説明

ガラクトマンナンポリマー及びホウ酸塩を含む眼科組成物

【課題】眼中への点眼時に増粘化してゲルを形成し、薬剤の送達や、潤滑のために有用な組成物を提供する。
【解決手段】ガラクトマンナン(但し、イナゴマメガムを除く)及びホウ酸塩化合物を含む局所眼科液状組成物であって、やや酸性から中性のpHを有し、ガラクトマンナン及びホウ酸塩化合物は、前記組成物を眼に局所的に投与したときに、pH及びイオン強度の上昇に伴い透き通ったゲルまたは部分ゲルを形成するために有効な濃度で組成物中に含まれている組成物、及び、0.05−5.0%(w/v)のホウ酸と製薬的に受容される塩類から選択されるホウ酸塩化合物;0.1−5%(w/v)の(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位とが(1−6)結合により結合した直鎖から構成されるガラクトマンナン多糖類;及び水を含み、薬剤を含まない眼科潤滑剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所眼科組成物におけるアジュバントの使用に関する。特に、本発明はガラクトマンナンポリマーをホウ酸塩と組み合わせて含む薬剤組成物と、該組成物を眼中への点眼時に増粘化してゲルを形成する液体として投与する、薬剤活性剤の患者への制御された投与方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
局所眼科組成物は液体、軟膏、ゲル及びインサートの形態を取っている。眼への薬剤活性剤の点眼用の液体組成物は容易な投与を可能にするが、投与中に液体の一部がしばしば、まばたきによって除去されたり、盲点(punctum)を下って鼻腔(nasal passage)に抜けたりしてしまうので、常に正確な投与量を与えるとは限らない。軟膏とゲルとは、通常液体よりも長く眼中に留まるので、より正確な投与を可能にするが、しばしば患者の視覚を妨げる。眼科インサートは、生腐食性のものも非生腐食性のものもいずれも利用可能であり、薬物の投与頻度を減ずることを可能にする。しかし、これらのインサートは複雑多岐な製造を必要とし、しばしば着用者にとって不快である。非生腐食性インサートに関する他の問題は、使用後にこれらを取り出す必要があることである。
【0003】
米国特許第4,136,173号(Pramoda等)と第4,136,177号(Lin等)とは、液体形で投与され、点眼時にゲル化する、キサンタンガムとイナゴマメガムとを含有する治療組成物の使用を開示している。これらの開示は、pH変化を含む液体からゲルへの転移の機構を記載している。pH感受性ゲル、例えばカルボマー、キサンタン、ゲラン及び上述したようなものは、それらの酸性基のpKa以下(典型的には約2〜5のpH)において製剤化する必要がある。しかし、低pHにおいて製剤化される組成物は、眼に炎症を起こさせる。米国特許第4,861,760号(Mazuel等)は、未ゲル化液体として眼に投与され、点眼時にイオン強度の変化のためにゲル化する、ゲランガムを含有する眼科組成物を開示している。これらの系は小さい架橋性分子を使用する必要はないが、その代わりに、イオン状態の変化中における自己架橋のためにゲル特性を与える。ホウ酸塩による多糖類の架橋を含むゲルは、油井掘削剤(well fracturing)流体としての使用することを目的として、米国特許第5,082,579号、第5,144,590号及び第5,160,643号に開示されている。これらの特許は、工業的油井掘削のためにホウ酸塩と多糖類とを使用することを記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のゲル化液体系の眼科使用は多くの欠点を有する。例えば、キサンタンガムのような天然高分子は、ソースがさまざまであること及び/又は加工中の製造制御に限界があることにより、ロット毎に変動があるという欠点を有する。このようなバラツキは、例えばゲル化特性のバラツキのような、化合物の性質に重大な好ましくない変化を惹起する。例えばポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックポリマー(“PEO/PPO”)のような熱ゲル化系は、ゲル形成のために水を失い、その結果、濁ったゲルを生じる。ポリビニルアルコール(“PVA”)−ホウ酸塩組み合わせゲル化系は低いpHで製剤化する必要があるので、点眼時に眼の刺激を惹起する可能性がある。他のゲル化系は、オートクレーブ処理に伴う粘度、再水和及び曇り点不安定性の問題を有する。
【0005】
ホウ酸塩によるポリビニルアルコール架橋は、米国特許第4,255,415号(Sukhbir等)に述べられている。これらの組成物は予め形成されたゲルであるので、分散し難い。WIPO公報第WO94/10976号(Goldenberg等)は、液体/ゲル転移を経る低pH PVA−ホウ酸塩投与系を開示している。しかし、この系は、ゲル化効果に限界があり、しかも用いるPVAの分子量によって特定濃度のPVAにおけるのみであるという欠点を有する。さらに、この系では架橋部位が限定されていないので、塩基の添加に際しての強度な局所ゲル化がその製造を限定し、したがって、おそらく、このような欠点を克服する目的で、ポリビニルピロリドンがこれらの組成物中に入れられているものと考えられている。本発明の新規なゲル化系は上記限定を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、眼への薬物の制御された投与を生じる、ガラクトマンナンポリマーとホウ酸塩化合物とを含む局所眼科組成物に関する。本発明は、pH及びイオン強度の上昇時にゲルを形成する、ガラクトマンナン多糖とホウ酸塩架橋剤とを含む新規なゲル化系に基づく。この新規な系では、ビスジオールボレートが多糖の糖部分のシスジオール基と架橋する。これらの組成物は液体又は部分ゲル化液体(以下、“液体”という)として投与され、眼中への点眼時に増粘化してゲルを形成する。或いは、該組成物は薬剤活性剤を含有しなくてもよく、潤滑のため又は例えばドライアイの治療において涙を補充するために眼に投与することができる。
【0007】
本発明のガラクトマンナン−ホウ酸塩ゲル化系は、他のゲル化系を凌駕する幾つかの利点を有する。1つの利点は、本発明の組成物が透明な溶液であり、生じるゲルも透き通っていることである。他の系が点眼時に不透明になるか又は濁るのに反して、本発明の透き通ったゲルは治療された眼により大きく明瞭な視覚を与える。本発明の組成物はやや酸性から中性のpHにおいて製剤化することができ、ゲル化を活性化するために軽度なpH変化(即ち、約0.5〜1.0pH単位)のみを必要とするに過ぎない。この特徴は、例えば約2.4乃至約4.4pH単位のpH変化を必要とする(即ち、約3〜5のpHによって製剤化される)他のpH感受性系によって生じうるような、酸性曝露に起因して生じうる眼の刺激を最小化するものである。ガラクトマンナンポリマーは熱安定性でもあり、オートクレーブ処理条件下でも曇り点を示さない。このようなものとして、例えばPVAとカルボマーポリマー系に存在するような、バッチスケールアップに起因する粘度と再水和問題は、本発明のガラクトマンナンポリマー含有組成物には存在しない。
【0008】
