説明

ガソリンベーパー回収システム

【課題】給油時に発生したガソリンベーパーを大気中に排出することなく回収することのできるガソリンベーパー回収システムを提供する。
【解決手段】給油所のガソリンベーパー回収システムに関する。給油時に車両の燃料タンクTからのガソリンベーパーGvを回収ガスGとして回収する回収手段と、回収手段が回収した回収ガスGが導入され、回収ガスG中に含まれる空気GaとガソリンベーパーGvとを分離する第1分離装置31と、給油所タンクLに連通し分離されたガソリンベーパーGvを給油所タンクLに戻す第1戻し管41と、通気管9に連通し分離した空気Gaを通気管9に給気する給気管43とを供えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給油所におけるガソリンベーパー回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給油所において、車両への給油時に車両の燃料タンクから漏れ出たガソリンベーパー(気化したガソリンのガス)が大気中に放出されると、防災面、環境汚染面および経済面で問題となる。
そこで、前記ガソリンベーパーの大気中への放出を防止するための装置が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2005−199223
【特許文献2】特開2005−177563
【特許文献3】特開2008−173545
【0003】
従来のガソリンベーパー回収システムの一例として、透過膜を用いたシステムについて簡単に説明する。
図2に示すように、給油ノズル20は注油管22およびガス回収ホース24を備えている。給油ノズル20には車両の燃料タンクTの注油口Taに密着ないし前記注油口Taを覆うカバー23が設けられている。
前記注油管22から車両の燃料タンクT内にガソリンOが注油されると、該タンクT内のガソリンベーパーGvに大気中の空気Gaおよび水蒸気(水分)Ghが混入したガスが、回収ガスGとしてガス回収ホース24から回収される。
【0004】
図4に示すように、前記回収ガスGは圧縮機30により吸引されて水分離装置103に送られ、脱水膜Fによって分離された水蒸気Ghを含む空気Gaが排出管91から大気中に排出される。前記脱水膜Fは、図5Aに示すように、空気Gaの一部と水蒸気Ghを透過する一方で、ガソリンベーパーGvを透過しない性質を有する膜からなる。
【0005】
図4に示すように、残りの回収ガスG(ガソリンベーパーGvおよび空気Ga)は凝縮機110に送られ、ガソリンベーパーGvが液化された液化ガソリンOが給油ノズル20に戻される。
【0006】
液化できなかったガソリンベーパーGvと空気Gaからなる回収ガスGはガソリンベーパー分離装置104に送られ、透過膜FvによりガソリンベーパーGvと空気Gaとに分離される。分離された空気Gaは空気連通管92および水分離装置103の下流室を介して、排出管91から大気中に排出される。
一方、透過膜Fvを透過したガソリンベーパーGvは、ポンプ111により、再び圧縮機30を介して水分離装置103に送られ、水分離装置103による水分離、前記凝縮機110によるガソリンベーパーGvの液化、前記ガソリンベーパー分離装置104による分離が繰り返し行われる。
【0007】
ここで、前記注油したガソリンOの体積に応じて給油所タンクL内に負圧が生じ、そのため、通気管9から空気(外気)Gaが給油所タンクL内に流入する。前記空気Gaの流入によって、給油所タンクL内のガソリンベーパーGvの濃度が低下して給油所タンクL内が未飽和状態となる。そのため、給油所タンクL内のガソリンOが揮発し、未飽和状態から安定飽和状態になるまでの間に、揮発したガソリンベーパーGvの体積と同量の飽和過程の空気混じりのガソリンベーパーGvが通気管9を介して大気中に放出される。
