説明

キャッピング装置

【課題】吸収材内でのインクの増粘を低減し、キャッピング後のノズル抜けを防止できる、キャッピング装置を提供する。
【解決手段】流体を噴射する噴射ノズルを有する噴射ヘッド20に当接するキャップ部材と、噴射ノズルから噴射された流体を吸収する流体吸収体Sと、流体吸収体Sに吸収された流体を搾取する搾取機構50と、を備えたキャッピング装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射可能な噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の流体を被記録材等に向けて噴射する装置である。流体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインク(流体)をインク滴として記録紙等の被記録材に向けて吐出、着弾させてドットを形成することで記録を行うインクジェット式記録装置がある。
【0003】
インクジェット式記録装置は、ノズルにおける噴射特性を維持あるいは回復させるためのメンテナンス処理を行う際、キャッピング装置が用いられる。このキャッピング装置は、記録ヘッドに当接した状態でポンプによる吸引動作を行うことでノズル内からインクを強制的に排出し、インクの噴射特性を回復させるクリーニング動作、或いは記録ヘッドのノズルの乾燥を防止する保湿動作に用いられる。このようなキャッピング装置はノズルから排出したインクを吸収するための吸収材(流体吸収体)を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−237092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成においては経時的に吸収材内に残っているインクが増粘する可能性がある。このように吸収材内のインクが増粘したキャッピング装置を記録ヘッドのノズル面に当接させると、増粘インクがノズル面或いはノズル内のインク中から水分を奪い取ることでノズル抜け(インクの噴射不良)を引き起こす可能性がある。また、例えば連続印字等でキャッピング装置が長期的に開放された状態とされる場合、吸収材におけるインクの増粘がさらに加速されてしまい、上述のノズル抜けが発生する可能性が高まってしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、吸収材内でのインクの増粘を低減し、キャッピング後のノズル抜けを防止できる、キャッピング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のキャッピング装置は、流体を噴射する噴射ノズルを有する噴射ヘッドに当接するキャップ部材と、前記噴射ノズルから噴射された前記流体を吸収する流体吸収体と、前記流体吸収体に吸収された前記流体を搾取する搾取機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のキャッピング装置によれば、搾取機構により流体吸収体から流体が搾取されるので、流体吸収体に保持される流体の量が低減する。これにより、流体吸収体内で流体の増粘が生じることが抑制され、キャッピング時に噴射ノズル内の流体から水分が奪い取られることに起因した噴射不良を防止できる。したがって、キャッピング後の噴射ヘッドにおいて良好な噴射特性を長期に亘って維持することができる。
【0008】
また、上記キャッピング装置においては、前記搾取機構は、前記噴射ヘッドが搭載されるキャリッジの動作に連動して駆動されるのが好ましい。
この構成によれば、例えばキャリッジが所定の位置に到達したタイミングで流体吸収体から流体を搾取することができる。
【0009】
また、上記キャッピング装置においては、前記噴射ノズルから前記流体吸収体に前記流体を噴射させた後、前記キャリッジが前記キャップ部材から離間する際に前記搾取機構を駆動させるのが好ましい。
この構成によれば、流体吸収体に流体が噴射された直後のタイミングで搾取動作が行われるようになる。よって、噴射直後であって増粘が生じていない流体を流体吸収体から確実に搾取できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、流体噴射装置としてのインクジェットプリンタ11の要部斜視図である。図2はキャッピング装置の要部を説明するための図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェットプリンタ11には、フレーム12が備えられ、このフレーム12にはプラテン13が架設されている。プラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての記録紙Pが搬送される。また、フレーム12には、プラテン13の長手方向と平行にガイド部材15が架設され、このガイド部材15にはキャリッジ16が摺動可能に支持されている。キャリッジ16は、キャリッジモータ18によりタイミングベルト17を介して、記録紙Pの搬送方向に交差する方向(図中X方向)に往復移動可能となっており、キャリッジモータ18は制御装置(不図示)によりその駆動が制御されている。すなわち、キャリッジ16は、制御装置により、その駆動が制御されるようになっている。
