ガラス基板の検査用保持冶具及びガラス基板の検査方法
【課題】第5世代のマザーガラスの大きさ以上の大きさを有するガラス基板を容易に検査することのできるガラス基板の検査用保持冶具を提供する。
【解決手段】柱状部材43,44が柱状部材41の右端近傍部分41a及び柱状部材42の右端近傍部分42aと共に形成する長方形によって、検査用保持冶具10の柱状部材41,42及び柱状部材43,44の位置関係が強固に固定される。また、柱状部材45,46が柱状部材41の左端近傍部分41b及び柱状部材42の左端近傍部分42bと共に形成する長方形によって、検査用保持冶具10の柱状部材41,42及び柱状部材45,46の位置関係が強固に固定される。
【解決手段】柱状部材43,44が柱状部材41の右端近傍部分41a及び柱状部材42の右端近傍部分42aと共に形成する長方形によって、検査用保持冶具10の柱状部材41,42及び柱状部材43,44の位置関係が強固に固定される。また、柱状部材45,46が柱状部材41の左端近傍部分41b及び柱状部材42の左端近傍部分42bと共に形成する長方形によって、検査用保持冶具10の柱状部材41,42及び柱状部材45,46の位置関係が強固に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査時にガラス基板をハンドリングするためのガラス基板の検査用保持冶具、および当該検査用保持冶具を用いるガラス基板の検査方法に関し、特にフラットパネルディスプレイ等に使用されるガラス基板の検査用保持冶具およびガラス基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイの表示部の部品として平らなガラス板が使用される。以下の説明では、このようなガラス板をフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、あるいは単にガラス基板という。
【0003】
例えば、液晶表示装置においては、ガラス基板の間に封入された液晶に印加される電界を変化させ、液晶の配向を変化させることにより、動画の表示が可能になる。液晶表示装置の画像の表示の際に電界を変化させる必要があるため、ガラス基板には、電圧を印加するための透明な電極が形成される。
【0004】
また、ガラス基板上の電極に印加される電圧のオンオフを制御するため、高品質な表示が必要なテレビ受像機などに用いられる液晶表示装置では、薄膜トランジスタ(TFT)を使ったアクティブ・マトリクス方式の制御が採用されている。このTFTもガラス基板上に形成される。
【0005】
このように、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板のガラス面上に、極めて薄い金属膜や半導体によって電極やアクティブな素子が形成されるため、ガラス基板のガラス表面には極めて高い平坦性が要求され、またガラス基板の内部も高い均質性が要求される。特に、フラットパネルディスプレイの分野においては、薄型テレビジョンや携帯電話機のモニタとして広く用いられており、高精細で美しい画像の表示が必要なものが増えているため、ガラス基板に要求される品質も年々高くなってきている。
【0006】
ところで、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、例えば、液晶表示装置に用いられるもの(以下、液晶用ガラス基板という)であれば、薄い長方形の板状の形態を呈する。液晶用ガラス基板は、通常、厚みが0.5mm〜0.7mm程度と1mmよりも薄く、年々大型化の要求が高まってきている。そのため、ガラス基板に欠陥が発生したときに生じる損害の額も大きくなる傾向がある。
【0007】
液晶用ガラス基板は、一つの液晶表示装置に必要な大きさのガラス基板の複数枚の大きさに相当する大きさを持つマザーガラスと呼ばれる形態で、液晶表示装置の製造工程に供給される。このマザーガラスの形態の液晶用ガラス基板の大きさは、慣用的に世代という呼び方で表現され、例えば、第5世代のマザーガラスが1100mm×1250mm以上になる。そのため、1mmよりも薄い液晶用ガラス基板であっても重さが数kg以上になる。
【0008】
このような薄くて重いガラス基板の表面や内部の検査を行うために、従来は、例えば 特許文献1(特開2006−220495号公報)に記載されているような基板検査装置を用いて頑丈な支持フレームに、ガラス基板がしっかりと固定されていた。そして、そのようにしっかりと固定されたガラス基板に光を照射して、ガラス基板から得られる光を機械または人間の目で受光することによってガラス基板の表面や内部の検査が行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ガラス基板の表面の傷などが検査後に生じることがあり、マザーガラスの出荷前に検査が行なわれる場合などもあって、特許文献1に記載されているような頑丈な基板検査装置などにガラス基板を一枚ずつ取り付けと取り外しを繰り返しながら検査を行ったのでは、検査に費やす時間が多くなり過ぎてしまう。
【0010】
そこで、ハンドリングが容易な軽い保持冶具を用いようとすると、ガラス基板の自重や保持冶具の自重などによって保持冶具に生じる歪みに起因してガラス基板に歪みが生じ、検査に要する時間が増える原因となるばかりでなく、検査時の見落としの原因ともなる。
【0011】
本発明の課題は、第5世代のマザーガラスの大きさ以上の大きさを有するガラス基板を容易に検査することのできるガラス基板の検査用保持冶具を提供することにある。また、そのようなガラス基板の検査用保持冶具を用いたガラス基板の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具は、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板に光を当てて検査するためにガラス基板を保持するガラス基板の検査用保持冶具であって、第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材と、第1骨組構造部材と、第2骨組構造部材と、複数のホルダとを備えている。第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されている。そして、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とは、互いに対向して上下に配置される。
【0013】
第1骨組構造部材は、第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続されている。第1骨組構造部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とは、多角形を形成する。第2骨組構造部材は、第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続されている。そして、第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とは、多角形を形成する。
【0014】
複数のホルダは、互いに対向する第1骨組構造部材と第2骨組構造部材、及び、互いに対向する第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材のうちの少なくとも一方の組の部材の長手方向に沿ってそれぞれ3つ以上ずつ配置される。そして、これらの複数のホルダで、ガラス基板が保持される。
【0015】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具では、第1骨組構造部材が第1金属製柱状部材の右端近傍部分及び第2金属製柱状部材の右端近傍部分と共に形成する多角形によって、第1骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定される。また、第2骨組構造部材が第1金属製柱状部材の左端近傍部分及び第2金属製柱状部材の左端近傍部分と共に形成する多角形によって、第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定される。それにより、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定され、多角形の面内方向において検査用保持冶具が変形し難くなる。
【0016】
一方、第1骨組構造部材で構成される骨組構造と第2骨組構造部材で構成される骨組構造は、骨組だけであるため非常に軽く作ることができる。また、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とは、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されているため、必要な剛性を持っているが軽いものである。従って、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで構成される検査用保持冶具は、軽いものとなる。なお、ここでいう長方形のガラス基板には、正方形のガラス基板も含まれる。
【0017】
また、第1骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材を含んでいることが好ましく、第2骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材を含んでいることが好ましい。
【0018】
そして、第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材が第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続され、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とが長方形を形成する。また、第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材が第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続され、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とが長方形を形成する。
【0019】
第1金属製柱状部材の右端近傍部分及び左端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分及び左端近傍部分とをそれぞれ2本の第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材と2本の第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材とで接続するため、これらが形成する長方形の面内方向に変形し難いばかりでなく、長方形の面に垂直な方向にも変形し難くなる。そのため、 検査用保持冶具の第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで形成される2つの長方形の面内方向ばかりでなく、2つの長方形の面と垂直な方向への歪も軽減でき、ガラス基板の検査を正確かつ容易に行うことができる。
【0020】
また、第1骨組構造部材が、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材との間を接続する第1補助部材をさらに含むことが好ましく、第2骨組構造部材が、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材との間を接続する第2補助部材をさらに含むことが好ましい。
【0021】