ガラクトマンナン多糖類は非イオン性であり、酸性から中性pHにおいてホウ酸塩と組み合わせても、本質的に非イオン性である。したがって、このポリマー系は、アニオン性、中性及びカチオン性薬物と完全に混和しうる。さらに、このポリマーの存在によって、防腐剤の保存効力は弱められない。通常、塩化ベンズアルコニウム又は他のカチオン系防腐剤の効力は、例えばゲラン及びカラジーナンのようなアニオン性ポリマーによって弱められるので、そのような系では過剰な防腐剤が必要かもしれない。防腐剤濃度の上昇は、組成物の刺激性と毒性とを高めることにもなりうる。
【0009】
本発明のガラクトマンナン−ホウ酸塩ゲル化系は、他の利点をも有する。ガラクトマンナンポリマーは比較的低い分子量を有するので、製造とスケールアップとが容易である。ガラクトマンナンポリマーは容易に入手可能でもあり、これらのポリマーが安全であると考えられるように、食品及びパーソナルケア製品に用いられてきた。さらに、本発明のガラクトマンナン−ホウ酸塩ゲル化組成物のゲル化特性の制御又は操作は、先行技術の系に比べて、比較的簡単である。例えばイオノマー(例えば、ゲラン及びカラジーナン)とサーモゲル(例えば、ポロキサミンとポロキサマー)のような他の単独ポリマー系のゲル化性質は、ポリマーの分子量と官能基数とに関係するのが典型的である。したがって、このような先行技術系のゲル化点又はゲル化度を変えるためには、労力集約的な活動であるベースポリマーを修飾することが必要である。これに反して、本発明の組成物では、単にホウ酸塩のガラクトマンナンに対する比率を操作することによって、組成物を目標とする要求に合わせてきめ細かく調整するために広範囲なゲル化特性が利用可能である(図1と2参照)。さらに、図3に示したように、本発明のガラクトマンナン(例えば、グァルガム)は、ガラクトマンナンの種類又はソースが変化しても、優れたゲル化の一貫性と再現性を示す。
【0010】
本発明の組成物には、さらに他の利点が存在する。本発明のガラクトマンナンポリマーとホウ酸塩架橋剤との組成物は液体であるので、調剤が容易である。米国特許第4,861,760号(Mazuel等)に開示されているように、例えばゲランガムのような、幾つかのゲル化系はチキソトロープ性であり、流動性と調合し易さとを高めるために振とうを必要とすると考えられる。本発明の組成物は、非常に高い濃度を必要とする、例えばPEO/PPOブロックコポリマーのような、幾つかのサーモゲル化系に比べて、比較的低濃度のガラクトマンナン(約0.2〜0.5%)を含有する。低濃度のゲル化ポリマーは、高濃度の系に比べて、潜在的毒性が低く、微生物汚染から保護が容易となる。
【0011】
本発明の方法は、本発明のガラクトマンナン−ホウ酸塩含有組成物の局所投与を包含する。
本発明はまた、オートクレーブ処理を包含するガラクトマンナンの滅菌方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、1種類以上のガラクトマンナン多糖(単数又は複数種類)と1種類以上のホウ酸塩化合物(単数又は複数種類)とを含む眼科組成物に関する。本発明はまた、ドライアイ、緑内障、眼高血圧、感染症、アレルギー及び炎症を含めた、種々な眼障害を治療するための、これらの組成物の使用方法にも関する。
【0013】
本発明に使用可能であるガラクトマンナンの種類としては、グァルガム、イナゴマメガム及びタラガムに由来するものが典型的である。本明細書で用いる限り、“ガラクトマンナン”なる用語は、上記天然ガム類若しくは主要な構成成分としてマンノース又はガラクトース部分、又は両方の基を含有する、類似の天然又は合成ガム類に由来する多糖類を意味する。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位とが(1−6)結合により結合した直鎖から構成される。この好ましいガラクトマンナンについては、D−ガラクトースのD−マンノースに対する比率は変動するが、一般には、約1:2から1:4までである。約1:2のD−ガラクトース:D−マンノースの比率を有するガラクトマンナンが最も好ましい。また、該多糖類の化学修飾変種も“ガラクトマンナン”の定義中に包含される。例えば、本発明のガラクトマンナンに対してヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換(substitution)を行ってもよい。軟質ゲルが望ましい場合には、アルコキシ及びアルキル(C1−C6)基を含有する変種等の、ガラクトマンナンの非イオン変種が特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非シス−ヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。本発明のガラクトマンナンの非イオン置換の例は、約0.4のモル置換を有するヒドロキシプロピルグアルである。ガラクトマンナンに対してアニオン置換を行うこともできる。強度な反応性ゲルが望ましい場合には、アニオン置換が好ましい。
【0014】
本発明の組成物に使用できるホウ酸塩化合物は、ホウ酸と、例えばホウ酸ナトリウム(ホウ砂)及びホウ酸カリウムのような、製薬的に受容される他の塩類である。本明細書で用いる限り、“ホウ酸塩”なる用語は、製薬的に適する全ての形態のホウ酸塩類を意味する。ホウ酸塩類は、生理的pHにおける良好な緩衝能力と、周知の安全性と、広範囲な薬物及び防腐剤に対する適合性とのために、眼科製剤における共通の賦形剤である。ホウ酸塩類は固有の制菌性及び殺菌性をも有するので、組成物の保存を助成する。
【0015】
本発明の組成物は、約0.1乃至5%重量/体積(“w/v”)量の1種類以上のガラクトマンナン(単数又は複数種類)と、約0.05乃至5%(w/v)量のホウ酸塩とを含む。好ましくは、該組成物は、0.2乃至2.0%(w/v)のガラクトマンナンと、0.1乃至2.0%(w/v)のホウ酸塩化合物とを含有する。最も好ましくは、該組成物は、0.3乃至0.8%(w/v)のガラクトマンナンと0.25乃至1.0%(w/v)のホウ酸塩化合物とを含有する。これらの具体的な量は、具体的な所望のゲル化特性によって変化する。一般に、ゲル活性時に(即ち、投与後に)組成物の適当な粘度に達するために、ホウ酸塩又はガラクトマンナンの濃度を操作することができる。図1と2に示すように、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度のいずれかを操作すると、所与のpHにおいていっそう強い、又はいっそう弱いゲル化が生ずる。強度なゲル化組成物が所望の場合には、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を高めればよい。例えば部分ゲル化組成物のような、弱ゲル化組成物が所望の場合には、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を低減すればよい。例えば塩類、防腐剤、キレート化剤等のような、組成物中の付加的成分の性質及び濃度のような他の要素も、本発明の組成物のゲル化特性に影響を及ぼす可能性がある。一般的に、本発明の好ましい未ゲル化組成物、即ち、眼によってまだゲル−活性化されていない組成物は約5乃至1000cpsの粘度を有する。一般に、本発明の好ましい、ゲル化した組成物、すなわち、眼によってゲル−活性化された組成物は、約50乃至50,000cpsの粘度を有する。
【0016】
本発明のガラクトマンナンは、非常に多くのソースから得ることができる。このようなソースは、以下で詳述するように、グァルガム、イナゴマメガム及びタラガムを包含する。さらに、ガラクトマンナンは伝統的な合成経路によっても得られ、又は天然に産するガラクトマンナンの化学修飾によっても得られる。
【0017】
