説明

ガス調理器具

【課題】受け皿が勢いよく出し入れされても、開閉扉の開閉を静音化できるガス調理器具を提供する。
【解決手段】ビルトインコンロでは、グリル庫45の開口部8を開閉する開閉扉15は、グリル庫45に対する受け皿60の出し入れに連動して回動する。開閉扉15に設けられた第1ギヤ70が開閉扉15と共に回動すると、第1ギヤ70に噛合する第2ギヤ76を有するロータリーダンパ75の回転軸75aを回動させる。ロータリーダンパ75は、第2ギヤ76及び第1ギヤ70を介して、開閉扉15の回動動作に抵抗を付与する。従って受け皿60が勢いよく出し入れされても、開閉扉15の回動が遅くなるので、開閉扉15の開閉に伴って生じる音を軽減できる。さらに開閉扉15の回動が遅くなることに伴って受け皿60の出し入れにも抵抗がかかるので、勢いよく受け皿60が出し入れされるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス調理器具に関し、詳細には、調理庫内でガスを燃焼させて被調理物の調理を行うガス調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理庫内でガスを燃焼させて被調理物の調理を行うガス調理器具において、調理庫の前面に形成された開口部を開閉する開閉扉が、被調理物が載置される焼き網を備えた受け皿と分離されているものがある。例えば、受け皿と開閉扉とが分離されているとともに、受け皿の調理庫に対する出し入れ動作に連動して開閉扉が開口部を開閉するガス調理器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このガス調理器具では、受け皿の調理庫に対する出し入れ動作に連動させて、開閉扉を開口部に対して開閉させることができるので、受け皿を調理庫から引き出して被調理物を焼き網の上に載置し易くでき、又は焼き網の上に載置されている被調理物を取り易くできる。さらに、受け皿を調理庫から引き出したときに、調理の際に発生する熱で熱くなっている開閉扉にユーザが触れてしまうことを防止できる。
【特許文献1】実開平6―4513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているガス調理器具では、受け皿を勢いよく出し入れした場合に、それに連動して開閉扉も勢いよく開口部を開閉するので、開閉扉が開口部の周囲の部材に当たる音が耳障りであるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受け皿が勢いよく出し入れされても、開閉扉の開閉を静音化できるガス調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガス調理器具は、前面に開口部が形成された被調理物の調理を行うための調理庫と、前記調理庫に出し入れされ、被調理物が載置される焼き網を備えた受け皿と、前記開口部近傍に設けられ、前記調理庫の左右方向に延設された支軸と、前記支軸に挿通され、前記支軸を中心に前記調理庫の上下方向に回動して前記開口部を開閉する開閉扉と、前記開閉扉を開く方向に付勢する付勢手段と、前記調理庫の側壁に設けられ、前記調理庫の略前後方向に延設された長孔と、前記長孔に遊挿され、前記調理庫の左右方向に設けられた長孔軸と、一端が前記開閉扉に回動可能に連結され、他端が前記長孔軸に連結されたアーム状の連結部材と、前記受け皿が前記調理庫に収納される際に、前記長孔軸に当接し、その長孔軸を前記長孔に沿って前記調理庫の後方に移動させることにより、前記連結部材を介して、前記付勢手段の付勢力に抗して前記開閉扉を閉じる方向に回動させる開閉扉制御部材と、前記開閉扉が開閉する際に、前記開閉扉の回動方向と逆方向の抵抗力を前記開閉扉に付与する抵抗力付与手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る発明のガス調理器具は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記抵抗力付与手段は、ロータリーダンパを備えている。
【0008】