したがって、車両への給油後において、ガソリンベーパーGvが大気中に放出されるという事態が発生する。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、車両への給油において給油所タンク内で発生したガソリンベーパーが通気管を介して大気中に放出されるのを抑制し得るガソリンベーパー回収システムを提供することである。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のガソリンベーパー回収システムは、ガソリンを貯留する給油所タンクと、前記給油所タンクから前記ガソリンを汲み上げる給油装置と、前記汲み上げたガソリンを車両の燃料タンク内に吐出する給油ノズルと、前記給油所タンクを大気に連通させる通気管とを備えた給油所のガソリンベーパー回収システムであって、給油時に前記車両の燃料タンクからのガソリンベーパーを回収ガスとして回収する回収手段と、前記回収手段が回収した回収ガスが導入され、前記回収ガス中に含まれる空気とガソリンベーパーとを分離する第1分離装置と、前記給油所タンクに連通し前記分離されたガソリンベーパーを前記給油所タンクに戻す第1戻し管と、前記通気管に連通し前記分離した空気を前記通気管に給気する給気管とを備えている。
【0010】
本発明によれば、回収ガスから分離されたガソリンベーパーが給油所タンク内に戻されるのであるが、回収ガス中のガソリンベーパーは給油所タンクから汲み上げられて給油された液体ガソリンの体積よりは小さいが濃度が高いため、給油所タンク内の気相部が過飽和状態となる。前記過飽和状態からガソリンベーパーの一部が給油所タンク内で自然液化して安定飽和状態になる。なお、給油所タンク内が負圧になった場合には、通気管を通じて空気(外気)が給油所タンク内に流入して補充される。したがって、ガソリンベーパーが通気管を介して大気中に放出されることなく、ガソリンベーパーを回収することができる。
また、給油所タンク内の温度が季節によって変化した場合であっても、過飽和状態から安定飽和状態になる間に通気管から空気(外気)が流入されるので、1年を通じてガソリンベーパーが大気中に放出されるのを抑制し得る。
【0011】
なお、本発明における第1および第2分離装置の分離方法としては、空気とガソリンベーパーとを分離し得る方法であればよく、たとえば、透過膜方式など種々の公知の分離方式を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記第1分離装置は透過膜を備え、前記透過膜は前記回収ガス中のガソリンベーパーを透過し、かつ、空気を実質的に透過しない機能を有し、前記透過膜を透過したガソリンベーパーが前記戻し管から前記給油所タンクに戻され、前記透過膜を透過しなかった未透過ガスが前記給気管を介して前記通気管へ導かれるのが好ましい。
【0013】
透過膜を採用することにより、第1分離装置をコンパクト、かつ、安価に作成することができる。
なお、「透過膜」としては、たとえば、公知のVOC透過膜(揮発性有機化学物質透過膜)を採用することができる。前記透過膜としては、たとえば、公知の多孔性セラミックを用いたものであってもよいし、高分子系の分離膜を用いたものであってもよい。
【0014】
本発明において、前記未透過ガスが導入され、前記未透過ガス中のガソリンベーパーと空気とを分離する第2分離装置と、前記第2分離装置で分離されたガソリンベーパーを前記地下タンクへ戻す第2戻し管とを更に備え、前記第2分離装置で分離した前記空気が前記給気管を介して前記通気管に給気されるのが好ましい。
かかる態様によれば、第2分離装置および第2戻し管を設けることにより、確実に空気とガソリンベーパーとの分離を行うことができる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1および図2は実施例1を示す。
図1に示すように、給油所の地上には、1または複数の給油装置2が設置されており、給油所の地下には、ガソリンOを貯留する給油所タンク(地下タンク)Lが埋設されている。前記給油所タンクLは通気管9を介して地上の外気に連通している。
【0016】
給油装置2:
前記給油所タンクLは地下に埋設された給油管10を介して給油装置2に接続されている。給油装置2は、給油所タンクL内のガソリンOを図示しない給油ポンプにより汲み上げて車両に供給するものであり、給油装置2から汲み上げられたガソリンOの給油量をカウントする流量計(図示せず)を備えている。給油装置2は図2に示す給油ノズル20を備えている。