第1補強部材によって、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とが形成する長方形がさらに変形し難くなり、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材の位置関係がさらに強固に保たれるようになる。また、第2補強部材によって、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とが形成する長方形がさらに変形し難くなり、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第2骨組構造部材との位置関係がさらに強固に保たれるようになる。それにより、検査用保持冶具の第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで形成される2つの多角形の面内方向の歪みを第1補助部材及び第2補助部材で軽減でき、さらに正確にガラス基板の検査を行うことができる。
【0022】
また、異なるサイズのガラス基板に対応するために、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材をさらに備えることが好ましい。第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材は、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材との間で互いに平行になるように、それぞれ第1骨組構造部材及び第2骨組構造部材に沿って配置されることが好ましい。そして、第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材は、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とに接続されている。そして、第7金属製柱状部材には、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられ、第8金属製柱状部材には、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられていることが好ましい。
【0023】
第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材と第2骨組構造部材とを組立て直さなくても、第7金属製柱状部材と第8金属製柱状部材との間隔を調整することにより、左右の幅の異なる種々のガラス基板に対応することができ、左右方向の幅の異なるガラス基板の検査が容易になる。
【0024】
また、異なるサイズのガラス基板に対応するために、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第9金属製柱状部材をさらに備えていることが好ましい。そして、第9金属製柱状部材は、第1金属製柱状部材に平行に配置され、第7金属製柱状部材と第8金属製柱状部材とに接続され、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられていることが好ましい。
【0025】
ガラス基板の上方をホルダで保持する場合において、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材と第2骨組構造部材とを組立て直さなくても、第9金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との間隔を調整することにより、上下の幅の異なる種々のガラス基板に対応することができる。それにより、上下方向の幅の異なるガラス基板の検査が容易になる。
【0026】
また、ガラス基板の検査方法においては、本発明に係る検査用保持冶具の複数のホルダに、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板を保持させるセッティング工程と、検査用保持冶具に保持されたガラス基板に光を当てて検査するための光照射受光工程とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具又はガラス基板の検査方法では、検査用保持冶具が軽量化されているにも拘らず、ガラス基板を保持した状態で検査用保持冶具に歪みが生じるのを防止できるため、第5世代のマザーガラスの大きさ以上の大きさを有するガラス基板に光を照射して正確かつ容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のガラス基板の検査の概要を説明するための概念図。
【図2】ガラス基板の製造工程中の検査工程の位置づけを説明するためのフローチャート。
【図3】図1に示す検査中のガラス基板を保持している検査用保持冶具の正面図。
【図4】図3のガラス基板よりも小さなガラス基板を保持するための検査用保持冶具の正面図。
【図5】図1に示す検査用保持冶具の右側面図。
【図6】図3に示す検査用保持冶具の柱状部材のvi −vi 線断面の状態を示す端面図。
【図7】図6に示す検査用保持冶具の柱状部材についての他の断面構造を示す端面図。
【図8】図3に示す検査用保持冶具の第1継ぎ手の拡大正面図。
【図9】図8に示す第1継ぎ手のix −ix 線拡大断面図。
【図10】図8に示す第1継ぎ手の拡大側面図。
【図11】図3に示す検査用保持冶具の第2継ぎ手の拡大正面図。
【図12】図10に示す検査用保持冶具のxii‐xii線拡大断面図。
【図13】図10に示す検査用保持冶具のxiii‐xiii線拡大断面図。
【図14】図3に示す検査用保持冶具のホルダの拡大正面図。
【図15】図3に示す検査用保持冶具のホルダの一態様を示す拡大側面図。
【図16】図3に示す検査用保持冶具のホルダの他の態様を示す拡大側面図。
【図17】従来のガラス基板の保持冶具の変形について説明するための概念図。
【図18】本発明に係る検査用保持冶具の変形について説明するための概念図。
【図19】本発明の検査用保持冶具の他の態様を説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(ガラス基板の検査方法の概要)
ガラス基板の検査方法の概要について、図1及び図2を用いて説明する。例えば液晶用ガラス基板を例にすると、ガラス基板の検査は、液晶表示装置が製造される過程で、1回以上実施され、実施される検査項目も多種類に及ぶ。検査項目の中に、ガラス基板に光を当ててガラス基板から得られる光(反射光や透過光)を検査する光学的な検査がある。
【0030】
図2には、マザーガラスの状態の液晶用ガラス基板が、原料の溶融からガラス表面に加工を施す次の工程に供給されるまでの工程の概略が示されている。図2のステップS1では、まず、原料となるケイ砂などの種々の粉体が秤量・混合されて、溶融炉に投入される。この粉体が、高温溶融炉の中で熔かされてガラス溶融液になる。その後、泡抜き・攪拌などによって均質化されたガラス溶融液が板状に成形される。板状に成形されたガラスが、冷めてから規定寸法に切断されて素板になる。
【0031】
ステップS2の切断工程では、液晶表示装置の製造に適した大きさにするため、素板がさらに切断される。この素板から切り出されたガラス基板がマザーガラスの寸法に一致する。次の面取り工程(S3)では、切り出されたガラス基板が、その切り口を滑らかにするために研磨される。次の洗浄工程(S4)では、洗浄によって、ガラス基板のガラス表面の微細な異物や汚れが取り除かれる。
【0032】
そして、次の検査工程(S5)では、泡や傷などの微細な欠陥の有無の検査が行われ、液晶表示装置に使用できないものが不良品として取り除かれ、良品がマザーガラスとなる。その後、例えば遠隔地の他の工場でマザーガラスのガラス表面に加工を施すなどの場合、マザーガラスが輸送可能な形態に梱包されて輸送される。
【0033】
検査工程(S5)には、まず、図1に示す洗浄後のガラス基板30を、図1に示す検査用保持冶具10に保持させるセッティング工程(S5a)がある。次に、検査用保持冶具10に保持されたガラス基板30が投光器20の設置場所に移動された後、投光器20によってガラス基板30にスポットライト21が照射されて例えば目視による光学的な検査が行われる(S5b)。検査工程(S5)では、光学的な検査以外の検査が行われてもよく、例えばガラス基板30の大きさなどの検査が行われる。
【0034】
スポットライト21の範囲内に欠陥31がある場合、照射されたスポットライト21により、この欠陥31が強調されて目視などの検査での欠陥の発見が容易になる。欠陥31には、泡や傷以外に、例えば異物、脈理などがある。ここで脈理とは、シリカ原料などの未溶解粒子や二酸化ケイ素濃度の高いガラス質層のことであり、ガラス溶融液が溶解工程で均質にならなかった場合に発生する。
【0035】
既に述べたように、スポットライト21が照射される範囲を限定して移動しないと検査が散漫になり、欠陥の見落としの原因となる。しかし、このようにスポットライト21の照射範囲を限定すると、スポットライト21とガラス基板30の相対的な位置関係を少しずつずらしながら検査を行わなくてはならなくなる。
【0036】
簡易に素早くガラス基板全体の光学的な検査を行う際には、ガラス基板30を保持した状態で検査用保持冶具10がハンドリングされて移動される。例えば、ガラス基板30の大きさが第8世代(G8)であれば、ガラス基板30の縦方向の長さが2200mmにもなり、横方向の長さが2500mmにもなる。この場合は、2人の作業者が左右両側から検査用保持冶具を支え、検査者が所定の場所に立って目視検査を行う。これら2人の作業者が少しずつ検査用保持冶具10を移動させることにより、スポットライト21の当たる場所を少しずつ移動させることができる。あるいは、投光器20のスポットライト21の照射位置が移動装置によって自動的に移動するように構成することもできる。投光器20のスポットライト21と検査用保持冶具の相対位置の移動を、移動装置による移動と作業者による移動とを組合せることもできる。
【0037】
(検査用保持冶具の全体の構成)
図3に示す検査用保持冶具10は、ガラス基板30を保持している。図3の検査用保持冶具10の右側面の構造を図4に示す。なお、図3及び図4に描かれた検査用保持冶具10,10Aについては、図3及び図4に書き込まれたシンボルに従って検査用保持冶具10,10Aの上下左右を定義して説明し、図5においても図5に書き込まれたシンボルに従って検査用保持冶具10の上下を定義して説明する。
【0038】
図3に示す検査用保持冶具10の基本的なフレームは、主に、9本のアルミニウム製の柱状部材41〜49で構成されている。これら9本の柱状部材41〜49は、同一の断面構造を有している。図6に、図3の柱状部材44のix‐ix線断面の構造を示す。また、図7に柱状部材44の他の断面構造の例を示す。これら9本の柱状部材41〜49は、長手方向に長く延びる穴44a又は溝44fによって軽量化されている。図6及び図7には、断面構造の例として、穴44a又は溝44fの一方のみが形成される場合が示されているが、穴と溝とを組み合わせて軽量化することもできる。また、軽量化するためには、任意の数の穴や溝を用いることができる。
【0039】
これら柱状部材41〜49は、2種類の第1継ぎ手50と第2継ぎ手60とによって接続されることにより、フレーム形状に組み立てられる。そのため、柱状部材41〜49には、互いに対向する面に、長手方向に延びる溝44b,44c,44d,44eが形成されている。
【0040】
柱状部材41,42,43,45,47,48の両端部には、第1継ぎ手50が嵌め込まれて固定されている。
【0041】
