説明

キメラHIV−1糖タンパク質およびそれらの生物学的用途

gp120可変領域V1および/またはV2の少なくとも一部が、特異的体液性免疫反応を誘導することができるCD4誘導エピトープまたはCD4iの露出を達成するためにCD4由来配列によって置換されている、キメラHIV−1 gp120糖タンパク質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラgp120糖タンパク質およびそれらの生物学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
あまねく中和抗体を惹起することができる保存免疫原は、有効なHIV−1ワクチンの重要な成分であり得る。HIV−1エンベロープを構成するタンパク質、表面ユニット(SU)糖タンパク質(gp120)およびgp41膜貫通(TM)糖タンパクは、中和予防的防御を発現させるための有望なターゲットである。感染した個体から分離された防御性モノクローナル抗体は、エンベロープ糖タンパク質上の幾つかの中和エピトープを示した。それらは、TM gp41における幾つかの領域と、受容体結合ばかりでなくV2およびV3可変ループにも関係するSU gp120内の保存構造(これらは、高免疫原性であり、従って、タイプ特異的抗体のみを誘導する)とを含む。しかし、これらの中和エピトープに対する抗体を生成させることは難しかった。主として、体液性免疫系へのエピトープ露出、特に受容体結合部位の減少に有意に寄与する、エンベロープ糖タンパク質の強い可変性および感染中に変化し得るその高いグリコシル化レベルのためである。
【0003】
細胞感染前のHIVへの可能な干渉を捜す上で、受容体結合部位およびそれらのごく近傍は、HIV−1ワクチンの特に魅力的なターゲットである。gp120エンベロープ糖タンパク質は、細胞受容体CD4に、そしてケモカイン受容体ファミリーのメンバー(主として、CCR5およびCXCR4)に、順次結合する。CD4へのgp120の結合は、gp120糖タンパク質の配座変化を誘導し、それによりgp120共受容体結合部位、いわゆるCD4誘導(CD4i)エピトープ、が露出する。この後者は、gp120の最も保存される表面の1つであり、CD4結合部位よりも多い。共受容体結合は、後のウイルス−細胞融合のための最も重要な段階の1つであり、従って、HIV−1感染症にとってきわめて重大であるので、エンベロープgp120上のCD4誘導(CD4i)エピトープに特異的な抗体は、種々のHIV−1分離株による感染をあまねく阻止するために特に有用であろう。共受容体結合を阻止する幾つかのそうしたCD4i抗体が同定および特性付けされている。17bと呼ばれる、それらの1つは、HIV−1感染個体から分離されたものであり、一部のT細胞系統適応(TCLA)HIV−1株を中和することができるが、初代分離株を中和することはあまりできない。もう1つのCD4i結合抗体であるE51は、分離された初代HIV−1に対する、より強力な中和応答を誘導する。CD4結合配座を認識し、初代HIV−1分離株を効率的に中和するこれらの抗体の限られた数は、露出されるエピトープが、特異的体液性免疫反応を誘導するために効率的でない場合があること示す。従って、このエピトープおよびその近傍を永続的に提示できる分子を構築することは、非常に関心をひくであろう。
【0004】
幾つかの戦略が、gp120上のCD4iエピトープを露出させるために利用された。gp120の可変ループからの特定のN結合グリコシル化部位の除去は、これらの突然変異ウイルスを、CD4i抗体によってより中和されやすくした。gp120とヒトCD4の4つの細胞外ドメインとの可溶性架橋複合体が構築された。それらは、交差反応性中和活性を有する抗体をはじめとする、広範な初代HIV−1分離株に対する中和抗体を生成する。可溶性タンパク質は、CD4+ T細胞応答を刺激するが、HIV−1感染症の制御に重要であることが知られている、CD8+ T細胞媒介免疫反応を効率的に誘導しない。これらの問題を克服するための代替アプローチは、gp120−CD4複合中間体を模倣する一本鎖ポリペプチドの構築である。アミノ酸数20のリンカーによりCD4の最初の2つのドメインに連結されたHIV−1 gp120タンパク質が構築され、これは、CD4iエピトープの露出増加を示したが、ウイルス中和は媒介しなかった。より最近、JRLF gp120タンパク質を、CD4の同じD1およびD2ドメインに、またはCD4のCDR2様ループを再生産するCD4構造由来配列、CD4M9に接合させることによって、他の融合タンパク質が構築された。唯一gp120−CD4D12分子は、中和抗体を誘導したが、もっぱらCD4に対するものであるようである。
【0005】
gp120糖タンパク質の可変領域、V1/V2は、細胞受容体および共受容体のための結合部位を部分的に塞ぐという仮説が以前に立てられていたので、gp120 V2およびV1/V2ループの欠損研究は、向上した中和活性を示すCD4iエピトープの露出を増加させる結果となった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、CD4由来の配列によってgp120の特定の領域を置換することにより、リンカー配列または架橋剤を使用することなく、可変トランス配座gp120由来分子を得ることができることを発見した。そうしたキメラの研究を行って、それらが免疫原性であること、および特定のケモカイン(単数または複数)との組み合わせでワクチン/殺菌剤用途のための効力ある製品になることを明らかにした。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キメラHIV−1 gp120糖タンパク質を提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、そうした分子をコードするDNA構築物を提供することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記キメラgp120糖タンパク質の免疫学的および医薬的用途にも関する。
【0010】
本発明のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質は、gp120可変領域V1および/またはV2の少なくとも一部が、CD4構造由来配列によって置換されていることを特徴とする。
【0011】
結果として生じるキメラは、野生型gp120のものと類似したサイズおよび構造を有し、ならびにgp120/CD4複合体の特性の大部分、特に、天然CCR5受容体を認識するその能力および特異的体液性免疫反応を誘導することができるCD4iエピトープを露出させるその能力を模倣する能力を示す。
【0012】
好ましいキメラ糖タンパク質では、CD4由来配列が、V1可変領域と、V2可変領域の一部とを置換している。
【0013】
有利には、前記CD構造由来(sdCD4)ペプチドは、ヒトCD4受容体のCDR2様ループを模倣する。
【0014】
好ましくは、前記CD4由来ペプチドは、CD4の15〜35のアミノ酸、とりわけ20〜30のアミノ酸を含む。
【0015】
価値のあるCD4構造由来ペプチドは、例えば、28のアミノ酸を有し、有利には、配列番号5 CNLEACQKRCQSLGLQGKCAGSFCACの配列を有する。
【0016】
前記キメラHIV−1 gp120分子において、CD4由来配列は、有利には、V1と、V2ループからの10〜20のアミノ酸、例えば、V2ループの16のアミノ酸とを置換している。
【0017】
上で開示したキメラHIV−1 gp120糖タンパク質は、それらが抗CD4iモノクローナル抗体によって認識されるが、抗CD4抗体によって認識されないことを、さらに特徴とする。
【0018】
さらにまた、本発明のキメラ糖タンパク質は、実施例において例証するように、CG10、E51およびLF17モノクローナル抗体によって認識される。
【0019】
本発明のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質は、それらがCD4受容体およびCCR5共受容体に結合することを、なお、特徴とする。
【0020】
本発明は、上で開示したキメラ分子中の露出されたCD4iエピトープに向けられた免疫処理用製品、抗血清および抗体にも関する。
【0021】
前記抗体は、ポリクローナル抗体、例えば、動物に免疫し、その抗血清から回収することにより得られたポリクローナル抗体を含む。それらは、モノクローナル抗体、例えば、骨髄腫細胞とリンパ球(特に、上で定義したものなどのキメラ分子の注射によって事前に免疫した動物の脾臓または神経節のリンパ球)を融合させ、得られたハイブリドーマの上清を、例えばELISAまたはIFI技術に従ってスクリーニングして、本キメラ分子に特異的に向けられた抗体を明らかにすることにより得られたもの、も含む。
【0022】
これらのモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ株も本発明の一部である。
【0023】
上で開示したキメラ分子をコードするDNA構築物も本発明の一部である。
【0024】
有利には、これらのDNA構築物は、野生型gp120分子をコードするDNAにおいて、CD4由来ペプチドをコードするフラグメントでV1および/またはV2 gp120可変領域をコードするフラグメントを置換することによって得られる。有利には、これらのフラグメントは、合成経路によって得られる。
【0025】
その後、それらのDNA構築物を発現ベクターにおいてサブクローニングし、細胞のトランスフェクションのために使用する。
