説明

ガラス質破砕材からなる液状化防止用埋め戻し材料及び該材料を用いた道路構造

【課題】ガラス質廃棄物の特性を利用し、液状化対策に有効な埋め戻し材料を開発する。
【解決手段】ガラス質材料の破砕粒において、10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mmのガラス破砕粒からなる、液状化抑制用埋め戻し材料。図において、試料番号9の上記条件を満たせば7号砕石の6.0×10-4m/s以上の透水係数となる。
地下水位が高く、或いは雨後などにより地下水位が上昇して地震の際に液状化を生じやすい地盤において、埋め戻し材料とすることにより、これらの地下水の影響により地震時に発生する過剰間隙水圧を速やかに消散させ、液状化による地下埋設構造物などへの影響を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物として産出される瓶ガラス、板ガラス、あるいは陶磁器の廃棄物等のガラス質資材を原料として、新たな特性を解明し、新たな用途を創成した技術に関するものであり、具体的には土木建築・工事などにおける路床材や埋設構築物の埋め戻し、盛り土用として、地震などの振動に伴う液状化現象を抑制する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
瓶ガラスや板ガラスなどのガラス類は、一般家庭用と産業用とを問わず広く用いられているが、それに伴って廃棄される量も膨大なものとなり、その処分に際しては単に経費の面のみでなく、環境への負荷の少ない方法によらなければならない。これらの一部はビール瓶などに見られるように、いわゆるリターナブル瓶として再使用することが図られ、或いは透明な板ガラス材などはその品質に応じた再生原料としての用途があるが、瓶ガラスなどの着色されたガラス材は各種のガラス廃材が混在すると、最早その用途に応じた色別の着色はできないため、再生原料としての用途は見出せない。
このため、これらのガラス材の特性を研究、解明すると共にその特性を利用した新たな用途を開発することが求められている。
【0003】
本発明者らは、ガラス質破砕材がその製造工程上容易に粒度を揃えることが可能であり、かつその角ばった形状から一定の空隙を保持するため透水性が良いことに着目して、先に地盤中に垂直に形成した穿孔に充填して排水させるサンドドレーン工法に用いる砂として、或いは地盤に排水性を持たせる地盤改良材として使用することを提案した。
すなわち、ガラス破砕材は、破砕による多角形状を有するために粒子間に一定の間隙が形成されると共に泥や有機質由来の細粒分が少ないため透水性に優れ、排水困難な、地盤中に含有水分の多い地盤に排水性を持たせるための砂に代替できる資材であることを確認し、これらをサンドドレーン用砂或いは地盤改良材として利用することを提案したのである。
【特許文献1】特開平2001−323449号公報
【0004】
しかしながら、ガラス質破砕材料の透水性に関する性質は、極めて優れているが、ガラス質材料自体の脆く、荷重や衝撃の下で破砕しやすい性質から、更に、従来の砂に替わる土木・建築用資材として広く用いられるには懸念があり、また、これらの用途に適用するには、安全対策上強度などに対する厳密な公的な規格があり、これらの規格を満すことが立証されない限り、これらの用途に適用することはできない。
【0005】
本発明者らは、このような観点から、道路構造の路床材や上下水道管などの地下工作物を埋設する埋め戻し材などとして用いることを目指してガラス破砕粒の性質を種々の観点から解明して、その性質を利用した新たな用途を開発してきた。このような用途としてガラス質破砕粒、或いはガラス質破砕材と砂質土との組み合わせからなる路床材料及び路盤材料がある。(特願2003−396338号及び特願2004−285281号)
すなわち、これらの用途に利用するためには、道路やその周辺の埋設工事自体が公共施設構築事業としての土木工事であるため、これらに使用する資材である埋め戻し土などについてもそれらの用途に向けての必要な特性を満たすことが求められ、それらの特性が規格化されているのである。
【0006】
