説明

ガス遮断器

【課題】 アークの熱エネルギーによりパッファ室内の圧力を充分に上昇させることで、電流の充分な遮断性能を得ることのできるガス遮断器を提供する。
【解決手段】 実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填された容器と、前記容器内に設置され第1のアーク接触子を備える第1の接触子部と、前記容器内に前記第1の接触子部に対向して配置され、第2のアーク接触子を備える第2の接触子部とを備える。前記第1の接触子部は、前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との間に発生するアークを吹き消すための前記消弧性ガスを蓄える空間を有するパッファ室と、前記第1のアーク接触子の近傍に第1の開口と、前記パッファ室と連接する第2の開口とを有する消弧性ガスの流路と、前記パッファ室の前記空間内に設けられ、前記流路からの前記消弧性ガスの流れを遮るように配置され、前記空間を第1の空間と第2の空間とに分割する面状の部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
パッファ型のガス遮断器は、アークの熱エネルギーにより生じる消弧性ガスの流れによりパッファ室内の圧力を上昇させ、アークが弱まる電流零点において、圧力が上昇したパッファ室内かとアークが発生する空間との差圧によりアークに対して消弧性ガスを吹き付けることで電流を遮断する。このようなガス遮断器において、電流の遮断性能の向上には、アークが発生する空間とパッファ室内との間に充分な差圧を確保することが必要である。
【0003】
しかしながら、アークの熱エネルギーにより生じる消弧性ガスの流れがパッファ室内で拡散してしまうことで充分な圧力上昇が得られずに、アークが発生する空間とパッファ室との間に充分な差圧が確保できないため、電流の充分な遮断性能が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アークの熱エネルギーによりパッファ室内の圧力を充分に上昇させることで、電流の充分な遮断性能を得ることのできるガス遮断器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填された容器と、前記容器内に設置され第1のアーク接触子を備える第1の接触子部と、前記容器内に前記第1の接触子部に対向して配置され、前記第1のアーク接触子と接触または離間した状態を取りうる第2のアーク接触子を備える第2の接触子部とを備える。また、前記第1の接触子部は、前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との間に発生するアークを吹き消すための前記消弧性ガスを蓄える空間を有するパッファ室と、前記第1のアーク接触子の近傍に第1の開口と、前記パッファ室と連接する第2の開口とを有する消弧性ガスの流路と、前記パッファ室の前記空間内に設けられ、前記流路からの前記消弧性ガスの流れを遮るように配置され、前記空間を第1の空間と第2の空間とに分割する面状の部材とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第一の実施形態に係るガス遮断器の断面図。
【図2】第一の実施形態に係るガス遮断器のA-A断面を示す断面図。
【図3】第一の実施形態に係るガス遮断器における消弧性ガスの流れを説明する図。
【図4】第一の実施形態に係るガス遮断器における消弧性ガスの流れを説明する図。
【図5】第一の実施形態に係るガス遮断器における熱的パッファ室内の圧力分布の解析結果。
【図6】第二の実施形態に係るガス遮断器の断面図。
【図7】第二の実施形態に係るガス遮断器のB-B断面を示す断面図。
【図8】第二の実施形態の変形例に係るガス遮断器の分割部材の形状を示す図。
【図9】第三の実施形態に係るガス遮断器の断面図。
【図10】第四の実施形態に係るガス遮断器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図である。
【0010】
本実施形態のガス遮断器は、消弧性ガスが充填されている中空円筒形状の容器50と、容器50の中心軸上に、可動接触子部1と、この可動接触子部1に対向する対向接触子部2(図1中の破線で囲まれた部分)と、可動接触子部1の一部に接触する固定ピストン24とを備える。