グァルガムは、Cyamopisis tetragonolobus(L.)Taubの粉砕した内胚乳(endosperm)である。この水溶性画分(85%)は“グアラン”(分子量220,000)と呼称され、(1−4)−β−Dマンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位とが(1−6)結合により結合された直鎖からなる。グアラン中のD−ガラクトースのD−マンノースに対する比率は約1:2である。このガムは何世紀にもわたってアジアで栽培されており、その増粘性のために、主として食品とパーソナルケア製品中に使用されている。これは澱粉の5乃至8倍の増粘力を示す。その誘導体、例えばヒドロキシプロピル又はヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド置換体を含有するようなものは、10年以上にわたって市販されている。グァルガムは例えばRhone−Polulenc(Cranbury,New Jersey)、Hercules,Inc.(Wilmington,Delaware)及びTIC Gum.Inc.(Belcamp.Maryland)から入手することができる。
【0018】
イナゴマメガム又はキャロブマメガム(carob bean gum)は、キャロブツリー(carob tree,ceratonia siliqua)の種子の精製内胚乳である。この種類のガムのガラクトースのマンノースに対する比率は約1:4である。キャロブツリーの栽培は古く、当該技術分野では周知である。この種類のガムは市販されており、TIC Gum.Inc.(Bekamp.Maryland)及びRhone−Polulenc(Cranbury,New Jersey)、から入手することができる。
【0019】
タラガムはタラツリー(tara tree)の精製種子ガムに由来する。ガラクトースのマンノースに対する比率は約1:3である。タラガムは合衆国では商業生産されていないが、このガムは合衆国外の種々なソースから入手可能である。
【0020】
架橋度を限定して、より軟質なゲル特性を与えるために、例えばヒドロキシプロピルグァルのような化学修飾ガラクトマンナンを用いることができる。種々な置換度の修飾ガラクトマンナンは、Rhone−Poulenc(Cranbury,New Jersey)から商業的に入手可能である。低いモル置換(即ち、0.6未満)を有するヒドロキシプロピルグァルが特に好ましい。
【0021】
本発明の組成物に他の成分を添加することができる。このような成分は、一般的には、張度調節剤(tonicity adjusting agent)、キレート化剤、活性薬剤(単数又は複数種類)、可溶化剤、防腐剤、pH調節剤及びキャリヤーを包含する。例えばポリエチレングリコール及びグリセロールのような、他のポリマー又はモノマー作用剤も特殊な加工のために加えることができる、本発明の組成物に有用な張度剤は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムのような塩類を包含し;非イオン張度剤は、プロピレングリコール及びグリセロールを包含し;キレート化剤はEDTAとその塩類を包含し;可溶化剤はCremophor EL(登録商標)及びTween 80を包含し;他のキャリヤーはアンバーライト(登録商標)IRP−69を包含し;pH調節剤は塩化水素酸、Tris、トリエタノールアミン及び水酸化ナトリウムを包含し;適当な防腐剤は塩化ベンズアルコニウム、ポリクォーターニウム−1及びポリヘキサメチレンビグアニドを包含することができる。上記列挙の例は例示のためのものであり、網羅的であることは意図されていない。上記目的に有用な他の作用剤の例は眼科処方の分野では周知であり、本発明によっても意図されるものである。
【0022】
本発明のゲル化系と先行技術ゲル化系との組み合わせも、本発明の意図するところである。このような系は、例えばキサンタン、ゲラン、カラジーナン及びカルボマーのようなイオノマーや、例えばエチルヒドロキシエチルセルロースのようなサーモゲルを含むものを包含することができる。
【0023】
一般に、本発明の組成物は、眼に種々な薬剤活性剤を投与するために用いられる。このような薬剤は、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤を包含することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
本発明の組成物中に含めて、本発明の方法によって投与することができる薬剤活性剤の例は、例えばベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤及びプロスタグランジンのような緑内障薬;ドーパミン作動性アンタゴニスト;例えばパラ−アミノクロニジン(アプラクロニジン)のような術後抗高血圧剤;例えばシプロフロキサシン及びトブラマイシンのような抗感染剤;例えばナプロキセン、ジクロフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール及びデキサメタゾンのようなステロイド系や非ステロイド系の抗炎症剤;タンパク質;例えば上皮増殖因子のような成長因子;及び抗アレルギー剤を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
本発明の組成物を薬剤活性剤を含めずに製剤化することも任意である。このような組成物は眼を潤滑するために、又は例えばドライアイを治療するための人工涙溶液を提供するために用いることができる。一般に、人工涙溶液は、上述したような、張度剤、ポリマー及び防腐剤を含有する。人工涙溶液中に含有されるガラクトマンナンとホウ酸塩との量は上述したように変化するが、一般には、それぞれ、0.1乃至3.0%(w/v)と0.1〜2.0%(w/v)の範囲内である。
【0026】
一般に、本発明の組成物は二部式で製剤化される。ガラクトマンナンポリマーを水和し、滅菌する(パートI)。次に、この組成物に包含すべき薬剤及び/又は他の成分を水中に溶解して、滅菌濾過する(パートII)。次に、パートIとパートIIとを一緒にして、得られた混合物のpHを目標レベルに、一般に6.0〜7.0に調節する。含めるべき薬剤(単数又は複数種類)が低水溶性である場合には、これらを最後に加えるのが一般的である。薬剤(単数又は複数種類)を別に滅菌してから、その薬剤と他の成分とを一緒に滅菌添加することが好ましい場合もある。
【0027】
ガラクトマンナン多糖の滅菌はオートクレーブ処理によって達成することができる。ポリマーはオートクレーブ処理の厳しい条件下では解重合を受けるので、非水性オートクレーブ処理が一般に好ましい。これは、このポリマーを、例えば低分子量ポリエチレングリコールのような適当な有機液体中に分散させることによって達成することができる。得られた懸濁液をオートクレーブ処理して、このポリマーを滅菌することができる。次に、滅菌済みポリマーを、他の成分との混合に先立ち、無菌状態で水和する。
次の実施例は本発明のガラクトマンナン多糖の新規な滅菌方法を説明する。
【0028】
実施例1
予め、配合容器(20Lステンレス鋼製加圧缶)、0.2ミクロン滅菌用フイルター、受器(20L耐酸びん)、4.5ミクロン研磨フイルター、0.2ミクロン滅菌用フイルター、ベントフイルター及び充填装置をオートクレーブ処理により滅菌しておく。
【0029】