路床材や路盤材などとして利用するためには、埋め戻した状態で埋設した地下構築物やその上に構築した建築物などに対して充分な支持力を保つことが求められる。そのような特性として、締め固め度があり、含水比と乾燥密度との関係で図1に示すように表わされるが、乾燥密度の高さは締め固め度の良否を表わし、含有する水分の変化に対して乾燥密度の変化が小さく、かつ高いことは埋め戻した状態での締め固め度が施工時の含有水分の多寡によって左右されず、かつ締め固め度が高いことを表わす。このような特性を有する材料は、実用上これらの材料がストックヤードなどの屋外で風雨に晒されて、含有水分の制御が困難なことから有利であるばかりでなく、埋め戻し施工後の閉め固め状態が良好で支持強度が高いことを示す。
図に示す性質から見るとおり、ガラス破砕粒はこれらの性質においてきわめて優れていることが判る。
【0007】
また、締固め特性と共に重要視されるのが、締固め状態での路床や路盤などとしての支持強度を表わすCBR試験及び三軸圧縮試験である。
CBR(California Bearing Ratio:路床土支持力比)試験は、路床や路盤の支持力の大きさを表わす指標として広く用いられているものであって、標準寸法の貫入ピストンを土の中に貫入させるのに必要な荷重強さを、代表的な強度のクラッシャーラン(切込み砕石)の値を100(%)として比較値を求めるもので、その値が高ければ高いほど路床材などとしての支持強度が高いことを意味する。
また、このCBRには、その測定条件によって種別があり、現場での条件を加味して目標とする締固め度に相当するCBRが修正CBR値として広く用いられている。道路の路床材料として用いるための修正CBR値は一種の規格化して指標として用いられており、その例を表1及び表2に示す。
【0008】
【表1】

【0009】
【表2】

【0010】
これらの修正CBR値は、道路などの構造に応じて適用されるものであって、上記の修正CBR値に対応する道路構造の例を挙げると図2のようになる。
図において、3は原地盤2を開鑿して埋設されるガス管、上下水道管、電力ケーブル、などのいわゆる地下の工作物であるが、これらの工作物は路床材1に埋め込まれた形態でその上にクラッシャーラン(切込み砕石:砕石+砂)12、粒度を調整した砕石いわゆる粒調砕石11及びアスファルト11などの舗装材からなる路盤材を充填して埋設される。
【0011】
本発明者らは、先にガラス破砕材が単体でこれらの路床材として要求される支持強度である修正CBR値を満たすこと(締固め度90%で12.7%、締固め度95%で17.7%)及びガラス破砕粒に対して、より粒度の小さい砂質材料を混合することにより、修正CBR値等の支持強度において高い値を示し、上記に規定される路盤材の規格を満たすことを明らかにした(特願2003−396338号及び特願2004−285281号)。
そして、上記のガラス破砕材の混合材料が、液状化防止の指標とされる液状化強度比Rにおいても優れた特性を示し、ガラス破砕粒単体でも液状化防止の基準とされる液状化強度比R値であるR=0.2以上を満たす、R=0.212の値を達成し、さらにガラス破砕材70%の混合比においてR=0.453を達成し、これらの基準による液状化防止策用として有用であることを明らかにした。
ところで、これらの液状化強度比は、「土の繰り返し非排水三軸試験:JIS 0541」によって求められ、その「応力比―繰り返し回数」グラフから、繰り返し載荷回数Nc=20回、軸歪みDA=5%の繰り返し応力振幅比(σd/2σ0')の値を読み取ったものであって、物理的、機械的性質として支持強度が大きく、地震動に対しても支持強度を高く維持することを示すものであった。
しかしながら、地下水位が高く、周辺地盤から浸透する水分や地震動によって上昇する水位などの影響を受けて粒子間の水圧が上昇するなど地下水位の影響のある条件下では、これらの対策のみでは液状化を生じることは回避できない。
【0012】
地震に伴なって発生する液状化現象については未だ充分に解明されておらず、また、その地盤構造や地下水位などの条件によって様々なメカニズムが働くことが考えられるため、一定の対策、手法のみで対処することはできないが、上記の液状化強度比R値向上による液状化対策が地下水位の影響などを比較的受けず、含有する水分を抑制可能な条件下で液状化を生じない手法とすれば、これに反して地下水位が高く、雨などにより周辺の地盤を含めて地下水位の上昇を生じやすい地盤においてはこれらと異なる対策が必要となる。
【0013】
