説明

ガラスペースト、それを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】省電力のプラズマディスプレイパネルおよびそれを製造するためのガラスペーストを提供する。
【解決手段】 低軟化点ガラス粉末および有機成分を含むガラスペーストであって、前記低軟化点ガラスは、FeOとFeを重量基準で合計1〜1000ppmの範囲内含み、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比が重量基準で0.40〜0.95の範囲内であることを特徴とするガラスペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスペーストおよびそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、プラズマ放電による発光を利用して映像や情報の表示を行なう平面ディスプレイであり、パネル構造および駆動方法によってDC型とAC型に分類される。PDPによるカラー表示の原理は、隔壁(リブとも言う)によって離間された前面ガラス基板と背面ガラス基板に形成された対向する両電極間のセル空間(放電空間)内でプラズマ放電を生じさせ、各セル空間内に封入されているHe、Xe等のガスの放電により発生する紫外線で背面ガラス基板内面に形成された蛍光体を励起し、3原色の可視光を発生させるものである。各セル空間は、DC型PDPにおいては格子状のリブにより区画され、一方、AC型PDPにおいては基板面に平行に列設された隔壁により区画されるが、いずれにおいてもセル空間の区画は、隔壁によりなされている。
【0003】
以下、添付図面を参照しながら簡単に説明する。図1は、フルカラー表示の3電極構造の面放電方式AC型PDPの構造例を部分的に示している。前面ガラス基板1の下面には、放電のための透明電極3a、3bと該透明電極のライン抵抗を下げるためのバス電極4a、4bとから成る一対の表示電極2a、2bが所定のピッチで多数列設されている。これらの表示電極2a、2bの上には、電荷を蓄積するための低軟化点ガラスからなる透明誘電体層5が印刷、焼成によって形成され、その上にMgOからなる保護層6が蒸着されている。保護層6は、表示電極の保護、放電状態の維持等の役割を有している。一方、背面ガラス基板11の上には、放電空間を区画するストライプ状の隔壁12と各放電空間内に配されたアドレス電極13(データ電極)が所定のピッチで多数列設されている。アドレス電極13は誘電体層15によって覆われ、隔壁12は誘電体層15上に設けられるのが一般的である。また、各放電空間の内面には、赤色蛍光体膜14a、青色蛍光体膜14b、緑色蛍光体膜14cの3色の蛍光体膜が規則的に配され、フルカラー表示においては、前記のように赤、青、緑の3原色の蛍光体膜(14a、14b、14c)で1つの画素が構成される。
【0004】
さらに、放電空間を形成する一対の表示電極2a、2bの両側部には、画像のコントラストをさらに高めるために、同様にストライプ状のブラックパターン10が形成されたものもある。
【0005】
なお、上記構造のPDPでは、一対の表示電極2aと2bの間に交流のパルス電圧を印加し、同一基板上の電極間で放電させるので、「面放電方式」と呼ばれている。
【0006】
また、上記構造のPDPでは、放電により発生した紫外線が背面ガラス基板11の蛍光体膜(14a、14b、14c)を励起し、発生した可視光を前面ガラス基板1の透明電極3a、3bを透して見る構造となっている。
【0007】
AC型PDPの放電方式について述べる。先ず、書き込み期間に、全ての維持電極の電位を0に保持し、データ電極のうち第一番目の走査線の表示内容に対応した所定のものに正の書き込みパルス電圧を印加するとともに、第一番目の走査電極に負の走査パルス電圧を印加する。その結果正の書き込みパルス電極を印加したデータ電極と第一番目の走査電極との交点部において書き込み放電が起こり、書き込み放電の起きた交点部の背面板誘電体層の表面に負電荷が蓄積される。次に、データ電極のうち第2番目の走査線の表示内容に対応した所定のものに正の書き込みパルス電圧を印加するとともに、第二番目の走査電極に負の走査パルス電圧を印加すると、正の書き込みパルス電極を印加したデータ電極と第二番目の走査電極との交点部において書き込み放電が起こり、書き込み放電の起きた交点部の背面板誘電体層の表面に負電荷が蓄積される。同様にして走査駆動の動作を引き続いて行い、データ電極のうち最後の走査線の表示内容に対応した所定のものに正の書き込みパルス電圧を印加するとともに、最後の走査電極に負の走査パルス電圧を印加すると、正の書き込みパルス電極を印加したデータ電極と最後の走査電極との交点部において書き込み放電が起こり、書き込み放電の起きた交点部の背面板誘電体層の表面に負電荷が蓄積される。
【0008】
次に維持期間において、先ず、全ての表示電極に正の維持パルス電圧を印加すると、書き込み放電を起こした交点部において、走査電極と維持電極との間に維持放電が開始される。維持電極への正の維持パルス電圧の印加終了後直ちに全ての走査電極に正の維持パルス電圧を印加すると、書き込み放電を起こした交点部において、走査電極と維持電極との間に再び維持放電が行われる。上記の「印加終了後直ちに」の用語で表す時間長としては、例えば100ナノ秒程度が適当である。この場合維持電極への正の維持パルス電圧の印加終了の約100ナノ秒後に走査電極に正の維持パルス電圧が印加される。前記の時間長を100ナノ秒程度にすることにより充分な誤放電防止効果が得られる。さらに、走査電極に印加した正の維持パルス電圧の印加終了後直ちに全ての維持電極に正の維持パルス電圧を印加すると、書き込み放電を起こした交点部において、走査電極と維持電極との間に再び維持放電が行われる。同様に、全ての走査電極と全ての維持電極とに正の維持パルス電圧を交互に印加することにより、維持放電が継続して行われる。この維持放電による発光を表示に用いる。
【0009】
続く消去期間において、全ての維持電極に正の細幅消去パルス電圧を印加して、消去放電を起こさせて放電を停止させる。以上の動作によりAC型プラズマディスプレイパネルの一画面の表示動作が行われる。
【0010】
