説明

キネティクス及び機能発現が高められた突然変異形ヒドロラーゼ・タンパク質

本発明は、キネティクス及び機能発現が高められた突然変異形ヒドロラーゼ・タンパク質、並びにこの突然変異形タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びポリヌクレオチド及び突然変異形タンパク質を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月30日付けで出願された米国特許出願第60/855,237号明細書、及び2007月5月15日付けで出願された米国特許出願第60/930,201号明細書の出願日の優先権を主張する。これらの開示内容を参考のため本明細書中に引用する。
【背景技術】
【0002】
分子の特異的検出は、細胞中のその分子の役割を理解する上での要である。標識、例えば該当分子に共有結合された標識は、複合混合物中のその分子の即座の検出を可能にする。標識は、in vitroの化学合成によって加えられるか、又は、例えば組み換え技術を介してin vivoで付着された標識であってよい。例えば、タンパク質上への蛍光又はその他の標識の付着は伝統的には、タンパク質精製後のin vitro化学修飾によって達成されている(Hermanson, 1996)。標識のin vivo付着のためには、クラゲAequorea victoriaに由来する緑蛍光タンパク質(GFP)を多くの宿主タンパク質と遺伝子的に融合することにより、蛍光キメラをin situで生成することができる(Tsien, 1998; Chalfie他、1998)。しかしながら、GFPに基づくインジケータは種々のアッセイ、例えばpH(Kneen他、1998;Llopis他、1998;Miesenboeck他、1998)、Ca2+(Miyawaki他、1997; Rosomer他、1997)、及び膜電位(Siegel他、1997)の測定に現在採用されてはいるものの、固有に標識付けられたタンパク質の蛍光、例えばGFPは、タンパク質構造の特性、例えば限定された蛍光色範囲、及び比較的低い固有輝度により制限される(Cubitt他、1995; Ormo他、1996)。
【0003】
in situのGFP標識付けの欠陥に対処するために、Griffen他(1998)は、分子成分、すなわち僅か6つの天然型アミノ酸から成る小型受容体ドメインと、種々の分光プローブ又は架橋にリンクすることができる小型(<700ダルトン)の合成リガンドとの強束縛対を合成した。受容体ドメインは、α螺旋のi、i + 1、i + 4、及びi + 5位置に4つのシステインを含み、リガンドは4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン(FLASH)であった。Griffen他は、リガンドが、トランスフェクトされていない哺乳動物細胞内に比較的僅かな結合部位しか有しておらず、膜透過性であり、そして組み換えタンパク質内のテトラシステイン領域に高い親和性及び特異性をもって結合されるまでは非蛍光性であり、その結果、ナノモル以下の解離定数で蛍光標識付け(「FLASH」標識付け)された細胞をもたらすことを開示した。しかし、細胞内のバックグラウンド結合に関して、Stroffekova他(2001)は、FLASH-EDT2が、内生的なシステイン豊富タンパク質に非特異的に結合することを開示している。さらに、FLASHによるタンパク質の標識付けは、使用し得るフルオロフォアの範囲によって制限される。
【0004】
受容体媒介型の標的法は、標的にされたタンパク質が適正に折り畳み可能であることを条件として、事実上いかなる細胞部位にもフルオロフォアをローカライズさせるために、遺伝子的にコードされた標的配列を使用する。例えば、Farinas他(1999)は、細胞内の特定部位に対する単鎖抗体(sFv)を標的とするために、cDNAトランスフェクションを用いたことを開示している。Farinas他は、ハプテン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン、phOx)と蛍光プローブ(例えばBODIPY F1,テトラメチルローダミン、及びフルオロセイン)との複合体が、高い親和性(約5nM)をもって、生きているチャイニーズハムスター卵巣細胞内のsFVに対応する細胞内部位と結合されたことを開示して、標的抗体が、細胞透過性ハプテン−フルオロフォア複合体のための高親和性受容体として機能することを示した。とはいうものの、還元環境において機能sFv発現が比較的乏しいことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、必要なのは、所望の分子を標識付けするための改善された方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
或るタンパク質は種々のin vivo用途には効果的であるのに対して、これらのタンパク質は、E. coli及び無細胞発現系における機能発現レベルに起因して、in vitro用途(例えばプルダウン)にとっては最適とはいえないことがある。本発明は、改善された蛍光偏光(FP)信号によって検出して、種々の系において改善された機能発現を呈し、また、活性タンパク質(基質標識付け)及び総タンパク質によって測定して、向上したタンパク質生成を呈する突然変異形ヒドロラーゼ配列を提供する。また、改善された固有結合キネティクスを有する突然変異形ヒドロラーゼ・タンパク質をもたらす配列も記載される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、例えば共有結合又はその他の安定な結合を介して、1又は複数の官能基を、本発明のタンパク質又は本発明のタンパク質を含む融合タンパク質(キメラ)に連結(リンク)するための方法、組成物、及びキットを提供する。本発明のタンパク質(突然変異形ヒドロラーゼ)は構造的には、野生型(天然型)ヒドロラーゼに関連するが、しかし、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば改善された機能発現又は改善された結合キネティクスをもたらすアミノ酸置換を含み、そしていくつかの実施態様の場合、少なくとも2つのアミノ酸置換、例えばヒドロラーゼ基質との安定な結合の形成をもたらす1つのアミノ酸置換と、対応する野生型ヒドロラーゼに対して改善された機能発現、改善された結合キネティクス、又はその両方をもたらす少なくとも1つの他のアミノ酸置換とを含む。上述の連結は、反応基を含みそして1又は複数の官能基を含むように修飾されたヒドロラーゼに対する基質を採用することにより、例えば溶液又は懸濁液中、細胞内、固形支持体上、又は溶液/表面の界面で発生する。
【0008】
1実施態様の場合、対応する野生型ヒドロラーゼに対する突然変異形ヒドロラーゼのアミノ酸配列同一性は、少なくとも80%又はそれよりも高く、例えば少なくとも約85%、90%、95%又は98%であるが、しかし100%未満であり、すなわち突然変異形ヒドロラーゼは複数の置換を含む。1実施態様の場合、SEQ ID No:1に対する突然変異形ヒドロラーゼのアミノ酸配列同一性は、少なくとも80%又はそれよりも高く、例えば少なくとも約85%、90%、95%又は98%であるが、しかし100%未満である。これらの置換は、安定な結合の形成、及び改善された機能発現及び/又は結合キネティクスを提供する置換、並びに、置換に対して耐性の領域、すなわち、本発明の突然変異形ヒドロラーゼの機能を変えない領域内の置換を含む。従って、1つの実施態様において、本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、ここでは1つのアミノ酸置換が、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定な基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼをもたらす。1つの置換は、対応する野生型ヒドロラーゼ中で対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連するアミノ酸残基、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置する。別の置換は、例えば基質との安定な結合の形成をもたらす置換だけを有する突然変異形ヒドロラーゼと比較して、突然変異形ヒドロラーゼの機能発現、結合キネティクス、又はその両方を改善する残基に位置する。
【0009】
1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定な基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼをもたらす1つのアミノ酸置換を有しており、ここで置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置する。1実施態様の場合、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連するアミノ酸残基における置換は、SEQ ID No:1の位置272に相当する位置における置換である。1実施態様の場合、基質とエステル中間体を形成するアミノ酸残基における置換は、SEQ ID No:1の位置106に相当する位置における置換である。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、SEQ ID No:1の位置272に相当する位置、及びSEQ ID No:1の位置106に相当する位置に置換を有している。対応する野生型ヒドロラーゼと比較して安定な結合の形成を可能にする置換を有する対応突然変異形ヒドロラーゼに対して改善された発現又は結合キネティクスを提供する突然変異形ヒドロラーゼ中の置換は、下記位置のうちの1又は複数の位置に置換を含む:SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 175, 176, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 282, 291又は292に相当する位置。突然変異形ヒドロラーゼはこのように、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置(これらのうちの少なくとも1つが、改善された発現又は結合キネティクスを与える)における複数の置換を含む、複数の置換を有していてよく、また、置換に対して耐性の位置に、更なる置換を含んでいてもよい。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはこのように、位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置における複数の置換を含む、複数の置換を有していてよい。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成される結合よりも安定なデハロゲナーゼ基質との結合を形成する突然変異デハロゲナーゼをもたらす、SEQ ID No:1の位置106及び/又は272に相当する位置における複数の置換、例えば少なくとも5、10、15個の、しかし60個未満、例えば50個以下の置換と、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 175, 176, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 282, 291又は292に相当する位置(これらの位置のうちの少なくとも1つ、例えば位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292のうちの1又は複数の位置が、改善された発現又は結合キネティクスを与える)、並びに置換に対して耐性の他の位置の複数の置換を含んでよい、複数の置換、例えば少なくとも5、10、15個の、しかし60個未満の置換とを有する突然変異デハロゲナーゼである。
【0010】
1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも3つのアミノ酸置換を有している。2つのアミノ酸置換は、
対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合よりも安定な基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼをもたらし、この場合一方の置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置しており、そして他方の置換は、基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。少なくとも1つの他の置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 175, 176, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成される結合よりも安定なデハロゲナーゼ基質との結合を形成する突然変異デハロゲナーゼをもたらす、SEQ ID No:1の位置106及び/又は272に相当する位置における置換を含む、複数の置換、例えば少なくとも5、10、15個の、しかし60個未満、例えば25個未満又は50個未満の置換を有する突然変異デハロゲナーゼである。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはこのように、位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置における複数の置換を含む複数の置換を有していてよい。突然変異デハロゲナーゼはまた、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 175, 176, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 282, 291又は292に相当する位置(これらの位置のうちの少なくとも1つ、例えば位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292のうちの1又は複数の位置が、改善された発現又は結合キネティクスを与える)の他の位置の複数の置換、例えば少なくとも5、10、15個の、しかし25個未満、例えば20個未満の置換を含む。
【0011】
本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、N末端の1又は複数のアミノ酸置換、例えば或る制限部位を有するようにヌクレオチド配列を変化させることから生じるもの、又はC末端の1又は複数のアミノ酸置換及び1又は複数の付加残基(「テイル」)、例えば或る制限部位を有するようにヌクレオチド配列を変化させることから、又は対応する野生型ヒドロラーゼに対して発現を改善するように選択することから生じるものを含んでよい。例えば、テイルは、このテイルを有する突然変異形ヒドロラーゼの活性がほとんど変わらない限り、例えばテイル無しの対応突然変異形ヒドロラーゼに対する活性減少率が10%、25%、又は50%以下である限り、最大70又は80個のアミノ酸残基を含んでよい。
【0012】
突然変異形ヒドロラーゼは、融合タンパク質、例えば突然変異形ヒドロラーゼ及び少なくとも1つの注目のタンパク質をコードする組み換えDNAから発現された融合タンパク質、又は化学合成によって形成された融合タンパク質であってよい。例えば、融合タンパク質は、突然変異形ヒドロラーゼと該当酵素、例えばルシフェラーゼ、RNasin、又はRNase、及び/又はチャネル・タンパク質、例えばイオンチャネル・タンパク質、受容体、膜タンパク質、サイトゾル・タンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、リン・タンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリア・タンパク質、受容体関連タンパク質、蛍光タンパク質、酵素基質、転写因子、選択可能なマーカータンパク質、核酸結合タンパク質、細胞外マトリックス・タンパク質、分泌タンパク質、受容体リガンド、血清タンパク質、反応性システインを有するタンパク質、輸送タンパク質、及び/又は標的配列、ミリスチル化部位、ミトコンドリア局在配列、又は突然変異形ヒドロラーゼを例えば特定部位に向ける核局在配列を含んでよい。注目のタンパク質は、突然変異形ヒドロラーゼのN末端又はC末端に融合されていてよい。1実施態様の場合、融合タンパク質は、N末端における注目のタンパク質、及び別のタンパク質、例えば突然変異形ヒドロラーゼのC末端における異なるタンパク質を含む。例えば注目のタンパク質は、蛍光タンパク質又は抗体であってよい。
【0013】
任意には、融合体におけるタンパク質はコネクタ配列によって、例えば好ましくは少なくとも2つのアミノ酸残基を有するコネクタ配列(例えばアミノ酸残基数13〜最大40又は50)によって分離される。本発明の融合タンパク質内のコネクタ配列の存在は、おそらくコネクタ配列が融合体内の各タンパク質にフレキシビリティ(自律性)を提供することにより、それぞれ個々のタンパク質の機能に対して融合体内のいずれのタンパク質の機能もほとんど変化させることはない。例えば、基質とRenillaルシフェラーゼとの安定な結合の形成をもたらす少なくとも1つの置換を有する突然変異デハロゲナーゼの融合体の場合、コネクタ配列の存在は、突然変異デハロゲナーゼとその基質との間に形成された結合の安定性、又はルシフェラーゼの活性をほとんど変化させることはない。さらに、1つの実施態様の場合、コネクタ配列は、融合体内の両タンパク質の一方又は両方の機能発現又は結合キネティクスを減少させることはほとんどなく、増大させることがある。融合体内のタンパク質のいずれの具体的な組み合わせの場合にも、種々様々なコネクタ配列を採用することができる。1つの実施態様の場合、コネクタ配列は、酵素によって認識される配列であるか、又は光切断可能である。1実施態様の場合、コネクタ配列は、プロテアーゼ認識部位を含む。
【0014】
また、ヒドロラーゼ、例えば本発明の突然変異形ヒドロラーゼをコードする核酸配列を含む単離核酸分子(ポリヌクレオチド)も提供される。さらに、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと突然変異形ヒドロラーゼのN末端及び/又はC末端における1又は複数のアミノ酸残基とを含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含む単離核酸分子も提供される。1実施態様の場合、コードされた融合タンパク質は、少なくとも2つの異なる融合相手を含み、1つは、精製のための配列、融合タンパク質の残りの特性を変化させるように意図された配列、例えばタンパク質不安定化配列、又は区別可能な特性を有する配列であってよい。1実施態様の場合、単離核酸分子は、少なくとも1つの選択された宿主中の発現のために最適化された核酸配列を含む。最適化された配列は、コドン最適化された配列、すなわち、別の生物、例えば遠縁生物に対して1つの生物においてより頻繁に採用されるコドン、並びにKozak配列及び/又はイントロンを付加又は修飾するための、及び/又は望ましくない配列、例えば潜在的な転写因子結合部位を除去するための修飾形を含む。1実施態様の場合、ポリヌクレオチドは、デハロゲナーゼをコードする核酸配列を含む。この核酸配列は、選択された宿主細胞中で発現するように最適化される。1実施態様の場合、最適化されたポリヌクレオチドは、対応非最適化配列ともはやハイブリッド形成せず、例えば中又は高緊縮性条件下で非最適化配列とハイブリッド形成することはない。別の実施態様の場合、ポリヌクレオチドは、対応非最適化配列に対する核酸配列同一性が90%未満、例えば80%未満であり、そして任意には、非最適化配列によってコードされたポリペプチドと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、又は90%以上のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。核酸配列の最適化は当業者に知られており、例えば国際公開第02/16944号パンフレットを参照されたい。本発明の単離核酸分子、例えば最適化ポリヌクレオチドは、コードされたタンパク質を発現させるように、in vitro転写/翻訳反応物又は宿主細胞に導入することができる。
【0015】
構築物、例えば発現カセット、及び単離核酸分子、例えば最適化ポリヌクレオチドを含むベクター、並びに、構築物を有する宿主細胞、及び単離核酸分子又は1又は複数の構築物又はベクターを含むキットも提供される。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞、例えば植物又は脊椎動物細胞、例えば哺乳動物細胞(、一例としてヒト、ヒト以外の霊長類、犬、猫、牛、馬、羊、又は齧歯類(例えばウサギ、ラット、フェレット、又はマウス)細胞が挙げられる)を含む。好ましくは、発現カセットは、核酸分子に作用結合されたプロモーター、例えば構成的プロモーター又は調節性プロモーターを含む。1実施態様の場合、発現カセットは、誘導性プロモーターを含有する。1実施態様の場合、本発明は、突然変異デハロゲナーゼを有する融合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターを含んでいる。
【0016】
本発明において有用な基質は、突然変異形ヒドロラーゼによって特異的に結合され、また好ましくは突然変異形ヒドロラーゼのアミノ酸、例えば反応性残基との結合をもたらす基質であり、この結合は、基質と、野生型ヒドロラーゼの対応アミノ酸との間に形成された結合よりも安定である。突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼによって特異的に結合され得る基質に特異的に結合するが、1実施態様の場合、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との反応によって生成物の形成をもたらす条件下では、突然変異形ヒドロラーゼと基質との相互作用から生成物は形成されないか、又は相当少ない生成物しか、例えば2分の1、10分の1、100分の1、又は1000分の1の生成物しか形成されない。1実施態様の場合、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合の半減期(すなわちt1/2)は、対応する野生型ヒドロラーゼによって生成物の形成をもたらす条件下で対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間で形成される結合のt1/2の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、又は10倍、そして最大で100倍、1000倍、又は10,000倍である。好ましくは、突然変異形ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合のt1/2は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも4時間、そして最大で少なくとも10時間であり、この結合は、洗浄、タンパク質変性剤、及び/又は高温による破壊に対して抵抗性があり、例えばこの結合はSDS中の煮沸に対して安定である。1つの実施態様の場合、基質は、デハロゲナーゼ、例えばハロアルカン・デハロゲナーゼ、又は脂肪族又は芳香族ハロゲン化基質内の炭素−ハロゲン結合を切断するデハロゲナーゼに対する基質、例えばRhodococcus, Staphylococcus, Pseudomonas, Burkholderia, Agrobacterium又はXanthobacterデハロゲナーゼに対する基質、又はセリン・ベータラクタマーゼに対する基質である。
【0017】
1実施態様の場合、本発明の基質は任意には、基質内の反応基から1又は複数の官能基を物理的に分離するリンカーを含む。例えば、いくつかの突然変異形ヒドロラーゼ、すなわち深い触媒ポケットを有する突然変異形ヒドロラーゼの場合、本発明の基質は、本発明の基質の1又は複数の官能基がヒドロラーゼ(野生型又は突然変異形)の3D構造を妨害しないように十分な長さ及び構造を有するリンカーを含むことができる。
【0018】
本発明はまた、リンカーを含むヒドロラーゼに対する基質、1又は複数の官能基及び任意にはリンカーを含むヒドロラーゼに対する基質、1又は複数の官能基を含むリンカー、1又は複数の官能基を欠き、そして任意にはリンカーを含むヒドロラーゼに対する基質、リンカー、又は突然変異形ヒドロラーゼ、又はこれらの任意の組み合わせを含む組成物及びキットを含む。例えば、本発明は、突然変異形ヒドロラーゼの基質を含む固形支持体、本発明の突然変異形ヒドロラーゼ又はその融合体を含む固形支持体、本発明の突然変異形ヒドロラーゼ又はその融合体をコードするベクターを含むキットを含む。
【0019】
本発明の基質及び突然変異形ヒドロラーゼは、該当分子を単離、検出、同定、画像化、表示、又はローカライズし、生細胞画像化を含めて細胞を標識付けし、又はin vitro及び/又はin vivoでタンパク質を標識付けするのに有用である。例えば、固形支持体に結合された突然変異形ヒドロラーゼの基質、又は固形支持体に結合された突然変異形ヒドロラーゼを使用することにより、タンパク質アレイ、細胞アレイ、ベシクル/オルガネラ・アレイ、遺伝子アレイ、及び/又は細胞膜アレイを生成することができる。1実施態様の場合、本発明は、該当分子を単離するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1つが本発明の突然変異形ヒドロラーゼと任意には該当分子に予め結合されたタンパク質とを含む1又は複数の融合タンパク質を含む試料、及び1又は複数のヒドロラーゼ基質を有する固形支持体を用意することを含む。試料と固形支持体とを接触させることにより、該当分子を単離する。
【0020】
さらに、本発明の突然変異形ヒドロラーゼを発現させる方法も提供される。この方法は、宿主細胞又はin vitro転写/翻訳反応物に、本発明の突然変異形ヒドロラーゼをコードする組み換え核酸分子を導入することにより、突然変異形ヒドロラーゼを発現させることを含む。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、細胞又は反応から単離することができる。突然変異形ヒドロラーゼは、過渡的に又は安定的に、構成的に、又は組織特異的プロモーター又は薬物調節型プロモーターなどのもとで発現させることができる。また、本発明の突然変異形ヒドロラーゼをコードする組み換え核酸分子を含む単離宿主細胞も提供される。
