説明

ガス精製設備及びこれを有するガス化設備

【課題】 ウエットスクラバーの長時間の継続運転を可能にし、同時に廃棄水量の低減も図り得るガス精製設備及びこれを有するガス化設備を提供する。
【解決手段】 上流から供給されるガス中に含まれる粉塵を除去して下流に排出するガス精製設備14であって、ウエットスクラバー15,16を備えるとともに、ウエットスクラバー15,16に所定量の補給水を補給しながら水の表面に浮いた粉塵を高濃度で含む液体をオーバーフローさせて外部に排出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス精製設備及びこれを有するガス化設備に関し、特に可燃性ガスに未燃粒子を含むバイオマスを利用するガス化設備乃至石炭ガス化設備に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
木質系バイオマスや有機性廃棄物に対して適用可能な従来技術に係る炭化・ガス化方法に関する技術としては、例えば木質系バイオマス又は都市ごみ等の有機性廃棄物を300℃乃至800℃で炭化処理して得た炭化物と、水蒸気と、空気とを熱分解するガス化炉内に投入し、水性ガス化反応により可燃性ガスを得る熱分解ガス化装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1以外にもバイオマス燃料を原料とする多くのガス化設備が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
これらのガス化設備においては、ガス化炉で得た可燃性ガスを精製するガス精製設備を通常備えている。この種のガス精製設備は、例えばウエットスクラバーとバグフィルタとをタンデムに接続して構成される。ここで、ウエットスクラバーは、粉塵を含んだガスを気液体混合させることにより、効率よく集塵・ガス吸収を行う装置である。また、ウエットスクラバーには噴霧式と溜水式のものがある。例えば噴霧式ウエットスクラバーの場合洗浄水を循環させているが、従来技術に係る噴霧式ウエットスクラバーの場合には循環させる水が所定の汚れになるまで連続運転し、汚れがひどくなった時点で新しい水と取り替えている。すなわち、定期的に全部の水を取り替えている。これは溜水式ウエットスクラバーでも同様である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−35837号公報
【特許文献2】特開2005−272530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のごとく従来技術においては、ウエットスクラバーの水の汚れがひどくなった時点で新しい水と取り替えているので、定期的に全部の水の取り替え作業を行う必要がある。かかる取り替え作業の間当該ガス化設備の運転を停止しなければならず、これが稼働率悪化の原因となっている。また、従来技術に係るウエットスクラバーでは塵埃と水とを分離しているわけでもないので、廃棄しなければならない排水量も大量にならざるを得ないという問題も生起している。
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ウエットスクラバーの長時間の継続運転を可能にし、同時に廃棄水量の低減も図り得るガス精製設備及びこれを有するガス化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
上流から供給されるガス中に含まれる粉塵を除去して下流に排出するガス精製設備であって、
ウエットスクラバーを備えるとともに、前記ウエットスクラバーに所定量の補給水を補給しながら水の表面に浮いた粉塵を高濃度で含む液体をオーバーフローさせて外部に排出
するように構成したことを特徴とするガス精製設備にある。
【0009】
本態様によれば、表面に浮いた粉塵を高濃度で含む液体をオーバーフローさせて外部に排出する一方でこのオーバーフロー分を補充するように補給水を補給しているので、ウエットスクラバー内に貯留される水は長期間に亘り交換することなく洗浄液としての機能を維持し続ける。この結果、当該ウエットスクラバーの安定的な長期間の連続運転を継続することができる。また、ウエットスクラバーの貯留水が汚染された結果、これを全部交換する場合に較べ廃棄しなければならない排水量も低減し得る。
【0010】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載するガス精製設備において、
前記ウエットスクラバーは上流がから噴霧式ウエットスクラバー及び溜水式ウエットスクラバーを順に配設し、両者をタンデム接続したことを特徴とするガス精製設備にある。
【0011】