【0011】
なお、図1では可動接触子部1と対向接触子部2とが接触している通電状態を示す。ここでは通電状態では 交流電流が流れているものとする。
【0012】
以下の説明では、対向接触子部2側の方向を前方(図1の左側)、その反対側を後方(図1の右側)として定義する。
【0013】
本実施形態において、可動接触子部1は、中空円筒形状のシリンダ23と、シリンダ23の内部の中心軸上に設けられる中空の操作ロッド21と、シリンダ23と操作ロッド21とに囲まれて設けられるパッファ室42及び43とを備える。
【0014】
可動接触子部1は、容器50の中心軸に沿って前方または後方に移動可能である。
【0015】
シリンダ23の前方の端部にはフランジ22が一体的に形成されている。さらにこのフランジ22の前方には、スロート部14を有する絶縁ノズル13と、可動通電接触子15とが設けられている。
【0016】
また、シリンダ23の内周面の中程には隔壁26が一体的に形成されている。この隔壁26を介してシリンダ23内の空間(パッファ室)は、前方側に熱的パッファ室42が、後方側に機械パッファ室43がそれぞれ設けられている。このとき、パッファ室内のシリンダ側の面を外周、操作ロッド側の面を内周として定義する。
【0017】
前方の熱的パッファ室42は、後述する遮断動作時に発生するアークからの熱エネルギーにより生じる消弧性ガスの流れが隔壁26等に衝突することで昇圧される空間である。
【0018】
後方の機械パッファ室43は、遮断動作時に後述する固定ピストン24の機械的圧縮作用により昇圧される空間である。
【0019】
操作ロッド21は、図示しない駆動装置によって、中心軸方向に往復運動するように構成されており、その中程には操作ロッド21の内部と、容器50内の充填ガス雰囲気空間とを連通させるための開口部45fが複数形成されている。この操作ロッド21の前方には、前方の先端が中心に丸まった指状の可動アーク接触子11が一体的に形成されている。
【0020】
上記のフランジ22と操作ロッド21との間には、開口部45aが形成されている。また、可動アーク接触子11の前方側の先端と、スロート部14との間には開口部45bが形成されている。この開口部45aから開口部45bまで、熱エネルギー及び消弧性ガスの流路44が形成されている。図1の導通状態では開口部45bが対向アーク接触子12によって塞がれている。
【0021】
隔壁26には開口部45dが形成されている。この開口部45dの熱的パッファ室42側には、ばね29aにより蓄勢された浮動の逆止弁27が設けられている。
【0022】
対向接触子部2は、容器50の中心軸に沿って、フランジ52と、フランジ52の周囲に一体的に固定された円筒形状の対向通電接触子54と、対向通電接触子54と図示しない前方において固定され、対向通電接触子54の中心軸に位置する対向アーク接触子12とを備える。
【0023】
また、フランジ52は開口部53を有する。対向通電接触子54は、可動通電接触子15と接触させるため、後方側の厚さが、前方側に比べ厚いほうが好ましい。
【0024】
固定ピストン24は、機械パッファ室43の後方に挿入される環状平板である。この固定ピストン24は、その内周面で操作ロッド21の外周面に対して摺動すると共に、その外周面でシリンダ23の内周面に対して摺動するように構成されており、その後方に一体的に設けられて軸方向に伸びるピストン支持部25によって、容器50内に固定されている。
【0025】
機械パッファ室43内の空間は、シリンダ23、隔壁26、操作路ロッド21および固定ピストン24の一面で取り囲まれているため、操作ロッド21が摺動するにつれて空間の体積が変化する。
【0026】
また、固定ピストン24には、開口部45eが形成されており、開口部45eには、ばね29bで閉方向に蓄勢された放圧弁28が設けられている。
【0027】
通常の通電状態においては、操作ロッド21を駆動することにより可動接触子部1を前方に移動させて、図1に示すように、対向通電接触子54と可動通電接触子15とは接触している。また、可動アーク接触子11と対向アーク接触子12とは接触している。
【0028】
