説明

ガラス基板ユニット、立体画像表示装置、およびガラス基板ユニットの製造方法

【課題】製造コストの上昇を伴うことなくクロストークの発生を抑制可能な、立体画像表示装置に用いるガラス基板ユニットを提供する。
【解決手段】立体画像表示装置に用いるガラス基板ユニット110は、第1の面111aと第2の面111bとを有するガラス基板111を備える。第1の面111aは、立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向され、第2の面111bはユーザーに対向される。パララックスバリア30は、第2の面111b上に形成され、透光部31と遮光部32とを有する。光散乱特性を有する凹凸部115が第1の面111a上に形成され、カラーフィルター112が凹凸部115上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に使用されるガラス基板ユニット、当該ガラス基板ユニットの製造方法、および当該ガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光眼鏡等の特殊な眼鏡を用いることなく立体画像を表示する方法としてパララックスバリア方式が知られている(特許文献1参照)。例えば液晶ディスプレイ装置の場合、所定の周期で開口部(透光部)と遮光部が繰り返されたパターンを有するパララックスバリアが液晶パネルユニットの表面すなわちユーザー側に設けられる。右目用および左目用の視差画像を液晶パネルユニットに表示すると、ユーザーの右目および左目は各々パララックスバリアを通過した右目用視差画像および左目用視差画像のみを視認し、画像の立体視が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−304739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液晶ディスプレイ装置においては、所望の画像を表示する液晶パネルユニットの前面すなわちユーザーに対向する側にガラス基板が設けられる。ガラス基板の液晶パネルユニットに対向する面にはカラーフィルターが形成され、ユーザーに対向する面には上述のパララックスバリアが形成される。
【0005】
ガラス基板のこれらの面は高い平滑性を有するように加工されているため、液晶パネルユニットより出射されカラーフィルターを通過した光は、ガラス基板におけるパララックスバリアが形成された面の内面により反射され得る。とりわけパララックスバリアの遮光部に面する部分において、ガラス基板の内面は実質的に鏡面となり、内部反射が顕著になる。内部反射を受けた光は、ガラス基板におけるカラーフィルターが形成された面の内面において更なる内部反射を受け、一部が本来通過してはならない透光部を通じて外部に漏れ出す場合がある。すなわち右目用視差画像に対応する光が通過しなければならない透光部から左目用視差画像に対応する光が通過してしまう場合がある。この現象はクロストークと称され、視差画像の分離不足を招来し、結果として立体画像の品質が劣化する。
【0006】
よって本発明の目的は、製造コストの上昇を伴うことなくクロストークの発生を抑制可能な、立体画像表示装置に用いるガラス基板ユニット、当該ガラス基板ユニットの製造方法、および当該ガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1のガラス基板ユニットは、立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、第1の面上に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、凹凸部上に形成されたカラーフィルターとを備える。
【0008】
画像表示ユニットから出射され、本来はパララックスバリアの透光部へ向かうべき光の一部は、カラーフィルターおよび凹凸部を通過することにより一次散乱を受けて遮光部へと至る。遮光部の裏側に到達した光は強い内部反射を受け、再びガラス基板の第1の面へと向かう。このような構成によれば、第1の面に到達した反射光は凹凸部が有する光散乱特性により強い二次散乱を受けて拡散する。従って従来より問題とされていたクロストーク現象の原因となる第1の面による内部反射を可及的に抑制でき、所望の光のみを所定の透光部から出射させることが可能である。よって高品質の立体画像を提供することができる。またパララックスバリアをガラス基板の第2の面上に直接形成しているので、パララックスバリアが形成された基板を用意してガラス基板に張り合わせる工程が不要となり、コスト削減が可能である。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第2のガラス基板ユニットは、立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、前記第1の面上に形成されたカラーフィルターと、前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、前記第2の面上における前記遮光部に対向する位置に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、を備える。
【0010】
画像表示ユニットから出射され、本来はパララックスバリアの透光部へ向かうべき光の一部は、カラーフィルターを通過することにより一次散乱を受けて遮光部へと至る。このような構成によれば、ガラス基板の第2の面のうち、遮光部に対向する部分(すなわち遮光部の裏面)には凹凸部が形成されており、遮光部の裏側に到達した光は凹凸部が有する光散乱特性により強い二次散乱を受けて拡散する。従って従来より問題とされていたクロストーク現象の原因となる遮光部の裏面および第1の面による内部反射を可及的に抑制でき、所望の光のみを所定の透光部から出射させることが可能である。よって高品質の立体画像を提供することができる。またパララックスバリアをガラス基板の第2の面上に直接形成しているので、パララックスバリアが形成された基板を用意してガラス基板に張り合わせる工程が不要となり、コスト削減が可能である。