上述のようなPDPにおいて、従来用いられているガラスペーストを使用して作成したパネルでは、封着焼成時、もしくはパネル放電時に隔壁や誘電体層より酸素が多く発生し、その酸素により前面板の保護層を形成するMgOを酸化してしまう。そのため、保護層の二次電子放出能力が低くなり、維持放電継続のために必要な維持パルス電圧の絶対値が大きくなり、消費電力が大きくなってしまうという問題があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−342606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、省電力のPDPを製造するためのガラスペーストを提供すること、また、それを用いて得られる省電力のPDPを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち、低軟化点ガラス粉末および有機成分を含むガラスペーストであって、前記低軟化点ガラスは、FeOとFeを重量基準で合計1〜1000ppmの範囲内含み、FeOとFe2O3の含有量の合計に対するFeOの含有量の比が重量基準で0.40〜0.95の範囲内であることを特徴とするガラスペーストである。また、上述のガラスペーストを用いて誘電体層または隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、省電力のPDPおよびそれを製造するためのガラスペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フルカラー表示の3電極構造の面放電方式AC型PDPの構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、低軟化点ガラス粉末および有機成分を含むガラスペーストであって、前記低軟化点ガラスは、FeOとFeを重量基準で合計1〜1000ppmの範囲内含み、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比が重量基準で0.40〜0.95の範囲内であることを特徴とするガラスペーストに関する。
【0017】
本発明のガラスペーストに含まれる低軟化点ガラス粉末はFeOとFeを重量基準で合計1〜1000ppmの範囲内含む。1000ppmを超えるとガラスの着色が強くなりすぎるため、ディスプレイ用に用いた場合に表示色に影響を及ぼす等の問題を生じる。また、酸化鉄を積極的に添加しない場合であっても、低軟加点ガラス粉末には不純物として微量の酸化鉄が含まれ、一般的な低軟加点ガラス粉末はFeOとFeを重量基準で合計1ppm以上含有する。
【0018】
本発明のガラスペーストに含まれる低軟化点ガラス粉末中のFeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比は低軟化点ガラス中の酸素内包量と相関関係があり、大きいほどガラスは還元性で、酸素内包量がを少なくなる傾向がある。本発明のガラスペーストに含まれる低軟化点ガラス粉末中のFeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比は0.40〜0.95の範囲内であり、好ましくは0.65〜0.95の範囲である。なお、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比を変えるためにはガラス熔融温度を変えるか、酸化剤を添加するか、還元性原料を使用する。熔融温度は高ければ高いほど、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比は大きくなる。加える酸化剤としては、CeO、Co、Co、MnO、KMnO、CuO、Cr、KCr、NiO、Nd、Er、Sb、原料の硝酸塩などが挙げられる。還元性原料としては、原料の炭酸塩などが挙げられる。軟化点ガラス粉末中のFeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比が0.40未満の場合、低軟化点ガラス中の酸素内包量が多くなるため、PDPの誘電体層や隔壁の形成に用いた場合に、維持放電継続のために必要な維持パルス電圧が大きくなり、消費電力の大きなPDPとなってしまうという問題が生じる。また、FeOは比較的不安定であるため、軟化点ガラス粉末中のFeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比は通常0.95以下となる。
【0019】
本発明のガラスペーストに含まれる低軟化点ガラス粉末の組成はBi:5〜45モル%、ZnO:5〜60モル%、SiO:0.5〜40モル%、B:10〜60モル%、Al:0〜10モル%、ZrO:0〜10モル%、LiO、NaO、KOの合計:0〜15モル%、MgO、CaO、SrO、BaOの合計:0〜15モル%の範囲内のもの、またはZnO:0〜20モル%、SiO:3〜50モル%、B:10〜60モル%、Al:0〜40モル%、ZrO:0〜10モル%、LiO、NaO、KOの合計:0〜30モル%、MgO、CaO、SrO、BaOの合計:0〜30モル%の範囲内のものが好ましい。
【0020】
前者の組成のガラス粉末において、Biは網目を形成する酸化物で、5〜45モル%の範囲で含有することが好ましい。Biが5モル%未満の場合、低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。45モル%を超えると、ガラス化しにくくなるとともに熱膨張係数が高くなる傾向がある。ZnOは熱膨張係数を下げ、かつ熱軟化点を下げる成分であり、5〜60モル%の範囲で含有することが好ましい。ZnOが5モル%未満ではガラス化が困難であり、60モル%を超えると低軟化点ガラス成形時の安定性が悪く失透が発生しやすくなり、ガラスが得られなくなる恐れがある。SiOは網目を形成する酸化物で、0.5〜40モル%の範囲で含有することが好ましい。SiOが0.5モル%未満の場合、誘電体層形成時に焼成した際に過度な流動が起こりやすくなる。40モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。Bはガラス骨格を形成してガラス化可能となる範囲を広げる成分であり、10〜60モル%の範囲で含有することが好ましい。Bが10モル%未満の場合、ガラス化が困難になり、60モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。Alはガラスを安定化させる成分であり、0〜10モル%の範囲で含むことが好ましい。10モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。ZrOはガラスを安定化させる成分であり、0〜10モル%の範囲で含むことが好ましい。10モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。LiO、NaO、KOは熱軟化点を下げる成分であり、合計で0〜15モル%の範囲で含むことが好ましい。15モル%を超えると失透しやすくなる。MgO、CaO、SrO、BaOはガラスを安定化させる成分であり、合計で0〜15モル%の範囲で含むことが好ましい。15モル%を超えると失透しやすくなる。