後述の遮断動作時(図3及び図4)には、操作ロッド21を駆動することにより可動接触子部1を後方に移動させる。このとき、可動アーク接触子11と対向アーク接触子12とが非接触となることでアーク空間47が形成されるとともに、流路44の開口部45bが対向アーク接触子12から開放される。このアーク空間47に発生するアーク46の熱エネルギーにより生じた消弧性ガスの流れは開口部45bを介して流路44を通り、開口部45aから熱的パッファ室42へ流入する。
【0029】
本実施形態のガス遮断器では、図1に示すように、熱的パッファ室42内で、開口部45aから流入した消弧性ガスの流れが、隔壁26に到達する前に途中で拡散してしまうことを防止するために、熱的パッファ室42内の中心軸と水平な側面の外周側(外周面)に面上の分割部材3を配置する。
【0030】
この分割部材3は、開口部45aから流入する消弧性ガスの流入進路を遮るように配置され、容器50の中心軸方向に、熱的パッファ室42を主空間41aと従空間41bとに分割する。
【0031】
分割部材3は、一体の環状平面もしくは環状曲面からなり、分割部材3の取付角度4は任意にとることができる。さらに、主空間41aと従空間41bを連通させる少なくとも1箇所の開口部45cを設ける。
【0032】
図1では、分割部材3として一体の環状平板を用い、分割部材3の取付角度4をほぼ90度としたときの例を示している。
【0033】
図2は、図1に示す本実施形態のガス遮断器におけるA-A断面を示す断面図である。図2(a)に示すように、分割部材3としては、1枚の部材から成る環状平板を用いており、熱的パッファ室42の外周面を形成するシリンダ23に溶接、あるいは鋳造等による一体成型により形成される。そして、分割部材3と熱的パッファ室42の内周面を形成する操作ロッド21との間に環状の開口部45cが設けられる。
【0034】
このとき、分割部材3としては、上記の環状平板に代えて、熱的パッファ室42の前方あるいは後方に曲率を有するような環状曲板を用いることも可能である。
【0035】
なお、分割部材3としては、図2(b)に示すように、1枚の部材からではなく、複数に分割された部材を、熱的パッファ室42内の外周面の円周に沿って所定の間隔で配置することも可能である。
【0036】
以下、図3及び図4を参照して、本実施形態に係るガス遮断器の動作及び内部での消弧性ガスの流れについて詳細に説明する。
【0037】
図3は、遮断動作初期における、本実施形態に係るガス遮断器内部での消弧性ガスの流れを説明するための図である。
【0038】
遮断動作が開始すると、操作ロッド21が後方に移動し、この操作ロッド21を含む可動接触子部1が一体的に移動する。これにより、操作ロッド21とシリンダ23および隔壁26が一体的に移動することになり、固定された固定ピストン24に対して隔壁26が接近するため、機械パッファ室43の空間が圧縮されて昇圧する。
【0039】
遮断動作の初期時点では、隔壁26の開口部45dに取り付けられた逆止弁27は浮動なので、慣性力により、可動接触子部1と一体に移動しない。つまり、逆止弁27は相対的に前方に移動したことになる。これにより、隔壁26の開口部45dは開状態となる。このとき、機械パッファ室43が昇圧しているので、機械パッファ室43から開口部45dを経て、消弧性ガスが機械パッファ室43内から熱的パッファ室42の従空間41bへ供給される。
【0040】
他方で、対向アーク接触子12と可動アーク接触子11が開離すると、両アーク接触子12及び11間のアーク空間47にはアーク46が発生する。このとき、アーク46により、アーク空間47の温度、圧力は急激に上昇する。
【0041】
したがって、アーク空間47は熱的パッファ室42より圧力が上昇するために、アーク空間47の消弧性ガスは、流路44の可動アーク接触子11の先端部の開口部45bからフランジ22の開口部45aを経て熱的パッファ室42に至る流れ51aを生じる。
【0042】
上記のように、アーク46による熱エネルギーから生じた流れ51aは、流路44を通じて、主空間41a内に流入する。このとき、主空間41a内に流入した流れ51bは分割部材3に衝突し、熱的パッファ室42の主空間41a内を循環する流れ51cを生じる。
【0043】
