説明

ガラス板の品質試験方法、ガラス板の品質試験装置、およびガラス板の製造方法

【課題】目視検査や光学検査で検出困難なキズを検出可能とし、良品の損傷を抑制可能なガラス板の品質試験方法、ガラス板の品質試験装置を提供すること。
【解決手段】ガラス板10に熱衝撃を与える処理工程を有するガラス板の品質試験方法であって、処理工程は、ガラス板10を加熱する加熱工程と、ガラス板10を冷却する冷却工程とを有し、処理工程において、ガラス板10の少なくとも一部の温度変化幅が200℃以上であって、加熱工程において、ガラス板10の加熱温度の上限がガラス板10の歪点−340℃であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の品質試験方法、ガラス板の品質試験装置、およびガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの情報記録媒体、液晶パネル(LCD)やプラズマパネル(PDP)などのディスプレイ、フォトマスク、光ピックアップ素子や光学フィルタ等の光学部品などにおいて、各種の機能膜を成膜する基材として、ガラス板が用いられている。
【0003】
一方で、近年、ガラス板の外周部にレーザ光を投射する光源と、ガラス板の外周部からの反射光や散乱光を受光する受光素子とを有し、受光素子の検出結果に基づいて、ガラス板の外周部にあるキズを検出する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3141974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガラス板に機能膜を成膜する時、ガラス板を加熱処理したり、冷却処理するため、ガラス板に熱衝撃が与えられ、ガラス板に微細なキズがあると、キズを起点としてクラックが伸展する不具合が生じる。このクラックは、ガラス板の外周部から内側方向に伸びているものが多く、ガラス板の外周部にあるキズを起点として伸展していると推定される。このクラックの起点となるキズは、目視検査や光学検査では検出困難なことがある。
【0006】
これに対し、目視検査や光学検査で検出困難なキズのあるガラス板を後工程に誤って供給しないように、予め、ガラス板をエッチング液に浸漬することで、微細なキズを等方的にエッチングして拡げ、顕在化させてから目視検査や光学検査を実施することが考えられる。しかし、このエッチング液を用いた方法は、エッチング液がガラス基板の表面全体をエッチングしてガラス基板の表面粗さを悪化させるため、良品を損傷してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、目視検査や光学検査で検出困難なキズを検出可能とし、良品の損傷を抑制可能なガラス板の品質試験方法、ガラス板の品質試験装置、および当該品質試験方法を用いた評価工程を有するガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するため、本発明は、ガラス板に熱衝撃を与える処理工程を有するガラス板の品質試験方法であって、
前記処理工程は、前記ガラス板を加熱する加熱工程と、前記ガラス板を冷却する冷却工程とを有し、
前記処理工程において、前記ガラス板の少なくとも一部の温度変化幅が200℃以上であって、
前記加熱工程において、前記ガラス板の加熱温度の上限が前記ガラス板の歪点−340℃であることを特徴とするガラス板の品質試験方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、ガラス板に熱衝撃を与えるガラス板の品質試験装置であって、
前記ガラス板を冷却する冷却装置と、
前記ガラス板を加熱する加熱装置と、
前記ガラス板に熱衝撃を与えるため、前記冷却装置の冷却位置と、前記加熱装置の加熱位置との間で、前記ガラス板を移動させる搬送装置とを有し、
前記冷却装置の設定温度と前記加熱装置の設定温度との温度差は、200℃以上であり、
前記加熱装置の設定温度の上限は、前記ガラス板の歪点−340℃であることを特徴とするガラス板の品質試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目視検査や光学検査で検出困難なキズを検出可能とし、良品の損傷を抑制可能なガラス板の品質試験方法、ガラス板の品質試験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るガラス板の品質試験方法が適用されるガラス板の斜視図である。
【図2】第3の実施形態に係るガラス板の品質試験装置の斜視図である。
【図3】搬送装置110の要部の正面断面図である。
【図4】冷却装置130の側面断面図である。
【図5】加熱装置140の側面断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るガラス板の品質試験装置を一部破断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0013】
[第1の実施形態]
本実施形態は、ガラス板に熱衝撃を与える処理工程を有するガラス板の品質試験方法に関する。
【0014】
なお、本実施形態では、ガラス板に熱衝撃を与えることにより、ガラス板の外周部の品質を試験するが、本発明は、これに限定されず、例えばガラス板の内周部の品質を試験しても良い。
【0015】
ガラス板は、アモルファスガラスでも良いし、ガラス中に微細な結晶粒子が分散した結晶化ガラスでも良い。また、ガラス板は、表層に強化層を有する化学強化ガラスや風冷強化ガラスでも良い。ガラス板のガラスの種類は、特に限定されないが、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどがある。
【0016】
ガラス板は、用途に応じた形状に形成される。例えば、磁気記録媒体用ガラス基板として用いられる場合、図1に示すように、ガラス板10は、円盤状に形成され、中心部に円孔12を有する。ガラス板10は平坦に加工され、ガラス板10の両主平面は平滑面に加工されている。ガラス板10の外周面18や内周面20は、面取り加工されている。
【0017】
なお、本発明のガラス板の形状に制限はなく、例えば、ガラス板の外形が矩形状であっても良く、また、ガラス板の中心部に円孔がなくても良い。
【0018】
ガラス板10は、一般的な製法で製造され、例えばフロート法やフュージョン法、プレス成形法などで製造されたガラスの素板を加工して得られるが、ガラスの加工時や搬送時に、ガラス板10の外周部14(外周面18を含む)にキズが生じることがある。
【0019】
ここで、「キズ」とは、クラック(ひび割れ)の他、スクラッチ(引っ掻きキズや擦りキズなど)、凹凸、穴(ピンホール)、欠け、剥離などを意味する。
【0020】