【0011】
上記の各ガラス基板ユニットにおいては、前記凹凸部が硬化性シリコン樹脂を含有する突起群を含むことが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、例えばインクジェット技術(マイクロノズル)を用いて硬化性シリコン樹脂を拡散吹き付けすることによって、容易かつ低コストで上記の凹凸部を形成可能である。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の立体画像表示装置は、画像表示ユニットと、前記画像表示ユニットに装着されたガラス基板ユニットとを備え、前記ガラス基板ユニットは、前記画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、前記第1の面上に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、前記凹凸部上に形成されたカラーフィルターと、を備える。
【0014】
このような構成によれば、上記第1のガラス基板ユニットについて説明したものと同様の機能および作用効果を得ることが可能である。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の立体画像表示装置は、画像表示ユニットと、前記画像表示ユニットに装着されたガラス基板ユニットとを備え、前記ガラス基板ユニットは、前記画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、前記第1の面上に形成されたカラーフィルターと、前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、前記第2の面上における前記遮光部に対向する位置に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、を備える。
【0016】
このような構成によれば、上記第2のガラス基板ユニットについて説明したものと同様の機能および作用効果を得ることが可能である。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の第1のガラス基板ユニットの製造方法は、ガラス基板の第1の面に光散乱特性を有する凹凸部を形成し、立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向されるカラーフィルターを前記凹凸部を覆うように形成し、前記第1の面の反対側である第2の面に遮光部と透光部を有するパララックスバリアを形成する。
【0018】
このような構成によれば、上記第1のガラス基板ユニットについて説明したものと同様の機能および作用効果を得ることが可能である。また凹凸部を形成する位置が限定されないため、処理制御を単純化することができ、更なるコスト抑制に資する。
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の第2のガラス基板ユニットの製造方法は、立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向されるカラーフィルターを、ガラス基板の第1の面に形成し、前記第1の面の反対側である第2の面に光散乱特性を有する凹凸部を形成し、遮光部と透光部を有するパララックスバリアを、前記遮光部が前記凹凸部を覆うように前記第2の面に形成する。
【0020】
このような構成によれば、上記第2のガラス基板ユニットについて説明したものと同様の機能および作用効果を得ることが可能である。
【0021】
上記の各ガラス基板ユニットの製造方法においては、前記凹凸部がサンドブラスト処理により形成されることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、上記の凹凸部を容易かつ低コストで形成可能である。
【0023】
上記の各ガラス基板ユニットの製造方法においては、前記凹凸部が硬化性シリコン樹脂をノズルで吹き付けて形成されることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、上記の凹凸部を容易かつ低コストで形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置を示す模式断面図である。
【図2】図1のガラス基板ユニットの製造方法を示す模式断面図である。
【図3】(a)は図1のガラス基板ユニットの製造方法を示す模式断面図であり、(b)は(a)における部分IIIBを拡大して示す模式断面図である。
【図4】図1のガラス基板ユニットを製造する別の方法を示す模式断面図である。
【図5】(a)は図1のガラス基板ユニットを製造する別の方法を示す模式断面図であり、(b)は(a)における部分VBを拡大して示す模式断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置を示す模式断面図である。
【図7】図6のガラス基板ユニットの製造方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態に係るガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置の一例として、液晶ディスプレイ装置100の構成を図1に示す。図1は各要素の位置関係を模式的に示すことを目的としたものであり、実際の各要素の寸法や形状を限定的に描写するものではない。
【0027】