そして、この流れ51cは、開口部45cを通じて従空間41bへ流入し、従空間41b内を循環する流れ51dが発生する。
【0044】
このように、分割部材3を配置することで、流れ51bが途中で拡散せずに、分割部材3に衝突することで主空間41a内を循環する流れ51bを生じ、主空間41a内の圧力を上昇させる。同時に、流れ51dが隔壁26に衝突することで同様に、従空間41b内の圧力を上昇させることで、熱的パッファ室42内の圧力を充分に上昇させることが可能となる。
【0045】
本実施形態においては、熱的パッファ室42と機械パッファ室43が相補的に作用する。以下では、上記のように、アーク46の熱エネルギーにより主空間41a及び従空間41bの圧力が充分に昇圧された後の、熱的パッファ室42と機械パッファ室43との関係について説明する。なお、ここでは、主空間41a及び従空間41b間での消弧性ガスの流れについては説明を省略し、主空間41a及び従空間41bを熱的パッファ室42としてまとめて説明する。
【0046】
この際、大電流遮断時(例えば20kAを越える場合)には熱的パッファ室42は著しく昇圧され、熱的パッファ室42と機械パッファ室43の間に逆差圧が生じるため、逆止弁27には後方への力が作用し、隔壁26の開口部45dは閉状態となる。このため、熱的パッファ室42のみで充分な昇圧を行うことができる。
【0047】
また、逆止弁27が閉じることにより、機械パッファ室43へのアーク46の熱エネルギーの流入が抑制されるため、機械パッファ室43の過剰な昇圧がある程度抑制されることになり、遮断動作を妨害する反力を抑えることができる。
【0048】
このとき、もし機械パッファ室43の過剰圧力上昇となった場合には、固定ピストン24に設けられた放圧弁28が開状態となって、機械パッファ室43内の消弧性ガスは、機械パッファ室43から充填ガス雰囲気空間へと流出する。
【0049】
これに対して中小電流遮断時(例えば20kA以下の場合)には、熱的パッファ室42は充分に昇圧されないため、熱的パッファ室42と機械パッファ室43の圧力は比較的均衡した状態にあり、逆止弁27の動作は状態により変化する。特に、後述の電流零点近傍においては、熱的パッファ室42の圧力は次第に低下し、機械パッファ室43の圧力を下回るため、逆止弁27は開状態となり、機械パッファ室43から熱的パッファ室42への流れが発生することになる。
【0050】
これにより、機械パッファ室43の機械的な圧縮により、熱的パッファ室42の昇圧を補うことができる。
【0051】
図4は、上記のように熱的パッファ室42内を充分に昇圧した後の電流零点以降における、本実施形態に係るガス遮断器内部での消弧性ガスの流れを説明するための図である。
上記の遮断動作初期の状態からさらにストロークが進行し、交流電流が一時的に零になる電流零点に達すると、アーク46は減衰する。そして、アーク46は残留アークプラズマ状態となり、アーク空間47における圧力及び温度が減少する。これにより、電流零点に達する以前に上昇した熱的パッファ室42の圧力が、アーク空間47の圧力を上回ることで差圧が逆転する。
【0052】
このとき、開口部45bは充分に開口し、熱的パッファ室42からフランジ22の開口部45aを経て、アーク空間47に向かって流路44を通過する流れ51gが生じる。さらに、この流れ51gは、流路44の開口部45bから対向アーク接触子12に向かって流れる51hと、操作ロッド21の中空部内を流れ、開口部45fに向かう流れる51iとに分かれる。
【0053】
この流れ51gを勢いよくアーク46に対して吹きつけ、さらに流れ51h、51iによって、アーク46は相乗的に冷却されて消弧され、電流遮断が達成される。
【0054】
なお、このとき操作ロッド21の開口部45fを通過した流れ51jは、充填ガス雰囲気空間へと流出する。
【0055】
図5に本実施形態に係るガス遮断器における熱的パッファ室42内の数値解析によって得られた圧力分布を示す。ここで、ガス遮断器の軸方向をXにとり、熱的パッファ室42の軸方向の長さをL、半径方向の長さを0.532*Lとする。このとき、前方側の壁面をX=0の位置とすると、後方側の壁面の位置はX=Lとなる。
【0056】
また、ここでは分割部材3は、熱的パッファ室42の前方側の壁面から、熱的パッファ室42の軸方向の長さの0.550倍の距離(X=0.550*L)の位置に設けるものとする。また、開口部45cの高さを0.082*Lとして数値解析を行った。