そこで、ガラス板10の外周部の品質を試験するため、ガラス板10に熱衝撃を与える。ガラス板10に熱衝撃を与えると、詳しくは後述するが、ガラス板10の外周部14にあるキズ(以下、「外周キズ」という)を起点としてクラックが伸展するので、外周キズが顕在化する。よって、目視検査や光学検査で検出困難な外周キズ(所謂、潜傷)が検出可能となる。一方、品質試験後に、外周キズがない良品は、そのまま、製品として、後工程(客先を含む)に供給できる。
【0021】
本実施形態では、ガラス板10に熱衝撃を与える処理工程は、ガラス板10を冷却する冷却工程と、ガラス板10を加熱する加熱工程とを有する。
【0022】
ガラス板10の冷却方法としては、例えば、ガラス板10の少なくとも一部を冷却液や冷却ガスに曝す方法がある。冷却液としては、例えば不活性ガス(希ガスの他、窒素ガスや炭酸ガスを含む)を液化したもの、冷却したエタノールなどのアルコール、冷水などが用いられる。冷却ガスとしては、不活性ガスなどが用いられる。これらの中でも、冷却効率やコストの観点から、液体窒素が好ましい。
【0023】
ガラス板10の加熱方法としては、例えば、ガラス板10の近傍に熱源を設置する方法、ガラス板10に熱流体を接触させる方法などがある。熱源としては、例えば赤外線ヒータなどのヒータが用いられる。ヒータは、ガラス板10の中央部16を均等に加熱するため、複数の同心円状の発熱線(例えばニクロム線)や渦巻き状の発熱線(例えばニクロム線)などで構成される。ヒータの代わりに、バーナーなどを用いても良い。熱流体としては、加熱したグリセリンなどのアルコール、温水、温風などが用いられる。
【0024】
この処理工程において、ガラス板10の少なくとも一部(例えば、ガラス板10の一方の主面における中央部16)の温度変化幅が200℃以上(好ましくは220℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは290℃以上)である。温度変化幅が200℃以上であると、ガラス板10の外周キズ(特に、外周クラック)を起点としてクラックが伸展しやすく、外周キズが顕在化するので、外周キズの検出が容易である。ここで、「中央部」とは、ガラス板の中心部に円孔が設けられる場合、円孔の縁およびその近傍を意味し、円孔が設けられない場合、ガラス板の中心およびその近傍を意味する。
【0025】
これに加えて、本実施形態では、加熱工程において、ガラス板10の加熱温度(任意の位置での温度)の上限が、ガラス板10の歪点−340(好ましくは−355℃、より好ましくは−370℃)である。ガラス板10の加熱温度の上限が、ガラス板10の歪点−340℃であると、ガラス板10の平坦度の悪化、ガラス板10の両主平面の平滑度の悪化を制限できる。ここで、「ガラスの歪点」とは、ガラスの粘度が1014.5dPa・sとなる温度をいう(JIS R3103−2)。ガラスの歪点は、ガラスの種類によるが、ソーダライムガラスの場合、代表的には450〜650℃である。
【0026】
上記の温度変化幅を十分に確保すると共に、ガラスの歪点よりも十分に低い温度で品質試験を行うため、冷却工程は、ガラス板10(例えば、ガラス板10の表面全体)を20℃以下(より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−30℃以下)に冷却する工程であることが好ましく、この場合、冷却工程の後に、加熱工程が実施されると良い。加熱工程が冷却工程の後に実施される場合、下記の(1)〜(2)の効果が得られる。
【0027】
(1)加熱工程において、ガラス板10の外周面18の温度がガラス板10の主平面の温度よりも低くなるように(但し、外周面と主平面との境界線部分を除く)ガラス板10を加熱するのが容易である。即ち、ガラス板10の外周部14が中央部16よりも低温となるようにガラス板10を加熱するのが容易である。ガラス板10を外周部14に沿ってリング状に冷却するよりも、ガラス板10の中央部16を加熱する方が容易なためである。この加熱は、例えば、ガラス板10の少なくとも一方の主平面の中央部(或いは、ガラス板10の少なくとも一方の主平面において、ガラス板10の外周面18から所定距離(>0mm)以上内側の部分)を局所的に加熱するものであって良い。
【0028】
(2)冷却工程において、ガラス板10を冷却液に浸漬する場合に、冷却液の蒸気がガラス板10の周辺に断熱層を形成するのを抑制でき、冷却液による冷却効率が低下するのを抑制できる。なお、本実施形態の加熱工程は、冷却工程の後に実施されるが、本発明はこれに限定されず、冷却工程の前に実施されても良い。
【0029】
上記(1)のように、加熱工程において、ガラス板10の外周面18の温度がガラス板10の主平面の温度よりも低いと、即ち、ガラス板10の外周部14が中央部16よりも低温であると、ガラス板10の外周部14には、引張応力が印加される。よって、外周キズを起点としてクラックが伸展しやすく、外周キズが顕在化しやすい。
【0030】
加熱工程において、外周キズをより顕在化させるため、ガラス板10の外周面18の温度と、ガラス板10の主平面においてガラス板10の外周面18よりも10mm以上内側の(任意の)部分の温度との温度差が200℃以上(好ましくは220℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは290℃以上)であることが望ましい。ここで、「10mm」は、外周面と直交する方向における距離であって、円盤状のガラス板10の場合、径方向における距離である。上記の温度差は、一時的なものであって良く、例えば、ガラス板10の主平面の中央部の温度が最大値になる時の温度差であって良い。また、上記の温度差は、ガラス板10の少なくとも一方(加熱される側)の主平面について成立すれば良い。
【0031】
加熱工程において、ガラス板10の外周部14を中央部16よりも低温とするため、ヒータと、ヒータによって加熱されるガラス板10との間に、ガラス板10よりも小さい外形の開口窓部が設けられた熱遮蔽板を設置すると良い。
【0032】
このようにして、ガラス板10に熱衝撃を与えた後、ガラス板10の外周キズなどのキズの有無を調べる。キズの有無は、目視検査や光学検査などで調べる。キズのあるガラス板10は廃棄され、キズのないガラス板10は後工程(客先を含む)に供される。これによって、ガラス板10を用いて製造する製品の歩留まりやコストを改善できる。
【0033】
[第2の実施形態]
本実施形態は、上記ガラス板の品質試験方法を用いた、ガラス板の製造方法に関し、特に磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法に関する。
【0034】
磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、下記の(1)〜(6)の工程を含む。(1)ガラスの素板を加工して、中心部に円孔を有する円盤状のガラス基板を作製する。(2)ガラス基板の外周および内周の角部を面取りする。(3)ガラス基板の表面および裏面(両主面)をラッピング加工する。ラッピング加工では、例えばアルミナ砥粒や炭化ケイ素砥粒などの砥粒と、金属製の定盤とが用いられる。(4)ガラス基板の外周面や内周面(面取り部を含む)を端面研磨する。(5)ガラス基板の両主面を研磨する。主面研磨では、ラッピング加工よりも平均粒子直径の小さい砥粒と、樹脂製の研磨パッドとが用いられる。主平面研磨の回数に制限はなく、研磨パッドや研磨剤が異なる複数種類の主面研磨を実施しても良い。(6)ガラス基板を洗浄して乾燥し、磁気記録媒体用ガラス基板を製造する。この磁気記録媒体用ガラス基板上に磁性層などの薄膜を形成することで、磁気ディスクを製造できる。
【0035】
また、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、上記(1)〜(6)の工程間に、ガラス基板洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施しても良い。また、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施しても良い。
【0036】
ところで、上記(1)〜(6)の工程の実施時、これらの工程または工程間でのガラス基板の搬送時に、ガラス基板の外周部にキズが生じることがある。そこで、本実施形態では、上記(6)の工程の後に、上記ガラス板の品質試験方法を用いて、ガラス板の外周キズなどのキズの有無を評価する評価工程を実施する。これによって、磁気ディスクの歩留まりや製造コストを改善できる。評価工程において、キズの有無は、目視検査や光学検査などで調べられる。評価工程は、例えば下記のガラス板の品質試験装置を用いて実施される。
【0037】
なお、本実施形態では、上記(6)の工程の後に、検査工程を実施するとしたが、本発明はこれに限定されない。即ち、検査工程は、ガラス板を加工する加工工程後に実施されれば良く、例えば、上記(4)の工程と上記(5)の工程との間に実施されても良い。さらに、本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法に限らず、ディスプレイ用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板の製造方法など、一般的なガラス板の製造方法に適用されても良い。
【0038】
[第3の実施形態]
本実施形態は、ガラス板に熱衝撃を与えることにより、ガラス板の外周部の品質を試験する、ガラス板の品質試験装置に関し、1枚のガラス板を搬送装置によって複数の処理装置に順次移動させるリニア方式の品質試験装置に関する。
【0039】
なお、本実施形態では、ガラス板の外周部の品質を試験するが、本発明は、これに限定されず、例えばガラス板の内周部の品質を試験しても良い。
【0040】
図2は、第3の実施形態に係るガラス板の品質試験装置の斜視図である。図3は、搬送装置110の要部の正面断面図である。図4は、冷却装置130の側面断面図である。図5は、加熱装置140の側面断面図である。
【0041】
図2に示すように、ガラス板の品質試験装置100は、搬送装置110、収納カセット120、冷却装置130、加熱装置140、検出装置150、回収カセット160、および廃棄カセット170を有する。
【0042】
搬送装置110は、ガラス板10を移動させるものである。搬送装置110は、収納カセット120からガラス板10を取り出し、冷却装置130の冷却位置、加熱装置140の加熱位置にこの順で移動させる。次いで、搬送装置110は、ガラス板10を検出装置150の検出位置に移動させた後、検出装置150の検出結果に基づいて、ガラス板10を回収カセット160または廃棄カセット170に入れる。なお、本実施形態では、ガラス板10は、冷却位置、加熱位置にこの順で運ばれるが、順序は逆であっても良い。
【0043】
搬送装置110は、例えば図2および図3に示すように、ガイドレール112、伸縮アーム114、チャック116などで構成される。
【0044】
ガイドレール112は、収納カセット120、冷却装置130、加熱装置140、検出装置150、回収カセット160、および廃棄カセット170の上方に架設されている。ガイドレール112は、ボールネジやリニアガイド(所謂LMガイドを含む)などで構成される。ガイドレール112には、伸縮アーム114が移動可能に支持されている。
【0045】
伸縮アーム114は、サーボモータなどの駆動源によって、ガイドレール112に沿って往復動される。伸縮アーム114は、シリンダ(空気圧シリンダや液圧シリンダを含む)などの駆動源で、軸方向(上下方向)に伸縮する。シリンダの代わりに、ボールネジやリニアガイドなどを用いても良い。伸縮アーム114の先端部には、チャック116が連結されている。
【0046】
チャック116は、ガラス板10を支持するためのものである。チャック116は、例えば図3に示すように、同一円上に等間隔で配置された3つのピン116a〜116cを有する。3つのピン116a〜116cのくびれ部分は、図3に実線で示す、ガラス板10の内周面を把持する位置(以下、「把持位置」という)と、図3に2点鎖線で示す、ガラス板10の内周面から離れた待機位置との間で移動可能に構成される。なお、ピンの数は、複数であれば良く、例えば2つであっても良い。
【0047】
収納カセット120は、ガラス板10を収納するものである。収納カセット120は、複数枚のガラス板10を所定方向に間隔をおいて並ぶように収納する。収納カセット120は、ガラス板10を1枚ずつ、チャック116に渡すため、ボールネジやリニアガイドなどによって、所定方向に移動される。
【0048】
冷却装置130は、ガラス板10を冷却する装置である。冷却装置130は、例えば図4に示すように、ガラス板10を冷却する冷媒132と、冷媒132を収容する冷媒槽134とを有する。
【0049】
冷媒132としては、冷却液や冷却ガスが用いられる。冷却液としては、例えば不活性ガス(希ガスの他、窒素ガスや炭酸ガスを含む)を液化したもの、冷却したエタノールなどのアルコール、冷水などが用いられる。冷却ガスとしては、不活性ガスなどが用いられる。これらの中でも、冷却効率やコストの観点から、液体窒素が好ましい。
【0050】
冷媒槽134には、冷媒132を供給する供給装置が接続されており、供給装置は、冷媒槽134内の冷媒132の量を一定の範囲に維持する。
【0051】
加熱装置140は、ガラス板10を加熱する装置である。加熱装置140は、例えば図5に示すように、ガラス板10を加熱するヒータ142と、ヒータ142とガラス板10との間に設けられる熱遮蔽板144と、加熱により割れたガラス板10を回収する回収箱146とを有する。
【0052】
ヒータ142としては、特に限定されないが、例えば赤外線ヒータなどが用いられる。ヒータ142は、複数の同心円状の発熱線(例えば、ニクロム線)や渦巻き状の発熱線(例えば、ニクロム線)などで構成される。ヒータ142は、熱遮蔽板144と併用される場合、ガラス板10よりも大きな外形を有して良い。
