説明

ガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置

【課題】 板状ガラスブランクスの平坦度を容易に矯正することのできるガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置を提供する。
【解決手段】 軟化した板状ガラスブランクス3を、加熱炉50内で連続的に搬送する搬送ベルト20上に供給する供給ステップと、加熱炉50内で、搬送ベルト20上のガラスブランクス3に対して荷重を負荷しながらガラスブランクス3を搬送することによって、ガラスブランクス3の平坦度を矯正する矯正ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体用ガラス基板等に使用される、軟化した板状ガラスブランクスの平坦度を矯正するためのガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体用ガラス基板等に使用される平板状のガラスブランクスは、一般に、熔融ガラスを円筒状ノズルより送出させ、熔融ガラスが一定量となったところで切断刃(シャー)で熔融ガラスを切断してガラスゴブを作製し、このガラスゴブを成形面が平面の金型でプレス成形することによって作製されている。
【0003】
ガラスブランクスが平面の金型でプレス成形されても、成形後の板状ガラスブランクスは、通常、反っている。反ったガラスブランクスを平坦な形状に矯正するために、成形直後または冷却後に、反ったガラスブランクスを平らなセラミックス板などと交互に積層して、連続式加熱炉またはバッチ式加熱炉にて加熱軟化させることが行われている。あるいは、プレス成形時にガラスブランクスの厚さを予め厚目にしておいて、ガラスブランクスの研削代を多く取ることによって、最終のガラス基板が形状不良とならないようにすることが行われている。情報記録媒体用ガラス基板等に使用される板状のガラスブランクスは、その形状を矯正するための多大な手間や労力を要して製造されていた(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2001−328827号公報
【特許文献2】特開2002−338283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、板状ガラスブランクスの平坦度を容易に矯正することのできるガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、軟化した板状ガラスブランクスを、加熱炉内で連続的に搬送する搬送ベルト上に供給する供給ステップと、加熱炉内で、搬送ベルト上のガラスブランクスに対して荷重を負荷しながらガラスブランクスを搬送することによって、ガラスブランクスの平坦度を矯正する矯正ステップと、を備えることを特徴とするガラスブランクス矯正方法が提供される。
【0006】
上記方法によれば、軟化した板状ガラスブランクスが搬送ベルトで加熱炉内に搬送され、加熱炉内に搬送された板状ガラスブランクスに対して、荷重が負荷される。変形可能な状態にある板状ガラスブランクスに対して熱及び荷重が負荷されることによって、板状ガラスブランクスが微小程度変形して、板状ガラスブランクスの平坦度が矯正されて、板状ガラスブランクスの平坦度が向上する。
【0007】
ガラスブランクスに対して荷重を負荷させるためには、ガラスブランクスの上に当接配置された負荷ベルトの自重によって行うことができる。
【0008】
ガラスブランクスに対して荷重を負荷させるためには、ガラスブランクスの上に配置されたプレス矯正機によって行うこともできる。
【0009】
矯正後に急冷して取り出した後に別途除歪処理を行うことも可能であるが、矯正処理に続いて、ガラスブランクス中の歪みを取り除いた方が、エネルギー的なロスや時間的なロスが少なくなるので、矯正されたガラスブランクスを加熱炉内で徐冷してガラスブランクス中の歪みを取り除く除歪ステップをさらに備えることが好適である。
【0010】
矯正ステップにおいて、ガラスブランクスが、そのガラス転移温度乃至ガラス転移温度+50℃の温度範囲に保持されていることが好適である。このような温度範囲にガラスブランクスを保持することによって、ガラスブランクスが適度に変形することができる。
【0011】
上述した本発明に係るガラスブランクス矯正方法は、ガラスブランクスを加熱する加熱炉と、軟化した板状ガラスブランクスを、加熱炉内で連続的に搬送する搬送手段と、搬送手段上で搬送されているガラスブランクスに対して荷重の負荷を与える荷重負荷手段と、を備えることを特徴とするガラスブランクス矯正装置によって実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の第一実施形態に係る、情報記録媒体用ガラス基板等に使用されるガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置について、図1及び6を参照しながら詳細に説明する。なお、第一実施形態のものは、負荷ベルトによる荷重負荷であって、負荷ベルトが加熱炉の入口から出口近傍まで延在しているタイプのものである。