地下水位の高い地盤など、地下水位の影響を前提にした条件下で下水道管渠やマンホール周辺の埋め戻し材料として「下水道施設の耐震対策と指針と解説」(下水道協会編)では、「液状化時に発生する過剰間隙水圧を速やかに消散させ、管渠底面に作用する揚圧力の低減が期待できる埋め戻し材(砕石)を用いる」とされており、また、平成17年8月になされた下水道地震対策技術検討委員会報告によれば、「新潟県中越地震の総括と地震対策の現状を踏まえた今後の下水道地震対策のあり方」として、周辺地盤が液状化のおそれのない地盤においても埋め戻し部の地下水位が常時或いは雨天時に一時的に高くなることが予想される場合には、具体的な液状化対策を講じる必要が有るとしている。これらの具体的な液状化対策として埋め戻し土の締固め、砕石による埋め戻し、埋め戻し土の固化などを挙げているが、積極的な液状化対策として、「砕石ドレーン」等が一般的に用いられており、砕石の透水性が液状化対策として有用であることが広く知られている。
このような地盤などから供給される地下水の影響が大きい場合、その粒子構造と相俟って透水性が重要な要件を占めるのであって、砕石は角張った形状であるため粒子同士が組み合った状態で支持強度を発揮し、また同時に粒子同士の間隙が大きいため、透水性に優れており、このように組み合った粒子間の間隙は、たとえ粒子間を水分が充満しても速やかに排水するため地下水が粒子を浮かせる水圧や浮力となって土が流動化することが防止されると考えられる。
これらの砕石は、粒度の粗い1号から粒度の細かい7号砕石まであるが、岸壁等の液状化対策砕石ドレーン土の材料として一般に粒度の最も小さい7号砕石(粒度が最も細かい、従って透水性は砕石中最も低い。)が当てられており、これらの用途として実用上7号砕石に相当する特性が得られれば液状化対策用途に利用可能であるといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、7号砕石などに替わって地下水位の影響を受ける条件下で液状化を防止するため求められるガラス破砕材の特性の解明、そのための条件の設定であり、特に、これらの液状化しやすい地盤における路盤材の下部構造となる路床材として、地下工作物の埋設のための埋め戻し材として液状化防止のため求められる諸特性をガラス破砕粒に求め、そのため満たすべき条件を明らかにして、これらの形態におけるガラス質廃棄物の特性を解明してそれを利用した新たな用途を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたことにより液状化防止特性を向上したことを特徴とするガラス質破砕材からなる液状化防止用埋め戻し材料であり、さらに、上記粒度分布において最大粒径を9.5mmとして透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用埋め戻し材料である。
また、10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床材料であり、さらに、その粒度分布において、最大粒径を9.5mmとして透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床材料であり、
また、10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床上に路盤を形成してなる道路構造であり、さらに、その粒度分布において最大粒径を9.5mmとして透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床上に路盤を形成してなる道路構造である。
また、更にこれらの特性を備えたガラス質破砕材を埋め戻し土としてなる液状化防止工法であり、これらの特性を備えたガラス質破砕材を路床材とする液状化防止工法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ガラス質破砕材の有する特性を解明し、それを利用した構築路床材料、埋設物保護用埋め戻し材料として、従来よりこれらの用途に用いられている砕石などの天然資材に勝る優れた材料を提供し、かつ、これらの資源量に限界のある材料に替わって、廃棄物として産出されるガラス質材料を資源として新たな用途を創出したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明者らは先の出願発明において、これらのガラス破砕粒が一定の支持強度を備えて路床材の用途に利用できることを明らかにし、また透水性にも優れていることを示したが、なお、これらの液状化に対する性質として埋め戻し材として締固めた状態において、現在これらの対策に有効性が認められている7号砕石に相当する透水性を有することが必要である。