【0026】
上に開示したキメラHIV−1構築物は、単独で、または組み合わせで、HIV−1による感染症の予防に有用な特異的体液性免疫反応を誘導することができ、強力な免疫原性ツールでもある。
【0027】
TLRリガンド、例えばTLR9リガンド(例えば、CpG様モチーフ)を伴う本発明のキメラHIV−1構築物は、特に有用である。
【0028】
対象となる他の組み合わせは、前記キメラ構築物とIL−22および/またはCCL28を含む。
【0029】
上で定義したものなどの特に好ましい組み合わせでのキメラ構築物は、例えば本実施例において開示するものなどのキメラ1および2である。
【0030】
従って、本発明は、少なくとも1つのキメラHIV−1 gp120糖タンパク質(上で定義したとおり)の有効量と担体を含む、HIV−1感染症に特異的なワクチン組成物に関する。
【0031】
当業者は、前記ワクチン組成物の調合および用量を、所望される投与方法および考慮している患者(年齢、体重)に応じて、明らかにし、調整することができる。
【0032】
これらの組成物は、1つ以上の生理学的に不活性なビヒクル、および特に、調合におよび/または所望される投与方法に適する賦形剤を含む。
【0033】
本発明は、上で定義したものなどのTLRリガンド、II−22および/またはCCL28をさらに含むHIV−1感染症に特異的なワクチン組成物にも関する。
【0034】
本発明は、HIV−1感染症の存在または不在の診断のための、少なくとも1つの抗体(例えば、上で定義したもの)の、有効量での使用も目的とする。
【0035】
本発明は、HIV感染症を緩和および/または予防および/または治療するための組成物、特に医薬組成物を製造するための、抗体(例えば、上で定義したもの)の任意の使用も目的とする。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、図1〜19に関連して後続の実施例において与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
材料および方法
細胞系統および抗体
すべての哺乳動物株細胞を5% CO2雰囲気中、37℃で維持した。
【0038】
組み込まれたHIV LTR−lacZ(1)を有するHeLa P4C5(CD4+/CCR5+)およびTat発現性HeLaを使用した(P.Charneau and O.Schwartz(フランス、パリのPasteur Institute)。10%ウシ胎仔血清(FBS)、2mM L−グルタミンおよび100μg/mLのゲンタマイシンを含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)中で、これらの株細胞を成長させた。50μg/mLのヒグロマイシンBおよび2mM メトトレキサートに加えて400μg/mLのゲネチシン(G418)も、両方の細胞に、それぞれ補足した。
【0039】
10%FBS、ゲンタマイシンおよび400μg/mL G418を含有する改良型変性イーグル培地中で、ヒト胚性腎細胞(293T−HEK)を培養した。
【0040】
米国微生物系統保存機関(American type culture collection)(メリーランド州、ロックヴィル)から入手したCD4陽性ヒトリンパ球様細胞(CEM)を、10%FBSおよびゲンタマイシンを補足したRPMI 1640培地中で成長させた。
【0041】
イヌ胎仔胸腺細胞(Cf2ThR5−CCR5+)を使用し(マサチューセッツ州、ボストン、Dana Farber Cancer InstituteのJ.Sodroski)、10%FBS、ゲンタマイシンおよび400μg/mL G418を含有するDMEM中で培養した。
【0042】
変性させ、10%FBSを補足したTC100培地(メリーランド州、ゲーサーズバーグのGIBCO BRL LIFE Technologies)中、28℃で、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera Frugiperda)(Sf9)昆虫細胞を増殖させた。
【0043】
ヒツジポリクローナル抗gp120抗体D7324は、Aalto BioReagents(アイルランド、ダブリン)から入手した。
【0044】
ウサギ抗gp120抗血清は、Intracell Corp(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)で購入した組換えHIV−1IIIB gp120でウサギを免疫した後、研究室において製造した。
【0045】
ヒトCD4iモノクローナル抗体(MAb)4.8D(2)E51(3)およびLF17を使用した(J.Robinson(ルイジアナ州、ニューオリンズのTulane University))。
【0046】
CD4i特異的MAb CG10は、Dr.J.Gershoni(イスラエル、テルアビブのGeorge Wise Faculty of Life Sciences)から得た。
【0047】
ヒトMAb F105(4)を使用した(M.Posner(マサチューセッツ州、ボストンのNew England Deaconess Hospital))。
【0048】
可溶性CD4(sCD4)は、Progenics Corp.(ニューヨーク州、タリータウン)から購入した。
【0049】
DNA構築物
HIV−1 YU2 gp160エンベロープDNAを、pTZ−YU2(HIV−1 YU2の全配列を含有するプラスミド)をテンプレートとして使用して、PCRによって増幅させた。配列番号1〜4をそれぞれ有する以下のプライマーを使用した。
pSVIIIenv構築のために、
フォワードとして、配列番号1:5’CGGGGTACCCCGATGAGAGCGACGGAGATC(下線を引いたKpnl部位を含有する)、および
リバースとして、配列番号2:5’CGCGGATCCGCGTTATAGCA AAGCTCTTTCCAAGCCC(下線を引いたBamHI部位を含有する);ならびに
pCEL/E160構築のために、
フォワードとして、配列番号3:5’ CCGCTCGAGCGGATGAGAGCGACGGAGATC(下線を引いたXhol部位を含有する)、および
リバースとして、配列番号:5’CCCAAGCTTGGGTTATAGCAAAGCTCTTTCCAAGCCC(下線を引いたHindIII部位を含有する)。
【0050】
Accuprime Pfx SuperMix(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)を使用して生じさせたPCR生成物を、pGEM−T easy vector(Invitrogen)に挿入した。
【0051】
由来するCD4構造(配列番号5 CNLEACQKRCQSLGLQGKCAGSFCAC)に対応する、合成により生じさせたフラグメントで、野生型gp160におけるNsil−Stulカセットを置換することにより、gp160キメラをコードするDNAフラグメントを構築した。
【0052】
その後、これらの構築物をpSVIIIenvにサブクローニングして、BamHI/Kpnl制限酵素の使用して野生型gp160をコードするDNAフラグメントを置換し、ならびにT4 DNAポリメラーゼ(マサチューセッツ州、ベヴァリーのNew England Giolabs)によって平滑末端形を形成することによりサイトメガロウイルスCMVプロモーターを有するpCEL/E160 HIV−1エンベロープ発現ベクターにもサブクローニングした。
【0053】
野生型gp120タンパク質の発現のためのp119Lバキュロウイルストランスファーベクターは、以前に説明されている(4)とおり構築した。
【0054】
配列番号6および7の配列を有する以下のプライマーを使用して、gp120キメラをコードするDNAフラグメントを構築した:
フォワードとして、配列番号6:5’GCGGATCCGCCACCATGACCATCTTATG(下線を引いたHpal部位を含有する)、および
リバースとして、配列番号7:5’CCCAAGCTTGGGTTATCTTTTTTCTCTCTGCA CCA(下線を引いたHindIII部位を含有する)。これらのPCR生成物をp119Lにクローニングして、BamHI/HindIII制限酵素の使用により野生型gp120配列を交換した。
【0055】
タンパク質発現および精製
DOTAPリポソームトランスフェクション試薬(ドイツ、マンハイムのBoehringer)を使用して、p10プロモーター(5)およびgp120キメラを含有するp119Lトランスファーベクターの制御下、ポリヘドリン遺伝子を発現するウイルスAcSLP10 DNAでSf9昆虫細胞をコトランスフェクトすることにより、gp120エンベロープキメラを生産した。コトランスフェクションの4日後、上清を回収し、組換えウイルスプラークをプラークアッセイ(6)によって選択した。可能性のある組換えプラークを、HindIII制限酵素での消化およびウエスタンブロット分析によってスクリーニングした。以前に説明されている(7)ような2つのタイプのカラム、セファロースCoAゲルカラム(英国、バッキンガムシアのAmersham Pharmacia Biotech,Ltd.)およびデキストランスルフェートゲルカラム(ミズーリ州、セントルイスのSigma−Aldrich)を使用して、プールされた上清からエンベロープタンパク質を精製した。
【0056】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