また、請求項3に係る発明のガス調理器具は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記抵抗力付与手段は、前記開閉扉に設けられ、前記開閉扉と共に回動する第1ギヤと、前記ロータリーダンパの軸部に設けられ、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤとを備えている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るガス調理器具では、調理庫の開口部近傍に設けられた支軸を中心に、開閉扉が回動することによって開口部が開閉される。この開閉扉は付勢手段によって開く方向に常時付勢されている。調理庫の側壁に設けられた長孔には長孔軸が遊挿され、該長孔軸は長孔に沿って移動する。長孔軸と開閉扉の間には連結部材が連結されている。従って、開閉扉の回動により、連結部材を介して長孔軸が長孔に沿って移動する。ここで、受け皿が調理庫内に収納される際に、開閉扉制御部材が長孔軸に当接する。そして、開閉扉制御部材がその長孔軸を長孔に沿って調理庫の後方に移動させる。すると、長孔軸に連結された連結部材を介して開閉扉が付勢手段の付勢に抗して閉じる方向に回動する。こうして調理庫の開口部が開閉扉によって閉じられる。なお、受け皿を調理庫から引き出す際は、上記とは逆の流れを経ることによって開閉扉が開かれる。そして、本発明では、抵抗力付与手段が、開閉扉に対して開閉扉の回動方向とは逆方向の抵抗力を付与するので、受け皿がユーザによって勢いよく出し入れされた場合、これに伴って回動する開閉扉の開閉速度を遅くすることができる。これにより、開閉扉が調理庫の開口部の周囲に勢いよく衝突しないので、受け皿の出し入れの際に生じる音を軽減できる。さらに、開口部の周囲が損傷するのを防止できる。
【0010】
また、請求項2に係るガス調理器具では、請求項1に記載の発明の効果に加え、ロータリーダンパを用いることによって、開閉扉の回動に対して抵抗力を容易にかけることができる。
【0011】
また、請求項3に係るガス調理器具では、請求項2に記載の発明の効果に加え、第1ギヤ及び第2ギヤを介すことによって、ロータリーダンパの抵抗力を開閉扉に効果的に伝達することができる。また、開閉扉とロータリーダンパとの間が離間していても第1ギヤ及び第2ギヤを介すことによって、ロータリーダンパの抵抗力を開閉扉に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態であるビルトインコンロ1について、図面を参照して説明する。図1は、ビルトインコンロ1の斜視図である。図2は、受け皿60を引き出した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図3は、受け皿60をレール機構30から取り外した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図4は、図2に示すI−I線矢視方向断面図である。図5は、図1に示すII−II線矢視方向断面図である。図6は、開閉扉15の斜視図である。なお、図1に示すビルトインコンロ1が本発明の「ガス調理器具」に相当する。
【0013】
はじめに、ビルトインコンロ1の全体構造について概略的に説明する。図1に示すように、ビルトインコンロ1は、略直方体状の筐体2を備えている。筐体2の天面にはトッププレート4が設けられている。トッププレート4の左右両側には、ガスバーナ5,7が各々設けられ、それらガスバーナ5,7に挟まれる中央奥側には、とろ火用のガスバーナ6が設けられている。これらガスバーナ5,6,7の各中心部には、調理容器の底部に当接して、その底部温度を検知するための温度センサ5a,6a,7aが各々設けられている。ガスバーナ5,6,7の各上部周囲には、調理容器を載置するための五徳9,10,11が各々設けられている。
【0014】
トッププレート4の後端側には、後述するグリル庫45(図4参照)に連通する排気口13が設けられている。排気口13には、複数の孔を有し、グリル庫45内からの炎のあふれを抑制するための一対の安全網14a,14bが設置されている。
【0015】
筐体2の幅方向中央の内側には、筐体2の前後方向に長手を有し、被調理物を庫内で加熱するためのグリル庫45(図5参照)が組み込まれている。図2,図3に示すように、グリル庫45の前面には開口部8が形成され、該開口部8は、筐体2の正面中央に形成された矩形状の開口12の内側に配置されている。開口部8の上端部にはグリル庫45の左右方向に延びる支軸48が設けられ、その支軸48に対して開閉扉15が回動可能に軸支されている。これにより、開口部8は開閉扉15によって開閉される。開閉扉15の下方には、受け皿60をグリル庫45から引き出すための取手部材16が設けられている。なお、図4に示すグリル庫45が本発明の「調理庫」に相当する。