【0013】
図1は、本発明の第一実施形態に係るガラスブランクス矯正装置1を模式的に示した図である。図6は、加熱炉50内の温度分布を模式的に示した図である。
【0014】
ガラスブランクス矯正装置1は、ガラスブランクス3を加熱する加熱炉50と、ガラスブランクス3を加熱炉50内で連続的に搬送する搬送ベルトコンベア26と、ガラスブランクス3に荷重の負荷を与える荷重負荷手段としての負荷ベルトコンベア16と、を備えている。
【0015】
加熱炉50は、筐体と、基台22と、ヒータ9と、断熱材5と、温度センサとを備えている。加熱炉50の内部には、搬送ベルト20及び負荷ベルト10が並行して延在している。搬送長手方向に延在する加熱炉50は、矢印のベルト搬送方向に沿って複数のゾーンに分けて個別に温度管理されている。例えば、図6に示すように、加熱炉50の内部は、矯正ゾーン6と除歪ゾーン7と急冷ゾーン8とから構成することができる。入口から入って直ぐの矯正ゾーン6は、ガラス転移温度乃至ガラス転移温度+50℃の所定温度に保持されている。好ましくは、ガラス転移点+20℃乃至ガラス転移点+50℃の所定温度に保持されている。除歪ゾーン7は、出口に向かうに従って徐々に冷却されるように、例えば、−10℃/分乃至−20℃/分の温度勾配でガラスブランクス3が除歪点まで冷却されるように設定されている。また、急冷ゾーン8は、ガラスブランクス3が破壊しない程度の速度で除歪点から室温近傍まで冷却されるように設定されている。
【0016】
搬送手段としての搬送ベルトコンベア26は、搬送ベルト20と、ベルト駆動装置40と、予熱ヒータ9とを備えている。搬送ベルト20は、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。搬送ベルト20は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの複数の平坦面をベルト上に有するか、またはベルトそのものが平坦面を有しているものである。ベルト駆動装置40で駆動された搬送ベルト20の上部分は、基台22上に沿って加熱炉50内部を循環するとともに、加熱炉50の入口で供給されたガラスブランクス3を出口まで搬送する。予熱ゾーン4の予熱ヒータ9は、加熱炉50の入口の下方に配置されており、加熱炉50内部に導入される前の搬送ベルト20を予熱する。
【0017】
荷重負荷手段としての負荷ベルトコンベア16も、負荷ベルト10と、ベルト駆動装置40と、予熱ヒータ9とを備えている。負荷ベルト10は、加熱炉50の出口近傍まで延在して、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。負荷ベルト10は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの複数の平坦面をベルト上に有するか、またはベルトそのものが平坦面を有しているものである。負荷ベルト10の平坦面が搬送ベルト20の平坦面に並行に対向するように構成されている。ベルト駆動装置40で駆動された負荷ベルト10は、搬送ベルト20の動きと同期しながら加熱炉50の内部を循環する。負荷ベルト10の下部分が少しダラリと垂れ下がるように、負荷ベルト10が寸法構成されている。垂れ下がった負荷ベルト10の下部分が、搬送ベルト20上で搬送されているガラスブランクス3に対して当接しており、負荷ベルト10の自重による負荷をガラスブランクス3に与えている。予熱ゾーン4の予熱ヒータ9は、加熱炉50の入口の上方に配置されており、加熱炉50内部に導入される前の負荷ベルト10を予熱する。
【0018】
搬送ベルト20や負荷ベルト10は、ガラスブランクス3の配列幅と同程度であっても良いし、ガラスブランクス3の配列数に合わせて分割されていても良い。ベルトが分割されているときは、単一のベルト駆動装置40で各ベルトを駆動するものとはしないで、複数のベルト駆動装置40で各ベルトを別々に駆動するようにしても良い。この場合には、個々のベルト駆動装置40の負荷を小さくすることができ、またガラスブランクス3の配列をベルト幅方向に整列配置する必要性が無くなる。
【0019】
次に、図1及び6を参照しながら、ガラスブランクス3の矯正方法について説明する。なお、使用するガラスブランクス3の熱的物性は、軟化点670℃、徐冷点510℃、ガラス転移点500℃、歪点470℃であるが、本願発明は、このような物性を有するガラスブランクスに限定されるものではない。
