説明

キャップおよびキャップ付き容器

【課題】容器の筒状注出口の外周に鍔がなくても容器の筒状注出口に押し込みすぎることなく容易に取り付け可能なキャップおよび該キャップを備えたキャップ付き容器を提供する。
【解決手段】容器の筒状注出口20に押し込みで取り付けられるキャップ10であって、筒状注出口20の開口部21aを閉鎖する膜状部11と、膜状部11に連結されて筒状注出口20の外側に設けられる筒状部12と、筒状注出口20の先端面21に突き当たってキャップ10の筒状注出口20への押し込み位置を規制する押し込み位置規制部13と、筒状注出口20と膜状部11との隙間から流出する内容物を注出する注出口部14とを備え、筒状注出口20の先端面21から注出口部14までの距離が、筒状注出口20の先端面21から押し込み位置規制部13までの距離よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の注出時に流量調整が容易であり、容器の筒状注出口の外周に鍔がなくても容器の筒状注出口に押し込みで取り付け可能なキャップおよび該キャップを備えたキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料などを密封した容器の注出口において、管状注出口の外周に輪状嵌合部を設けたスパウトと、該スパウトに嵌合できる径を有し、注出口の上部に輪状の鍔を配設した管状の側部に連設する可撓性を有した凹状部からなるキャップとにより構成される注出装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、飲料用密封容器の飲料注出路を塞ぐ膜状弁体が弾性材料で形成されたキャップと、飲料注出路を形成している筒状部材に環状弁座が設けられたスパウトとからなり、膜状弁体を環状弁座から離間するように弾性変形させて飲料注出路を開放可能に構成されている注出用口栓装置であって、膜状弁体の環状弁座に対する圧接部位における弾性復元力増大させる補強部が、前記圧接部位に沿って膜状弁体に設けられている注出用口栓装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、管状注出路を備えたスパウトと、該スパウトに嵌着される筒状部を備えたキャップとからなり、該キャップの筒状部の上端には可撓性を有する凹状部が連設され、キャップの筒状部の上端部付近には注出口が形成された、バッグインボックス形式の容器の注出装置において、キャップの開閉用つまみに、指かけ可能な引掛け部を設けるとともに、該引掛け部に指を掛けて引き上げることにより、凹状部が逆側に反転した状態となって、注出口の閉鎖状態が解除されるように構成した注出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−280242号公報
【特許文献2】特開2004−182277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の注出装置は、バッグインボックス形式の容器に用いられるため、容器を箱に保持するための環状鍔がスパウトの外周に設けられる。また、バッグインボックス形式の容器の場合、注出装置が底部付近に設けられ、内容物の圧力によってキャップが抜け出さないよう、スパウトの筒状注出口の先端とキャップの内面とに係止部が設けられる。
しかしながら、この種の注出装置を一般のスパウト容器に用いる場合、バッグインボックスのような内圧がキャップに加わらないことから、スパウトの先端部またはその近傍に環状鍔や係止部が形成されないことが多く、しかもキャップは可撓性を有するゴムなどの柔軟な素材であるため、キャップを筒状注出口に取り付けるとき押し込みすぎて注出口が塞がる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、一般のスパウト容器であって特にこのようなキャップの装着を想定していない容器であっても、その容器の筒状注出口に押し込みすぎることなく容易に取り付け可能なキャップおよび該キャップを備えたキャップ付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、容器の筒状注出口に押し込みで取り付けられるキャップであって、前記筒状注出口の開口部を閉鎖する膜状部と、前記膜状部に連結されて前記筒状注出口の外側に設けられる筒状部と、前記筒状注出口の先端面に突き当たって前記キャップの前記筒状注出口への押し込み位置を規制する押し込み位置規制部と、前記筒状注出口と前記膜状部との隙間から流出する内容物を注出する注出口部とを備え、前記筒状注出口の先端面から前記注出口部までの距離が、前記筒状注出口の先端面から前記押し込み位置規制部までの距離よりも大きいことを特徴とするキャップを提供する。
前記注出口部が、前記筒状注出口の内側から外側へ向けて、前記筒状注出口に垂直な方向に突出していることが好ましい。
また、本発明は、容器の筒状注出口に上記のキャップが取り付けられてなることを特徴とするキャップ付き容器を提供する。