【0021】
後者の組成のガラス粉末においてZnOは熱膨張係数を下げ、熱軟化点を下げる成分であり、0〜20モル%の範囲で含むことが好ましい。20モル%を超えると失透しやすくなる。SiOは網目を形成する酸化物で、3〜50モル%の範囲で含むことが好ましい。SiOが3モル%未満の場合、焼成した際に低軟化点ガラスの過度な流動が起こりやすくなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。50モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。Bはガラス骨格を形成してガラス化可能となる範囲を広げる成分であり10〜60モル%の範囲で含むことが好ましい。Bが10モル%未満の場合、ガラス化が困難になり、60モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。Alはガラスを安定化させる成分であり、1〜40モル%の範囲で含むことが好ましい。Alが1モル%未満では、安定したガラスが得られない傾向がある。40モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。ZrOはガラスを安定化させる成分であり、0〜10モル%の範囲で含むことが好ましい。10モル%を超えると低軟化点ガラスの軟化点が高くなり、誘電体層や隔壁が困難になる傾向がある。LiO、NaO、KOは熱軟化点を下げる成分であり、合計で0〜30モル%の範囲で含むことが好ましい。30モル%を超えると失透しやすくなる。MgO、CaO、SrO、BaOはガラスを安定化させる成分であり、合計で0〜30モル%で含むことが好ましい。30モル%を超えると失透しやすくなる。
【0022】
本発明のガラスペーストに含まれる低軟化点ガラス粉末のガラス転移点は400〜550℃、熱軟化点は400℃〜600℃の範囲が好ましい。ガラス転移点が400℃未満、または熱軟化点が400℃未満では、焼成した際に低軟化点ガラスの過度の流動が起こりやすくなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。ガラス転移点550℃、または熱軟化点600℃超えると、焼結不足になりやすくなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。
【0023】
これらのガラスの体積基準分布の中心径は、0.5〜10μmの範囲にあることが好ましい。0.5μmでは焼成した際に低軟化点ガラスの過度の流動が起こりやすくなり、誘電体層や隔壁の形成が困難になる傾向がある。10μmを超えると、焼成後の誘電体層や隔壁表面が荒れ、パネルとして好ましくない。
【0024】
粉末の粒子径は、レーザー回折散乱法を利用した粒度分布計(マイクロトラック粒度分析計 MODEL MT3000)を用いて測定した値であり、測定は試料1g程度をとり、精製水中で1〜3分間40Wの出力の超音波で分散させて行う。体積基準分布の中心径は50%体積粒径である。
【0025】
このような低軟化点ガラス粉末をガラスペースト全重量に対し10〜60重量%の範囲で含むことが好ましい。特に好ましい範囲は25〜50重量%である。
【0026】
本発明のガラスペーストは無機粉末としてフィラーを含むことが好ましい。フィラーは、焼成時の収縮率を小さくし、基板にかかる応力を低下させるなどの効果がある。フィラー添加量はガラスペースト全重量に対し、5〜30重量%の範囲が好ましい。フィラー添加量を5重量%より少なくなると、焼成収縮率を大きくなり、熱膨張係数を制御する効果が得られない。また、フィラー添加量が30重量%を超えると、焼成後の誘電体層の緻密性や強度を保つことができず、同時に、クラックが発生しやすくなる。
【0027】
フィラーとして、軟化点650〜850℃の高融点ガラス、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種以上が好ましく用いられる。
【0028】
本発明のガラスペーストは有機成分を含む。有機成分としては熱重合開始剤、光重合開始剤、増感剤、バインダー樹脂、重合性化合物、紫外線吸収剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、沈殿防止剤等を、目的に応じて含むことができる。
【0029】
熱重合開始剤は本発明のガラスペーストを熱硬化型ガラスペーストとする場合に用いられ、有機過酸化物やアゾ化合物を用いることができる。具体例をあげると、有機過酸化物としては、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどが挙げられる。アゾ化合物としては、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシメチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)などが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。熱重合開始剤は、ガラスペースト全重量に対し0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは0.1〜5重量%である。熱重合開始剤の量が少なすぎれば、硬化が進まなく膜の強度不足が起こりやすくなり、熱重合開始剤の量が多すぎれば、硬化が進みすぎ、膜の剥離が発生しやすくなる。
【0030】
光重合開始剤は本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとする場合に用いられ、具体的な例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジル−2−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4、4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、ガラスペースト全重量に対し、0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜5重量%である。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0031】