【0021】
1実施態様の場合、本発明は、突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する方法を提供する。この方法は、本発明の突然変異形ヒドロラーゼを、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させることを含む。官能基の存在又は量を検出又は測定し、これにより突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは細胞の表面内又は表面上にある。別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、細胞溶解物内にある。さらに別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、in vitro転写/翻訳反応生成物である。
【0022】
さらに、注目のタンパク質又は分子を単離するための方法も提供される。1実施態様の場合、この方法は、少なくとも1つが突然変異形ヒドロラーゼと注目のタンパク質とを含む1又は複数の融合タンパク質を含む試料、及び1又は複数のヒドロラーゼ基質を含む固形支持体を用意することを含む。突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を有しており、ここでは1つのアミノ酸置換が結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、そして置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせるアミノ酸の置換を有しており、この置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。突然変異形ヒドロラーゼはまた、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する1又は複数の位置に置換を含む。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはこうして、位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置における複数の置換を含む、複数の置換を有していてよい。注目のタンパク質を単離するように、試料と固形支持体とを接触させる。1実施態様の場合、試料中の注目のタンパク質は、固形支持体との接触前に、該当分子に結合される。別の実施態様の場合、試料と固形支持体とを接触させた後、注目のタンパク質に結合する分子を有していると思われる混合物を添加する。
【0023】
また、例えば分子を単離するために、或いは、細胞中の或る特定の分子の位置、例えば細胞内、細胞下、又は細胞外の位置、又は運動の存在又は量を検出又は測定するために、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと、1又は複数の官能基を含む対応ヒドラーゼに対する基質とを使用する方法も提供される。例えば、注目のタンパク質に融合された突然変異デハロゲナーゼをコードするベクターが、細胞、細胞溶解物、in vitro転写/翻訳混合物、又は上澄みに導入され、そして官能基で標識付けされたヒドロラーゼ基質がこれに添加される。例えば、プロモーター、例えば調節性プロモーター、及び、該当分子と相互作用するタンパク質に融合される突然変異形ヒドロラーゼをコードする核酸配列を含むベクターと、細胞とを接触させる。1実施態様の場合、プロモーターが融合体の一時的発現を誘発する条件下で、トランスフェクト済細胞を培養し、次いで、官能基と関連する活性を検出する。
【0024】
本発明はこのように、細胞中のタンパク質の発現、位置、及び/又は運動(トラフィッキング)をモニタリングし、また試料、例えば細胞内部のミクロ環境の変化をモニタリングする方法を提供する。別の実施態様の場合、2対の突然変異形ヒドロラーゼ/基質を使用することにより、多重の同時的な検出、及びFRET又はBRETに基づくアッセイが可能になる。
【0025】
他の用途は、細胞の検出又は標識付けを含む。このように、本発明の突然変異形ヒドロラーゼ、及び本発明の対応基質を使用することにより、例えば、in vitroで細胞移動を検出し(例えば血管形成/走化性アッセイなど)、そして生細胞を画像化し、続いて免疫細胞化学分析することが可能になる。
【0026】
1実施態様の場合、本発明は細胞を標識付けする方法を提供する。この方法は、突然変異形ヒドロラーゼを含む細胞又はその溶解物を有する試料を、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させることを含む。突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を有しており、1つのアミノ酸置換が結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。1実施態様の場合、第2の置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、複数の置換例えば位置196又は272の置換に加えて、位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置に複数の置換を有する。試料中の官能基の存在又は量を検出又は測定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】図1Aは、DhaA.H272Fタンパク質の分子モデルを示す。螺旋キャップ領域は淡青色で示されている。α/βヒドロラーゼ・コア領域(濃青色)は触媒トリアド残基を含有している。キャップとコアとの領域界面近くの赤陰影付き残基は、H272F及びD106求核基を表す。黄陰影付き残基は、E130及びハロゲン化物キレート残基W107の位置を意味する。
【図1B】図1Bは、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼ(DhaA)タンパク質の配列を示している(Kulakova他、1997)(SEQ ID No:1)。触媒トリアド残基Asp(D)、Glu(E)、及びHis(H)には下線を引く。キャップ領域を形成する残基はイタリックで示す。ハロゲン化アルキル基質との共有結合を発生させることができるDhaA.H272F及びDhaA.D106Cタンパク質突然変異体は、触媒トリアドHis(H)及びAsp(D)残基の代わりにそれぞれPhe(F)及びCys(C)を含有する。
【図1C】図1Cは、DhaA.H272Fとハロゲン化アルキル基質とによる共有結合中間体形成のメカニズムを示す。Asp106によるハロゲン化物基の求核置換に続いて、共有結合エステル中間体が形成される。Phe残基によるHis272の置換は、水活性を防止し、そして共有中間体を捕捉する。
【図1D】図1Dは、DhaA.D106Cとハロゲン化アルキル基質とによる共有結合中間体形成のメカニズムを示す。Cys106チオレートによるハロゲン化物の求核置換は、加水分解に対して安定なチオエーテル中間体を発生させる。
【図1E】図1Eは、活性部位の活性状態にある共有結合カルボキシテトラメチルローダミン−C1021NO2−Clリガンドを有するDhaA.H272F変化形の構造モデルを示す図である。キャップとコアとの領域界面近くの赤陰影付き残基は、H272F及びD106求核基を表す。黄陰影付き残基は、E130及びハロゲン化物キレート残基W107の位置を意味する。
【図1F】図1Fは、DhaA.H272F基質結合トンネルの構造モデルを示す図である。
【図2A】図2A〜Bは、DhaA.H272Fに対応する位置175, 176及び273における置換の配列(パネルA)、及びDhaA.D106Cに対応する位置175及び176における置換の配列(パネルB)を示す図である。
【図2B】図2Aに同じ。
【図3】図3は、本発明の範囲に含まれる突然変異デハロゲナーゼの配列の例を示す図である(SEQ ID No:12-16)。2つの付加的な残基が、クローニングの結果として3’末端(Gln-Tyr)でコードされている。2つの付加的な残基に対応するコドンを有する核酸分子をコードする突然変異デハロゲナーゼは、これらの残基のない突然変異デハロゲナーゼと同様の、又はこれよりも高いレベルで発現される。
【図4】図4は、HT2のヌクレオチド(SEQ ID No:20)及びアミノ酸(SEQ ID No:21)配列を示す図である。記載の制限部位は、機能性N末端融合体及びC末端融合体の生成を容易にするために組み入れられる。C末端残基Ala-GlyをValで置換することができる。
【図5】図5は、E. coli内の当該置換を有するDhaA突然変異体の機能発現を改善する付加的な置換を示す図である。
【図6】図6は、E. coli内のN末端融合体として発現された突然変異デハロゲナーゼ「V7」のTMRリガンド標識付け及びキネティクスを示す図である(SEQ ID No:16、すなわち「V6」と同一の配列を有するSEQ ID No:19、ただし、SEQ ID No:17におけるC末端残基は、SEQ ID No:16におけるものとは異なることを除く。図8参照)。
【図7】図7は、ウサギの網状赤血球転写/翻訳反応におけるV7に関する発現データを示す図である。
【図8】図8は、HT及びV7(SEQ ID No:2)のC末端のアラインメントを示す図である。
【図9】図9は、小麦胚芽転写/翻訳反応におけるV7の機能発現を示す図である。
【図10】図10は、HeLa細胞におけるin vivo標識付けを示す図である。
【図11】図11は、HT2に対するV7の特性をまとめた図である。
【図12】図12は、プルダウン・アッセイから生じた結果を示す図である。
【図13】図13は、精製されたタンパク質を使用して、TMR-リガンド及びFAM-リガンドに関する二次速度定数データを要約する図である。データは、FPを使用して経時的に標識付けを追跡することにより生成された。
【図14】図14は、選択されたタンパク質に関する種々の温度における残留活性を示す図である。タンパク質を30分間にわたって指示温度に曝露し、次いでFPによってFAM-リガンド結合に関して分析した。各タンパク質が高温に対する曝露なしの状態で有する活性量に対して正規化された残留活性として、データを表す。
【図15A】図15は、室温で一晩にわたって尿素(A)又はグアニジン−HCl(B)の存在において測定されたDhaA突然変異体(320nM)の安定性を示す図である。
【図15B】図15Aに同じ。
【図16】図16は、TMRリガンドを有する種々のDhaA突然変異体の標識付けキネティクスを示す図である。
【図17】図17は、FAMリガンドを有する種々のDhaA突然変異体の標識付けキネティクスを示す図である。
【図18】図18は、2つのDhaA突然変異体の標識付け速度の比較を示す図である。
【図19】図19は、種々のDhaA突然変異体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示す図であり、これらの配列は、C末端(N融合体)にテイルを有するか又はN末端(C融合体)の位置1又は2に置換を有するものを含む(HT2、SEQ ID No:18はSEQ ID No:17によってコードされており;V2n、SEQ ID No:22はSEQ ID No:32によってコードされており;V3n、SEQ ID No:23はSEQ ID No:33によってコードされており;V4n、SEQ ID No:24はSEQ ID No:34によってコードされており;V5n、SEQ ID No:25はSEQ ID No:35によってコードされており;V6n、SEQ ID No:26はSEQ ID No:36によってコードされており;V7n、SEQ ID No:27はSEQ ID No:37によってコードされており;V2c、SEQ ID No:42はSEQ ID No:52によってコードされており;V3c、SEQ ID No:43はSEQ ID No:53によってコードされており;V4c、SEQ ID No:44はSEQ ID No:54によってコードされており;V5c、SEQ ID No:45はSEQ ID No:55によってコードされており;V6c、SEQ ID No:46はSEQ ID No:56によってコードされており;V7n、SEQ ID No:47はSEQ ID No:57によってコードされている)。SEQ ID No:48, 49, 28及び29は、代表的なコネクタ配列である。SEQ ID No:60-65は、最小(テイルなし)突然変異体DhaA配列の残基1-293を表し、またSEQ ID No:66-71は、C末端置換及びテールを有する突然変異体DhaA配列を表す。
【図20】図20は、トランスフェクション後の種々の時点におけるp65-突然変異体DhaA融合タンパク質の検出を示す図である(細胞−ゲル間分析)。HeLa細胞に種々異なる時間にわたって、p65-HT2(緑)、p65-V3(ピンク)、p65-V7(青/白)、p65-V7F(黄)を一時的にトランスフェクトし、TMRリガンド(15分間にわたって5μM)で標識付けし、溶解し、そしてfluorimager Typhoone-9400上で分析した。なおV7tは、63アミノ酸テイル(eisggggsggggsggggenlyfqaielgtrgssrvdlqacklirlltkperklswllpplsnn;SEQ ID No:72)を伴うV7の配列を有する突然変異体DhaAである。
【図21】図21は、トランスフェクション後の種々の時点におけるp65-突然変異体DhaA融合タンパク質の検出を示す図である(ウェスタン・ブロット分析)。HeLa細胞に、p65-HT2(緑)、p65-V3(ピンク)、p65-V7(青/白)、p65-V7F(黄)を一時的にトランスフェクトし、溶解し、そしてp65 AB(上側パネル)及びIkB AB(下側パネル)でプローブした。
【図22】図22は、塩中の標識付けキネティクスの依存を示す図である。FAMリガンド(7.5nM)に対するV7(16.5nM)の標識付けを、20mM HEPES pH7.2+0〜2M NaCl中で測定し、計算した。塩濃度と標識付け速度との間には正の相関関係があった。
【図23】図23は、標識付きキネティクスに対するpHの影響を示す図である。緩衝剤は、25mMの酢酸ナトリウム(有効緩衝範囲pH3.6〜5.6)、25mMのMES(pH5.5〜6.7)、50mMのTris(pH7.0〜9.0)、及び150mMのNaClを含んだ。酸性調節:酢酸、アルカリ調節:水酸化テトラメチルアンモニウム。
【図24】図24は、標識付けキネティクスに対するDTTの影響を示す。<1mMの濃度のDTTは、標識付けキネティクスに対して影響を及ぼさないのに対して、>1mMの濃度のDTTは、標識付けキネティクスを阻害した。
【図25】図25は、標識付けキネティクスに対するジギトニンの影響を示す図である。
【図26】図26は、標識付けキネティクスに対する非イオン性洗剤の影響を示す図である。
【図27】図27は、標識付けキネティクスに対するカチオン性洗剤の影響を示す図である。
【図28】図28は、標識付けキネティクスに対するアニオン性洗剤の影響を示す図である。
【図29】図29は、標識付けキネティクスに対する両性イオン性洗剤の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中に使用される「基質」は、反応基及び任意には1又は複数の官能基を有する基質を含む。1又は複数の官能基を含む基質は、本明細書中では本発明の基質と全般的に呼ばれる。基質、例えば本発明の基質は任意には、基質内の反応基から1又は複数の官能基を物理的に分離するリンカー、例えば切断可能リンカーを含んでもよく、1実施態様の場合、リンカーは好ましくは12〜30原子長である。リンカーは、本発明の基質内にいつも存在するわけではないが、しかしいくつかの実施態様の場合、反応基が突然変異形ヒドロラーゼ内の反応性残基と相互作用することにより共有結合を形成することができるように、反応基と官能基との物理的分離が必要とされることがある。好ましくは、存在するならば、リンカーは、野生型又は突然変異形ヒドロラーゼに対する、このリンカーを欠く対応基質の特異性又は反応性と比較して、野生型又は突然変異形ヒドロラーゼに対する、このリンカーを有する基質の特異性又は反応性を著しく変化させることはなく、例えば著しく損なうことはない。さらに、リンカーの存在は好ましくは、官能基の1又は複数の特性、例えば機能を著しく変化させることはなく、例えば著しく損なうことはない。例えば、いくつかの突然変異形ヒドロラーゼの場合、すなわち深い触媒ポケットを有する突然変異形ヒドロラーゼの場合、本発明の基質は、本発明の基質の1又は複数の官能基がヒドロラーゼ(野生型又は突然変異形)の3D構造を妨害しないように十分な長さ及び構造を有するリンカーを含むことができる。基質は2つ又は3つ以上の区別可能な官能基を有していてよい。
【0029】
本明細書中に使用される「官能基」は、検出され得る又は検出能力のある分子、例えば直接的又は間接的な手段(例えば光活性可能な分子、ジゴキシゲニン、ニッケルNTA(ニトリロ三酢酸)、クロモフォア、フルオロフォア、又はルミノフォア)によって測定することができる分子は、第2分子(例えばビオチン、ハプテン、又は架橋基)に結合又は付着することができ、又は固形支持体であってもよい。官能基は、検出することが可能であり、そして別の分子に結合されることが可能であるというような2つ以上の特性を有していてよい。
【0030】
本明細書中に使用される「反応基」は、本発明の特定の野生型又は突然変異形ヒドロラーゼによって特異的に認識される基質内の最小数の原子である。基質内の反応基と野生型ヒドラーゼとの相互作用は、生成物と野生型ヒドロラーゼの再生をもたらす。
【0031】
本明細書中に使用される「異種」核酸配列又はタンパク質という用語は、基準配列に対して異なる源を有する配列、例えば外来種を起源とする配列を意味するか、又は同じ種に由来する場合には、これは元の形態から実質的に改変されていてよい。
【0032】
本明細書中に使用される「融合ポリペプチド」という用語は、異なるタンパク質、例えば突然変異形ヒドロラーゼに接合された注目のタンパク質(例えばルシフェラーゼ、親和性タグ、又は標識配列)を含有するキメラタンパク質を意味する。
【0033】
「求核基」は、電子を供与する分子である。
【0034】
本明細書中に使用される「マーカー遺伝子」又は「レポーター遺伝子」は、その遺伝子を発現する細胞に、区別可能な表現型を与え、ひいては、その遺伝子を有する細胞が、遺伝子を有していない細胞から区別されるのを可能にする遺伝子である。このような遺伝子は、マーカーが、化学的手段によって、すなわち選択剤(例えば除草剤、又は抗生物質など)の使用によって「選択する」ことができる形質を与えるのか、又はマーカーが単に、観察又は試験によって、すなわち「スクリーニング」によって同定することができる「レポーター」形質であるのかかに応じて、選択可能なマーカー又はスクリーニング可能なマーカーをコードすることができる。本開示の要素は、具体的なマーカー遺伝子の使用によって詳細に例証される。もちろん、好適なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子の多くの例が当業者に知られており、本発明の実施に際して採用することができる。従って、言うまでもなく、下記考察は網羅的なものではなく一例に過ぎない。本明細書中に開示された技術、及び当業者に知られている一般的な組み換え技術に照らして、本発明は、任意の遺伝子の変更を可能にする。neo遺伝子、β-gal遺伝子、gus遺伝子、cat遺伝子、gpt遺伝子、hyg遺伝子、hisD遺伝子、ble遺伝子、mprt遺伝子、bar遺伝子、ニトリラーゼ遺伝子、ガラクトピラノシド遺伝子、キシロシダーゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、アラビノシダーゼ遺伝子、突然変異形アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)又はアセト酸シンターゼ遺伝子(AAS)、メトトレキサート耐性dhfr遺伝子、ダラポン・デハロゲナーゼ遺伝子、5−メチルトリプトファンに耐性を与える突然変異形アントラニル酸シンターゼ遺伝子(国際公開第97/26366号パンフレット)、R座遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、xylE遺伝子、α−アミラーゼ遺伝子、チロシナーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ(luc)遺伝子(例えばRenilla reniformisルシフェラーゼ遺伝子、蛍ルシフェラーゼ遺伝子、又はコメツキムシ・ルシフェラーゼ(Pyrophorus plagiophthalamus)遺伝子、エクリオン遺伝子、赤蛍光タンパク質遺伝子、又は緑蛍光タンパク質遺伝子を含む、修飾型レポーター遺伝子を含む核酸分子によって、例示の修飾レポータータンパク質がコードされる。選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子の範囲には、「分泌可能なマーカー」をコードする遺伝子も含まれる。この分泌可能なマーカーの分泌は、形質転換細胞を同定又は選択する手段として検出することができる。その一例として、抗体相互作用によって同定することができる分泌可能な抗原、又は触媒活性によって検出することができる分泌可能な酵素をコードするマーカーが挙げられる。分泌可能なタンパク質は、例えばELISAによって検出可能な小型の拡散可能なタンパク質、及び細胞膜内に挿入又は捕捉されたタンパク質を含む数多くのクラスに入る。
【0035】
「選択可能なマーカータンパク質」は、さもなければ必須栄養素であるはずのものを欠いている培地内で成長する能力を細胞に与える酵素活性をコードするか(例えば酵母細胞中のTRPI遺伝子)、又は抗生物質又は他の薬物を有する培地内で成長する能力を細胞に与える。すなわち、細胞内の選択可能なマーカータンパク質をコードする遺伝子の発現は、その遺伝子のない対応細胞と比較して、抗生物質又は薬物に対する耐性をその細胞に与える。宿主細胞が、選択的な培地内で成長するために、選択可能なマーカーを発現させなければならない場合、マーカーは正の選択可能なマーカーであると言われる(例えば適切な抗生物質の存在において成長する能力を与える抗生物質耐性遺伝子)。特定の遺伝子(例えば、発現すると、5%スクロースを含有する培地内で細菌宿主細胞を殺すsacB遺伝子)を含有する宿主細胞に対して選択するために、選択可能なマーカーを使用することもでき、このように使用される選択可能なマーカーは、負の選択可能なマーカー又は対向選択可能なマーカーと呼ばれる。一般的な選択可能なマーカー遺伝子配列は、抗生物質、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、プロマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ヒグロマイシン、ネオマイシン、及びZeocin(登録商標)などに対する耐性のための配列を含む。選択可能な栄養要求性遺伝子配列は、例えばhisDを含む。hisDは、ヒスチジノールの存在におけるヒスチジン無しの培地内での成長を可能にする。好適な選択可能なマーカー遺伝子は、ブレオマイシン耐性遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、ヒグロマイシンB−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、AURI遺伝子、アデノシン・デアミナーゼ遺伝子、アミノグリコシド・ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、チミジン・キナーゼ遺伝子、及びキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子などを含む。
【0036】
本明細書中に使用される「核酸」は、ヌクレオチドの共有結合配列であって、1つのヌクレオチドのペントースの3’位置がホスホジエステル基によって次のヌクレオチドのペントースの5’位置に接合されており、そしてヌクレオチド残基(塩基)が特定の配列を成して、すなわちヌクレオチドの線形順序を成して連結されているものであり、これらの類似物、例えば1又は複数の修飾塩基、糖、及び/又はリン酸骨格を有するものを含む。本明細書中に使用される「ポリヌクレオチド」は、約100を上回るヌクレオチド長の配列を含有する核酸である。本明細書中に使用される「オリゴヌクレオチド」又は「プライマー」は、短ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド部分である。本明細書中に使用される「オリゴヌクレオチド」又は「オリゴ」は、2又は3以上、好ましくは4以上、そして通常は11以上の、しかし250未満、好ましくは200未満のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドから成る分子として定義される。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写(RT)、又はこれらの組み合わせを含む任意の形式で発生させることができる。「プライマー」は、プライマー伸長が開始される条件下で配置されると、核酸合成のための開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドである。プライマーは、標的(鋳型)の特定配列に対してほぼ相補的な領域を3’末端上に有するように選択される。プライマーは、プライマー伸長が発生するように標的とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、標的の正確な配列を反映させる必要はない。例えば、プライマーの5’末端に非相補的なヌクレオチド・フラグメントが付着されていてよく、この場合、プライマー配列の残りは標的に対して実質的に相補的である。プライマー配列が、ハイブリッド形成するのに十分な標的配列との相補性を有することを条件として、非相補的な塩基又はより長い配列をプライマー内に散在させ、これによりプライマーの伸長生成物の合成のための複合体を形成することができる。遺伝子配列に対して一致する又は相補的なプライマーは、増幅反応、RT−PCRなどに使用することができる。