【0016】
図2に示すように、受け皿60は、グリル庫45(図3参照)内に設けられたレール機構30によって、グリル庫45の内側と外側との間をスライド可能に支持されている。よって、取手部材16を手前に引くと、その取手部材16の裏側に連結された受け皿60が庫外にスライドして引き出されるようになっている。この受け皿60には焼き網27が載置されている。よって、受け皿60を庫外に引き出した状態において、焼き網27上に被調理物を載せたり、焼き網27上に載せられた被調理物を取り出すことができる。さらに、本実施形態では、図3に示すように、受け皿60はレール機構30に対して着脱可能である。よって、加熱調理後に、受け皿60をレール機構30から取り外すことによって、受け皿60に載せられた被調理物を所望の場所にそのまま運ぶことができる。
【0017】
また、グリル庫45には、レール機構30による受け皿60のスライド動作に連動して、開閉扉15を開閉させるための扉連動機構50(図4参照)が設けられている。この扉連動機構50によれば、図4,図5に示すように、受け皿60を庫内に収納することで開閉扉15は自動的に閉じられ、その反対に、受け皿60を庫外に引き出すことで開閉扉15が自動的に開かれる。なお、レール機構30の構造、レール機構30に対する受け皿60の着脱構造、および扉連動機構50の構造については後述する。
【0018】
ところで、図1,図2に示すように、筐体2の正面左側には、ガスバーナ5を点火するための点火スイッチ17が設けられている。その点火スイッチ17の右隣りには、ガスバーナ6を点火するための点火スイッチ18が設けられている。さらに、グリル庫45の開閉扉15を挟んで、筐体2の正面右側には、ガスバーナ7を点火するための点火スイッチ20が設けられている。その点火スイッチ20の左隣りには、グリル庫45の内側に設けられたグリルバーナ(図示外)を点火するための点火スイッチ19が設けられている。さらに、各点火スイッチ17〜20の上側には、対応する各バーナの火力をそれぞれ調節するための火力調節レバー21〜24が各々設けられている。
【0019】
また、筐体2の正面左下であって、点火スイッチ17,18の下側には、ビルトインコンロ1を操作するための操作パネル25が回動可能に設けられている。未使用時には筐体2の内側に収納され、使用時には収納状態の操作パネル25を押下することで、筐体2の外側に回動されて操作可能となる。一方、筐体2の正面右下であって、点火スイッチ19,20の下側には、ビルトインコンロ1の電源を供給する乾電池を格納するための電池ボックス26が設けられている。
【0020】
次に、レール機構30の構造について説明する。図4に示すように、レール機構30は、グリル庫45の左右の両側壁の各内面の下端部に沿って各々固定された一対の固定レール31と、該一対の固定レール31の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第1可動レール32と、該一対の第1可動レール32の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第2可動レール33とからなる。なお、図4では、一対の各レールのうち、右側の各レールについてのみ図示している。
【0021】
そして、固定レール31と第1可動レール32とが互いにすれ違う間には、複数の小型ローラが並列してなるローラユニット(図示外)が配設されている。第1可動レール32と第2可動レール33とが互いにすれ違う間にも、同様のローラユニット(図示外)が配設されている。さらに、固定レール31の前端側には、第1ストッパ(図示外)が設けられている。第1可動レール32の後端側には、第1可動レール32が引き出された際に、第1ストッパに係止する第1係止部(図示外)が設けられている。これらにより、固定レール31から第1可動レール32が抜けるのを防止できる。
【0022】
