説明

ガラスパネル支持構造

【課題】地震などによる外力が作用した場合にガラスパネルの破損を防止し易いと共に、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保し易い利点を特に損なうことなく、曲げ剛性が小さいガラスパネルを採用しても、風圧が作用したときのガラスパネルの撓み変形を効果的に規制できるようにする。
【解決手段】矩形ガラスパネルP1の上下辺部の夫々を、躯体側に固定してあるサッシに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持してあるとともに、ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿って補強材4を一体に接着固定してあるガラスパネル支持構造であって、補強材を躯体側の固定部5にガラスパネルのパネル面に沿う方向に相対移動可能に支持する支持部6を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形ガラスパネルの上下辺部の夫々を、躯体側に固定してあるサッシに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持してあるとともに、前記ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿って補強材を一体に接着固定してあるガラスパネル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ガラスパネル支持構造は、矩形ガラスパネルの上下辺部の夫々を、躯体側に固定してあるサッシに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持してあるので、地震などによる外力が作用した場合に、ガラスパネルの上下辺部とサッシとのパネル面に沿う相対変位を許容して、ガラスパネルの破損を防止し易い利点がある。
また、ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿って補強材を一体に接着固定してあるので、ガラスパネルの左右辺部の夫々を躯体側に固定してあるサッシに嵌め込むことなく、ガラスパネルの風圧による撓み変形を左右辺部において規制することができ、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保し易い利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−185266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、大きな風圧が作用してもガラスパネルの撓み変形を左右辺部において効果的に規制できるようにするためには、曲げ剛性が大きい大型の補強材を接着固定しておく必要があり、この場合は、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保し易い利点が損なわれ易い欠点がある。
また、曲げ剛性が小さい小型の補強材を接着固定して、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保できるようにしながら、大きな風圧が作用してもガラスパネルの撓み変形を効果的に規制できるようにするためには、曲げ剛性が大きくて撓み難いガラスパネルを採用する必要がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、地震などによる外力が作用した場合にガラスパネルの破損を防止し易いと共に、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保し易い利点を特に損なうことなく、曲げ剛性が小さいガラスパネルを採用しても、風圧が作用したときのガラスパネルの撓み変形を効果的に規制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、矩形ガラスパネルの上下辺部の夫々を、躯体側に固定してあるサッシに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持してあるとともに、前記ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿って補強材を一体に接着固定してあるガラスパネル支持構造であって、前記補強材を躯体側の固定部に前記ガラスパネルのパネル面に沿う方向に相対移動可能に支持する支持部を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
補強材を躯体側の固定部にガラスパネルのパネル面に沿う方向に相対移動可能に支持する支持部を設けてあるので、地震などによる外力が作用した場合には、補強材の固定部に対するガラスパネルのパネル面に沿う方向の相対移動で、ガラスパネルの上下辺部とサッシとのパネル面に沿う相対変位を許容しながら、補強材の撓み変形を規制できるとともに、支持部近くのガラスパネルに局所的に発生する応力を緩和できる。
従って、地震などによる外力が作用した場合にガラスパネルの破損を防止し易いと共に、ガラスパネルを通した左右方向の視野を広く確保し易い利点を特に損なうことなく、風圧が作用したときのガラスパネルの撓み変形をより効果的に規制できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記補強材を前記左右辺部の略全長に亘って一連に接着固定してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
補強材を左右辺部の略全長に亘って一連に接着固定してあるので、左右辺部の夫々に長手方向で隣り合う複数の補強材を接着固定して、各補強材を躯体側の固定部に支持する支持部を設けてある場合に比べて、風圧が作用したときのガラスパネルの撓み変形をガラスパネルの左右辺部において略全長に亘って規制できるようにしながら、支持構造の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、複数階層を構成している複数の床スラブAと各床スラブAを支持する鋼製梁部材Bとを設けてある建物における外壁Cを示し、この外壁Cは矩形ガラスパネルの一例としての矩形複層ガラスP1,P2の複数を上下左右に並設して構成してある。
【0010】
前記外壁Cにおける各複層ガラスP1,P2の支持構造を説明する。