路床用など、道路構築材料として埋め戻し材に適用するときには、これらの埋め戻し作業におけるランマーなどで突き固めた状態で、十分な締固め状態となることが必要であり、これらの締固め状態における支持強度については先の出願においても既に確認しているが、ガラス質材料の性質として脆く、破砕しやすい性質があり、液状化防止効果を達成するためにはこれらの施工条件を経た上で、要求される透水性を発揮しなければならない。
【0018】
すなわち、これらの材料がランマ−などの突き固めによって破砕され、粒子間隙がこれらの破砕片などによって充填されて粒子間隙が維持されなければ、その透水性も失われることになり、これらの用途には適用できない。
そこで、7号砕石と対比して、ガラス破砕粒の粒度を調整し、これらの締固めの前後の粒度と破砕の程度、及び間隙の変化を調査した。以下の表3−1〜3−4にこれらのガラス質破砕材料と7号砕石の材料特性を挙げる。
【0019】
【表3−1】

【0020】
【表3−2】

【0021】
【表3−3】

【0022】
これらの内、試料番号1は粉砕した全試料(ただし、粒径0〜10mmの範囲に調整したもの。)を使用した。
また、それ以外の試料は、予めそれぞれの粒度で篩別けした後、表の粒度分布となるようブレンドして、試料として調整した。
7号砕石は最大粒径9.5mmの礫分100%に分類されるが、ガラス破砕材は一部のものの破砕形状が篩を通り難いこと、実際に使用される締固め状態において角が取れるなどするため、10mm径であっても実質上9.5mm相当となるため、上記のとおり最大粒径を定めた。
また、表において「原粒度」は、埋め戻し材料として締固め処理前の粒度であり、「締固め後」は道路施工条件に合わせてその締固め後に埋め戻し材料を再度篩い分けして粒度分布を確認したものである。
破砕率は、このようにして得られたガラス粒子について、Marsal法によって測定したもので、この評価方法は、小さい粒径の粒子から加算した粒径加積曲線で、ある篩目k、fに残留した質量百分率をそれぞれWki,Akfとするとき、破砕後に篩目kに残留する質量百分率は、次式のようになる。
Wkf=Wki−ΔWk`+ΔWk``=Wki−ΔWk
ΔWk=ΔWk`−ΔWk`` (ΔWk=Wki−Wkf)
ただし、ΔWk`は、破砕されてkより小さい篩目に移動した粒子の質量百分率であり、ΔWK``は、kより大きい篩目から破砕されてkへ移動した粒子の質量百分率である。
また、ΣWk`=ΣWk``であるのでΣΔWk=0となる。
破砕前に篩目kにあった粒子の破砕量は、ΔWk`であるから、全体の粒子破砕量Brは、
Br=ΣWk`
となるが、実際にはΔWk`は、量的に把握困難であるから、Marsal法により、ΔWk`とΔWk``は大小があるため上記のΔWkは正負があるが、便法として正の値のみを加えた値を破砕率Bmとする。
このようにして求めた破砕率は、最大で18.0%で、いずれの試料の破砕率も20%以下であった。
【0023】
これらの表における粒径の百分率表示は、その粒径以下の粒子の質量積算値を全体量に対して百分率で表示したものである。
これらの材料の粒径加積曲線を図3−1〜図3−4に示す。
【0024】
これらの粒径加積曲線によれば、7号砕石が粒径2mmから最大粒径までの間で急峻な傾斜を有しているのに対し、ガラス破砕材では、試料番号5、6、8、9、11が少なくとも粒径の大きい4.75mm近傍でほぼ7号砕石と同等の傾斜を有しており、他方、試料番号1〜4、7、10では全体に傾斜が緩やかであると共に粒径の小さい領域と大きい領域で傾斜が寝るため曲線全体がS字型を描いていること、すなわち、前者の試料では粒径の大きい領域に集中して粒度がある程度揃っているのに対し、後者では全体にわたって粒径が広く分布することが読み取れる。
また、これらの傾向を原粒度と締固め後の粒度において比較すると締固め後は粒度が小さいほうにずれて粒径の小さい領域が大きくなるが、前記した傾向は保たれており、これらの傾向自体は変わらない。
【0025】
そして、これらの粒度分布と透水係数との関係について、一般に細粒分の含有率が透水係数に大きな影響があると考えられ、10%粒径、20%粒径、及び必要により30%粒径と透水係数との関係によって評価することが行われる。
この百分率で挙げた粒径は、砂礫質などの土木材料中のある粒径以下の粒子の質量を累積した積算値であって、10%粒径(D10)mmが0.6(mm)とは、粒径0.6mm以下の粒径の粒子の総和が質量で10%を占める材料であることを表わし、以下同様にして表示された粒径以下の粒子分の積算値を表わす。