また、第1可動レール32の前端側には、第2ストッパ(図示外)が設けられている。第2可動レール33の後端側には、第2可動レール32が引き出された際に、第2ストッパに係止する第2係止部(図示外)が設けられている。これにより、第1可動レール32から第2可動レール33が抜けるのを防止できる。このような構成からなるレール機構30において、一対の第2可動レール32の前側には、受け皿60を着脱可能に保持するための正面視矩形状の保持枠40が組み付けられている。
【0023】
ここで、保持枠40の構造について説明する。図3に示すように、保持枠40は、右側の第2可動レール32に固定された長尺状の右枠部41と、左側の第2可動レール32に固定された長尺状の左枠部42と、右枠部41の前端部と左枠部42の前端部との間に渡設された長尺状の前方枠部43と、右枠部41の後端部と左枠部42の後端部との間に渡設された長尺状の後方枠部44とからなる。これら右枠部41、左枠部42、前方枠部43、後方枠部44は、何れも長手方向に直交する断面が略L字状に形成されている。
【0024】
そして、右枠部41及び左枠部42は、一対の第2可動レール32の上面を覆いつつ、第2可動レール32の内面に沿って略直角に屈曲されている。右枠部41について、前方枠部43の上面を覆う部分の外側の一端部であってグリル庫45の前方側には、扉連動機構50の後述する連結アーム53の一端部に軸支されたローラ55に当接して、グリル庫45の奥側に付勢するための当接部36が設けられている。そして、詳述しないが、左枠部42についても、右枠部41と同様の当接部(図示外)が設けられている。なお、この当接部36が本発明の「開閉扉制御部材」に相当する。
【0025】
このような構成からなる保持枠40の内側に対して、受け皿60の底部が嵌ると共に、右枠部41及び左枠部42に対して、受け皿60の左右両縁部が載置されることによって、保持枠40に受け皿60が保持される。そして、この保持枠40の前方枠部43に取手部材16が連結されている。
【0026】
次に、開閉扉15の開閉構造について、図6を参照して説明する。開閉扉15は、矩形状の本体枠95を備えている。本体枠95の略中央には矩形状の開口であるガラス窓部96が形成されている。本体枠95の左右両端部には、本体枠95の裏面に対して略直角に延設された側面視L字型の支持部97,98が設けられている。これら支持部97,98において、開閉扉15を上下方向に立てた状態の各上部には、支軸48が挿通される支軸挿通孔99が各々設けられている。それら支軸挿通孔99の各下方には、後述する連結アーム53の一端部を回動可能に軸支するための連結孔100が各々設けられている。そして、本体枠95に対して、その裏側からガラス窓部96を覆うようにして一枚のガラス板110が固定されている。
【0027】
このような構成からなる開閉扉15において、支持部97,98の一対の支軸挿通孔99,99に対して支軸48が挿通される。そして、その支軸48の長手方向中央部が、グリル庫45の開口部8を形成する開口端の上端部に固定され、支軸48の長手方向両端部が、筐体2の開口12を形成する各内面に固定される。これにより、開閉扉15は支軸48に対して独立して回動する。
【0028】
さらに、支軸48において、本体枠95の内側に相当する部分の左右両側には、コイル状のトルクバネ58が各々外挿されている。トルクバネ58の一端部に形成されたループ状の固定部58aは、本体枠59の支持部97,98の各内面に固定される。他方、トルクバネ58の他端部は支軸48に固定される。そして、固定部58aが略水平とした状態で、トルクバネ58の他端部が支軸48に対して固定される。つまり、開閉扉15が開いた状態が、トルクバネ58にトルクがかけられていない状態となる。そのため、開閉扉15の自重によって下方に回動しようとしても、トルクバネ58の付勢によって、開閉扉15の開かれた状態が保持される。そして、開閉扉15を閉じることによって、トルクバネ58にトルクがかかるようになっている。なお、図6に示すトルクバネ58が本発明の「付勢手段」に相当する。
【0029】
ところで、本実施形態の開閉扉15の開閉構造では、受け皿60の出し入れに連動して、開閉扉15が勢いよく開閉されることを防止するために、開閉扉15の回動動作に対して所定の抵抗を与えている。そこで、開閉扉15の回動動作に抵抗を与えるための構造について以下詳細に説明する。
【0030】
