説明

ガーニッシュの取付構造

【課題】デザイン自由度の向上とパネル形状の共有化を両立しながらも、部品点数を増やす事なく取付作業性のよいガーニッシュの取付構造を提案する。
【解決手段】車両用のパネル部材1に装着されるガーニッシュの取付構造において、パネル部材1に形成した取付孔2に挿入するボス部4をガーニッシュ2の裏面2Aに形成し、このボス部4に装着可能なスペーサー部材7に弾性変形可能な係止爪9を設け、係止爪9をひっかける係合部6をボス部4に形成し、係止爪9が係合部6に引っ掛かる向きにスペーサー部材7を取付孔3からパネル部材の裏面2A側に突出しているボス部4に装着し、ボス部とスペーサー部材7を締結部材12で締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーニッシュの取付構造に関し、詳しくは車両用のフード若しくはドアなどのパネル部材の端縁部に艤装品としてのガーニッシュを取付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のフード若しくはドアなどのパネル部材の端縁部には艤装品としてのガーニッシュを装着する場合がある。このようなガーニッシュの取付構造は、パネル部材に形成した取付孔にガーニッシュの裏面に形成したボス部をパネル部材の表面側から挿通し、ボス部を覆うように形成されたスペーサー部材をパネル部材の内面側からボス部に装着することでガーニッシュとスペーサー部材とでパネル部材を挟み込んでいる。そしてスペーサー部材とボス部をビスなどの締結部材で締結することでパネル部材にガーニッシュを取り付けている。
【0003】
特許文献1には、パネル部材にガーニッシュを取り付けるのにブラケットを介して取り付ける構造が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−308023
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガーニッシュは、車両に対して同一車種であってもグレードやオプションによって装着されているものといないものがあるが、ガーニッシュの装着の有無でパネル形状を変えてしまうことは部品の共有化が難しくなる。また、従来のようにガーニッシュに形成したボス部にスペーサー部材を装着し、締結部材で両者を締結する構造においては、両者を取り付ける向きによっては、スペーサー部材を作業者が手でもって装着状態を保持しながら締結部材を締結しなければならず、取付作業の改善が求められている。特許文献1ではガーニッシュのデザイン自由度を向上させるためにブラケットを介してガーニッシュをパネル部材に装着しているが、ブラケットの分だけ部品点数が多く、部品単価も高くなってしまう。
本発明は、デザイン自由度の向上とパネル形状の共有化を両立しながらも、部品点数を増やす事なく取付作業性のよいガーニッシュの取付構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両用のパネル部材に装着されるガーニッシュの取付構造において、パネル部材に形成した取付孔に挿入するボス部をガーニッシュの裏面に形成し、このボス部に装着可能なスペーサー部材に弾性変形可能な係止爪を設け、係止爪をひっかける係合部をボス部に形成し、係止爪が前記係合部に引っ掛かる向きにスペーサー部材を取付孔からパネル部材の裏面側に突出しているボス部に装着することを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載のガーニッシュの取付構造において、スペーサー部材にねじ孔を、ボス部にねじ孔と重合する孔をそれぞれ形成し、ボス部にスペーサー部材を装着した状態で、孔から締結部材を挿入してねじ孔に締結することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パネル部材に形成した取付孔にガーニッシュの裏面に形成したボス部を挿入し、このボス部に装着可能なスペーサー部材に形成した弾性変形可能な係止爪が、ボス部に形成した係合部に引っ掛かる向きに、スペーサー部材を取付孔からパネル部材の裏面側に突出しているボス部に装着すると、係止爪が係合部に弾性的に引っかかるので、スペーサー部材とガーニッシュのパネル部材からの脱落が防止される。このため、作業者が手でもって装着状態を保持しなくて済むので、デザイン自由度の向上とパネル形状の共有化を両立しながらも、部品点数を増やす事なく取付作業性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1において、符号1はパネル部材となる車両用のフードパネルを、符号2は艤装品としてのガーニッシュ2をそれぞれ示す。金属製のフードパネル1の端縁部1Aには、車幅方向に複数の取付孔3が間隔をあけてパネルを上下方向に貫通するように形成されている。ガーニッシュ2は、この取付孔3の上方からフードパネル1の上面1Bに装着される。フードパネル1の端縁部1Aは、図2に示すように、インナーパネル11を巻き込むように接合されていて、その接合部をシーラ等のシール部材13でシーリングされている。
【0011】
樹脂製のガーニッシュ2は、車幅方向に細長く形成されていて、その底面2Aにはガーニッシュを貫通する方向に裏面2Aから突出するボス部4が形成されている。ボス部4は角柱形状であって、図3に示すように、その先端面4Aにはねじ孔5が、その側面4Bには係合部を構成する窪み部6がそれぞれ形成されている。ねじ孔5はボス部4の長手方向に形成されていて、窪み部6は側面4Bからこれと対向する側面4Cの方向に形成されている。本形態において、このような構成のボス部4は、ガーニッシュ2の裏面2Aに複数形成されていて、ガーニッシュ2をフードパネル1の上面1Bにセットしたときに取付孔3に挿入可能に配置されている。
