説明

ガラス壜の検査装置

【課題】ガラス壜に液体を充填していない空壜の場合に壜底部のビリ(底ビリ)を精度良く検出できる光学撮像系を備えたガラス壜の検査装置を提供する。
【解決手段】ガラス壜1の底面側から照明する照明2と、照明2から投光される照明光の一部を遮る遮光板4と、ガラス壜1の底面から上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁1eと該壜底外周縁に連なる壜底部1aとを撮像するカメラ3とを備え、照明2を水平面に対して傾けて配置し、かつ照明2を光源と集光レンズ22とで構成することにより、照明2からの照明光をガラス壜1のカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁より内側の底部下面に集光するようにし、遮光板4により照明2からガラス壜1の底部下面1bに投光される照明光の一部を遮り、照明2からの光がカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁に近い底部下面1bの領域のみに入射するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス壜の検査装置に係り、特にガラス壜の壜底部等の特定位置にある欠陥を撮像により検出することができるガラス壜の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビール等の飲料を充填するガラス壜は、使用後の壜を回収して再利用することが行われている。ガラス壜は、回収された壜および成形後の壜に拘らず、輸送中や搬送中において壜同士が接触したり他の物品に接触したりして、壜の肉厚内にビリと称される内部クラックが入ったり、壜の底部や口部に欠けが生じたりすることがある。そのため、ガラス壜は、液体が充填される前の空壜の状態で壜口部、壜胴部、壜底部等にビリや欠け等の欠陥がないかを検査している。
【0003】
液体が充填されていないガラス壜である空壜を検査する検査装置は、ガラス壜の壜口部や壜底部等の外観検査を行うために複数の検査ステーションを備えており、検査用のメインロータは、ガラス壜を保持して回転し、ガラス壜を円形軌道に沿って配置された複数の検査ステーションに搬送するようになっている。複数の検査ステーションでは、ガラス壜を自転させつつ、それぞれ、壜口部のビリ(口ビリ)、壜底部のビリ(底ビリ)、壜底部の欠け(底欠け)等の欠陥毎に専用に検査するようになっている。
【0004】
図10は、従来の壜底部のビリ(底ビリ)の有無を検査する検査ステーションの構成を示す模式的な立面図である。図10に示すように、ガラス壜1の背面に照明101を配置し、照明101の前面にCCDカメラ102を配置している。CCDカメラ102の光軸102xは、水平面に対して斜め上方に所定の角度(α)、例えば、20°傾いて配置されている。ガラス壜1は搬送中に走行するベルト(図示せず)に当接して自転するようになっている。照明101は、ハロゲン照明からなり、その前面の照明面は壜胴部と平行になっている。照明101は、ガラス壜1の壜胴部および壜底部に拡散光を投光するようになっている。
【0005】
図10に示すように構成された検査ステーションにおいて、照明101からの拡散光はガラス壜1の壜底部1aの外周面に入射する。ガラス壜1に入射した光はガラス壜1を透過し、透過光はCCDカメラ102により撮像される。壜底部にビリがある場合には、壜の肉厚内に入射した光はビリの亀裂面で反射して明るく光るため、CCDカメラ102で撮影した画像中では、ビリに対応した画像部分が他の画像部分より明るくなるので、画像処理を行って画素毎の明るさを比較してビリを検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−55828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10に示す底ビリを検出する方式においては、ガラス壜の背面側に配置された照明101によってガラス壜1を照明し、ガラス壜1を透過した透過光をCCDカメラ102により撮影する構成を採用しているため、CCDカメラ102で得られた画像は、全体がぼんやりと暗い画像になり、ビリに対応した画像部分が明るい画像部分になる。しかしながら、ビリに対応した明るい画像部分と背景のぼんやりと暗い画像部分との間の明るさの度合いには、それほど大きな差異がない場合があるため、底ビリの検出精度が高くないという問題点がある。