左右両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材41は、第1継ぎ手50によって、右端部が柱状部材44の上端部に固定され、左端部が柱状部材46の上端部に固定されている。左右両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材42は、第1継ぎ手50によって、右端部が柱状部材44の下端部に固定され、左端部が柱状部材46の下端部に固定されている。
【0042】
上下両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材43,45,47,48は、第1継ぎ手50によって、上端部が柱状部材41に固定され、下端部が柱状部材42に固定されている。そして、柱状部材41の右端近傍の柱状部材43,44の間が右端近傍部分41aであり、柱状部材41の左端近傍の柱状部材45,46の間が左端近傍部分41bである。柱状部材42の右端近傍の柱状部材43,44の間が右端近傍部分42aであり、柱状部材41の左端近傍の柱状部材45,46の間が左端近傍部分42bである。
【0043】
柱状部材49は、正面視において、その右端近傍が第2継ぎ手60によって柱状部材47と十字に交差するように組み止められており、その左端近傍が第2継ぎ手60によって柱状部材48と十字に交差するように組み止められている。
【0044】
2本の平行に配置されている柱状部材43,44の間には、3本の補助部材70が接続され、2本の平行に配置されている柱状部材45,46の間には3本の補助部材71が接続されている。補助部材70,71の両端部にも第1継ぎ手50がそれぞれ嵌め込まれており、補助部材70,71と柱状部材43〜46とは第1継ぎ手50によって固定されている。
【0045】
ガラス基板30は、柱状部材42,47,48,49に囲まれる長方形の領域内に保持される。そのために、ガラス基板30を吸着するホルダ80が、それぞれの柱状部材42,47,48,49に多数取り付けられている。
【0046】
通常、マザーガラスとしてのガラス基板30の周囲には、液晶表示装置には用いられない未使用領域がある。ホルダ80で吸着するとホルダ80からゴミや油などの異物が付着する恐れがあるため、ホルダ80による吸着は、ガラス基板30のこの未使用領域を使って行われる。
【0047】
ガラス基板30の検査を行う場合、作業者は、例えば柱状部材44,46を手で掴むことによって、ガラス基板30を立てた状態で、左右に移動したり、上下に移動したりといったガラス基板の移動を容易に行わせることができる。
【0048】
図4に示す検査用保持冶具10Aは、図3に示すガラス基板30よりも上下左右の寸法の小さなガラス基板30Aを保持するため、図3に示す検査用保持冶具10を組み変えたものである。
【0049】
外側の枠構造を形成する柱状部材41〜46の接続は、図3に示す状態と図4に示す状態のいずれの場合も同じである。図3の検査用保持冶具10と図4の検査用保持冶具10Aとの間において異なるのは、柱状部材47〜49の接続位置と、それら及び柱状部材42に取り付けられているホルダ80の個数である。
【0050】
このような柱状部材47〜49の接続位置の変更は、第1継ぎ手50と第2継ぎ手60の取り付け位置を変更するだけで行うことができる。また、ホルダ80の取り付け個数も、ホルダ80を取り外すだけで行うことができる。そのため、検査用保持冶具10,10Aを使った光学的な検査において、大きさの異なるガラス基板30,30Aに対する対応も容易に行うことができる。
【0051】
(検査用保持冶具の部品の構造)
(1)第1継ぎ手
図8乃至図10を用いて第1継ぎ手の構造について説明する。第1継ぎ手50の正面形状を図8に示し、図8のix ‐ix 線断面を図9に示し、図8の状態に置いた第1継ぎ手50の右側面を図10に示す。
【0052】
第1継ぎ手50は、主に、台座部52と溝嵌合締付部53と端部嵌合締付部54との3つの部分からなっている。台座部52の左側には、断面視において、略円弧状に凹んだ凹部52aが形成されており、左端の近傍に第1継ぎ手50の長手方向に対して垂直に延びる凸条52bが形成されている。
【0053】
一方、台座部52の右側には、右側面から見て、長円を長手方向に沿って半分に割ったような形状に見える窪み52cが台座部52の右端から中央に向かって延びている。また、この右側の窪み52cには、その窪み52cが延びる方向に沿って凸条52dが形成されている。そして、台座部52には、六角ボルト55,56がねじ込まれる雌ネジが切られたネジ穴52e,52fが形成されている。
【0054】
溝嵌合締付部53には、台座部52の凹部52aと対をなす対称な形状の凹部53aが形成されている。そして、台座部52に溝嵌合締付部53を取り付けた状態において、台座部52の凸条52bと平行に向き合う位置に凸条53bが形成されている。また、ネジ穴52eに続くネジ穴53cが溝嵌合締付部53に形成されている。例えば、柱状部材44の端部近傍に第1継ぎ手50が接続される場合、凸条52b,53bが溝44b,44cに嵌め込まれて六角ボルト55が締められて台座部52に溝嵌合締付部53が取り付けられることにより、台座部52の凹部52aと溝嵌合締付部53の凹部53aで柱状部材44が挟まれて互いに動かないように固定される。
【0055】
端部嵌合締付部54には、台座部52の窪み52cと対をなす対称な形状の窪み54aが形成されている。台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けた状態においては、窪み52cと窪み54aが合わさって例えば図6や図7に示す柱状部材44の外形におおよそ等しい嵌合穴58が形成される。そして、台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けた状態において、台座部52の凸条52dと平行に向き合う位置に凸条54bが形成されている。また、ネジ穴52eに続くネジ穴54cが端部嵌合締付部54に形成されている。例えば、柱状部材44の端部に第1継ぎ手50を接続する場合、凸条52d,54bを溝44b,44cに嵌め込んで六角ボルト56を締めて、台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けることにより、台座部52の凹部52aと端部嵌合締付部54の凹部54aで柱状部材44が挟まれて互いに動かないように固定される。
【0056】
(2)第2継ぎ手
図11乃至図13を用いて第2継ぎ手の構造について説明する。第2継ぎ手60の正面形状を図11に示し、図11のxii‐xii線断面を図12に示し、図11のxiii‐xiii線断面を図13に示す。
【0057】
第2継ぎ手60は、主に、基部61と前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とからなる。これら4つの部分は、それぞれ4つの六角ボルト66〜69によって、基部61に取り付けられる。そのために、雌ネジが切られている4つのネジ穴61a,61bが基部61に形成され、ネジの切られていない穴62b,63b,64b,65bがそれぞれ前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とに形成されている。
【0058】
基部61と前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65には、それぞれの部分の長手方向に沿って延びる凸条62a,63a,64a,65aが設けられている。これらの凸条62a,63a,64a,65aは、例えば柱状部材44に第1継ぎ手50が取り付けられるときに溝44b,44cに凸条52b,52d,53a,54aが嵌まるのと同様に、柱状部材47〜49の溝に嵌まるものである。例えば、柱状部材47,48の側面の溝(溝44d,44eに相当する溝)に凸条62a,63aが嵌まり、柱状部材49の前面と後面の溝(溝44b,44cに相当する溝)に凸条64a,65aが嵌まる。
【0059】
前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63とで固定される柱状部材47,48に対して、後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とで固定される柱状部材49は、正面視において十字に直交するように配置される。そして、図5に示すように側面視において柱状部材47,48と柱状部材49と重なる位置に配置されない。そのため、ホルダ80において、柱状部材47,48と柱状部材49との配置位置の差から生じるガラス基板30、30Aまでの距離の調節が必要になる。
【0060】
(3)補助部材
柱状部材43,44の間に設けられた補助部材70及び柱状部材45,46の間に設けられた補助部材71は、柱状部材41〜49と同じ材料で形成される短い柱状部材の両端に第1継ぎ手50が嵌めこまれて構成されている。つまり、第1継ぎ手50の端部嵌合締付部54の側が短い柱状部材に嵌め込まれる。そして、溝嵌合締付部53の側が柱状部材43〜46に取り付けられる。これらの補助部材70,71により、さらに、柱状部材41〜46で構成される枠の部分が強固に固定される。
【0061】
(4)ホルダ
図14乃至図16を用いてホルダの構造について説明する。ホルダ80の正面形状を図14に示し、側面形状の一態様を図15に示し、側面形状の他の態様を図16に示す。
【0062】
図14に示すように、ホルダ80は、ガラス基板30,30Aを吸着するために吸盤81を備えている。吸盤81には、空気を吸込むための開口部81aの周囲に薄い皿状の弾性体が形成されている。吸盤81は、長い中空の支持部82に取り付けられており、支持部82の中空部が吸盤81の開口部81aに繋がっている。そして、支持部82の端部にコネクタ部85が設けられている。コネクタ部85はチューブ(図示省略)に接続されており、チューブに繋がっているポンプ(図示省略)によってコネクタ部85を通して空気が吸い出される。
【0063】
支持部82の高さを調節するために、支持部82が雄ネジ83に嵌め込まれて固定されている。この雄ネジ83が板状の基板86にあけられた穴に垂直に差し込まれ、基板86の上下から雄ネジ83にねじ込まれる2つのナット84によって挟まれて固定される。
【0064】
基板86の他端近傍に、ピン90や凹部91に嵌め込まれて下溝嵌合締付部87が固定されている。そして、下溝嵌合締付部87の上に上溝嵌合締付部88が六角ボルト89で取り付けられる。下溝嵌合締付部87と上溝嵌合締付部88には、互いに対向する位置に凸条87a,88aが設けられている。下溝嵌合締付部87と上溝嵌合締付部88とは、第1継ぎ手50の台座部52と溝嵌合締付部53の関係と同じように、凸条87a,88aが柱状部材42,47〜49の溝に嵌合された状態で六角ボルト89によって締め付けられて柱状部材42,47〜49に固定される。そのため、柱状部材42,47〜49に取り付けられるホルダ80の位置の変更が容易になる。
【0065】
図16に示すように基板86に取り付ける吸盤81の方向を図15とは逆にすることもできる。例えば、柱状部材42、47,48と柱状部材49との取り付け位置の前後方向の差を補うために、図15に示すホルダ80を柱状部材42、47,48に取り付けて図16に示すホルダ80を柱状部材49に取り付けることができる。そのように取り付けると、柱状部材42,47〜49に取り付けられる全てのホルダ80の基板86の前後方向の取り付け位置をほぼ同じ所に揃えることができる。それにより、吸盤81の前後方向の位置合わせが容易になる。
【0066】
<特徴>