【0017】
回収手段:
給油ノズル20;
図1の前記給油ノズル20は、前記給油管10および給油ホース29を介して前記給油所タンクLに連通している。図2の前記給油ホース29には前記ガス回収ホース24が併設されており、また、給油ノズル20の先端に注油管22が設けられている。前記ガス回収ホース24は図1の回収管11に連通しており、この回収管11には圧縮機30が設けられている。
【0018】
前記注油管22を車両の燃料タンクT(図2)に差し込んでガソリンOが当該燃料タンクT(図2)に給油される。前記給油が行われる際に、給油装置2は前記流量計によりカウントされたガソリンOの給油量を算出する。
【0019】
図2の前記燃料タンクTにガソリンOが給油されると、該燃料タンクT内の液面が上昇すると共に、燃料タンクT内のガソリンベーパーGvが図1の前記圧縮機30により吸引される。燃料タンクT内のガソリンベーパーGvには図示しない車両のエアベントから空気Gaや水蒸気Ghが混入しており、更に、前記吸引に伴い、大気中の空気Gaおよび水蒸気Ghが混入する場合がある。これらの成分を含む回収ガスGは給油ノズル20の本体内およびガス回収ホース24内を通り、回収管11(図1)に導入される。
【0020】
なお、前記給油ノズル20としては、たとえば、特開平11−193099号に記載の給油ノズルを採用することができる。
【0021】
前記回収ガスGは、図1の圧縮機30によって、ガス回収ホース24および該圧縮機30の上流側の回収管11内を吸引されると共に、該圧縮機30によって圧縮されて第1分離装置31の第1室31aに導入される。
したがって、ガス回収ホース24、回収管11および圧縮機30は、給油時に車両の燃料タンクTから回収ガスGを回収する回収手段を構成している。
【0022】
第1分離装置31:
前記第1分離装置31は第1室31aと第2室31bとを仕切るVOC透過膜のような透過膜Fvを備えている。
ここで、炭化水素であるガソリンベーパーはゴム状高分子中への溶解度がN2 などに比較してかなり高い特性を示す。中でも透過性の大きなシリコンゴム膜はベーパー混合気体である回収ガスGからガソリン成分を透過分離できる。そこで、シリコンゴムの中空糸膜でVOC透過膜のモジュールを作成することができる。
図5Bに示すように、前記透過膜Fvは、前記回収ガスG中のガソリンベーパーGvを透過し、かつ、空気Gaを実質的に透過しない機能を有している。
【0023】
前記第1分離装置31によって分離されたガソリンベーパーGvは、給油所タンクLに連通する第1戻し管41によって給油所タンクLの気相に戻される。一方、分離された空気Gaは給気管43を通り通気管9に導かれる。
【0024】
前記透過膜Fvを透過した高濃度のガソリンベーパーGvが安定飽和状態の給油所タンクL内に戻されると、給油所タンクL内が一時的に過飽和状態になる。前記過飽和状態のガソリンベーパーGvの一部は液化し、給油所タンクLの気相が安定飽和状態になるのに伴い、気相の圧力が低下して空気(外気)Gaが通気管9を介して給油所タンク内に流入する。したがって、ガソリンベーパーGvが通気管9を介して大気中に放出されるのを抑制しつつ、該ガソリンベーパーGvを回収することができる。
【0025】
なお、透過膜Fvを透過しなかった未透過ガスGbにはガソリンベーパーGvが若干含まれているが、前述した通気管9から空気(外気)Gaが給油所タンクL内へ流入するのに伴い、未透過ガスGbが給気管43を介して前記通気管9を通り給油所タンクL内に流入する。したがって、ガソリンベーパーGvを含む未透過ガスGbが大気中に放出されるおそれがない。
【実施例2】
【0026】
図3は実施例2を示す。
図3に示すように、本実施例2のガソリンベーパー回収システムには、2個の分離装置31,32が直列に設けられている。
【0027】
第1分離装置31の透過膜Fvを透過しなかった未透過ガスGbは、空気GaおよびガソリンベーパーGvを含んでおり、第1分離装置31の第1室31aから連通管40を介して第2分離装置32の第1室32aに導入される。第2分離装置32には、その第1室32aと第2室32bとを仕切る透過膜Fvが設けられている。この透過膜Fvは前記未透過ガスGb中のガソリンベーパーGvと空気Gaとを分離するためのもので、前記第1分離装置31と同じVOC透過膜で構成されている。