オーバーヘッド撹拌機を備えたビーカー中に、ポリエチレングリコール400(200g)を秤量して加える。緩やかに撹拌しながら、ヒドロキシプロピル(“HP”)グァルガム(100g)を秤量して分散する。完全に均質化するまで混合する。磁気撹拌バーを備えた500mlのSchott瓶中に、120.0gのHPグァルガム/PEG−400分散液を正確に秤量して入れる。オートクレーブ処理による滅菌の準備をする。第2の同じ500mlのSchott瓶中に、120.0gの同じ分散液を正確に秤量する。オートクレーブ処理サイクル中のダミーとして用いる準備をする。両瓶中に1.3mlの精製水(実証研究中に上記瓶の接種に用いた微生物懸濁液の量と体積で等しい量)を加える。磁気撹拌プレートを用いて両瓶を10分間撹拌する。125℃における80分間の実証済みの時間−温度サイクルを用いて、これらHPグァルガム/PEG−400分散液をオートクレーブ処理する。
【0030】
最終製剤中に包含されるべき成分の他のセットを、当該技術分野で周知の種々な方法により別途に調製してもよい。生成した混合物は、HPグァルガム/PEG−400試料と一緒に、滅菌濾過によって配合容器中に加えることができる。
【0031】
この滅菌済みHPグァルガム/PEG−400分散液は、予め滅菌しておいた配合容器中に無菌状態で移入する。滅菌精製水で瓶内容をすすぎ洗いする。配合容器内容を、滅菌室温精製水を用いて、正確に理論バッチ重量(19.0リットル又は19.06Kg)の95%にする。配合容器中で適度な速度で最短でも2時間混合しながら、HPグァルガム/PEGスラリーを水和させる。配合容器内容を4.5ミクロンの予備滅菌した研磨フイルターに通して、撹拌バーを備えた予備滅菌受器に移入する。フイルターハウジング及びフイルターカートリッジ中に保持される生成物のために、内容物の若干の損失が生じる。(配合容器として加圧缶を使用する場合に、清澄濾過のために推奨される圧力は約30psi.である)。pHを点検し、必要に応じて1N−NaOH又は1N−HClを用いて6.9乃至7.1(目標7.0)に調整する。所望のpHに達するには、最終バッチ重量の1リットル当たり1N−NaOH約3〜4mlが必要である。滅菌精製水を用いて充分な最終バッチ重量にする。最低30分間低速度で混合する。
【0032】
次の実施例は本発明の好ましい眼科組成物をさらに説明する。
【0033】
実施例2
下記は、チモロールを含有する局所眼科組成物の例である。

化合物 量%(w/v)
チモロールマレエート 0.68*
ホウ酸 0.5
グァルガム 0.5
PEG−400 1.0
塩化ナトリウム 0.5
塩化ベンズアルコニウム 0.01
水酸化ナトリウム/塩酸 pH6.5とするのに充分な量(QS)
精製水 充分量(QS)
* 0.68%チモロールマレエートは0.5%チモロールに相当する。
【0034】
上記製剤を製造するには、先ずパートIとパートIIとの混合物を形成する。グァルガムを最初にPEG−400中に分散させて、パートIとしてオートクレーブ処理する。他の成分を水の容積の90%中に溶解し、パートIIとして受器中に滅菌濾過する。次いでパートIを無菌状態でパートII中に加える。次に、無菌状態でpHを調節して、バッチを最終重量(体積)にする。次いで一緒にした溶液を1.0μm研磨フイルターに無菌状態で通して、粒状物を除く。
【0035】
実施例3
下記は、チモロールを含有する局所眼科組成物の他の例である。

化合物 量%(w/v)
チモロールマレエート 0.34*
ホウ酸 0.5
グァルガム 0.25
グリセロール 1.0
塩化ベンズアルコニウム 0.005
水酸化ナトリウム/塩酸 pH7.0とするのに充分な量(QS)
精製水 充分量(QS)
* 0.34%チモロールマレエートは0.25%チモロールに相当する。
上記組成物は実施例2組成物と同様な方法で製造することができる。
【0036】
実施例4
下記は人工涙溶液の例である。

化合物 量%(w/v)
ホウ酸 0.5
ヒドロキシプロピルグァルガム 0.3
プロピレングリコール 1.4
ポリクォーターニウム−1 0.0005
水酸化ナトリウム/塩酸 pH6.8とするのに充分な量(QS)
精製水 充分量(QS)
上記組成物は、実施例2組成物と同様な方法で製造することができる。
【0037】
本発明は、その広い態様において、上記において示し、述べた特定の細部には限定されない。本発明の原理から逸脱することなく、かつ本発明の利点を犠牲にすることなく、添付の特許請求の範囲内で、上記の細部から改変を行うことが可能である。
【0038】
本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1.1種類以上のガラクトマンナン及び1種類以上のホウ酸塩を含む局所眼科組成物であって、上記ガラクトマンナン及び上記ホウ酸塩化合物が上記組成物を眼に投与したときにゲル又は部分ゲルを生成するために有効な濃度で上記組成物中に含まれている、上記組成物。
2.1記載の組成物であって、前記ガラクトマンナン濃度が約0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物濃度が約0.05乃至5.0%(w/v)である、上記組成物。
3.1記載の組成物であって、前記ガラクトマンナンが、グァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学修飾誘導体から成る群から選択される、上記組成物。
4.1記載の組成物であって、前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記組成物。
5.1記載の組成物であって、前記ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグアルであり、前記ホウ酸塩化合物がホウ酸である、上記組成物。
6.1記載の組成物であって、前記ガラクトマンナンがグァルガムであり、前記ホウ酸塩化合物がホウ酸である、上記組成物。
7.5記載の組成物であって、上記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、上記組成物。
8.6記載の組成物であって、上記組成物がグァルガムを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、上記組成物。
9.1記載の組成物であって、更に1種類以上の薬剤活性剤を含む、上記組成物。
10.9記載の組成物であって、前記ガラクトマンナンの濃度が約0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が約0.05乃至5.0%(w/v)である、上記組成物。
11.9記載の組成物であって、前記薬剤活性剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、上記組成物。
12.9記載の組成物であって、前記薬剤活性剤(単数又は複数種類)が、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、プロスタグランジン;術後抗高血圧剤、アプラクロニジン;シプロフロキサシン、トブラマイシン;ナプロキセン、ジクロフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール、デキサメタゾン;タンパク質及び成長因子から成る群から選択される、上記組成物。