【0020】
大略板状のガラスブランクス3は、加熱炉50の入口の近傍に配置された不図示のゴブ成形機によって作製され、加熱炉50の入口の近傍の予熱された搬送ベルト20の平坦面上に移載機によって順次載置される。軟化したガラスブランクス3は、ベルト搬送方向に沿って搬送ベルト20の平坦面上に整列配置される。なお、複数の軟化したガラスブランクス3を、ベルト搬送方向と直交するベルト幅方向に整列配置することもできる。ゴブ成形機から供給されるガラスブランクス3は、外径φが20乃至100mmであり、厚みtが0.5乃至2.0mmである円板形状のものである。そして、供給時のガラスブランクス温度は、例えば、470℃であり、その粘度は、おおよそ4×1014ポアズであり、ある程度軟化可能な状態にある。
【0021】
搬送ベルト20が加熱炉50の入口から出口に向かって搬送駆動されるに従って、各ガラスブランクス3が加熱炉50内部に順次搬送される。加熱炉50の入口から少し内部に入った矯正ゾーン6で、負荷ベルト10の垂れ下がった下部分がガラスブランクス3の上面に当接する。負荷ベルト10の平坦面がガラスブランクス3に載っかって、負荷ベルト10の平坦面と搬送ベルト20の平坦面との間に挟み込まれることによって、負荷ベルト10の下部分の荷重がガラスブランクス3に負荷される。ガラスブランクス3に負荷ベルト10の荷重が負荷された状態でガラスブランクス3が矯正ゾーン6中を搬送されると、ガラスブランクス3が、熱及び荷重の負荷によって変形して、形状が平坦なものに矯正される。
【0022】
矯正ゾーン6で平坦度の矯正されたガラスブランクス3は、除歪ゾーン7に搬送されて、ガラスブランクス3の残留歪が除去される。除歪ゾーン7で除歪されたガラスブランクス3は、急冷ゾーン8に搬送された後、加熱炉50の出口から取り出される。
【0023】
このようして平坦度の矯正された板状ガラスブランクス3は、研削加工や研磨加工を施して情報記録媒体用ガラス基板として使用される。
【0024】
(実施例1)
外径が67mmであり、肉厚が1.0mmであり、平坦度が約0.05mm、ガラス転移温度が500℃であるガラスブランクス3を用いて、表1に示した各種矯正条件に従ってガラスブランクス3の平坦度矯正を行い、その結果を表1に示す。ガラスブランクス3に負荷される荷重が1.96×10Pa(0.02kg重/cm)又は4.9×10Pa(0.05kg重/cm)であり、矯正ゾーン6での温度が500℃乃至560℃であり、矯正ゾーン6での負荷時間が5分乃至10分である。なお、加熱炉投入時のガラスブランクス3の温度は、約470℃である。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から明らかなように、矯正ゾーン6での負荷圧力が大きくなるに従って、また、矯正ゾーン6の温度が高くなるに従って、また、矯正ゾーン6での負荷時間が長くなるに従って、ガラスブランクス3の上下面がより平坦に矯正される傾向にある。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度より低いと、ガラスブランクス3の平坦度がほとんど矯正されない。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度+50℃より高いと、大略板状のガラスブランクス3の平坦度矯正が良好であるもの、ガラスブランクス3自身の形状が大きく変化してしまう。
【0027】
次に、本発明の第二実施形態に係るガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置1について、図2を参照しながら詳細に説明するが、基本的な構成は上述した第一実施形態のものと同じであるので、両者の相違部分を中心に説明する。
【0028】
すなわち、上述した第一実施形態のものでは、負荷ベルトコンベア16が加熱炉50の入口から出口近傍まで延在しているタイプのものであったが、第二実施形態のものでは、負荷ベルトコンベア16が加熱炉50の入口から矯正ゾーン6の終点まで延在していることを特徴としている。
【0029】
荷重負荷手段としての負荷ベルトコンベア16は、負荷ベルト10と、ベルト駆動装置40と、予熱ヒータ9とを備えている。負荷ベルト10は、加熱炉50の入口から矯正ゾーン6の終点まで延在して、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。負荷ベルト10は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの複数の平坦面をベルト上に有するか、またはベルトそのものが平坦面を有しているものである。負荷ベルト10の平坦面が搬送ベルト20の平坦面に並行に対向するように構成されている。ベルト駆動装置40で駆動された負荷ベルト10は、搬送ベルト20の動きと同期しながら加熱炉50内部を循環する。負荷ベルト10の下部分が少しダラリと垂れ下がるように、負荷ベルト10が寸法構成されている。垂れ下がった負荷ベルト10の下部分が、搬送ベルト20上で搬送されているガラスブランクス3に対して当接しており、負荷ベルト10の自重による負荷をガラスブランクス3に与えている。予熱ゾーン4の予熱ヒータ9は、加熱炉50の入口の上方に配置されており、加熱炉50内部に導入される前の負荷ベルト10を予熱する。
