説明

ガラス基材積層体及びパターン付きガラス基材積層体

【課題】ガラス基材積層体の搬送時における位置精度の悪化、ニップや挟み込み時における搬送不良、ガラス基材の損傷などを防ぐことができるガラス基材積層体を提供する。
【解決手段】ガラス基材11と、粘着層12と、前記粘着層12を介して前記ガラス基材11に積層されたプラスチック基材13とを備えているガラス基材積層体10である。前記プラスチック基材13にスリット14が設けられたガラス基材積層体によって解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材積層体及びパターン付きガラス基材積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ、カラーフィルタ、太陽電池等にガラス基材が用いられている。近年、ガラス製造技術の進歩により、厚さが0.1mm程度又はそれ以下の薄ガラスが製造されている。このようなガラス基材は可撓性を有することから、ガラス基材上へのパターン形成にロールtoロールプロセスが適用できるため、従来のシート(枚葉)プロセスと比較して高い生産性を得ることができる。
【0003】
しかし、このようなガラス基材は非常に脆く、フォトリソグラフィープロセスなどの製膜工程などを通した場合にガラス基材は破損し易く、膜形成やパターン形成が困難になるという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1においてガラスフィルム(ガラス基材)の一方の面に可撓性を有するプラスチック製などの支持シートを接着し、ガラスフィルムを保護するようなガラスフィルム積層体(ガラス基材積層体)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようなガラスフィルム積層体では、ガラス基材と支持シートの物性、例えば熱収縮率、熱膨張率、吸湿膨張率等が異なるため、製膜工程などに含まれる加熱工程やウェット工程を流れる際にガラス基材と支持シートの寸法変化が発生する。これらの寸法変化はプラスチック製の支持シートの方が大きく、寸法変化により生じる支持シート内部の応力に逃げ場がないため、ガラスフィルム積層体がカールする、すなわち反りの問題を引き起こすおそれがある。また、上記のようなカールが発生すると、ガラスフィルム積層体の搬送時において、カールによりガラスフィルム積層体の端部の位置をセンサーが正確に検出できず、位置精度が悪化する問題、ニップや挟み込み時において、カールによりガラスフィルム積層体のニップや挟み込みの位置がずれたり、折れたりする問題等を引き起こすおそれがある。
【0007】
上記問題を解決するために、本発明はカールが発生しにくいガラス基材積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガラス基材と、粘着層と、前記粘着層を介して前記ガラス基材に積層されたプラスチック基材とを備え、前記プラスチック基材にスリットが設けられていることを特徴とするガラス基材積層体を提供する。
【0009】
この発明によれば、ガラス基材積層体のプラスチック基材にスリットが設けられているため、ガラス基材積層体のカールの発生を防ぐことができる。そのため、ガラス基材積層体の搬送時における位置精度の悪化、ニップや挟み込み時における搬送不良、ガラス基材の損傷などを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明のガラス基材積層体において、前記プラスチック基材のスリットが前記ガラス基材の長手方向に平行に配置されている、ようにしてもよい。
【0011】
また、本発明のガラス基材積層体において、前記ガラス基材の厚さが0.005mm〜0.1mmである、ようにしてもよい。
【0012】
また、本発明のガラス基材積層体において、前記ガラス基材の粘着層と接する側の面と反対側の面にパターンを備える、ようにしてもよい。
【0013】
また、本発明のガラス基材積層体において、前記パターンがカラーフィルタである、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガラス基材積層体によれば、プラスチック基材の寸法変化を低減することにより、ガラス基材積層体のカールの発生を防止することができる。また、ガラス基材積層体を搬送する際や製膜工程での不具合の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るガラス基材積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るガラス基材積層体に生じるカールの原理を示す断面図である。
【図3】本発明に係るシート態様のプラスチック基材に設けられたスリットを示す平面図である。
【図4】本発明に係るロール態様のプラスチック基材に設けられたスリットを示す平面図である。
【図5】本発明に係るパターンが設けられたガラス基材積層体の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に係るガラス基材積層体のカール量を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.ガラス基材積層体