このように、一般に粒径の小さい成分についてその比率を百分率で表わすことにより、透水係数に及ぼす細粒分の影響をその含有率によって評価することができる。上記の例で云えば、含有率10%に相当する粒径が0.6mm以上であるときに、目標とする透水率を満足するのであれば、最大粒径との間で10%粒径が0.6mm以上となるように調整すれば良いのであって、一般にシルト分などの微粒分を多く含む材料について篩下としてどこまでこれらの細粒分を落とせば良いかを測る基準とされるのである。
この手法により一般的には、10%及び20%粒径でこれら粒度分布と透水係数についての関係は定まるとされている。
しかしながら、本発明の対象とするガラス破砕材は、いわゆるガラス質の材料を破砕して形成したものであるから、多結晶質の岩石からなる砂礫や砕石とは性質や形態が異なり、また、このような材質や履歴の相違があるため粒度分布がこれらの砂礫などの天然資材とは異なる。さらに、これらガラス破砕材の原料である廃ガラス材自体も各種の形態の瓶ガラスから板ガラスまで多岐にわたるため、その結果、製造されたガラス破砕材のこれら粒径分布や形態も一定とならない。
このため、従来行われた上記の粒度分布によって透水性を評価する手法をそのままガラス破砕材に適用し得るか否かは明らかではなく、そのため従来のように粒径の上限と下限とで篩い分ける方法によって粒度調整を行って得た材料が、常に7号砕石に代替し得る透水性を保持するとは云えない。
そこで本発明においては、前述のとおり、一旦篩い分けした各粒度の材料を種々の粒度分布となるように再度混合して調整した試料番号1〜11を作製し、最大粒径以下シルト分までの粒度範囲でガラス破砕材の粒度分布と透水性の関係を評価する方法として、10%粒径〜30%粒径によって透水係数を測定した。
その結果を図4〜6に示す。
図に見るとおり、10%粒径、20%粒径、及び30%粒径のそれぞれの粒度分布に応じて透水性能は明瞭に分かれる。
【0026】
グラフは、縦、横ともに対数目盛で表わしているが、上記の粒径が0.74mm近傍に揃った試料番号5、6、8、9、11では、いずれも7号砕石と同等以上の透水性を示している。図において、粒径はいずれも原粒度で示したが、透水係数は締固め状態で測定されており、締固め後の粒径において発揮される性質である。
これらの結果から、透水性に影響する粒度分布には一定の傾向があることがわかる。
上記した様に粒径の小さい領域に分布が拡がる試料番号1〜4、7、10は、いずれも、7号砕石に比較して透水係数が大きく劣るため、代替材として使用することはできない。これに対して、試料番号5、6、8、9、11のものは、7号砕石に対して透水性に劣らず、むしろはるかに大きい値を示す。これらの境界は30%を占める粒径が7号砕石とほぼ同等の試料番号9であって、これらの粒径の小さい粒子がこの範囲にあれば、7号砕石に代替し得ることがわかる。
また、更にこれらの粒度分布に関し、10%粒径及び20%粒径についてそれぞれ図4及び図5を見ると、上記の透水係数において7号砕石以上の値を示す試料番号8、9、11のものにおいても7号砕石(最小粒径2mm)よりも小さい粒径分布を有しており、一定の粒径以上において粒度分布条件を満たせば、これらの粒径の小さい成分の存在が許容されることがわかる。実際の締固め状態においては前記したように、一部のガラス粒が破砕されて最大で18.0%の破砕率を示すことから、締固め状態の粒度は更に小さいと考えられるが、それにも拘わらず透水性において高い値を示すのは、前記したようにガラス質の特性と考えられ、このことは、ガラス破砕材から製造する際に、これらの粒度の小さい破砕粒が生じることは不可避であるから、実用上有利である。
また、破砕率と透水性についても、表3−1〜3−4の破砕率のデータから、透水性の高い試料番号5,6、8、9,11は、最大の破砕率18.0%から6.3%であるのに対し、透水係数から7号砕石に代替できない上記の試料番号のものはこれらよりも破砕率の低い3.2〜5.9%であって、むしろガラス破砕材に関してはこれらの破砕率と透水係数との間に相関関係が認められず、破砕方法などの相違から刃状のファセットが生じやすいなどの形態を有していて、締固め施工時に破砕しやすい材料であっても同様に扱えることがわかる。
以上の結果から、ガラス破砕材においても粒度分布が決定的な要因であること 、7
号砕石と同等以上の透水性を発揮するための粒度分布は一定範囲にあり、試料番号9の粒径分布がその境界にあることが判る。
【0027】
すなわち、これらの関係を数値上判りやすくするため、先の表から10%粒径〜3