(1)アルミニウム製の柱状部材41(第1金属製柱状部材)の右端近傍部分41aとアルミニウム製の柱状部材42(第2金属製柱状部材)の右端近傍部分42aとアルミニウム製の柱状部材43,44(第1骨組構造部材)とによって、図18に斜線で示した長方形10a(多角形)が形成されている。また、柱状部材41(第1金属製柱状部材)の左端近傍部分41bと柱状部材42(第2金属製柱状部材)の左端近傍部分42bとアルミニウム製の柱状部材45,46(第2骨組構造部材)とによって、図18に斜線で示した長方形10b(多角形)が形成されている。これらのアルミニウム柱状部材41〜46は、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方によって軽量化されている。また、長方形10a、10bを骨組構造で形成することで更なる軽量化が図られている。
【0067】
図17に示すように、従来の保持冶具200は、金属製柱状部材201,202,203,204で囲まれた領域211にガラス基板を保持していたため、保持冶具200の変形によってガラス基板の変形も誘発されて、特に光学的な検査においては光な反射や透過などの仕方が変わるため、検査での見落としの原因となっていた。
【0068】
図18に示すように、ガラス基板を保持する領域11の左右に長方形10a,10bが形成されているため、検査用保持冶具10が歪み難く、従って検査用保持冶具10に保持されているガラス基板も歪み難くなる。そのため、検査用保持冶具10は、軽量であるため、図2に示すセッティング工程S5aにおけるハンドリングが容易になるばかりでなく、図2の光照射受光工程S5bにおける光の照射と受光を伴う光学的な検査が正確に行えるようになる。なお、検査用保持冶具10と同じ構造を持つ検査用保持冶具10Aも検査用保持冶具10と同様の効果を奏する。
【0069】
ここでは、多角形として長方形10a,10bを例に示しているが、三角形や五角形など他の多角形でもよい。また、多角形を2つ以上組み合わせたものでもよく、長方形10a,10bの対頂角を柱状部材で結んで例えば2つの三角形を組み合わせたような形状にすることもできる。また多角形が多面体の一部であってもよく、例えば第1骨組構造部材と第2骨組構造部材で2つの直方体を形成して第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材をそれらの直方体に渡すように構成し、直方体を構成する一部分の柱状部材と第1金属製柱状部材や第2金属製柱状部材とで多角形を形成することもできる。
【0070】
例えば、多角形が長方形以外の場合について、図19に示す検査用保持冶具110の枠と、図18に示す検査用保持冶具10の枠とを比較しながら説明する。検査用保持冶具110の柱状部材141,142は、それぞれ検査用保持冶具10の柱状部材41,42に対応する。また、検査用保持冶具110の柱状部材143,145は、それぞれ検査用保持冶具10の柱状部材43,45に対応する。ところが、検査用保持冶具10の柱状部材44,46に対応するのは、それぞれ検査用保持冶具110の柱状部材144a,144b,146a,146bである。そして、柱状部材141,142の右端近傍部分141a,142a及び左端近傍部分141b,142bを含んで形成されている多角形は、三角形110a,110b,110c,110dである。主に、これらの三角形110a,110b,110c,110dによって検査用保持冶具110の変形が防がれている。なお、図19に示されている柱状部材147,148は、取っ手の役割を果たすと同時に、検査用保持冶具110の変形を防止する補助部材の役割を果たす。
【0071】
長方形10aの2辺を構成する互いに対向する柱状部材43,44の間が補助部材70で接続されている。また、長方形10bの2辺を構成する互いに対向する柱状部材45,46の間が補助部材71で接続されている。このように、多角形を構成する辺を補助部材で接続することにより、多角形がより変形し難くなるため、検査用保持冶具10,10Aの変形に伴う不具合の発生をさらに低減することができる。
【0072】
検査用保持冶具10,10Aは、その構成部品として、同じ材料の柱状部材を適当な長さに切り出したもの(柱状部材41〜49や補助部材70,71の柱状部分)と多数の第1継ぎ手50と多数のホルダ80とを用いている。そのため、材料の調達が容易で、各部品が破損したときの修理が容易であるばかりでなく、検査用保持冶具10,10Aの製造コストも低く抑えることができる。
【0073】
(2)
図3と図4とを比較して分かるように、ホルダ80が取り付けられるアルミニウムの製柱状部材47〜49(第7金属製柱状部材、第8金属製柱状部材、第9金属製柱状部材)の位置関係を変更することにより、異なる大きさのガラス基板30,30Aに対応することができる。
【0074】
すなわち、柱状部材41の中央と柱状部材42の中央を結ぶ中心線から柱状部材47,48が等距離に配置されるように柱状部材47,48の間隔を狭くすることで、左右の幅の狭いガラス基板に対応することができる。また、柱状部材49の配置位置を下げることで、上下方向の幅の狭いガラス基板に対応することができる。
【0075】
柱状部材47,48の間隔を狭くするときには、第1継ぎ手50の溝嵌合締付部53を締め付けている六角ボルト55を緩めて柱状部材47,48をずらした後、再び六角ボルト55を締め付けるだけの簡単な作業を行うだけでよい。ただし、第2継ぎ手60で柱状部材47,48が固定されていると移動できないため、柱状部材47,48の間隔を変えるときには、第2継ぎ手60を緩めておく必要がある。
【0076】
柱状部材49の配置位置を下げるときには、第2継ぎ手60の4つの六角ボルト66〜69を緩めておき、柱状部材49を下げた後、再び六角ボルト66〜69を締め付けるだけの簡単な作業を行うだけでよい。
【0077】
<変形例>
(1)上記実施形態では、ガラス基板の検査用保持冶具10,10Aが使用される場面として、液晶用ガラス基板のマザーガラスを輸送する前に行う目視検査を例にあげて説明したが、検査用保持冶具10,10Aが使用される場面はこのような場合に限られるものではない。液晶用ガラス基板だけでなく、他のプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の検査にも適用できる。
【0078】
(2)また、上記実施形態では、ガラス基板の検査用保持冶具10,10Aをガラス基板の表面に他の層が形成される前の検査に適用される例について説明したが、ガラス基板の表面にブラックマトリクスなどの層や電極や素子などを形成した後に行う光学的な検査にも用いることができる。
【0079】
(3)上記実施形態では、複数の第1継ぎ手50によってアルミニウム製の柱状部材41〜49を組み立てて検査用保持冶具10,10Aを形成している。このように、柱状部材同士が複数の第1継ぎ手50で接続されるため、長さの異なる柱状部材を準備することで種々の大きさの検査用保持冶具が組み立てられるから、大きさを変更し易くなっていて大きさの異なるガラス基板への適用性は優れている。しかし、大きさの変更を行わないタイプの検査用保持冶具を準備するのであれば、第1継ぎ手50による接続に代えて溶接などの他の接続方法により行うこともできる。例えば一番外側の枠の大きさを変更しないタイプの検査用保持冶具であれば、柱状部材41,42と柱状部材43,44との接続を溶接により行うこともでき、その場合には対応できるガラス基板の大きさには限界ができるが、接続部分が強固になって検査用保持冶具の形状の安定性は増す。
【符号の説明】
【0080】
10,10A 検査用保持冶具
20 投光器
30,30A ガラス基板
41〜49,141〜148 柱状部材
50 第1継ぎ手
60 第2継ぎ手
70,71 補助部材
80 ホルダ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2006−220495号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査時にガラス基板をハンドリングするためのガラス基板の検査用保持冶具、および当該検査用保持冶具を用いるガラス基板の検査方法に関し、特にフラットパネルディスプレイ等に使用されるガラス基板の検査用保持冶具およびガラス基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイの表示部の部品として平らなガラス板が使用される。以下の説明では、このようなガラス板をフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、あるいは単にガラス基板という。
【0003】
例えば、液晶表示装置においては、ガラス基板の間に封入された液晶に印加される電界を変化させ、液晶の配向を変化させることにより、動画の表示が可能になる。液晶表示装置の画像の表示の際に電界を変化させる必要があるため、ガラス基板には、電圧を印加するための透明な電極が形成される。
【0004】
また、ガラス基板上の電極に印加される電圧のオンオフを制御するため、高品質な表示が必要なテレビ受像機などに用いられる液晶表示装置では、薄膜トランジスタ(TFT)を使ったアクティブ・マトリクス方式の制御が採用されている。このTFTもガラス基板上に形成される。
【0005】
このように、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板のガラス面上に、極めて薄い金属膜や半導体によって電極やアクティブな素子が形成されるため、ガラス基板のガラス表面には極めて高い平坦性が要求され、またガラス基板の内部も高い均質性が要求される。特に、フラットパネルディスプレイの分野においては、薄型テレビジョンや携帯電話機のモニタとして広く用いられており、高精細で美しい画像の表示が必要なものが増えているため、ガラス基板に要求される品質も年々高くなってきている。
【0006】
ところで、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、例えば、液晶表示装置に用いられるもの(以下、液晶用ガラス基板という)であれば、薄い長方形の板状の形態を呈する。液晶用ガラス基板は、通常、厚みが0.5mm〜0.7mm程度と1mmよりも薄く、年々大型化の要求が高まってきている。そのため、ガラス基板に欠陥が発生したときに生じる損害の額も大きくなる傾向がある。
【0007】
液晶用ガラス基板は、一つの液晶表示装置に必要な大きさのガラス基板の複数枚の大きさに相当する大きさを持つマザーガラスと呼ばれる形態で、液晶表示装置の製造工程に供給される。このマザーガラスの形態の液晶用ガラス基板の大きさは、慣用的に世代という呼び方で表現され、例えば、第5世代のマザーガラスが1100mm×1250mm以上になる。そのため、1mmよりも薄い液晶用ガラス基板であっても重さが数kg以上になる。
【0008】
このような薄くて重いガラス基板の表面や内部の検査を行うために、従来は、例えば 特許文献1(特開2006−220495号公報)に記載されているような基板検査装置を用いて頑丈な支持フレームに、ガラス基板がしっかりと固定されていた。そして、そのようにしっかりと固定されたガラス基板に光を照射して、ガラス基板から得られる光を機械または人間の目で受光することによってガラス基板の表面や内部の検査が行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ガラス基板の表面の傷などが検査後に生じることがあり、マザーガラスの出荷前に検査が行なわれる場合などもあって、特許文献1に記載されているような頑丈な基板検査装置などにガラス基板を一枚ずつ取り付けと取り外しを繰り返しながら検査を行ったのでは、検査に費やす時間が多くなり過ぎてしまう。
【0010】
そこで、ハンドリングが容易な軽い保持冶具を用いようとすると、ガラス基板の自重や保持冶具の自重などによって保持冶具に生じる歪みに起因してガラス基板に歪みが生じ、検査に要する時間が増える原因となるばかりでなく、検査時の見落としの原因ともなる。