4℃で一晩、10g/mLの抗gp120 D7324でマイクロタイタープレートを被覆した。リン酸緩衝食塩水(PBS)中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間、37℃でプレートをブロックし、その後、PBS−0.1% Tween 20(PBST)で3回洗浄した。PBS−10%FBSで希釈した、可溶性gp120YU2およびキメラタンパク質を、sCD4(20μg/mL)の存在下または不在下、37℃で1時間、インキュベートし、その後、その被覆抗体と共に1時間、37℃でインキュベートした。その後、MAbの系列希釈物を捕捉タンパク質と共にインキュベートし、結合した抗体を1/10,000希釈でのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識二次抗体(Amersham Pharmacia Biotech)およびo−フェニレンジアミン基質(Sigma−Aldrich)で検出した。5〜10分後、2M H2SO4の添加により、呈色反応を停止させ、490nmでの吸収を測定した。
【0057】
表面プラズモン共鳴分析
実験は、BIACORE 2000装置(スウェーデン、ウプサラのBIACORE)を使用して、HBS−EP(HEPES緩衝食塩水、3mM EDTA、150mM NaCl、0.005%非イオン性界面活性剤 P20、pH7.4)中、25℃で行った。CD4i MAbへのキメラタンパク質の親和性結合を判定するために、それらを、アミンカップリングを使用してCM4センサーチップ表面に固定した。野生型gp120YU2を37℃で1時間、sCD4と予備混合した後、注入した。解離期の後に10mM HClでの再生段階を続けた。得られたすべてのセンサーグラムを、対照参照表面からのシグナルを引くことにより補正した。1:1ラングミュアモデルを使用して、会合および解離データを一致させた。
【0058】
細胞表面受容体結合
合計2×105個のCEM(CD4+/CCR5-)細胞またはCf2ThR5(CCR5+)細胞をPBS−0.3%BSAで2回洗浄し、sCD4(20μg/mL)を伴うまたは伴わない1μg/mLの野生型gp120またはキメラタンパク質と共にインキュベートした。1時間、37℃で、抗gp120と共に細胞をインキュベートした。その後、洗浄した後、細胞を、45分間、室温で、1:50希釈での二次PEコンジュゲート化抗体(ペンシルバニア州、ギルバートビルのRockland)と共にインキュベートした。その後、細胞を同じ条件で洗浄し、CellQuestソフトウェアを使用してFACSort装置(カリフォルニア州、マウンテンビューのBecton Dickinson)で分析した。
【0059】
シングルサイクル感染性アッセイ
野生型gp160またはキメラタンパク質を発現するpSVIIIenvプラスミドを、Effecteneトランスフェクション試薬(カリフォルニア州、バレンシアのQiagen)を使用して、pCMV Gag−PolパッケージングプラスミドおよびpHIV−lucベクターで293T−HEK細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの30時間後、細胞上清を回収し、細孔径0.45μmのフィルターによって濾過し、超遠心分離法によって濃縮した。Cf2ThR5およびHeLa P4C5細胞の感染のために、標準量の偽型ウイルス(200ngのp24タンパク質)を細胞と共に、96ウエル照度計プレート(バージニア州、シャンティイーのDynex Technologies)において48時間、37℃でインキュベートした。100μLのルシフェラーゼアッセイ用緩衝液および50μLのルシフェラーゼ基質(ウィスコンシン州、マディソンのPromega)を細胞可溶化物に添加し、TECAN Genios照度計で化学発光の強度を測定することにより、ルシフェラーゼ活性を決定した。
【0060】
細胞−細胞融合アッセイ
6ウエルプレートにおいて集密度70%に成長させたHeLa−tatを、製造業社によって推奨されているとおりにリポフェクタミン試薬(Invitrogen)を使用して1μgのエンベロープタンパク質発現性プラスミドでトランスフェクトした。等量のHeLa CD4+/CCR5+ LTR−lacZ細胞をトランスフェクションの48時間後に添加した。一晩、共培養した後、付着細胞を0.5%グルタルアルデヒドで10分間固定し、β−ガラクトシダーゼ活性について、X−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)基質で、一晩、37℃で染色した。ウエル当たりの青色に染色されたフォーカスの合計数をカウントし、顕微鏡写真を得た。
【0061】
結果
gp120ΔV1/V1sdCD4およびgp120ΔV2sdCD4タンパク質の構築および精製
本発明のキメラタンパク質は、HIV−1 gp120YU2配列に挿入されたsdCD4を有するCD4i配座を示す一本鎖糖タンパク質である。CD4由来ペプチドは、28のアミノ酸を有し、ならびにgp120エンベロープ糖タンパク質のための主結合部位であるヒトCD4受容体のCDR2様ループを模倣する。オリゴヌクレオチドから合成により生じさせたこのCD4由来ペプチドのDNA配列を、図1に示すとおり、gp120YU2糖タンパク質のV1/V2可変領域にクローニングした。図1:(A)野生型gp120YU2のV1/V2ループの予想アミノ酸配列。(B)V1とV2ループの一部(16のアミノ酸)とがsdCD4配列で置換されたgp120ΔV1/V2sdCD4エンベロープタンパク質。(C)gp120ΔV2sdCD4タンパク質において、156〜168アミノ酸をコードする領域を置換することによりsdCD4をV2ループに挿入した。全V1ループを保持していた。アミノ酸数は、システイン残基に対応する。
【0062】
gp120ΔV1/V2sdCD4キメラタンパク質は、V1ループとV2ループからの16のアミノ酸残基とをsdCD4配列で置換することによって構築した。
【0063】
gp120ΔV2sdCD4キメラタンパク質は、全V1ループを保持するが、V2ループ内の156〜168アミノ酸をコードする領域はsdCD4によって置換されている。
【0064】
野生型およびキメラgp120配列をバキュロウイルストラスファーベクター、p119にクローニングした。組換えタンパク質の効率的な分泌を助長するために、天然HIVシグナル配列を、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)バキュロウイルスのエクジステロイドグリコシルトランスフェラーゼ(EGT)遺伝子から単離された新たなシグナル配列(7)によって置換した。構築したすべてのキメラは、ELISAおよびウエスタンブロット分析によって判定して、ほぼ同量のgp120エンベロープタンパク質を発現した。挿入されたsdCD4配列は、発現レベルに影響を及ぼさなかったようである。さらに、二段階精製手順を使用してこれらのタンパク質をSf9昆虫細胞培養上清から精製し、その後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって特性付けした。結果を図2に与える。そのゲルをクマシン・ブルーで染色するか(図2A)、または抗gp120 D7324抗体を使用するウエスタンブロット分析(図2B)のために処理した(右の矢印は、エンベロープタンパク質の位置を示す)。
【0065】
100kDaの見かけの分子量(MW)を示すバンドに対応するキメラは、同じ条件下で発現された野生型gp120エンベロープのものと一致する。
【0066】
キメラタンパク質の抗原特性
キメラタンパク質の構造の完全性は、公知エピトープ特異性に対するMAbのパネル(D7324、CG10、LF17およびF105)での酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって判定した。前記ELISAは、CD4誘導性結合部位に対するCD10およびLF17 MAbを用いて、「材料および方法」において説明したとおりに行った。
【0067】
結果を図5に与える。野生型gp120(丸)、gp120/sCD4(四角)、gp120△V1/V2sdCD4(ひし形)およびgp120ΔV2sdCD4(三角、◆)タンパク質をD7324抗体によって捕捉し、MAbs CG10(A)、LF17(B)およびF105(C)を、示されている濃度で添加した。結合した抗体の量を固有のF(ab’)2−HRPコンジュゲートによって検出し、490nmでの光学密度として表した。
【0068】
これらの抗体は、gp120/sCD4複合体のみを認識し、sCD4不在下ではgp120を認識しない。両方のキメラタンパク質がCG10によって認識された。しかし、gp120ΔV1/V2sdCD4キメラタンパク質のほうがgp120ΔV2sdCD4より効率的に認識された(図5A)。これは、このエピトープの露出のほうが少なかったことを示唆している。図5Bに示すように、LF17は、両方のキメラタンパク質に同様の効率で結合したが、野生型gp120/sCD4複合体と比較すると劣っていた。
【0069】
gp120/sCD4複合体の形成は、gp120上のCD4結合部位の露出を阻害するので、キメラタンパク質に結合するCD4結合部位抗体の能力を試験した。
【0070】
図5Cに示すように、ヒトF105 MAbは、gp120/sCD4複合体およびキメラタンパク質より良好に、野生型gp120タンパク質に結合した。gp120ΔV2sdCD4は、前記複合体およびgp120ΔV1/V2sdCD4タンパク質より効率的に認識された。