以下、図1により、本発明のガラス基材積層体10について説明する。図1に示すガラス基材積層体10は、ガラス基材11と、粘着層12と、粘着層12を介してガラス基材11に積層されたプラスチック基材13とを備えている。そして、プラスチック基材13にはスリット14が設けられている。
【0017】
(1)ガラス基材
次に、ガラス基材11について説明する。ガラス基材11の材料としては、一般にディスプレイ用に用いられるソーダライムガラス、無アルカリガラス等を挙げることができる。中でも、無色で透明度が高く、線熱膨張係数が小さくて変形しにくいため無アルカリガラスを用いることが好ましい。
【0018】
ガラス基材11の厚さは、ガラス基材11をロール状にできる程度の厚さであればよく、具体的には、一般的にガラス基材11が可撓性を有する厚さ0.1mm以下であることが好ましい。特に、0.005mm〜0.1mmであることが好ましい。このようなガラス基材11に後述するようなスリット14が設けられたプラスチック基材13を貼り合せることにより、ガラス基材積層体10がカールすることを防ぐことができる。ガラス基材11の厚さが0.005mm未満の場合には、ガラス基材11の強度が著しく低下するため、後述のプラスチック基材13と貼り合せる際、ガラス基材11が破損しやすくなり、ガラス基材積層体10の生産性が低下する。ガラス基材11の厚さが0.1mmを超える場合には、ガラス基材11の強度が増すため、プラスチック基材13によりガラス基材11を支持する効果が小さくなる。
【0019】
また、ガラス基材11の面積は、特に制限はないが、シート状の場合は、例えば、20cm2〜90000cm2であることが好ましい。また、ロールtoロールプロセスで使用することが可能な長尺態様の場合は、例えば、幅は5cm〜200cm、長さは3m〜3000mであることが好ましい。
【0020】
ガラス基材11は原理的には溶融したガラスが固化する温度より高い温度において溶融したガラスを引き延ばして作ることができ、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法等を挙げることができる
【0021】
(2)粘着層
次に、粘着層12について説明する。粘着層12の材料としては、ガラス基材11とプラスチック基材13を貼り合せることができるものであれば特に制限はなく、具体的には、アクリル系粘着剤、スチレン系粘着剤、シリコン系粘着剤等を挙げることができる。ここで、粘着層は、最終的にガラス基材11から剥離できる層に限られず、ガラス基材11から剥離せずにガラス基材11に永久的又は半永久的に接着する層、すなわち接着層も包含する。
【0022】
また、粘着層12の厚さは、0.005mm〜0.2mmであることが好ましい。粘着層12をこの厚さの範囲にすることにより、ガラス基材11とプラスチック基材13を貼り合せるために必要な粘着力を十分確保することができる。
【0023】
粘着層12の形成には特に制限はなく、ガラス基材11の一方の面に形成してもよいし、プラスチック基材13の一方の面に形成してもよい。また、塗工方法としては、例えば、ダイコート法、コンマコート法、ナイフコート法、グラビアコート法、ロールコート法等を挙げることができる。
【0024】
(3)プラスチック基材
次に、プラスチック基材13について説明する。プラスチック基材13の材料としては、特に制限はなく、汎用的なプラスチック基材を挙げることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン66(66N)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を挙げることができる。
【0025】
プラスチック基材13の厚さは、特に制限はないが、シート状の場合には0.005mm〜2mmの範囲が好ましい。プラスチック基材13の厚さが0.005mm未満の場合には、プラスチック基材13の強度が不十分で、ガラス基材11を保護することができず、ガラス基材11が破損するおそれがある。また、プラスチック基材13の厚さが2mmを超える場合には、プラスチック基材13の可撓性が失われ、ガラス基材11に応力が加わり、ガラス基材11が破損する恐れがある。一方、長尺態様の場合には、0.005mm〜0.2mmの範囲がより好ましい。プラスチック基材13の厚さが0.005mm未満の場合には、プラスチック基材13の強度が不十分で、ガラス基材11を保護することができず、ガラス基材11が破損するおそれがある。また、プラスチック基材13の厚さが0.2mmを超える場合には、ロールtoロールプロセスにおいて、ロール状に巻き取ることが困難になるという不具合が生じるおそれがある。
【0026】
プラスチック基材13の大きさは、ガラス基材11の面積と同じ、またはガラス基材11の面積よりも大きいプラスチック基材13でガラス基材11の一方の面を全面覆ってあることが好ましい。プラスチック基材13がガラス基材11の一方の面を全面覆うことができない部分があっても、ガラス基材11を保護する機能を得ることはできるが、その場合、プラスチック基材13がガラス基材11の一方の面を全面覆うことができない部分は、ガラス基材11の一方の面の面積の5%以内であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるプラスチック基材13の製造方法は、押出法、カレンダー法、溶液・エマルジョンキャスト法等を挙げることができる。