【0037】
核酸分子は、置換モノヌクレオチドのペントース環の5’炭素及び3’炭素に対して核酸ホスホジエステル結合が発生するので「5’末端」及び「3’末端」を有すると言われる。新しい結合が5’炭素に対して生じることになるポリヌクレオチドの末端は、その5’末端ヌクレオチドである。新しい結合が3’炭素に対して生じることになるポリヌクレオチドの末端は、その3’末端ヌクレオチドである。本明細書中に使用される末端ヌクレオチドは、3’又は5’末端の端位置のヌクレオチドである。
【0038】
DNA分子は、1つのモノヌクレオチド・ペントース環の5’ホスフェートが、ホスホジエステル結合を介して1つの方向におけるその隣の環の3’酸素に付着されるようにオリゴヌクレオチドを形成するためにモノヌクレオチドが反応させられるので、「5’末端」及び「3’末端」を有すると言われる。従って、その5’ホスフェートがモノヌクレオチド・ペントース環の3’酸素に結合されていない場合には「5’末端」と呼ばれ、そしてその3’酸素が後続のモノヌクレオチド・ペントース環の5’ホスフェートに結合されていない場合には「3’末端」と呼ばれる。
【0039】
本明細書中に使用される核酸配列は、より大型のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの内部にある場合でさえ、5’端部及び3’端部を有すると言うこともできる。線状又は円形DNA分子において、不連続な要素は、「上流」又は「下流」の5’にあると呼ばれるか、又は3’要素と呼ばれる。この用語は、DNA鎖に沿って5’から3’に向かう様式で転写が進む事実を反映している。典型的には、連鎖遺伝子(例えばオープン・リーディング・フレーム又はコーディング領域)の転写を導くプロモーター及びエンハンサー要素は、一般にコーディング領域の5’又は上流に配置されている。しかし、エンハンサー要素はプロモーター要素及びコーディング領域の3’に配置されているとしても効果を発揮することができる。転写終結信号及びポリアデニル化信号は、コーディング領域の3’又は下流に配置されている。
【0040】
本明細書中に使用される「コドン」は、ポリペプチド鎖内に組み込まれるべき特定のアミノ酸を指定する3つのヌクレオチドの配列から成る基本遺伝子コーディング単位、又は開始又は終止信号である。「コーディング領域」という用語は、構造遺伝子との関連で使用される場合には、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチド内に見いだされるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を意味する。典型的には、コーディング領域は、イニシエーターメチオニンをコードするヌクレオチド・トリプレット「ATG」によって5’側に結合され、そして終止コドン(例えばTAA、TAG、TGA)によって3’側に結合される。いくつかの事例では、コーディング領域は、ヌクレオチド・トリプレット「TTG」によって開始することも知られている。
【0041】
本明細書中に使用される「単離」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、ペプチド又はタンパク質を、これにin vivo物質が付随しないように、in vitroで調製、単離及び/又は精製することを意味する。このように、「単離」という用語は、「単離オリゴヌクレオチド」又は「単離ポリヌクレオチド」におけるように、核酸との関連において使用される場合、同定され、そしてその源内に通常は付随する少なくとも1種の汚染物質から分離された核酸配列を意味する。単離核酸は、自然界で見いだされるものとは異なる形態又は環境で存在する。対照的に、非単離核酸(例えばDNA及びRNA)は、自然界に存在する状態で見いだされる。例えば、隣接遺伝子に近接して宿主細胞染色体上に所与のDNA配列(例えば遺伝子)が見いだされ;多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として、細胞中にRNA配列(例えば特定のタンパク質をコードする特定mRNA配列)が見いだされる。従って、ゲノムcDNAのポリヌクレオチド、又は合成起源又はこれらのいくつかの組み合わせを含む「単離核酸分子」に関連して、「単離核酸分子」は、(1)「単離核酸分子」が自然界に見いだされるポリヌクレオチドの全て又は一部を伴わず、(2)自然界では結合されないポリヌクレオチドに作用結合され、又は(3)より大きい配列の一部として自然界では発生しない。単離核酸分子は、単鎖又は二本鎖形態を成して存在してよい。核酸分子がタンパク質を発現させるために利用されるようになっている場合、核酸は少なくともセンス鎖又はコーディング鎖を含有する(すなわち、核酸は単鎖であってよい)が、しかしセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含有することもできる(すなわち核酸は二本鎖であってよい)。
【0042】
「単離」という用語は、「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」におけるように、ポリペプチドとの関連において使用される場合、同定され、そしてその源内に通常は付随する少なくとも1種の汚染物質から分離されたポリペプチドを意味する。従って、単離ポリペプチドは、(1)自然界に見いだされるタンパク質を伴わず、(2)同じ源に由来する他のタンパク質が除去、例えばヒトのタンパク質が除去されており、(3)異なる種に由来する細胞によって発現され、又は(4)自然界では発生しない。こうして単離ポリペプチドは、自然界で見いだされるものとは異なる形態又は環境で存在する。対照的に、非単離ポリペプチド(例えばタンパク質及び酵素)は、自然界に存在する状態で見いだされる。「単離ポリペプチド」、「単離ペプチド」、又は「単離タンパク質」という用語は、cDNA、又は合成起源のRNAを含む組み換えRNAによってコードされたポリペプチド、ペプチド又はタンパク質、又はこれらの何らかの組み合わせを含む。
【0043】
本明細書中に使用される「野生型」という用語は、自然発生源から単離された遺伝子又は遺伝子生成物の特徴を有する遺伝子又は遺伝子生成物を意味する。野生型遺伝子は、個体群中で最も頻繁に観察され、こうして遺伝子の「野生型」形態に任意に指定されている遺伝子である。対照的に、「突然変異体」という用語は、野生型遺伝子又は遺伝子生成物と比較したときに、配列及び/又は機能特性において修飾形を示す(すなわち特徴が変更された)遺伝子又は遺伝子生成物を意味する。なお、自然発生型突然変異体を単離することができ、これらは、野生型遺伝子又は遺伝子生成物と比較したときに、特徴が変更されているという事実によって同定される。
【0044】
「遺伝子」という用語は、コーディング配列、及び任意には、そのDNA配列からポリペプチドを生成するために必要な制御配列を含むDNA配列を意味する。
【0045】
核酸は、種々異なるタイプの突然変異形を含有することが知られている。「点」突然変異は、野生型配列の単一塩基位置でヌクレオチドの配列が変化していることを意味する。突然変異は、核酸配列が基準配列、例えば野生型配列とは異なるような、1又は複数の塩基の挿入又は抹消を意味することもある。
【0046】
「組み換えDNA分子」は、自然界で通常は一緒に見いだされることのない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含むハイブリッドDNA配列を意味する。「ベクター」という用語は、DNAフラグメントを内部に挿入又はクローニングすることができ、また、細胞中にDNAセグメントを移すために使用することができ、そして細胞中で複製することができる核酸分子に関連して使用される。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウィルス、及びコスミドなどから誘導することができる。
【0047】
本明細書中で使用される「組み換えベクター」、「発現ベクター」又は「構築物」は、所期コーディング配列を含有するDNA又はRNA配列、及び特定の宿主生物内に作用結合されたコーディング配列を発現させるために必要な適切なDNA又はRNA配列を意味する。原核細胞発現ベクターは、プロモーター、リボソーム結合部位、宿主細胞内の自己複製のための複製起源、及び場合によって他の配列、例えば任意のオペレーター配列、任意の制限酵素部位を含む。プロモーターは、DNAに結合しRNA合成を開始させるようにRNAポリメラーゼを導くDNA配列として定義される。真核細胞発現ベクターは、プロモーター、任意にはポリアデニル化信号、及び任意にはエンハンサー配列を含む。
【0048】
「ペプチド、タンパク質又はポリペプチドをコードする」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、遺伝子のコーディング領域を含む核酸配列、又は対応する完全長ペプチド、タンパク質、又はポリペプチドと実質的に同じ活性を有する遺伝子生成物をコードする核酸配列フラグメントを意味する。コーディング領域は、cDNA、ゲノムDNA又はRNA形態で存在してよい。DNA形態で存在すると、オリゴヌクレオチドは単鎖(センス鎖)状又は二本鎖状であってよい。好適な制御要素、例えばエンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化信号などは、適正な転写開始及び/又は一次RNA転写物の正確な処理を可能にするために必要であれば、遺伝子のコーディング領域に密接して配置することができる。或いは、本発明の発現ベクター内で利用されるコーディング領域は、内生的エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化信号などを含有することもできる。別の実施態様の場合、コーディング領域は、内生的制御要素及び外生的制御要素双方の組み合わせを含有することができる。
【0049】
「転写調節要素」又は「転写調節配列」という用語は、核酸配列の発現の何らかの特徴を制御する遺伝子要素又は配列を意味する。例えば、プロモーターは、作業結合されたコーディング領域の転写の開始を容易にする調節要素である。他の調節要素の一例として、転写因子結合部位、スプライシング信号、ポリアデニル化信号、終結信号及びエンハンサー要素が挙げられ、また、例えばtrans作用要素の存在において、結合された配列の転写を増減する要素も含まれる。
【0050】
真核細胞中の転写制御信号は、「プロモーター」及び「エンハンサー」要素を含む。プロモーター及びエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短いDNA配列から成っている。プロモーター及びエンハンサー要素は、酵母、昆虫及び哺乳動物の細胞中の遺伝子を含む種々の真核細胞源から単離されている。プロモーター及びエンハンサー要素は、ウィルスからも単離されており、そして類似の制御要素、例えばプロモーターが原核細胞中にも見いだされる。具体的なプロモーター及びエンハンサーの選択は、注目のタンパク質を発現させるために使用される細胞タイプに依存する。いくつかの真核細胞プロモーター及びエンハンサーが幅広い宿主範囲を有しているのに対して、他のものは、制限された細胞タイプ部分集合内で機能する。例えばSV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの哺乳動物種に由来する種々様々な細胞タイプにおいて極めて活性であり、そして哺乳動物細胞中にタンパク質を発現させるために広く使用されている。広範囲の哺乳動物細胞タイプにおいて活性のプロモーター/エンハンサー要素の2つの他の例は、ヒト延長因子1遺伝子、並びにラウス肉腫ウィルス及びヒト・サイトメガロウィルスの長末端反復に由来する要素である。
【0051】
プロモーター/エンハンサーという用語は、プロモーター及びエンハンサー双方の機能(すなわち、上記のようなプロモーター要素及びエンハンサー要素によって提供される機能)を提供することができる配列を含有するDNAセグメントを意味する。例えば、レトロウィルスの長末端反復は、プロモーター及びエンハンサー双方の機能を含有する。プロモーター/エンハンサーは、「内生的」又は「外生的」又は「異種」であってよい。「内生的」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム内の所与の遺伝子と自然に接合されたものである。「外生的」又は「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子転写が、結合されたエンハンサー/プロモーターによって導かれるように遺伝子操作(すなわち分子生物学的技術)によって遺伝子に並置されたものである。
【0052】
発現ベクター上の「スプライシング信号」の存在は、真核宿主細胞内の組み換え転写物の発現レベルをしばしばより高くする。スプライシング信号は、一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、そしてスプライス供与体・受容体部位から成る。一般に使用されるスプライス供与体・受容体部位は、SV40の16S RNAからのスプライス部位である。
【0053】
真核細胞内の組み換えDNA配列の効率的な発現は、結果として生じた転写物の効率的な終止及びポリアデニル化を導く信号の発現を必要とする。転写終止信号は一般に、ポリアデニル化信号の下流側に見いだされ、数百ヌクレオチド長である。本明細書中に使用される「ポリ(A)部位」又は「ポリ(A)配列」は、新生RNA転写物の終止及びポリアデニル化の双方を導くDNA配列を意味する。組み換え転写物の効率的なポリアデニル化が好ましい。それというのも、ポリ(A)テイルを欠く転写物は不安定であり、急速に劣化するからである。発現ベクター内に利用されるポリ(A)信号は、「異種」又は「内生的」であってよい。内生的ポリ(A)信号は、ゲノム内の所与の遺伝子のコーディング領域の3’末端に自然界で見いだされる信号である。異種ポリ(A)信号は、1つの遺伝子から単離され、別の遺伝子の3’に配置されている信号である。一般に使用される異種ポリ(A)信号はSV40ポリ(A)信号である。SV40ポリ(A)信号は、237 bp BamH I/Bcl I制限フラグメント上に含有されており、終止及びポリアデニル化の両方を導く。
【0054】
真核細胞発現ベクターは「ウィルス・レプリコン」又は「ウィルス性複製起源」を含有していてもよい。ウィルス・レプリコンは、適切な複製因子を発現させる宿主細胞内にベクターの染色体外複製を可能にするウィルスDNA配列である。SV40又はポリオーマ・ウィルス複製起源を含有するベクターは高いコピー数(最大104部/細胞)まで、適切なウィルスT抗原を発現させる細胞内で複製する。対照的に、ウシ・パピローマウィルス又はエプスタイン・バーウィルスからのレプリコンを含有するベクターは、少ないコピー数(約100部/細胞)で染色体外複製する。
【0055】
「in vitro」という用語は、人工環境、及び人工環境内部で発生する過程又は反応を意味する。in vitro環境の一例としては、試験管及び細胞溶解物が挙げられる。「in situ」という用語は細胞培養を意味する。「in vivo」という用語は、自然環境(例えば動物又は細胞)、及び自然環境内部で発生する過程又は反応を意味する。
【0056】
「発現系」という用語は、該当遺伝子の発現を測定(例えば検出)するための任意のアッセイ又は系を意味する。分子生物学分野の当業者には明らかとなるように、種々様々な発現系のいずれをも使用することができる。幅広い範囲の好適な哺乳動物細胞が、広範囲な供給元(例えばthe American Type Culture Collection, Rockland, MD)から入手可能である。形質転換又はトランスフェクションの方法、及び発現ビヒクルの選択は、選択される宿主系に依存する。形質転換・トランスフェクション方法は当業者に知られている。発現系はin vitro遺伝子発現アッセイを含む。このアッセイでは、該当遺伝子(例えばレポーター遺伝子)が調節配列に結合され、遺伝子の発現は、遺伝子発現を阻害又は誘発する物質による処理に続いて、遺伝子の発現がモニタリングされる。遺伝子発現は、例えば発現されたmRNA又はタンパク質(レポーター遺伝子の検出可能な生成物)の検出を含む任意の好適な手段によって、又は該当遺伝子を発現する細胞の表現型の検出可能な変化を通して検出することができる。発現システムは、切断事象又はその他の核酸又は細胞の変化が検出されるアッセイを含んでもよい。
【0057】
本明細書中に使用される「ハイブリッド形成する」及び「ハイブリッド形成」は、標的核酸に対して相補的配列のアニーリング、すなわち、相補的配列を含有する核酸の2つのポリマー(ポリヌクレオチド)が塩基対合全体をアニーリングする能力を意味する。「アニールされる」及び「ハイブリッド形成される」という用語は全体を通して相互交換可能に使用され、そして、部分的な相補性しか有さない領域の結合を含む、相補的配列と標的核酸との間の任意の特異的且つ再現可能な相互作用を含むものとする。自然の核酸中に一般には見いだされない或る特定の塩基が、本発明の核酸中に含まれてよく、これらの塩基は例えばイノシン及び7−デアザグアニンを含む。核酸技術の当業者であれば、例えば相補的配列の長さ、及びオリゴヌクレオチドの塩基組成及び配列、イオン強度、及びミスマッチ塩基対の発生率を含む数多くの変数を考慮して、二本鎖安定性を実験に基づいて見極めることができる。核酸二本鎖の安定性は、溶融温度又は「Tm」によって測定されている。指定の条件下における特定の核酸二本鎖のTmは、平均で塩基対の半分が解離する温度である。
【0058】
「緊縮性」という用語は、核酸ハイブリッド形成が行われる温度、イオン強度、及び他の化合物の存在の条件に関連して使用される。「高緊縮性」条件を用いると、核酸塩基対合は、高頻度の相補的塩基配列を有する核酸フラグメント間にだけ発生することになる。従って、互いに完全には相補的でない核酸がハイブリッド形成されるか又は一緒にアニールされることが望まれる場合には、「中」又は「低」緊縮性がしばしば必要とされる。当業者には良く知られているように、中又は低緊縮性条件を含むために数多くの同等の条件を採用することができる。ハイブリッド形成条件の選択は当業者には概ね明らかであり、ハイブリッド形成の目的、ハイブリッド形成のタイプ(DNA−DNA又はDNA−RNA)、及び配列間の所望の同系性レベルによって案内される(方法に関する一般的な考察に関しては、例えばSambrook他、1989; Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington D.C., 1985)。
【0059】
核酸二本鎖の安定性は、ミスマッチ塩基数の増大とともに減少すること、さらに、ハイブリッド二本鎖の相対的なミスマッチ位置に応じて、或る程度減少することが判っている。従って、ハイブリッド形成の緊縮性を用いて、このような二本鎖の安定性を最大化又は最小化することができる。ハイブリッド形成緊縮性は、ハイブリッド形成温度を調節し;ハイブリッド形成混合物中の螺旋不安定化剤、例えばホルムアミドのパーセンテージを調節し;そして洗浄溶液の温度及び/又は塩濃度を調節することにより、変化させることができる。フィルターハイブリッド形成の場合、最終的なハイブリッド形成緊縮性はしばしば、ハイブリッド形成後の洗浄のために用いられる塩濃度及び/又は温度によって決定される。
【0060】
核酸ハイブリッド形成に関連して使用される場合の「高緊縮性条件」は、5X SSPE(43.8g/lのNaCl、6.9g/lのNaH2PO42O及び1.85g/lのEDTA、NaOHでpHを7.4まで調節)、0.5%のSDS、5X Denhartdt試薬、及び100μg/mlの変性サケ精子DNAから成る溶液中で42℃で結合又はハイブリッド形成し、続いて、約500のヌクレオチド長のプローブを採用する場合、0.1X SSPE、1.0%のSDSを含む溶液中で42℃で洗浄することと同等の条件を含む。
【0061】
核酸ハイブリッド形成に関連して使用される場合の「中緊縮性条件」は、5X SSPE(43.8g/lのNaCl、6.9g/lのNaH2PO42O及び1.85g/lのEDTA、NaOHでpHを7.4まで調節)、0.5%のSDS、5X Denhartdt試薬、及び100μg/mlの変性サケ精子DNAから成る溶液中で42℃で結合又はハイブリッド形成し、続いて、約500のヌクレオチド長のプローブを採用する場合、1.0X SSPE、1.0%のSDSを含む溶液中で42℃で洗浄することと同等の条件を含む。
【0062】
「低緊縮性条件」は、5X SSPE(43.8g/lのNaCl、6.9g/lのNaH2PO42O及び1.85g/lのEDTA、NaOHでpHを7.4まで調節)、0.1%のSDS、5X Denhartdt試薬[50X Denhartdt試薬は500ml当たり:5gのFicoll(Type 400, Pharmacia)、5gのBSA(Fraction V; Sigma)]、及び100g/mlの変性サケ精子DNAから成る溶液中で42℃で結合又はハイブリッド形成し、続いて、約500のヌクレオチド長のプローブを採用する場合、5X SSPE、0.1%のSDSを含む溶液中で42℃で洗浄することと同等の条件を含む。
【0063】
「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾(例えばグリコシル化又はホスホリル化)とは無関係に、任意のアミノ酸鎖を意味する。特に断りのない場合には、これらの用語は相互に交換可能である。本発明の核酸分子は、自然発生型(野生型)タンパク質の変異形(突然変異形)をコードする。好ましくは、対応する野生型タンパク質のアミノ酸配列に対するこのような突然変異形タンパク質のアミノ酸配列の同一性は、少なくとも80%、例えば少なくとも約85%、90%、95%又は99%である。「相同性」は相補性の程度を意味する。部分相同性又は完全相同性(すなわち同一性)があり得る。相同性はしばしば、配列分析ソフトウェアを使用して測定される(例えばSequence Analysis Software Package of Accelryn, In., San Diego)。このようなソフトウェアは、種々の置換、抹消形、挿入形、及びその他の修飾形に相同度を割り当てることによって、類似の配列をマッチングさせる。1実施態様の場合、突然変異形タンパク質は、対応する野生型タンパク質に対して複数の同類置換を有している。同類置換は典型的には、次の基:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン内部に置換を含む。
【0064】
第1アミノ酸残基の主鎖アミノ基と第2アミノ酸残基の主鎖カルボキシル基との間にペプチド結合が発生するので、ポリペプチド分子は、「アミノ末端」(N末端)と「カルボキシ末端」(C末端)とを有すると言われる。ポリペプチド配列に関連する「N末端」及び「C末端」という用語は、それぞれポリペプチドのN末端の一部及びC末端の一部を含むポリペプチド領域を意味する。ポリペプチドのN末端領域の一部を含む配列は、主としてポリペプチド鎖のN末端の半分に由来するアミノ酸を含むが、しかしこのような配列に限定されない。例えば、N末端配列は、ポリペプチドのN末端の半分及びC末端の半分の両方に由来する塩基を含むポリペプチド配列の内側部分を含んでいてよい。同じことがC末端領域に当てはまる。N末端領域及びC末端領域は、それぞれポリペプチドのN最末端及びC最末端を定義するアミノ酸を含むが、このことは絶対に必要というわけではない。
【0065】
本明細書中に使用される「組み換えタンパク質」又は「組み換えポリペプチド」は、組み換えDNA分子から発現されたタンパク質分子を意味する。対照的に、「天然型タンパク質」という用語は、自然発生(すなわち非組み換え)源から単離されたタンパク質を示すために本明細書中で使用される。タンパク質の天然形と比較して同一の特性を有するタンパク質の組み換え形を生成するために、分子生物学的技術を用いることができる。
【0066】
本明細書中に使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子フラグメントによって実質的にコードされた1又は複数のポリペプチドを有するタンパク質を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパ又はラムダとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、これらはそれぞれ免疫グロブリン・クラスIgG, IgM, IgA, IgD及びIgEを定義する。
【0067】
基本免疫グロブリン(抗体)構造ユニットは、四量体を含むことが判っている。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成されている。各対は、1つの「軽」(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)とを有する。各鎖のN末端は、抗原認識に対して一次的に関与する約100〜110又はそれ以上のアミノ酸から成る可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を意味する。
【0068】
抗体は、インタクトの免疫グロブリンとして、又は例えばFabFc2、Fab、Fv、Fd、(Fab')2、軽鎖及び重鎖の可変領域だけを含有するFvフラグメント、可変領域と定常領域の一部とを含有するFab又は(Fab)'2フラグメント、単鎖抗体、例えばscFv、及びCDRグラフト型抗体などを含む種々の形態の修飾形として存在することができる。Fvの重鎖及び軽鎖は、同じ抗体又は異なる抗体から誘導されてよく、これによりキメラFv領域を生成する。抗体は、動物(特にマウス又はラット)又はヒト起源であってよく、或いは、キメラであるか又はヒト化されていてもよい。本明細書中に使用される「抗体」という用語は、これらの種々の形態を含む。
【0069】
本明細書中に使用される「細胞」、「細胞系」、「宿主細胞」という用語は相互交換可能に使用され、全てのこのような標記は、これらの標記のものの子孫又は潜在的子孫を含む。「形質転換細胞」は、本発明の核酸分子が導入されている細胞(又はその祖先)を意味する。任意には、本発明の核酸分子は、核酸分子によってコードされたタンパク質又はポリペプチドを生成することができる安定にトランスフェクトされた細胞を形成するように、好適な細胞系に導入することができる。このような細胞系を構成するためのベクター、細胞、及び方法は当業者に知られている。「形質転換体」又は「形質転換細胞」は、形質転換数とは無関係に、最初に形質転換された細胞から誘導された一次形質転換細胞を含む。意図的又は不慮の突然変異に起因して、全ての子孫がDNA内容において正確に同一というわけではない。それでもなお、最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能を有する突然変異形の子孫は、形質転換体の定義に含まれる。