【0013】
このキャリッジ16の下面には、記録ヘッド20が搭載されている。記録ヘッド20は、図2に示すように、その下面で開口する複数のノズルNを有しており、ノズル形成面20aが搬送された記録紙Pに対向するように配設されている。そして、圧電素子20bが駆動されることで、ノズルNから記録紙Pに向かってインク滴が吐出される。
【0014】
また、キャリッジ16上には、内部にインクを収容したインクカートリッジ21が着脱可能に取付けられている。キャリッジ16に配設されたインクカートリッジ21は、その下方に配設された記録ヘッド20にインクを供給する。供給されたインクは、印刷データに基づいた圧電素子20bの駆動によって、ノズルNを介して記録紙Pに吐出される。
【0015】
フレーム12の一側部には、ホームポジションが設けられており、このホームポジションに本発明のキャッピング装置22が配設されている。このホームポジションは、非印刷時又は保管時等、プリンタが印刷休止状態にあるときにキャリッジ16が配置される領域である。キャッピング装置22は、ケース22a内に、キャップ23と、減圧手段を構成する吸引ポンプ30(図2参照)と、キャップ23及び吸引ポンプ30の駆動源である不図示の駆動モータと、この駆動モータの動力をキャップ23及び吸引ポンプ30に伝達する不図示の動力伝達機構と、を備えている。
【0016】
図2に示すように、キャッピング装置22を構成要素であるキャップ23は、キャップホルダ23aとキャップ部材23bとを含んでいる。キャップホルダ23aは、上側が開口した箱状に形成されており、この開口面が記録ヘッド20のノズル形成面20aを向くように配設されている。キャップ部材23bは、エラストマ等の可撓性材質からなり、キャップホルダ23aの内壁面によって支持されている。このキャップ部材23bは、その上端縁がキャップホルダ23aの上端縁よりも上方に突出している。
【0017】
キャップホルダ23aは、駆動モータの駆動により上下方向に移動可能にケース22a(図1参照)内に取り付けられている。そして、キャップ23は、キャップ部材23bが記録ヘッド20に当接するキャッピング位置と、キャップ部材23bが記録ヘッド20から離間した退避位置との間を往復移動可能となっている。
【0018】
キャップ部材23bの底面には、スポンジ材等からなる、シート状のインク吸収材(流体吸収材)Sが収容されている。このインク吸収体(流体吸収体)Sは、記録ヘッド20から吐出されるインクを受け止めて吸収する。
【0019】
また、キャップホルダ23aの底面には、インク排出口25が貫通形成され、キャップホルダ23aの下面には、排出チューブ26が接続されている。これらのインク排出口25と排出チューブ26内の流路とは互いに連通されて配設されている。キャップ23内に吐出されたインクは、このインク排出口25を介して、排出チューブ26内の流路に流入する。この排出チューブ26は、便宜上、図2では直線状に示しているが、通常はケース22a内において、キャップ23の下方で引き回され、吸引ポンプ30側へ延設された状態で収容されている。
【0020】
排出チューブ26の他端側(キャップ23と反対側)に吸引ポンプ30が接続されている。この吸引ポンプ30は、ノズルN内のインク等を吸引するヘッドクリーニングを行うためのものである。ヘッドクリーニングは、プリンタが長期間印刷を休止した後、印刷を再開するとき等、プリンタの図示しない制御部により実行命令が送出された際に行われる。その際、キャリッジ16がホームポジションに移動されて、記録ヘッド20がキャップ23の上方に配置される。
【0021】
また、キャップ23の底面には、不図示の大気連通口が貫通形成されており、この大気連通口には大気連通チューブを介して大気開放バルブが設けられている。大気開放バルブを開状態にすると、ノズル形成面20aとキャップ23との間に形成された空間(以下、密閉空間Kと称す)は大気連通口を介して大気開放される。
【0022】
このようなキャッピング装置22は、記録ヘッドのインクの噴射特性を回復或いは維持するための吸引動作、或いはフラッシング動作において用いられる。また、キャッピング装置22は、キャップ23がノズル形成面20aを封止した際、ノズル形成面20aとキャップ23との間の密閉空間Kに吸収したインクの溶媒を揮発させることでノズルNの乾燥を防止することもできる。
【0023】
ところで、上記インク吸収体Sに吸収されているインクは経時的に増粘する場合がある。特に、インクが顔料インクである場合には増粘が起こり易い。このようにインク吸収体Sに吸収されているインクが増粘すると、図2に示されるようにキャップ23がノズル形成面20aを封止した際、ノズル形成面20aに付着しているインクおよびノズルN内のインクから水分が奪われることでノズル抜けが起こり、インクの吐出不良が生じる可能性がある。