なお光重合開始剤と共に増感剤も用いることができる。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミニベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオ−テトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオ−テトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。増感剤を本発明のガラスペーストに添加する場合、その添加量はガラスペースト全重量に対して通常0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0032】
バインダー樹脂の具体的な例としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、シリコンポリマー(例えば、ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン)、ポリスチレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、ポリアクリルアミドおよび種々のアクリルポリマーやセルロース化合物などが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。バインダー樹脂は、ガラスペースト全重量に対し0〜30重量%の範囲で添加され、より好ましくは0〜15重量%である。
【0033】
重合性化合物は本発明のガラスペーストを熱硬化型ガラスペーストあるいは感光性ガラスペーストとする場合に用いられ、その例としては、炭素−炭素不飽和結合を含有するモノマー、オリゴマー、、またはポリマーが挙げられ、その具体的な例として、モノマーはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマーにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。
【0034】
また、前述の炭素−炭素二重結合を有する化合物のうち少なくとも1種類を重合して得られたオリゴマーやポリマーを用いることもできる。重合する際に、これらのモノマーの含有率が10重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上になるように、他の重合性のモノマーと共重合することができる。
【0035】
感光性ガラスペーストとしてフォトリソグラフィーによるパターン形成に用いる場合は、共重合するモノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を共重合することによって、感光後のアルカリ現像液による現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。このようにして得られた側鎖にカルボキシル基等の酸性基を有するポリマーもしくはオリゴマーの酸価(AV)は50〜180、さらには70〜140の範囲が好ましい。酸価が50未満であると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が180を越えると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくい。
【0036】
以上示した、ポリマーもしくはオリゴマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性を持つ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
【0037】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0038】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
【0039】
本発明のガラスペーストではこれら重合性化合物を1種または2種以上使用することができる。反応性化合物は、ペースト全重量に対し1〜50重量%の範囲で添加され、より好ましくは5〜30重量%である。
【0040】
また、フォトリソグラフィによって隔壁を形成するための感光性ガラスペーストとする場合はその感光性ガラスペースト中に、また感光性ガラスペーストにより隔壁を形成する場合にその下地に用いる誘電体を形成するためのガラスペースト中に、有機染料からなる紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤としては、特に限定はされないが、焼成後の絶縁膜中に残存しないものが好ましい。具体的にはアゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、ベンゾキノン系染料、ベンゾフェノン系染料、ナフトキノン系染料、フタルイミド系染料、ペリノン系染料、インドール系染料などが使用できる。これらの中でもアゾ系、ベンゾフェノン系およびインドール系染料が好ましい。有機染料の添加量はペースト全重量に対し0.01〜3重量%が好ましい。
【0041】
重合禁止剤は、本発明のガラスペーストを熱硬化型ガラスペーストあるいは感光性ガラスペーストとする場合に用いられ、保存時の熱安定性を向上させるために添加される。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、pt−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、ガラスペースト全重量に対し、0.001〜1重量%である。
【0042】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0043】
酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐために添加される。酸化防止剤の具体的な例として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。
【0044】