【0008】
本発明者らは、上述した従来の底ビリの検査方式の問題点を解決するための光学撮像系として、照明をガラス壜の底面側に配置し、ガラス壜の壜底部の側方にCCDカメラを配置した照明撮像系を用いて液体が充填されていないガラス壜、すなわち空壜について底ビリを検出することを着想し、鋭意研究を行ったものである。
【0009】
図11は、照明をガラス壜の底面側に配置し、ガラス壜の壜底部の側方にCCDカメラを配置した照明撮像系を示す模式的な立面図である。図11に示すように、ガラス壜1の底面側に照明111を配置し、ガラス壜1の壜底部1aの側方にCCDカメラ115を配置している。照明111は、水平面上に配列された多数の白色LED112と、白色LED112の前面に配置された拡散板113とから構成されている。照明111の前面はガラス壜1の底面と平行になっており、照明111はガラス壜1の底面に拡散光を投光するようになっている。CCDカメラ115の光軸115xはガラス壜1の壜底部1aに向かって水平方向に延びている。
【0010】
本発明者らは、図11に示す照明撮像系を用いて底ビリを検出する実験を重ねた結果、以下のような知見を得た。
図12(a)は、ガラス壜1内に液体を充填した実壜の場合に図11に示す照明撮像系を用いて照明111からの光がガラス壜1の壜底部1aに到達し、壜底部1aからの光がCCDカメラ115により撮影される場合の光路を示す模式図である。ガラス壜1の下方に配置された照明111からの拡散光は、図12(a)に示すように、ガラス壜1の壜底部1aの底部下面1bの略全面からガラス壜1の肉厚内に入射する。壜底部1aの肉厚内にビリCがあった場合、ガラス壜1の壜底外周縁1eに近い位置で底部下面1bから壜底部1aの肉厚内に入射した光LはビリCの亀裂面で反射し、反射光は壜底部1aの側面を透過してCCDカメラ115に入射して撮影される。ガラス壜1の壜底外周縁1eから離れた位置で底部下面1bから肉厚内に入射した光Lは、底部上面(底部内面)1cを透過して液体中を進行してCCDカメラ115に入射しないため、CCDカメラ115で撮影した画像中では、ビリCに相当する画像部分は他の画像部分より明るい領域となる。画像処理装置により画像処理を行い、他の画像部分より明るい画像部分を判別することにより、壜底部にあるビリを検出することができる。
【0011】
図12(b)は、ガラス壜に液体を充填していない空壜の場合に図11に示す照明撮像系を用いて照明111からの光がガラス壜1の壜底部1aに到達し、壜底部1aからの光がCCDカメラ115により撮影される場合の光路を示す模式図である。ガラス壜1の下方に配置された照明111からの拡散光は、図12(b)に示すように、ガラス壜1の壜底部1aの底部下面1bの略全面からガラス壜1の肉厚内に入射する。壜底部1aの肉厚内にビリCがあった場合、ガラス壜1の壜底外周縁1eに近い位置で底部下面1bから壜底部1aの肉厚内に入射した光LはビリCの亀裂面で反射し、反射光は壜底部1aの側面を透過してCCDカメラ115に入射して撮影される。ガラス壜1の壜底外周縁1eから離れた位置で底部下面1bから肉厚内に入射した光のうち、底部上面1cに対する入射角が大きい光L,L,Lは、壜内の空気中に入射せずに底部上面(底部内面)1cで全反射し、全反射した反射光は壜底部1aの側面を透過してCCDカメラ115に入射して撮影される。なお、底部上面1cで全反射した光の一部、例えば光Lは、底部下面1bで全反射してCCDカメラ115に入射する場合もある。このように壜底部の底部上面(底部内面)1cから反射してくる光がCCDカメラ115に入射するため、CCDカメラ115で撮影した画像中では、ビリCに相当する画像部分と底部上面1cからの反射光に相当する画像部分とがともに明るい領域となるため、ビリCに相当する画像部分の判別が困難であり、壜底部にあるビリを検出することができない。
【0012】
図12(b)に示すように、光が光学的に密な媒質であるガラスから、光学的に疎な媒質である空気の界面に向かう場合に、入射角が臨界角より大きくなると屈折せずに内部に反射、すなわち全反射する。したがって、空壜の壜底部のビリを検出する際に、空壜特有の壜底部の底部上面(底部内面)からの反射光が広範囲に現れてカメラに入射するため、底ビリ欠陥と区別することができないので、空壜での底ビリ検査が不可能であった。