【0057】
破線で表される分割部材3なしの場合、圧力は前方側では高く、後方に移動していくのに伴い下降し、圧力勾配が負になっていることがわかる。それに対して、実線で表される分割部材ありの場合、圧力は破線に比べて前方側では低いが、後方に移動するのに伴い上昇し、圧力勾配が正となっていることがわかる。
【0058】
また、従空間41b内の圧力分布においても、分割部材3ありの場合、分割部材3なしの場合に比べて圧力勾配が大きくなっていることがわかる。
【0059】
これにより、分割部材3を配置することで、熱的パッファ室42とアーク空間47との間に大きな差圧を確保することができ、その結果、勢いよく消弧性ガスをアーク46に吹き付けることが可能となる。
【0060】
特に、軸方向に長いパッファ室を有するガス遮断器では、アークの熱エネルギーにより生じる流れがパッファ室内で拡散してしまう問題があったが、分割部材3を配置することにより、流れの拡散を防ぐことができ、有効である。
【0061】
なお、本実施形態のように開口部45dに設けられている逆止弁27及びばね29aを設けずに、熱的パッファ室42と機械パッファ室43とを開口部45aにより常時連通する構成とすることも可能である。
【0062】
(第二の実施形態)
以下、図6及び図7を参照して、第二の実施形態に係るガス遮断器の構成について説明する。ここで、図6は本実施形態に係るガス遮断器の構成を示す断面図、図7は本実施形態に係るガス遮断器のB-B断面を示す断面図である。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0063】
図6に示すように、本実施形態のガス遮断器では、熱的パッファ室42内の中心軸と水平な側面の内周側(内周面)に分割部材3を設置している。
【0064】
図7に示すように、分割部材3としては一体の環状平板を用いており、熱的パッファ室42の内周面を形成する操作ロッド21に溶接あるいは一体成型により形成される。そして、分割部材3と熱的パッファ室42の外周面を形成するシリンダ23の間に環状の開口部45cが設けられる。
【0065】
このとき、分割部材3としては、上記の環状平板に代えて、熱的パッファ室42の前方あるいは後方に曲率を有するような環状曲板を用いることも可能である。
【0066】
なお、分割部材3の形状としては、上記のように一体の環状平板あるいは環状曲板ではなく、複数に分割された分割部材3を、所定の間隔で上記側面の円周に沿って配置する構成であってもよい。
【0067】
本実施形態のガス遮断器によれば、第一の実施形態と同様に、アーク46の熱エネルギーにより生じた流れは、流路44を通り開口部45aから主空間41aに流入し、分割部材3に衝突することで、主空間41a内の圧力を上昇させることができる。
【0068】
その結果、アーク空間47との間に大きな差圧を確保することができるために、勢いよく消弧性ガスをアーク46に吹き付けることが可能になる。
【0069】
また、第一の実施形態のように分割部材3の配置位置を熱的パッファ室42の外周面に限定することなく、製造の際の自由度を確保することができる。
【0070】
(第二の実施形態の変形例)
以下、図8を参照して、第二の実施形態の本変形例に係るガス遮断器の構成について説明する。図8は本変形例に係るガス遮断器の分割部材3の形状を示す図である。
【0071】
第二の実施形態と異なるのは、熱的パッファ室42及び機械パッファ室43の間での消弧性ガスの流れをスムーズにするために、図8に示すように、環状平板あるいは環状曲板の分割部材3の内周部に4箇所の開口部45gを設けている点である。なお、この開口部45gは4箇所に限定されるものではない。
【0072】
このように、分割部材3の内周部に開口部45gを設けることで、熱的パッファ室42及び機械パッファ室43の間での流れをスムーズにすることができる。
【0073】
本変形例のガス遮断器によれば、アーク46の熱エネルギーにより生じた流れは、流路44を通り開口部45aから主空間41aに流入し、分割部材3に衝突することで、主空間41a内の圧力を上昇させることができる。
【0074】
