説明

キッチンキャビネット

【課題】シンクの収納部の前板として、キッチンキャビネットの他の前板と同じく厚みのある木や樹脂板を使用することができ、前面の風合いや色調を統一することができるキッチンキャビネットを提供すること。
【解決手段】シンク1の前板2の下部を蝶番3で枢着することにより前板2を揺動開閉可能に設け、前板2の内側に収納部4を形成したキッチンキャビネットにおいて、蝶番3の前板側の羽根板31を軸芯32からシンク1側にオフセットするとともに、オフセットした羽根板31を前板2の裏面に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンキャビネットに関し、特に、シンクの収納部の前板として、キッチンキャビネットの他の前板と同じく厚みのある木や樹脂板を使用することができ、前面の風合いや色調を統一することができるキッチンキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シンクが配設されるキッチンキャビネットは、キャビネット本体の前面に引出しや扉等を設けてキャビネット本体の内部に調理器具等の収納スペースを設けるようにしている。
一方、シンクは、作業性向上のためにキャビネット本体に対してできるだけ容積が大きくなるように形成されるため、シンクの前側は狭い空間となる。
このため、このキャビネットのシンクの前側部分はデッドスペースとされており、キャビネット本体の前面にはシンクの目隠しのための幕板を設けているのが一般的である。
【0003】
ところで、近年ではキッチンキャビネットの収納率の向上が望まれるようになり、例えば、従来デッドスペースとなっていたシンクの前側部分に包丁用の収納部を設けたキッチンキャビネットが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
このキッチンキャビネットは、シンクの前板の下部を蝶番で枢着することにより、前板を揺動開閉可能に設け、該前板の内側に包丁の収納部を設けている。
【0004】
しかしながら、このキッチンキャビネットは、内部空間を大きくするために、前板が薄いアルミ板で構成されており、厚みのある木や樹脂板で構成されるキッチンキャビネットの他の前板と風合いや色調が合わないという問題があった。
【特許文献1】特開2006−334249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のキッチンキャビネットが有する問題点に鑑み、シンクの収納部の前板として、キッチンキャビネットの他の前板と同じく厚みのある木や樹脂板を使用することができ、前面の風合いや色調を統一することができるキッチンキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のキッチンキャビネットは、シンクの前板の下部を蝶番で枢着することにより前板を揺動開閉可能に設け、該前板の内側に収納部を設けたキッチンキャビネットにおいて、前記蝶番の前板側の羽根板を軸芯からシンク側にオフセットするとともに、該オフセットした羽根板を前板の裏面に固定したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、固定側の羽根板を略水平に設け、該羽根板の側端部から外フランジを立設するとともに、前板側の羽根板の側端部から該外フランジに沿って内フランジを延設し、該内フランジ及び外フランジに、前板の開閉角度を制限するガイド溝と該ガイド溝内を摺動する突起とを設けることができる。
【0008】
また、軸芯の一端に大径の頭部を形成するとともに、一方の羽根板に、軸芯を挿入した位置で該頭部が強制嵌合する凹部を形成することができる。
【0009】
また、金属板に所定幅の長溝を形成するとともに、該長溝を境に金属板を内側に折り曲げてプレス加工することにより蝶番の軸筒部を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキッチンキャビネットによれば、シンクの前板の下部を蝶番で枢着することにより前板を揺動開閉可能に設け、該前板の内側に収納部を設けたキッチンキャビネットにおいて、前記蝶番の前板側の羽根板を軸芯からシンク側にオフセットするとともに、該オフセットした羽根板を前板の裏面に固定することから、シンクの収納部の前板として、キッチンキャビネットの他の前板と同じく厚みのある木や樹脂板を使用することができ、これにより、キッチンキャビネットの前面の風合いや色調を統一することができる。
【0011】
この場合、固定側の羽根板を略水平に設け、該羽根板の側端部から外フランジを立設するとともに、前板側の羽根板の側端部から該外フランジに沿って内フランジを延設し、該内フランジ及び外フランジに、前板の開閉角度を制限するガイド溝と該ガイド溝内を摺動する突起とを設けることにより、前板の開閉角度を制限するための別部品を省略することができ、見栄えの向上を図るとともに、内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0012】