【0013】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、ガラス壜に液体を充填していない空壜の場合に壜底部のビリ(底ビリ)を精度良く検出できる光学撮像系を備えたガラス壜の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明者らは、照明をガラス壜の底面側に配置し、ガラス壜の壜底部の側方にカメラを配置した図11に示す照明撮像系を基本とし、照明からの光が壜底部の肉厚内に入射して底部上面(底部内面)で反射する反射光をなくし、壜底部のビリからの反射光を選択的にカメラで撮像できる照明撮像系を創案することを試みたものである。
【0015】
次に、本発明のガラス壜の検査装置の基本概念を図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明のガラス壜の検査装置の基本構成を示す模式図である。ガラス壜1は液体が充填されていない空壜であり、図1では壜底部のみを図示している。
図1に示すように、ガラス壜1の下方には照明2が配置されており、ガラス壜1の壜底部1aの側方にはカメラ3が配置されている。照明2は、水平面に対して斜め下方に傾いて配置されている。すなわち、照明2は、カメラに近い側にある前面側2fが後面側2rより下方に位置するように、水平面に対して斜め下方に所定の角度(θ)、例えば、30°〜50°傾いて配置されている。図1に示す例においては、角度(θ)は40°に設定されている。カメラ3はCCDカメラから構成されており、カメラ3の光軸3xはガラス壜1の壜底部1aに向かって水平方向に延びている。カメラ3は、ガラス壜1の底部下面1bから上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁1eと該壜底外周縁1eに連なる壜底部1aの側面とを撮像するようになっている。
【0016】
図1に示すように、照明2は、光源としての複数の白色LED21と、白色LED21の上方に配置された集光レンズ22とから構成されている。白色LED21および集光レンズ22は、水平面に対して斜め下方に所定の角度(θ)で傾いて配置されているため、集光レンズ22の上面はカメラ側の壜底外周縁1eおよび壜底外周縁1eよりやや内側の底部下面1bに対向している。集光レンズ22はフレネルレンズからなり、白色LED21から投光される拡散光をカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁1eの近傍の底部下面1bの領域に集光するようになっている。
【0017】
また、ガラス壜1の底部下面1bと照明2との間には遮光板4が配置されている。遮光板4は、カメラと反対側の壜底外周縁1eのやや外側からガラス壜1の軸心1xを越えてカメラ側の壜底外周縁1eに向かって水平方向に延びている。そして、遮光板4のカメラ側の端部4eは、ガラス壜1の軸心1xとカメラ側の壜底外周縁1eとの中点よりややカメラ側まで延びており、集光レンズ22からガラス壜1の底部下面1bに集光する光の一部を遮るようになっている。
【0018】
次に、図1に示すように構成されたガラス壜の検査装置の作用を図2を参照して説明する。
図2に示すように、本発明の照明撮像系においては、複数の白色LED21から拡散した拡散光は、フレネルレンズからなる集光レンズ22により集光されてカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁1e近傍の底部下面1bの領域に集中的に照射される。底部下面1bを透過して壜底肉厚内に入射した光はビリCの亀裂面で反射して、反射光は壜底部1aの側面を透過してカメラ3に入射して撮影される。壜底部1aにビリCが存在しないときには壜底肉厚内に入射した光は、点線で示すように壜底部1aの側面から斜め上方に空気中に出るためカメラ3には入射しない。
【0019】