13.眼に薬剤を投与する方法であって、1種類以上の薬剤活性剤、1種類以上のガラクトマンナン及び1種類以上のホウ酸塩化合物を含む組成物を眼に局所投与すること(上記ガラクトマンナン及び上記ホウ酸塩化合物は、上記組成物中に、上記組成物を眼に投与したときにゲル又は部分ゲルを生成するために有効な濃度で含まれている)を含む、上記方法。
14.13記載の方法であって、前記組成物が前記ガラクトマンナンを約0.1乃至5%(w/v)の濃度で、前記ホウ酸塩化合物を約0.05乃至5%(w/v)の濃度で含む、上記方法。
15.13記載の方法であって、前記ガラクトマンナンが、グァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学修飾誘導体から成る群から選択される、上記方法。
16.13記載の方法であって、前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記方法。
17.13記載の方法であって、前記ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグアルであり、前記ホウ酸塩化合物がホウ酸である、上記方法。
18.13記載の方法であって、前記ガラクトマンナンがグァルガムであり、前記ホウ酸塩化合物がホウ酸である、上記方法。
19.17記載の方法であって、前記組成物がヒドロキシピロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、上記方法。
20.18記載の方法であって、前記組成物がグァルガムを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、上記方法。
21.13記載の方法であって、前記薬剤活性剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、上記方法。
22.13記載の方法であって、前記薬剤活性剤が、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、プロスタグランジン;術後抗高血圧剤、アプラクロニジン;シプロフロキサシン、トブラマイシン;ナプロキセン、ジクロフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール、デキサメタゾン;タンパク質及び成長因子から成る群から選択される、上記方法。
【0039】
また、本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1.液体状の局所眼科組成物であって、前記液体組成物はガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含み、前記液体組成物の1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記液体組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する局所眼科組成物。
2.前記組成物がやや酸性から中性のpHを有する1の局所眼科組成物。
3.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05乃至5.0%(w/v)である、1または2に記載の局所眼科組成物。
4.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、1〜3のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
5.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、1〜4のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
6.前記組成物がヒドロキシプロピルグァルを含む1〜5のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
7.前記ヒドロキシプロピルグァルが0.6よりも小さいモル置換を有する6に記載の局所眼科組成物。
8.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む1〜7のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
9.前記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む1〜8のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
10.更に1種類以上の薬理的に活性な剤を含む1〜9のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
11.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、10に記載の局所眼科組成物。
12.前記組成物のpHが6.0〜7.0である、1〜11のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
13.前記組成物が眼科潤滑剤または人口涙溶液としての使用に適している1〜12のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
14.ガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含む殺菌眼科薬剤組成物。
15.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05乃至5.0%(w/v)である、14に記載の殺菌眼科組成物。
16.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、14または15に記載の殺菌眼科組成物。
17.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、14〜16のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
18.ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルを含む14〜17のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
19.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む14〜18のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
20.前記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、14〜19のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
21.前記組成物が液体の形態であり、その1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する14〜20のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
22.組成物がやや酸性から中性のpHを有する21に記載の殺菌眼科組成物。
23.前記組成物のpHが6.0〜7.0である22に記載の殺菌眼科組成物。
24.更に1種類以上の薬理的に活性な剤を含む14〜23のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