前記容器が、筒状注出口を有するスパウトと、可撓性を有するパウチとから構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器の筒状注出口の先端面に突き当たって筒状注出口に対するキャップの押し込み位置を規制する押し込み位置規制部が、注出口部よりも低い(筒状注出口の先端面までの距離が小さい)位置に設けられているので、容器の筒状注出口の外周に鍔がない、あるいはキャップ取り付け位置から離れていても、キャップを容器の筒状注出口に押し込みすぎたり、キャップの注出口部が塞がったりすることなく、容易に取り付け可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のキャップをスパウトに取り付けた一形態例を示す断面図である。
【図2】本発明のキャップの一形態例を示す斜視図である。
【図3】図2に示すキャップの注出口部に沿った断面図である。
【図4】図2に示すキャップの投影図であり、(a)は平面図、(b)は注出口部側を示す左側面図、(c)は正面図、(d)は注出口部とは反対側を示す右側面図、(e)は底面図である。
【図5】本発明のキャップをスパウトに取り付けた容器から内容物を注出する操作の位置例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に示すスパウト25は、図5に示すようにパウチ26等の袋状容器にシールされて容器27の注出口部材を構成する。スパウト25は、容器において外方に突出する筒状注出口20を備える。筒状注出口20は、その内面24により区画された内容物の流路を有する。該流路は、筒状注出口20の先端面21の開口部21aにより開口している。
【0012】
このスパウト25の筒状注出口20には、開口部21aを閉鎖するキャップ10が押し込みにより取り付けられている。このキャップ10は、筒状注出口20の開口部21aを閉鎖する膜状部11と、膜状部11に連結されて筒状注出口20の外側に設けられる筒状部12と、筒状注出口20の先端面21に突き当たってキャップ10の筒状注出口20への押し込み位置を規制する押し込み位置規制部13と、筒状注出口20と膜状部11との隙間18から流出する内容物を注出する注出口部14とを備える。
【0013】
膜状部11は、軟質の弾性樹脂やゴムなどの弾性材料で形成され、筒状注出口20の先端面21から内面24にかけて開口部21aの全周囲に密着して開口部21aを閉鎖する。また、膜状部11は、容易に弾性変形可能であり、図5に示すように、操作部16を注出口部14から離れる方向に倒すと、注出口部14内部の流路14aを通じて内容物を注出することができる。操作部16の形状は特に限定されるものではなく、棒状、リング状、鉤状、偏平状など任意のものを用いることができる。
操作部16の操作時に膜状部11を変形させる力を伝達させるため、操作部16と膜状部11との間には、例えば板状や棒状などの接続補強部17が設けられている。接続補強部17は、少なくとも、操作部16から注出口部14側に向かう位置に形成されることが好ましい。
筒状注出口20の外面22とキャップ10の筒状部12の内面との間は、円筒面同士が摺動可能なように平滑とされており、係止部等の凹凸は設けられていない。
【0014】
本形態例のキャップ10においては、筒状注出口20の先端面21から注出口部14までの距離が、筒状注出口20の先端面21から押し込み位置規制部13までの距離よりも大きくなるように、すなわち、注出口部14が押し込み位置規制部13よりも高い位置となるように形成されている。図4(e)に示すように、押し込み位置規制部13は開口部21aの周囲に例えば半周以上設けられ、注出口部14側の一部が開口して、注出口部14の内部流路14aとつながる連通部15となっている。押し込み位置規制部13は連通部15以外の部分に連続して設けられているので、連通部15以外の余分なところに内容物が侵入しない。また、先端面21と押し込み位置規制部13との隙間が狭いので、内容物がキャップ10内部に滞留しにくい。このため、キャップ内に滞留した内容物が予期せずにこぼれ出すことを抑制することができる。
筒状注出口20の先端面21は、平坦面でよく、キャップ10の押し込み位置規制部13は、先端面21に平行な、円弧状の平面とすることができる。
【0015】
図5に示すように本形態例のキャップ10をスパウト25に取り付けてなるキャップ付き容器28は、筒状注出口20がキャップ10の膜状部11により密封されて、一定期間の保存と繰り返しの使用が可能となる上、ねじ式のキャップに比べて開閉が容易であり、内容物を取り出すときにキャップ10を取り外す必要がない。操作部16がキャップ10の上方に突出しているので、片手でキャップ付き容器28を持ちながら、同じ手の指で操作部16を操作することもできる。
注出口部14が、筒状注出口20の内側から外側へ向けて、筒状注出口20(図1の上下方向)に垂直な方向(図1の左向き)に突出し、内容物の流れが広がらずに注ぎ出しやすくなるので、好ましい。