図6に示すように、本体枠95の左右両端に設けられた支持部97,98の各内面には、略円形状の板である第1ギヤ70が各々固定されている。第1ギヤ70の略中央には、支軸48が遊挿される挿通孔71が設けられている。この挿通孔71は、支持部97(98)に設けられた支軸挿通孔99に対応して配置されている。さらに、第1ギヤ70の円弧の部分には多数の歯が連続して成る歯部が形成されている。そして、支軸48は、支持部97,98の一対の支軸挿通孔99,99と、第1ギヤ70,70の挿通孔71,71とに対して挿通される。これにより、開閉扉15が支軸48を中心に回動することに伴って、第1ギヤ70が支軸48を中心に回動するようになっている。
【0031】
一方、グリル庫45の左右の両側壁46の前側における上部には、ロータリーダンパ75が各々固定されている(図4,図5では、グリル庫45の右側のロータリーダンパ75のみ図示)。ロータリーダンパ75の回転軸75aの先端部には第2ギヤ76が固定されている。この第2ギヤ76の外周には多数の歯が連続して成る歯部が形成されている。
【0032】
さらに、第1ギヤ70の歯部と第2ギヤ76の歯部とは互いに噛合している。よって、ロータリーダンパ75は回転軸75aの回転に対して所定の抵抗をかけるので、第2ギヤ76及び第1ギヤ70を介すことによって、開閉扉15の回動動作に対して抵抗がかけられるようになっている。そして、本実施形態では、受け皿60の出し入れに連動して開閉扉15の開閉がなされるが、受け皿60が勢いよく出し入れされた場合でも、開閉扉15の回動動作に抵抗がかかるので、開閉扉の開閉速度を遅くすることができる。
【0033】
ここで、ロータリーダンパ75について説明する。ロータリーダンパ75は、例えば、オイルの粘性抵抗により発生する制動力(ブレーキカ)を利用した回転系のダンパが利用可能である。ダンパの制動トルクは、オイルの粘性、図示外のローターと本体ケースのクリアランス、オイルの接触面積等によって調節可能である。そして、ロータリーダンパ75の制動トルクはその使用回転速度により、発生するトルクが変化する。つまり、回転速度が上がるとトルクは上がり、回転速度が下がるとトルクも下がるようになっている。従って、開閉扉15の回動速度が遅い場合は、ロータリーダンパ75のトルクは下がるので、受け皿60の出し入れには影響を受けない。一方、開閉扉15の回動速度が速い場合は、ロータリーダンパ75のトルクは上がるので、受け皿60の出し入れを遅くさせる効果がある。なお、ロータリーダンパ75、第1ギヤ70及び第2ギヤ76が本発明の「抵抗力付与手段」に相当する。
【0034】
次に、扉連動機構50の構造について説明する。図4に示すように、扉連動機構50は、開閉扉15の支持部97,98に各々設けられた連結孔100に一端側が回動可能に連結された連結アーム53と、該連結アーム53の他端部に設けられ、グリル庫45に向かって略直角に延設された長孔軸54と、該長孔軸54に軸支されたローラ55と、グリル庫45の左右の側壁46の下側にかつグリル庫45の前後方向に延設され、前記ローラ55をガイドするための長孔51とからなる。
【0035】
連結アーム53はグリル庫45の前方に向かって膨出するように2カ所で曲げられている。長孔51は、連結アーム53の他端部をグリル庫45の奥側にガイドするために、グリル庫45の前側から奥側に向かって略水平に延設されている。さらにその奥側で上方に屈曲させることによって、開閉扉15の閉塞時における連結アーム53の他端部の移動を規制している。
【0036】
次に、扉連動機構50の動作について説明する。図4に示すように、まず、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15はトルクバネ58の付勢によって開いた状態に保持されている。つまり、開閉扉15は上方に跳ね上がっているので、連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55は、グリル庫45の側壁46に設けられた長孔51の前側まで引き戻された状態となっている。次いで、受け皿60をグリル庫45内に収納するために、取手部材16を筐体2に向かって押すことによって、受け皿60をグリル庫45の内側に向かってスライドさせる。
【0037】