0%粒径について抽出すると次の表4のとおりである。
実際に透水率に影響する粒度分布は、前記の粒径加積曲線に表わすと明確となり、7号砕石と試料番号9及び試料番号10の粒径加積曲線を重ねて表示したものが図7である。
透水係数において7号砕石以上の特性を有する試料番号5、6、8、11の粒 径加積
曲線は、図面が煩雑になるため省略したがこれら10%粒径〜30%粒径の範囲においていずれも試料番号9の曲線の下方に位置する、つまり試料番号9よりも粒径の大きい領域に分布している。
他方、7号砕石よりも透水係数が低く、これに代替できない試料番号1〜4、7及び10は、同じく煩雑を避けるため図示を略したが、最も透水係数が高い試料番号10の曲線は、これらのグループ内では最も下方にあるが、なお試料番号9号の曲線よりも上方にあり、これらのグループはいずれも試料番号9よりも粒径の小さい領域に粒径分布する。
以上の結果から、
10〜20%粒径、或いは30%粒径がそれぞれ、0.6mm、1.5mm、或いは2.5mm以上であれば透水係数が7号砕石の条件を満たすこと、
また、これらの粒径分布条件を満たせば粒径分布が種々のパターンで異なっていても透水係数に影響しないこと、
さらに、原料であるガラス廃材の種類や破砕方法などが異なってもこれらの条件が適合すること、がわかる。
従って、本発明における液状化防止に適した粒度分布は、原粒度で表わして、 粒径
10%粒径が0.6mm以下、20%粒径が1.5mm以下であって、最大粒径9.5mmmの条件を満たすことによって7号砕石に代替して使用され、その粒度調整はこれらの粒径に満たない細粒分をシルト分を含めて篩下として落とすことによって行えばよく、しかも7号砕石(粒径2mm以上)に比較してより細かい細粒分が許容できることは製造上も材質管理上も極めて有利である。
また、前記したように、7号砕石に比較してこれらの粒度に調整すれば、目指す7号砕石相当以上の透水性の液状化防止用埋め戻し材料が得られることとなり、ガラス破砕材の新たな用途が実際の土木資材の管理上、極めて有利な条件で得られる。
さらに、以上の検討は、最大粒径9.5mmを上限とした粒度分布において行
っているが、図7において検討したように10%粒径、20%粒径、或いは30%粒径について上記の条件を満たせば、それよりも粒径の大きい粒子の分布は透水係数に影響しない。或いは、粒径の大きい砕石ほど透水性は高い。したがって、これらの検討からすれば、ガラス破砕材をこれら透水性を利用して液状化防止用とする上でその粒度分布を調整する場合、上記の最大粒径9.5mmは実質上上限とする必要はなく、実際上ガラス廃材由来の粒度として扱われる15mm程度の粒径を含んでもなんら差し支えない。
【0028】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0029】
(1)埋め戻し材料として、
本発明のガラス破砕材からなる埋め戻し材料は、7号砕石に勝る透水性により地下水位の高い地盤や降雨などにより地震に際して液状化の懸念される地盤において埋め戻し材料として使用することにより、これらの地下水位の影響を回避して液状化を防止することができる
(2)道路の路床材料として、
路床材としての用例は、上記に記述したとおりであるが、地震による液状化対策が叫ばれるなか、地下水の影響がある地盤に路床材として利用することにより、より上層の路盤材には支持強度の大きい材料に対して液状化の影響を軽減することができ、道路構造として合理的な構成を採用することができる。
道路構築材料としての路床材は量的にも多いことからも、廃材としての用途を創設できたことによる産業上の環境対策としての効果は大きい。
【0030】
(3)地下工作物埋設用埋め戻し材料として
前記した公道における地下工作物の埋め戻し材料として適用することにより、地下水位の影響に対しても、速やかに排出してその角張った固有の形状による支持構造を変化させず、地下に埋設された工作物を保護する。
粒子形状によるこのような強固な支持構造は、鉄道のレール下に敷きこむ砕石でも知られているが、より粒径の小さいガラス破砕粒においても同様に発揮されることを確認したのであり、単なる含有水分のドレーン効果のみでなく、これらの地下埋設物に対する支持作用においても発揮されるのであり、コストが嵩む砕石に変わって広く適用することができる。
(4)構造物支持用埋め戻し材料として、