また、軸芯の一端に大径の頭部を形成するとともに、一方の羽根板に、軸芯を挿入した位置で該頭部が強制嵌合する凹部を形成することにより、軸芯の弾性を利用して挿入する一動作で蝶番の組立を行うことができる。
【0013】
また、金属板に所定幅の長溝を形成するとともに、該長溝を境に金属板を内側に折り曲げてプレス加工することで蝶番の軸筒部を形成することにより、軸筒部の外径を折り曲げた金属板と同じ厚みにすることができ、これにより、軸筒部を目立たないようにしてキッチンキャビネットの意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のキッチンキャビネットの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図6に、本発明のキッチンキャビネットの一実施例を示す。
このキッチンキャビネットは、シンク1の前板2の下部を蝶番3で枢着することにより前板2を揺動開閉可能に設け、該前板2の内側に包丁等の収納部4を設けている。
そして、このキッチンキャビネットは、前記蝶番3の前板側の羽根板31を軸芯32からシンク1側にオフセット(一旦後退させて上方に延設)するとともに、該オフセットした羽根板31を前板2の裏面に固定している。
【0016】
キッチンキャビネットは、図示省略するが、幅方向両端の両側板、底板及び背板を矩形状に組み上げてその内部に前面開口及び上面開口を有する中空空間を形成したキャビネット本体と、このキャビネット本体の上面に上面開口を閉塞するように載置固定したカウンターとで構成されている。
キャビネット本体の中空空間は適宜区分けされ、この区分けされた各空間には開閉扉や引出し等が配設され、キャビネット本体内部を収納スペースや機器配設スペースとして利用している。
また、カウンターには、ガスレンジ(図示省略)やシンク1が配設されており、これらはそれぞれカウンターの開口に取り付けられ、キャビネット本体の上面開口から挿入されて上部位置に配設されている。
【0017】
一方、シンク1の前側部分には、前板2を開閉可能に設けることにより、包丁等の収納部4が設けられている。
包丁等の収納部4は、下部を枢着することにより上開きに揺動開閉するよう設けられた前板2と、該前板2の内側に設けられた適宜の包丁等の支持体(図示省略)と、包丁等の支持体の周囲と後方を取り囲み、前板2を閉じることにより略密閉空間を形成するハウジング(図示省略)と、前板2を枢着する蝶番3とを備えている。
【0018】
包丁等の支持体は、公知であるため図示省略するが、例えば、包丁を斜めに保持する保持穴と、包丁の柄を支持する柄支持部とをそれぞれ複数備えた樹脂板からなり、数本の包丁を斜めに寝かした状態で収納することができる。
また、包丁等の支持体は、下部がハウジングに枢着されることにより、前板2を開いたときに前板側に揺動し、包丁の出し入れが容易になるように設けることが望ましい。
【0019】
前板2には、キッチンキャビネットの他の部分の前板と同様に厚みのある木や樹脂板が使用されており、キッチンキャビネットの風合いや色調を統一している。
なお、前板2には、ハウジングの一部と係合することにより、前板2を閉じた状態に保持するロック装置(図示省略)が設けられている。
【0020】
前板2を枢着する蝶番3は左右一対で構成されており、前板2に固定される前板側の羽根板31と、キャビネット本体に固定される固定側の羽根板33と、これら前板側の羽根板31と固定側の羽根板33とを軸筒部34を介して揺動可能に連結する軸芯32とを備えている。
固定側の羽根板33は略水平に設けられ、該羽根板33の側端部から外フランジ35が立設されるとともに、前板側の羽根板31の側端部からは、該外フランジ35に沿うように内フランジ36が延設されている。
そして、この内フランジ36及び外フランジ35には、前板2の開閉角度を制限するガイド溝36aと該ガイド溝36a内を摺動する突起35aとが設けられている。
【0021】
この蝶番3は、軸芯32の一端に大径の頭部32aを形成するとともに、固定側の羽根板33に、軸芯32を挿入した位置で該頭部32aが軸芯32の弾性を利用して強制嵌合する切り欠いた溝状の凹部33aを形成している。
また、蝶番3は、金属板に所定幅の長溝を形成するとともに、該長溝を境に金属板を内側に折り曲げてプレス加工することにより、長溝を筒穴にして軸筒部34を形成している。
また、本実施例においては、軸芯32を1本の軸で構成したが、軸芯32の軸長が長くなる場合等には、図7に示す変形例のように、軸芯32を2本の軸で構成し、対向する方向から軸筒部34に挿入するようにすることもできる。
【0022】