【0070】
「精製された」又は「精製する」という用語は、該当成分、例えばタンパク質又は核酸から汚染物のうちのいくらかを除去する任意の過程の結果を意味する。精製済成分のパーセントは、これにより試料中で増大する。
【0071】
本明細書中に使用される「作用結合」という用語は、所与の遺伝子の転写及び/又は所期のタンパク質分子の合成を導くことができる核酸分子が生成されるような、核酸配列の結合を意味する。この用語はまた、機能性(例えば酵素的に活性、結合相手との結合能力がある、阻害能力がある、など)のタンパク質又はポリペプチド、又はその前駆体、例えばタンパク質又はポリペプチドのプレ形態又はプレプロ形態が生成される。
【0072】
本明細書中で同定された全てのアミノ酸残基は天然L形態である。標準的なポリペプチド命名法に沿って、アミノ酸残基の略語を、下記対応表に示す。
対応表
1文字 3文字 アミノ酸
Y Tyr L-チロシン
G Gly L-グリシン
F Phe L-フェニルアラニン
M Met L-メチオニン
A Ala L-アラニン
S Ser L-セリン
I Ile L-イソロイシン
L Leu L-ロイシン
T Thr L-トレオニン
V Val L-バリン
P Pro L-プロリン
K Lys L-リシン
H His L-ヒスチジン
Q Gln L-グルタミン
E Glu L-グルタミン酸
W Trp L-トリプトファン
R Arg L-アルギニン
D Asp L-アスパラギン酸
N Asn L-アスパラギン
C Cys L-システイン
【0073】
本明細書中に使用される「ポリ−ヒスチジン・トラクト」又は(His tag)は、2〜10のヒスチジン残基を含む分子、例えば5〜10残基のポリ−ヒスチジン・トラクトを意味する。ポリ−ヒスチジン・トラクトは、固定化された金属、例えばニッケル、亜鉛、コバルト、又は銅のキレート・カラム上で、或いは、別の分子(His tagと反応する抗体)との相互作用を通して、共有結合分子のアフィニティ精製を可能にする。
【0074】
「タンパク質不安定化配列」又は「タンパク質不安定化領域」は、タンパク質のN末端又はC末端に存在するときは、タンパク質不安定化配列又は領域を欠いている対応タンパク質に対して、結合タンパク質の半減期を、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%又はこれ以上、例えば99%だけ低減又は減少させる。タンパク質不安定化配列の一例としては、PEST配列、例えばサイクリン(例えば有糸分裂サイクリン)からのPEST配列、ウラシル・ペルメアーゼ又はODC、短命タンパク質(例えばODC)のC末端領域からの配列、初期応答タンパク質、例えばサイトカイン、リンフォカイン、プロトオンコジーン(例えばc-myc又はc-fos)、MyoD、HMG CoAレダクターゼ、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、CL配列、サイクリン破壊ボックス、N-デグロン、又はin vivoでユビキチン化されたタンパク質又はそのフラグメントが挙げられる。
【0075】
本明細書中に使用される「純粋」とは、対象種が支配的に存在する種であり(すなわち、モルをベースとして、この対象種は、組成物中の任意のその他の個々の種よりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分は、目的種が、存在する全てのマクロ分子種の少なくとも約50パーセント(モル・ベースで)を占める組成物である。一般には、「実質的に純粋な」組成物は、組成物中に存在する全てのマクロ分子種の約80パーセントを上回り、より好ましくは約85%、約90%、約95%、及び約99%を占めることになる。最も好ましくは、対象種は、事実上均質になるまで精製され(コンベンショナルな検出法によっては組成物中に汚染物質種を検出することができない)、組成物は事実上、単一のマクロ分子種から成る。
【0076】
突然変異形ヒドロラーゼ
本発明の範囲に含まれる突然変異形ヒドロラーゼは一例として、組み換え技術、例えば部位指定突然変異誘発法又は再帰的変異誘発法を介して調製されたものを含み、1又は複数のアミノ酸置換を含む。1実施態様の場合、置換のうちの少なくとも1つは、突然変異形ヒドロラーゼを、1又は複数の官能基を含有するように修飾された野生型基質を含む、対応非突然変異形(野生型)ヒドロラーゼに対する基質と安定な結合、例えば共有結合を形成することができるようにする。この結合は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間で形成される結合よりも安定である。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼ内の置換のうちの少なくとも1つが、改善された機能発現又は結合キネティクス、又はその両方をもたらす。本発明の範囲に含まれるヒドロラーゼの一例としては、
http://www.expasy.ch/enzyme/enzyme-byclass.htmlに開示されているもの、及びペプチダーゼ、エステラーゼ(例えばコレステロール・エステラーゼ)、グリコシダーゼ(例えばグルコサミラーゼ)、及びホスファターゼ(例えばアルカリ・ホスファターゼ)などが挙げられる。例えば、ヒドロラーゼの一例としては、エステル結合に作用する酵素、例えばカルボン酸エステル・ヒドロラーゼ、チオールエステル・ヒドロラーゼ、リン酸モノエステル・ヒドロラーゼ、リン酸ジエステル・ヒドロラーゼ、三リン酸モノエステル・ヒドロラーゼ、硫酸エステル・ヒドロラーゼ、二リン酸モノエステル・ヒドロラーゼ、硫酸トリエステル・ヒドロラーゼ、5’−ホスホモノエステルを生成するエキソデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを生成するエキソリボヌクレアーゼ、3’−ホスホモノエステルを生成するエキソリボヌクレアーゼ、リボ核酸又はデオキシリボ核酸との活性を有するエキソヌクレアーゼ、リボ核酸又はデオキシリボ核酸との活性を有するエキソヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを生成するエンドデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステル以外のものを生成するエンドデオキシリボヌクレアーゼ、変更された塩基に対して特異的な部位特異的なエンドデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを生成するエンドリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステル以外のものを生成するエンドリボヌクレアーゼ、リボ核酸又はデオキシリボ核酸との活性を有するエンドリボヌクレアーゼ、グリコシラーゼ;グリコシダーゼ、例えばO−及びS−グリコシル化合物を加水分解する酵素、及びN−グリコシル化合物を加水分解する酵素;エーテル結合に作用する酵素、例えばトリアルキルスルホニウム・ヒドロラーゼ又はエーテル・ヒドロラーゼ;ペプチド結合に作用する酵素(ペプチド・ヒドロラーゼ)、例えばアミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジペプチジル−ペプチダーゼ及びトリペプチジル−ペプチダーゼ、ペプチジル−ジペプチダーゼ、セリン型カルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、システイン型カルボキシペプチダーゼ、オメガ・ペプチダーゼ、セリン・エンドペプチダーゼ、システイン・エンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、トレオニン・エンドペプチダーゼ、及び未知の触媒メカニズムのエンドペプチダーゼ;ペプチド結合以外の炭素−窒素結合、例えば線状アミド、環状アミド、線状アミジン、環状アミジン、ニトリル、又はその他の化合物における炭素−窒素結合に作用する酵素;リン含有無水物及びスルホニル含有無水物におけるような酸無水物に作用する酵素;酸無水物に作用する酵素(膜貫通移動を触媒する);酸無水物に作用するか、又は細胞又は細胞内移動に関与する酵素;炭素−炭素結合(例えばケトン基質内)に作用する酵素;ハロゲン化物結合(例えばC−ハロゲン化物化合物)に作用する酵素;リン−窒素結合に作用する酵素;硫黄−窒素結合に作用する酵素;炭素−リン結合に作用する酵素;硫黄−硫黄結合に作用する酵素が挙げられる。ハロゲン化物結合に作用するヒドロラーゼの一例としては、アルキルハリダーゼ、2−ハロ酸デハロゲナーゼ、ハロ酢酸デハロゲナーゼ、チロキシン・デヨージナーゼ、ハロアルカン・デハロゲナーゼ、4−クロロベンゾエート・デハロゲナーゼ、4−クロロベンゾイル−CoAデハロゲナーゼ、及びアトラジン・クロロヒドロラーゼが挙げられる。炭素−窒素結合に作用するヒドロラーゼの一例としては、バルビツラーゼ、ジヒドロピリミジナーゼ、ジヒドロオロターゼ、カルボキシメチルヒダントイナーゼ、アラントイナーゼ、β−ラクタマーゼ、イミダゾロンプロピオナーゼ、5−オキソプロリナーゼ(ATP加水分解)、クレアチニナーゼ、L−リシン−ラクタマーゼ、6−アミノヘキサノエート環状二量体ヒドロラーゼ、2,5−ジオキソピペラジン・ヒドロラーゼ、N−メチルヒダントイナーゼ(ATP加水分解)、シアヌル酸アミド・ヒドロラーゼ、マレイミド・ヒドロラーゼが挙げられる。本明細書中に使用される「ベータ−ラクタマーゼ」は、クラスA、クラスC及びクラスDベータ−ラクタマーゼ、並びにD-alaカルボキシペプチダーゼ/トランスペプチダーゼ、エステラーゼEstB、ペニシリン結合タンパク質2X、ペニシリン結合タンパク質5、及びD−アミノ・ペプチダーゼを含む。好ましくは、ベータ−ラクタマーゼはセリン・ベータ−ラクタマーゼであり、例えばS. aureus PC1のセリン・ベータ−ラクタマーゼ内の残基70に対応する位置における触媒セリン残基と、S. aureus PC1のセリン・ベータ−ラクタマーゼ内の残基166に対応する位置におけるグルタミン酸残基とを有し、S. aureus PC1のベータ−ラクタマーゼにおいて、任意には残基73に対応する位置にリシン残基を有し、またやはり任意には残基234に対応する位置にリシン残基を有するセリン・ベータ−ラクタマーゼである。
【0077】
1実施態様の場合、本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼ中で水分子を活性化することに関連する残基、例えば触媒トリアド内の残基又は補助残基内に、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。活性化された水分子は、対応する野生型ヒドロラーゼ中の触媒残基とヒドロラーゼの基質との間に形成された結合を切断する。本明細書中に使用される「補助残基」は、別の残基の活性を変化させる残基であり、例えばこれは、水分子を活性化させる残基の活性を高める。本発明の範囲に含まれる、水を活性化する残基の一例としては、酸−塩基触媒に関与する残基、例えばヒスチジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸が挙げられる。別の実施態様の場合、本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼ中でヒドロラーゼに対する基質の求核攻撃によってエステル中間体を形成する残基内に、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0078】
さらに別の実施態様の場合、本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、基質との安定な結合の形成に関連する少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つの置換は、野生型ヒドロラーゼ中で水分子を活性化することに関連する残基内に、又は野生型ヒドロラーゼ中でヒドロラーゼに対する基質の求核攻撃によってエステル中間体を形成する残基内に位置し、そして別の置換は、野生型ヒドロラーゼ中でヒドロラーゼ基質に対する結合部位に、又はその近くにある残基内に位置し、例えば、その残基の少なくとも1つの原子は、野生型ヒドロラーゼに結合されたヒドロラーゼ基質から3Å以内又は5Å以内にあるが、しかし、対応する野生型ヒドロラーゼ中で水分子を活性化することに関連するか又は基質とエステル中間体を形成する残基内にはない。1実施態様の場合、第2の置換は、野生型ヒドロラーゼ中で活性部位キャビティ内への基質の進入のための部位をライニングし、野生型ヒドロラーゼに結合されたヒドロラーゼ基質から3Å以内又は5Å以内に少なくとも1つの原子を有する残基、例えば、対応する野生型ヒドロラーゼ中で水分子を活性化することに関連するか又は基質とエステル中間体を形成する残基ではない、基質のためのトンネル内の残基にあってよい。付加的な置換は好ましくは、対応する野生型ヒドロラーゼの基質に対するこれらの突然変異体の安定な共有結合の形成速度を高くする。
【0079】
1実施態様の場合、少なくとも1つの置換は、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基272に対応する残基内にある。「対応残基」は、基準野生型タンパク質に対して同じ活性(機能)を1つの野生型タンパク質中に有し、そして任意には、2つのタンパク質の一次配列がアライメントされたときに同じ相対位置にある残基である。例えば、触媒トリアドの一部を形成し、1つの酵素内の水分子を活性化する残基は、その酵素内の残基272であってよい。残基272は、別の酵素内の残基73に対応し、残基73は、触媒トリアドの一部を形成し、水分子を活性化する。このように、1実施態様の場合、本発明の突然変異デハロゲナーゼは、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基272に対応する位置に、ヒスチジン以外の残基、例えばフェニルアラニン残基を有する。本発明の別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基106に対応する残基内に、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばアスパラギン酸以外の残基に対する置換を含む突然変異デハロゲナーゼである。例えば、本発明の突然変異デハロゲナーゼは、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基106に対応する位置にシステイン又はグルタミン酸残基を有する。別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む突然変異デハロゲナーゼであり、1つはRhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基106に対応する残基内に、そして1つは残基272に対応する残基内に位置する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む突然変異デハロゲナーゼであり、1つの置換はRhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基272に対応する残基内に、そして別の置換はRhodococcus rhodochrousに由来するDhaA内の残基175, 176, 245及び/又は273に対応する残基内に位置する。さらに別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、Staphylococcus aureus PC1のセリン・ベータ−ラクタマーゼ内の残基166又は残基170に対応する残基内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む突然変異形セリン・ベータ−ラクタマーゼである。
【0080】
1実施態様の場合、1つの置換は、水分子を活性化する野生型ヒドロラーゼ内の残基、例えばヒスチジン残基にあり、そして、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に対応する位置にあり、例えばアミノ酸残基272に対応する位置における置換型アミノ酸は、アラニン、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、又はグリシンである。別の実施態様の場合、1つの置換は、基質とエステル中間体を形成する野生型ヒドロラーゼ内の残基、例えばアスパラギン酸残基にあり、また、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基106に対応する位置にある。1実施態様の場合、アミノ酸106に対応する位置における置換型アミノ酸はシステインである。1実施態様の場合、第2の置換は、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼの位置175, 176又は273に対応するアミノ酸残基にあり、例えば、アミノ酸175に対応する位置における置換型アミノ酸は、メチオニン、バリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、ロイシン、セリン、又はシステインであり、アミノ酸176に対応する位置における置換型アミノ酸は、セリン、グリン、アスパラギン、アスパラギン酸、トレオニン、アラニン、又はアルギニン、且つ/又は、アミノ酸273に対応する位置における置換型アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、又はシステインである。さらに別の実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはさらに、活性部位キャビティ内部にあり且つ野生型ヒドロラーゼに結合されたヒドロラーゼ基質から3Å以内又は5Å以内にある野生型ヒドロラーゼ内のアミノ酸残基に第3及び任意には第4の置換を含む。例えば、第3置換は、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基273に対応する位置にあり、第4置換は、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基175又は176に対応する位置にある。
【0081】
例えば、野生型デハロゲナーゼDhaAは、ハロゲン化炭化水素中の炭素−ハロゲン結合(HaloC3−HaloC10)を切断する。DhaAの触媒中心は、求核基、酸、及びヒスチジン残基を含む古典的な触媒トリアドである。トリアド基内のアミノ酸は、DhaA(長さ約10Å及び断面積約20Å2)内部深くに配置されている。DhaAに対するハロゲン化基質内のハロゲン原子、例えばCl−アルカン基質の塩素原子は、DhaAの触媒中心に密接して配置される。DhaAは基質に結合し、おそらくはES複合体を形成し、また、DhaAのAsp106(番号付けはDhaAのタンパク質配列に基づいている)による基質の求核攻撃によって、エステル中間体が形成される。次いでDhaAのHis272は水を活性化し、そして活性化された水は中間体を加水分解し、触媒中心から生成物を放出する。このように、本発明の1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼ中で水分子を活性化することに関連する残基、例えば触媒トリアド内の残基又は補助残基内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む突然変異デハロゲナーゼである。活性化された水分子は、野生型デハロゲナーゼ内の触媒残基とデハロゲナーゼの基質との間に形成された結合を切断する。
【0082】
1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、ハロアルカン・デハロゲナーゼ、例えばグラム陰性(Keuning他、1985)及びグラム陽性のハロアルカン利用細菌(Keuning他、1985;Yokota他、1987;Scholz他、1987;Sallis他、1990)に見いだされるハロアルカン・デハロゲナーゼである。Xanthobacter autotrophicus GJ10に由来するDhlA(Janssen他、1988, 1989)、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaA、及びSpingomonas paucimobilis UT26に由来するLinB(Nagata他、1997)を含むハロアルカン・デハロゲナーゼは、対応炭化水素の加水分解脱ハロゲン化を触媒する酵素である。変換を施されるハロゲン化脂肪族炭化水素は、結合された1又は複数のハロゲン基を有するC2−C10飽和脂肪族炭化水素を含む。これらのハロゲンのうちの少なくとも2つは、隣接する炭素原子上にある。このような脂肪炭化水素は、揮発性塩素化脂肪族(VCA)炭素水素を含む。VCAは、例えば脂肪族炭化水素、例えばジクロロエタン、1,2−ジクロロ−プロパン、1,2−ジクロロブタン、及び1,2,3−トリクロロプロパンを含む。本明細書中に使用される「ハロゲン化炭化水素」という用語は、ハロゲン化脂肪族炭化水素を意味する。本明細書中に使用される「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、及びアスタチンなどを含む。好ましいハロゲンは塩素である。
【0083】
1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、熱安定ヒドロラーゼ、例えば、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基117及び/又は175に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む熱安定デハロゲナーゼである。この置換は、高められた熱安定性と相関する。1実施態様の場合、熱安定ヒドロラーゼは、低い温度、例えば0℃〜約25℃でヒドロラーゼ基質と結合することができる。1実施態様の場合、熱安定ヒドロラーゼは、熱安定突然変異形ヒドロラーゼ、すなわち、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基117及び/又は175に対応する位置の置換に加えて1又は複数の置換を有するヒドロラーゼである。1実施態様の場合、熱安定突然変異デハロゲナーゼは、荷電残基、例えばリシンの除去をもたらす置換を有する。1実施態様の場合、熱安定突然変異デハロゲナーゼは、Rhodococcus rhodochrousに由来するDhaAのアミノ酸残基117及び/又は175に対応する位置にセリン又はメチオニンを有している。
【0084】
1実施態様の場合、本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、少なくとも2つのアミノ酸置換を含んでおり、これらの少なくとも1つは、水分子を活性化する野生型ヒドロラーゼ内の残基、例えばヒスチジン残基における、また、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に対応する位置における安定な結合の形成に関連し、例えば置換型アミノ酸は、アラニン、アスパラギン、グリシン又はフェニルアラニンであり、そして少なくとも1つの他のアミノ酸置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置における改善された機能発現又は結合キネティクス、又はその両方と関連する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、位置175, 176, 272,及び273に対応する位置における置換、並びに、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置における少なくとも1つの他の置換を有している。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、位置175, 176, 272,及び273に対応する位置における置換、並びに、SEQ ID No:1の位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置における少なくとも1つの他の置換を有している。
【0085】
1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、位置106, 175,及び176に対応する位置における置換、並びに、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置における少なくとも1つの他の置換を有している。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、位置106, 175, 176, 272,及び273に対応する位置における置換、並びに、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置における少なくとも1つの他の置換を有している。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、位置106, 175, 176, 272,及び273に対応する位置における置換、並びに、SEQ ID No:1の位置5, 7, 11, 12, 20, 30, 32, 47, 54, 55, 56, 58, 60, 65, 78, 80, 82, 87, 88, 94, 96, 109, 113, 116, 117, 118, 121, 124, 128, 131, 134, 136, 144, 147, 150, 151, 155, 157, 160, 161, 164, 165, 167, 172, 175, 176, 180, 182, 183, 187, 195, 197, 204, 218, 221, 224, 227, 231, 233, 250, 256, 257, 263, 264, 273, 277, 280, 282, 288, 291, 292, 及び/又は294に相当する位置における少なくとも1つの他の置換を有している。