25.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される24に記載の殺菌眼科組成物。
26.前記組成物が眼科潤滑剤または人口涙溶液としての使用に適している14〜25のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
27.ガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含み、眼科潤滑剤または人口涙液として有用な殺菌眼科薬剤組成物。
28.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至3.0%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.1乃至2.0%(w/v)である、27に記載の殺菌眼科組成物。
29.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、27または28に記載の殺菌眼科組成物。
30.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、27〜29のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
31.前記組成物がヒドロキシプロピルグァルを含む27〜30のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
32.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む27〜31のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
33.ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルを含み、ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む27〜32のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
34.前記組成物が液体の形態であり、その1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する27〜33のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
35.組成物がやや酸性から中性のpHを有する27〜34のいずれか一項に記載の殺菌眼科組成物。
36.前記組成物のpHが6〜7である、35に記載の殺菌眼科組成物。
【0040】
また、本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1.液体状の局所眼科組成物であって、前記液体組成物はガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含み、前記液体組成物の1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記液体組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する局所眼科組成物。
2.前記組成物がやや酸性から中性のpHを有する1の局所眼科組成物。
3.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05乃至5.0%(w/v)である、1または2に記載の局所眼科組成物。
4.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、1〜3のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
5.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、1〜4のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
6.前記組成物がヒドロキシプロピルグァルを含む1〜5のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
7.前記ヒドロキシプロピルグァルが0.6よりも小さいモル置換を有する6に記載の局所眼科組成物。
8.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む1〜7のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
9.前記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む1〜8のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
10.更に1種類以上の薬理的に活性な剤を含む1〜9のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
11.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、10に記載の局所眼科組成物。
12.薬理的に活性な剤を含まない1〜9のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
13.前記組成物のpHが6.0〜7.0である、1〜12のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
14.前記組成物が眼科潤滑剤または人口涙溶液としての使用に適している1〜13のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
15.滅菌されている、1〜14のいずれか一項に記載の局所眼科組成物。
16.ガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物、水及び薬理的に活性な剤を含む眼科薬剤組成物。
17.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05乃至5.0%(w/v)である、16に記載の眼科組成物。
18.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、16または17に記載の眼科組成物。
19.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、16〜18のいずれか一項に記載の眼科組成物。
20.ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルを含む16〜19のいずれか一項に記載の眼科組成物。
21.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む16〜20のいずれか一項に記載の眼科組成物。
22.前記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2乃至2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1乃至2.0%(w/v)の濃度で含む、16〜21のいずれか一項に記載の眼科組成物。