液晶ディスプレイ装置100は、ガラス基板ユニット10と、液晶パネルユニット20と、パララックスバリア30とを備えている。液晶パネルユニット20は、図示しないバックライトユニットにより背面(図1における上方)から照明される。液晶パネルユニット20は本発明の画像表示ユニットに相当し、右目用の視差画像を表示可能な複数の画素21aと、左目用の視差画像を表示可能な複数の画素21bを備えており、各画素は光の3原色(RGB)に対応する複数のサブ画素の組合せとして構成されている。液晶パネルユニット20に封入された液晶の状態を制御することにより、サブ画素毎に点灯(バックライト光が透過する状態)と消灯(バックライト光が透過しない状態)を切替え、その組合せとして所望の画像を表示可能とされている。
【0028】
本実施形態のガラス基板ユニット10は、第1の面11aと第2の面11bを有するガラス基板11を備えている。第1の面11aは液晶パネルユニット20に対向する面とされ、第2の面11bは第1の面11aの反対側の面であり、ユーザーに対向する面とされる。第1の面11a上には、上記サブ画素の配列に対応してカラーフィルター12が形成されている。第2の面11b上には、所定の周期で透光部(開口部)31と遮光部32が繰り返されるパターンを備えたパララックスバリア30が形成されている。
【0029】
Rのサブ画素に対向するカラーフィルター12は赤色光のみを通過させる特性を備え、同様にGおよびBのサブ画素に対向するカラーフィルター12は各々緑色光、青色光のみを通過させる特性を備える。カラーフィルター12を通過した光はパララックスバリア30に至る。
【0030】
本実施形態においては、ガラス基板11の第1の面11aは平滑面とされている。一方、第2の面11bのうち、パララックスバリア30の開口部31に対向する部分は平滑面とされ、遮光部32に対向する部分は光散乱面15とされている。
【0031】
光が媒質を通過する際には、当該媒質が本来備えている物性に基づいて程度の差はあれ散乱を受けることは避けられない。本説明で述べるところの「光散乱面」とは、ある媒質の面にその形状が変化するような作用を与えることにより、当該媒質が本来備えている以上の光散乱特性が積極的に付与された面を指すものと定義する。
【0032】
図1の例では、右目用画素21aにおけるBのサブ画素と左目用画素21bにおけるRのサブ画素が点灯され、開口部31を通じて各々右目と左目に至る様子が示されている。カラーフィルター12を通過した光は、カラーフィルター12が本来備えている光散乱特性に基づいて一次散乱を受け、その一部は図1に点線で示すように遮光部32へと至る。
【0033】
ガラス基板11の第2の面11bのうち、遮光部32に対向する部分(すなわち遮光部32の裏面)には光散乱面15が形成されており、その光散乱特性はカラーフィルター12が本来備える光散乱特性や第2の面11bのうち平滑面とされている部分の光散乱特性よりも遥かに大きい。よって遮光部32へと到達した光は光散乱面15による強い二次散乱を受け、図1において点線の矢印で示されるように拡散する。従って従来より問題とされていたクロストーク現象の原因となる遮光部32の裏面および第1の面11aによる内部反射を可及的に抑制でき、所望の光のみを所定の透光部31から出射させることが可能である。よって高品質の立体画像を提供することができる。
【0034】
次に本実施形態に係るガラス基板ユニット10の製造方法について図2および図3を参照しつつ説明する。図2および図3は各要素の位置関係を模式的に示すことを目的としたものであり、実際の各要素の寸法や形状を限定的に描写するものではない。
【0035】
先ず、図2(a)に示されるように、第1の面11aと第2の面11bを有するガラス基板11が用意され、第1の面11a上にカラーフィルター12が形成される。
【0036】
次に、図2(b)に示されるように、パララックスバリア30の開口部となる箇所にマスク40が配置される。換言するとマスク40の開口部がパララックスバリア30の遮光部32が形成される箇所に対応している。
【0037】
この状態においてインクジェット技術(マイクロノズル)を用いて硬化性シリコン樹脂の拡散吹き付けが行なわれる。マスク40の開口部から露出するガラス基板11の第2の面11bの表面に均一な密度で吹き付けられたシリコン樹脂は、硬化して幅10μm、高さ5μm程度の微小な突起となる。このような微小突起が多数集合して凹凸部が形成される。マスク40を除去すると、パララックスバリア30の遮光部32が設けられる箇所に光散乱面15が形成された状態となる。
【0038】
多数の微小突起の配置はランダム性が高いほど良好な光散乱特性が得られる。ランダム性を向上させるために、マイクロノズルの吹き付けを複数回行なう(多重吹き付け)こととしてもよい。
【0039】
光散乱面15を形成するための材料としては、ガラス基板11と同程度の光透過性を有するものであれば適宜選択可能である。
【0040】
次に、図3(a)に示されるように、光散乱面15を覆うようにパララックスバリア30の遮光部32が形成される。具体的には、アルミニウム、クロム、低反射クロム等の蒸着膜や樹脂ブラックの塗布膜を形成する。遮光部32が形成されていない第2の面11bは平滑面が維持されており、この箇所がパララックスバリア30の開口部31として機能する。バリアパターンが形成されたバリアガラス基板をガラス基板ユニットに張り合わせる従来の構成と比較すると、バリアガラス基板および張り合わせ工程分のコスト抑制が可能である。
【0041】
上記のようにして形成された遮光部32の一つを拡大したものを図3(b)に示す。ガラス基板11の第2の面11b上に硬化性シリコン樹脂から成る微小突起15aが多数形成され、サブ画素から到達した光を積極的に散乱させる凹凸部を含んだ光散乱面15を構成している。
【0042】