【0086】
突然変異形ヒドロラーゼは、他の置換、例えば対応遺伝子又はその部分のクローニングを容易にするために導入される置換、及び/又は、N末端及び/又はC末端における、又はその近くの付加的な残基、例えば対応遺伝子又はその部分のクローニングを容易にするために導入されるがしかし、活性を有することは必ずしも必要ではなく、例えば別々に検出可能な付加的な残基を含んでもよい。
【0087】
融合相手
突然変異形ヒドロラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドを、他の核酸配列、例えばcDNAのような天然型配列、又はin vitroで操作された配列と一緒に採用することにより、例えばN末端、C末端、又はN及びC末端の融合タンパク質を調製することができる。好適な融合相手の多くの例が当業者に知られており、本発明の実施においてこれらを採用することができる。
【0088】
例えば、本発明はまた、突然変異形ヒドロラーゼと注目のタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列、例えばマーカータンパク質(例えば選択可能なマーカータンパク質)、親和性タグ(例えばポリヒスチジン配列)、該当酵素(例えばルシフェラーゼ、RNasin、RNase、及びGFP)、核酸結合タンパク質、細胞外マトリックス・タンパク質、分泌タンパク質、抗体又はその一部(例えばFc)、生物発光タンパク質、受容体リガンド、調節タンパク質、血清タンパク質、免疫原性タンパク質、蛍光タンパク質、反応性システインを有するタンパク質、受容体タンパク質(例えばNMDA受容体)、チャネルタンパク質(例えばHERGチャネルタンパク質を含むナトリウム、カリウム又はカルシウム感受性チャネルタンパク質)、膜タンパク質、サイトゾル・タンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、リン・タンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリア・タンパク質、受容体関連タンパク質、蛍光タンパク質、酵素基質(例えばプロテアーゼ基質)、転写因子、タンパク質不安定化配列、又は輸送タンパク質、(例えばEAAT1-4グルタミン酸トランスポーター)、並びに、標的配列(例えば突然変異形ヒドロラーゼを特定位置に導くプラスチド標的信号、例えばミトコンドリア局在配列、核局在信号又はミリスチル化部位)とを含む融合タンパク質を提供する。
【0089】
1実施態様の場合、融合タンパク質は、N末端における注目のタンパク質と、任意には、突然変異形ヒドロラーゼのC末端における異なる注目のタンパク質とを含んでよい。
【0090】
1実施態様の場合、融合タンパク質は、突然変異形ヒドロラーゼと、膜又は膜の一部と関連するタンパク質、例えば、小胞体を標的にするような標的タンパク質、細胞膜結合タンパク質(例えばインテグリン・タンパク質又はその領域、例えばインテグリン・タンパク質の細胞質、膜貫通及び/又は細胞外ストーク領域)、及び/又は突然変異形ヒドロラーゼを細胞表面に結合するタンパク質(例えばグリコシルホスホイノシトール信号配列)とを含む。
【0091】
融合相手は、酵素活性を有するものを含んでいてよい。例えば機能性タンパク質配列は、キナーゼ触媒領域をコードして(Hanks及びHunter、1995)、特定のアミノ酸にリン酸部分を酵素的に付加することができる融合タンパク質を生成することができ、或いは、Src Homology 2(SH2)領域をコードして(Sadowski他、1986;Mayer及びBoltimore、1993)、ホスホリル化チロシンに特異的に結合する融合タンパク質を生成することができる。
【0092】
融合体は、同定又は精製に有用な結合相手、例えば固形支持体上に固定化された結合相手と相互作用することができるペプチド配列を含む親和性ドメインを有していてもよい。発現タンパク質に融合するときに、複数の連続する単独アミノ酸、例えばヒスチジンをコードするDNA配列を、樹脂カラム、例えばニッケル・セファロースとの高い結合親和性によって、組み換えタンパク質の1ステップ精製のために使用することができる。親和性領域の一例は、His5(HHHHH)(SEQ ID No:3)、HisX6(HHHHHH)(SEQ ID No:4)、C-myc(EQKLISEEDL) (SEQ ID No:5)、Flag(DYKDDDDK)(SEQ ID No:6)、StrepTag(WSHPQFEK) (SEQ ID No:7)、ヘマグルチニン、例えばHA Tag(YPYDVPDYA)(SEQ ID No:8)、GST、チオレドキシン、セルロース結合領域、RYIRS(SEQ ID No:9)、Phe-His-His-Thr(SEQ ID No:10)、キチン結合領域、S-ペプチド、T7ペプチド、SH2領域、C末端RNAタグ、WEAAAREACCRECCARA(SEQ ID No:11)、金属結合領域、例えば亜鉛結合領域又はカルシウム結合領域、例えばカルシウム結合タンパク質(例えばカルモデュリン、トロポニンC、カルシニューリンB、ミオシン軽鎖、リカバリン、S-モデュリン、ビシニン、VILIP、ニューロカルシン、ヒッポカルシン、フレケニン、カルトラクチン、カルパイン大型サブユニット、S100タンパク質、パルブアルブミン、カルビンジンD9k、カルビンジンD28k、及びカルレチニン)に由来する領域、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、MyoD、Id、ロイシン・ジッパー配列、及びマルトース結合タンパク質を含む。
【0093】
異種配列の一例としては、FRB及びFKBPにおけるような配列、タンパク質キナーゼ(PKa-R)の調節サブユニット、及びタンパク質キナーゼ(PKa-C)の触媒サブユニット、src相同領域(SH2)、及びホスホリル化されることが可能な配列、例えばチロシン含有配列、14-3-3、例えば14-3-3tのイソ型(Mils他、2000参照)、及びホスホリル化されることが可能な配列、例えばWW領域を有するタンパク質(プロリン豊富分子に結合するタンパク質における配列(Ilsley他、2002;及びEidbond他、1996)、及びホスホリル化されることが可能な異種配列、例えばセリン及び/又はトレオニンを含有する配列、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びギラーゼB(GyrB)における配列が挙げられる。
【0094】
最適化されたヒドロラーゼ配列、並びに、ヒドロラーゼをコードするベクター及び宿主細胞
また、ヒドロラーゼ又はその融合体をコードする核酸配列を含む単離核酸分子(ポリヌクレオチド)も提供される。1実施態様の場合、単離核酸分子は、少なくとも1つの選択された宿主中の発現のために最適化された核酸配列を含む。最適化された配列は、コドン最適化された配列、すなわち、別の生物、例えば遠縁生物に対して1つの生物においてより頻繁に採用されるコドン、並びにKozak配列及び/又はイントロンを付加又は修飾するための、及び/又は望ましくない配列、例えば潜在的な転写因子結合部位を除去するための修飾形を含む。1実施態様の場合、ポリヌクレオチドは、突然変異デハロゲナーゼをコードする核酸配列を含む。この核酸配列は、選択された宿主細胞中で発現するように最適化される。1実施態様の場合、最適化されたポリヌクレオチドは、対応非最適化配列ともはやハイブリッド形成せず、例えば中又は高緊縮性条件下で非最適化配列とハイブリッド形成することはない。別の実施態様の場合、ポリヌクレオチドは、対応非最適化配列に対する核酸配列同一性が90%未満、例えば80%未満であり、そして任意には、非最適化配列によってコードされたポリペプチドと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、又は90%以上のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。構築物、例えば発現カセット、及び単離核酸分子含むベクター、並びに、単離核酸分子、構築物又はベクターを含むキットも提供される。
【0095】
ヒドロラーゼとの融合体をコードする核酸配列を含む核酸分子を、任意には、特定の宿主細胞内での発現のために最適化し、そしてやはり任意には、転写調節配列、例えば1又は複数のエンハンサー、プロモーター、転写終止配列又はこれらの組み合わせに作用結合することにより、発現カセットを形成する。
【0096】
1実施態様の場合、野生型又は突然変異形ヒドロラーゼ配列内のコドンを、特定の(選択された)細胞中で優先的に採用されるコドンで置換することにより、ヒドロラーゼ又はその融合体をコードする核酸配列が最適化される。好ましいコドンは、選択細胞中で比較的高いコドン使用頻度を有しており、そして好ましくは、これらのコドン導入の結果、選択宿主細胞中に存在する転写因子に対する転写因子結合部位が比較的僅かにしか導入されず、及びその他の望ましくない構造属性も比較的僅かにしか導入されない。こうして、最適化核酸生成物は、コドン使用頻度の改善により、発現レベルが改善されており、また、望ましくない転写調節配列の数の減少により、不適切な転写挙動のリスクが軽減されている。
【0097】
本発明の単離され最適化された核酸分子は、コドンの30%、35%、40%、又は45%超、例えば50%、55%、60%以上において対応する野生型核酸配列とは異なるコドン組成を有していてよい。本発明において使用するための好ましいコドンは、特定の生物中の同じアミノ酸に対する少なくとも1つの他のコドンよりも頻繁に採用されるコドンであり、またこのコドンはより好ましくは、その生物における低使用頻度のコドンではなく、そしてクローニング又は核酸分子発現のスクリーニングのために使用される生物内の低使用頻度コドンでもない。さらに、或る特定のアミノ酸(すなわち3つ又は4つ以上のコドンを有するアミノ酸)の好ましいコドンは、他の(好ましくない)コドンよりも頻繁に採用される2つ又は3つ以上のコドンを含んでもよい。1つの生物において別の生物におけるよりも頻繁に採用されるコドンが核酸分子中に存在する結果、核酸分子は、これらのコドンをより頻繁に採用する生物の細胞中に導入されると、これらの細胞中の野生型又は親核酸配列の発現よりも高いレベルでこれらの細胞中で発現されることになる。
【0098】
本発明の1実施態様の場合、異なるコドンは、哺乳動物中により頻繁に採用されるコドンであるのに対して、別の実施態様の場合、異なるコドンは、植物中により頻繁に採用されるコドンである。異なる生物に対する好ましいコドンは当業者に知られており、例えばwww.kazusa.or.jp./codon/を参照されたい。特定のタイプの哺乳動物、例えばヒトは、別のタイプの哺乳動物とは異なる好ましいコドン集合を有していることがある。同様に、特定のタイプの植物も、別のタイプの植物とは異なる好ましいコドン集合を有していることがある。本発明の1実施態様の場合、異なるコドンのうちの大部分は、所期宿主細胞中の好ましいコドンである。哺乳動物(例えばヒト)及び植物を含む生物の好ましいコドンは、当業者によく知られている(例えばWada他、1990;Ausubel他、1997)。例えば好ましいヒトの一例としては、CGC (Agr), CUG (Leu), UCU (Ser), AGC (Ser), ACC (Thr), CCA (Pro), CCT (Pro), GCC (Ala), GGC (Gly), GUG (Val), AUC (Ile), AUU (Ile), AAG (Lys), AAC (Asn), CAG (Gln), CAC (His), GAG (Glu), GAC (Asp), UAC (Tyr), UGC (Cys), 及びTTC (Phe)が挙げられる(Wada他、1990)。こうして、1実施態様の場合、本発明の合成核酸分子は、数が増やされた好ましいヒト・コドン、例えばCGC, CUG, UCU, AGC, ACC, CCA, CCU, GCC, GGC, GUG, AUC, AUU, AAG, AAC, CAG, CAC, GAG, GAC, UAC, UGC, 及びUUC、又はこれらの任意の組み合わせを有することによって、野生型核酸配列とは異なるコドン組成を有している。例えば、本発明の核酸分散は、野生型核酸配列に対して、数が増やされたCUG又はUUGロイシンをコードするコドン、GUG又はGUCバリンをコードするコドン、GGC又はGGUグリシンをコードするコドン、AUC又はAUUイソロイシンをコードするコドン、CCA又はCCUプロリンをコードするコドン、CGC又はCGUアルギニンをコードするコドン、AGC又はTCUセリンをコードするコドン、ACC又はACUトレオニンをコードするコドン、GCC又はGCUアラニンをコードするコドン、又はこれらの任意の組み合わせを有していてよい。別の実施態様の場合、好ましいC. elegansコドンの一例としては、UUC (Phe), UUU (Phe), CUU (Leu), UUG (Leu), AUU (Ile), GUU (Val), GUG (Val), UCA (Ser), UCU (Ser), CCA (Pro), ACA (Thr), ACU (Thr), GCU (Ala), GCA (Ala), UAU (Tyr), CAU (His), CAA (Gin), AAU (Asn), AAA (Lys), GAU (Asp), GAA (Glu), UGU (Cys), AGA (Arg), CGA (Arg), CGU (Arg), GAA (Gly)、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに別の実施態様の場合、好ましいDrosophiliaコドンの一例としては、UUC (Phe), CUG (Leu), CUC (Leu), AUC (Ile), AUU (Ile), GUG (Val), GUC (Val), AGC (Ser), UCC (Ser), CCC (Pro), CCG (Pro), ACC (Thr), ACG (Thr), GCC (Ala), GCU (Ala), UAC (Tyr), CAC (His), CAG (Gln), AAC (Asn), AAG (Lys), GAU (Asp), GAG (Glu), UGC (Cys), CGC (Arg), GGC (Gly), GGA (Gly)、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましい酵母コドンの一例としては、UUC (Phe), UUG (Leu), UUA (Leu), CCU (Leu), AUU (Ile), GUU (Val), UCU (Ser), UCA (Ser), CCA (Pro), CCU (Pro), ACU (Thr), ACA (Thr), GCU (Ala), GCA (Ala), UAU (Tyr), UAC (Tyr), CAU (His), CAA (Gln), AAU (Asn), AAC (Asn), AAA (Lys), AAG (Lys), GAU (Asp), GAA (Glu), GAG (Glu), UGU (Cys), CGU (Trp), AGA (Arg), CGU (Arg), GGU (Gly), GGA (Gly)、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。同様に、植物中により頻繁に採用される、コドン数が増大された核酸分子も、数が増やされた植物コドン、例えばCGC (Arg), CUU (Leu), UCU (Ser), UCC (Ser), ACC (Thr), CCA (Pro), CCU (Pro), GCU (Ser), GGA (Gly), GUG (Val), AUC (Ile), AUU (Ile), AAG (Lys), AAC (Asn), CAA (Gln), CAC (His), GAG (Glu), GAC (Asp), UAC (Tyr), UGC (Cys), UUC (Phe)、又はこれらの任意の組み合わせを有することにより、野生型又は親核酸配列とは異なるコドン組成を有する(Murray他、1990)。異なるコドンは、異なるタイプの植物に応じて異なっていてよい(Wada他、1990)。
【0099】
1実施態様の場合、ヒドロラーゼ又はその融合体をコードする最適化核酸配列は、対応ヒドロラーゼ又はその融合体をコードする非最適化核酸配列に対して100%未満、例えば90%未満、又は80%未満の核酸配列同一性を有する。例えば、DhaAをコードする最適化核酸配列は、対応DhaAをコードする非最適化(野生型)核酸配列に対して、約80%未満の核酸配列同一性を有しており、そして最適化核酸配列によってコードされたDhaAは任意には、対応する野生型DhaAに対して、少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有している。1実施態様の場合、最適化核酸配列によってコードされたDhaAの活性は、非最適化配列によってコードされたDhaAの活性の少なくとも10%、例えば50%以上であり、例えば最適化核酸配列によってコードされた突然変異形DhaAが基質に結合する効率は、非最適化核酸配列によってコードされた突然変異形DhaAが同じ基質に結合する効率と同じ、すなわちその少なくとも50%、80%、100%、又はこれを上回る。
【0100】
突然変異形DhaAに対応する最適化DhaA遺伝子の例は、下記コドン最適化配列(E. coli及び種々の哺乳動物種に対する希少コドンを除外する)を有し、D78K、K175M、C176G、H272N、及びY273F置換をコードし:
【化1】

この配列は、
【化2】

をコードする。
【0101】
核酸分子又は発現カセットは、任意には選択可能なマーカー遺伝子を含むベクター、例えばプラスミド又はウィルス・ベクターに導入することができ、そしてベクターは該当細胞、例えば原核細胞、例えばE. coli、Streptomyces種、Bacillus種、及びStaphyococcus種など、並びに、植物(双子葉又は単子葉)、真菌、酵母、例えばPichia, Saccharomyces又はSchizosaccharomyces、又は哺乳動物細胞を含む真核細胞に導入することができる。好ましい哺乳動物細胞は、牛、山羊、羊、犬、猫、ヒト以外の霊長類、例えばサル、及びヒトの細胞を含む。好ましい哺乳動物細胞としては、CHO、COS、293、Hela、CV-1、SH-SY5Y(ヒト神経芽腫細胞)、HEK293、及びNIH3T3細胞が挙げられる。
【0102】
コードされた突然変異形ヒドロラーゼの発現は、原核細胞又は真核細胞内で発現能力のある任意のプロモーターによって制御されてよい。好ましい原核細胞プロモーターの一例としては、SP6, T7, T5, tac, bla, trp, gal, lac又はマルトース・プロモーターが挙げられる。好ましい真核細胞プロモーターの一例としては、構成的プロモーター、例えばウィルス・プロモーター(例えばCMV, SV40及びRSVプロモーター)、並びに調節性プロモーター(例えばtetプロモーターのような誘導性又は抑制性プロモーター)、hsp70プロモーター、及びCREによって調節される合成プロモーターが挙げられる。1実施態様の場合、クローニング又は発現のためのベクターは、米国特許出願公開第20050074785号明細書及び同第20050074883号明細書に開示されているようなFlexi(登録商標)ベクター(これらの開示内容を参考のため本明細書中に引用する)。Gateway(登録商標)、又は任意のその他の好適なクローニング又は発現ベクターを含む。細菌発現のためのベクターはpGEX-5X-3を含み、そして真核細胞発現のためのベクターは一例としてpCIneo-CMVを含む。
【0103】
本発明の核酸分子、発現カセット及び/又はベクターは、例えばカルシウム媒介性形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、及び粒子衝撃などを含む任意の方法によって、細胞に導入することができる。
【0104】
官能基
本発明の基質及び方法において有用な官能基は、検出され得る又は検出能力のある分子である。本発明の範囲に含まれる官能基は、二官能性リンカーの1つの反応性置換基に、又はヒドロラーゼに対する基質に共有結合されることが可能であり、そして本発明の基質部分として、自然界に見いだされる基質に結合されない官能基と実質的に同じ活性を有しており、突然変異形ヒドロラーゼと安定な複合体を形成することができる。官能基はこのように、その官能基を有する基質と突然変異形ヒドロラーゼとの間の安定的な複合体の検出、及び任意には単離を容易にする1又は複数の特性を有している。例えば、官能基は、特徴的な電磁スペクトル特性、例えば発光又は吸光、磁性、電子スピン共鳴、電気容量、誘電定数、又は導電率を有する官能基、並びに、強磁性、常磁性、反磁性、発光性、電気化学発光性、蛍光性、燐光性、クロマチック、抗原性であるか又は特徴的な質量を有する官能基を含む。官能基の一例として、核酸分子、すなわち、DNA又はRNA、例えば、ヌクレオチド類似体を有するオリゴヌクレオチド又はヌクレオチド、タンパク質に結合することができるDNA、該当遺伝子に対応する単鎖DNA、該当遺伝子に対応するRNA、終止コドンを欠いたmRNA、アミノアシル化イニシエーターtRNA、アミノアシル化アンバーサプレッサーtRNA、又はRNAiのための二本鎖RNA、タンパク質、例えば蛍光タンパク質、ペプチド、ペプチド核酸、リガンドによって認識されるエピトープ、例えばビオチン又はストレプトアビジン、ハプテン、アミノ酸、脂質、脂質二重層、固形支持体、フルオロフォア、クロモフォア、レポーター分子、放射性核種、例えば放射能測定に使用するための放射性同位体、又は同位体でコードされた親和性タグ(ICAT)のような方法に使用するための安定同位体、電子不透明分子、X線造影試薬、MRI造営試薬、例えばマンガン、ガドリニウム(III)又は酸化鉄粒子などが挙げられる。1実施態様の場合、官能基は、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、多糖、三重項増感剤、例えばCALI、核酸分子、薬物、毒素、脂質、ビオチン、又は固形支持体、例えば自己組織化単分子層(例えばKwon他、2004参照)であり、Ca2+に結合し、K+に結合し、Na+に結合し、pH感受性であり、電子不透明であり、クロモフォアであり、MIR造影剤であり、NOの存在において蛍光を発し、又は反応性酸素、ナノ粒子、酵素、酵素に対する基質、酵素の阻害剤、例えば自殺基質(例えばKwon他、2004参照)、補因子、例えばNADP、補酵素、スクシニミジル・エステル又はアルデヒド、ルシフェリン、グルタチオン、NTA、ビオチン、cAMP、ホスファチジリノシトール、cAMPに対するリガンド、金属、スピントラップとして使用するための窒素酸化物又はニトロン(電子スピン共鳴(ESP)によって検出)、時間分解蛍光において例えば造影剤として使用するための、又は金属を捕捉するための金属キレート剤、例えば照射がケージド化合物、例えばフルオロフォアを解放する場合のケージド化合物、インターカレーター、例えばDNAに結合するのに有用な、又は光活性化可能な分子としてのソラレン又はその他のインターカレーター、例えば基質をDNA又はRNA内に組み入れるのを可能にするための三リン酸塩又はホスホルアミジト、抗体、又はヘテロ二官能性架橋剤、例えばタンパク質又はその他の分子を共役するのに有用な架橋剤、一例としてヒドラジド、アリールアジド、マレイミド、ヨードアセトアミド/ブロモアセトアミド、N−ヒドロキシスクシニミジル・エステル、混合二硫化物、例えば二硫化ピリジル、グリオキサル/フェニルグリオキサル、ビニルスルホン/ビニルスルホンアミド、アクリルアミド、ボロン酸エステル、ヒドロキサム酸、イミド酸エステル、イソシアネート/イソチオシアネート、又はクロロトリアジン/ジクロロトリアジンに対して感受性である。
【0105】
例えば、官能基は一例として、1又は複数のアミノ酸(自然発生型アミノ酸又は非天然アミノ酸、抗体又はその断片を含むペプチド又はポリペプチド(タンパク質)、His-tag、FLAGタグ、Streptag、酵素、補因子、補酵素、酵素のためのペプチド又はタンパク質基質、例えば分枝状ペプチド基質(例えばZ−アミノベンゾイル(Abz)-Gly-Pro-Ala-Leu-Ala-ニトロベンジルアミド(NBA)、自殺基質、又は受容体、1又は複数のヌクレオチド(例えばATP, ADP, AMP, GTP又はGDP)(その類似体、例えばオリゴヌクレオチドを含む)、遺伝子又はその一部に対応する二本鎖又は一本鎖DNA、例えば、転写因子のようなタンパク質に結合することができるDNA、遺伝子に対応するRNA、例えば終止コドンを欠いているmRNA、又はその一部、RNAiのための二本鎖RNA又はそのためのベクター、糖タンパク質、多糖、ペプチド−核酸(PNA)、脂質二重層を含む脂質を含み;或いは、固形支持体、例えば堆積粒子、例えば磁気粒子、セファロース又はセルロース・ビーズ、膜、ガラス、例えばガラス・スライド、セルロース、アルギン酸塩、プラスチック又はその他の合成的に調製されたポリマー、例えばエッペンドルフ管又はマルチウェル・プレートのウェル、自己組織化単分子層、表面プラズモン共鳴チップ、又は電子伝導表面を有する固形支持体であり、そして薬物、例えば化学療法薬、例えばドキソルビシン、5−フルオロウラシル、又はカンプトサル(CPT-11; Irinotecan)、アミノアシル化tRNA、例えばアミノアシル化イニシエーターtRNA又はアミノアシル化アンバーサプレッサーtRNA、Ca2+に結合する分子、K+に結合する分子、Na+に結合する分子、pH感受性である分子、放射性核種、電子不透明である分子、造影剤、例えばバリウム、ヨウ素、又はその他のMRI又はX線造影剤、NOの存在において蛍光を発する分子を含み、又は反応性酸素、ナノ粒子、例えば免疫金粒子、常磁性ナノ粒子、アップコンバート・ナノ粒子、又は量子ドット、酵素のための非タンパク質基質、酵素の阻害剤、可逆的又は不可逆的阻害剤、キレート剤、架橋基、例えばスクシニミジル・エステル又はアルデヒド、グルタチオン、ビオチン、又はその他のアビジン結合分子、アビジン、ストレプトアビジン、cAMP、ホスファチジルイノシトール、ヘム、cAMPに対するリガンド、金属、NTAに対して感受性であり、そして、1実施態様の場合、1又は複数の色素、例えばキサンテン色素、カルシウム感受性色素、例えば1−[2−アミノ−5-(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキシ−9−キサンテニル)−フェノキシ]−2−(2’−アミノ−5’−メチルフェノキシ)エタン−N,N,’,N’−四酢酸(Fluo-3)、ナトリウム感受性色素、例えば1,3−ベンゼンジカルボン酸、4、4’−[1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン−7,16−ジイルビス(5−メトキシ−6,2−ベンゾフランジイル)]ビス(PBFI)、NO感受性色素、例えば4−アミノ−5−メチルアミノ−2’,7’−ジフルオレセイン、又はその他のフルオロフォアを含む。1実施態様の場合、官能基はハプテン又は免疫原性分子、すなわちその分子に対して特異的な抗体によって結合される分子である。1実施態様の場合、官能基は放射性核種ではない。別の実施態様の場合、官能基は、診断法において有用な分子を含む放射性核種、例えば3H、14C、35S、125I、131Iである。