【0071】
これらのデータは、gp120ΔV1/V2sdCD4タンパク質が、より良好にCD4iエピトープに暴露され、従って、CD4結合エピトープにはそれほど暴露されないという以前の結果と一致した。
【0072】
前述の結果は、挿入されたsdCD4が、特にGP120ΔV1/V2sdCD4タンパク質において、CD4iエピトープの露出をもたらすキメラタンパク質の配座変化を生じさせることを明示している。
【0073】
興味深いことに、抗CD4、ST4およびBF5 MAb(CD4分子に加えて、gp120および近傍エピトープへの結合にそれぞれ関与するエピトープを特異的に認識することができる)は、2つのgp120/CD4キメラをいずれも認識しない。これは、これらの分子が、免疫処置後に抗CD4抗体を誘導する確率は低いことを意味する。
【0074】
さらに、V2ループ、その配座エピトープ2G12、CおよびN末端ペプチドそれぞれに対する抗gp120MAbは、キメラ上のこれらのエピトープを、それらが野生型gp120上でそれを認識するのと同様に認識することができた。
【0075】
固定化CD4iMabへのキメラタンパク質の結合強度のBIACORE分析
表面プラズモン共鳴(SPR)により会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)ならびに平衡解離定数(KD)を決定することにより、CD4i MAbへのキメラタンパク質の定量的結合を行った。sCD4、gp120ΔV1/V2sdCD4またはgp120ΔV2sdCD4タンパク質を伴うまたは伴わない、様々な濃度の野生型gp120YU2を、固定化4.8DおよびE51 CD4i MAbの上に通した。
【0076】
結果を次の表にまとめる:
表1.キメラgp120と抗CD4i MAbとの分子相互作用の動力学的パラメータ。会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)および平衡解離定数(KD)。Rmaxは、固定化抗体への最大タンパク質結合能力を表す。
【0077】
【表1】

得られたセンサーグラムを図3A〜Dに示す。様々な濃度のgp120V1/V2sdCD4(A、C)およびgp120V2sdCD4(B、D)タンパク質を固定化4.8D(A、B)およびE51(C、D)上に50μL/分の流量で通した。MAbは、CM4センサーチップに、それぞれ2000および1100 RUで固定した。RU、応答単位。結合定数の概要を図3Eに提示する。
【0078】
gp120ΔV1/V2sdCD4およびgp120ΔV2sdCD4の算出KD(kd/ka)は、4.8d MAbについては、それぞれ、0.015±0.0004nMおよび0.038±0.0007nMであったが、gp120/sCD4複合体の対応するKDは、100倍高かった。
【0079】
この差は、主として、これらのキメラタンパク質についてのより高いkaに起因する。
【0080】
別のCD4i Mab、E51で同様の結果が観察された。gp120ΔV1/V2sdCD4およびgp120ΔV2sdCD4のKD値は、それぞれ、0.012±0.0002 nMおよび0.013±0.0001 nMであった。これは、E51 MAb対する高い親和性結合を示唆している。図4は、sCD4を伴うまたは伴わないgp120YU2とCD4i MAbとの相互作用ならびにキメラタンパク質とCD4i MAbとの相互作用についての重ね書きセンサーグラムを示すものである。4.8d(A)およびE51(B)MAbを2000および1100 RUで固定し、タンパク質を30μL/分の流量で通過させた。gp120YU2タンパク質を3倍モル過剰のsCD4と共に1時間、37℃でインキュベートした後、注入した。
【0081】
sCD4不在下、野生型gp120YU2は、4.8dに対する有意な結合を示さなかったが、E51 MAbにはわずかに結合した。予想どおり、sCD4は、高い親和性での両方のCD4i抗体に対する結合を増加させた。しかし、両方のキメラタンパク質が、より高い親和性で4.8dおよびE51に結合した。これは、挿入されたsdCD4が、それらのタンパク質の正しいフォールディングに影響を及ぼさないことを示している。
【0082】
CCR5およびCD4受容体へのgp120キメラタンパク質の結合
ELISAおよびBIACORE技術による上の結果によって、キメラタンパク質、特にgp120ΔV1/V2sdCD4がCD4結合配座を有することが明らかになったので、これらのタンパク質がCCR5ケモカイン受容体に結合するかどうかを評定する実験を行った。
【0083】
多量のCCR5を発現するCf2thR5細胞を、sCD4の存在下または不在下で、野生型およびキメラgp120タンパク質と共にインキュベートした。結果を図6に与える(図6は、Cf2ThR5およびHeLa P4C5株細胞それぞれにおいて発現されたCCR5受容体(A)およびCD4(B)受容体に対するCCR5の結合活性を示す)。それらの細胞をgp120(_ _)、gp120/sCD4( )、gp120ΔV1/V2sdCD4(........)またはgp120ΔV2sdCD4(……)タンパク質のいずれかと共に1時間、37℃でインキュベートした。結合したタンパク質を、抗gp120抗血清(A)およびCG10 MAb(B)を使用して検出し、PE結合二次抗体を使用して顕示した。染色された細胞を洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。
【0084】
図6Aに示されているように、両方のキメラタンパク質は、sCD4の不在下では、gp120/sCD4タンパク質複合体と同様によくCCR5に結合し、これは、共受容体結合部位およびCD4iエピトープの正しい露出を示唆している。sCD4の存在は、gp120ΔV1/V2sdCD4のCCR5への結合を増加させないが、gp120ΔV2sdCD4の結合はわずかに増加させる。
【0085】
第二のアッセイにおいて、CD4受容体に結合するキメラタンパク質を試験した。CCR5タンパク質ではなくCD4タンパク質を発現するCEM細胞を野生型およびキメラタンパク質と共に1時間、37℃でインキュベートした。両方の組換えタンパク質は、野生型タンパク質と比較してCD4結合の減少を示した(図6B)。CD4受容体に結合するgp120ΔV1/V2sdCD4の能力は、gp120/sCD4複合タンパク質に類似していたが、gp120V2sdCD4は、より良好にCD4に結合した。
【0086】
細胞表面発現HIV−1キメラエンベロープの細胞−細胞融合アッセイ
キメラタンパク質が、シンシチウム形成をもたらす融合活性を維持するかどうかを判定するために、HeLa−Tat細胞をpCELエンベロープ発現ベクターでトランスフェクトした。それらのトランスフェクトされた細胞を、CD4およびCCR5受容体を発現するHeLa P4C5細胞と共培養した。野生型gp160(A)、gp160ΔV1/V2sdCD4(B)またはgp160ΔV2sdCD4(C)エンベロープ構築物で、HeLa−Tat細胞をトランスフェクトした(図7)。トランスフェクション後48時間の時点で、それらの細胞を、組み込まれたHIV LTR−lacZを有し、CCR5およびCD4受容体を発現するHeLa P4C5細胞と共培養した。細胞を固定し、X−Galで染色した。一晩、インキュベートした後、シンシチウムをカウントした。いずれのキメラタンパク質も検出可能なシンシチウム形成を生じなかった。これらの条件下で野生型は、89を超えるシンシチウムを形成した。
【0087】
キメラエンベロープ糖タンパク質を含有するウイルス粒子による感染
ウイルス侵入を媒介するキメラタンパク質の能力を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするenv欠損HIV−1プロウイルスを補足する野生型またはキメラいずれかのエンベロープタンパク質を発現するプラスミドを使用して分析した。293T細胞において生産された組換えビリオンを、CCR5およびCCR5/CD4をそれぞれ安定して発現するHeLa P4C5およびCf2ThR5細胞のいずれかと共にインキュベートし、ターゲット細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定した。ホタルルシフェラーゼを発現する組換えウイルスと、野生型gp160(1)、gp160ΔV1/V2sdCD4(2)またはgp120ΔV2sdCD4(3)エンベロープ構築物のいずれかとを、HeLa CD4+CCR5+(A)またはCf2Th−CCR5(B)細胞のいずれかと共にインキュベートした(図8)。48時間後、ルシフェラーゼ活性を、「材料および方法」において説明したとおりに測定した。これらのデータは、4つの独立した実験の代表である。
【0088】
機能的野生型エンベロープタンパク質を含有するウイルス偽性粒子は、HeLa P4C5細胞を感染させ、Cf2ThR5細胞も感染させたが、予想どおり、sCD4が存在する場合だけであった。しかし、キメラタンパク質は、Cf2ThR5細胞も、HeLa P4C5細胞も感染させることができなかった。このことは、両方のタンパク質が、膜融合および複製プロセスのなんらかの側面を欠損しているようであることを示唆している。
【0089】
本発明者らの結果を考え合わせると、HIV−1 YU2からの野生型のgp120の主要なエピトープがこれらの構築物では保存されるので、この種のタンパク質は、免疫処置の良好な原型とみなすことができると考えることができる。