【0053】
熱遮蔽板144は、ガラス板10よりも小さい外形の開口窓部148を有する。開口窓部148は、ガラス板10の円孔12よりも大きな外形を有する。開口窓部148を介して、ヒータ142からの輻射熱をガラス板10に当てることで、ガラス板10の加熱領域を制限できる。
【0054】
なお、本実施形態の加熱装置140は、ガラス板10の近傍に設置される熱源として、ヒータ142を有するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、加熱装置140は、ヒータ142の代わりに、バーナーなどを有してもよい。また、加熱装置140は、熱源の代わりに、熱流体をガラス板に吹き付けるノズルを有しても良い。熱流体としては、加熱したグリセリンなどのアルコール、温水、温風などが用いられる。
【0055】
検出装置150は、ガラス板10の外周キズなどのキズの有無を検出する装置である。検出装置150は、一般的なものであって良く、例えば図2に示すように、光源151から照射した光を利用してガラス板10の全体を撮像する撮像素子152(例えば、CCDカメラやCMOSカメラなど)、撮像素子152が撮像した画像を画像処理して、キズの有無を判定する画像処理装置154などで構成される。画像処理装置154は、コンピュータなどで構成される。
【0056】
回収カセット160は、検出装置150によってキズが無いと判定されたガラス板10を、搬送装置110から受け取るものである。回収カセット160は、収納カセット120と同様の構成であって、ガラス板10を受け取る度に、ボールネジやリニアガイドなどによって、所定方向に移動される。これによって、複数枚のガラス板10を所定方向に間隔をおいて並べることが可能である。
【0057】
廃棄カセット170は、回収カセット160と同様の構成であって、検出装置150によってキズが有ると判定されたガラス板10を、搬送装置110から受け取るものである。廃棄カセット170や回収箱146に投入されたガラス板10は、リサイクルされ、ガラスの素板を製造するための原料として使用してもよい。
【0058】
なお、廃棄カセット170は、固定されていても良く、この場合、廃棄カセット170は、複数枚のガラス板10を重ねて収容する。
【0059】
次に、上記構成とした品質試験装置100の動作について説明する。下記の各種の動作は、コンピュータなどで構成される制御装置の制御下で実施される。
【0060】
先ず、搬送装置110は、伸縮アーム114を伸ばして、チャック116を降下させ、収納カセット120に対して位置合わせする。続いて、収納カセット120が所定方向に移動されると、収納カセット120に収容されている1枚のガラス板10の円孔12にチャック116が挿通される。
【0061】
次いで、搬送装置110は、チャック116を構成する3つのピン116a〜116cを、図3に2点鎖線で示す待機位置から、図3に実線で示す把持位置に移動させることによりガラス板10を支持する。この状態で、伸縮アーム114を縮めて、チャック116を上昇させ、収納カセット120からガラス板10を1枚取り出す。
【0062】
次いで、搬送装置110は、収納カセット120から取り出したガラス板10を冷却装置130の冷却位置に移動させる。具体的には、先ず、ガイドレール112に沿って伸縮アーム114を移動させ、図4に2点鎖線で示すように、冷媒槽134の上方に位置させる。続いて、図4に実線で示すように、伸縮アーム114を伸ばして、チャック116を降下させ、ガラス板10の全体を冷媒槽134内の冷媒132に所定時間浸漬する。このようにして、ガラス板10を冷却位置に移動させる。その後、伸縮アーム114を縮めて、チャック116を上昇させ、冷媒槽134内の冷媒132からガラス板10を取り出す。
【0063】
次いで、搬送装置110は、ガラス板10を加熱装置140の加熱位置に移動させるため、ガイドレール112に沿って伸縮アーム114を移動させる。続いて、図5に示すように、ガラス板10を加熱位置で所定時間停止させ、ガラス板10を所定時間加熱する。加熱によりガラス板10が割れた場合、割れたガラス板10は下方に設置される回収箱146に落下し、回収される。この場合、搬送装置110は、次のガラス板10を収納カセット120から取り出すため、ガイドレール112に沿って伸縮アーム114を移動させて、収納カセット120の上方の初期位置に戻す。
【0064】
一方、加熱によりガラス板10が割れなかった場合、搬送装置110は、ガラス板10を検出装置150の検出位置に移動させるため、ガイドレール112に沿って伸縮アーム114を移動させる。続いて、ガラス板10を検出位置で所定時間停止させ、ガラス板10の画像を撮像素子152により撮像する。撮像素子152により撮像された画像は、画像処理装置154に送信される。画像処理装置154は、撮像素子152から受信した画像を画像処理して、ガラス板10の外周キズなどのキズの有無を判定する。
【0065】
検出装置150によってキズが検出されなかった場合、ガラス板10にキズがないので、搬送装置110は、ガラス板10を回収カセット160に入れる。具体的には、先ず、ガイドレール112に沿って伸縮アーム114を移動させ、回収カセット160の上方で停止させる。続いて、伸縮アーム114を伸ばして、チャック116を降下させ、ガラス板10を回収カセット160内に設置する。
【0066】
次いで、搬送装置110は、ガラス板10の支持を解除するため、チャック116を構成する3つのピン116a〜116cを、図3に実線で示す把持位置から、図3に2点鎖線で示す待機位置に移動させる。続いて、回収カセット160が所定方向に移動されると、ガラス板10の円孔12からチャック116が引き抜かれる。このようにして、ガラス板10の支持を解除する。
【0067】
次いで、搬送装置110は、次のガラス板10を収納カセット120から取り出すため、伸縮アーム114を縮めた後、伸縮アーム114をガイドレール112に沿って移動させ、収納カセット120の上方の初期位置で停止させる。
【0068】
一方、検出装置150によってキズが検出された場合、ガラス板10にキズがあるので、搬送装置110は、ガラス板10を廃棄カセット170に入れる。具体的な動作は、ガラス板10を回収カセット160に入れる場合と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
ちなみに、廃棄カセット170が固定されている場合、廃棄カセット170の上方で、ガラス板10を棒などで所定方向に移動させて、チャック116から抜き取り、下方の廃棄カセット170に投下しても良い。
【0070】
このようにして、ガラス板の品質試験装置100は、ガラス板10に熱衝撃を与えることで、外周キズを顕在化させ、目視検査や光学検査で検出困難な外周キズ(所謂、潜傷)が検出可能となる。一方、品質試験後に、外周キズのない良品は、そのまま、製品として、後工程(客先を含む)に供給できる。