【0028】
(4)スリット
次に、プラスチック基材13に設けられているスリット14について説明する。本発明においてスリットとは、プラスチック基材13を貫通している開口部や切れ目のことをいう。ガラス基材11とプラスチック基材13を貼り合せることによりできたガラス基材積層体10は、ガラス基材積層体10を作製した後、加熱工程やウェット工程等が含まれる製膜工程に搬送される。ここで、加熱工程は、熱がガラス基材積層体10に加えられる全ての工程を含み、例えば、乾燥、ポストベーク(焼成)、アニール(焼きなまし)等を挙げることができる。ウェット工程は、水がガラス基材積層体10に接触する全ての工程を含み、例えば、洗浄工程、現像工程等を挙げることができる。
【0029】
加熱工程やウェット工程における温度や湿度の変化により、ガラス基材積層体10の寸法は変化する。また、加熱工程やウェット工程だけでなく、ガラス基材積層体10が搬送される工程の環境の温度や湿度の変化によってもガラス基材積層体10の寸法は変化する。このような寸法変化は、ガラス基材積層体10を構成するガラス基材11とプラスチック基材13の物性、例えば、熱収縮率、熱膨張率、吸湿膨張率等により異なる。ガラス基材積層体10において、ガラス基材11よりもプラスチック基材13の寸法変化が大きく、プラスチック基材13の寸法変化によって生じるプラスチック基材13内部の応力(図2中のA)の逃げ場が無いため、図2(a)、(b)に示すように、ガラス基材積層体10がカールするという不具合を生じるおそれがある。
【0030】
ガラス基材積層体10のプラスチック基材13にスリット14が設けられることにより、ガラス基材積層体10が搬送される加熱工程、ウェット工程、環境等の温度や湿度の変化により生じるガラス基材11とプラスチック基材13の寸法変化の差をスリット14が吸収する。すなわち、ガラス基材11とプラスチック基材13の寸法変化の差が生じて図2(a)、(b)のようにカールするような場合には、スリット14が変形して、プラスチック基材13内部の応力Aを緩和し、ガラス基材積層体10がカールするという不具合の発生を防ぐことができる。そのため、ガラスフィルム積層体10の搬送時における位置精度の悪化、ニップや挟み込み時における搬送不良、ガラス基材11の損傷等を防ぐことができる。また、製膜工程においては、カールによりガラス基材積層体10の平坦性が失われると、塗布工程では塗布膜厚が不均一になる問題、露光工程では露光装置ステージがガラス基材積層体10を吸着できず装置のエラーが発生する問題、現像工程では現像液の分布が悪化することによる現像不良が発生する問題等を防ぐことができる。
【0031】
プラスチック基材13に設けられているスリット14の形状については、上記応力を緩和する機能を発揮できるものであれば特に制限はなく、直線状のスリット14(図3(a))や破線状のスリット14(図3(b))、多角形状または円形状、楕円形状等のスリット14や十字形状等のスリット14(図3(c)〜図3(e))等を挙げることができる。中でも、直線状のスリット14や破線状のスリット14を用いることがより好ましい。直線状のスリット14や破線状のスリット14は、プラスチック基材13に切れ目を入れることのみで形成することができ、生産性に優れているためである。また、直線状のスリット14や破線状のスリット14は、ガラス基材11がスリット14から露出する面積を小さくすることができるため、ガラス基材積層体10の強度の低下を防ぐことができる。また、図3(a)〜(e)に示すように同一の形状のスリット14がプラスチック基材13に配置されてもよいし、2種類以上の形状のスリット14を配置させてもよい。さらに、図3(c)〜(e)に示すようにプラスチック基材13に配置されるスリット14は、全て同じ大きさでもよいし、個々のスリット14の大きさが異なっていてもよい。
【0032】
スリット14の形状が、図3(c)〜図3(e)に示すように、例えば、多角形状または円形状、楕円形状等のスリット14の場合には、1つのスリット14の面積は、ガラス基材積層体10がカールすることを防ぐことができれば、特に制限はないが、1つのスリット14の面積は1cm2以下が好ましい。1つのスリット14の面積が1cm2よりも大きい場合は、スリット14から露出するガラス基材11の面積が大きくなり、プラスチック基材13のガラス基材11を保護する効果が低下し、ガラス基材11が破損するおそれがあるためである。
【0033】
プラスチック基材13に形成されるスリット14の数については、特に制限は無いが、通常、複数のスリット14が用いられる。また、プラスチック基材13に形成したスリット14の総面積は、粘着層12と接する側のガラス基材11の面積の10%以下であることが好ましい。上記面積比が10%を超える場合は、プラスチック基材13のガラス基材11を保護する効果が低下し、ガラス基材11が破損するおそれがあるためである。
【0034】