本発明の照明撮像系においては、ガラス壜1の底部下面1bと照明2との間に遮光板4を配置しているため、集光レンズ22により集光された光の一部は、遮光板4により遮られガラス壜1の底部下面1bには到達しない。遮光板4のカメラ側の端部4eは、ガラス壜1の軸心1xとカメラ側の壜底外周縁1eの中点よりややカメラ側まで延びているため、遮光板4により覆われている底部下面1bには光は入射しない。このように遮光板4を設置することにより、照明2からの光が底部下面1bから壜底肉厚に入射した後、底部上面(底部内面)1cに入射することがないようにしている。ガラス壜1の底部上面(底部内面)1cに光が到達すると、空のガラス壜の場合には、底部上面(底部内面)1cからの反射光がカメラ3に入射して撮影されてしまうが、遮光板4を設けているため照明2からの光がガラス壜1の底部上面(底部内面)1cに入射することがなく、底部上面1cからの反射光がない。したがって、本発明の照明撮像系によれば、壜底部のビリからの反射光のみを選択的にカメラで撮像でき、壜底部のビリを精度良く検出できる。
【0020】
図1および図2を参照して説明した本発明の基本概念から明らかなように、本発明は、液体が充填されていない空のガラス壜を搬送系路に沿って搬送している間に、壜底部を撮像し、得られた画像から壜底部の欠陥を検出するガラス壜の検査装置において、直立した状態で搬送されるガラス壜の下方に配置され、ガラス壜をガラス壜の底面側から照明する照明と、前記照明とガラス壜との間に配置され、前記照明から投光される照明光の一部を遮る遮光板と、ガラス壜の壜底部の側方に配置され、ガラス壜の底面から上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁と該壜底外周縁に連なる壜底部とを撮像するカメラとを備え、前記照明を、前記カメラに近い側にある前面側が後面側より下方に位置するように、水平面に対して傾けて配置し、かつ前記照明を光源と該光源からの光を集光する集光レンズとで構成することにより、照明からの照明光をガラス壜のカメラ側の壜底外周縁および該壜底外周縁より内側の底部下面に集光するようにし、前記遮光板により前記照明からガラス壜の底部下面に投光される照明光の一部を遮り、前記照明からの光がカメラ側の壜底外周縁および該壜底外周縁に近い底部下面の領域のみに入射するようにしたことを特徴とする。本発明において、カメラ側の壜底外周縁および該壜底外周縁に近い底部下面の領域は、壜底外周縁から壜底部中心に向かって10〜15mmまでの範囲である。
【0021】
本発明の照明撮像系においては、光源からの光は集光レンズにより集光され、集光された光は壜底外周縁および壜底外周縁近傍の底部下面に集中的に照射される。底部下面を透過して壜底肉厚内に入射した光はビリの亀裂面で反射して、反射光は壜底部の側面を透過してカメラに入射して撮影される。壜底部にビリが存在しないときには壜底肉厚内に入射した光は壜底部の側面から斜め上方に空気中に出るためカメラには入射しない。本発明の照明撮像系においては、ガラス壜の底部下面と照明との間に遮光板を配置することにより、照明からの光が底部下面から壜底肉厚に入射した後、底部上面(底部内面)に入射することがないようにしている。ガラス壜の底部上面(底部内面)に光が到達すると、空のガラス壜の場合には、底部上面(底部内面)からの反射光がカメラに入射して撮影されてしまうが、遮光板を設けているため照明からの光がガラス壜の底部上面(底部内面)に入射することがなく、底部上面からの反射光がない。したがって、本発明の照明撮像系によれば、壜底部のビリからの反射光のみを選択的にカメラで撮像でき、壜底部のビリを精度良く検出できる。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記照明は、水平面に対して30°〜50°の角度で傾けて配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、照明は水平面に対して斜め下方に所定の角度(θ)で傾いて配置されているため、集光レンズの上面をカメラ側の壜底外周縁および壜底外周縁近傍の底部下面に対向させることができる。そのため、集光レンズによって光源から投光される拡散光をカメラ側の壜底外周縁および壜底外周縁近傍の底部下面の領域に集光することができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記遮光板は、前記カメラと反対側の壜底外周縁の外側からガラス壜の軸心を越えてカメラ側の壜底外周縁に向かって水平方向に延びて、前記遮光板のカメラ側の端部は、ガラス壜の軸心とカメラ側の壜底外周縁の中点よりカメラ側まで延びていることを特徴とする。