【0024】
このような不具合を解消すべく、本実施形態においては、キャッピング装置22が、インク吸収体Sに吸収されたインクを搾取する搾取機構50を備えている。図3はキャッピング装置22の構成を示す概念図である。なお、図3においては、便宜上、キャッピング装置22のうち、インク吸収体Sおよび搾取機構50のみを図示しており、ケース22a、キャップホルダ23a、およびキャップ部材23bの図示を省略している。
【0025】
以下、インクジェットプリンタ11の動作の一実施例として、搾取機構50を用いたインクの搾取動作を中心に説明する。
図3(a)に示されるように搾取機構50は、インク吸収体Sを押圧して内部に吸収されているインクを押し出す(搾取する)ローラ部51を備えている。ローラ部51における支持軸51aの一端側には、キャリッジ16に対して係合可能なロック機構54が設けられている。また、ローラ部51は、上記支持軸を介してフレーム部52に形成された溝部53に取付けられている。これにより、ローラ部51は溝部53の延出方向に沿って移動可能となっている(図3(a)〜(c)参照)。なお、フレーム部52はキャリッジ16を挟むように設けられているが、図3においては便宜上、ロック機構54側のフレーム部52の図示を省略している。
【0026】
このような搾取機構50は、例えばフラッシング処理や吸引動作によってキャップ23内にインクが噴射された後、駆動させるのが望ましい。すなわち、キャップ23内にインクが噴射された直後、キャリッジ16が駆動される。これによりインク吸収体Sにインクが噴射された直後のタイミングで搾取動作が行われるので、噴射直後であって増粘が生じていないインクをインク吸収体Sから確実に搾取することが可能となっている。
【0027】
制御装置(不図示)は、フラッシング処理終了後、図3(a)、(b)に示されるようにロック機構54を駆動し、ロックアーム54aをキャリッジ16の突起部16aに係合させる。続いて、制御装置は、キャリッジ16を印字領域とは反対方向(図1、3中、+X方向)に移動させる。すると、ローラ部51は、支持軸51aの一端側がロック機構54(ロックアーム54a)によってキャリッジ16に係合した状態となっているので、図3(c)に示されるようにキャリッジ16と同一方向に移動する。このとき、ローラ部51(支持軸)は、溝部53に沿って良好に移動することでインク吸収体Sを下方側から押圧する。すなわち、搾取機構50は、キャリッジ16の動作に連動して駆動するようになっている。このように搾取機構50は、インク吸収体Sに吸収されているインクを搾取することで、インク吸収体S内に保持されているインクの量を低減することができる。ローラ部51が溝部53の端部に到達した後、キャリッジ16は逆方向(図1、3中、−X方向)に移動する。このとき、ローラ部51はキャリッジ16の移動に伴って、再度インク吸収体Sを押圧する。よって、インク吸収体Sからインクを確実に搾取することができる。
【0028】
キャリッジ16が図3(a)、(b)の状態に戻った後、制御装置はロック機構54を駆動し、ロックアーム54aにおけるキャリッジ16に対する係合を解除する。その後、続けて印字処理を行う場合、制御装置は、キャリッジ16を印字領域側(図1中、−X方向)に移動する。
【0029】
一方、印字処理を行わない場合、制御装置はキャッピング装置22を上昇させることで記録ヘッド20のノズル形成面20aを封止する(キャッピングする)。このとき、本実施形態によれば、搾取機構50によりインク吸収体Sからインクが搾取されているので、インク吸収体Sに保持されているインク量が少なくなっている。よって、インク吸収体S内においてインクの増粘が生じることが抑制され、キャッピング時に増粘したインクによってノズルN内のインクが水分を奪い取られるといったことが防止される。したがって、インク吸収体S内で増粘したインクに起因して発生するキャッピング後のインク噴射不良を防止することができ、長期に亘って良好なインク噴射特性を維持できるインクジェットプリンタ11を提供できる。また、連続印字等でキャッピング装置22が長期的に開放された状態とされる場合においても、上述のようにインク吸収体S内に残存するインク量が少ないため、インク吸収体S内におけるインクの増粘が抑制されたものとすることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
続いて、インクジェットプリンタ11における第2の実施形態について図4を参照しながら説明する。図4においては、上記第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第2の実施形態と上記第1の実施形態とが異なる点は、搾取機構の構造である。
【0031】