すると、保持枠40に設けられた当接部36が、グリル庫45の長孔51に遊挿されたローラ55に当接する。さらに、取手部材16を押し込むことによって、当接部36がローラ55をグリル庫45の奥側に付勢するので、ローラ55は長孔51の内縁に沿って転動する。そして、ローラ55がグリル庫45の奥側に移動することによって、連結アーム53の他端部がグリル庫45の奥側に引っ張られる。これに伴い、トルクバネ58の付勢に抗して、開閉扉15が引っ張られて下方に回動する。
【0038】
そして、開閉扉15が回動する際に、ロータリーダンパ75の回転軸75aの先端に設けられた第2ギヤ76と、開閉扉15に固定された第1ギヤ70とを介して、ロータリーダンパ75による抵抗力が開閉扉15に付与される。これにより、開閉扉15が閉じる方向に回動する速度が遅くなるので、開閉扉15がグリル庫45の開口端に勢いよく衝突するのを防止できる。よって、開閉扉15がグリル庫45の開口端に当たる際の衝突音を軽減できると共に、グリル庫45の開口部8の周囲が損傷するのを防止できる。
【0039】
また、開閉扉15が閉じる方向に回動する速度が遅くなるので、当接部36が長孔51に沿って移動するローラ55をグリル庫45の奥側に付勢する際に抵抗がかかる。これにより、受け皿60の移動速度が遅くなり、取手部材16がグリル庫45の開口部8の周囲に勢いよく衝突するのを防止できるので、受け皿60の出し入れの際に生じる音を軽減できると共に、グリル庫45の開口部8の周囲が損傷するのを防止できる。また、ローラ55が長孔51に沿って転動する際に生じる音や、連結アーム53が移動する際に生じる音等を軽減することもできる。
【0040】
こうして、受け皿60がグリル庫45内に収納され、取手部材16がグリル庫45の前方の開口端に当接した状態で開閉扉15は完全に閉じた状態(図5参照)となる。このとき、保持枠40の後方枠部44に固定された突起部(図示外)が、グリル庫45の背壁の内面下部に固定された保持ユニット(図示外)によって、左右両側から挟まれて挟持される。これにより保持枠40がグリル庫45内に固定される。
【0041】
そして、受け皿60を庫外に引き出す場合は、上記説明した流れと逆である。図5に示すように、まず、取手部材16を手前に徐々に引き出すと、ローラ55に対する当接部36の付勢が無くなるので、当接部36が前側に移動するのに伴ってローラ55が前方に移動する。これは、トルクバネ58の付勢が支配的となるので、開閉扉15が押し上げられ、これに伴って連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55がグリル庫45の前方に引っ張られるからである。
【0042】
また、この場合においても、ロータリーダンパ75の回転軸75aの先端に設けられた第2ギヤ76と、開閉扉15に固定された第1ギヤ70とを介して、ロータリーダンパ75による抵抗力が開閉扉15に付与される。これにより、開閉扉15が開く方向に回動する速度が遅くなるので、ローラ55が長孔51に沿って転動する際に生じる音や、連結アーム53が移動する際に生じる音等を軽減することができる。そして、図4に示すように、ローラ55から当接部36が離間して、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15は跳ね上げられ、グリル庫45の開口部8を完全に露呈した状態とすることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のビルトインコンロ1によれば、グリル庫45の開口部8を開閉する開閉扉15は、グリル庫45に設けられた支軸48を中心に回動可能に設けられている。この開閉扉15は、扉連動機構50によって、グリル庫45に対する受け皿60の出し入れに連動して回動する。そして、開閉扉15に設けられた第1ギヤ70が開閉扉15と共に回動すると、第1ギヤ70に噛合する第2ギヤ76を先端部に有するロータリーダンパ75の回転軸75aを回動させる。ロータリーダンパ75は、第2ギヤ76及び第1ギヤ70を介して、開閉扉15の回動動作に抵抗を付与する。これにより、受け皿60がグリル庫45に対して勢いよく出し入れされても、ロータリーダンパ75による抵抗が開閉扉15に付与されて、さらに、受け皿60の出し入れに対しても抵抗が付与される。従って、開閉扉15の開閉速度と、受け皿60の出し入れ速度とを遅くできるので、受け皿60の出し入れの際に生じる音を効果的に軽減できる。