その結果、アーク空間47との間に大きな差圧を確保することができるために、勢いよく消弧性ガスをアーク46に吹き付けることが可能になる。
【0075】
(第三の実施形態)
以下、図9を参照して、本実施形態に係るガス遮断器の構成について詳細に説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0076】
本実施形態のガス遮断器は、熱的パッファ室42と機械パッファ室43を隔壁26で仕切らずに、パッファ室48のみを備えている点において第一の実施形態、第二の実施形態及び第二の実施形態の変形例とは異なる。
【0077】
本実施形態のガス遮断器では、パッファ室48内の中心軸と水平な側面の外周側(外周面)に分割部材3を配置し、パッファ室48を主空間48aと従空間48bに分割する。このとき、第1の実施形態と同様に、アーク46の熱エネルギーにより生じた流れは、流路44を通り開口部45aから主空間48aに流入し、分割部材3に流れが衝突することで、主空間48a内の圧力を上昇させることができる。
【0078】
その結果、アーク空間47との間に大きな差圧を確保することができるために、消弧性ガスを勢いよくアーク46に吹き付けることが可能となる。
【0079】
さらに、分割部材3によりパッファ室48を主空間48aと従空間48bに仕切ることで、従空間48b内のアーク46の熱エネルギーによる昇圧をある程度抑制することができ、遮断動作を妨害する反力を抑えることができる。
【0080】
さらに、本実施形態のガス遮断器によれば、隔壁26、逆止弁27、ばね29aを備えていないために、より簡単な構成により電流の遮断性能を向上させることが可能になる。
【0081】
なお、本実施形態のガス遮断器の分割部材3としては、パッファ室48内の外周面に配置するものとして説明を行ったが、第二の実施形態で説明したように、パッファ室48内の中心軸と水平な側面の内周側(内周面)に設置することも可能である。
【0082】
また、分割部材3としては、一体の環状平板または環状曲板であってもよいし、複数に分割された分割部材3を、所定の間隔で上記側面の円周に沿って配置する構成であってもよい。
【0083】
(第四の実施形態)
以下、図10を参照して、本実施形態に係るガス遮断器の構成について詳細に説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0084】
本実施形態のガス遮断器は、熱的パッファ室42と機械パッファ室43を隔壁26で仕切らずに、パッファ室48のみを備えていることに加え、固定ピストン24を備えていない点において第一の実施形態、第二の実施形態、第二の実施形態の変形例及び第三の実施形態とは異なる。
【0085】
本実施形態のガス遮断器では、第二の実施形態と同様に、パッファ室49内の中心軸と水平な側面の外周側(外周面)に分割部材3を配置し、パッファ室49を主空間49aと従空間49bに分割する。このとき、第1、第2の実施形態と同様に、アーク46の熱エネルギーにより生じた流れは、流路44を通り開口部45aから主空間49aに流入し、分割部材3に流れが衝突することで、主空間49a内の圧力を上昇させ、アーク空間47との間に大きな差圧を確保することができるようになる。
【0086】
その結果、消弧性ガスを勢いよくアーク46に吹き付けることができるようになる。さらに、分割部材3によりパッファ室49を主空間49aと従空間49bに仕切ることで、従空間49b内のアーク46の熱エネルギーによる昇圧をある程度抑制することができ、遮断動作を妨害する反力を抑えることができる。
【0087】
さらに、本実施形態のガス遮断器によれば、第二の実施形態と同様に、より簡単な構成となることに加え、固定ピストン24を備えていないために、より簡単な機構により電流の遮断性能を向上させることが可能になる。
【0088】
なお、本実施形態のガス遮断器の分割部材3としては、パッファ室49内の外周面に配置するものとして説明を行ったが、第二の実施形態で説明したように、パッファ室49の中心軸と水平な側面の内周側(内周面)に設置することも可能である。
【0089】
また、分割部材3としては、一体の環状平板または環状曲板であってもよいし、複数に分割された分割部材3を、所定の間隔で上記側面の円周に沿って配置する構成であってもよい。