本発明のガラスペーストには、溶液の粘度を調整したい場合、有機溶媒を加えてもよい。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセルソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸、ターピネオール、エチレングリコールアルキルエーテル(例えばエチレングリコールモノエチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール))、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート))、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル(例えばトリプロピレングリコールn−ブチルエーテル)、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、アセチルトリアルキルシトレート、トリアルキルシトレート、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタジオールジイソブチレート、フタル酸ジメチル(ジメチルフタレート)、フタル酸ジエチル(ジエチルフタレート)、およびフタル酸ジブチル(ジブチルフタレート)(ここでアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルまたは2−エチルヘキシルを表す)、からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタジオールモノイソブチレートおよびプロプレングリコールフェニルエーテルなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0045】
本発明のガラスペーストは、通常、低軟化点ガラスと有機成分等の各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し作製する。ペーストの粘度は無機微粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は200mPa・s〜200Pa・sの範囲内が好ましい。
【0046】
次に、本発明のプラズマディスプレイの製造方法の具体的な好ましい態様について説明する。本発明のPDPの製造方法のうち、PDP背面板の製造方法は、まず、基板上に、電極ペーストを用いて、所望のパターン形状の電極パターンを形成する。次に、電極パターンを形成した基板上に、誘電体ペーストを用いて誘電体ペースト塗布膜を形成する。さらに、誘電体ペースト塗布膜上に隔壁ペーストを用いて、隔壁パターンを形成する。そして、電極パターン、誘電体ペースト塗布膜および隔壁パターンを基板ごと一括焼成して、電極層、誘電体層および隔壁を形成し、その後蛍光体層を形成する。以下に、各工程について詳述する。
【0047】
プラズマディスプレイの背面板の基板としては、通常、ソーダガラスや旭硝子社製の“P
D−200”、日本電気化学社製の“PP−8”などの高歪み点ガラスを用いたガラス基板が用いられる。基板上に、導電性金属およびバインダーを含む電極ペーストを用いて電極パターンを形成する。電極パターン形成には、スクリーン印刷法や感光性ペースト法、プレス成型法等を用いることができる。パターンの高精細化や工程の簡略化が可能である点から、感光性ペースト法が特に好ましい。以下、感光性ペースト法の手順について説明する。
【0048】
基板上に、感光性電極ペーストを全面に、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度および塗出量を選ぶことによって調整できる。塗布厚みは、所望の電極の高さと焼成による電極ペーストの収縮率を考慮して決めることができるが、通常好ましい焼成後の電極の高さは1〜10μmの範囲であり、焼成収縮を考慮すると塗布する電極ペースト塗布膜の厚さは1〜15μmの範囲であることが好ましい。
【0049】
塗布された感光性電極ペーストを乾燥して露光を行う。露光に使用される活性光線は、紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが使用される。超高圧水銀灯を光源とした平行光線を用いる露光機が一般的である。
【0050】
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行い、電極パターンを形成する。現像には、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。現像液には、感光性の電極ペースト中の有機成分、特にポリマーが溶解可能な溶液を用いるとよい。
【0051】
電極パターンの形成は、焼成による収縮を考慮して行うとよい。焼成後の電極のサイズとしては、ピッチ100〜600μm、高さ1〜10μm、幅30〜150μmの範囲が好ましい。
【0052】
次に、誘電体層の形成のために、基板上に低軟化点ガラス粉末およびバインダー樹脂成分を含む有機成分を含む誘電体ペーストを全面に、もしくは部分的に塗布する。誘電体層は基板上に形成された電極を被覆して保護し絶縁する作用を有すると共に、その上に形成される隔壁の形成性を改良する効果を有するものである。本発明のPDPの製造方法においては、誘電体層の形成に本発明のガラスペーストを用いることが好ましく、さらにはバインダー樹脂成分として熱硬化性を有するものを用いて、熱硬化型のガラスペーストとして用いるのが好ましい。
【0053】
誘電体層の厚みは、焼成後で4〜18μmの範囲、より好ましくは8〜15μmの範囲であることが、均一で緻密な誘電体層を形成するために好ましい。厚さを18μm以下とすることで、焼成の際の脱バインダー性が良好となり、バインダーの残存に起因するクラックが生じない。またガラス基板にかかる応力も小さくなるので基板が反るなどの問題も生じない。また、4μm以上とすることで平坦性で均一かつ緻密な誘電体層を形成することができ、電極部分の凹凸によって誘電体層にクラックが入るなどの問題が生じない。
誘電体ペースト塗布膜を形成した後、乾燥を行う。乾燥して硬化させることにより、後の焼成工程における電極パターンや隔壁パターンの収縮による応力に誘電体ペースト塗布膜が耐えることができるようになる。誘電体ペースト塗布膜を乾燥する条件としては、100〜300℃の温度範囲で3〜30分の時間範囲が好ましい。好ましくは、150〜250℃の温度範囲で5〜30分の時間範囲である。
【0054】
次いで、隔壁パターンを形成する。発明のPDPの製造方法においては、隔壁の形成に本発明のガラスペーストを用いることが好ましい。隔壁パターンの形成には、スクリーン印刷法やサンドブラスト法、感光性ペースト法、プレス成型法等が用いられる。パターンの高精細化や工程の簡略化が可能である点から、感光性ペースト法が特に好ましい。そのため、本発明のガラスペーストを感光性ガラスペーストとして、特に、光重合性ペーストとして用いることが好ましい。以下に、感光性ペースト法の手順について説明する。
【0055】
誘電体ペースト塗布膜の上に、感光性隔壁ペーストを全面に、もしくは部分的に塗布する。感光性ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコータ法、ドクターブレード法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚さは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。通常、焼成後の隔壁の好ましい高さは60〜170μmの範囲であり、焼成収縮を考慮すると塗布する隔壁ペースト塗布膜の厚さは80〜220μmの範囲内であることが好ましい。