【0030】
矯正ゾーン6にだけ負荷ベルト10が存在しているので、負荷ベルト10の長さを短くすることができる。したがって、荷重を負荷するための重量物である負荷ベルト10の長さを短くすることによって、負荷ベルト10を駆動するベルト駆動装置40の駆動負荷が小さくなる。また、一般的に、ガラスを軟化させて形状を矯正させる場合、除歪時には荷重を負荷しない方が、得られたガラスブランクス3の残留歪を少なくすることができるので、負荷ベルト10が除歪ゾーン7に存在しないことが好ましい。
【0031】
次に、本発明の第三実施形態に係るガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置1について、図3及び6を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図3は、本発明の第三実施形態に係るガラスブランクス矯正装置1を説明する図である。
【0033】
ガラスブランクス矯正装置1は、ガラスブランクス3を加熱する加熱炉50と、ガラスブランクス3を加熱炉50内で連続的に搬送する搬送ベルトコンベア26と、ガラスブランクス3に荷重の負荷を与える荷重負荷手段としてのプレス矯正機30と、を備えている。
【0034】
加熱炉50は、筐体と、基台22と、ヒータ9と、断熱材5と、温度センサとを備えている。加熱炉50の内部には、搬送ベルト20が延在している。搬送長手方向に延在する加熱炉50は、矢印のベルト搬送方向に沿って複数のゾーンに分けて個別に温度管理されている。例えば、図6に示すように、加熱炉50の内部は、矯正ゾーン6と除歪ゾーン7と急冷ゾーン8とから構成することができる。入口から入って直ぐの矯正ゾーン6は、ガラス転移温度乃至ガラス転移温度+50℃の所定温度に保持されている。好ましくは、ガラス転移点+20℃乃至ガラス転移点+50℃の所定温度に保持されている。除歪ゾーン7は、出口に向かうに従って徐々に冷却されるように、例えば、−10℃/分乃至−20℃/分の温度勾配でガラスブランクス3が除歪点まで冷却されるように設定されている。また、急冷ゾーン8は、ガラスブランクス3が破壊しない程度の速度で除歪点から室温近傍まで冷却されるように設定されている。
【0035】
搬送手段としての搬送ベルトコンベア26は、搬送ベルト20と、ベルト駆動装置40と、予熱ヒータ9とを備えている。搬送ベルト20は、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。搬送ベルト20は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの複数の平坦面をベルト上に有するか、またはベルトそのものが平坦面を有しているものである。ベルト駆動装置40で駆動された搬送ベルト20の上部分は、基台22上に沿って加熱炉50内部を循環するとともに、加熱炉50の入口で供給されたガラスブランクス3を出口まで搬送する。予熱ゾーン4の予熱ヒータ9は、加熱炉50の入口の下方に配置されており、加熱炉50内部に導入される前の搬送ベルト20を予熱する。プレス時間が数秒程度の短いものであれば、搬送ベルト20の搬送駆動を停止することなく連続的に運転したり、プレスするときに同期して搬送ベルト20の搬送駆動を一時的に停止させる間欠運転とすることができる。
【0036】
荷重負荷手段としてのプレス矯正機30は、平坦面を有する成形部材と、成形部材を駆動する駆動装置とを備えている。成形部材の平坦面が搬送ベルト20の上のガラスブランクス3に直面するように、成形部材が加熱炉50内に配置されている。駆動装置が加熱炉50の外に配置されているプレス矯正機30の成形部材は、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。成形部材は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの複数の平坦面を有するか、または複数のものがベルト幅方向に整列配置されたガラスブランクス群よりやや大きめの平坦面を有している。このとき、各成形部材に対して一つの駆動装置が接続されている。あるいは、ベルト搬送方向と直交するベルト幅方向に整列配置された各ガラスブランクス3に対して一対一に対応する成形部材をそれぞれ設けて、各成形部材に駆動装置が個別に接続された形態も可能である。成形部材の平坦面が搬送ベルト20の平坦面に並行に対向するように構成されている。駆動装置で駆動された成形部材は、搬送ベルト20の動きと同期しながら上下に変位する。成形部材の平坦面が、搬送ベルト20上で搬送されているガラスブランクス3に対して所定の短い時間当接することによって、プレス矯正機30による負荷をガラスブランクス3に与えている。