【0011】
本発明の課題は、第5世代のマザーガラスの大きさ以上の大きさを有するガラス基板を容易に検査することのできるガラス基板の検査用保持冶具を提供することにある。また、そのようなガラス基板の検査用保持冶具を用いたガラス基板の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具は、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板に光を当てて検査するためにガラス基板を保持するガラス基板の検査用保持冶具であって、第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材と、第1骨組構造部材と、第2骨組構造部材と、複数のホルダとを備えている。第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されている。そして、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とは、互いに対向して上下に配置される。
【0013】
第1骨組構造部材は、第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続されている。第1骨組構造部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とは、多角形を形成する。第2骨組構造部材は、第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続されている。そして、第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とは、多角形を形成する。
【0014】
複数のホルダは、互いに対向する第1骨組構造部材と第2骨組構造部材、及び、互いに対向する第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材のうちの少なくとも一方の組の部材の長手方向に沿ってそれぞれ3つ以上ずつ配置される。そして、これらの複数のホルダで、ガラス基板が保持される。
【0015】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具では、第1骨組構造部材が第1金属製柱状部材の右端近傍部分及び第2金属製柱状部材の右端近傍部分と共に形成する多角形によって、第1骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定される。また、第2骨組構造部材が第1金属製柱状部材の左端近傍部分及び第2金属製柱状部材の左端近傍部分と共に形成する多角形によって、第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定される。それにより、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との位置関係が強固に固定され、多角形の面内方向において検査用保持冶具が変形し難くなる。
【0016】
一方、第1骨組構造部材で構成される骨組構造と第2骨組構造部材で構成される骨組構造は、骨組だけであるため非常に軽く作ることができる。また、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とは、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されているため、必要な剛性を持っているが軽いものである。従って、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで構成される検査用保持冶具は、軽いものとなる。なお、ここでいう長方形のガラス基板には、正方形のガラス基板も含まれる。
【0017】
また、第1骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材を含んでいることが好ましく、第2骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材を含んでいることが好ましい。
【0018】
そして、第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材が第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続され、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とが長方形を形成する。また、第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材が第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続され、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とが長方形を形成する。
【0019】
第1金属製柱状部材の右端近傍部分及び左端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分及び左端近傍部分とをそれぞれ2本の第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材と2本の第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材とで接続するため、これらが形成する長方形の面内方向に変形し難いばかりでなく、長方形の面に垂直な方向にも変形し難くなる。そのため、 検査用保持冶具の第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで形成される2つの長方形の面内方向ばかりでなく、2つの長方形の面と垂直な方向への歪も軽減でき、ガラス基板の検査を正確かつ容易に行うことができる。
【0020】
また、第1骨組構造部材が、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材との間を接続する第1補助部材をさらに含むことが好ましく、第2骨組構造部材が、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材との間を接続する第2補助部材をさらに含むことが好ましい。
【0021】
第1補強部材によって、第3金属製柱状部材と第4金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の右端近傍部分と第2金属製柱状部材の右端近傍部分とが形成する長方形がさらに変形し難くなり、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材の位置関係がさらに強固に保たれるようになる。また、第2補強部材によって、第5金属製柱状部材と第6金属製柱状部材と第1金属製柱状部材の左端近傍部分と第2金属製柱状部材の左端近傍部分とが形成する長方形がさらに変形し難くなり、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第2骨組構造部材との位置関係がさらに強固に保たれるようになる。それにより、検査用保持冶具の第1骨組構造部材と第2骨組構造部材と第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とで形成される2つの多角形の面内方向の歪みを第1補助部材及び第2補助部材で軽減でき、さらに正確にガラス基板の検査を行うことができる。
【0022】
また、異なるサイズのガラス基板に対応するために、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材をさらに備えることが好ましい。第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材は、第1骨組構造部材と第2骨組構造部材との間で互いに平行になるように、それぞれ第1骨組構造部材及び第2骨組構造部材に沿って配置されることが好ましい。そして、第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材は、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材とに接続されている。そして、第7金属製柱状部材には、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられ、第8金属製柱状部材には、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられていることが好ましい。
【0023】
第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材と第2骨組構造部材とを組立て直さなくても、第7金属製柱状部材と第8金属製柱状部材との間隔を調整することにより、左右の幅の異なる種々のガラス基板に対応することができ、左右方向の幅の異なるガラス基板の検査が容易になる。
【0024】
また、異なるサイズのガラス基板に対応するために、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第9金属製柱状部材をさらに備えていることが好ましい。そして、第9金属製柱状部材は、第1金属製柱状部材に平行に配置され、第7金属製柱状部材と第8金属製柱状部材とに接続され、ホルダが3つ以上ずつ取り付けられていることが好ましい。
【0025】
ガラス基板の上方をホルダで保持する場合において、第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材と第1骨組構造部材と第2骨組構造部材とを組立て直さなくても、第9金属製柱状部材と第2金属製柱状部材との間隔を調整することにより、上下の幅の異なる種々のガラス基板に対応することができる。それにより、上下方向の幅の異なるガラス基板の検査が容易になる。
【0026】
また、ガラス基板の検査方法においては、本発明に係る検査用保持冶具の複数のホルダに、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板を保持させるセッティング工程と、検査用保持冶具に保持されたガラス基板に光を当てて検査するための光照射受光工程とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガラス基板の検査用保持冶具又はガラス基板の検査方法では、検査用保持冶具が軽量化されているにも拘らず、ガラス基板を保持した状態で検査用保持冶具に歪みが生じるのを防止できるため、第5世代のマザーガラスの大きさ以上の大きさを有するガラス基板に光を照射して正確かつ容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のガラス基板の検査の概要を説明するための概念図。
【図2】ガラス基板の製造工程中の検査工程の位置づけを説明するためのフローチャート。
【図3】図1に示す検査中のガラス基板を保持している検査用保持冶具の正面図。
【図4】図3のガラス基板よりも小さなガラス基板を保持するための検査用保持冶具の正面図。
【図5】図1に示す検査用保持冶具の右側面図。
【図6】図3に示す検査用保持冶具の柱状部材のvi −vi 線断面の状態を示す端面図。
【図7】図6に示す検査用保持冶具の柱状部材についての他の断面構造を示す端面図。
【図8】図3に示す検査用保持冶具の第1継ぎ手の拡大正面図。