【0071】
本実施形態では、冷却装置130の設定温度と加熱装置140の設定温度との温度差は、200℃以上(好ましくは220℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは290℃以上)である。ここで、冷却装置130の設定温度とは、冷媒132の温度を意味する。また、加熱装置140の設定温度とは、ヒータ142や熱流体などの温度を意味する。冷却装置130の設定温度と、加熱装置140の設定温度との温度差が200℃以上であると、即ち、ガラス板10の少なくとも一部の温度変化幅が200℃以上であると、ガラス板10の外周キズ(特に、外周クラック)を起点としてクラックが伸展しやすく、外周キズが顕在化するので、外周キズの検出が容易である。
【0072】
これに加えて、本実施形態では、加熱装置140の設定温度の上限は、ガラス板10の歪点−340℃(好ましくは−355℃、より好ましくは−370℃)である。加熱装置140の設定温度の上限が、即ち、ガラス板10の加熱温度の上限が、ガラス板10の歪点−340℃より高温であると、ガラス板10の平坦度の悪化、ガラス板10の両主平面の平滑度の悪化を制限できる。
【0073】
上記の温度変化幅を十分に確保すると共に、ガラスの歪点よりも十分に低い温度で品質試験を行うため、冷却装置130の設定温度は20℃以下(より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−30℃以下)であることが好ましく、この場合、搬送装置110は、冷却装置130の冷却位置から、加熱装置140の加熱位置へ、ガラス板10を移動させる装置であると良い。ガラス板10が冷却位置から加熱位置へ移動される場合、下記の(1)〜(2)の効果が得られる。
【0074】
(1)加熱装置140によって、ガラス板10の外周面18の温度がガラス板10の主平面の温度よりも低くなるように(但し、外周面と主平面との境界線部分を除く)ガラス板10を加熱するのが容易である。即ち、ガラス板10の外周部14が中央部16よりも低温となるようにガラス板10を加熱するのが容易である。ガラス板10を外周部14に沿ってリング状に冷却するよりも、ガラス板10の中央部16を加熱する方が容易なためである。この加熱は、例えば、ガラス板10の少なくとも一方の主平面の中央部(或いは、ガラス板10の少なくとも一方の主平面において、ガラス板10の外周面18から所定距離(>0mm)以上内側の部分)を局所的に加熱するものであって良い。
【0075】
(2)冷却装置130によって、ガラス板10を冷却液に浸漬して冷却する場合に、冷却液の蒸気がガラス板10の周辺に断熱層を形成するのを抑制でき、冷却液による冷却効率が低下するのを抑制できる。
【0076】
上記(1)のように、加熱装置140によって、ガラス板10の外周面18の温度がガラス板10の主平面の温度よりも低くなると、即ち、ガラス板10の外周部14が中央部16よりも低温となると、ガラス板10の外周部14には、引張応力が印加される。よって、外周キズを起点としてクラックが伸展しやすく、外周キズが顕在化しやすい。
【0077】
加熱装置140によって、外周キズをより顕在化させるため、ガラス板10の外周面18の温度と、ガラス板10の一方の主平面においてガラス板10の外周面18よりも10mm以上内側の(任意の)部分の温度との温度差が200℃以上(好ましくは220℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは290℃以上)となるように、ガラス板10が加熱される。上記の温度差は、一時的なものであって良く、例えば、ガラス板10の主平面の中央部の温度が最大値になる時の温度差であって良い。また、上記の温度差は、ガラス板10の少なくとも一方(加熱される側)の主平面について成立すれば良い。
【0078】
このようにして、ガラス板10に熱衝撃を与えた後、検査装置150によってガラス板10の外周キズなどのキズの有無を調べる。キズのあるガラス板10は廃棄され、キズのないガラス板10は後工程(客先を含む)に供される。これによって、ガラス板10を用いて製造する製品の歩留まりやコストを改善できる。
【0079】
[第4の実施形態]
本実施形態は、第3の実施形態の変形態様であって、複数枚のガラス板を移動可能に支持する回転装置と、回転装置の周りに設けられる複数の処理装置とを有するインデックス方式の品質試験装置に関する。インデックス方式の品質試験装置では、複数枚のガラス板に同時に異なる処理を施すことが可能である。
【0080】
図6は、第4の実施形態に係るガラス板の品質試験装置を一部破断して示す正面図である。図6において、図2〜図5と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態のガラス板の品質試験装置200は、第3の実施形態と同様に、収納カセット120、冷却装置130、加熱装置140、検出装置150、画像処理装置154、回収カセット160、および廃棄カセット170を有する。また、ガラス板の品質試験装置200は、図2および図3に示す搬送装置110の代わりに、第1〜第3の搬送装置210〜230を有する。
【0082】
第1の搬送装置210は、収納カセット120からガラス板10を取り出し、第2の搬送装置220に渡す。第2の搬送装置220は、受け取ったガラス板10を、冷却装置130の冷却位置、および加熱装置140の加熱位置にこの順で移動させる。次いで、第2の搬送装置220は、ガラス板10を検出装置150の検出位置に移動させた後、第3の搬送装置230に渡す。第3の搬送装置230は、受け取ったガラス板10を、検出装置150の検出結果に基づいて、回収カセット160または廃棄カセット170に運ぶ。なお、本実施形態では、ガラス板10は、冷却位置、加熱位置にこの順で運ばれるが、順序は逆であっても良い。
【0083】
第1の搬送装置210は、例えば図6に示すように、ガイドレール212、伸縮アーム214、チャック216などで構成される。
【0084】
ガイドレール212は、収納カセット120の上方と、第2の搬送装置220の近傍との間に架設されている。ガイドレール212は、ボールネジやリニアガイド(所謂LMガイドを含む)などで構成される。ガイドレール212には、伸縮アーム214が移動可能に支持されている。
【0085】
伸縮アーム214は、サーボモータなどの駆動源によって、ガイドレール212に沿って往復動される。伸縮アーム214は、シリンダなどの駆動源で、軸方向(上下方向)に伸縮する。シリンダの代わりに、ボールネジやリニアガイドなどを用いても良い。伸縮アーム214の先端部には、チャック216が連結されている。
【0086】
チャック216は、ガラス板10を支持するためのものである。チャック216は、図2に示すチャック116と同様の構成であって、例えば同一円上に等間隔で配置された3つのピンを有する。
【0087】