【0037】
次に、図3及び6を参照しながら、ガラスブランクスの矯正方法について説明する。なお、使用するガラスブランクス3の熱的物性は、軟化点670℃、徐冷点510℃、ガラス転移点500℃、歪点470℃であるが、本願発明は、このような物性を有するガラスブランクスに限定されるものではない。
【0038】
大略板状のガラスブランクス3は、加熱炉50の入口の近傍に配置された不図示のゴブ成形機によって作製され、加熱炉50の入口の近傍の予熱された搬送ベルト20の平坦面上に移載機によって順次載置される。ガラスブランクス3は、ベルト搬送方向に沿って搬送ベルト20の平坦面上に整列配置される。なお、複数のガラスブランクス3を、ベルト搬送方向と直交するベルト幅方向に整列配置することもできる。ゴブ成形機から供給されるガラスブランクス3は、外径φが20乃至100mmであり、厚みtが0.5乃至2.0mmである円板形状のものである。そして、供給時のガラスブランクス温度は、例えば、470℃であり、その粘度は、おおよそ4×1014ポアズである。
【0039】
搬送ベルト20が加熱炉50の入口から出口に向かって搬送駆動されるに従って、各ガラスブランクス3が加熱炉50内部に順次搬送される。加熱炉50の入口から少し内部に入った矯正ゾーン6内の所定タイミングのときに、成形部材の平坦面がガラスブランクス3の上面に当接する。成形部材の平坦面と搬送ベルト20の平坦面との間にガラスブランクス3が挟み込まれることによって、プレス圧力がガラスブランクス3に負荷される。ガラスブランクス3にプレス圧力が負荷された状態でガラスブランクス3が矯正ゾーン6中で所定時間保持されると、大略板状のガラスブランクス3が、熱及びプレス圧力の負荷によって変形して、より平坦なものに矯正される。
【0040】
矯正ゾーン6で平坦度の矯正されたガラスブランクス3は、除歪ゾーン7に搬送されて、ガラスブランクス3の残留歪が除去される。除歪ゾーン7で除歪されたガラスブランクス3は、急冷ゾーン8に搬送された後、加熱炉50の出口から取り出される。
【0041】
このようして平坦度の矯正された板状ガラスブランクス3は、研削加工や研磨加工を施して情報記録媒体用ガラス基板として使用される。
【0042】
(実施例2)
外径が67mmであり、肉厚が1.0mmであり、平坦度が約0.05mm、ガラス転移温度が500℃であるガラスブランクス3を用いて、表2に示した各種矯正条件に従ってガラスブランクス3の平坦度矯正を行い、その結果を表2に示す。ガラスブランクス3に負荷されるプレス圧力が4.9×10Pa(0.5kg重/cm)又は9.8×10Pa(1.0kg重/cm)であり、矯正ゾーン6での温度が500℃乃至560℃であり、ガラスブランクス3に負荷されるプレス時間が1秒であり、矯正ゾーン6でのガラスブランクス3の滞在時間が5分又は10分である。なお、加熱炉投入時のガラスブランクス3の温度は、約470℃である。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から明らかなように、矯正ゾーン6での負荷圧力が大きくなるに従って、また、矯正ゾーン6の温度が高くなるに従って、また、矯正ゾーン6での滞在時間が長くなるに従って、ガラスブランクス3の上下面がより平坦に矯正される傾向にある。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度より低いと、ガラスブランクス3の平坦度がほとんど矯正されない。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度+50℃より高いと、大略板状のガラスブランクス3の平坦度矯正が良好であるもの、ガラスブランクス自身の形状が大きく変化してしまう。
【0045】
次に、本発明の第四実施形態に係るガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置1について、図4を参照しながら詳細に説明するが、基本的な構成は上述した第三実施形態に係るものと同じであるので、両者の相違部分を中心に説明する。
【0046】
すなわち、上述した第三実施形態のものでは、搬送ベルト20の搬送方向に対して1個又は1列のプレス矯正機30が配設されているタイプのものであったが、第四実施形態のものでは、ベルト搬送方向に対して複数個又は複数列のプレス矯正機30が配設されていることを特徴としている。