【0106】
特定の官能基を検出する方法が当業者に知られている。例えば核酸分子は、ハイブリッド形成、増幅、核酸分子に対して特異的な核酸結合タンパク質との結合、酵素的アッセイ(例えば核酸分子がリボザイムである場合)によって検出することができ、或いは核酸分子自体が、検出され得るか又は検出能力のある分子、例えば放射性標識又はビオチンを含む場合、これは、その分子に適したアッセイによって検出することができる。
【0107】
官能基は一例として、ハプテン、例えば免疫原性を高めるのに有用な分子、例えばキーホール・リンペット・ヘマシアニン(KLH)、切断可能な標識、例えば光切断可能なビオチン、及び蛍光標識、例えばN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)改質型クマリン、及びスクシニミド又はスルホノスクシニミド改質型BODIPY(UV及び/又は可視光励起蛍光検出によって検出することができる)、ローダミン、例えばR110、ロドール、CRG6、Texas Methyl Red(カルボキシテトラメチルローダミン)、5−カルボキシ−X−ローダミン、又はフルオロセイン、クマリン誘導体、例えば7−アミノクマリン、及び7−ヒドロキシクマリン、2−アミノ−4−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシピレン、レソルフィン、フェナレノン又はベンズフェナレノン(米国特許第4,812,409号明細書)、アクリジノン(米国特許第4,810,636号明細書)、アントラセン、並びにα−及びβ−ナフトールの誘導体、フッ素化フルオレセイン及びロドールを含むフッ素化キサンテン誘導体(例えば米国特許第6,162,931号明細書)、生物発光分子、例えばルシフェリン、コエレンテラジン、ルシフェラーゼ、化学発光分子、例えば安定化ジオキセタン、及び電気化学発光分子を含む。対応する野生型ヒドロラーゼに対する基質に結合されることにより突然変異形ヒドロラーゼに結合される蛍光(又は発光)官能基を使用することにより、リアルタイムでホスホリル化のような系内の変化を感知することができる。さらに、金属イオンの化学センサーのような蛍光分子、例えばCu2+のための9−カルボニルアントラセン改質型グリシル−ヒスチジル−リシン(GHK)を本発明の基質中に採用することにより、基質に結合するタンパク質を標識付けすることができる。発光又は蛍光官能基、例えばBODIPY、ローダミン・グリーン、GFP、又は赤外色素も、官能基として使用され、例えばBRET、FRET、LRET、又は電気泳動を用いて相互作用研究に採用することができる。
【0108】
別のクラスの官能基は、アクセプター基を含有する分子と選択的に相互作用する分子(「親和性」分子)である。このように、親和性分子を含むヒドロラーゼに対する基質は、親和性分子と別の分子、例えば起源が生物学的又は非生物学的であってよいアクセプター分子とが選択的に相互作用することにより、このような基質と突然変異形ヒドロラーゼとを有する複合体の分離を容易にすることができる。例えば、親和性分子が相互作用する特定分子(アクセプター分子と呼ばれる)は、小有機分子、化学基、例えばスルフヒドリル基(−SH)、又は大型生体分子、例えば抗体又は親和性分子に対するその他の自然発生型リガンドであってよい。結合は、性質において通常化学的であり、また共有結合又は非共有結合又は相互作用、例えばイオン結合又は水素結合の形成に関与することができる。アクセプター分子は、溶液中で遊離していてよく、又はそれ自体固形又は半固形表面、ポリマーマトリックス、又は固形又は半固形基質の表面上の残基に結合されてもよい。相互作用は、外部作用因子、例えば光、温度、圧力、又は触媒として作用する化学的又は生物学的分子の添加によって始動させることもできる。反応混合物からの複合体の検出及び/又は分離は、親和性分子とアクセプター分子との相互作用、通常は一種の結合により行われる。
【0109】
親和性分子の例は、免疫原性分子のような分子、例えばタンパク質、ペプチド、炭水化物、又は脂質、すなわち、その分子に対して特異的な抗体を調製するのに有用な任意の分子;ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、及びこれらの誘導体;金属結合分子;及びこれらの分子のフラグメント及び組み合わせを含む。親和性分子の例は、His5(HHHHH)(SEQ ID No:3)、HisX6(HHHHHH)(SEQ ID No:4)、C-myc(EQKLISEEDL) (SEQ ID No:5)、Flag(DYKDDDDK)(SEQ ID No:6)、StrepTag(WSHPQFEK) (SEQ ID No:7)、HA Tag(YPYDVPDYA)(SEQ ID No:8)、チオレドキシン、セルロース結合領域、キチン結合領域、S-ペプチド、T7ペプチド、カルモデュリン結合ペプチド、C末端RNAタグ、金属結合領域、金属結合反応基、アミノ酸反応基、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、及びマルトース結合タンパク質を含む。例えば、ビオチンを含むヒドロラーゼに対する基質を突然変異形ヒドロラーゼと接触させる。突然変異形ヒドロラーゼと基質との複合体中のビオチンの存在は、複合体が、アビジン分子、例えば表面(例えばビーズ、マイクロウェル、ニトロセルロースなど)上に塗布されたストレプトアビジン分子に選択的に結合するのを可能にする。好適な表面は、クロマトグラフィ分離のための樹脂、プラスチック、例えば組織培養表面又は結合プレート、マイクロタイター皿及びビーズ、セラミック及びガラス、磁気粒子を含む粒子、ポリマー及びその他のマトリックスを含む。処理された表面を、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄することにより、ビオチンを欠いた粒子を除去し、そしてビオチン含有複合体を単離する。いくつかの事例の場合、これらの材料は、生体分子感知デバイス、例えば光ファイバー、ケムフェット、及びプラズモン検出器の一部であってよい。
【0110】
親和性分子の別の例はダンシルリシンである。ダンシル環と相互作用する抗体は、商業的に入手可能であり(Sigma Chemical; St. Louis, MO)、又は、“Antibodies: A Laboratory Manual (Harlow及びLane, 1988)”に記載されているように、既知のプロトコルを使用して調製することもできる。例えば、抗ダンシル抗体はクロマトグラフィ・カラムのパッキング材料上に固定化される。この親和性カラム・クロマトグラフィ法は、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと基質との複合体が固定化抗体と相互作用するのに対して、他の分子がカラムを通過することに起因して、この複合体がカラム上に維持されることにより、分離を達成する。次いで抗体−抗原相互作用を妨げることにより、複合体を解放することができる。特定のクロマトグラフィ・カラム材料、例えばイオン交換又は親和性Sepharose、Sephacryl、Sephadex、及びその他のクロマトグラフィ樹脂が商業的に入手可能である(Sigma Chemical; St. Louis, MO; Pharmacia Biotech; Piscataway, N.J.)。ダンシルリシンはその蛍光特性により好都合に検出することができる。
【0111】
抗体をアクセプター分子として採用すると、生化学的分離法、例えばフィルター又はその他の表面、例えばビーズ、プレート又は樹脂上に抗体を免疫沈降させ固定化することにより、分離を行うこともできる。例えば、磁気ビーズに親和性分子特異的又はヒドロラーゼ特異的抗体を塗布することにより、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと基質との複合体を単離することができる。ビーズはしばしば、磁界を用いて混合物から分離される。
【0112】
別のクラスの機能分子は、電磁線を使用して検出可能な分子を含み、これらの分子の一例としては、キサンテン・フルオロフォア、ダンシル・フルオロフォア、クマリン及びクマリン誘導体、蛍光アクリジニウム部分、ベンゾピレン系フルオロフォア、並びに7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、及び3−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)−2,3−ジアミノ−プロピオン酸が挙げられる。好ましくは、蛍光分子は、天然型アミノ酸とは異なる波長で高い蛍光量子収率を有し、そしてより好ましくは、可視スペクトル部分において、又はUV及び可視の両スペクトル部分において励起することができる高い蛍光量子収率を有している。予め選択された波長で励起すると、分子は視覚的に、又はコンベンショナルな蛍光検出法を用いて、低濃度で検出することができる。電気化学発光分子、例えばルテニウム・キレート及びその誘導体、又は窒素酸化物アミノ酸及びこれらの誘導体は、フェムトモル範囲以下で検出することができる。
【0113】
1実施態様の場合、任意に検出可能な官能基は:
【化3】

(式中R1はC1−C8である)のうちの1つを含む。
【0114】
蛍光分子に加えて、相互作用、及び電磁場及び輻射線に対する分子の応答に基づく物理特性を有する種々の分子を使用することにより、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと基質との複合体を検出することができる。これらの特性は、電磁スペクトルのUV、可視及び赤外領域内の吸収、共鳴ラマン分光法によりさらに増強することができるラマン活性の発色団の存在、電子スピン共鳴活性及び核磁気共鳴、及び例えば質量分析計を介した分子量を含む。
【0115】
親和性分子を有する複合体を検出/単離する方法は、ゲル濾過、高速圧力又は高圧液体クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、及びイオン交換クロマトグラフィを含むクロマトグラフィ技術を含む。他のタンパク質分離法、例えば電気泳動法、等電点電気泳動法、及び質量分析法も、本発明の突然変異形ヒドロラーゼと基質との複合体を検出し、続いて単離するのに有用である。
【0116】
リンカー
符号「L」によっても識別される「リンカー」という用語は、反応基を含む基質又は反応基に1又は複数の官能基を共有結合する基を意味する。本明細書中に使用されるリンカーは、単一共有結合ではない。リンカーの構造は、これが標的酵素によって結合することができる基質を生成するのであれば、さほど重要ではない。1実施態様の場合、リンカーは、官能基(R)と反応基とを、約5オングストローム〜約1000オングストローム(この値を含む)の長さだけ分離する二価基であってよい。他の好適なリンカーは、Rと反応基とを約5オングストローム〜約100オングストロームだけ分離するリンカー、並びに、Rと反応基とを約5オングストローム〜約50オングストロームだけ、約5オングストローム〜約25オングストロームだけ、約5オングストローム〜約500オングストロームだけ、約30オングストローム〜約100オングストロームだけ、分離するリンカーを含む。
【0117】
1実施態様の場合、リンカーはアミノ酸である。
【0118】
別の実施態様の場合、リンカーはペプチドである。
【0119】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が、アリール又はヘテロアリール環で置換されている。
【0120】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が、1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)のアリール又はヘテロアリール環で置換されている。
【0121】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が、1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)のヘテロアリール環で置換されている。
【0122】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されている。
【0123】
別の実施態様の場合、リンカーは式−W−F−W−の二価基であり、Fは(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、(C2−C30)アルキニル、(C3−C8)シクロアルキル、又は(C6−C10)であり、Wは−N(Q)C(=O)−、−C(=O)N(Q)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(Q)−、−C(=O)−、又は直接的な結合であり;各Qは独立してH又は(C1−C6)アルキルである。
【0124】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されている。
【0125】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含む。
【0126】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖である。
【0127】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約20の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されている。
【0128】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約20の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3又は4つ)の二重結合又は三重結合を含む。
【0129】
別の実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約20の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖である。
【0130】
別の実施態様の場合、リンカーは、−(CH2CH2O)−1-10である。
【0131】
別の実施態様の場合、リンカーは、−C(=O)NH(CH2)3−;
−C(=O)NH(CH2)5C(=O)NH(CH2)−;
−CH2OC(=O)NH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)−;
−C(=O)NH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3−;
−CH2OC(=O)NH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3−;
−(CH2)4C(=O)NH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3−;
−C(=O)NH(CH2)5C(=O)NH(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3−である。
【0132】
別の実施態様の場合、リンカーは1又は複数の二価ヘテロアリール基を含む。
【0133】
具体的には、(C1−C30)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オプチル、ノニル、又はデシルであってよく;(C3−C8)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルであってよく;(C2−C30)アルケニルは、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、又はデセニルであってよく;(C2−C30)アルキニルは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、又はデシニルであってよく;(C6−C10)アリールは、フェニル、インデニル、又はナフチルであってよく;そしてヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(又はそのN−酸化物)、チエニル、ピリミジニル(又はそのN−酸化物)、インドリル、イソキノリル(又はそのN−酸化物)又はキノリル(又はそのN−酸化物)であってよい。
【0134】
「芳香族」という用語は、アリール及びヘテロアリール基を含む。
【0135】
アリールは、フェニル基、又は少なくとも一方の環が芳香族である環原子数約9〜10のオルト縮合二環式炭素環基を意味する。
【0136】
ヘテロアリールは、炭素から成る5又は6つの環原子と、非過酸化物酸素、硫黄、及びN(X)(Xは存在しないか又はH、O、(C1−C4)アルキル、フェニル、又はベンジルである)から成る群からそれぞれ選択された1〜4つのヘテロ原子とを含有する単環式芳香環の環炭素を介して結合された基、並びに、約8〜10個の環原子が誘導されたオルト縮合二環式複素環、具体的には、ベンズ誘導体、又はプロピレン、トリメチレン、又はテトラメチレン・ジラジカルを縮合することにより誘導されたオルト縮合二環式複素環の基を含む。
【0137】
「アミノ酸」という用語は、リンカーとの関連において使用されるときには、D又はL形態の天然型アミノ酸(例えばAla, Arg, Asn, Asp, Cys, Glu, Gln, Gly, His, Hyl, Hyp, Ile, Leu, Lys, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, 及びVal)、並びに非天然型アミノ酸(例えばホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタメート;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシイラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、及びtert−ブチルグリシン)の残基を含む。この用語はまた、コンベンショナルなアミノ保護基(例えばアセチル又はベンジルオキシカルボニル)を担持する天然型及び非天然型アミノ酸、並びに、カルボキシ末端で保護される天然型及び非天然型アミノ酸(例えば(C1−C6)アルキル、フェニル又はベンジル・エステル又はアミドとして)を含む。他の好適なアミノ保護基及びカルボキシ保護基は、当業者に知られている(例えばGreene, Protecting Groups In Organic Synthesis; Wiley: New York, 1981、及びこの中に引用されている参考文献を参照)。アミノ酸は、カルボキシ末端、アミノ末端、又は任意の他の好都合な結合点、例えばシステインの硫黄を介して別の分子に結合することができる。
【0138】
「ペプチド」という用語は、リンカーとの関連において使用されるときには、2〜25個のアミノ酸(例えば上記)又はペプチジル残基の配列を意味する。配列は線状又は環状であってよい。例えば環状ペプチドは調製することができ、又は1つの配列内の2つのシステイン残基間にジスルフィド橋を形成する結果生じ得る。ペプチドは、カルボキシ末端、アミノ末端、又は任意の他の好都合な結合点、例えばシステインの硫黄を介して別の分子に結合することができる。好ましくは、ペプチドは3〜25個、又は5〜21個のアミノ酸を含む。米国特許第4,612,302号;同第4,853,371号;同第4,684,620号の各明細書に開示されているように、ペプチド誘導体を調製することができる。本明細書中に具体的に挙げるペプチド配列は、アミノ末端を左側に、そしてカルボキシ末端を右側に書く。
【0139】
基質の例
1実施態様の場合、ヒドロラーゼ基質は、式(I):R−リンカー−A−Xの化合物を有しており、Rは1又は複数の官能基であり、リンカーは、C、N、S、又はOを含む多原子線状又は分枝状鎖、又は1又は複数の環、例えば飽和又は不飽和環、例えば1又は複数のアリール環、ヘテロアリール環、又はこれらの任意の組み合わせを含む基であり、A−Xはデハロゲナーゼ、例えばハロアルカン・デハロゲナーゼ、又は脂肪族又は芳香族ハロゲン化基質内の炭素−ハロゲン結合を切断するデハロゲナーゼに対する基質、例えばRhodococcus、Sphingomonas、Staphylococcus, Pseudomonas, Burkholderia, Agrobacterium又はXanthobacterデハロゲナーゼに対する基質であり、そしてXはハロゲンである。1実施態様の場合、ハロゲン化アルキルを、1つ又は2つの官能基に共有結合する基であるリンカーLに共有結合することにより、デハロゲナーゼに対する基質を形成する。
【0140】
1実施態様の場合、リンカーを有するデハロゲナーゼのための、本発明の基質は、式(I):
R−リンカー−A−X (I)
を有し、Rは、1又は複数の官能基(例えばフルオロフォア、ビオチン、ルミノフォア、又は蛍光性又は発光性分子、又はミクロスフェア、膜、高分子プレート、ガラス・ビーズ、及びガラス・スライドなどを含む固形支持体)であり、リンカーは、C、N、S、又はOを含む多原子線状又は分枝状鎖であり、A−Xはデハロゲナーゼに対する基質であり、そしてXはハロゲンである。1実施態様の場合、A−Xは、デハロゲナーゼに対するハロ脂肪族又はハロ芳香族基質である。1実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約12〜30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1つ又は2つ以上(例えば1、2、3、又は4つ)の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1つ又は2つ以上(例えば2、3、又は4つ)のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上(例えば1、2、3、又は4つ)が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されている。1実施態様の場合、リンカーは、原子数が3〜30個、例えば11〜30個である。1実施態様の場合、リンカーは(CH2CH2O)yを含み、y=2〜8である。1実施態様の場合、Aは(CH2)nであり、n=2〜10、例えば4〜10である。1実施態様の場合、AはCH2CH2又はCH2CH2CH2である。別の実施態様の場合、Aはアリール又はヘテロアリール基を含む。1実施態様の場合、デハロゲナーゼ、例えばRhodococcusデハロゲナーゼに対する基質内のリンカーは、C、N、S、又はOを含む多原子線状又は分枝状鎖であり、そして、官能基Rが芳香環系を含むか又は固形支持体である場合、原子数が11〜30である。
【0141】
別の実施態様の場合、リンカーを有するデハロゲナーゼのための、本発明の基質は、式(II):
R−リンカー−CH2−−CH2−CH2−X (II)
を有し、Xはハロゲン、好ましくは塩素である。1実施態様の場合、Rは、1又は複数の官能基、例えばフルオロフォア、ビオチン、ルミノフォア、又は蛍光性又は発光性分子であるか、又はミクロスフェア、膜、高分子プレート、及びガラス・ビーズなどを含む固形支持体)である。Rが放射性標識、又は小さな検出可能な原子、例えば分光学的に活性の同位体である場合、リンカーは原子数0〜30であってよい。
【0142】
デハロゲナーゼ基質の例は、米国特許出願公開第2006/0024808号及び同第2005/0272114号の各明細書に記載されている。これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0143】
方法の例
本発明は、細胞中の分子の発現、位置、及び/又はトラフィッキングをモニタリングし、また細胞内部のミクロ環境の変化をモニタリングすることにより、例えば試料中、例えば細胞中に存在し得る1又は複数の分子を画像化、同定、表示、又は検出するか、又は分子、例えば細胞中の分子を捕捉、精製、又は単離する方法を提供する。これらの方法は、本発明のヒドロラーゼ基質及び突然変異形ヒドロラーゼを採用する。本発明の方法に採用されるヒドロラーゼ基質は、好ましくは、水及びpHが約6以上の水溶液を含む水溶液又はほとんど水溶性の溶液中に可溶性である。しかし、水溶液又は緩衝剤中に希釈する前に、基質原液を有機溶媒中に溶解することもできる。このような有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒、例えばDMSO、DMF、N−メチルピロリドン、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びその他の非ヒドロキシ性の完全水混和性溶媒である。例えば、バックグラウンド標識又は望ましくない標識を最小限に抑えながら、妥当な時間以内に結果を得るための、使用されるべきヒドロラーゼ基質及び突然変異形ヒドロラーゼの濃度は、試験の条件及び所望の結果に依存する。ヒドロラーゼ基質の濃度は典型的には、ナノモルからマイクロモルまでの範囲である。対応突然変異形ヒドロラーゼを有するヒドロラーゼ基質の所要濃度は、申し分のない標識付けが達成される前に、基質の系統的な変化によって決定される。出発範囲は、当業者に知られた方法から容易に決定される。
【0144】
