルタ60とを円筒状部材11の軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ60の投影領域の内縁が仕切り板40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、薬剤収容室側から仕切り板40およびフィルタ60を平面視した場合に、フィルタ60が仕切り板40によって完全に覆い隠されるように仕切り板40およびフィルタ60の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り板40の連通孔43を通過した高温高圧の燃焼ガスは、フィルタ60の内周面を沿って流動することになるため、燃焼ガスが直接フィルタ60に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0086】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fにおいては、作動時において仕切り板40が上述した領域R1に位置する部分のフィルタ60によって保持されることになるため、当該仕切り板40のみによって燃焼ガスの推力に耐え得るように仕切り板40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り板40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0087】
なお、上述した本発明の実施の形態3および4においては、仕切り板40の筒状部42の形状を円錐板状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状部42の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば断面の形状が湾曲状とされていてもよい。いずれにせよ、筒状部42の形状としては、内圧の上昇に伴って筒状部42に加わる力が円筒状部材11の径方向および軸方向のいずれにも交差する方向に作用するような形状とされていればよく、当該筒状部42の内周面がハウジング10の軸方向と平行に配置されていなければよい。
【0088】
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。以下においては、この図9を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Gの内部構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器1Dと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0089】
図9に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Gは、薬剤収容室の内部の所定位置に多孔板90を有している。多孔板90は、有底筒状の形状を有しており、その底板部91に複数の連通孔93を有している。多孔板90は、ガス発生剤53が収容された第1密閉容器70と伝火薬27が収容された第2密閉容器80との間に底板部91が位置するように円筒状部材11に内挿されており、その周壁部92の先端が仕切り板40に当て留めされている。
【0090】
多孔板90に設けられた連通孔93は、いずれもガス発生剤53の外形よりも小さく形成されている。多孔板90は、フィルタ室にガス発生剤53が進入することを防止するための進入防止部材に相当し、好適にはステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材が用いられる。また、多孔板90は、作動時において多孔板90を通過する燃焼ガスの流れを整流する作用も有している。
【0091】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Gの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器1Dとした場合の効果に加え、作動時においてガス発生剤53が多孔板90によって堰き止められてフィルタ室側に移動することが防止できる効果が得られる。したがって、ガス発生剤53が収容された部分の薬剤収容室の内圧を高く維持することができ、ガス発生剤53の燃焼をさらに促進することができる。また、その一方で、多孔板90の底板部91をガス発生剤53が収容された第1密閉容器70と伝火薬27が収容された第2密閉容器80との間に配置することで、点火器30による伝火薬27の着火が当該多孔板90によって阻害されることもないため、着火性能が低下することもない。したがって、上記構成を採用することにより、高性能でかつガス出力の調整が容易に行なえるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0092】
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし5においては、ガス発生剤の燃焼を促進させるために伝火薬が装填されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、当該伝火薬は必ずしも必須の構成ではなく、燃焼開始のためのガス発生剤の感度を向上させること等によって伝火薬の装填を不要とすることも可能である。また、伝火薬をシリンダ型ガス発生器に装填する構成を採用する場合にも、当該伝火薬を点火器に一体化させて組付けることも可能である。
【0093】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし5においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状のガス出力部を有するいわゆるT字型のガス発生器にもその適用が可能である。
【0094】
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0095】
1A〜1G シリンダ型ガス発生器、10 ハウジング、11 円筒状部材、12 ガス噴出口、13a〜13c かしめ部、14 閉塞部材、14a 溝、20 ホルダ、21 溝、22 中空部、24 樹脂成型部、27 伝火薬、30 点火器、31 点火部、32 端子ピン、40 仕切り板、41 環状板部、42 筒状部、43 連通孔、51,52 クッション材、53 ガス発生剤、60 フィルタ、61 中空開口部、70 第1密閉容器、71 カップ部、72 キャップ部、74 収容空間、80 第2密閉容器、81 カップ部、82 キャップ部、84 収容空間、90 多孔板、91 底板部、92 周壁部、93 連通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端部および他端部が閉塞された長尺筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内部の空間に面するように前記ハウジングの前記一端部に取付けられた点火器と、
前記ハウジングの内部の空間のうち、前記ハウジングの前記他端部寄りの位置に配置された複数の粒状のガス発生剤と、
前記ハウジングの内部の空間のうち、前記ガス発生剤が配置された位置よりも前記ハウジングの前記一端部寄りの位置に配置されたフィルタとを備え、
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空開口部を有する筒状の部材からなり、
前記ハウジングは、前記フィルタが配置された部分の周壁にガス噴出口を有し、
前記ガス発生剤は、前記ハウジングの内部に挿入された第1密閉容器に封入されている、ガス発生器。
【請求項2】
前記ハウジングの内部の空間のうち、前記ガス発生剤が配置された位置よりも前記ハウジングの前記一端部寄りの位置でかつ前記フィルタが配置された位置よりも前記ハウジングの前記他端部寄りの位置に配置された複数の粒状の伝火薬をさらに備え、
前記伝火薬は、前記ハウジングの内部に挿入された第2密閉容器に封入されている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記ハウジングの前記一端部に前記フィルタの一方の軸方向端部が押し当てられるとともに、前記ハウジングの周壁を内側に向けてかしめることで前記フィルタの他方の軸方向端部が径方向に挟持されることにより、前記フィルタが前記ハウジングに固定されている、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1密閉容器および前記第2密閉容器が、前記ハウジングの軸方向に並んで配置されている、請求項2または3に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第2密閉容器が、前記第1密閉容器の内部に配置されている、請求項2または3に記載のガス発生器。
【請求項6】
振動による前記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材が、前記第1密閉容器に収容されている、請求項2から5のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項7】
前記点火器は、作動時において着火する点火薬が収容された点火部と、前記点火薬を着火させるために前記点火部に接続された端子ピンとを含み、
前記点火部が、前記ハウジングの前記一端部寄りに位置する前記フィルタの前記中空開口部に内挿されている、請求項2から6のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項8】
前記第1密閉容器および前記第2密閉容器が収容された薬剤収容室と前記フィルタが収容されたフィルタ室とに、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に区画するとともに、前記薬剤収容室と前記フィルタ室とを連通する連通孔を有してなる仕切り部材をさらに備えた、請求項2から7のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項9】
前記仕切り部材は、前記フィルタの前記薬剤収容室側の軸方向端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空開口部内に向けて連続して延び、前記フィルタの前記軸方向端面寄りの内周面を覆う筒状部とを含み、
前記連通孔は、前記筒状部の内周面によって規定され、
前記連通孔は、前記環状板部から遠ざかるにつれてその開口面積が変化している、請求項8に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記筒状部は、前記環状板部から遠ざかるにつれて前記連通孔の開口面積が減少または増加するように徐々に縮径または拡径している、請求項9に記載のガス発生器。
【請求項11】
前記仕切り部材が、前記ハウジングに嵌合または遊嵌されている、請求項9または10に記載のガス発生器。
【請求項12】
前記フィルタは、内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に巻き回したものか、あるいは内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に押し固めたものである、請求項9から11のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項13】
前記仕切り部材と前記フィルタとを前記ハウジングの軸方向に沿って当該軸方向と直交する面に投影した場合に、前記フィルタの投影領域の内縁が、前記仕切り部材の投影領域の内縁よりも内側に位置していない、請求項8から12のいずれかに記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−159051(P2010−159051A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1940(P2010−1940)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【分割の表示】特願2009−1045(P2009−1045)の分割
【原出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】