【0090】
以上説明した少なくとも1つの実施形態のガス遮断器によれば、熱的パッファ室内の流れが拡散している位置に、分割部材3を配置し、熱的パッファ室を主空間と従空間に分割することで、流れが分割部材3に衝突し、熱的パッファ室内の圧力を上昇させることができる。その結果、熱的パッファ室とアーク空間47との間に大きな差圧を確保することができ、勢いよく消弧性ガスをアーク46に吹き付けることができるようになるために、電流の充分な遮断性能を得ることが可能となる。
【0091】
これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1・・・可動接触子部
2・・・対向接触子部
3・・・分割部材
4・・・取付角度
11・・・可動アーク接触子
12・・・対向アーク接触子
13・・・絶縁ノズル
14・・・スロート部
15・・・可動通電接触子
21・・・操作ロッド
22・・・フランジ
23・・・シリンダ
24・・・固定ピストン
25・・・ピストン支持部
26・・・隔壁
27・・・逆止弁
28・・・放止弁
29a、29b・・・ばね
31・・・固定壁
41a、48a、49a・・・主空間
41b、48b、49b・・・従空間
42・・・熱的パッファ室
43・・・機械パッファ室
44・・・流路
45a、45b、45c、45d、45e、45f・・・開口部
46・・・アーク
47・・・アーク空間
48、49・・・パッファ室
50・・・密封容器
52・・・フランジ
53・・・開口部
54・・・対向通電接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された容器と、
前記容器内に設置され第1のアーク接触子を備える第1の接触子部と、
前記容器内に前記第1の接触子部に対向して配置され、前記第1のアーク接触子と接触または離間した状態を取りうる第2のアーク接触子を備える第2の接触子部とを備え、
前記第1の接触子部が、
前記第1のアーク接触子と前記第2のアーク接触子との間に発生するアークを吹き消すための前記消弧性ガスを蓄える空間を有するパッファ室と、
前記第1のアーク接触子の近傍に第1の開口と、前記パッファ室と連接する第2の開口とを有する消弧性ガスの流路と、
前記パッファ室の前記空間内に設けられ、前記流路からの前記消弧性ガスの流れを遮るように配置され、前記空間を第1の空間と第2の空間とに分割する面状の部材と、
を備えるガス遮断器。
【請求項2】
前記第1の接触子部は、一方向に延伸する中空のシリンダと、前記シリンダの内部で前記方向に延伸するロッドとを備え、
前記第1の空間は、前記シリンダの内面と、前記ロッドの外面と、前記流路の第2の開口が設けられる壁面と、前記部材とで囲まれ、
前記第2の空間は、前記シリンダの内面と、前記ロッドの外面と、前記壁面とは異なる他の壁面と、前記部材とで囲まれ、
前記第1の空間と、前記第2の空間とは第3の開口により連接される、請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記部材は、前記空間内の前記シリンダの内面に設けられ、前記シリンダの内面から前記ロッドの外面に向けて突出している、請求項2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記部材は、前記空間内の前記ロッドの外面に設けられ、前記ロッドの外面から前記シリンダの内面に向けて突出している、請求項2記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記第3の開口が、前記部材の前記ロッド側に設けられる、請求項4記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記部材は、平板あるいは曲板である、請求項1乃至5記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−138174(P2012−138174A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287802(P2010−287802)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】