23.前記組成物が液体の形態であり、その1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する16〜22のいずれか一項に記載の眼科組成物。
24.組成物がやや酸性から中性のpHを有する23に記載の眼科組成物。
25.前記組成物のpHが6.0〜7.0である24に記載の眼科組成物。
26.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される16〜25のいずれか一項に記載の眼科組成物。
27.前記組成物が眼科潤滑剤または人口涙溶液としての使用に適している16〜26のいずれか一項に記載の眼科組成物。
28.滅菌されている、16〜27のいずれか一項に記載の眼科組成物。
29.ガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含み、眼科潤滑剤または人口涙液として有用な眼科組成物。
30.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1乃至3.0%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.1乃至2.0%(w/v)である、29に記載の眼科組成物。
31.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、29または30に記載の眼科組成物。
32.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、29〜31のいずれか一項に記載の眼科組成物。
33.薬理的に活性な剤を含まない29〜32のいずれか一項に記載の眼科組成物。
34.前記組成物がヒドロキシプロピルグァルを含む29〜33のいずれか一項に記載の眼科組成物。
35.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む29〜34のいずれか一項に記載の眼科組成物。
36.ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルを含み、ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む29〜35のいずれか一項に記載の眼科組成物。
37.前記組成物が液体の形態であり、その1滴またはそれ以上を眼に局所的に投与したときに前記組成物が増粘化してゲルまたは部分ゲルを形成するようなpHを有する29〜36のいずれか一項に記載の眼科組成物。
38.組成物がやや酸性から中性のpHを有する29〜37のいずれか一項に記載の眼科組成物。
39.前記組成物のpHが6〜7である、38に記載の眼科組成物。
40.滅菌されている29〜39のいずれか一項に記載の眼科組成物。
【0041】
また本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1.1種以上のガラクトマンナン及び1種以上のホウ酸塩化合物を含む局所眼科液状組成物であって、やや酸性から中性のpHを有し、ガラクトマンナン及びホウ酸塩化合物は、前記組成物を眼に局所的に投与したときに、pH及びイオン強度の上昇に伴い透き通ったゲルまたは部分ゲルを形成するために有効な濃度で組成物中に含まれている、前記組成物。
2.前記組成物のpHが6.0−7.0である、1に記載の組成物。
3.前記ガラクトマンナンの濃度が0.1−5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05−5.0%(w/v)である、1または2に記載の組成物。
4.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、1−3のいずれか一項に記載の組成物。
5.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、1−4のいずれか一項に記載の組成物。
6.前記ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルまたはグァルであり、ホウ酸化合物がホウ酸である1−5のいずれか一項に記載の組成物。
7.前記組成物がヒドロキシプロピルグァルまたはグァルを0.2−2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1−2.0%(w/v)の濃度で含む6に記載の組成物。
8.更に1種類以上の薬理的に活性な剤を含む1−7のいずれか一項に記載の組成物。
9.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、8に記載の組成物。
10.前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、プロスタグランジン;術後抗高血圧剤、アプラクロニジン;シプロフロキサシン、トブラマイシン;ナプロキセン、ジクロフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール、デキサメタゾン;タンパク質及び成長因子から成る群から選択される、9に記載の組成物。
11.ドライアイ、緑内障、眼高血圧、眼の感染症、アレルギーまたは炎症を治療するための薬剤における、1−10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
12.ドライアイ、緑内障、眼高血圧、眼の感染症、アレルギーまたは炎症を治療するための薬剤を製造する方法における、1−10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
13.前記組成物が眼科潤滑剤または人工涙溶液としての使用に適している1−8のいずれか一項に記載の組成物。
14.ガラクトマンナン、ホウ酸塩化合物及び水を含む人工涙溶液であり、前記ガラクトマンナンの濃度が0.1−5.0%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05−5.0%(w/v)であり、薬剤を含まない、人工涙溶液。
15.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、14に記載の人工涙液。
16.前記ガラクトマンナンがグァルガム、イナゴマメガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、14または15に記載の人工涙液。
17.前記ガラクトマンナンが、グァルガム及びその誘導体から成る群から選択される、14−16のいずれか一項に記載の人工涙液。
18.ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルである14−17のいずれか一項に記載の人工涙液。
19.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む14−18のいずれか一項に記載の人工涙液。
20.ガラクトマンナンを0.1−3.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸化合物を0.1−2.0%(w/v)の濃度で含む、14−19のいずれか一項に記載の人工涙液。
21.やや酸性から中性のpHを有する14−20のいずれか一項に記載の人工涙液。
22.pHが6.0−7.0である、14−21のいずれか一項に記載の人工涙液。