直下型の衝撃的な振動を齎す地震に際して、地下水位の影響により液状化現象が発生して地上建築物が地盤の支持力を失って傾斜し、倒壊するなどすることはかっての新潟地震によっても知られているが、このような建築物を支持する地盤に対して一定の深さまで開鑿して軟弱な地盤を砕石などと入れ換えることが液状化対策として有効であるが、本発明のガラス破砕材からなる埋め戻し材料は、このような砕石に変わって適用することが可能であり、より安価かつ選りすぐれた透水性能を発揮することができることにより、液状化対策として有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】各種埋め戻し材料の締固め曲線。
【図2】道路構造断面と埋設されたガス管などの地下工作物の関係を示す図。
【図3−1】資料番号1〜3の粒径加積曲線
【図3−2】資料番号3〜6の粒径加積曲線
【図3−3】資料番号7〜9の粒径加積曲線
【図3−4】資料番号10〜11及び7号砕石の粒径加積曲線
【図4】10%粒径と透水性の関係
【図5】20%粒径と透水性の関係
【図6】30%粒径と透水性の関係
【図7】7号砕石と試料番号9の粒径加積曲線
【符号の説明】
【0032】
1 埋め戻し土(ガラス質破砕材)
2 既存の地盤
3 地下工作物(上下水道などの埋設物)
10 舗装材
11 上層路床材(粒調砕石など)
12 下層路床材(クラッシャーラン:砕石+砂質土など)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたことにより液状化防止特性を向上したことを特徴とするガラス質破砕材からなる液状化防止用埋め戻し材料。
【請求項2】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mm以下の範囲にある粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたことにより液状化防止特性を向上したことを特徴とするガラス質破砕材からなる液状化防止用埋め戻し材料。
【請求項3】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたことを特徴とする、ガラス質破砕材からなる液状化防止用路床材料。
【請求項4】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mm以下の範囲にある粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたことを特徴とする、ガラス質破砕材からなる液状化防止用路床材料。
【請求項5】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上とした粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床上に路盤を形成してなる道路構造。
【請求項6】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mm以下の範囲にある粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材からなる液状化防止用路床上に路盤を形成してなる道路構造。
【請求項7】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mm以下の範囲にある粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材を埋め戻し土としてなる液状化防止工法。
【請求項8】
10%粒径が0.6mm以上、20%粒径が1.5mm以上、最大粒径9.5mm以下の範囲にある粒度分布に調整して透水係数6.0×10-4m/s以上としたガラス質破砕材を路床材としてなる液状化防止工法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−169979(P2007−169979A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367260(P2005−367260)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【特許番号】特許第3905912号(P3905912)
【特許公報発行日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(500218297)ガラス・リソーシング株式会社 (4)
【出願人】(000170635)国土総合建設株式会社 (13)
【Fターム(参考)】