【0056】
塗布された感光性隔壁ペーストは、乾燥され、露光される。露光に使用される活性光線は、紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが使用される。超高圧水銀灯を光源とした平行光線を用いる露光機が一般的である。
【0057】
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行い、隔壁パターンを形成する。現像には、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。現像液には、感光性隔壁ペースト中の有機成分、特にポリマーが溶解可能な溶液を用いるとよい。本発明では、アルカリ水溶液で現像することが好ましい。隔壁のパターニングは、焼成による収縮を考慮して行うとよい。焼成後の隔壁のサイズとしては、ピッチ100〜600μmの範囲、高さが60〜170μmの範囲、幅が20〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
隔壁パターンは、主としてストライプ状に形成されるが、特に限定されず、格子状である場合もある。本発明の誘電体ペーストを用いると、格子状の隔壁を形成した場合でも、誘電体層に亀裂が生じることはない。隔壁が格子状である場合、後の前面板との封着工程において排気がスムーズに行えるように、補助隔壁の高さを主隔壁より低くすることが好ましい。補助隔壁の高さは、主隔壁の10〜95%であることが好ましく、より好ましくは30〜95%、さらに好ましくは60〜95%である。
【0059】
隔壁パターンを形成した後に、電極パターン、誘電体ペースト塗布膜および隔壁パターンを同時に焼成して、電極層、誘電体層および隔壁を形成する。なお、電極パターン、誘電体ペースト塗布膜および隔壁パターンは同時焼成せず、各層を設けるごとに個別に、あるいはこれらの一部のみを同時に焼成してもよい。これらを全て同時に焼成することによって、特に生産性高く、低コストにPDPを製造することができる。
【0060】
焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の特性によって異なるが、通常は空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。バッチ式の焼成の場合、誘電体ペースト塗布膜の上に隔壁パターンが形成されたガラス基板を、室温から500℃程度まで数時間掛けてほぼ等速で昇温した後、さらに焼成温度として設定された500〜600℃に30〜40分間で上昇させて、15〜30分間保持して焼成を行うことが好ましい。焼成温度を600℃以下、焼成時間を15〜30分の範囲に設定することで、焼成残渣や隔壁のダレなどを抑制することができる。
【0061】
このようにして得られた隔壁に挟まれたセル内に、赤、緑、青に発光する蛍光体層を形成してプラズマディスプレイ用パネルの背面板が構成される。蛍光体層は、蛍光体粉末とバインダー樹脂等の有機成分を含む蛍光体ペーストを、スクリーン版を用いたパターン印刷、複数の吐出孔を有するディスペンサーを用いたパターン塗布、フォトリソグラフィー法によるパターン化等の方法によりパターン形成した後、焼成することによって形成することができる。
【0062】
次に、プラズマディスプレイの前面板の作製方法について述べる。基板としては、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP8”(日本電気硝子社製)、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。
【0063】
まず、ガラス基板上に、インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタし、フォトエッチング法によりパターン形成する。次いで、黒色電極用の黒色電極ペーストを印刷する。黒色電極ペーストは、有機バインダー、黒色顔料、導電性粉末と、フォトリソグラフィ法で用いる場合は感光性成分が主成分となる。黒色顔料としては、金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物としては、チタンブラックや、銅、鉄、マンガンの酸化物やそれらの複合酸化物、コバルト酸化物などがあるが、ガラスと混合して焼成したときに退色が少ない点でコバルト酸化物が優れている。導電性粉末としては、金属粉末または金属酸化物粉末が挙げられる。金属粉末としては電極材料として通常用いられる金、銀、銅、ニッケルなどを特に制限無く用いることが出来る。この黒色電極は抵抗率が大きいので、抵抗率の小さい電極を作製してバス電極を形成するため、導電性の高い電極用ペースト(例えば銀を主成分とするもの)を、黒電極ペーストの印刷面上に印刷する。そして、一括露光/現像してバス電極パターンを作製する。導電性を確実に確保するため、現像前に導電性の高い電極ペーストを再び印刷し、再露光後一括現像してもよい。バス電極パターンを形成後、焼成する。その後、コントラスト向上のため、ブラックストライプやブラックマトリクスを形成するのが好ましい。焼成後の黒色電極ペーストおよび焼成後の導電性ペーストの膜厚はそれぞれ、1〜5μmの範囲であることが好ましい。また、焼成後の線幅は20〜100μmであることが好ましい。
【0064】
次に、透明誘電体ペーストを用いて透明誘電体層を形成する。透明誘電体ペーストは、有機バインダー、有機溶剤、ガラスが主成分であるが、適宜可塑剤などの添加物を加えても良い。透明誘電体層の形成方法は特に限定されないが、例えば,スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーターなどにより、電極形成基板上に透明誘電体ペーストを全面塗布または、部分的に塗布した後に、通風オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥炉、真空乾燥など任意なものを用いて乾燥し、厚膜を形成することができる。また、透明誘電体ペーストをグリーンシート化し、これを電極形成基板上にラミネートすることも可能である。厚みは、10〜50μmが好ましい。
【0065】