本実施形態に係るガラス基板ユニットを製造する別の方法について図4および図5を参照しつつ説明する。図4および図5は各要素の位置関係を模式的に示すことを目的としたものであり、実際の各要素の寸法や形状を限定的に描写するものではない。
【0043】
図2(a)を用いて説明したカラーフィルター12の形成後、図4に示されるように、パララックスバリア30の開口部31となる箇所にマスク40が配置される。換言するとマスク40の開口部がパララックスバリア30の遮光部32が形成される箇所に対応している。
【0044】
この状態においてサンドブラスト処理を実行し、マスク40の開口部から露出するガラス基板11の第2の面11bの表面に微小な凹凸部が形成される。多数の微小な凹凸が所定の領域内で均一な密度で形成されるように、かつカラーフィルター12が本来備える光散乱特性や第2の面11bのうち平滑面とされている部分の光散乱特性よりも大きな光散乱特性を備えるように、サンドブラスト処理を行なう。マスク40を除去すると、パララックスバリア30の遮光部32が設けられる箇所に光散乱面15Aが形成された状態となる。
【0045】
次に図5(a)に示すように、図3(a)を用いて説明した工程と同様にして、光散乱面15Aを覆うようにパララックスバリア30の遮光部32が形成される。その一つを拡大したものを図5(b)に示す。本例のガラス基板ユニット10Aにおいては、サンドブラスト処理によって形成された微小な凹凸部15bがガラス基板11の第2の面11bに多数形成され、サブ画素から到達した光を積極的に散乱させる光散乱面15Aを構成している。
【0046】
サンドブラスト処理は低コストで実行可能なプロセスであり、ガラス基板ユニット10Aの製造コストを抑制可能である。
【0047】
本実施形態においては、光散乱面15(15A)の形成に先立ってカラーフィルター12の形成が行なわれるが、光散乱面15(15A)の形成後あるいはパララックスバリア30の形成後に行なわれることとしてもよい。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態に係るガラス基板ユニットを備えた立体画像表示装置の一例として、液晶ディスプレイ装置200の構成を図6に示す。図6は各要素の位置関係を模式的に示すことを目的としたものであり、実際の各要素の寸法や形状を限定的に描写するものではない。第1実施形態と同一、同様もしくは同等の構成および機能を備える要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は割愛する。
【0049】
本実施形態のガラス基板ユニット110は、第1の面111aと第2の面111bを有するガラス基板111を備えている。第1の面111aは液晶パネルユニット20に対向する面とされ、第2の面111bは第1の面111aの反対側の面であり、ユーザーに対向する面とされる。第1の面111a上には、光散乱面115およびカラーフィルター112が形成されている。第2の面111bは平滑面とされている。第2の面111b上には所定の周期で透光部(開口部)31と遮光部32が繰り返されたパターンを備えたパララックスバリア30が形成されている。
【0050】
本実施形態の光散乱面115は、ガラス基板111の第1の面111a全面に亘って形成されており、カラーフィルター112は光散乱面115上に形成されている。光散乱面115は、少なくともカラーフィルター112の形成が必要な領域に形成されていれば、第1の面111a全面に形成されていなくともよい。
【0051】
図6の例では、右目用画素21aにおけるBのサブ画素と左目用画素21bにおけるRのサブ画素が点灯され、開口部31を通じて各々右目と左目に至る様子が示されている。サブ画素から出射された光は、カラーフィルター112および光散乱面115による一次散乱を受けつつこれらを通過してガラス基板111に入射する。光散乱面115は後述するクロストーク抑制機能を担うため、ある程度大きな光散乱特性を具備する必要があるが、一次散乱が強すぎるとユーザーへ向かう光の指向性が失われてしまう(立体画像の再現性が失われてしまう)ため、立体画像の再現性が維持できる範囲内で光散乱特性の程度を定める必要がある。
【0052】
カラーフィルター112および光散乱面115を通過して一次散乱を受けた光の一部は、図6に点線で示すように遮光部32へと至る。ガラス基板111の第2の面111bは平滑面であり、遮光部32の裏側に到達した光は強い内部反射を受け、再びガラス基板111の第1の面111aへと向かう。しかしながら第1の面111aに到達した反射光は光散乱面115による強い二次散乱を受け、図6において点線の矢印で示されるように拡散する。従って従来より問題とされていたクロストーク現象の原因となる第1の面111aによる内部反射を可及的に抑制でき、所望の光のみを所定の透光部31から出射させることが可能である。よって高品質の立体画像を提供することができる。
【0053】
次に本実施形態に係るガラス基板ユニット110の製造方法について図7を参照しつつ説明する。図7は各要素の位置関係を模式的に示すことを目的としたものであり、実際の各要素の寸法や形状を限定的に描写するものではない。
【0054】
先ず、図7(a)に示されるように、第1の面111aと第2の面111bを有するガラス基板111を用意し、第1の面111a上に光散乱面115を形成する。第1実施形態について説明したインクジェット技術を用いる方法(マイクロノズルによる硬化性シリコン樹脂の拡散吹き付け)とサンドブラスト処理を用いる方法のいずれにおいても光散乱面115を形成可能である。第1実施形態の場合と異なり、第1の面111a全面に亘って光散乱面を形成するため、マスクを不要として処理の制御を単純化することが可能であり、製造コストを抑制することができる。
【0055】