本態様によれば、同程度の精製能力を有するバグフィルタを設置する場合よりも据付面積の縮小化を図ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、
第1又は第2の態様に記載するガス精製設備がガス化炉で生成した可燃性ガスを精製するものであることを特徴とするガス精製設備にある。
【0013】
本態様によればガス化炉で生成した可燃性熱分解バスの良好な除塵をおこなうことができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、
第3の態様に記載するガス精製設備がバイオマス燃料からガス化炉で生成した可燃性ガスを精製するとともに、前記可燃性ガスに含まれる未燃炭化物を含む粉塵を除去するものであることを特徴とするガス化設備にある。
【0015】
本態様によればガス化炉で生成した可燃性熱分解バスの未燃炭化物が水に浮く性質を利用してこの未燃炭化物のみを選択的に外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウエットスクラバー内に貯留される水の最上部の粒子濃度が高い汚水部分をオーバーフローにより外部に排出しているので、貯留水を長期間に亘り交換することなく洗浄液としての機能を維持させることができる。この結果、当該ウエットスクラバーの安定的な連続運転を継続することができるばかりでなく、粒子濃度が高い部分を選択的に除去しているので、従来のごとくウエットスクラバーの貯留水を全部交換する場合に較べ廃棄しなければならない廃棄水量も低減し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本形態に係るバイオマス燃料を用いたガス化設備を示すブロック図である。同図に示すように、炭化機1には原料バンカー2に貯留されているバイオマス燃料が燃料中間ホッパ3を介して供給される。この結果、炭化機1はバイオマス燃料を炭化処理して、このバイオマス燃料中の水分及び揮発分を含んだ熱分解ガスと固定炭素や灰分を主成分とした炭化物とに分離する。具体的には、バイオマス燃料を300℃乃至500℃に加熱し、外気から遮断された無酸素状態の中で水分の蒸発と有機物の熱分解反応とにより炭化処理を行う。ここで、生成される熱分解ガスはタール分を多く含むガスであるため、さらにガス化炉4に供給してタール分を熱分解することにより高カロリーの可燃性ガスに改質している。
【0018】
粉砕機5は炭化機1における炭化処理の結果生成される炭化物を粉砕処理するものである。すなわち、炭化機1から投入された炭化物をミクロンオーダーに粉砕して微粉状の炭化物にする。粉砕機5で粉砕した微粉状の炭化物は気流搬送系6により搬送される。
【0019】
気流搬送系6は粉砕機5とともに途中にサイクロン7、バグフィルタ8及び循環ブロワ9を管路で連通した循環系で構成している。すなわち、循環ブロワ9で発生する気流を粉砕機5に供給することにより微粉状の炭化物を気流に乗せて搬送するとともに、サイクロン7及びバグフィルタ8で所定粒径以上の炭化物を捕捉・回収し、循環ブロワ9により再度粉砕機5に向けて気流搬送している。かくして所定粒径未満の炭化物がサイクロン7及びバグフィルタ8から重力を利用してバーナ供給ホッパ11に供給され、さらに粉体バーナ12に供給されてこの粉体バーナ12を介しガス化炉4内へ噴射される。すなわち、気流搬送系6において、粉砕機5で微粉末に粉砕された炭化物は、垂直に立上がる立上配管10を含む搬送配管内を気流搬送され、サイクロン7及びバグフィルタ8を介してバーナ供給ホッパ11に貯留される。
【0020】
ガス化炉4は、二室二段の噴流床方式のガス化炉であり、炭化機1で生成され粉砕機5で粉砕されたミクロンオーダーの炭化物を下段のガス化・燃焼部4aで燃焼させて1500℃程度の高温ガスにして上段のガス改質部4bに送り出す。粉体バーナ12より供給される炭化物はガス化・燃焼部4a内に噴射される。ガス改質部4bでは高温ガスと炭化機1における炭化処理で発生する熱分解ガスとを接触させる。そして、シフト反応(具体的には、CO+HO←→CO+H)を主とした改質反応並びに熱分解ガス中のタールの分解により一酸化炭素(CO)と水素(H)とを主成分とした可燃性ガスを生成する。なお、熱分解ガス中のタールを分解するために、ガス改質部4bに送り込まれて可燃性ガスと接触した段階でガス改質部4b内のガス温度は1100℃以上であることが必要とされる。すなわち、ガス化炉4が良好なガス化性能を発揮するためには、ガス化・燃焼部4aに十分な熱量が投入される必要がある。かかる熱量は、ガス化・燃焼部4aに空気(又は空気と酸素との混合気体)を送り込むことによる燃焼反応により得ている。ここで、本形態では、炭化機1からガス化炉4に熱分解ガスを供給するためのガス供給配管13のガス化炉4側が分岐管13aと分岐管13bとの二つに分岐し、熱分解ガスをガス化炉4のガス化・燃焼部4a及びガス改質部4bの両方に供給可能な構成となっている。ガス化炉4で生成された可燃性ガスはガス精製設備14でガス精製されて発電設備(図示せず)等に供給される。