【図9】図8に示す第1継ぎ手のix −ix 線拡大断面図。
【図10】図8に示す第1継ぎ手の拡大側面図。
【図11】図3に示す検査用保持冶具の第2継ぎ手の拡大正面図。
【図12】図10に示す検査用保持冶具のxii‐xii線拡大断面図。
【図13】図10に示す検査用保持冶具のxiii‐xiii線拡大断面図。
【図14】図3に示す検査用保持冶具のホルダの拡大正面図。
【図15】図3に示す検査用保持冶具のホルダの一態様を示す拡大側面図。
【図16】図3に示す検査用保持冶具のホルダの他の態様を示す拡大側面図。
【図17】従来のガラス基板の保持冶具の変形について説明するための概念図。
【図18】本発明に係る検査用保持冶具の変形について説明するための概念図。
【図19】本発明の検査用保持冶具の他の態様を説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(ガラス基板の検査方法の概要)
ガラス基板の検査方法の概要について、図1及び図2を用いて説明する。例えば液晶用ガラス基板を例にすると、ガラス基板の検査は、液晶表示装置が製造される過程で、1回以上実施され、実施される検査項目も多種類に及ぶ。検査項目の中に、ガラス基板に光を当ててガラス基板から得られる光(反射光や透過光)を検査する光学的な検査がある。
【0030】
図2には、マザーガラスの状態の液晶用ガラス基板が、原料の溶融からガラス表面に加工を施す次の工程に供給されるまでの工程の概略が示されている。図2のステップS1では、まず、原料となるケイ砂などの種々の粉体が秤量・混合されて、溶融炉に投入される。この粉体が、高温溶融炉の中で熔かされてガラス溶融液になる。その後、泡抜き・攪拌などによって均質化されたガラス溶融液が板状に成形される。板状に成形されたガラスが、冷めてから規定寸法に切断されて素板になる。
【0031】
ステップS2の切断工程では、液晶表示装置の製造に適した大きさにするため、素板がさらに切断される。この素板から切り出されたガラス基板がマザーガラスの寸法に一致する。次の面取り工程(S3)では、切り出されたガラス基板が、その切り口を滑らかにするために研磨される。次の洗浄工程(S4)では、洗浄によって、ガラス基板のガラス表面の微細な異物や汚れが取り除かれる。
【0032】
そして、次の検査工程(S5)では、泡や傷などの微細な欠陥の有無の検査が行われ、液晶表示装置に使用できないものが不良品として取り除かれ、良品がマザーガラスとなる。その後、例えば遠隔地の他の工場でマザーガラスのガラス表面に加工を施すなどの場合、マザーガラスが輸送可能な形態に梱包されて輸送される。
【0033】
検査工程(S5)には、まず、図1に示す洗浄後のガラス基板30を、図1に示す検査用保持冶具10に保持させるセッティング工程(S5a)がある。次に、検査用保持冶具10に保持されたガラス基板30が投光器20の設置場所に移動された後、投光器20によってガラス基板30にスポットライト21が照射されて例えば目視による光学的な検査が行われる(S5b)。検査工程(S5)では、光学的な検査以外の検査が行われてもよく、例えばガラス基板30の大きさなどの検査が行われる。
【0034】
スポットライト21の範囲内に欠陥31がある場合、照射されたスポットライト21により、この欠陥31が強調されて目視などの検査での欠陥の発見が容易になる。欠陥31には、泡や傷以外に、例えば異物、脈理などがある。ここで脈理とは、シリカ原料などの未溶解粒子や二酸化ケイ素濃度の高いガラス質層のことであり、ガラス溶融液が溶解工程で均質にならなかった場合に発生する。
【0035】
既に述べたように、スポットライト21が照射される範囲を限定して移動しないと検査が散漫になり、欠陥の見落としの原因となる。しかし、このようにスポットライト21の照射範囲を限定すると、スポットライト21とガラス基板30の相対的な位置関係を少しずつずらしながら検査を行わなくてはならなくなる。
【0036】
簡易に素早くガラス基板全体の光学的な検査を行う際には、ガラス基板30を保持した状態で検査用保持冶具10がハンドリングされて移動される。例えば、ガラス基板30の大きさが第8世代(G8)であれば、ガラス基板30の縦方向の長さが2200mmにもなり、横方向の長さが2500mmにもなる。この場合は、2人の作業者が左右両側から検査用保持冶具を支え、検査者が所定の場所に立って目視検査を行う。これら2人の作業者が少しずつ検査用保持冶具10を移動させることにより、スポットライト21の当たる場所を少しずつ移動させることができる。あるいは、投光器20のスポットライト21の照射位置が移動装置によって自動的に移動するように構成することもできる。投光器20のスポットライト21と検査用保持冶具の相対位置の移動を、移動装置による移動と作業者による移動とを組合せることもできる。
【0037】
(検査用保持冶具の全体の構成)
図3に示す検査用保持冶具10は、ガラス基板30を保持している。図3の検査用保持冶具10の右側面の構造を図4に示す。なお、図3及び図4に描かれた検査用保持冶具10,10Aについては、図3及び図4に書き込まれたシンボルに従って検査用保持冶具10,10Aの上下左右を定義して説明し、図5においても図5に書き込まれたシンボルに従って検査用保持冶具10の上下を定義して説明する。
【0038】
図3に示す検査用保持冶具10の基本的なフレームは、主に、9本のアルミニウム製の柱状部材41〜49で構成されている。これら9本の柱状部材41〜49は、同一の断面構造を有している。図6に、図3の柱状部材44のix‐ix線断面の構造を示す。また、図7に柱状部材44の他の断面構造の例を示す。これら9本の柱状部材41〜49は、長手方向に長く延びる穴44a又は溝44fによって軽量化されている。図6及び図7には、断面構造の例として、穴44a又は溝44fの一方のみが形成される場合が示されているが、穴と溝とを組み合わせて軽量化することもできる。また、軽量化するためには、任意の数の穴や溝を用いることができる。
【0039】
これら柱状部材41〜49は、2種類の第1継ぎ手50と第2継ぎ手60とによって接続されることにより、フレーム形状に組み立てられる。そのため、柱状部材41〜49には、互いに対向する面に、長手方向に延びる溝44b,44c,44d,44eが形成されている。
【0040】
柱状部材41,42,43,45,47,48の両端部には、第1継ぎ手50が嵌め込まれて固定されている。
【0041】
左右両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材41は、第1継ぎ手50によって、右端部が柱状部材44の上端部に固定され、左端部が柱状部材46の上端部に固定されている。左右両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材42は、第1継ぎ手50によって、右端部が柱状部材44の下端部に固定され、左端部が柱状部材46の下端部に固定されている。
【0042】
上下両端部に第1継ぎ手50が嵌め込まれた柱状部材43,45,47,48は、第1継ぎ手50によって、上端部が柱状部材41に固定され、下端部が柱状部材42に固定されている。そして、柱状部材41の右端近傍の柱状部材43,44の間が右端近傍部分41aであり、柱状部材41の左端近傍の柱状部材45,46の間が左端近傍部分41bである。柱状部材42の右端近傍の柱状部材43,44の間が右端近傍部分42aであり、柱状部材41の左端近傍の柱状部材45,46の間が左端近傍部分42bである。
【0043】
柱状部材49は、正面視において、その右端近傍が第2継ぎ手60によって柱状部材47と十字に交差するように組み止められており、その左端近傍が第2継ぎ手60によって柱状部材48と十字に交差するように組み止められている。
【0044】
2本の平行に配置されている柱状部材43,44の間には、3本の補助部材70が接続され、2本の平行に配置されている柱状部材45,46の間には3本の補助部材71が接続されている。補助部材70,71の両端部にも第1継ぎ手50がそれぞれ嵌め込まれており、補助部材70,71と柱状部材43〜46とは第1継ぎ手50によって固定されている。
【0045】
ガラス基板30は、柱状部材42,47,48,49に囲まれる長方形の領域内に保持される。そのために、ガラス基板30を吸着するホルダ80が、それぞれの柱状部材42,47,48,49に多数取り付けられている。
【0046】
通常、マザーガラスとしてのガラス基板30の周囲には、液晶表示装置には用いられない未使用領域がある。ホルダ80で吸着するとホルダ80からゴミや油などの異物が付着する恐れがあるため、ホルダ80による吸着は、ガラス基板30のこの未使用領域を使って行われる。
【0047】
ガラス基板30の検査を行う場合、作業者は、例えば柱状部材44,46を手で掴むことによって、ガラス基板30を立てた状態で、左右に移動したり、上下に移動したりといったガラス基板の移動を容易に行わせることができる。
【0048】
図4に示す検査用保持冶具10Aは、図3に示すガラス基板30よりも上下左右の寸法の小さなガラス基板30Aを保持するため、図3に示す検査用保持冶具10を組み変えたものである。
【0049】
外側の枠構造を形成する柱状部材41〜46の接続は、図3に示す状態と図4に示す状態のいずれの場合も同じである。図3の検査用保持冶具10と図4の検査用保持冶具10Aとの間において異なるのは、柱状部材47〜49の接続位置と、それら及び柱状部材42に取り付けられているホルダ80の個数である。
【0050】
このような柱状部材47〜49の接続位置の変更は、第1継ぎ手50と第2継ぎ手60の取り付け位置を変更するだけで行うことができる。また、ホルダ80の取り付け個数も、ホルダ80を取り外すだけで行うことができる。そのため、検査用保持冶具10,10Aを使った光学的な検査において、大きさの異なるガラス基板30,30Aに対する対応も容易に行うことができる。
【0051】
(検査用保持冶具の部品の構造)
(1)第1継ぎ手
図8乃至図10を用いて第1継ぎ手の構造について説明する。第1継ぎ手50の正面形状を図8に示し、図8のix ‐ix 線断面を図9に示し、図8の状態に置いた第1継ぎ手50の右側面を図10に示す。
【0052】
第1継ぎ手50は、主に、台座部52と溝嵌合締付部53と端部嵌合締付部54との3つの部分からなっている。台座部52の左側には、断面視において、略円弧状に凹んだ凹部52aが形成されており、左端の近傍に第1継ぎ手50の長手方向に対して垂直に延びる凸条52bが形成されている。
【0053】
一方、台座部52の右側には、右側面から見て、長円を長手方向に沿って半分に割ったような形状に見える窪み52cが台座部52の右端から中央に向かって延びている。また、この右側の窪み52cには、その窪み52cが延びる方向に沿って凸条52dが形成されている。そして、台座部52には、六角ボルト55,56がねじ込まれる雌ネジが切られたネジ穴52e,52fが形成されている。
【0054】
溝嵌合締付部53には、台座部52の凹部52aと対をなす対称な形状の凹部53aが形成されている。そして、台座部52に溝嵌合締付部53を取り付けた状態において、台座部52の凸条52bと平行に向き合う位置に凸条53bが形成されている。また、ネジ穴52eに続くネジ穴53cが溝嵌合締付部53に形成されている。例えば、柱状部材44の端部近傍に第1継ぎ手50が接続される場合、凸条52b,53bが溝44b,44cに嵌め込まれて六角ボルト55が締められて台座部52に溝嵌合締付部53が取り付けられることにより、台座部52の凹部52aと溝嵌合締付部53の凹部53aで柱状部材44が挟まれて互いに動かないように固定される。
【0055】