特に、図4(a)、(b)に示すように、ガラス基材積層体10がロールtoロールプロセスに適用できる長尺態様の場合には、スリット14は長手方向に平行に配置されることが好ましい。また、スリット14が長手方向に平行に配置される態様としては、図4(c)に示すように、個々のスリット14は長手方向に対して傾斜して設けられている場合であっても、スリット14が全体として長手方向に平行に配置されていればよい。ここで、長手方向とはガラス基材11やプラスチック基材13の長辺方向のことをいい、シート状の場合であっても同様である。ロールtoロールプロセスの場合、ガラス基材積層体10は長手方向に張力がかけられているため、ガラス基材積層体10の長手方向にカールが発生しにくくなる。一方、ガラス基材積層体10の長手方向に垂直な幅方向には張力がかけられていないので、長手方向よりもカールが発生しやすくなる。ガラス基材積層体10の長手方向に平行な方向にスリット14を設けることでガラス基材積層体10が幅方向にカールするのを防ぐことができる。
【0035】
プラスチック基材13に形成されるスリット14は、後述するパターンが形成される領域から外れた領域に形成されていればよく、特にプラスチック基材13の長手方向に垂直な幅方向のプラスチック基材13の長さに対して、1%〜10%の長さだけプラスチック基材13の端部より内側に形成されることが好ましい。
【0036】
プラスチック基材13に設けられているスリット14の形成方法は、カッター等により切れ込みを入れる方法やスリットの形状に加工したカッター等によりプラスチック基材13をりくり抜いて作製する方法等を挙げることができる。スリット14は、プラスチック基材13に設けられてあればよく、粘着層12にもスリット14が設けられていても、設けられていなくてもよい。
【0037】
(5)パターン付きガラス基材積層体
パターン付きガラス基材積層体20は、図5に示すように、ガラス基材積層体10においてガラス基材11の粘着層12と接する側の面と反対側の面にパターン15が設けられている。具体的なパターン15としては、樹脂層、電極配線等の金属層、絶縁層等を設けることができる。
【0038】
本発明のパターン付きガラス基材積層体20のパターン15がカラーフィルタである場合には、パターン付きガラス基材積層体20のカールを防ぐことで、例えば、パターン15として着色層を塗工する際にムラが生じて色が不均一になる問題や、精度良くパターンが露光されないことによる着色パターン同士のアライメント不良の問題を解決することができる。
【0039】
2.ガラス基材積層体の製造方法
本発明に係るガラス基材積層体10の製造方法は、ガラス基材11を準備する工程と、粘着層12が一方の面に設けられ、かつスリット14が設けられているプラスチック基材13を準備する工程と、ガラス基材11とプラスチック基材13とを粘着層12を介して貼り合せる工程と、を有する。この製造方法は、上記した本発明に係るガラス基材積層体10をロールtoロールプロセスにて製造するための一態様である。なお、上記した本発明に係るガラス基材積層体10は他の方法で製造したものであってもよい。
【0040】
以下、長尺態様のガラス基材積層体10の製造方法について、各工程を詳細に説明する。
【0041】
ガラス基材11を準備する工程としては、前述したガラス基材11の製造方法によりできたガラス基材11はロール状に巻き取られ、ガラス基材ロールとして、ラミネーター等の貼合装置に取り付けられる。
【0042】
粘着層12が一方の面に設けられ、かつスリット14が設けられているプラスチック基材13を準備する工程としては、粘着層12が一方の面に設けられ、かつスリット14が設けられたプラスチック基材13は、粘着層12が半径方向外側を向いて配置されるようにロール状に巻き取られ、粘着層及びスリットが設けられたプラスチック基材ロールとしてラミネーター等の貼合装置に取り付けられる。また、プラスチック基材13の製造方法、プラスチック基材13の一方の面に粘着層12を形成する方法、プラスチック基材13にスリット14を設ける方法ついては、前述の通りである。
【0043】
ガラス基材11とプラスチック基材13とを粘着層12を介して貼り合せる工程としては、ラミネーター等の貼合装置に取り付けられたガラス基材ロールとプラスチック基材ロールから繰り出された、ガラス基材11とプラスチック基材13は搬送され、ニップローラ等により粘着層12を介して貼り合わされる。
【0044】
貼り合わされたガラス基材積層体10は巻き取られ、ロール状のガラス基材積層体10となる。
【0045】
この製造方法で製造されたガラス基材積層体10は、温度や湿度の変化による生じるガラス基材11とプラスチック基材13の寸法変化の差をプラスチック基材13に設けられたスリット14が緩和することで、ガラス基材積層体10を搬送等した際にカールが発生するとういう不具合を防ぐことができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例で得られた内容のみには限定されない。以下の実施例と比較例では、ガラス基材積層体10を製造した。
【0047】
(実施例1)
ガラス基材11として、厚さ0.07mm、幅100mm、長さ100mmのシート状のガラス基材11(日本電気硝子製OA−10G)を準備した。また、粘着層12及びプラスチック基材13として、厚さ0.06mm、幅150mm、長さ100mmのシート状の粘着層付きポリエチレンテレフタレート(PET)基材(日東電工製RT207)を準備した。カッターを用いて、粘着層12付きプラスチック基材13の幅方向に平行に、長さ130mmのスリット14を粘着層12付きプラスチック基材13の両端にそれぞれ5mm間隔で3本形成した(図3(a))。