次に、図7(b)に示されるように、光散乱面115を覆うようにカラーフィルター112が形成される。また図3(a)を用いて説明した工程と同様にしてガラス基板111の第2の面111b上にパララックスバリア30の遮光部32が形成される。遮光部32により覆われていない第2の面111bはパララックスバリア30の開口部31として機能する。バリアパターンが形成されたバリアガラス基板をガラス基板ユニットに張り合わせる従来の構成と比較すると、バリアガラス基板および張り合わせ工程分のコスト抑制が可能である。
【0056】
本実施形態においては、パララックスバリア30の形成に先立って光散乱面115の形成が行なわれたが、パララックスバリア30の形成後に光散乱面115の形成が行なわれることとしてもよい。
【0057】
本発明に係るガラス基板ユニットは、ユーザー側(前面)に配置されるガラス基板にカラーフィルターを備える方式である適宜の立体画像表示装置に適用可能である。例えば発光部が単色の有機ELディスプレイ装置、液晶の代わりにMEMSで発光部の点灯消灯を行なう方式のディスプレイ装置等が挙げられる。
【0058】
上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる事は勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10,110 ガラス基板ユニット、11,111 ガラス基板、11a,111a 第1の面、11b,111b 第2の面、12,112 カラーフィルター、15,115 光散乱面(凹凸部)、20 液晶パネルユニット(画像表示ユニット)、30 パララックスバリア、31 開口部(透光部)、32 遮光部、100,200 液晶ディスプレイ装置(立体画像表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、
前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、
前記第1の面上に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、
前記凹凸部上に形成されたカラーフィルターと、
を備えるガラス基板ユニット。
【請求項2】
立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、
前記第1の面上に形成されたカラーフィルターと、
前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、
前記第2の面上における前記遮光部に対向する位置に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、
を備えるガラス基板ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガラス基板ユニットであって、
前記凹凸部は硬化性シリコン樹脂を含有する突起群を含むガラス基板ユニット。
【請求項4】
画像表示ユニットと、
前記画像表示ユニットに装着されたガラス基板ユニットとを備え、
前記ガラス基板ユニットは、
前記画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、
前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、
前記第1の面上に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、
前記凹凸部上に形成されたカラーフィルターと、
を備える立体画像表示装置。
【請求項5】
画像表示ユニットと、
前記画像表示ユニットに装着されたガラス基板ユニットとを備え、
前記ガラス基板ユニットは、
前記画像表示ユニットに対向する第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有するガラス基板と、
前記第1の面上に形成されたカラーフィルターと、
前記第2の面上に形成され、遮光部と透光部を有するパララックスバリアと、
前記第2の面上における前記遮光部に対向する位置に形成され、光散乱特性を有する凹凸部と、
を備える立体画像表示装置。
【請求項6】
ガラス基板の第1の面に光散乱特性を有する凹凸部を形成し、
立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向されるカラーフィルターを前記凹凸部を覆うように形成し、
前記第1の面の反対側である第2の面に遮光部と透光部を有するパララックスバリアを形成するガラス基板ユニットの製造方法。
【請求項7】
立体画像表示装置の画像表示ユニットに対向されるカラーフィルターを、ガラス基板の第1の面に形成し、
前記第1の面の反対側である第2の面に光散乱特性を有する凹凸部を形成し、
遮光部と透光部を有するパララックスバリアを、前記遮光部が前記凹凸部を覆うように前記第2の面に形成するガラス基板ユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のガラス基板ユニットの製造方法であって、
前記凹凸部は、サンドブラスト処理により形成されるガラス基板ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載のガラス基板ユニットの製造方法であって、
前記凹凸部は、硬化性シリコン樹脂をノズルで吹き付けて形成されるガラス基板ユニットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−168375(P2012−168375A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29682(P2011−29682)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】