1実施態様の場合、光学的特性を有する官能基を含む基質を採用することにより、細胞分子と、突然変異形ヒドロラーゼを有する融合体の融合相手との相互作用を検出する。このような基質は、融合相手が細胞分子に結合し、突然変異形ヒドロラーゼが基質に結合するのに十分な時間にわたって、融合フラグメントを含む該当試料と組み合わせる。その後、官能基の光学応答を引き出すために選択された波長で、試料を照射する。任意には、試料を洗浄することにより、残留基質、過剰基質、及び未結合基質を除去する。1実施態様の場合、光学応答と、標準応答又は予想応答とをさらに比較することにより、試料の特定の特徴を割り出すために、標識付けを用いる。例えば、突然変異形ヒドロラーゼと結合された基質を使用することにより、試料中の空間的及び時間的な分布に関して、試料の特定成分をモニタリングする。或いは、突然変異形ヒドロラーゼと結合された基質を採用することにより、或る特定の分子の存在又は量を測定又は検出する。
【0145】
本質的に蛍光性のタンパク質、例えばGFPとは対照的に、蛍光性基質に結合された突然変異形ヒドロラーゼは、蛍光を維持するために天然型タンパク質構造を必要としない。蛍光性基質が結合された後、例えば変性電気泳動ゲル、例えばSDS-PAGE中、又は有機溶媒、例えばパラホルムアルデヒドで固定された細胞中で、突然変異形ヒドロラーゼを検出することができる。
【0146】
検出可能な光学応答は、直接的な観察又は機器によって知覚され得る試験系中のパラメータの変化又は発生を意味する。このような検出可能な応答は、色、蛍光、反射率、化学発光、偏光、光散乱、又はX線散乱の変化又は出現を含む。典型的には、検出可能な光学応答は、蛍光の変化、例えば蛍光の強度、励起又は発光波長分布の変化、蛍光寿命、蛍光偏光、又はこれらの組み合わせである。検出可能な光学応答は、試料全体を通して、又は突然変異形ヒドロラーゼに結合された基質を有する試料局所部分内に発生し得る。光学応答度と、標準応答又は予想応答とを比較することにより、試料が所与の特徴を有するかどうか、そして所与の特徴をどの程度有するかを見極めることができる。
【0147】
突然変異形ヒドロラーゼを含む試料は典型的には、受動的手段によって、すなわち基質とのインキュベーションによって標識付けされる。しかし、基質を試料中に導入する任意の方法、例えば細胞又はオルガネラ内への基質のマイクロインジェクション法を用いることにより、試料中へ基質を導入することができる。本発明の基質は一般に、使用濃度内では、生細胞及びその他の生体成分に対して非毒性である。
【0148】
本発明の基質と接触させた後すぐに、突然変異形ヒドロラーゼを含む試料を観察することができる。突然変異形ヒドロラーゼ又はこの融合体を含む試料を任意には、洗浄溶液、透過化及び/又は固定化溶液、及び付加的な検出試薬を含有するその他の溶液を含む他の溶液と、標識付け過程中に合体させる。基質との接触に続いて洗浄を行うと、洗浄後に非特異的バックグラウンドが減少するため、光学応答の検出を改善することができる。より低い標識付け濃度を使用することにより、洗浄を行わずに、申し分のない視覚化が可能になる。ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、低温メタノール、及び3:1メタノール:酢酸を含む数多くの固定剤及び固定化条件が、当業者に知られている。固定化は典型的には、細胞形態を維持し、また病原性試料を扱うときにバイオハザードを低減するために用いられる。基質の選択された実施態様は、細胞中に良好に保持される。固定化には任意には、例えばアセトン、エタノール、DMSO又は種々の洗剤による透過化が続くか又は伴うことにより、当業者に一般に知られている方法に基づいて、本発明の嵩高な基質が細胞膜を交差することが可能になる。任意には、基質の使用は、突然変異形ヒドロラーゼ又はその融合体を含む試料中に特定の細胞成分、細胞内物質、又は細胞条件が存在することに起因して検出可能な応答を生じさせる付加的な検出試薬の使用と組み合わせることができる。付加的な検出試薬が、基質とは異なるスペクトル特性を有する場合、多色の適用が可能である。
【0149】
光学特性を備えた官能基を有する基質と接触させた後、又は接触させている間の任意の時点で、突然変異形ヒドロラーゼ又はその融合体を含む試料を、検出可能な応答をもたらす波長の光で照射し、そして光学応答を検出する手段を用いて観察する。いくつかの基質は、周囲光を使用して比色検出可能であるのに対して、他の基質は、親フルオロフォアの蛍光特性によって検出される。例えば紫外線又は可視線波長発光灯、アーク灯、レーザー、又は日光、又は通常の室内光により照射すると、相補的な特異的結合対員に結合された基質を含む基質は、強力な可視線吸収並びに蛍光発光を示す。本発明の基質を照射するために有用な、選択される設備の一例としては、手持ち式紫外線灯、水銀アーク灯、キセノン灯、アルゴン・レーザー、レーザーダイオード、及びYAGレーザーが挙げられる。これらの照射源は任意に、レーザースキャナー、蛍光マイクロプレート・リーダー、標準又は小型蛍光光度計、又はクロマトグラフィ検出器内に一体化されている。この比色吸収又は蛍光発光は、視覚的検査によって、又は次の装置:CCDカメラ、ビデオ・カメラ、写真フィルム、レーザー走査装置、蛍光光度計、フォトダイオード、量子カウンター、落射蛍光顕微鏡、走査顕微鏡、フロー血球計算器、蛍光マイクロプレート・リーダーのうちのいずれの使用によって、又は信号増幅手段、例えば光電子倍増管によって検出される。突然変異形ヒドロラーゼ又はその融合体を含む試料が、フロー血球計算器、蛍光顕微鏡、又は蛍光光度計を使用して試験される場合、この機器は任意には、フルオロフォアである官能基を含む基質と、検出可能に異なる光学特性を有する第2フルオロフォアとを、基質の蛍光応答と第2のフルオロフォアとを区別することにより、区別して識別するために使用される。試料がフロー血球計算器を使用して試験される場合、試料の試験は任意には、選別装置を使用することにより、基質の蛍光応答に基づいて試料内部の粒子を単離することを含む。
【0150】
突然変異形ヒドロラーゼ及びこれらのヒドロラーゼの使用方法
1実施態様の場合、本発明は、第2突然変異デハロゲナーゼに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む第1突然変異デハロゲナーゼを提供する。第1及び第2の突然変異デハロゲナーゼは、1又は複数の官能基を含むデハロゲナーゼ基質との結合を形成し、この結合は、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である。第2突然変異デハロゲナーゼ中にはない第1突然変異デハロゲナーゼ中の少なくとも1つのアミノ酸置換は、機能発現又は結合キネティクスを改善する置換である。第1及び第2の突然変異デハロゲナーゼは、対応する野生型デハロゲナーゼ中で対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する残基内に、又は、野生型デハロゲナーゼ中で基質とエステル中間体を形成するアミノ酸残基に、少なくとも1つのアミノ酸置換を有している。機能発現又は結合キネティクスを改善する少なくとも1つの置換が、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、第1突然変異デハロゲナーゼは、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291及び292に相当する位置に少なくとも2つの置換を有する。1実施態様の場合、第1突然変異デハロゲナーゼは、SEQ ID No:1の位置58, 78, 87, 155, 172, 224, 227, 291又は292に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有し、そしてSEQ ID No:1の位置175, 176, 272又は273に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有する。1実施態様の場合、第1突然変異デハロゲナーゼは、SEQ ID No:1の位置58, 78, 155, 172, 224, 291又は292に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有し、そしてSEQ ID No:1の位置175, 176, 272又は273に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有する。例えば、位置291に相当する位置の第1突然変異デハロゲナーゼ内の置換型アミノ酸が、G、S又はQであり、又は、位置80に相当する位置の第1突然変異デハロゲナーゼ内の置換型アミノ酸が、Q、N、K又はTである。1実施態様の場合、第2突然変異デハロゲナーゼは、位置272に相当する残基に置換を有しており、そしてさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含み、例えばSEQ ID No:18を有する。1実施態様の場合、第1及び第2の突然変異デハロゲナーゼ内の少なくとも1つの置換は、活性部位キャビティ内部にある野生型ヒドロラーゼ内のアミノ酸残基にあり、そしてその残基の1つの原子は、野生型デハロゲナーゼに結合されたデハロゲナーゼ基質から5Å以内にある。1実施態様の場合、第1及び第2突然変異デハロゲナーゼ中の少なくとも1つの置換は、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置にあり、例えばアミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンであり、任意には、位置273に別の置換がある。
【0151】
1実施態様の場合、第1突然変異デハロゲナーゼはさらに注目のタンパク質を含み、これにより融合タンパク質、例えば、選択可能なマーカータンパク質、膜タンパク質、サイトゾル・タンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、酵素、酵素基質、受容体タンパク質、輸送タンパク質、転写因子、チャネル・タンパク質、リン・タンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリア・タンパク質、受容体関連タンパク質、核酸結合タンパク質、細胞外マトリックス・タンパク質、分泌タンパク質、受容体リガンド、血清タンパク質、免疫原性タンパク質、蛍光タンパク質、又は反応性システインを有するタンパク質を生成する。
【0152】
また、第1突然変異デハロゲナーゼをコードする単離ポリヌクレオチドも提供される。1実施態様の場合、単離ポリヌクレオチドは、第1突然変異デハロゲナーゼと非デハロゲナーゼ・ポリペプチドとを含む融合ポリペプチドをコードする。1実施態様の場合、第1突然変異デハロゲナーゼは非デハロゲナーゼ・ポリペプチドに対してC末端にある。1実施態様の場合、融合体は、第1突然変異デハロゲナーゼと非デハロゲナーゼ・ポリペプチドとの間にプロテアーゼ認識配列を有するコネクタ配列を含み、そしてコネクタ配列は、EPTTEDLYFQS/C(SEQ ID No:31)又はEPTTEDLYFQ/CDN(SEQ ID No:38)を含む。
【0153】
本発明の突然変異形ヒドロラーゼは、種々の方法において有用である。1実施態様の場合、本発明は、突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する方法を提供する。この方法は、突然変異形ヒドロラーゼを有する試料を、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させ、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つのアミノ酸置換が結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、この1つのアミノ酸置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。1実施態様の場合、第2の置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291及び292に相当する位置に少なくとも複数の置換を有する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置に、少なくとも1つの置換を有しており、例えばアミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンである。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含む。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有している。官能基の存在又は量を検出又は測定し、これにより突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、該当分子、例えば該当分子に融合される。
【0154】
1実施態様の場合、本発明は、細胞を標識付けする方法を提供する。この方法は、突然変異形ヒドロラーゼを含む細胞を有する試料を、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させることを含み、突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。1つのアミノ酸置換は結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。第2の置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、変異形ヒドロラーゼは、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291又は292に相当する位置に少なくとも複数の置換を有する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置に、少なくとも1つの置換を有しており、例えばアミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンである。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含む。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有している。試料中の官能基の存在又は量を次いで検出又は測定する。1実施態様の場合、細胞は細菌細胞である。別の実施態様の場合、細胞は哺乳動物細胞である。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、該当分子、例えば注目のタンパク質に融合されている。
【0155】
1実施態様の場合、本発明は、注目のタンパク質を単離する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つが突然変異形ヒドロラーゼと注目のタンパク質とを含む1又は複数の融合タンパク質を含む試料、及び1又は複数のヒドロラーゼ基質を含む固形支持体を用意することを含む。突然変異形ヒドロラーゼは、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。1つのアミノ酸置換は結果として、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、置換は、対応する野生型ヒドロラーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子を活性化することに関連する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は基質とエステル中間体を形成する対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置している。第2の置換は、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある。1実施態様の場合、変異形ヒドロラーゼは、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291及び292に相当する位置に少なくとも複数の置換を有する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、Rhodococcus rhodochrousデハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置に、少なくとも1つの置換を有しており、例えばアミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンである。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼはさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含む。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有している。試料と固形支持体とは、注目のタンパク質を単離するように接触させられる。1実施態様の場合、当該タンパク質は当該分子に結合する。1実施態様の場合、当該タンパク質に結合された当該分子が単離される。
【0156】
本発明の方法は、ヒドロラーゼに対する基質を含む化合物を採用する。1実施態様の場合、突然変異形ヒドロラーゼは、突然変異デハロゲナーゼであり、そして基質が、式(I):R−リンカー−A−Xの化合物であり、前記式中、Rは1又は複数の官能基であり;リンカーは、RとAとを分離する基であり;A−Xはデハロゲナーゼに対する基質であり;そしてXはハロゲン、例えばCl又はBrである。1実施態様の場合、リンカーは、C、N、S又はOを含む多原子線状又は分枝状鎖である。1実施態様の場合、リンカーは、炭素原子数約2〜約30の二価分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、この鎖は任意には1又は複数の二重結合又は三重結合を含み、またこの鎖は任意には、1又は複数のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されている。1実施態様の場合、リンカーは、炭素鎖内の少なくとも12個の原子によってRとAとを分離する。1実施態様の場合、鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上は、アリール又はアリール環で置換されている。1実施態様の場合、Aは(CH2)nであり、n=2〜10、又はn=4〜10である。1実施態様の場合、Rは、ビオチン又は他のアビジンとの結合分子、固形支持体、例えば磁気粒子、セファロース・ビーズ、セルロース・ビーズ、ガラス・スライド、又はマルチウェル・プレートのウェル、又はフルオロフォア、例えばキサンテン、クマリン、クロメン、インドール、イソインドール、オキサゾール、BODIPY、BODIPY誘導体、イミダゾール、ピリミジン、チオフェン、ピレン、ベンゾピレン、ベンゾフラン、フルオレセイン、ローダミン、ロドール、フェナレノン、アクリジノン、レゾルフィン、ナフタレン、アントラセン、アクリジニウム、α−ナフトール、β−ナフトール、ダンシル、シアニン、オキサジン、ニトロベンゾキサゾール(NBD)、ダポキシル、ナフタレンイミド、及びスチリルなどを含む。
【0157】
下記非限定的な例によって、さらに本発明を説明する。
【0158】
例1
融合相手が存在しない場合、E. coli又は無細胞系におけるHT2の発現はしっかりしている。しかし、別の遺伝子に融合されると、融合体の2つの成分間の構造的な不相容性により、可溶性且つ官能性のHT2の生成率は低くなった。一般に、HT2が融合体のC末端成分であるとき、この問題はより顕著になった。SEQ ID No:1における位置272に相当する位置に置換を有する突然変異デハロゲナーゼのような突然変異形ヒドロラーゼと、融合相手との間の構造的相容性を改善するために、そしてTMR官能基を有するもの以外のヒドロラーゼ基質に対する相対標識付けキネティクスを改善するために、進化プロセスを採用した。識別された突然変異形のうちのいくつかがFAMリガンド・キネティクスを改善するであろうという意図を持って、FAMリガンドを、さらに最適化された突然変異形DhaAのためのスクリーン内に使用した。次いで、候補をTMRリガンドを用いて試験することにより、突然変異形がこのリガンドではキネティクスをほとんど変えないことを保証した。
【0159】
DhaA.H272F H11YL(図4:HT2、SEQ ID No:20)のDNAに下記のような部位特異的な変化を加え、DhaA.H272F H11YLに対してE. coli:D78G, F80S, P291A, 及びP291Gにおける機能発現を改善することが判った。
【0160】
DhaA.H272F H11YLのコドン80, 272, 及び273に部位飽和突然変異誘発を採用することにより、これらの位置のそれぞれに全ての可能なアミノ酸を含有するライブラリを作成した。ライブラリをE. coliにおいて過剰発現させ、そしてデハロゲナーゼ基質(C3131ClNO8)を含有するカルボキシフルオロセイン(FAM)、及び蛍光偏光(FP)を使用して、機能発現/改善されたキネティクスに関してスクリーニングした。スクリーンの性質は、改善された発現並びに改善されたキネティクスを有するタンパク質の同定を可能にした。具体的には、スクリーンは、より低速の固有キネティクスを有する突然変異体を排除した。望ましい特性を有する置換は以下のものを含んだ:F80Q, F80N, F80K, F80H, F80T, H272N, H272Y, Y273F, Y273M, 及びY273L。これらのうち、Y273Fは、改善された固有キネティクスを示した。
【0161】
HT2の272におけるPheは、Glu-130と水素結合する能力を欠いている。His-272とGlu-130との相互作用は、構造的役割を演じていると考えられ、従ってこの結合が存在しないとHT2が不安定化になるおそれがある。さらに、Pheが位置273におけるTyr->Leu変化と近接していることは、これらの隣接残基からの側鎖間の潜在的に協働する相互作用を可能にする。位置273におけるLeu又はPheの関連において位置272のより良好な残基として、Asnが同定された。Asn-272を含有するHT2の構造をモデル化すると、1)AsnがHisと比較して類似のジオメトリでスペースを満たすこと、そして2)AsnはGlu-130と水素結合できること、が明らかであった。位置272にAsnの置換を有するHT2は、おそらくはそのタンパク質の安定性全体を改善する結果として、E. coli、無細胞系、及び哺乳動物細胞中のより高い機能タンパク質レベルを生成することが見いだされた。
【0162】
2ラウンドの突然変異生成PCRを用いることにより、1配列当たり1〜2アミノ酸置換の頻度でHT2のコーディング配列全体にわたって突然変異形を導入した。このアプローチは、配列全体を標的とするのを可能にし、HT2構造/機能のいかなる演繹的知識にも依存しなかった。突然変異生成の第1ラウンドでは、Asn-272、Phe-273、及びGly-78を、ヒト化RenillaルシフェラーゼとのN末端HT2融合の関連において、鋳型として固定した。FAMリガンドに対する改善されたFP信号にとって有益な6つの突然変異形(S58T, A155T, A172T, A224E, P291S, A292T; V2)が同定され、そして各置換が、A172Tを除き、E. coli中でタンパク質生成量を増大させることが見極められた。他方において、A172Tの変化は固有キネティクスを改善した。6つの置換(Leu+/-273)を組み合わせて複合配列(V3/V2)を提供した。この複合配列は、複数の相手にそして両方向に融合されると、タンパク質生成率及び固有標識付きキネティクスを著しく改善した。
【0163】
突然変異生成の第2ラウンドでは、6つの異なる鋳型を使用した。V3又はV2をC末端でヒト化Renillaルシフェラーゼ(RL)、蛍ルシフェラーゼ、又はIdに融合した。突然変異生成PCRを上記のように実施し、そして3つの相手のうちの少なくとも2つにとって有益なものとして同定された突然変異形を組み合わせることにより、V6(Leu-273)を生じさせた。突然変異生成PCRの第2ラウンドでは、熱安定性を与える配列を選択しようと、高温(30℃)を用いて、タンパク質発現を誘発させた。突然変異形DhaA融合体の固有構造安定性を高めることにより、タンパク質の生成効率を高くすることができる。
【0164】
所望の特性と関連するランダムな突然変異形は、下記のものを含んだ:
G5C, G5R, D11N, E20K, R30S, G32S, L47V, S58T, R60H, D65Y, Y87F, L88M, A94V, S109A, F113L, K117M, R118H, K124I, C128F, P134H, P136T, Q150H, A151T, A155T, V157I, E160K, A167V, A172T, D187G, K195N, R204S, L221M, A224E, N227E, N227S, N227D, Q231H, A250V, A256D, E257K, K263T, T264A, D277N, 1282F, P291S, P291Q, A292T, 及びA292E。
【0165】
上記置換に加えて、突然変異形DhaAと下流側C末端の相手Renillaルシフェラーゼとの間のコネクタ配列内の置換を同定した。親コネクタ配列(残基294-320)は、QYSGGGGSGGGGSGGGGENLYFQAIEL(SEQ ID No:19)である。改善されたFP信号と関連するコネクタ内で同定された置換は、Y295N, G298C, G302D, G304D, G308D, G310D, L313P, L313Q,及びA317Eであった。特に、9つのうち5つが負に荷電された。
【0166】
A172T及びY273F(H272Nとの関連において)を除いて、上記置換の全ては、N末端融合体としてE. coli中の改善された発現を提供した。とは言え、A172T及びY273Fは、標識付けのための固有キネティクスを改善した。
【0167】
一般に改善された特性を有する突然変異形DhaAs内の組み合わせ置換の例は下記の通りである:
DhaA 2.3(V3): S58T, D78G, A155T, A172T, A224E, F272N, P291S, 及びA292T.