第2分離装置32の第2室32bには、該第2分離装置32で分離されたガソリンベーパーGvを給油所タンクLへ戻す第2戻し管42が連通している。
【0028】
第1および第2分離装置31で分離されたガソリンベーパーGvは第1および第2戻し管41,42を介して給油所タンクLに戻される。
一方、第2分離装置32の透過膜Fvを透過しなかった未透過ガスGb、つまり、第2分離装置32で分離された空気Gaは、給気管43を介して通気管9に導入される。
【0029】
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
なお、第1および/または第2分離装置31,32の入口または出口に吸引装置を設けてもよい。また、圧縮機30や分離装置31,32は給油装置2の筐体内に収容されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、給油所での車両への給油時におけるガソリンベーパーの回収に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1にかかるガソリンベーパー回収システムを示す概略構成図である。
【図2】給油ノズルを示す一部破断した概略側面図である。
【図3】本発明の実施例2にかかるガソリンベーパー回収システムを示す概略構成図である。
【図4】従来例にかかるガソリンベーパー回収システムを示す概略構成図である。
【図5】図5Aは脱水膜の脱水方法を示す概念図、図5Bは透過膜の透過方法を示す概念図である。
【符号の説明】
【0033】
2:給油装置
9:通気管
11:回収管(回収手段の一部)
20:給油ノズル
30:圧縮機(回収手段の一部)
31:第1分離装置
41:第1戻し管
42:第2戻し管
43:給気管
Fv:透過膜
Ga:空気
Gb:未透過ガス
Gv:ガソリンベーパー
L:給油所タンク
O:ガソリン
T:車両の燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンを貯留する給油所タンクと、
前記給油所タンクから前記ガソリンを汲み上げる給油装置と、
前記汲み上げたガソリンを車両の燃料タンク内に吐出する給油ノズルと、
前記給油所タンクを大気に連通させる通気管とを備えた給油所のガソリンベーパー回収システムであって、
給油時に前記車両の燃料タンクからのガソリンベーパーを回収ガスとして回収する回収手段と、
前記回収手段が回収した回収ガスが導入され、前記回収ガス中に含まれる空気とガソリンベーパーとを分離する第1分離装置と、
前記給油所タンクに連通し前記分離されたガソリンベーパーを前記給油所タンクに戻す第1戻し管と、
前記通気管に連通し前記分離した空気を前記通気管に給気する給気管とを備えたガソリンベーパー回収システム。
【請求項2】
請求項1において、前記第1分離装置は透過膜を備え、前記透過膜は前記回収ガス中のガソリンベーパーを透過し、かつ、空気を実質的に透過しない機能を有し、
前記透過膜を透過したガソリンベーパーが前記戻し管から前記給油所タンクに戻され、
前記透過膜を透過しなかった未透過ガスが前記給気管を介して前記通気管へ導かれるガソリンベーパー回収システム。
【請求項3】
請求項2において、前記未透過ガスが導入され、前記未透過ガス中のガソリンベーパーと空気とを分離する第2分離装置と、前記第2分離装置で分離されたガソリンベーパーを前記地下タンクへ戻す第2戻し管とを更に備え、
前記第2分離装置で分離した前記空気が前記給気管を介して前記通気管に給気されるガソリンベーパー回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111405(P2010−111405A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283875(P2008−283875)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000154152)株式会社富永製作所 (44)
【Fターム(参考)】