【0047】
荷重負荷手段としてのプレス矯正機30が、ベルト搬送方向に対して複数個又は複数列配設されており、各プレス矯正機30は、平坦面を有する成形部材と、成形部材を駆動する駆動装置とを備えている。成形部材の平坦面が搬送ベルト20の上のガラスブランクス3に直面するように、成形部材が加熱炉50の内側に配置されている。駆動装置が加熱炉50の外側に配置されているプレス矯正機30の成形部材は、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。ベルト搬送方向に整列配置された複数の成形部材は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの平坦面を有するか、または複数のものがベルト幅方向に整列配置されたガラスブランクス群よりやや大きめの平坦面を有している。このとき、各成形部材に対して一つの駆動装置が接続されている。いずれの場合においても、成形部材の平坦面が搬送ベルト20の平坦面に並行に対向するように構成されている。駆動装置で駆動された成形部材は、搬送ベルト20の動きと同期して又は所定のタイミングで上下に変位する。成形部材の平坦面が、搬送ベルト20上で搬送されているガラスブランクス3に対して所定の短い時間当接することによって、プレス矯正機30による負荷をガラスブランクス3に与えている。プレス時間が数秒程度の短いものであれば、ベルトの搬送駆動を停止することなく連続的に運転したり、プレスするときに同期してベルトの搬送駆動を一時的に停止させる間欠運転とすることができる。
【0048】
矯正ゾーン6で複数回の矯正プレスを行うので、矯正プレスの回数に応じて矯正プレス時間を累積させることができる。したがって上記第三実施形態のものより矯正ゾーン6の温度を低くすることができる。また、大略板状のガラスブランクス3の平坦度をさらに改善することができる。
【0049】
次に、本発明の第五実施形態に係るガラスブランクス矯正方法及びガラスブランクス矯正装置1について、図5を参照しながら詳細に説明するが、基本的な構成は上述した第三実施形態及び第四実施形態に係るものと同じであるので、両者の相違部分を中心に説明する。
【0050】
すなわち、上述した第三実施形態及び第四実施形態のものでは、プレス矯正機30が固定的に配設されているタイプのものであったが、第五実施形態のものでは、ベルト搬送方向に対して複数個又は複数列のプレス矯正機30が可動的に配設されていることを特徴としている。
【0051】
荷重負荷手段としてのプレス矯正機30が、ベルト搬送方向に対して複数個又は複数列可動的に配設されており、各プレス矯正機30は、平坦面を有する成形部材と、成形部材を駆動する駆動装置とを備えている。各プレス矯正機30は、不図示の移動手段によって、搬送ベルト20の動きに同期しながら、矯正ゾーン6の始点から終点まで循環するように構成されている。成形部材の平坦面が搬送ベルト20の上のガラスブランクス3に直面するように、成形部材が加熱炉50の内側に配置されている。駆動装置が加熱炉50の外側に配置されているプレス矯正機30の成形部材は、金属またはセラミックス、あるいはこれら複合体からなる耐熱材料から構成されている。ベルト搬送方向に整列配置された各成形部材は、対象のガラスブランクス3よりやや大きめの平坦面を有するか、または複数のものがベルト幅方向に整列配置されたガラスブランクス群よりやや大きめの平坦面を有している。このとき、各成形部材に対して一つの駆動装置が接続されている。いずれの場合においても、成形部材の平坦面が搬送ベルト20の平坦面に並行に対向するように構成されている。駆動装置で駆動された成形部材は、搬送ベルト20の動きと同期して又は所定のタイミングで上下に変位する。
【0052】
矯正ゾーン6に滞在している間に矯正プレスを行うので、矯正プレス時間をより長く確保することができる。したがって、上記第三実施形態及び第四実施形態のものより矯正ゾーン6の温度を低くすることができる。また、ガラスブランクス3の平坦度をさらに改善することができる。
【0053】
(実施例3)
外径が67mmであり、肉厚が1.0mmであり、平坦度が約0.05mm、ガラス転移温度が500℃であるガラスブランクス3を用いて、表2に示した各種矯正条件に従ってガラスブランクス3の平坦度矯正を行い、その結果を表3に示す。ガラスブランクス3に負荷されるプレス圧力が4.9×103Pa(0.05kg重/cm)又は9.8×103Pa(0.1kg重/cm)であり、矯正ゾーン6での温度が500℃乃至560℃であり、ガラスブランクス3に負荷される圧力負荷時間が3分又は5分である。なお、加熱炉投入時のガラスブランクス3の温度は、約470℃である。