【0090】
マウスにおけるキメラプラスミドを使用するキメラ1およびキメラ2のインビボ免疫原性
この実験の目的は、HIV gp120のその受容体への結合に干渉する小さなCD4由来ペプチドを発現するキメラ(キメラ1およびキメラ2)の免疫反応に対する効果を評価することである。この目的を達成するために、リンカーまたは架橋剤を避けて、V1/V2可変領域にCD4由来ペプチドを含有するキメラHIV−1エンベロープ糖タンパク質でマウスを免疫した。2つの異なるアジュバント:CpG様モチーフ(HYB2048)およびインターロイキン−22を使用した。
【0091】
1.1.キメラ1またはキメラ2とCpG様モチーフ(HYB2048)およびIL−22を併用する根本的理由
ここ数年にわたる広範な調査により、非メチル化CpGモチーフを含有する細菌DNAおよび合成オリゴデオキシヌクレオチド(CpG DNA)は、Th1サイトカインを生産するように、CTL応答を促進するように、およびBリンパ球による免疫グロブリンの生産を増進させるように免疫生得細胞を誘導する、効力あるアジュバントであることが実証された。CpG DNAのこれらの効果は、樹状細胞の分化および成熟を刺激することが知られているToll様受容体9(TLR9)との相互作用の二次的なものである可能性が高い。様々なワクチン、抗原および免疫原とアジュバントとしてのCpG DNAの併用を、両腕の特異免疫の強化について評価した。例えば、不活化gp120欠損HIV−1免疫原への合成CpG DNAの追加は、齧歯動物および霊長類において細胞媒介ウイルス特異的免疫反応と体液性ウイルス特異的免疫反応の両方の増強をもたらす。最近、新規合成TLR9アゴニストが利用可能となった。こうしたアゴニストの1つは、Amplivax(商標)と呼ばれるHYB20482055である。HYB20482055は、新規3’−3’結合構造および合成CpR(R=2’−デオキシ−7−デアザグアノシン)モチーフからなる、免疫調節オリゴヌクレオチド(IMO)である。この新規3’−3’構造は、自由な3’末端が不在のため、汎存ヌクレアーゼに対する、より大きな安定性をもたらし、ならびにHYB20482055における2つの接触可能な5’末端の存在は、従来のCpG DNAと比較して強化されたTLR9活性化を生じさせる。加えて、合成CpRジヌクレオチドモチーフは、天然CpGジヌクレオチドモチーフと比較して高いIL−12および低いIL−6を特徴とする独特なサイトカイン誘導プロフィールを誘導することが明らかになった。
【0092】
IL−22は、IL−10を含む、ヒトI型IFNファミリーのメンバーである。IL−22は、その受容体複合体内にIL−22R1を有するIL−10R2c鎖に結合するので、IL−10と相互作用する可能性がある。IL−22は、炎症を媒介し、クラスIIサイトカイン受容体ヘテロ二量体IL−22 RA1/CRF2−4に結合する。このサイトカインは、免疫調節反応にも関与する。IL−22阻害剤は、関節炎などの炎症性疾患を治療すると提唱されている。最近のデータは、IL−22が、生得免疫を誘導し得ることを示唆しており(これらは、IL−22が、暴露された未感染個体におけるHIVに対する防御に関与することを示すデータによって完全なもととなった)、従って、ワクチンアジュバントの適するターゲットであるように考えられる。
【0093】
単独でのならびにHYB2055およびHYB2048と組み合わせた場合のHIV−1免疫原、不完全フロイントアジュバントを用いて調合したgp120欠損全滅ウイルスワクチン候補(HIV−IFA)の免疫原性をマウスモデルにおいて評価した。HIV−IFA単独と比較して、HIV−IFAとHYB2055の組み合わせでの免疫処置は、HIV特異的およびp24特異的INFγ、RNATES、MIP 1αおよびMIP 1βの強力な生産、ならびにHIV特異的およびp24特異的抗体の高い力価を惹起した。HYB2055およびHYB2048を含めることにより、HIV−IFAのみによって生産されるIL−5のレベルも減少した。HYB2048は、HIV−IFAの免疫原性を強化し、1型サイトカインプロフィールの方に応答をシフトさせる。HYB2055およびHYB2048アジュバントのこれらの免疫強化効果は、用量依存性であった。
【0094】
従って、CpG様モチーフまたはIL−22は、キメラ1および/またはキメラ2に対する免疫反応を増大させる有望なアジュバント候補であるように考えられる。
【0095】
本発明の目的は、プラスミドとして単独で使用するイムノキメラが、HIV特異的免疫反応を誘導することができるかどうか評定すること、ならびにHYB20482048および/またはIL−22が、そうした反応を強化するかどうかを試験することである、研究である。
【0096】
1.2.方法
1.2.1.キメラ構築物
野生型およびキメラgp120配列をバキュロウイルストランスファーベクター、p119Lにクローニングした。組換えタンパク質の効率的分泌を助長するために、天然HIV−1シグナル配列を、オートグラファ・カリフォルニカバキュロウイルスのエクジステロイドグリコシルトランスフェラーゼ(EGT)遺伝子から単離された新たなシグナル配列によって置換した。DOTAPリポソームトランスフェクション試薬を使用して、p10プロモーターおよびgp120キメラを含有するp119Lトランスファーベクターの制御下、ポリヘドリン遺伝子を発現するウイルスAcSLP10 DNAで、Sf9昆虫細胞をコトランスフェクトすることよって、gp120エンベロープキメラを生産した。コトランスフェクションの4日後、上清を回収し、組換えウイルスプラークをプラークアッセイによって選択した。可能性のある組換えプラークを、HindIII制限酵素での消化、ウエスタンブロット分析およびELISAによってスクリーニングした。これらの実験において使用した試薬は、キメラ1およびキメラ2を含有する組換えバキュロウイルス感染Sf9細胞の上清であった。
【0097】
1.2.2.プロトコルスキーム
70匹の雌C57/BL6マウス;週齢6〜8週(N=5/群)を、イムノキメラ1もしくは2(マウス当たり200μg:4頭筋当たり2×50μg)および/またはマウスオリゴヌクレオチドHYB20482048(マウス当たり100μg:4頭筋当たり50μg)および/またはIL−22(マウス当たり100μg:4頭筋当たり50μg)でIM免疫した。初回免疫処置後、3週間の後、マウスに追加免疫した。
【0098】
【表2】

【0099】
1.2.3.免疫学的分析
単独で、天然p24抗原と共に、またはHIV−1抗原と共に、培地中で4日間、インビトロで刺激した新鮮な脾臓細胞を用いて、免疫学的分析を行った。
【0100】
INF−ガンマ、IL−12、IL−4;IL−5、IL−10、MIP1アルファ、MIP1ベータ、RANTESの生産をELISA法で評価した。
【0101】
P24抗原およびHIV−1抗原特異的IFN−ガンマ生産性リンパ球をELISPOTアッセイによって評価した。
【0102】
1.2.4.統計解析
等しい中央値のウィルコキソン順位和検定を用いた。ベクトルxおよびyでの2つの独立したサンプルが、等しい中央値を有する分布から生じ、その検定からP値を返すという仮説の両側順位和検定を行う。pは、所与の結果を観察する確率、または万一、帰無仮設が真である、すなわち中央値が等しい場合には、1より大きい極値である。小さなp値は、帰無仮設の妥当性に疑いを投げかけ、従って、群間の差を示唆する。ことによると位置シフトを除いて同一であるが、他の点では任意である連続分布から、2セットのデータが生じると想定される。xおよびyは、異なる長さを有する場合がある。
【0103】
1.3.結果
結果を図9〜19のセットに提示する。
【0104】
図9.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−4の生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターロイキン−4の生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−4の生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−4の生産。すべてのパネルにおいて、両方のキメラでの免疫処置は、対照マウス(免疫処置なし)と比較してインターロイキン−4の生産を減少させる;左上のパネルにおける(基底条件における)両方のキメラについての差は有意であり、これは、両方のキメラがIL−4の生産を抑制し、従って、TH2リンパ球の活性化を阻害することを示唆している。
【0105】
図10.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−10の生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターロイキン−10の生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−10の生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−10の生産。インターロイキン−10の生産は、対照マウスと比較して、キメラ2で免疫したマウスでは弱いが有意に(左上および下のパネル)増加した。これは、キメラ2の可能な抗炎症活性を示唆している。HIV特異的刺激に反応して、IL−22に反応して、同じ作用が観察される。
【0106】