DhaA 2.4(V4): S58T, D78G, Y87F, A155T, A172T, A224E, N227D, F272N, Y273F, P291Q, 及びA292E.
DhaA 2.5(V5): G32S, S58T, D78G, Y87F, A155T, A172T, A224E, N227D, F272N, P291Q, 及びA292E.
DhaA 2.6(V6): L47V, S58T, D78G, Y87F, L88M, C128F, A155T, E160K, A167V, A172T, K195N, A224E, N227D, E257K, T264A, F272N, P291S, 及びA292T.
DhaA 2.6中に見いだされた置換のうち、A167Vを除く全てがE. coli内の機能発現を改善し、A167Vは固有キネティクスを改善した。
【0168】
図5は、E. coli内の機能発現を改善する付加的な置換を示す図である。
【0169】
例2
V6配列を、C末端における突然変異体生成のための鋳型として使用した。突然変異体ライブラリを、Id-V6融合体(V6がC末端の相手である)との関連においてランダムな2残基伸長部(テイル)を含有する状態で調製し、そしてFAMリガンドとともにスクリーニングした。タンパク質生成率が改善され非特異的切断が減少した突然変異体(TMRリガンド標識付け及びゲル分析によって測定)を同定した。DhaA 2.6内の2つのC末端残基(「V6」)を、Glu-Ile-Ser-Glyで置換することにより、V7を生成した(図8)。V7の発現を、Idに対するN末端及びC末端両方の融合体としてV6と比較した。融合体をE. coli中で過剰発現させ、そして10μMのTMRリガンドで、完了するまで標識付けし、次いでSDS-PAGEによって分解し、蛍光画像化した(図6)。データは、より高い機能性を有する融合タンパク質がV7配列から形成されたことを示す。加えて、V7に関する経時的なFAMリガンドによる標識付けキネティクスは、V6(図6)と同様であったが、精製された非融合タンパク質を試験したときには、V7はより高速のキネティクスを有した。
【0170】
V7を、ウサギの網状赤血球TNT無細胞発現系中でも発現させた(図7)。溶解物を10μMのTMRリガンドで、完了するまで標識付けし、次いでSDS-PAGE及び蛍光画像化によって機能発現に関して分析した。E.coli中の発現と同様に、より高機能性のタンパク質が、ウサギ溶解物中のV7配列の発現から生じた。V7の発現は、SEQ ID No:20(「HT2」)を約140倍〜250倍上回って改善された。V7の発現はまた、小麦胚芽転写/翻訳反応におけるHT2に対して改善された(図9)。
【0171】
HeLa細胞にHT2、V3、V7及びV7F(V7FはV7に対して単一アミノ酸の相違がある;V7Fは位置273にLeuではなくPheを有する)に対するベクターをトランスフェクトしてから24時間後に、細胞を0.2μMのTMRリガンドで5分間、15分間、30分間、又は2時間にわたってin vivo標識付けした。試料をSDS-PAGE/蛍光画像化によって分析し、ImageQuantによって定量化した。V7及びV7Fは、HT2及びV3よりも良好な機能発現をもたらし、V7、V7F及びV3は、HT2に対して改善された、哺乳動物細胞におけるin vivoキネティクスを有した(図10)。
【0172】
さらに、V7は、N又はC末端融合体として、改善された機能発現を有しており(図11)、そしてプルダウン・アッセイ(図12)において、他の突然変異形DhaAよりも効率的であった。結果は、HaloLink(登録商標)で固定化された突然変異形DhaA-Id誘導体を使用してプルダウンすることができるMyoDの量に関して、V7>V6>V3を示した。V7及びV7Fは、改善された標識付けキネティクスを有した(図13)。具体的には、V7Fは、V7よりも約1.5倍〜約3倍速い標識付けキネティクスを有した。
【0173】
図14は、種々の突然変異形DhaAタンパク質の熱安定性データを示す。データは、精製タンパク質を使用して生成され、熱安定性に関してV7>V6>V7F>V3>HT2を示す。例えば、或る条件下(48℃に30分間曝露)で、精製V7Fはその活性の50%を失うのに対して、V7はまだ80%の活性を維持する。この2つの間の熱安定性の相違は、V7とV7FとがE. coli中に発現され、溶解物として分析されたときにより劇的である。
【0174】
図15は、尿素又はグアニジン−HClに対する曝露後の安定性を示す。
【0175】
図16〜17は、2つの異なるリガンドを有する種々のDhaA突然変異体の標識付けキネティクスを示す。図18は、ストレプトアビジン−ビオチンに対する2つのDhaA突然変異体の標識付け速度の比較を示す図である。
【0176】
図19は、N又はC末端融合体として有用なものを含む種々のDhaA突然変異体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示す。なお、これらの突然変異体の端部は、テイル及びコネクタ配列を含む種々の配列、並びに置換を収容することができる。例えば、突然変異形DhaAのN末端は、M/GA/SETG(SEQ ID No:39)であってよく、C末端は置換及び付加形(「テイル」)、例えばP/S/QA/T/ELQ/EY/I(SEQ ID No:40)、及び任意にはSGを含んでよい。例えば、C末端はEISG(SEQ ID No:41)、EI、QY、又はQであってよい。Nベクターの場合、N末端はMAEであってよく、またCベクターの場合には、N末端配列又は突然変異形DhaAは、GSE又はMAEであってよい。テイルの一例としては、QY及びEISGが挙げられる。
【0177】
2つのタンパク質の間の配列(コネクタ配列)は、プロテアーゼによって認識された配列を含んでよい。1実施態様の場合、コネクタ配列は、TEVプロテアーゼ部位(Doherty他、1989)、約4つのアミノ酸(P10〜P7)から成る上流領域、及び約2又は3つのアミノ酸(P'2〜P'4)から成る下流領域を含んでよい。TEV部位を含むことにより、E. coliにおける組み換え発現の可溶性が低減されることがあり(Kurz他、2006)、また哺乳動物発現が低減されることもある(データは示さず)。このことに対処するために、TEVプロテアーゼが配列を切断する能力を低下させることなしに、哺乳動物、無細胞発現系、又はE. coliにおける発現レベルを維持するように、TEV部位を最適化した。哺乳動物発現を高めるために、TEVプロテアーゼ部位内に次の変更を加えた:P5においてNからDへ、そして上流領域配列のP10においてIからEへ、P'2D、P'3N及び任意にはP'4D。これらの変化はTEV切断を改善し、E. coli細胞内の非特異的切断を低減し、そして哺乳動物細胞及び無細胞発現系における発現を改善した。DhaA突然変異形と一緒に使用するために、N末端配列は、EPTT−EDLYFQ(S/C)-DN(SEQ ID No:38)を含み、C末端配列は、EPTT−EDLYFQS-DND(SEQ ID No:50)を含む。これらの配列は、哺乳動物細胞、無細胞系、又はE. coli細胞内でのDhaA突然変異形融合タンパク質の発現又は発現可溶性を低減することはない。これらの配列は、いかなる誘導体とも一緒に使用することができる。
【0178】
製造業者の推奨に従ってLT1(Mirus)を使用して、24ウェルプレート(各時点又は各リガンド濃度に対して2ウェル)内に平板培養されたHeLa細胞に、p65-HT2、p65-HTv3、p65-HTv6、p65-HTv7、及びp65-HTv7fを寄生させたベクターを導入した。トランスフェクションから24時間後、図20に示された種々異なる時間にわたって、異なる濃度のTMRリガンドで細胞を標識付けした(15分間で5μM)。未結合リガンドを洗い落とし、そして細胞をSDS-PAGE試料緩衝剤で収集した。蛍光標識付きタンパク質をSDS-PAGE上で分解し、蛍光画像(Typhoon-9410, Amersham)上で分析した。
【0179】
p65-HT2、p65-V3、p65-V7、p65-V7Fを一時的にトランスフェクトし、溶解し、そしてp65 AB及びIkB ABでプローブしたHeLa細胞のウェスタン・ブロット分析が図21に示されている。
【0180】
種々の条件下で突然変異形DhaAの標識付けキネティクスをさらに調査するために、増大する塩濃度、溶解緩衝剤中に見いだされる非洗浄性試薬、種々異なる緩衝剤及び種々異なる洗剤の存在において、反応を実施した(図22〜29)。
【0181】
開示された突然変異形DhaAは、改善された機能性融合タンパク質生成を可能にし、このような改善された機能性融合タンパク質生成は、適切なリガンド結合基質又はガラス・スライドを使用したタンパク質−タンパク質相互作用の効率的なプルダウンを可能にする。
【0182】
考えられる置換は、図5に開示された位置、並びに位置147、例えばE147K、位置282、例えばL282M、又は位置164、例えばD164Eにある置換を含む。
【0183】
参考文献
Ausubel他, Current Protocols in Molecular Biology, Vol III, A.1(3-4), Supplement 38 (1997).
Chalfie, M及びKain, S. R.編, GFP: Green Fluorescent Protein Strategies and Applications (Wiley, New York, 1998).
Cubitt他, Trends Biochem. Sci., 20:448 (1995).
Doherty他, Virol., 171;356 (1989).
Einbond他, FEBS Lett., 384:1 (1996).
Farinas他, J. Biol. Chem., 274:7603 (1999).
Griffen他, Science, 281:269 (1998).
Hanks及びHunter, FASEB J, 9:576-595 (1995).
Harlow及びLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p.726 (1988)
Ilsley他, Cell Signaling, 14:183 (2002).
Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, CA (1996).
Janssen他, J. Bacteriol., 171:6791 (1989).
Keuning他, J. Bacteriol., 163:635 (1985).
Kneen他, Biophys. J., 74:1591 (1998).
Kulakova他, Microbiology, 143:109 (1997).
Kurz他, Protein Expression and Purification, 50:68 (2006).
Llopis他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:6803 (1998).
Mayer及びBaltimore, Trends Cell. Biol., 3:8 (1993).
Miesenboeck他, Nature, 394:192 (1998).
Mils他, Oncogene, 19:1257 (2000).
Miyawaki他, Nature, 388:882 (1967).
Nagata他, Appl. Environ. Microbiol., 63:3707 (1997).
Ormo他, Science, 273:1392 (1996).
Rosomer他, J. Biol. Chem., 272:13270 (1997).
Sadowski他, Mol. Cell. Bio., 6:4396 (1986).
Sallis他, J. Gen. Microbiol., 136:115 (1990).
Scholtz他, J. Bacteriol., 169:5016 (1987).
Stroffekova他, Eur. J. Physiol., 442:859 (2001).
Trien, Ann. Rev. Biochem., 67:509 (1998).
Wada他, Nucleic Acids Res., 18 Suppl:2367 (1990).
Yokota他, J. Bacteriol., 169:4049 (1987).
【0184】
全ての刊行物、特許明細書、及び特許出願明細書を参考のために本明細書中に引用する。前述の説明において、本発明を特定の好ましい実施態様に関連して記述し、また多くの詳細を説明の目的で示してきたが、当業者には明らかなように、本発明には追加の実施態様を加えることができ、また本明細書中の詳細な記述内容のうちの或る特定のものを、本発明の基本原理を逸脱することなしに相当変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2突然変異デハロゲナーゼに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む第1突然変異デハロゲナーゼであって、該第1及び第2の突然変異デハロゲナーゼが1又は複数の官能基を含むデハロゲナーゼ基質と結合を形成し、該結合が対応する野生型デハロゲナーゼと該基質との間に形成される結合よりも安定であり、ここで該第2突然変異デハロゲナーゼ中にはない第1突然変異デハロゲナーゼ中の少なくとも1つのアミノ酸置換が、機能発現又は結合キネティクスを改善する置換であり、ここで該第1及び第2の突然変異デハロゲナーゼは、対応する野生型デハロゲナーゼが該対応する野生型デハロゲナーゼと基質間で形成される結合を切断する水分子の活性化に関係する残基において、あるいは対応する野生型デハロゲナーゼが基質とのエステル中間体を形成するアミノ酸残基において、少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、そしてここで機能発現又は結合キネティクスを改善する少なくとも1つの置換が、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にある、第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項2】
SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291及び292に相当する位置に少なくとも2つの置換を有する、請求項1に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項3】
SEQ ID No:1の位置58, 78, 87, 155, 172, 224, 227, 291又は292に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有し、そしてSEQ ID No:1の位置175, 176, 272又は273に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有する、請求項1又は2に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項4】
SEQ ID No:1の位置58, 78, 155, 172, 224, 291又は292に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有し、そしてSEQ ID No:1の位置175, 176, 272又は273に相当する位置、又はこれらのうちの複数位置に置換を有する、請求項1又は2に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項5】
位置291に相当する位置の置換型アミノ酸が、G、S又はQである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項6】
位置272に相当する残基に置換を有しており、そしてさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項7】
さらに注目のタンパク質を含み、これにより融合タンパク質を産出する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項8】
注目のタンパク質が、選択可能なマーカータンパク質、膜タンパク質、サイトゾル・タンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、酵素、酵素基質、受容体タンパク質、輸送タンパク質、転写因子、チャネル・タンパク質、リン・タンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリア・タンパク質、受容体関連タンパク質、核酸結合タンパク質、細胞外マトリックス・タンパク質、分泌タンパク質、受容体リガンド、血清タンパク質、免疫原性タンパク質、蛍光タンパク質、又は反応性システインを有するタンパク質である、請求項7に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項9】
前記第1及び第2突然変異デハロゲナーゼ中の少なくとも1つの置換は、ロドコッカス・ロドコッカス(Rhodococcus rhodochrous)デハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置にある、請求項1から8までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項10】
アミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンである、請求項9に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項11】
位置80に相当する位置の置換型アミノ酸が、Q、N、K又はTである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項12】
前記第1及び第2突然変異デハロゲナーゼがさらに、位置273に置換を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼ。
【請求項13】
突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する方法であって:
a) 突然変異形ヒドロラーゼを有する試料を、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させ、該突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つのアミノ酸置換が結果として、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、該1つのアミノ酸置換は、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成された該結合を切断する水分子を活性化することに関連する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は該基質とエステル中間体を形成する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置しており、そして、該第2の置換が、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にあり;そして
b) 該官能基の存在又は量を検出又は測定し、これにより突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する
ことを含む、突然変異形ヒドロラーゼの存在又は量を検出又は測定する方法。
【請求項14】
細胞を標識付けする方法であって:
a) 突然変異形ヒドロラーゼを含む細胞を有する試料を、1又は複数の官能基を含むヒドロラーゼ基質と接触させ、該突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つのアミノ酸置換が結果として、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、該置換は、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成された該結合を切断する水分子を活性化することに関連する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に、又は該基質とエステル中間体を形成する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置しており、そして、該第2の置換が、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にあり;そして
b) 該試料中の官能基の存在又は量を検出又は測定する
ことを含む、
細胞を標識付けする方法。
【請求項15】
前記細胞が細菌細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記突然変異形ヒドロラーゼが、注目のタンパク質に融合されている、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
前記突然変異形ヒドロラーゼが、該当分子に融合されている、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項19】
注目のタンパク質を単離する方法であって:
a) 少なくとも1つが突然変異形ヒドロラーゼと注目のタンパク質とを含む1又は複数の融合タンパク質を含む試料、及び1又は複数のヒドロラーゼ基質を含む固形支持体を用意し、該突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つのアミノ酸置換が結果として、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成される結合よりも安定である基質との結合を形成する突然変異形ヒドロラーゼを生じさせ、該置換は、該対応する野生型ヒドロラーゼと該基質との間に形成される結合を切断する水分子を活性化することに関連する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基、又は該基質とエステル中間体を形成する該対応する野生型ヒドロラーゼ中のアミノ酸残基に位置しており、そして該第2の置換が、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 47, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 88, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 128, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 160, 167, 172, 187, 195, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 257, 263, 264, 277, 282, 291又は292に相当する位置にあり;そして
b) 注目のタンパク質を単離するように、該試料と該固形支持体とを接触させる
ことを含む、注目のタンパク質を単離する方法。
【請求項20】
注目のタンパク質が該当分子に結合している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該当分子が単離される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記突然変異形ヒドロラーゼが突然変異デハロゲナーゼであり、そして該基質が、式(I):R−リンカー−A−Xの化合物であり、前記式中、該リンカーは、炭素原子数2〜30の分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、該鎖は任意には1又は複数の二重結合又は三重結合を含み、また該鎖は任意には、1又は複数のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、該鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されており、該リンカー−Aは、炭素鎖内の少なくとも11個の原子によってRとXとを分離し、A−Xはデハロゲナーゼに対する基質であり、Aは(CH2nであり、そしてn=2〜10であり、Xはハロゲンであり、R−リンカー−A−Xであり、そしてRは、1又は複数の官能基である、請求項13から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
Rが光学的に検出可能な分子を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
Rがフルオロフォア又はビオチンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基質が、式(I):固形支持体−リンカー−A−Xの化合物であり、前記式中、該リンカーは、炭素原子数2〜30の分枝状又は無分枝状炭素鎖であり、該鎖は任意には1又は複数の二重結合又は三重結合を含み、また該鎖は任意には、1又は複数のヒドロキシ又はオキソ(=O)基で置換されており、該鎖内炭素原子のうちの1つ又は2つ以上が任意には、非過酸化物−O−、−S−又は−NH−で置換されており、該リンカー−Aは、炭素鎖内の少なくとも11個の原子によってRとXとを分離し、A−Xはデハロゲナーゼに対する基質であり、Aは(CH2nであり、そしてn=2〜10であり、Xはハロゲンであり、R−リンカー−A−Xである、請求項19から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記固形支持体が、磁気粒子、セファロース・ビーズ、セルロース・ビーズ、ガラス・スライド、又はマルチウェル・プレートのウェルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記鎖内炭素原子のうちの1又は複数が、アリール又はヘテロアリール環で置換されている、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
Xが塩素又は臭素である、請求項22から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記突然変異形ヒドロラーゼが、SEQ ID No:1の位置5, 11, 20, 30, 32, 58, 60, 65, 78, 80, 87, 94, 109, 113, 117, 118, 124, 134, 136, 150, 151, 155, 157, 172, 187, 204, 221, 224, 227, 231, 250, 256, 263, 277, 282, 291又は292に相当する位置に、複数の置換を有している、請求項13から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記突然変異形ヒドロラーゼがさらに、SEQ ID No:1の位置175, 176又は273に相当する位置に1又は複数の置換を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記突然変異形ヒドロラーゼが、対応する野生型ヒドロラーゼに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有している、請求項13から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記突然変異形ヒドロラーゼが、ロドコッカス・ロドコッカス(Rhodococcus rhodochrous)デハロゲナーゼのアミノ酸残基272に相当する位置に、少なくとも1つの置換を有している、請求項13から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
アミノ酸残基272に相当する位置の置換型アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、グリシン、又はアラニンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記突然変異形ヒドロラーゼがさらに、位置273に置換を含む、請求項13から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の第1突然変異デハロゲナーゼと非デハロゲナーゼ・ポリペプチドとを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記融合体が、該第1突然変異デハロゲナーゼと非デハロゲナーゼ・ポリペプチドとの間にプロテアーゼ認識配列を有するコネクタ配列を含む、請求項36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記第1突然変異デハロゲナーゼが、非デハロゲナーゼ・ポリペプチドに対してC末端にある、請求項37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記コネクタ配列が、EPTTEDLYFQS/C(SEQ ID No:31)又はEPTTEDLYFQSDN(SEQ ID No:51)を含む、請求項37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
請求項35から39までのいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを有する宿主細胞。
【請求項41】
EPTTEDLYFQS/C(SEQ ID No:31)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記ヌクレオチド配列がさらに、EPTTEDLYFQS/C(SEQ ID No:31)に融合されたポリペプチドをコードする、請求項41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記ヌクレオチド配列がさらに、EPTTEDLYFQSDN(SEQ ID No:51)に融合されたポリペプチドをコードする、請求項41に記載のポリヌクレオチド。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19−1】
image rotate

【図19−2】
image rotate

【図19−3】
image rotate

【図19−4】
image rotate

【図19−5】
image rotate

【図19−6】
image rotate

【図19−7】
image rotate

【図19−8】
image rotate

【図19−9】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公表番号】特表2010−508023(P2010−508023A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534717(P2009−534717)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/023205
【国際公開番号】WO2008/054821
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】