躯体側の構造物である床スラブAと、その床スラブAを支持している梁部材Bとの組み合わせ毎に、床スラブAと梁部材Bとに亘って、鉛直方向に沿う縦フレーム1の複数を水平方向に略一定間隔を隔てて固定してあり、各縦フレーム1の上端部と下端部との夫々に亘って水平方向に沿う横サッシ2を固定し、各縦フレーム1の夫々には鉛直方向に沿う縦サッシ3を固定してある。
【0011】
そして、第1複層ガラスP1の複数を、その上下辺部の夫々を上層階側の横サッシ2と下層階側の横サッシ2とに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持し、第2複層ガラスP2の複数を、横サッシ2と縦サッシ3とにパネル面に沿う方向に移動可能に嵌め込んである。
【0012】
前記第1複層ガラスP1は、二枚の板ガラスGをその周部にスペーサSを挟んで対向させて、両板ガラスG間に空隙Vを形成し、その空隙Vの周部をシール材Tで封止して構成してある。
【0013】
前記第1複層ガラスP1の夫々は、本発明によるガラスパネル支持構造によって支持してあり、図2,図3に示すように、一枚の第1複層ガラスP1毎に、その左右辺部の夫々に沿って補強材4を一体に接着固定してある。
【0014】
前記補強材4の上下方向で中間の一箇所を第1複層ガラスP1のパネル面に沿う方向に相対移動可能に支持する支持部6を、梁部材B側に下向きにボルト固定してある躯体側の固定部であるアーム部材5にボルト固定してある。
【0015】
前記補強材4は、図3に示すように、第1複層ガラスP1の左右辺部をその略全長に亘って一連に入り込ませる接着用凹溝7を形成してある第1チャンネル部8と、支持部6を上下移動可能に入り込ませる支持用凹溝9を形成してある第2チャンネル部10とを一体に備えたアルミ押し出し成型品で構成してある。
【0016】
そして、第1複層ガラスP1の左右辺部を、横断面形状がコの字形のゴム製シール材11を挟んで接着用凹溝7に嵌め込むとともに、そのゴム製シール材11を左右辺部と第1チャンネル部8との夫々に接着剤で接着して、補強材4を左右辺部の略全長に亘って一連に接着固定してあり、図示しないが、補強材4の上下両端部は上下の横サッシ2に対して接続しない状態で設けてある。
【0017】
尚、ゴム製シール材11に代えて、第1複層ガラスP1のガラス面を傷付けない材料からなるシール材11、例えば、樹脂製シール材11やアルミニウム合金などの軟質金属製シール材11を挟んで、第1複層ガラスP1の左右辺部を接着用凹溝7に嵌め込んであっても良い。
【0018】
前記支持部6は、固定基板12にボス部材13を一体に設けてある荷重受け部14に、第2チャンネル部10に対する取り付け用のナット15を螺合してある雄ねじ部材16を固定してあるとともに、その雄ねじ部材16の先端に支持用凹溝9に嵌め込む円板状の嵌合部材17を備えた支持金具で構成してあり、嵌合部材17とナット15には、フッ素系樹脂などからなるシート状の滑り材19を貼り付けてある。
【0019】
そして、第1複層ガラスP1の左右辺部の夫々に補強材4を接着固定して、スペーサ18を挟んで互いに隣り合い、かつ、支持金具6の嵌合部材17を隣り合う補強材4の両支持用凹溝9に亘って入り込ませた状態で、第1複層ガラスP1の上下辺部の夫々を上層階側の横サッシ2と下層階側の横サッシ2とに嵌め込んである。
【0020】
尚、20は、第1チャンネル部8どうしの隙間を建物外側から埋めているシール材であり、21は、第1チャンネル部8どうしの隙間を建物内側から埋めている定型シール材である。
【0021】
前記支持金具6は、固定基板12をアーム部材5にボルト固定するとともに、ナット15を第2チャンネル部10側に締め付けることにより両補強材4に固定した状態で、各第2チャンネル部10と雄ねじ部材16の外周面との間に環状の軟質シール材22を装着して、嵌合部材17とナット15の夫々に貼り付けてある滑り材19と、その滑り材19に挟まれた第2チャンネル部10との相対的な滑りを許容することにより、補強材4を躯体側の固定部であるアーム部材5に対して回転軸部材としての雄ねじ部材16周りで第1複層ガラスP1のパネル面に沿う方向に相対回転移動可能、かつ、軟質シール材22の弾性変形で雄ねじ部材(回転軸部材)16の径方向に相対移動可能に支持してある。
【0022】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるガラスパネル支持構造は、単板の板ガラスからなるガラスパネルを支持してあるガラスパネル支持構造であっても良い。
2.本発明によるガラスパネル支持構造は、左右辺部の夫々に長手方向で隣り合う複数の補強材を接着固定して、各補強材を躯体側の固定部に各別に支持する支持部を設けてあっても良い。
3.本発明によるガラスパネル支持構造は、補強材を躯体側の固定部としての手摺や内壁などに支持する支持部を設けてあっても良い。
4.本発明によるガラスパネル支持構造は、ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿ってその建物内側に向ける面にのみ、又は、ガラスパネルの建物内側に向ける面とパネル端面との角部にのみ、補強材を接着固定してあっても良い。
5.本発明によるガラスパネル支持構造は、左右辺部の上下方向中間部にのみ補強材を接着固定して、その補強材を躯体側の固定部に支持する支持部を設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】建物外壁の外面側を示す正面図(イ)と建物外壁の縦断面図(ロ)
【図2】要部の一部断面側面図(イ)と要部の一部断面正面図(ロ)
【図3】要部の横断面図
【符号の説明】
【0024】
P1 ガラスパネル
2 サッシ
4 補強材
5 固定部
6 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形ガラスパネルの上下辺部の夫々を、躯体側に固定してあるサッシに嵌め込んでパネル面に沿う方向に移動可能に支持してあるとともに、
前記ガラスパネルの左右辺部の夫々に沿って補強材を一体に接着固定してあるガラスパネル支持構造であって、
前記補強材を躯体側の固定部に前記ガラスパネルのパネル面に沿う方向に相対移動可能に支持する支持部を設けてあるガラスパネル支持構造。
【請求項2】
前記補強材を前記左右辺部の略全長に亘って一連に接着固定してある請求項1記載のガラスパネル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214868(P2008−214868A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49594(P2007−49594)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】