図11.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−5の生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターロイキン−5の生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−5の生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−5の生産。インターロイキン−5の生産は、対照マウスと比較して、免疫された場合に修飾されず、これにより、TH2活性化に対する抑制作用がさらに確認される。
【0107】
図12.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−12 p40サブユニットの生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターロイキン−12 p40サブユニットの生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−12 p40サブユニットの生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−12 p40サブユニットの生産。インターロイキン−12 p40サブユニットの生産は、対照マウスと比較して、免疫された場合に修飾されない(キメラ2で免疫された右上パネルにおけるマウスのみ、インターロイキン−12 p40サブユニットの生産増加を示す)。結果は、キメラ2についてのHIV特異的応答の存在を示唆している。
【0108】
図13.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−12 p70サブユニットの生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターロイキン−12 p70サブユニットの生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−12 p70サブユニットの生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターロイキン−12 p70サブユニットの生産。インターロイキン−12 p70サブユニットの生産は、対照マウスと比較して、免疫された場合に修飾されない。
【0109】
図14.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるRANTESの生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのRANTESの生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるRANTESの生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるRANTESの生産。RANTESの生産は、免疫された場合、対照マウスと比較して増加する(キメラ2のほうが強い効果を有する:上のパネルを参照のこと)。統計学的有意性に達していないにもかかわらず、キメラ2は、RNATESのHIV特異的生産を刺激する点で陽性の傾向を有し、これは、TH1細胞に対する刺激効果を示唆している。
【0110】
図15.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるMIP1−アルファの生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのMIP1−アルファの生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるMIP1−アルファの生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるMIP1−アルファの生産。MIP1−アルファの生産は、対照マウスと比較して、免疫された場合に修飾されない。gp160特異的応答(右上のパネル)は、キメラ2がHYB2046およびIL−22と会合しているとき、印象的に増加し(第三グループの棒を参照のこと)、これは、キメラ2活性が、cpg様分子およびIL−22の追加により、MIP1−アルファのHIV特異的生産およびそうした組み合わせの可能な直接的抗ウイルス効果を増幅するように、有意に修飾され得ることを示唆している。
【0111】
図16.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるMIP1−ベータの生産。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのMIP1−ベータの生産。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるMIP1−ベータの生産。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるMIP1−ベータの生産。MIP1−ベータの生産は、対照マウスと比較して、免疫された場合に修飾されない。
【0112】
図17.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)。インターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)は、対照マウスと比較して、免疫された場合に増加する(キメラ1のほうが強い効果を有する:右上および下のパネル参照)。gp160応答(右上のパネル)は、キメラ1および2がHYB2048およびIL−22と会合しているとき、特に印象的である(第三および第四グループの棒を参照のこと)。これは、キメラ2活性が、cpg様分子およびIL−22の追加により、TH1バランスを優先して細胞媒介免疫を刺激するIFNガンマのHIV特異的生産を増幅するように、有意に修飾され得ることを示唆している。
【0113】
図18.雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD8)。左上のパネル:基底条件(非刺激細胞)でのインターフェロンガンマの生産(CD8)。右上のパネル:HIV−1 gp160でインビトロで刺激した細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD8)。下のパネル:HIV−1天然p24でインビトロで刺激した細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD8)。インターフェロンガンマの生産(CD8)は、対照マウスと比較して、免疫された場合に増加する(キメラ1のほうが強い効果を有する:左上および下のパネル参照)。データは、両方のキメラが、基底およびHIV特異的IFNガンマ生産を刺激する能力を有することを示唆している。
【0114】
図19.左上のパネル:雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるCCR5発現性CD4+ T細胞の百分率。
右上パネル:雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるCXCR4発現性CD4+ T細胞の百分率。
下のパネル:雌C57/BL6マウスの脾臓細胞による場合のCD4+/CCR5+のCD4+/CXCR4+に対する比率。
CCR5は、免疫されていないマウスと比較して、両方のキメラにより減少される;CXCR4は、キメラ1により有意に増加される;CCR5 CD4+ 細胞のCCR4 CD4+ 細胞に対する比率は、両方での免疫処置によって有意に減少され、これは、HIV感染症への細胞の罹病性が、有意に下方修飾されることを示している。データは、そうした分子が、HIV疾患において予防ワクチンまたは殺菌剤として使用される可能性を有することを示唆している。
【0115】
結果は、キメラでマウスを免疫することによって免疫調節が確かに達成されることを示している。
【0116】
キメラに関連した免疫調節は、多くの側面を有し、例えば、それには、TH2細胞に対する阻害効果(インターロイキン−4の生産減少)、抗炎症成分(インターロイキン−10の生産増加)、TH1リンパ球の直接刺激、ならびに細胞媒介免疫に対する効果(インターロイキン−12の生産増加;INFガンマ生産性CD4+およびCD8+ T細胞数の増加)が挙げられる。
【0117】
これらの免疫調節特性に加えて、キメラは、2つの別個のメカニズム(可溶性抗ウイルスケモカインRANTESの生産増加、およびCCR5、主HIV共受容体の下方修飾)によって、ターゲット細胞のHIV感染症への罹病率を減少させる。両方のキメラにこれらの効果が付与されているという観察にもかかわらず、総合的な免疫調節および抗ウイルス活性は、キメラ2で免疫されたマウスにおけるほうが効力が高いようである。両方のキメラの効果は、CpG様化合物(HYB2048)およびインターロイキン−22の追加によって増加される。キメラでの免疫処置が、結果として免疫調節および直接的抗ウイルス効果を生じさせるという観察は、キメラが、HIV疾患において予防ワクチンまたは殺菌剤として使用される可能性を有することを示唆している。
【0118】
細胞媒介免疫に対する単独でのおよびCCL28と併用でのキメラ1またはキメラ2の効果