本発明によれば、遮光板によりカメラ側の壜底外周縁および壜底外周縁近傍の底部下面のみに照明光を入射させることができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記集光レンズは、フレネルレンズからなることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記搬送系路は、ガラス壜を円形軌道に沿って搬送する搬送系路であり、前記照明は略扇形の平面形状を有し、前記照明の前面側の端部は円弧状をなすことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記遮光板は、ガラス壜を支持する搬送レールからなることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様によれば、ガラス壜は、前記円形軌道に沿って搬送されている間に自転することを特徴とする。
本発明によれば、ガラス壜が自転している間に、カメラはガラス壜の壜底部を複数枚(例えば、6枚)撮像し、壜底部の全周を撮像することができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、ガラス壜から前記カメラに入射する光路の途中にミラーを配置し、該ミラーの角度を調整することによりガラス壜の移動に追従して前記カメラがガラス壜を撮像することを可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)照明からの照明光がガラス壜の壜底部の底部上面(底部内面)に入射することがなく、底部上面からの反射光を無くすことができ、ガラス壜の壜底部のビリ(底ビリ)を精度良く検出できる。
(2)照明からの照明光をカメラに近い側の壜底部の底部下面に集光照射することができるため、ガラス壜の壜底部のカメラ側の面の肉厚内に入射する光の光量を増加させることができる。したがって、ビリの反射光を増幅することができ、底ビリの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明のガラス壜の検査装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すガラス壜の検査装置の作用を説明する模式図である。
【図3】図3は、図1に示す本発明の基本概念を具体化したガラス壜の検査装置を示す平面図である。
【図4】図4は、壜底部のビリ(底ビリ)を検査する壜底部検査ステーションの構成を示す図であり、壜底部検査ステーションを示す平面図である。
【図5】図5は、壜底部のビリ(底ビリ)を検査する壜底部検査ステーションの構成を示す図であり、壜底部検査ステーションを示す斜視図である。
【図6】図6は、ガラス壜と照明と搬送レールとの関係を示す図であり、図4のVI−VI線断面図である。
【図7】図7(a),(b)は、照明の詳細構造を示す図であり、図7(a)は照明の平面図であり、図7(b)は図7(a)のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、照明とガラス壜の壜底部の一部とカメラとの関係を示す模式的な立面図である。
【図9】図9は、図3乃至図8に示す本発明のガラス壜の検査装置を用いて撮影した画像である。
【図10】図10は、従来の壜底部のビリ(底ビリ)の有無を検査する検査ステーションの構成を示す模式的な立面図である。
【図11】図11は、照明をガラス壜の底面側に配置し、ガラス壜の壜底部の側方にCCDカメラを配置した照明撮像系を示す模式的な立面図である。
【図12】図12(a)は、ガラス壜内に液体を充填した実壜の場合に図11に示す照明撮像系を用いて照明からの光がガラス壜の壜底部に到達し、壜底部からの光がCCDカメラにより撮影される場合の光路を示す模式図であり、図12(b)は、ガラス壜に液体を充填していない空壜の場合に図11に示す照明撮像系を用いて照明からの光がガラス壜の壜底部に到達し、壜底部からの光がCCDカメラにより撮影される場合の光路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るガラス壜の検査装置の実施形態を図3乃至図9を参照して説明する。図3乃至図9において、図1に示す構成要素に相当する構成要素には、同一の符号を付して説明する。