第2の搬送装置220は、例えば図2に示すように、回転装置222、複数(例えば5つ)の伸縮アーム224、複数(例えば5つ)のチャック226などで構成される。
【0088】
回転装置222は、回転装置222の周りに、複数の伸縮アーム224を回転させる。回転装置222の周りには、周方向に沿って、冷却装置130、加熱装置140、および検出装置150などが設けられている。
【0089】
伸縮アーム224は、シリンダなどの駆動源で、軸方向に伸縮する。シリンダの代わりに、ボールネジやリニアガイドなどを用いても良い。伸縮アーム224は、回転装置222から放射状に複数設けられている。複数の伸縮アーム224は、周方向に沿って等ピッチで設けられても良いし、不等ピッチで設けられても良い。各伸縮アーム224の基端部は、回転装置222に連結されており、各伸縮アーム224の先端部には、チャック226が設けられている。
【0090】
チャック226は、ガラス板10を支持するためのものである。チャック226は、図2に示すチャック116と同様の構成であって、例えば同一円上に等間隔で配置された3つのピンを有する。
【0091】
第3の搬送装置230は、例えば図6に示すように、ガイドレール232、伸縮アーム234、チャック236などで構成される。
【0092】
ガイドレール232は、回収カセット160や廃棄カセット170の上方と、第2の搬送装置220の近傍との間に架設されている。ガイドレール232は、ボールネジやリニアガイド(所謂LMガイドを含む)などで構成される。ガイドレール232には、伸縮アーム234が移動可能に支持されている。
【0093】
伸縮アーム234は、サーボモータなどの駆動源によって、ガイドレール232に沿って往復動される。伸縮アーム234は、シリンダなどの駆動源で、軸方向(上下方向)に伸縮する。シリンダの代わりに、ボールネジやリニアガイドなどを用いても良い。伸縮アーム234の先端部には、チャック236が連結されている。
【0094】
チャック236は、ガラス板10を支持するためのものである。チャック236は、図2に示すチャック116と同様の構成であって、例えば同一円上に等間隔で配置された3つのピンを有する。
【0095】
次に、上記構成とした品質試験装置200の動作について説明する。下記の各種の動作は、コンピュータなどで構成される制御装置の制御下で実施される。
【0096】
先ず、第1の搬送装置210は、伸縮アーム214を伸ばして、チャック216を降下させ、収納カセット120に対して位置合わせする。続いて、収納カセット120が所定方向に移動されると、収納カセット120に収容されている1枚のガラス板10の円孔12にチャック216が挿通される。
【0097】
次いで、第1の搬送装置210は、チャック216を構成する3つのピンを待機位置から把持位置に移動させることによりガラス板10を支持する。この状態で、伸縮アーム214を縮めて、チャック216を上昇させ、収納カセット120からガラス板10を取り出す。その後、第1の搬送装置210は、ガイドレール212に沿って、伸縮アーム214を移動させ、第2の搬送装置220の近傍で停止させる。
【0098】
次いで、第1の搬送装置210と第2の搬送装置220との間で、ガラス板10の受け渡しを行う。具体的には、先ず、第1の搬送装置210が、チャック216を軸方向に移動させ、ガラス板10の円孔12に第2の搬送装置220のチャック236を挿通する。続いて、第2の搬送装置220が、ガラス板10を支持するため、チャック226を構成する3つのピンを待機位置から把持位置に移動させる。続いて、第1の搬送装置210が、ガラス板10の支持を解除するため、チャック216を把持位置から待機位置に移動させる。このようにして、第1の搬送装置210と第2の搬送装置220との間で、ガラス板10の受け渡しを行う。
【0099】
ガラス板10の受け渡し後、第1の搬送装置210は、次のガラス板10の受け渡しのため、ガイドレール212に沿って伸縮アーム214を移動させ、収納カセット120の上方の初期位置で停止させる。これを繰り返して、第2の搬送装置220の複数のチャック226に順次、ガラス板10を供給する。
【0100】
ガラス板10の受け渡し後、第2の搬送装置220は、受け取ったガラス板10を冷却装置130の冷却位置に移動させる。具体的には、先ず、回転装置222の周りに、伸縮アーム224を回転させ、冷媒槽134の上方の位置で停止させる。続いて、伸縮アーム224を伸ばして、チャック226を降下させ、ガラス板10の全体を冷媒槽134内の冷媒132に所定時間浸漬させる。このようにして、ガラス板10を冷却位置に移動させる。その後、伸縮アーム224を縮めて、チャック226を上昇させ、冷媒槽134内の冷媒132からガラス板10を取り出す。
【0101】
次いで、第2の搬送装置220は、ガラス板10を加熱装置140の加熱位置に移動させるため、回転装置222の周りに、伸縮アーム224を回転させる。続いて、ガラス板10を加熱位置で所定時間停止させ、ガラス板10を所定時間加熱する。加熱によりガラス板10が割れた場合、下方に設置される回収箱146に落下し、回収される。
【0102】
次いで、第2の搬送装置220は、ガラス板10を検出装置150の検出位置に移動させるため、回転装置222の周りに、伸縮アーム224を回転させる。続いて、ガラス板10を検出位置で所定時間停止させ、ガラス板10の画像を撮像素子152により撮像する。撮像素子152により撮像された画像は、画像処理装置154に送信される。画像処理装置154は、撮像素子152から受信した画像を画像処理して、ガラス板10の外周キズなどのキズの有無を判定する。その後、第2の搬送装置220は、ガラス板10を第3の搬送装置230に渡すため、回転装置222の周りに、伸縮アーム224を回転させ、所定位置で停止させる。
【0103】
次いで、第2の搬送装置220と第3の搬送装置230との間で、ガラス板10の受け渡しを行う。具体的には、先ず、第3の搬送装置230が、ガラス板10を支持するため、チャック236を軸方向に移動させることにより、ガラス板10の円孔12にチャック236を通し、チャック236を構成する3つのピンを待機位置から把持位置に移動させる。続いて、第2の搬送装置220が、ガラス板10の支持を解除するため、チャック226を把持位置から待機位置に移動させる。このようにして、第2の搬送装置220と第3の搬送装置230との間で、ガラス板10の受け渡しを行う。
【0104】
ガラス板10の受け渡し後、第2の搬送装置220は、次のガラス板10を第1の搬送装置210から受け取るため、回転装置222の周りに、伸縮アーム224を回転させ、所定位置で停止させる。
【0105】
ガラス板10の受け渡し後、第3の搬送装置230は、検出装置150の検出結果に基づいて、第2の搬送装置220から受け取ったガラス板10を、回収カセット160または廃棄カセット170に入れる。
【0106】