感染の予防に成功すために、HIVに対する粘膜ワクチンは、体液性免疫反応と細胞媒介免疫反応の両方に対して作用できる必要があると想定される。従って、キメラが非常に高い親和性で抗体に結合できることを発見し次第、本発明者らは、キメラが、HIVに感染した患者からのCD4およびCD8 T細胞におけるサイトカイン生産に影響を及ぼすことができるかどうか、ならびにHIV+患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)においてエクスビボで使用したとき、CCL28の追加がキメラの細胞活性を強化できるかどうか試験することを決意した。
【0119】
CCL28(粘膜関連上皮性ケモカイン、またはMECとしても知られている)は、IgA分泌性形質細胞の移動に関与する、および従って、HIV感染症を予防するメカニズムにおいて一定の役割を果す可能性を秘めている、最近記載されたサイトカインである。
【0120】
IgA分泌性形質細胞の移動へのCCL28の関与は、特定のケモカインおよびケモカイン受容体と相関することが、最近、明らかになった。例えば、Ig発現性形質芽細胞および形質細胞(IgA−ASC)は、特定のサイトカインによってライゲートされる、CCR9、CCR3およびCCR10をはじめとする多数の表面受容体タンパク質を特徴とする。特に、CCR10とCCR3の両方が、CCL28に結合する。
【0121】
この相互作用は、粘膜固有層におけるIgA−ASCの移動および補充を誘導する。特に、CCL28は、マウスとヒトの両方において研究されているあらゆる粘膜エフェクター部位(乳腺、唾液腺、子宮粘膜および子宮頚粘膜を含む)において、広範に発現され、多様な粘膜リンパ器官起源ならびに腸組織および腸外の組織起源のIgA−ASCを強力に化学的に誘引する。
【0122】
従って、CCL28−CCR10/CCR3回路は、粘膜エフェクター部位での形質芽細胞および形質細胞の帰巣において主要な役割を果す統合システムであると考えられる。興味深いことに、これらの化学的誘引能力は、IgMまたはIgG ASCのいずれの移動もCCL28−CCR10/CCR3システムによって刺激されないので、IgA−ASCに限定される。
【0123】
CCL28−CCR10/CCR3回路には他の興味深い特色も付与されている。例えば、CCL28は、グラム陽性微生物とグラム陰性微生物の両方に対する効力ある抗菌力を有する。加えて、このケモカインは、骨髄間質細胞によって発現され、これは、CC28とCCR10+/CCR3+ B細胞の相互作用が、粘膜の免疫反応と全身の免疫反応との統合に寄与し得ることを示唆している。
【0124】
1.方法
HIV感染患者およびHIVに暴露したが未感染の個体(ESN)においてCCR3/CCR10/CCL28回路を検査した。39人のHIV患者、37人のESNおよび25人のHCにおいて、血漿、唾液および生殖腺分泌物中のCCL28を定量した。CD3+、CD19+およびCD14+ 末梢血細胞(同じ個体からの細胞)において、CCR3およびCCR10発現を測定した。65人のHIV感染女性および9人の未感染対照からの母乳中のCCL28も定量した。
【0125】
結果を次のとおりまとめる:
1.ESNおよびHIV患者の血漿、唾液および生殖腺分泌物中のCCL28の濃度は、HCと比較して増加される。
【0126】
2.HCと比較して、ESNおよびHIV患者において、百分率および平均蛍光強度(MFI)、CD19+/細胞におけるCCR3およびCCR10の細胞内レベルに基づく表面密度の比較測定値は、増加される。
【0127】
3.HIVおよびESNにおける血漿、唾液および生殖腺分泌物において、CCL28とHIV特異的IgAの間に正の相関関係が観察される。
【0128】
ESNは、高濃度のHIV特異的IgAの存在を特徴とし、従って、CCL28は、HIV陰性暴露個体(ESN)における感染を防止する事象の生化学的カスケードにおいて重要な役割を果すことがわかり、これが、この分子を抗ウイルス(HIV)ワクチンの可能なターゲットにする。
【0129】
結果は、HIVに関するデータにより証明されるように、感染、すなわちウイルスに対する健常な抗原特異的免疫反応にはCCL28が重要であることを示唆している。この分子は、単独で使用することができる、または抗ウイルス(HIV)ワクチン用のアジュバントとして使用することができる可能性が高い。
【0130】
2.方法
細胞媒介免疫に対するCCL28の可能な効果を評価するために、CCL−28発現性プラスミドの存在下、および/または2つのキメラタンパク質の存在下で、HIV感染個体の末梢血単核細胞を培養した。
【0131】
2.1.抗原およびマイトジェンで刺激したTリンパ細胞によるサイトカイン生産
細胞内分析
2% AB+ 血清を補足した培地にPBMCを再び懸濁させ、昆虫細胞の上清(対照)、キメラ1(0.5μg)、キメラ2(0.05μg)、キメラ1または2+pCpGCCL28、(InvitrogenからのpCpG発現ベクターにクローニングされたマウスCCL28)、ENV(5μMの最終濃度でのHIV−1のgp160からの5つの合成ペプチドのプール)、GAG(gag p17およびgag p24(GAG)からの6つの合成ペプチドのプール)およびブドウ球菌腸毒素B(SEB、40μg/mL)(ミズーリ州、セントルイスのSigma)(陽性対照)を有する滅菌管に接種する。インキュベーション中に、CD28に対する抗体(ミネソタ州、ミネアポリスのR&D Systems)を1μg/ウエルの用量で添加して、共刺激を助長する。Brefeldin A(Sigma Aldrich)(10μg/mL 最終濃度)を各管に添加する。PBMCを42時間インキュベートし、その後、IntraPrep Kit(Beckman Coulter)を使用して、CD4/IFN−ガンマ/IL−2について、およびCD8/INF−ガンマ/TNF−アルファについて染色する。
【0132】
2.2.CFSEでの増殖アッセイおよび増殖性細胞の表現型決定
CFSE Flow法は、細胞の多数のパラメータの分析のための簡単で高感度な技術となる。この方法は、増殖性細胞の特定の集団の研究を可能にする。先ず、PBMCを、細胞中に受動的に拡散する膜透過性、非蛍光CFSEと共にインキュベートする。過剰な染料を洗い流し、昆虫細胞の上清(対照)、キメラ1(0.05μg)、キメラ2(0.05μg)、キメラ1または2+pCpGCCL28、(InvitrogenからのpCpG発現ベクターにクローニングされたマウスCCL28)、ENV(5μMの最終濃度でのHIV−1のgp160からの5つの合成ペプチドのプール)、GAG(gag p17およびgag p24(GAG)からの6つの合成ペプチドのプール)およびブドウ球菌腸毒素B(SEB、40μg/mL)(ミズーリ州、セントルイスのSigma)(陽性対照)でのインビトロ刺激によってPBMCを増殖するように誘導する。それらの細胞を培養状態で5日間、維持する。細胞表面分子CD4およびCD8についての蛍光標識抗体での染色により、特定のリンパ球サブセットの増殖を検査することができる。
【0133】
3.結果
図20および21は、CD4 T細胞によるIL−2およびIFN−ガンマの生産に対する、ならびにCD8 T細胞によるIFN−ガンマおよびTNF−アルファの生産に対するキメラ1(CH1)およびキメラ2(CH2)+/− CCL28の効果をそれぞれ示すものである。
【0134】
CD4 T細胞によるおよびCD8 T細胞によるサイトカインの生産に対するキメラ1(0.5μg)+/−CCL28の効果は観察されなかった(図22および図23)。キメラ2は、単独で、CD4 T細胞によるIL−2の生産を、培地中5.2%から7.2%に、わずかに増加させることができる(図20)。gp120/CD4キメラ2と一緒にCCL28発現性プラスミドは、CD4+、IL−2分泌性T細胞に対して極めて強い効果を生じることができる。実際、CCL28のキメラ2への追加は、IL−2を発現するCD4+ T細胞を5.2%から15.6%に増加させた(図20)。同様の結果が、TNF−アルファを発現するCD8 T細胞で示され、CCL28のキメラ2への追加は、TNFアルファを発現するCD8+ T細胞を4.1%から12.2に増加させた(図21)。
【0135】
結論として、CCL28の追加は、キメラ2の免疫原性を増加させる。
【0136】
これらの結果は、粘膜免疫を目的とした感染性疾患において体液性および細胞媒介免疫を惹起する新規戦略についての枢要な結論の代表である。
【0137】
図22および23は、CFSE法を使用して、CD4 T細胞増殖(図22)およびCD8 T細胞増殖(図23)に対するキメラ1(CH1)およびキメラ2(CH2)+/− CCL28の効果を示すものである。CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1および2は、CD4 T細胞の強い増殖を誘導する(図22AおよびB)。実際、昆虫細胞上清での対照と比較して、2〜3倍の増殖増加が観察された(図22B)。CD8 T細胞の増殖が0.4%から1〜2%に増加されるような、より低い程度にではあるが、同じ結果が、CD8 bright T細胞で観察された。
【0138】
これらの結果は、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1および2が、CD4 T細胞の強い増殖、およびはるかに低い程度にCD8 bright T細胞の増殖を誘導することを示唆している。
【0139】