【0054】
【表3】

【0055】
表3から明らかなように、矯正ゾーン6での負荷圧力が大きくなるに従って、また、矯正ゾーン6の温度が高くなるに従って、また、矯正ゾーン6での圧力負荷時間が長くなるに従って、ガラスブランクス3の上下面がより平坦に矯正される傾向にある。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度より低いと、ガラスブランクス3の平坦度がほとんど矯正されない。矯正ゾーン6の温度がガラス転移温度+50℃より高いと、大略板状のガラスブランクス3の平坦度矯正が良好であるもの、ガラスブランクス自身の形状が大きく変化してしまう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガラスブランクス矯正装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係るガラスブランクス矯正装置を模式的に示した図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係るガラスブランクス矯正装置を模式的に示した図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係るガラスブランクス矯正装置を模式的に示した図である。
【図5】本発明の第五実施形態に係るガラスブランクス矯正装置を模式的に示した図である。
【図6】加熱炉内の温度分布を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ガラスブランクス矯正装置
2 荷重負荷手段
3 ガラスブランクス
4 予熱ゾーン
5 断熱材
6 矯正ゾーン
7 除歪ゾーン
8 急冷ゾーン
9 ヒータ
10 負荷ベルト
16 負荷ベルトコンベア
20 搬送ベルト
22 基台
26 搬送ベルトコンベア
30 プレス矯正機
40 ベルト駆動装置
50 加熱炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化した板状ガラスブランクスを、加熱炉内で連続的に搬送する搬送ベルト上に供給する供給ステップと、
加熱炉内で、搬送ベルト上のガラスブランクスに対して荷重を負荷しながらガラスブランクスを搬送することによって、ガラスブランクスの平坦度を矯正する矯正ステップと、
を備えることを特徴とするガラスブランクス矯正方法。
【請求項2】
前記ガラスブランクスに対する荷重の負荷は、ガラスブランクスの上に当接配置された負荷ベルトの自重によって行うことを特徴とする、請求項1記載のガラスブランクス矯正方法。
【請求項3】
前記ガラスブランクスに対する荷重の負荷は、ガラスブランクスの上に配置されたプレス矯正機によって行うことを特徴とする、請求項1記載のガラスブランクス矯正方法。
【請求項4】
矯正されたガラスブランクスを加熱炉内で徐冷してガラスブランクス中の歪みを取り除く除歪ステップをさらに備えることを特徴とする、請求項1記載のガラスブランクス矯正方法。
【請求項5】
前記矯正ステップにおいて、ガラスブランクスが、そのガラス転移温度乃至ガラス転移温度+50℃の温度範囲に保持されていることを特徴とする、請求項1記載のガラスブランクス矯正方法。
【請求項6】
ガラスブランクスを加熱する加熱炉と、
軟化した板状ガラスブランクスを、加熱炉内で連続的に搬送する搬送手段と、
搬送手段上で搬送されているガラスブランクスに対して荷重の負荷を与える荷重負荷手段と、
を備えることを特徴とするガラスブランクス矯正装置。
【請求項7】
前記荷重負荷手段は、ガラスブランクスの上に当接配置された負荷ベルトであることを特徴とする、請求項6記載のガラスブランクス矯正装置。
【請求項8】
前記荷重負荷手段は、ガラスブランクスの上に配置されたプレス矯正機であることを特徴とする、請求項6記載のガラスブランクス矯正装置。
【請求項9】
荷重負荷によって矯正されたガラスブランクスを加熱炉内で徐冷してガラスブランクス中の歪みを取り除く除歪手段をさらに備えることを特徴とする、請求項6記載のガラスブランクス矯正装置。
【請求項10】
前記荷重負荷手段によって負荷の与えられているガラスブランクスは、そのガラス転移温度乃至ガラス転移温度+50℃の温度範囲に保持されていることを特徴とする、請求項6記載のガラスブランクス矯正装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−306660(P2006−306660A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131287(P2005−131287)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】