かくして、本実施例のキッチンキャビネットは、シンク1の前板2の下部を蝶番3で枢着することにより前板2を揺動開閉可能に設け、該前板2の内側に包丁等の収納部4を設けたキッチンキャビネットにおいて、前記蝶番3の前板側の羽根板31を軸芯32からシンク1側にオフセットするとともに、該オフセットした羽根板31を前板2の裏面に固定することから、シンク1の収納部4の前板2として、キッチンキャビネットの他の前板と同じく厚みのある木や樹脂板を使用することができ、これにより、キッチンキャビネットの前面の風合いや色調を統一することができる。
【0023】
この場合、固定側の羽根板33を略水平に設け、該羽根板33の側端部から外フランジ35を立設するとともに、前板側の羽根板31の側端部から該外フランジ35に沿って内フランジ36を延設し、該内フランジ36及び外フランジ35に、前板2の開閉角度を制限するガイド溝36aと該ガイド溝36a内を摺動する突起35aとを設けることにより、前板2の開閉角度を制限するための別部品を省略することができ、見栄えの向上を図るとともに、内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0024】
また、軸芯32の一端に大径の頭部32aを形成するとともに、一方の羽根板33に、軸芯32を挿入した位置で該頭部32aが強制嵌合する凹部33aを形成することにより、軸芯32の弾性を利用して挿入する一動作で蝶番3の組立を行うことができる。
【0025】
また、金属板に所定幅の長溝を形成するとともに、該長溝を境に金属板を内側に折り曲げてプレス加工することで蝶番3の軸筒部34を形成することにより、軸筒部34の外径を折り曲げた金属板と同じ厚みにすることができ、これにより、軸筒部34を目立たないようにしてキッチンキャビネットの意匠性を向上させることができる。
【0026】
以上、本発明のキッチンキャビネットについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のキッチンキャビネットは、シンクの収納部の前板として、キッチンキャビネットの他の前板と同じ厚みのある木や樹脂板を使用することができ、前面の風合いや色調を統一することができるという特性を有していることから、格調が高く高級感のあるキッチンキャビネットとして広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のキッチンキャビネットの一実施例を示す拡大斜視図である。
【図2】同斜視図である。
【図3】同キッチンキャビネットの前板を開いた状態を示す部分斜視図である。
【図4】同斜視図である。
【図5】同キッチンキャビネットの蝶番を示し、(a)〜(d)は前板側の羽根板の4面図、(e)は前板側の羽根板の揺動を示す側面図である。
【図6】同キッチンキャビネットの蝶番を示し、(a)〜(c)は固定側の羽根板の3面図、(d)は前板側羽根板のガイド溝と突起との嵌合示す側面図である。
【図7】同キッチンキャビネットの蝶番の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シンク
2 前板
3 蝶番
31 前板側羽根板
32 軸芯
32a 頭部
33 固定側の羽根板
33a 凹部
34 軸筒部
35 外フランジ
35a 突起
36 内フランジ
36a ガイド溝
4 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクの前板の下部を蝶番で枢着することにより前板を揺動開閉可能に設け、該前板の内側に収納部を設けたキッチンキャビネットにおいて、前記蝶番の前板側の羽根板を軸芯からシンク側にオフセットするとともに、該オフセットした羽根板を前板の裏面に固定したことを特徴とするキッチンキャビネット。
【請求項2】
固定側の羽根板を略水平に設け、該羽根板の側端部から外フランジを立設するとともに、前板側の羽根板の側端部から該外フランジに沿って内フランジを延設し、該内フランジ及び外フランジに、前板の開閉角度を制限するガイド溝と該ガイド溝内を摺動する突起とを設けたことを特徴とする請求項1記載のキッチンキャビネット。
【請求項3】
軸芯の一端に大径の頭部を形成するとともに、一方の羽根板に、軸芯を挿入した位置で該頭部が強制嵌合する凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のキッチンキャビネット。
【請求項4】
金属板に所定幅の長溝を形成するとともに、該長溝を境に金属板を内側に折り曲げてプレス加工することにより蝶番の軸筒部を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のキッチンキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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