検出装置150によってクラックが検出されなかった場合、ガラス板10にキズがないので、第3の搬送装置230は、ガラス板10を回収カセット160に入れる。具体的には、先ず、ガイドレール232に沿って伸縮アーム234を移動させ、回収カセット160の上方で停止させる。続いて、伸縮アーム234を伸ばして、チャック236を降下させ、ガラス板10を回収カセット160内に設置する。
【0107】
次いで、第3の搬送装置230は、ガラス板10の支持を解除するため、チャック236を構成する3つのピンを、把持位置から待機位置に移動させる。続いて、回収カセット160が所定方向に移動されると、ガラス板10の円孔12からチャック236が引き抜かれる。このようにして、ガラス板10の支持を解除する。
【0108】
次いで、第3の搬送装置230は、次のガラス板10を第2の搬送装置220から受け取るため、伸縮アーム234を縮めた後、伸縮アーム234をガイドレール232に沿って移動させ、第2の搬送装置220の近傍で停止させる。
【0109】
一方、検出装置150によってクラックが検出された場合、ガラス板10にキズがあるので、第3の搬送装置230は、ガラス板10を廃棄カセット170に入れる。具体的な動作は、ガラス板10を回収カセット160に供給する場合と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
ちなみに、廃棄カセット170が固定されている場合、廃棄カセット170の上方で、ガラス板10を棒などで所定方向に移動させて、チャック236から抜き取り、下方の廃棄カセット170に投下しても良い。
【0111】
このようにして、ガラス板の品質試験装置200は、第3の実施形態と同様に、ガラス板10に熱衝撃を与える。よって、第3の実施形態と同様に、外周キズを顕在化させ、目視検査や光学検査で検出困難な外周キズ(所謂、潜傷)が検出可能となる。一方、品質試験後に、外周キズのない良品は、そのまま、製品として、後工程(客先を含む)に供給できる。
【0112】
本実施形態では、第1および第2の搬送装置310、320の間でのガラス板10の受け渡し、ガラス板10の冷却、ガラス板10の加熱、ガラス板10のクラックの有無の検出、および第2および第3の搬送装置320、330の間でのガラス板10の受け渡しを略同時に実施でき、試験時間を短縮できる。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0114】
(試験板の作製)
フロート法で成形されたSiOを主成分とするガラスの素板を加工して、中心部に円孔を有する円盤状のガラス板を作製した。ガラス板の寸法形状(外径65mm、内径20mm、板厚0.635mm)は、磁気記録媒体用ガラス基板向けとした。
【0115】
次いで、ガラス板の内周および外周の角部をC面取り(C0.15mm)した。その後、アルミナ砥粒を用いて、ガラス板の両主面をラッピングし、砥粒を洗浄除去した。
【0116】
次いで、ガラス板の外周面(面取り部を含む)を、研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、外周面のキズを除去し、鏡面となるように外周面を研磨加工した後、砥粒を洗浄除去した。
【0117】
同様に、ガラス板の内周面(面取り部を含む)を、研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、内周面のキズを除去し、鏡面となるように内周面を研磨加工し、砥粒を洗浄除去した。
【0118】
次いで、ガラス板の両主面を1次〜3次研磨した。1次研磨では、硬質ウレタン製の研磨パッドと、ラッピング加工よりも体積平均粒径の小さい酸化セリウム砥粒(体積平均粒径約1.3μm)とを用いて、両面研磨装置により両主面を同時に研磨した。
【0119】
2次研磨では、軟質ウレタン製の研磨パッドと、1次研磨よりも体積平均粒径の小さい酸化セリウム砥粒(体積平均粒径約0.5μm)とを用いて、両面研磨装置により両主面を同時に研磨した。
【0120】
3次研磨では、軟質ウレタン製の研磨パッドと、2次研磨よりも体積平均粒径の小さいコロイダルシリカ(例えば、一次粒子の体積平均粒径が20〜30nm)とを用いて、両面研磨装置により両主面を研磨加工した。
【0121】
その後、アルカリ性洗剤によるスクラブ洗浄、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄、純水に浸漬した状態での超音波洗浄によってガラス板を洗浄し、イソプロピルアルコール蒸気によって乾燥した。
【0122】
このようにして、磁気記録媒体用ガラス基板(試験板)を作製した。試験板は、2種類のガラスのいずれかで構成されており、1つのガラスの歪点は520℃であり、もう一方のガラスの歪点は570℃であった。
【0123】
(例1〜例9)
例1〜例9では、試験板の平坦度(P−V)、表面うねり(Wa)を、白色光干渉計型凹凸形状測定機(ADE Phase Shift社製、OptiFlat II)により測定した後、試験板を所定の温度で20分間加熱し、室温まで冷却した後、試験板の平坦度、表面うねりを再度測定した。熱処理前後での平坦度、表面うねりの変化量を算出した結果を、表1および表2に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

表1および表2から、試験板を試験板の歪点−340℃以下の温度で加熱することで、平坦度や表面うねりの悪化を制限できることがわかる。
【0126】
(例10〜例19)
例10〜例19では、それぞれ、10枚の試験板(ガラスの歪点520℃)の外周に振り子を衝突させて微細なキズを形成した後、各試験板に熱衝撃を与えることで、キズを起点としてクラックが伸展したか否かを目視で確認した。クラックが伸展しなかった場合、試験板をエッチング処理液に浸漬して、キズを等方的にエッチングして顕在化させ、キズが予め形成されていたことを確認した。例10〜例19のぞれぞれの熱処理条件は、下記の通りとした。
【0127】
例10では、各試験板の全体を液体窒素中に10分間浸漬させた後、各試験板の一方の主平面の内周およびその近傍を赤外線ヒータで150℃に加熱した。
【0128】
例11では、各試験板の全体を液体窒素中に10分間浸漬させた後、各試験板の一方の主平面の内周およびその近傍を赤外線ヒータで100℃に加熱した。
【0129】
例12では、各試験板の全体を液体窒素中に10分間浸漬させた後、各試験板の一方の主平面の外周から5mm内側の部分全体に、100℃に加熱された円柱状のアルミニウムブロック(外径55mm、高さ50mm)が接触するように、ガラス基板をアルミニウムブロックに載せた。
【0130】
例13では、各試験板の全体を液体窒素中に10分間浸漬させた後、各試験板の一方の主平面の外周から15mm内側の部分全体に、90℃の温水を接触させた。
【0131】
例14では、各試験板の全体を液体窒素中に10分間浸漬させた後、各試験板の全体に、90℃の温水を接触させた。
【0132】