図3は、図1に示す本発明の基本概念を具体化したガラス壜の検査装置を示す平面図である。検査対象となるガラス壜1は、例えば、ビール壜であり、ガラス壜1はビール等の飲料が充填されていない空壜である。図3に示すように、ガラス壜の外観を検査する検査装置は、検査対象となるガラス壜1を検査部に搬入する入口スターホイール6と、入口スターホイール6から受け渡されたガラス壜1の壜底部等の検査を行う検査部であるメインロータ10と、メインロータ10から受け渡されたガラス壜1を搬出する出口スターホイール7とを備えている。入口スターホイール6には搬入コンベア8によりガラス壜1が搬入され、出口スターホイール7から搬出コンベア9によりガラス壜1が搬出される。
【0030】
図4および図5は、壜底部のビリ(底ビリ)を検査する壜底部検査ステーションの構成を示す図であり、図4は壜底部検査ステーションを示す平面図、図5は壜底部検査ステーションを示す斜視図である。
図4および図5に示すように、メインロータ10は、ガラス壜1の壜胴部の両側面を支持するための対をなす樹脂製の支持ローラ11,11を多数備えている(図4および図5においては、1対の支持ローラ11,11のみを図示している)。また、メインロータ10は、ガラス壜1の底面を支持するための円形軌道に沿って配置された環状の搬送レール12を備えている。搬送レール12は、メインロータ10により円形軌道に沿って搬送されるガラス壜1の底面の70〜80%程度を支持するように固定して設置されている。また、ガラス壜1の壜胴部の前面には走行ベルト13が当接するようになっており、ガラス壜1は支持ローラ11,11と走行ベルト13とにより挟持されて支持されるようになっている。なお、図4では、走行ベルト13の図示を省略している。搬送レール12の下方には、概略扇形の平面形状を有する照明2が設置されている。
【0031】
図6は、ガラス壜1と照明2と搬送レール12との関係を示す図であり、図4のVI−VI線断面図である。図6に示すように、照明2は、光源としての多数の白色LED21と、白色LED21の上方に配置された集光レンズ22とから構成されている。白色LED21および集光レンズ22は、水平面に対して斜め下方に所定の角度(θ)で傾いて配置されているため、集光レンズ22の上面はカメラ側の壜底外周縁1eおよび壜底外周縁1e近傍の底部下面1bに対向している。集光レンズ22はフレネルレンズからなり、白色LED21から投光される拡散光をカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁1e近傍の底部下面1bの領域に集光するようになっている。
【0032】
ガラス壜1の底面を支持する搬送レール12は、ガラス壜1の底部下面1bと照明2との間に配置されている。搬送レール12は、図1に示す遮光板4として機能するものであり、カメラと反対側の壜底外周縁1eのやや外側からガラス壜1の軸心1xを越えてカメラ側の壜底外周縁1eに向かって水平方向に延びている。搬送レール12のカメラ側の端部12eは、ガラス壜1の軸心1xとカメラ側の壜底外周縁1eの中点よりややカメラ側まで延びており、集光レンズ22からガラス壜1の底部下面1bに集光する光の一部を遮るようになっている。
【0033】
図7(a),(b)は、照明2の詳細構造を示す図であり、図7(a)は照明2の平面図であり、図7(b)は図7(a)のVII−VII線断面図である。
図7(a)に示すように、照明2は概略扇形の平面形状を有しており、照明2は円弧状の列に沿って光源としての白色LED21を多数配置することにより形成された2つのLED列LR1,LR2を備えている。第1LED列LR1は、カメラ側に近い位置にあり、第2LED列LR2は、カメラ側から離間した位置にある。
図7(b)に示すように、2つのLED列LR1,LR2の上方には、集光レンズ22が配置されている。集光レンズ22は平板状で概略扇形の平面形状を有したフレネルレンズから構成されている。
【0034】
また、図4に示すように、メインロータ10の半径方向の外側には、ガラス壜1の壜底部を撮像するための撮像装置30が設置されている。撮像装置30は、メインロータ10の回転に追従して角度を調整できるミラー31と、ミラー31で反射した光を撮像するカメラ3とを備えている。カメラ3はCCDカメラから構成されており、このCCDカメラは、図6に示すガラス壜1の底部下面1bから上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁1eと該壜底外周縁1eに連なる壜底部1aの側面とを撮像するようになっている。
【0035】