端部嵌合締付部54には、台座部52の窪み52cと対をなす対称な形状の窪み54aが形成されている。台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けた状態においては、窪み52cと窪み54aが合わさって例えば図6や図7に示す柱状部材44の外形におおよそ等しい嵌合穴58が形成される。そして、台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けた状態において、台座部52の凸条52dと平行に向き合う位置に凸条54bが形成されている。また、ネジ穴52eに続くネジ穴54cが端部嵌合締付部54に形成されている。例えば、柱状部材44の端部に第1継ぎ手50を接続する場合、凸条52d,54bを溝44b,44cに嵌め込んで六角ボルト56を締めて、台座部52に端部嵌合締付部54を取り付けることにより、台座部52の凹部52aと端部嵌合締付部54の凹部54aで柱状部材44が挟まれて互いに動かないように固定される。
【0056】
(2)第2継ぎ手
図11乃至図13を用いて第2継ぎ手の構造について説明する。第2継ぎ手60の正面形状を図11に示し、図11のxii‐xii線断面を図12に示し、図11のxiii‐xiii線断面を図13に示す。
【0057】
第2継ぎ手60は、主に、基部61と前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とからなる。これら4つの部分は、それぞれ4つの六角ボルト66〜69によって、基部61に取り付けられる。そのために、雌ネジが切られている4つのネジ穴61a,61bが基部61に形成され、ネジの切られていない穴62b,63b,64b,65bがそれぞれ前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とに形成されている。
【0058】
基部61と前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63と後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65には、それぞれの部分の長手方向に沿って延びる凸条62a,63a,64a,65aが設けられている。これらの凸条62a,63a,64a,65aは、例えば柱状部材44に第1継ぎ手50が取り付けられるときに溝44b,44cに凸条52b,52d,53a,54aが嵌まるのと同様に、柱状部材47〜49の溝に嵌まるものである。例えば、柱状部材47,48の側面の溝(溝44d,44eに相当する溝)に凸条62a,63aが嵌まり、柱状部材49の前面と後面の溝(溝44b,44cに相当する溝)に凸条64a,65aが嵌まる。
【0059】
前方右溝嵌合部62と前方左溝嵌合部63とで固定される柱状部材47,48に対して、後方上溝嵌合部64と後方下溝嵌合部65とで固定される柱状部材49は、正面視において十字に直交するように配置される。そして、図5に示すように側面視において柱状部材47,48と柱状部材49と重なる位置に配置されない。そのため、ホルダ80において、柱状部材47,48と柱状部材49との配置位置の差から生じるガラス基板30、30Aまでの距離の調節が必要になる。
【0060】
(3)補助部材
柱状部材43,44の間に設けられた補助部材70及び柱状部材45,46の間に設けられた補助部材71は、柱状部材41〜49と同じ材料で形成される短い柱状部材の両端に第1継ぎ手50が嵌めこまれて構成されている。つまり、第1継ぎ手50の端部嵌合締付部54の側が短い柱状部材に嵌め込まれる。そして、溝嵌合締付部53の側が柱状部材43〜46に取り付けられる。これらの補助部材70,71により、さらに、柱状部材41〜46で構成される枠の部分が強固に固定される。
【0061】
(4)ホルダ
図14乃至図16を用いてホルダの構造について説明する。ホルダ80の正面形状を図14に示し、側面形状の一態様を図15に示し、側面形状の他の態様を図16に示す。
【0062】
図14に示すように、ホルダ80は、ガラス基板30,30Aを吸着するために吸盤81を備えている。吸盤81には、空気を吸込むための開口部81aの周囲に薄い皿状の弾性体が形成されている。吸盤81は、長い中空の支持部82に取り付けられており、支持部82の中空部が吸盤81の開口部81aに繋がっている。そして、支持部82の端部にコネクタ部85が設けられている。コネクタ部85はチューブ(図示省略)に接続されており、チューブに繋がっているポンプ(図示省略)によってコネクタ部85を通して空気が吸い出される。
【0063】
支持部82の高さを調節するために、支持部82が雄ネジ83に嵌め込まれて固定されている。この雄ネジ83が板状の基板86にあけられた穴に垂直に差し込まれ、基板86の上下から雄ネジ83にねじ込まれる2つのナット84によって挟まれて固定される。
【0064】
基板86の他端近傍に、ピン90や凹部91に嵌め込まれて下溝嵌合締付部87が固定されている。そして、下溝嵌合締付部87の上に上溝嵌合締付部88が六角ボルト89で取り付けられる。下溝嵌合締付部87と上溝嵌合締付部88には、互いに対向する位置に凸条87a,88aが設けられている。下溝嵌合締付部87と上溝嵌合締付部88とは、第1継ぎ手50の台座部52と溝嵌合締付部53の関係と同じように、凸条87a,88aが柱状部材42,47〜49の溝に嵌合された状態で六角ボルト89によって締め付けられて柱状部材42,47〜49に固定される。そのため、柱状部材42,47〜49に取り付けられるホルダ80の位置の変更が容易になる。
【0065】
図16に示すように基板86に取り付ける吸盤81の方向を図15とは逆にすることもできる。例えば、柱状部材42、47,48と柱状部材49との取り付け位置の前後方向の差を補うために、図15に示すホルダ80を柱状部材42、47,48に取り付けて図16に示すホルダ80を柱状部材49に取り付けることができる。そのように取り付けると、柱状部材42,47〜49に取り付けられる全てのホルダ80の基板86の前後方向の取り付け位置をほぼ同じ所に揃えることができる。それにより、吸盤81の前後方向の位置合わせが容易になる。
【0066】
<特徴>
(1)アルミニウム製の柱状部材41(第1金属製柱状部材)の右端近傍部分41aとアルミニウム製の柱状部材42(第2金属製柱状部材)の右端近傍部分42aとアルミニウム製の柱状部材43,44(第1骨組構造部材)とによって、図18に斜線で示した長方形10a(多角形)が形成されている。また、柱状部材41(第1金属製柱状部材)の左端近傍部分41bと柱状部材42(第2金属製柱状部材)の左端近傍部分42bとアルミニウム製の柱状部材45,46(第2骨組構造部材)とによって、図18に斜線で示した長方形10b(多角形)が形成されている。これらのアルミニウム柱状部材41〜46は、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方によって軽量化されている。また、長方形10a、10bを骨組構造で形成することで更なる軽量化が図られている。
【0067】
図17に示すように、従来の保持冶具200は、金属製柱状部材201,202,203,204で囲まれた領域211にガラス基板を保持していたため、保持冶具200の変形によってガラス基板の変形も誘発されて、特に光学的な検査においては光な反射や透過などの仕方が変わるため、検査での見落としの原因となっていた。
【0068】
図18に示すように、ガラス基板を保持する領域11の左右に長方形10a,10bが形成されているため、検査用保持冶具10が歪み難く、従って検査用保持冶具10に保持されているガラス基板も歪み難くなる。そのため、検査用保持冶具10は、軽量であるため、図2に示すセッティング工程S5aにおけるハンドリングが容易になるばかりでなく、図2の光照射受光工程S5bにおける光の照射と受光を伴う光学的な検査が正確に行えるようになる。なお、検査用保持冶具10と同じ構造を持つ検査用保持冶具10Aも検査用保持冶具10と同様の効果を奏する。
【0069】
ここでは、多角形として長方形10a,10bを例に示しているが、三角形や五角形など他の多角形でもよい。また、多角形を2つ以上組み合わせたものでもよく、長方形10a,10bの対頂角を柱状部材で結んで例えば2つの三角形を組み合わせたような形状にすることもできる。また多角形が多面体の一部であってもよく、例えば第1骨組構造部材と第2骨組構造部材で2つの直方体を形成して第1金属製柱状部材と第2金属製柱状部材をそれらの直方体に渡すように構成し、直方体を構成する一部分の柱状部材と第1金属製柱状部材や第2金属製柱状部材とで多角形を形成することもできる。
【0070】
例えば、多角形が長方形以外の場合について、図19に示す検査用保持冶具110の枠と、図18に示す検査用保持冶具10の枠とを比較しながら説明する。検査用保持冶具110の柱状部材141,142は、それぞれ検査用保持冶具10の柱状部材41,42に対応する。また、検査用保持冶具110の柱状部材143,145は、それぞれ検査用保持冶具10の柱状部材43,45に対応する。ところが、検査用保持冶具10の柱状部材44,46に対応するのは、それぞれ検査用保持冶具110の柱状部材144a,144b,146a,146bである。そして、柱状部材141,142の右端近傍部分141a,142a及び左端近傍部分141b,142bを含んで形成されている多角形は、三角形110a,110b,110c,110dである。主に、これらの三角形110a,110b,110c,110dによって検査用保持冶具110の変形が防がれている。なお、図19に示されている柱状部材147,148は、取っ手の役割を果たすと同時に、検査用保持冶具110の変形を防止する補助部材の役割を果たす。
【0071】
長方形10aの2辺を構成する互いに対向する柱状部材43,44の間が補助部材70で接続されている。また、長方形10bの2辺を構成する互いに対向する柱状部材45,46の間が補助部材71で接続されている。このように、多角形を構成する辺を補助部材で接続することにより、多角形がより変形し難くなるため、検査用保持冶具10,10Aの変形に伴う不具合の発生をさらに低減することができる。
【0072】
検査用保持冶具10,10Aは、その構成部品として、同じ材料の柱状部材を適当な長さに切り出したもの(柱状部材41〜49や補助部材70,71の柱状部分)と多数の第1継ぎ手50と多数のホルダ80とを用いている。そのため、材料の調達が容易で、各部品が破損したときの修理が容易であるばかりでなく、検査用保持冶具10,10Aの製造コストも低く抑えることができる。
【0073】
(2)
図3と図4とを比較して分かるように、ホルダ80が取り付けられるアルミニウムの製柱状部材47〜49(第7金属製柱状部材、第8金属製柱状部材、第9金属製柱状部材)の位置関係を変更することにより、異なる大きさのガラス基板30,30Aに対応することができる。
【0074】
すなわち、柱状部材41の中央と柱状部材42の中央を結ぶ中心線から柱状部材47,48が等距離に配置されるように柱状部材47,48の間隔を狭くすることで、左右の幅の狭いガラス基板に対応することができる。また、柱状部材49の配置位置を下げることで、上下方向の幅の狭いガラス基板に対応することができる。
【0075】
柱状部材47,48の間隔を狭くするときには、第1継ぎ手50の溝嵌合締付部53を締め付けている六角ボルト55を緩めて柱状部材47,48をずらした後、再び六角ボルト55を締め付けるだけの簡単な作業を行うだけでよい。ただし、第2継ぎ手60で柱状部材47,48が固定されていると移動できないため、柱状部材47,48の間隔を変えるときには、第2継ぎ手60を緩めておく必要がある。
【0076】