このように、本発明は、抗HIV抗体に対して高い親和性を有することに加えて、効力ある免疫調節および抗ウイルス効果も有するキメラを提供し、該キメラをIL−22およびCCl28と組み合わせて増幅させて、ワクチン/殺菌剤用の効力ある新規製品を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】HIV−1 gp120のV1/V2可変領域に導入されたCD4フラグメントの局在定位(A:野生型gp120YU2;B:gp120 cx1(キメラ1またはCH1);C:gp120 cx2(キメラ2またはCH2))。
【図2】gp120ΔV1/V2sdCD4およびgp120ΔV2sdCD4タンパク質の検出。
【図3】表面プラズモン共鳴を使用することにより4.8DおよびE51 CD4iMAbへのキメラタンパク質の結合を示す重ね書きセンサーグラム。
【図4】sCD4を伴うまたは伴わないgp120YU2のCD4i MAbへの結合とキメラタンパク質のCD4i MAbへの結合を比較するための重ね書きセンサーグラム。
【図5】CG10、LF17およびF105 MAbを使用することによるキメラタンパク質の免疫化学的特性付け。
【図6】CCR5受容体へのgp120エンベロープタンパク質の結合。
【図7】シンシチウム形成能力の評定。
【図8】1ラウンドの感染アッセイの結果。
【図9】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−4の生産。
【図10】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−10の生産。
【図11】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−5の生産。
【図12】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−12 p40サブユニットの生産。
【図13】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターロイキン−12 p70サブユニットの生産。
【図14】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるRANTESの生産。
【図15】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるMIP1−アルファの生産。
【図16】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるMIP1−ベータの生産。
【図17】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD4およびCD8)。
【図18】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞によるインターフェロンガンマの生産(CD8)。
【図19】雌C57/BL6マウスの脾臓細胞による共受容体発現性CD4+ T細胞の百分率。
【図20】CD4 T細胞からのインターフェロン−ガンマおよびインターロイキン−2の細胞内発現に対する、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1またはキメラ2の効果。
【図21】CD8 T細胞からのインターフェロン−ガンマおよびTNF−アルファの細胞内発現に対する、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1またはキメラ2の効果。
【図22A】インビトロでのCD4+ T細胞の増殖に対する、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1またはキメラ2の効果。分裂したCD4+ 細胞のパーセント(CFSE低)。
【図22B】インビトロでのCD4+ T細胞の増殖に対する、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1またはキメラ2の効果。対照(昆虫細胞上清)と比較した増殖増加倍率。
【図23】インビトロでのCD8 bright T細胞の増殖に対する、CCL28を伴うまたは伴わないキメラ1またはキメラ2の効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
gp120可変領域V1および/またはV2の少なくとも一部が、特異的体液性免疫反応を誘導することができるCD4誘導エピトープまたはCD4iの露出を達成するためにCD4由来配列によって置換されている、キメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項2】
CD4由来配列が、V1 gp120可変領域と、V2 gp120可変領域の一部とを置換している、請求項1に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項3】
CD4由来ペプチドが、ヒトCD4受容体のCDR2様ループを模倣する、請求項1または2に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項4】
15〜35のアミノ酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項5】
20〜30のアミノ酸を含む、請求項4に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項6】
前記ペプチドが、28のアミノ酸を有する、請求項4または5に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項7】
配列番号5 CNLEACQKRCQSLGLQGKCAGSFCACを有する、請求項6に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項8】
CD4由来配列が、V1と、V2ループからの10〜20のアミノ酸、特に16のアミノ酸とを置換している、請求項2〜7のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項9】
抗CD4iモノクローナル抗体によって認識されるが、抗CD4抗体によって認識されない、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項10】
CD4受容体およびCCR5共受容体に結合することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項11】
図1Bおよび1CのキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項12】
TLRリガンドとの組み合わせでの、請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項13】
IL22および/またはCCL28との組み合わせでの、請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質中の露出されたCD4iエピトープなどのCD4iエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する抗血清。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質中の露出されたCD4iエピトープなどのCD4iエピトープに対するポリクローナル抗体。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質中の露出されたCD4iエピトープなどのCD4iエピトープに対するモノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のキメラHIV−1 gp120糖タンパク質をコードするDNA構築物。
【請求項18】
請求項17に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターによってトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原性キメラHIV−1構築物の有効量と、担体、またはそれらのTLRリガンドとの組み合わせを含む、HIV−1感染症に特異的なワクチン組成物。
【請求項21】
HIV−1感染症を予防するための、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのキメラHIV−1 gp120糖タンパク質の有効量、またはTLRリガンド、IL22および/もしくはCCL28とそれらの組み合わせを含む、HIV−1感染症を緩和および/または予防および/または治療するための医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22A】
image rotate

【図22B】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2009−517077(P2009−517077A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542862(P2008−542862)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004037
【国際公開番号】WO2007/066236
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508159330)
【出願人】(508159341)
【出願人】(508159352)イミュノクリン リミテッド (1)
【Fターム(参考)】