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類により異なるが、空気中や窒素、水素等の雰囲気下で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラー搬送式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、使用する樹脂が十分に脱バインダーする温度で行うのがよい。通常、アクリル系樹脂を用いる場合は430〜650℃での焼成を行う。焼成温度が低すぎると樹脂成分が残存しやすく、高すぎるとガラス基板に歪みが生じ割れてしまうことがある。
【0066】
さらに、保護膜を形成する。保護膜としてはMgO、MgGd、BaGd、Sr0.6Ca0.4Gd、Ba0.6Sr0.4Gd、SiO、TiO、Al、前述の酸化物の群から少なくとも1種類用いるのがよいが、特にMgOが好ましい。保護膜の作製方法は、電子ビーム蒸着やイオンプレーティング法など公知の技術を用いることができる。
【0067】
得られた背面板基板の周囲部に封着部材を形成し、得られた前面板と位置合わせして重ね合わせ、加熱して、前背面の基板間隔に形成された空間を減圧することで、背面板と前面板との接着と、封着が行われる。前背面の基板間隔に形成された空間に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入後、駆動回路を装着してプラズマディスプレイを作製できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例表中のバインダー樹脂、架橋剤の添加量は、溶媒を除いた樹脂のみの添加量を示す。
【0069】
(実施例1〜14、比較例1〜10)
実施例、比較例に用いた低軟化点ガラス粉末の組成を表1、表2に記載する。
【0070】
なお、低軟化点ガラスのFeOとFeの含有量、およびFeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比は以下の測定により求める。一定量の低軟化点ガラスをフッ化水素酸と塩酸の混酸によりエッチングする。エッチング液のうち、一定量をプラスチック容器に分取し、速やかに2,2’−ジピリジル溶液および酢酸アンモニウム緩衝液を添加してFeOを構成するFe2+のみを発色させる。発色液はイオン交換水で一定量とする。次に、エッチング液の一定量を別のプラスチック容器に分取し、ヒドロキシルアミン塩酸溶液、2,2’−ジピリジル溶液および酢酸アンモニウム緩衝液を添加しFeを構成するFe3+をFe2+に還元して、全鉄イオンを発色させる。発色液はイオン交換水で一定量とする。
【0071】
3価の鉄の標準液をヒドロキシルアミン塩酸溶液、2,2’−ジピリジル溶液および酢酸アンモニウム緩衝液を用いて同様に発色させる。この標準発色液の522nmでの吸光度を測定し検量線を作製する。試料発色液の吸光度を測定し検量線よりFe2+濃度を計算する。この測定濃度とガラスのエッチング量よりFe2+の含有量、Fe2++Fe3+の含有量を計算する。そして求まったFe2+の含有量とFe3+の含有量より酸化物換算してFeO+Feの含有量の合計、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比を計算する。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
125mm角のガラス基板(旭硝子社製“PD200”)上に、電極ペースト(東レ株式会社製)を乾燥後厚みが5μmになるように、スクリーン印刷法(印刷版:SUS#325)により塗布し乾燥した。乾燥後、ピッチ250μm、線幅50μmのストライプパターンを有するフォトマスクをセットして露光した。露光後、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像して、ピッチ250μm、線幅60μmのストライプ状電極パターンを得た。その後、熱風乾燥機を用いて200℃、15分のキュアを行った。
【0075】
その電極パターン付きガラス基板上に、それぞれ表3に示す低軟化点ガラス粉末を含む誘電体ペースト1〜16を乾燥後厚み15μmになるように、スクリーン印刷法(印刷版:SUS#325)により塗布し、熱風乾燥機を用いて150℃、15分乾燥した。
【0076】
誘電体ペースト1〜16の組成を以下に記す。
樹脂バインダー(数平均分子量80000のエチルセルロースの5%テルピネオール溶液):20重量%、
重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、日本化薬株式会社製、“TPA330”、3官能):20重量%、
低軟化点ガラス粉末E〜M、Q〜W(それぞれ表3に記載のもの):40重量%、
重合開始剤(過酸化ベンゾイル):3重量%、
分散剤(ノプコスパース092):1重量%、
フィラー(酸化チタン、石原産業社製、“R550”)、10重量%、
溶剤(テルピネオール):6重量%。
誘電体ペースト1〜16は、それぞれ上述の成分からなる混合物を3本ローラー混練機で混練して作製した。
【0077】
【表3】

【0078】
次に、それぞれ表4に示す低軟化点ガラス粉末を含む隔壁ペースト1〜7を乾燥後厚み90μmになるように塗布し、乾燥した。乾燥後、ピッチ750μm、線幅50μmのストライプパターンを有するフォトマスクをアドレス電極と直交するような配置でセットして露光した。露光した後、それぞれ同じ隔壁ペースト1〜7をさらに塗布し、乾燥して乾燥厚さ90μmの塗布膜を形成した。この塗布膜の上に、ピッチ250μm、線幅30μmのストライプパターンを有するフォトマスクをアドレス電極と平行になるような配置でセットして露光した。露光後、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、ピッチ250μm、線幅40μm、高さ180μmのストライプ状隔壁パターンとピッチ750μm、線幅50μm、高さ90μmの補助隔壁パターンからなる格子状隔壁パターンを得た。
【0079】
隔壁ペースト1〜7の組成を以下に記す。
重合性化合物A(トリメチロールプロパントリアクリレート、日本化薬株式会社製、“TPA330”、3官能):5重量%、
重合性化合物B(アクリル系ポリマー、スチレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応したもの、重量平均分子量43,000、酸価95)の40%γ−ブチロラクトン溶液):20重量%、
低軟化点ガラス粉末A〜D、N〜P(それぞれ表4に記載のもの):45重量%、
重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン):3重量%、
分散剤(ノプコスパース092):1重量%、
重合禁止剤(ハイドロキノン):1重量%、
フィラー(軟化点650℃の高軟化点ガラス粉末):10重量%、