以下、本実施形態に係る搾取機構150を用いたインクの搾取動作について説明する。
本実施形態における搾取機構150は、図4(a)に示されるようにインク吸収体Sの側面部を挟むように対向配置されてなる一対の板状部材61,62と、これら板状部材61、62にそれぞれ連結されるアーム部63,64と、を備えている。アーム部63,64は、一端側が板状部材61,62に回動可動に軸支されており、他端側にキャリッジ16に当接する当接部65,66がそれぞれ設けられている。板状部材61、62は、図4(a)に示されるようにキャリッジ16がインク吸収体Sと対向しない領域に待機している場合、インク吸収体Sに対して加圧しない状態に保持されている。当接部65,66は、搾取動作時におけるキャリッジ16の移動方向(図4(a)中、+X方向)に対して傾斜した状態にアーム部63,64に取付けられている。具体的に、当接部65,66は、アーム部63,64に接続される基端側から図4(a)中、+X方向に離間するにつれて互いの面が近づくように配置されている。
【0032】
搾取機構150は、キャリッジ16が印字領域とは反対方向(図1中、+X方向)に移動すると、当接部65,66はキャリッジ16の側面に接触することで押し広げられる。すると、板状部材61、62はアーム部63,64を介してインク吸収体Sを押圧する方向に移動する。図4(c)に示されるように当接部65,66の表面がキャリッジ16の側面に当接した時、インク吸収体Sは板状部材61、62によって最も押圧された状態となる。
【0033】
なお、搾取機構150は、図4(b)に示されるように、ヘッド20とインク吸収体Sとが対向する位置において、当接部65,66がキャリッジ16に当接しないようにアーム部63,64の長さが設定されている。これによりキャリッジ16がフラッシング位置に移動した際に、搾取機構150が駆動することでインク吸収体Sが搾取されてしまうことが防止される。
【0034】
キャリッジが図4(c)中、+X方向に移動し、キャリッジ16に当接部65,66が当接している間は板状部材61、62がインク吸収体Sを押圧し続ける。なお、キャリッジ16が逆方向(図1中、−X方向)に移動する際も、キャリッジ16に当接部65,66が当接している間は板状部材61、62がインク吸収体Sを押圧し続ける。このように搾取機構150は、キャリッジ16の動作に連動して駆動するようになっている。
【0035】
以上述べたように、本実施形態に係る搾取機構150によれば、インク吸収体Sに吸収されているインクを板状部材61,62によって押圧(搾取)することでインク吸収体S内に保持されているインクの量を低減できる。したがって、本実施形態においても、インク吸収体S内で増粘したインクに起因して発生するキャッピング後のインク噴射不良を防止することができ、長期に亘って良好なインク噴射特性を維持できるインクジェットプリンタ11を提供できる。
【0036】
(第3の実施形態)
続いて、インクジェットプリンタ11における第2の実施形態について図5を参照しながら説明する。図5においては、上記第1、第2の実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第3の実施形態と上記実施形態とが異なる点は、搾取機構の構造である。
【0037】
以下、本実施形態に係る搾取機構250を用いたインクの搾取動作について説明する。
本実施形態における搾取機構250は、図5に示されるようにインク吸収体Sの上方に配置される一対のカム機構部71,72と、カム機構部71,72とインク吸収体Sとの間に配置され、カム機構部71,72を介してインク吸収体Sを押圧する押圧部材73と、を備えている。
【0038】
カム機構部71,72は、本体部75と本体部75内に収容されたカム76によって構成されている。カム76は本体部75内において不図示のバネ部材によって上方に付勢された状態で設けられており、溝部75aに沿って上下方向に移動可能に構成されている。
【0039】
押圧部材73は、図5(a)に示されるように、上記カム機構部71,72におけるそれぞれのカム76が当接する当接部73aと、インク吸収体Sを押圧するメッシュ状の押圧部73bと、を備えている。押圧部73bは当接部73aに連結されており、後述するように当接部73aがカム76によって下方に押圧された際、インク吸収体Sを下方に押圧するようになっている。
【0040】
一方、キャリッジ16の両側面には上記カム機構部71,72における各カム76が通過するスロープ100が形成されている。このスロープ100はキャリッジ16の中央部に向って下方に形成されており、キャリッジ16の中心部に対して左右対称形状となっている。キャリッジ16がカム機構部71,72に対向する位置まで到達すると、各カム76はスロープ100に当接する(図5(b)参照)。キャリッジ16の移動に伴ってカム76がスロープ100の中央部に向かうと、カム76はスロープ100によって下方側に押圧された状態となり溝部75aに沿って下方に移動する。よって、図5(c)に示されるように、カム76によって当接部73aが押圧される。これにより、当接部73aに連結されている押圧部73bが下方に移動することでインク吸収体Sを押圧した状態となる。このように搾取機構50は、インク吸収体Sに吸収されているインクを搾取することで、インク吸収体S内に保持されているインクの量を低減することができる。