図3乃至図7に示すように構成された壜底部検査ステーションにおいて、ガラス壜1は、支持ローラ11,11により壜胴部が支持されるとともに搬送レール12により底面が支持された状態で、メインロータ10の回転により搬送レール12上を摺動して円形軌道に沿って搬送される。搬送中に、走行ベルト13がガラス壜1の壜胴部に当接して、ガラス壜1は自転する。このように、ガラス壜1は、自転しながら円形軌道に沿って搬送されて撮像装置30の前方を通過していくが、撮像装置30のミラー31はガラス壜1の移動に追従して角度を変えられるようになっているため、ガラス壜1が照明2の上方を移動する間、カメラ3はガラス壜1の壜底部1aを撮像できるようになっている。したがって、ガラス壜1が自転しつつ照明2の上方を通過する間に、カメラ3はガラス壜1の壜底部1aを複数枚(例えば、6枚)撮像し、壜底部1aの全周を撮像することができる。
【0036】
図8は、照明2とガラス壜1の壜底部1aとカメラ3との関係を示す模式的な立面図である。撮像装置30は、ガラス壜1の移動に追従してガラス壜1を所定枚数撮像して全周を検査するためにミラー31を備えているが、図8においては、光路を簡略化するためにミラー31を省略してガラス壜1からの光が直接にカメラ3に入射するように図示している。ガラス壜1の底面から上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁1eと該壜底外周縁1eに連なる壜底部1aとが撮像範囲である。カメラ3の光軸3xはガラス壜1の壜底部1aに向かって水平方向に延びている。集光レンズ22はLED列LR1,LR2から投光される拡散光を集光し、光をガラス壜1の壜底外周縁1eおよび壜底外周縁1e近傍の底部下面1bの領域に集中的に照射する。壜底部1aの肉厚内にビリCがあった場合、底部下面1bを透過して壜底肉厚内に入射した光はビリCの亀裂面で反射し、反射光は壜底部1aの側面を透過してカメラ3に入射して撮影される。壜底にビリCが存在しないときには壜底肉厚内に入射した光は壜底部1aの側面から斜め上方に空気中に出るためカメラ3には入射しない。
【0037】
本発明の照明撮像系においては、ガラス壜1の底部下面1bと照明2との間に遮光板として機能する搬送レール12を配置しているため、集光レンズ22により集光された光の一部は、搬送レール12により遮られガラス壜1の底部下面1bには到達しない。搬送レール12のカメラ側の端部12eは、ガラス壜1の軸心1xとカメラ側の壜底外周縁1eの中点よりややカメラ側まで延びているため、搬送レール12により覆われている底部下面1bには光は入射しない。このように搬送用の搬送レール12を遮光板として利用することにより、照明2からの光が底部下面1bから壜肉厚部に入射した後、底部上面(底部内面)1cに入射することがないようにしている。ガラス壜1の底部上面(底部内面)1cに光が到達すると、空のガラス壜の場合には、底部上面(底部内面)1cからの反射光がカメラ3に入射して撮影されてしまうが、遮光板として機能する搬送レール12を設けているため照明2からの光がガラス壜1の底部上面(底部内面)1cに入射することがなく、底部上面1cからの反射光がない。したがって、壜底部1aの肉厚内に入射した光のうちビリCで反射した反射光のみがカメラ3に入射して撮像されるため、カメラ3で撮影した画像中では、ビリCに相当する画像部分は他の画像部分より明るい領域となる。検査装置に設けられた画像処理装置により画像処理を行い、他の画像部分より明るい画像部分を判別することにより、壜底部にあるビリを検出することができる。
【0038】
図8に示すように、白色LED21および集光レンズ22は、水平面に対して斜め下方に所定の角度(θ)で傾いて配置されているため、集光レンズ22の上面はカメラ側の壜底外周縁1eおよび壜底外周縁1e近傍の底部下面1bに対向している。集光レンズ22はフレネルレンズからなり、白色LED21から投光される拡散光を集光することにより、光をカメラ側の壜底外周縁1eおよび該壜底外周縁1e近傍の底部下面1bに集中的に照射することができる。したがって、ガラス壜1の壜底部1aのカメラ側の面の肉厚内に入射する光の光量を増加させることができるため、ビリCの反射光を増幅することができ、底ビリの検出精度を向上させることができる。なお、照明2の位置、照明2の傾斜角度(θ)および搬送レール12のカメラ側の端部12eの位置は、照明光を壜底部1aのどの位置に集光照射したいかによって適宜調整される。
【0039】
図9は、図3乃至図8に示す本発明のガラス壜の検査装置を用いて撮影した画像である。