溶剤(γ−ブチロラクトン):15重量%。
隔壁ペースト1〜7は、それぞれ上述の成分からなる混合物を3本ローラー混練機で混練して作製した。
【0080】
【表4】

【0081】
このように電極パターン、誘電体ペースト塗布層、隔壁パターンを形成した後に、これらを同時に焼成した。焼成にはローラーハース式焼成炉を用い、焼成温度570℃で15分間焼成した。ピッチ250μm、線幅50μm、厚み3μmのストライプ状電極、厚み10μmの誘電体層、ピッチ250μm、線幅30μm、高さ120μmのストライプ状隔壁とピッチ750μm、線幅50μm、高さ60μmの補助隔壁からなる格子状隔壁が得られた。
【0082】
得られた隔壁、誘電体、電極の3層を有する基板の面内25箇所の色度(b値)をコニカミノルタ株式会社製CM2500dにより測定した。得られたb値に応じ、着色のパネル性能を以下のように評価した。
値が15未満:良
値が15以上:不良
この隔壁形成した基板に赤、緑、青3色のの蛍光体ペーストを隔壁パターン間の溝にスクリーン印刷した。スクリーンは、#200メッシュ、ピッチ250μm、幅30μmのストライプ状開口パターンを備えたものを用いた。印刷した。その後、乾燥(150℃、30分)、焼成(500℃、30分)して隔壁の側面および底部に蛍光体層を形成した。焼成後の蛍光体膜の平均膜厚が15±0.5μmとなるようにスクリーン印刷時の塗布速度を調整した。
【0083】
次に、前面板を以下の工程によって作製した。まず、125mm角のガラス基板(旭硝子社製“PD200”)上にITOをスパッタ法で形成後、レジスト塗布し、露光、現像処理、エッチング処理によって厚み0.1μm、線幅200μmの透明電極を形成した。また、黒色銀粉末からなる感光性銀ペーストを用いてフォトリソグラフィー法により、焼成後厚み5μmの走査電極と維持電極を形成した。電極はそれぞれピッチ750μm、線幅80μmのものを作製した。
【0084】
次に、酸化鉛を75重量%含有する低融点ガラスの粉末を70重量%、エチルセルロース20重量%、テルピネオール10重量%を混練して得られたガラスペーストをスクリーン印刷により、表示部分の表示電極が覆われるように50μmの厚みで塗布した後に、570℃、15分間の焼成を行って前面誘電体を形成した。
【0085】
誘電体を形成した基板上に、保護膜として、電子ビーム蒸着により厚み0.5μmの酸化マグネシウム層を形成して前面板を作製した。
【0086】
作製した前面板と背面板とを封着ガラスを用いて封着して、Xe15%含有のNeガスを内部ガス圧85000Paになるように封入し、駆動回路を実装することによりプラズマディスプレイパネルを作製した。
【0087】
作製したPDPの走査電極に140V、データ電極に70V印加し、維持電極の電圧を徐徐に上げて印加していき、全面点灯に必要な電圧を測定し、最低維持パルス電圧とした。得られた最低維持パルス電圧に応じ、消費電力性能を以下のように判定した。
最低維持パルス電圧が171V以下:優
最低維持パルス電圧が171Vより大きく173V以下:良
最低維持パルス電圧が173Vより大きい:不可
消費電力性能が優または良であり、かつ着色評価が良である場合にパネル評価合格、消費電力性能または着色評価が不良の場合はパネル評価不合格とした。
【0088】
評価結果を表5、表6に示す。維持電極最低印可電圧の低い良好なディスプレイを得ることができた。
【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
実施例1〜13では、誘電体層または隔壁の形成に本発明のガラスペーストを用いたため、最低維持パルス電圧が低く消費電力性能に優れており、かつ着色のない良好なプラズマディスプレイパネルを得ることができた。
【0092】
比較例1〜8、10では、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比が小さな低軟化点ガラス粉末を用いたため、最低維持パルス電圧が高く消費電力性能仁尾取るパネルとなった。また、比較例9では、誘電体の形成にFeOとFeの含有量の合計が大きな低軟化点ガラス粉末を含むガラスペーストを用いたため、着色したプラズマディスプレイとなった。
【符号の説明】
【0093】
1 前面ガラス基板
2a、2b 表示電極
3a、3b 透明電極
4a、4b バス電極
5 透明誘電体層
6 保護層
10 ブラックパターン
11 背面ガラス基板
12 隔壁
13 アドレス電極
14a 赤色蛍光体膜
14b 青色蛍光体膜
14c 緑色蛍光体膜
15 誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軟化点ガラス粉末および有機成分を含むガラスペーストであって、前記低軟化点ガラスは、FeOとFeを重量基準で合計1〜1000ppmの範囲内含み、FeOとFeの含有量の合計に対するFeOの含有量の比が重量基準で0.40〜0.95の範囲内であることを特徴とするガラスペースト。
【請求項2】
前記有機成分として、反応性化合物と熱重合開始剤または光重合開始剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載のガラスペースト。
【請求項3】
前記低軟化点ガラス粉末の組成が以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスペースト。
Bi:5〜45モル%
ZnO:5〜60モル%
SiO:0.5〜40モル%
:10〜60モル%
Al:0〜10モル%
ZrO:0〜10モル%
LiO、NaO、KOの合計:0〜15モル%
MgO、CaO、SrO、BaOの合計:0〜15モル%
【請求項4】
前記低軟化点ガラス粉末の組成が以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガラスペースト。
ZnO:0〜20モル%
SiO:3〜50モル%
:10〜60モル%
Al:1〜40モル%
ZrO:0〜10モル%
LiO、NaO、KOの合計:0〜30モル%
MgO、CaO、SrO、BaOの合計:0〜30モル%
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガラスペーストを用いて誘電体層または隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−158484(P2012−158484A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18076(P2011−18076)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】