柱状部材49の配置位置を下げるときには、第2継ぎ手60の4つの六角ボルト66〜69を緩めておき、柱状部材49を下げた後、再び六角ボルト66〜69を締め付けるだけの簡単な作業を行うだけでよい。
【0077】
<変形例>
(1)上記実施形態では、ガラス基板の検査用保持冶具10,10Aが使用される場面として、液晶用ガラス基板のマザーガラスを輸送する前に行う目視検査を例にあげて説明したが、検査用保持冶具10,10Aが使用される場面はこのような場合に限られるものではない。液晶用ガラス基板だけでなく、他のプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の検査にも適用できる。
【0078】
(2)また、上記実施形態では、ガラス基板の検査用保持冶具10,10Aをガラス基板の表面に他の層が形成される前の検査に適用される例について説明したが、ガラス基板の表面にブラックマトリクスなどの層や電極や素子などを形成した後に行う光学的な検査にも用いることができる。
【0079】
(3)上記実施形態では、複数の第1継ぎ手50によってアルミニウム製の柱状部材41〜49を組み立てて検査用保持冶具10,10Aを形成している。このように、柱状部材同士が複数の第1継ぎ手50で接続されるため、長さの異なる柱状部材を準備することで種々の大きさの検査用保持冶具が組み立てられるから、大きさを変更し易くなっていて大きさの異なるガラス基板への適用性は優れている。しかし、大きさの変更を行わないタイプの検査用保持冶具を準備するのであれば、第1継ぎ手50による接続に代えて溶接などの他の接続方法により行うこともできる。例えば一番外側の枠の大きさを変更しないタイプの検査用保持冶具であれば、柱状部材41,42と柱状部材43,44との接続を溶接により行うこともでき、その場合には対応できるガラス基板の大きさには限界ができるが、接続部分が強固になって検査用保持冶具の形状の安定性は増す。
【符号の説明】
【0080】
10,10A 検査用保持冶具
20 投光器
30,30A ガラス基板
41〜49,141〜148 柱状部材
50 第1継ぎ手
60 第2継ぎ手
70,71 補助部材
80 ホルダ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2006−220495号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板に光を当てて検査するために前記ガラス基板を保持するガラス基板の検査用保持冶具であって、
互いに対向して上下に配置され、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されている第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材と、
多角形を形成するように前記第1金属製柱状部材の右端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続されている第1骨組構造部材と、
多角形を形成するように前記第1金属製柱状部材の左端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続されている第2骨組構造部材と、
互いに対向する前記第1骨組構造部材と前記第2骨組構造部材、及び、互いに対向する前記第1金属製柱状部材と前記第2金属製柱状部材のうちの少なくとも一方の組の部材の長手方向に沿ってそれぞれ3つ以上ずつ配置され、前記ガラス基板を保持するための複数のホルダと、
を備える、ガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項2】
前記第1骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材を含み、前記第3金属製柱状部材及び前記第4金属製柱状部材が長方形を形成するように前記第1金属製柱状部材の前記右端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の前記右端近傍部分とに接続され、
前記第2骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材を含み、前記第5金属製柱状部材及び前記第6金属製柱状部材が長方形を形成するように前記第1金属製柱状部材の前記左端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の前記右端近傍部分とに接続されている、
請求項1に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項3】
前記第1骨組構造部材は、前記第3金属製柱状部材と前記第4金属製柱状部材との間を接続する第1補助部材をさらに含み、
前記第2骨組構造部材は、前記第5金属製柱状部材と前記第6金属製柱状部材との間を接続する第2補助部材をさらに含む、
請求項2に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項4】
異なるサイズのガラス基板に対応するために、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材をさらに備え、
前記第7金属製柱状部材及び前記第8金属製柱状部材は、
前記第1骨組構造部材と前記第2骨組構造部材との間で互いに平行になるように、それぞれ前記第1骨組構造部材及び前記第2骨組構造部材に沿って配置され、
前記第1金属製柱状部材と前記第2金属製柱状部材とに接続され、
それぞれ前記ホルダが3つ以上ずつ取り付けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項5】
異なるサイズのガラス基板に対応するために、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第9金属製柱状部材をさらに備え、
前記第9金属製柱状部材は、前記第1金属製柱状部材に平行に配置され、前記第7金属製柱状部材と前記第8金属製柱状部材とに接続され、前記ホルダが3つ以上ずつ取り付けられている、
請求項4に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板の検査用保持冶具の前記複数のホルダに、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板を保持させるセッティング工程と、
前記検査用保持冶具に保持された前記ガラス基板に光を当てて検査するための光照射受光工程と、
を備える、ガラス基板の検査方法。
【請求項1】
短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板に光を当てて検査するために前記ガラス基板を保持するガラス基板の検査用保持冶具であって、
互いに対向して上下に配置され、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方により軽量化されている第1金属製柱状部材及び第2金属製柱状部材と、
多角形を形成するように前記第1金属製柱状部材の右端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の右端近傍部分とに接続されている第1骨組構造部材と、
多角形を形成するように前記第1金属製柱状部材の左端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の左端近傍部分とに接続されている第2骨組構造部材と、
互いに対向する前記第1骨組構造部材と前記第2骨組構造部材、及び、互いに対向する前記第1金属製柱状部材と前記第2金属製柱状部材のうちの少なくとも一方の組の部材の長手方向に沿ってそれぞれ3つ以上ずつ配置され、前記ガラス基板を保持するための複数のホルダと、
を備える、ガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項2】
前記第1骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第3金属製柱状部材及び第4金属製柱状部材を含み、前記第3金属製柱状部材及び前記第4金属製柱状部材が長方形を形成するように前記第1金属製柱状部材の前記右端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の前記右端近傍部分とに接続され、
前記第2骨組構造部材は、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている互いに平行に配置された第5金属製柱状部材及び第6金属製柱状部材を含み、前記第5金属製柱状部材及び前記第6金属製柱状部材が長方形を形成するように前記第1金属製柱状部材の前記左端近傍部分と前記第2金属製柱状部材の前記右端近傍部分とに接続されている、
請求項1に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項3】
前記第1骨組構造部材は、前記第3金属製柱状部材と前記第4金属製柱状部材との間を接続する第1補助部材をさらに含み、
前記第2骨組構造部材は、前記第5金属製柱状部材と前記第6金属製柱状部材との間を接続する第2補助部材をさらに含む、
請求項2に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項4】
異なるサイズのガラス基板に対応するために、それぞれ長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第7金属製柱状部材及び第8金属製柱状部材をさらに備え、
前記第7金属製柱状部材及び前記第8金属製柱状部材は、
前記第1骨組構造部材と前記第2骨組構造部材との間で互いに平行になるように、それぞれ前記第1骨組構造部材及び前記第2骨組構造部材に沿って配置され、
前記第1金属製柱状部材と前記第2金属製柱状部材とに接続され、
それぞれ前記ホルダが3つ以上ずつ取り付けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項5】
異なるサイズのガラス基板に対応するために、長手方向に延びる穴及び溝の少なくとも一方で軽量化されている第9金属製柱状部材をさらに備え、
前記第9金属製柱状部材は、前記第1金属製柱状部材に平行に配置され、前記第7金属製柱状部材と前記第8金属製柱状部材とに接続され、前記ホルダが3つ以上ずつ取り付けられている、
請求項4に記載のガラス基板の検査用保持冶具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板の検査用保持冶具の前記複数のホルダに、短辺が1100mm以上の長方形状のガラス基板を保持させるセッティング工程と、
前記検査用保持冶具に保持された前記ガラス基板に光を当てて検査するための光照射受光工程と、
を備える、ガラス基板の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−163920(P2011−163920A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26794(P2010−26794)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【出願人】(508271425)安瀚視特股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【出願人】(508271425)安瀚視特股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】
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