図9に示すように、本発明のガラス壜の検査装置を用いて撮影した画像中には、暗い背景の画像部分の中に底ビリ欠陥に相当する明るい画像部分が明瞭に映っている。したがって、底ビリ欠陥を精度良く検出することができる。なお、図9に示す画像中、底ビリ欠陥の下方にある帯状の明るい画像部分は壜底外周縁1eからの反射光によって形成された画像部分であり、この画像部分は、画像処理の際に壜底外周縁1eからの反射光による画像部分として識別し、底ビリ欠陥とは見なさない。
【0040】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 ガラス壜
1a 壜底部
1b 底部下面
1c 底部上面(底部内面)
1e 壜底外周縁
1x 軸心
2 照明
2f 前面側
2r 後面側
3 カメラ
3x 光軸
4 遮光板
4e 端部
6 入口スターホイール
7 出口スターホイール
8 搬入コンベア
9 搬出コンベア
10 メインロータ
11 支持ローラ
12 搬送レール
12e 端部
13 走行ベルト
21 白色LED
30 撮像装置
31 ミラー
22 集光レンズ
101 照明
102 CCDカメラ
102x 光軸
111 照明
112 白色LED
113 拡散板
115 CCDカメラ
115x 光軸
LR1,LR2 LED列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填されていない空のガラス壜を搬送系路に沿って搬送している間に、壜底部を撮像し、得られた画像から壜底部の欠陥を検出するガラス壜の検査装置において、
直立した状態で搬送されるガラス壜の下方に配置され、ガラス壜をガラス壜の底面側から照明する照明と、
前記照明とガラス壜との間に配置され、前記照明から投光される照明光の一部を遮る遮光板と、
ガラス壜の壜底部の側方に配置され、ガラス壜の底面から上方に立ち上がっていく部分である彎曲した曲面の壜底外周縁と該壜底外周縁に連なる壜底部とを撮像するカメラとを備え、
前記照明を、前記カメラに近い側にある前面側が後面側より下方に位置するように、水平面に対して傾けて配置し、かつ前記照明を光源と該光源からの光を集光する集光レンズとで構成することにより、照明からの照明光をガラス壜のカメラ側の壜底外周縁および該壜底外周縁より内側の底部下面に集光するようにし、
前記遮光板により前記照明からガラス壜の底部下面に投光される照明光の一部を遮り、前記照明からの光がカメラ側の壜底外周縁および該壜底外周縁に近い底部下面の領域のみに入射するようにしたことを特徴とするガラス壜の検査装置。
【請求項2】
前記照明は、水平面に対して30°〜50°の角度で傾けて配置されていることを特徴とする請求項1記載のガラス壜の検査装置。
【請求項3】
前記遮光板は、前記カメラと反対側の壜底外周縁の外側からガラス壜の軸心を越えてカメラ側の壜底外周縁に向かって水平方向に延びて、前記遮光板のカメラ側の端部は、ガラス壜の軸心とカメラ側の壜底外周縁の中点よりカメラ側まで延びていることを特徴とする請求項1または2記載のガラス壜の検査装置。
【請求項4】
前記集光レンズは、フレネルレンズからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項5】
前記搬送系路は、ガラス壜を円形軌道に沿って搬送する搬送系路であり、前記照明は略扇形の平面形状を有し、前記照明の前面側の端部は円弧状をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項6】
前記遮光板は、ガラス壜を支持する搬送レールからなることを特徴とする請求項5記載のガラス壜の検査装置。
【請求項7】
ガラス壜は、前記円形軌道に沿って搬送されている間に自転することを特徴とする請求項5または6記載のガラス壜の検査装置。
【請求項8】
ガラス壜から前記カメラに入射する光路の途中にミラーを配置し、該ミラーの角度を調整することによりガラス壜の移動に追従して前記カメラがガラス壜を撮像することを可能とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132752(P2012−132752A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284226(P2010−284226)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】