【0044】
なお、本発明に係るガス調理器具は、上記実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変形してもよい。例えば、上記実施形態では、ロータリーダンパ75の抵抗を2枚のギヤを介して開閉扉15に伝達しているが、2枚以上のギヤを用いてもよい。開閉扉15とロータリーダンパ75との間が離れた位置にある場合は特に有効である。
【0045】
また、複数のギヤを介さずに、ロータリーダンパ75の抵抗を開閉扉15の回動に直接作用させる構造にしてもよい。本実施形態では、開閉扉15を開く方向に常時付勢するために、支軸48にトルクバネ58を取り付けているが、例えば、開閉扉15に支軸48を一体的に固定し、その支軸48にロータリーダンパ75の抵抗を直接作用させるようにしてもよい。この場合、開閉扉15を開く方向に付勢する手段として、受け皿60を引き出す方向に付勢するバネ等をグリル庫に取り付ける様な構造にすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ビルトインコンロ1の斜視図である。
【図2】受け皿60を引き出した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。
【図3】受け皿60をレール機構30から取り外した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。
【図4】図2に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図5】図1に示すII−II線矢視方向断面図である。
【図6】開閉扉15の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ビルトインコンロ
8 開口部
15 開閉扉
30 レール機構
36 当接部
40 保持枠
45 グリル庫
46 側壁
48 支軸
50 扉連動機構
51 長孔
53 連結アーム
54 長孔軸
55 ローラ
58 トルクバネ
60 受け皿
70 第1ギヤ
71 挿通孔
75 ロータリーダンパ
75a 回転軸
76 第2ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部が形成された被調理物の調理を行うための調理庫と、
前記調理庫に出し入れされ、被調理物が載置される焼き網を備えた受け皿と、
前記開口部近傍に設けられ、前記調理庫の左右方向に延設された支軸と、
前記支軸に挿通され、前記支軸を中心に前記調理庫の上下方向に回動して前記開口部を開閉する開閉扉と、
前記開閉扉を開く方向に付勢する付勢手段と、
前記調理庫の側壁に設けられ、前記調理庫の略前後方向に延設された長孔と、
前記長孔に遊挿され、前記調理庫の左右方向に設けられた長孔軸と、
一端が前記開閉扉に回動可能に連結され、他端が前記長孔軸に連結されたアーム状の連結部材と、
前記受け皿が前記調理庫に収納される際に、前記長孔軸に当接し、前記長孔軸を前記長孔に沿って前記調理庫の後方に移動させることにより、前記連結部材を介して、前記付勢手段の付勢力に抗して前記開閉扉を閉じる方向に回動させる開閉扉制御部材と、
前記開閉扉が回動する際に、前記開閉扉の回動方向と逆方向の抵抗力を前記開閉扉に付与する抵抗力付与手段と
を備えたことを特徴とするガス調理器具。
【請求項2】
前記抵抗力付与手段は、ロータリーダンパを備えたことを特徴とする請求項1に記載のガス調理器具。
【請求項3】
前記抵抗力付与手段は、
前記開閉扉に設けられ、前記開閉扉と共に回動する第1ギヤと、
前記ロータリーダンパの軸部に設けられ、前記第1ギヤに噛合する第2ギヤと
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のガス調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−22500(P2010−22500A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185495(P2008−185495)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000112015)パロマ工業株式会社 (298)
【Fターム(参考)】