23.グァルガム及びその誘導体から成る群から選択されるガラクトマンナンを0.1−5.0%(w/v)、ホウ酸塩化合物を0.05−5.0%(w/v)、及び水を含む、滅菌眼科組成物。
24.前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、23の滅菌眼科薬剤組成物。
25.前記ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルを含む23または24に記載の滅菌眼科薬剤組成物。
26.前記ホウ酸塩化合物がホウ酸を含む23−25のいずれか一項に記載の滅菌眼科薬剤組成物。
27.前記組成物がヒドロキシプロピルグアルを0.2−2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1−2.0%(w/v)の濃度で含む23−26のいずれか一項に記載の滅菌眼科薬剤組成物。
28.組成物がやや酸性から中性のpHを有する23−27のいずれか一項に記載の滅菌眼科組成物。
29.さらに薬理的に活性な剤を含む23−28のいずれか1項に記載の殺菌眼科組成物。
30.眼科潤滑剤または人口涙溶液としての使用に適している23−29のいずれか一項に記載の滅菌眼科組成物。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の組成物は局所眼科用組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ホウ酸塩存在下の、pHとの相関における、各種濃度のグァルガムのゲル化特性を説明するグラフである。
【図2】グァルガム存在下の、pHとの相関における、各種濃度のホウ酸塩のゲル化特性を説明するグラフである。
【図3】グァルガムの3つの異なる種類/ソースのゲル化特性の均一性を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のガラクトマンナン(但し、イナゴマメガムを除く)及び1種以上のホウ酸塩化合物を含む局所眼科液状組成物であって、やや酸性から中性のpHを有し、ガラクトマンナン及びホウ酸塩化合物は、前記組成物を眼に局所的に投与したときに、pH及びイオン強度の上昇に伴い透き通ったゲルまたは部分ゲルを形成するために有効な濃度で組成物中に含まれている、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物のpHが6.0−7.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ガラクトマンナンの濃度が0.1−5%(w/v)であり、前記ホウ酸塩化合物の濃度が0.05−5.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガラクトマンナンがグァルガム、タラガム及びこれらの化学的に修飾された誘導体から成る群から選択される、請求項1−3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ホウ酸塩化合物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1−4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガラクトマンナンがヒドロキシプロピルグァルまたはグァルであり、ホウ酸化合物がホウ酸である請求項1−5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物がヒドロキシプロピルグァルまたはグァルを0.2−2.0%(w/v)の濃度で、ホウ酸を0.1−2.0%(w/v)の濃度で含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に1種類以上の薬理的に活性な剤を含む請求項1−7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、抗高血圧剤、抗緑内障剤、神経保護剤、抗アレルギー剤、粘液分泌促進剤、止血剤、抗菌剤、疼痛軽減剤及び抗炎症剤からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬理的に活性な剤(単数又は複数種類)が、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、プロスタグランジン;術後抗高血圧剤、アプラクロニジン;シプロフロキサシン、トブラマイシン;ナプロキセン、ジクロフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール、デキサメタゾン;タンパク質及び成長因子から成る群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ドライアイ、緑内障、眼高血圧、眼の感染症、アレルギーまたは炎症を治療するための薬剤における、請求項1−10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
ドライアイ、緑内障、眼高血圧、眼の感染症、アレルギーまたは炎症を治療するための薬剤を製造する方法における、請求項1−10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記組成物が眼科潤滑剤または人工涙溶液としての使用に適している請求項1−8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
0.05−5.0%(w/v)のホウ酸と製薬的に受容される塩類から選択される1種以上のホウ酸塩化合物;
0.1−5%(w/v)の(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位とが(1−6)結合により結合した直鎖から構成される1種以上のガラクトマンナン多糖類;及び
水を含み、薬理的に活性な剤を含まない眼科潤滑剤。
【請求項15】
ガラクトマンナン多糖類における、D−ガラクトースのD−マンノースに対する比率が1:2から1:4までである、請求項14に記載の眼科潤滑剤。
【請求項16】
D−ガラクトースのD−マンノースに対する比率が1:2である、請求項15に記載の眼科潤滑剤。
【請求項17】
0.1−2.0%(w/v)の1種以上のホウ酸塩化合物;0.1−3.0%(w/v)の1種以上のガラクトマンナン多糖類を含む請求項14に記載の眼科潤滑剤。
【請求項18】
組成物はやや酸性から中性のpHを有する溶液である、請求項14−17のいずれか一項に記載の眼科潤滑剤。
【請求項19】
pHが6−7である、請求項14−17のいずれか一項に記載の眼科潤滑剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−197461(P2007−197461A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122010(P2007−122010)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願2000−504838(P2000−504838)の分割
【原出願日】平成10年7月17日(1998.7.17)
【出願人】(592038834)アルコン ラボラトリーズ インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ALCON LABORATORIES, INCORPORATED
【Fターム(参考)】