【0048】
次に、ハンドローラーを用いて、ガラス基材11とスリット14を形成した粘着層12付きプラスチック基材13をラミネートした。ガラス基材11よりはみ出した粘着層12付きプラスチック基材13を切除し、ガラス基材積層体10を作製した。なお、貼り合せの方向は、ハンドローラーの進行方向に対して、粘着層12付きプラスチック基材13は長辺(150mm)方向が垂直になるよう配置した。
【0049】
次に、貼り合せたガラス基材積層体10をクリーンオーブン(エスペック製PVHC−332)にて200℃×15分加熱し、その後、空気中において放冷してガラス基材積層体10を作製した(サンプル1)。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、スリット14を形成しないこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基材積層体10を作製した(サンプル2)。
【0051】
(評価)
ガラス基材積層体10を室温(25℃)まで冷却した後、ガラス面を凸側にカールしたサンプル1及びサンプル2のカール量を比較した。図6に示すように、カール量は、平坦な机の上にガラス基材積層体10が上に凸の状態になるように置き、平坦な机とガラス基材積層体10の辺の浮いた距離Lを定規により測定した。測定の結果、サンプル1のカール量は13mmであったのに対し、サンプル2のカール量は16mmであった。スリット14が形成されているガラス基材積層体10(サンプル1)のカール量が低減したことを確認した。
(実施例2)
【0052】
ガラス基材11として、厚さ0.07mm、幅300mm、長さ10mのロール状のガラス基材11(日本電気硝子製OA−10G)を準備した。また、粘着層12及びプラスチック基材13として、厚さ0.06mm、幅300mm、長さ10mのロール状の粘着層12付きポリエチレンテレフタレート(PET)基材(日東電工製RT207)を準備した。スリッター(DNK製RM0303TK)を用いて、プラスチック基材13の粘着層12が形成されていない側の面に長さ300mmのスリット14を10mm間隔で破線状に長さ方向と平行になるようにプラスチック基材13の両端に3本ずつ形成した(図4(a))。
【0053】
次に、ラミネーター(DNK製LM−203−SB)を用いて、ガラス基材11とスリット14を形成した粘着層12付きプラスチック基材13をラミネートし、ガラス基材積層体10を作製した。
【0054】
次に、貼り合せたガラス基材積層体10をクリーンオーブン(エスペック製PVHC−332)にて200℃×15分加熱し、その後、空気中において放冷してガラス基材積層体10を作製した(サンプル3)。
【0055】
(比較例2)
実施例2において、スリット14を形成しないこと以外は実施例2と同様にして、ガラス基材積層体10を作製した(サンプル4)。
【0056】
(評価)
ガラス基材積層体10を室温(25℃)まで冷却した後、ロールtoロールマスク露光装置(DNK製)にてフォトマスク露光の工程を実施したところ、サンプル3は不具合なく、露光ステージに吸着され、露光工程を行うことができた。一方、サンプル4は、幅方向(300mmの方向)のカール量が大きいため、露光ステージに吸着することができず、露光工程を行うことができなかった。
【符号の説明】
【0057】
10 ガラス基材積層体
11 ガラス基材
12 粘着層
13 プラスチック基材
14 スリット
15 パターン
20 パターン付きガラス基材積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材と、粘着層と、前記粘着層を介して前記ガラス基材に積層されたプラスチック基材とを備え、前記プラスチック基材にスリットが設けられていることを特徴とするガラス基材積層体。
【請求項2】
前記プラスチック基材のスリットが前記ガラス基材の長手方向に平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス基材積層体。
【請求項3】
前記ガラス基材の厚さが0.005mm〜0.1mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス基材積層体
【請求項4】
前記ガラス基材の粘着層と接する側の面と反対側の面にパターンが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のパターン付きガラス基材積層体。
【請求項5】
前記パターンがカラーフィルタであることを特徴とする請求項4に記載のパターン付きガラス基材積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75394(P2013−75394A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215803(P2011−215803)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】