【0012】
図2,図3に示すように、各ボス部4には、これに着脱自在なスペーサー部材7が、その全体を覆うように装着される。樹脂製のスペーサー部材7は、断面ハット型であって、互いに対向する側面7A,7Bの端部が外側に折り曲げられてフランジ部8A、8Bとされている。スペーサー部材7は、図2に示すようにフードパネル1の裏面1C側からボス部4に装着したときに、フランジ部8A,8Bが裏面1Cに当接するように、その深さが設定されている。本形態において、スペーサー部材7はボス部4よりも幾分高く形成されている。
【0013】
側面7A,7Bの間に位置するスペーサー部材7の部位には係止爪9が配置されている。係止爪9は、スペーサー部材7の上部7Cから下部に向かって延び、スペーサー部材7の内方と外方に向かって弾性変形可能となるように、スペーサー部材7と一体成型されていて、ボス部4への装着時に、その先端9Aが窪み部6に引っかかるように形成されている。上部7Cには、ボス部4へ装着したときに、ねじ孔5と重合する孔10が形成されている。
【0014】
次に、フードパネル1へのガーニッシュ2の取付けについて説明する。ガーニッシュ2のボス部4をフードパネル1の取付孔3に挿入して、ガーニッシュ2の裏面2Aをフードパネル4の表面1Aに接合する。このとき、ボス部4は、パネル厚を除いてフードパネル1の裏面1C側に突出する。
【0015】
次に係止爪9の先端9Aが窪み部6に引っ掛かる向きにスペーサー部材7を、フードパネル1の裏面1Cから突出しているボス部4に被せて、フランジ部8A、8Bがフードパネル1の裏面1Cに接触する方向に押す。すると係止爪9の先端9Aが側面4Bによってスペーサー部材7の外側に押されて爪全体が弾性変形する。この状態で係止爪9の先端9Bが窪み部9と対向すると、爪全体がスペーサー部材7の内側に向かって弾性変形状態が戻り、係止爪9の先端9Aが窪み部6に引っかかる。この引っかかりにより、スペーサー部材7はボス部4に仮止め状態となるので、装着後に作業者がスペーサー部材7を支えなくても落下することがない。
【0016】
この仮止め状態から、作業者はビスなどの締結部材12をスペーサー部材7の孔10に挿入し、ねじ孔5へねじ込むと、スペーサー部材7とボス部4とが引き合う。締結部材12による締結状態が進むと、ガーニッシュ2の裏面2Aとフランジ部8A、8Bとにフードパネル1が挟み込まれるため、ガーニッシュ2がフードパネル1の端縁部1Aに取付け固定される。
【0017】
このように、ガーニッシュ2に形成されたボス部4に窪み部6を形成し、スペーサー部材7に係止爪9を形成すると、ボス部4に対するスペーサー部材7の装着時に係止爪9の先端9Aが窪み部6に弾性的に引っかかるため、取付け作業途中でのスペーサー部材7とガーニッシュ2がフードパネル1から脱落することを防止することができる。よって、作業者が手で持ってスペーサー部材7の装着状態を保持しなく済み、デザイン自由度の向上とパネル形状の共有化を両立しながらも、部品点数を増やす事なく取付作業性を向上することができる。
【0018】
本形態では、パネル部材としてフードパネル1を例に説明したが、これに限定されるものではなく、車両のサイドドアやバックドアなどのようなガーニッシュ2を装着するパネル部材であれば、本願発明の取付構造を用いることができ、その効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る取付構造によりパネル部材に取り付けられガーニッシュの概観を示す斜視図である。
【図2】ガーニッシュの取付構造の主要部の構成を示す断面図である。
【図3】ガーニッシュに形成したボス部とこれに装着されるスペーサー部材の構成を示す斜視図である。
【図4】ボス部とスペーサー部材の装着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 パネル部材
1C パネル部材の裏面
2 ガーニッシュ
2A ガーニッシュの裏面
3 取付孔
4 ボス部
5 ねじ孔
6 係合部
7 スペーサー部材
9 係止爪
10 孔
12 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のパネル部材に装着されるガーニッシュの取付構造において、
前記パネル部材に形成した取付孔に挿入するボス部を前記ガーニッシュの裏面に形成し、このボス部に装着可能なスペーサー部材に弾性変形可能な係止爪を設け、前記係止爪をひっかける係合部を前記ボス部に形成し、前記係止爪が前記係合部に引っ掛かる向きに前記スペーサー部材を前記取付孔から前記パネル部材の裏面側に突出しているボス部に装着することを特徴とするガーニッシュの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のガーニッシュの取付構造において、
前記スペーサー部材にねじ孔を、前記ボス部に前記ねじ孔と重合する孔をそれぞれ形成し、前記ボス部に前記スペーサー部材を装着した状態で、前記孔から締結部材を挿入し前記ねじ孔に締結することを特徴とするガーニッシュの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−296750(P2008−296750A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145473(P2007−145473)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】