【0021】
以上が本形態に係るガス化設備の概要であるが、本形態ではガス精製設備14の精製処理を合理的に行うべく特別の工夫をした。
【0022】
図2は本形態におけるガス精製設備14の具体的な構成をこの部分を抽出して示す説明図である。同図に示すようにガス精製設備14はガス化炉4側から下流に向かって噴霧式ウエットスクラバー15、溜水式ウエットスクラバー16及びプリーツバグフィルタ17をタンデムに接続したものである。噴霧式ウエットスクラバー15はガス化炉4で生成した可燃性ガス中の未燃炭化物等をノズル15bから噴射される水で洗浄する。このため、容器15aの底部は水の貯留部15cとなっており、貯留部15cに貯留される水をポンプ18でノズル15bに供給して循環させている。一方、この場合の未燃炭化物は水に浮くことを発見した。そこで、未燃炭化物等を高濃度で含む上澄み液をオーバーフローさせ排水管19を介して外部の貯留部20に排出するように構成した。次段の溜水式ウエットスクラバー16でも同様に未燃炭化物等を高濃度で含む上澄み液をオーバーフローさせ排水管19を介して外部の貯留部22に排出するように構成している。これらの噴霧式ウエットスクラバー15及び溜水式ウエットスクラバー16には、オーバーフローにより外部に排出された上澄み液の分の水をポンプ23により管路24,25を介して補充している
。したがって、本形態によれば、オーバーフロー分に見合う少量の水を補給するだけで長期間に亘り所定のガス精製処理を連続的に継続することができる。
【0023】
溜水式ウエットスクラバー16で洗浄された可燃性ガスはプリーツバグフィルタ17で最終的に未燃炭化物等を捕捉・除去して発電設備(図示せず)等に送給される。
【0024】
なお、上記実施の形態はバイオマス燃料から生成ガスを得るガス化設備及びそのガス精製設備として説明したが、ガス化設備に限定するものではない。ガスを洗浄するウエットスクラバーとして他の分野のガス精製であっても制限なく適用し得る。
【0025】
また、ガス化設備もバイオマス燃料を用いるものに限定する必要はない。例えば、石炭ガスのガス化設備であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明はバイオマスの有効利用を図る産業分野、すなわち都市ごみの処理等、発電等に関連する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るバイオマス燃料を用いたガス化設備を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るガス精製設備を抽出して詳細に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 炭化機
4 ガス化炉
14 ガス精製設備
15 噴霧式ウエットスクラバー
16 溜水式ウエットスクラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から供給されるガス中に含まれる粉塵を除去して下流に排出するガス精製設備であって、
ウエットスクラバーを備えるとともに、前記ウエットスクラバーに所定量の補給水を補給しながら水の表面に浮いた粉塵を高濃度で含む液体をオーバーフローさせて外部に排出するように構成したことを特徴とするガス精製設備。
【請求項2】
請求項1に記載するガス精製設備において、
前記ウエットスクラバーは上流側から噴霧式ウエットスクラバー及び溜水式ウエットスクラバーを順に配設し、両者をタンデム接続したことを特徴とするガス精製設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するガス精製設備はガス化炉で生成した可燃性ガスを精製するものであることを特徴とするガス精製設備。
【請求項4】
請求項3に記載するガス精製設備はバイオマス燃料からガス化炉で生成した可燃性ガスを精製するとともに、前記可燃性ガスに含まれる未燃炭化物を含む粉塵を除去するものであることを特徴とするガス化設備。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13584(P2010−13584A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176171(P2008−176171)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】