【0041】
カム76がキャリッジ16の中央部を通過すると、再び、スロープ100に沿って上方へと移動する。これによりインク吸収体Sへの押圧状態が解除される。カム機構部71,72(カム76)がキャリッジ16の端部に到達した後、キャリッジ16は逆方向(図5(a),(b)中、−X方向)に移動する。このとき、ローラ部51はキャリッジ16の移動に伴って、再度インク吸収体Sを押圧する。よって、インク吸収体Sからインクを確実に搾取することができる。このように本実施形態における搾取機構250についても、キャリッジ16の移動に伴ってカム76がスロープ100に当接することでインク吸収体Sを押圧するようになっている。すなわち、搾取機構250は、キャリッジ16の動作に連動して駆動している。
【0042】
その後、キャリッジ16が図5(b)の二点鎖線で示される位置に戻ると、カム76はスロープ100から離間する。カム76は上述のように本体部75内において上方に付勢された状態で設けられているので、インク吸収体Sから離間した位置に収容された状態となる。
【0043】
その後、続けて印字処理を行う場合、制御装置は、キャリッジ16を印字領域側(図5(a)、(b)中、−X方向)に移動する。また、印字処理を行わない場合、制御装置はキャッピング装置22を上昇させることで記録ヘッド20のノズル形成面20aを封止する(キャッピングする)。キャッピングを行う場合、上記カム機構部71,72は、不図示の駆動機構によりキャリッジ16(スロープ100)に当接しないよう、キャリッジ16の移動方向と直交方向(図1中、Y方向)に退避する。これにより、キャッピング時において記録ヘッド20とインク吸収体Sとが対向した場合、インク吸収体Sが押圧されることが防止される。なお、当接部73aは上述のようにメッシュ状に形成されているため、キャッピング時にフラッシング動作や吸引動作時を行う場合でも、インク吸収体Sにおけるインク吸収性を損なうことが無い。
【0044】
以上述べたように、本実施形態に係る搾取機構250によれば、インク吸収体Sに吸収されているインクをカム機構部71,72の各カム76によって押圧(搾取)することでインク吸収体S内に保持されているインクの量を低減できる。したがって、本実施形態においても、インク吸収体S内で増粘したインクに起因して発生するキャッピング後のインク噴射不良を防止することができ、長期に亘って良好なインク噴射特性を維持できるインクジェットプリンタ11を提供できる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】インクジェットプリンタの要部斜視図である。
【図2】キャッピング装置の要部を説明するための図である。
【図3】キャッピング装置の搾取機構の構成及び動作を示す図である。
【図4】第2の実施形態における搾取機構の構成及び動作を示す図である。
【図5】第3の実施形態における搾取機構の構成及び動作を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
16…キャリッジ、20…記録ヘッド(噴射ヘッド)、22…キャッピング装置、23b…キャップ部材、50,150,250…搾取機構、N…ノズル(噴射ノズル)、S…インク吸収体(流体吸収体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する噴射ノズルを有する噴射ヘッドに当接するキャップ部材と、
前記噴射ノズルから噴射された前記流体を吸収する流体吸収体と、
前記流体吸収体に吸収された前記流体を搾取する搾取機構と、
を備えることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項2】
前記搾取機構は、前記噴射ヘッドが搭載されるキャリッジの動作に連動して駆動されることを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルから前記流体吸収体に前記流体を噴射させた後、前記キャリッジが前記キャップ部材から離間する際に前記搾取機構を駆動させることを特徴とする請求項2に記載のキャッピング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111065(P2010−111065A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286711(P2008−286711)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】