例15では、各試験板の全体を赤外線ヒータによって150℃で10分間加熱した後、各試験板の全体を液体窒素中に浸漬させた。
【0133】
例16では、各試験板の全体を130℃のグリセリン中に10分間浸漬させた後、各試験板の全体を液体窒素中に浸漬させた。
【0134】
例17では、各試験板の全体を90℃の温水中に10分間浸漬させた後、各試験板の全体を液体窒素中に浸漬させた。
【0135】
例18では、各試験板の全体を赤外線ヒータによって220℃で10分間加熱した後、各試験板の全体を10℃の冷水中に浸漬させた。
【0136】
例19では、各試験板の全体を赤外線ヒータによって200℃で10分間加熱した後、各試験板の全体を10℃の冷水中に浸漬させた。
【0137】
試験の結果を、表3および表4に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
【表4】

【符号の説明】
【0140】
10 磁気記録媒体用ガラス基板(ガラス板)
12 円孔
14 外周部
16 中央部
18 外周面
20 内周面
100 ガラス板の品質試験装置
110 搬送装置
120 収納カセット
130 冷却装置
140 加熱装置
150 検出装置
160 回収カセット
170 廃棄カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板に熱衝撃を与える処理工程を有するガラス板の品質試験方法であって、
前記処理工程は、前記ガラス板を冷却する冷却工程と、前記ガラス板を加熱する加熱工程とを有し、
前記処理工程において、前記ガラス板の少なくとも一部の温度変化幅が200℃以上であって、
前記加熱工程において、前記ガラス板の加熱温度の上限がガラス板の歪点−340℃であることを特徴とするガラス板の品質試験方法。
【請求項2】
前記冷却工程は、前記ガラス板を20℃以下に冷却する工程であって、
前記加熱工程は、前記冷却工程の後に実施される請求項1に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項3】
前記加熱工程は、前記ガラス板の外周面の温度が前記ガラス板の主平面の温度よりも低くなるように、前記ガラス板を加熱する工程である請求項2に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項4】
前記加熱工程において、前記ガラス板の外周面の温度と、前記ガラス板の主平面において前記ガラス板の外周面から10mm以上内側の部分の温度との温度差が200℃以上である請求項3に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項5】
前記加熱工程において、前記ガラス板を加熱するヒータと、前記ガラス板との間に、前記ガラス板よりも小さい外形の開口窓部を設けた熱遮蔽板が設置される請求項3または4に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項6】
前記ガラス板は、磁気記録媒体用ガラス基板である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項7】
前記処理工程後に、前記ガラス板のキズの有無を調べる検査工程を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス板の品質試験方法。
【請求項8】
ガラス板に熱衝撃を与えるガラス板の品質試験装置であって、
前記ガラス板を冷却する冷却装置と、
前記ガラス板を加熱する加熱装置と、
前記ガラス板に熱衝撃を与えるため、前記冷却装置の冷却位置と、前記加熱装置の加熱位置との間で、前記ガラス板を移動させる搬送装置とを有し、
前記冷却装置の設定温度と前記加熱装置の設定温度との温度差は、200℃以上であり、
前記加熱装置の設定温度の上限は、前記ガラス板の歪点−340℃であることを特徴とするガラス板の品質試験装置。
【請求項9】
前記冷却装置の設定温度は、20℃以下であって、
前記搬送装置は、前記冷却位置から前記加熱位置へ、前記ガラス板を移動させる装置である請求項8に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項10】
前記加熱装置は、前記ガラス板の外周面の温度が前記ガラス板の主平面の温度よりも低くなるように、前記ガラス板を加熱する請求項9に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項11】
前記加熱装置は、前記ガラス板の外周面の温度と、前記ガラス板の主平面において前記ガラス板の外周面から10mm以上内側の部分の温度との温度差が200℃以上となるように、前記ガラス板を加熱する請求項10に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項12】
前記加熱装置は、前記ガラス板を加熱するヒータと、該ヒータと該ヒータによって加熱されるガラス板との間に設置され、前記ガラス板よりも小さい外形の開口窓部を設けた熱遮蔽板とを有する請求項10または11に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項13】
前記ガラス板のキズの有無を検出する検出装置をさらに有し、
前記搬送装置は、前記冷却位置および前記加熱位置に移動させたガラス板を、前記検出装置の検出位置に移動させる請求項8〜12のいずれか1項に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項14】
前記ガラス板は、磁気記録媒体用ガラス基板である請求項8〜13のいずれか1項に記載のガラス板の品質試験装置。
【請求項15】
ガラス板を加工する加工工程と、加工されたガラス板のキズの有無を評価する評価工程とを有するガラス板の製造方法において、
前記評価工程において、請求項7に記載のガラス板の品質試験方法により、前記ガラス板のキズの有無を評価することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項16】
ガラス板を加工する加工工程と、加工されたガラス板のキズの有無を評価する評価工程とを有するガラス板の製造方法において、
前記評価工程において、請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載のガラス板の品質試験装置を用いて、前記ガラス板のキズの有無を評価することを特徴とするガラス板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141208(P2012−141208A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293928(P2010−293928)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】