【0016】
スパウト25は、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形などにより、成形することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンが例示できる。筒状注出口20の外面22には、ねじ23が設けられている。このねじ23は、内容物入り容器の流通時や販売時などに容器27を密封するためのねじ付きの蓋(図示せず)を固定するために一般に設けられるものである。
【0017】
キャップ10の取り付け前に容器27に設けられる前記蓋は、タンパープルーフ(不正開封防止)性のため、ねじ部(例えば、雄ねじであるねじ23と螺合する前記蓋の雌ねじ)の下方でリング状に破断する部分を有していても良い。この場合、図1に示すように、リング状破断部30が筒状注出口20の周囲に残存して開封済みであることを確認できる。また、本形態例のキャップ10は、押し込み位置規制部13が筒状注出口20の先端面21と突き当たって押し込みすぎを防止する構成であり、ユーザーが一般消費者でたとえ不慣れであっても、容易に取り付けが可能で、使いやすい。
また、キャップ10の筒状部12の下端面12bが筒状注出口20の外周に設けた環状の鍔29に当たる必要がなく、キャップ10がリング状破断部30に接触することもないので、リング状破断部30が鍔29の上に残存していても、リング状破断部30の上方で、筒状注出口20の先端部にキャップ10を確実に取り付けることができる。
【0018】
本形態例のキャップ10は、ねじ23を利用することなく押し込みで取り付け可能であり、筒状部12の内側には、ねじ23を避ける凹部12aが形成されている。これにより、ねじ23のピッチや高さなどに依存せず、任意のスパウト25にキャップ10を取り付け可能となる。筒状部12は、筒状注出口20の先端面21側からスパウトの基部側に向かって(図1の上から下に向かって)径を拡大するテーパ状となっていることにより、凹部12aがねじ23に引っかかりにくく、押し込みが容易になる。
もとの容器において筒状注出口20の先端面21にインナーシール(フィルム等)が接着されていた場合には、インナーシールを剥がした後にキャップ10が取り付けられる。先端面21にインナーシールの糊残り等があっても、キャップ10の取り付けに支障はない。しかも、本形態例のキャップ10は、外面22にねじ23を有しない筒状注出口20や、雌ねじが内面24に形成された筒状注出口20にも取り付け可能である。
筒状注出口20の先端部またはその近傍に係止部や環状鍔がなくてもキャップ10を取り付けることができ、口径が同程度であれば、多様な容器の筒状注出口に適用でき、汎用性が高い。径が異なる数種類を製造するだけで多様な製品に対応でき、在庫管理も容易になり、コストを低減できる。
【0019】
凹部12aの上方では、膜状部11と筒状部12との間に筒状注出口20の先端部が密着して挟み込まれるので、筒状注出口20に突起などの係止部を設けなくても、キャップ10が外れにくくなる。本形態例のキャップ10は、自立性を有する容器27の上部に設けられ、キャップ10の内側から内容物の圧力がかからない位置に取り付けられることが好ましい。容器27を自立させたとき、筒状注出口20は横(水平)向きであってもよいが、上向きまたは斜め上向きとなることが好ましい。
【0020】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
膜状部11、筒状部12、操作部16などは、それぞれ別体として組み合わせることも可能であり、また、図3に示すように、一体成形品とすることも可能である。キャップ10を一体成形品とする場合は、弾性変形性や密着性などの観点から必要な膜状部11が得られる、軟質弾性樹脂やゴムなどの弾性材料が好ましい。別体とする場合、膜状部11以外は、硬質の樹脂などから成形することも可能である。
【0021】
筒状注出口20が円筒状である場合、キャップ10の筒状部12も円筒状とすることが好ましい。先端面21と内面24や外面22との間は、面取りや丸みがあってもよいが、従来のバッグインボックス用スパウトのような係止部は不要である。なお、図4に示す図面において、キャップ10の形状は注出口部14に対して対称であり、背面図(図4(a)の上側の面)は、図4(c)の正面図と対称に表れる。
注出口部14はその内容物や用途によって、筒状注出口20に平行な上向き(図1の上方向)に突出する形状であってもよい。
【0022】
パウチ26は、可撓性を有する1枚または複数枚のフィルムから構成された可撓性を有する容器である。パウチの形態は、特に限定されるものではないが、三方袋、四方袋、背貼りを有するピロータイプの包装袋、スタンディングパウチ、ガゼット袋、角底袋など各種形態から選択して用いることができる。
【0023】
パウチ26を構成するフィルムとしては、特に限定されるものでないが、シーラントを少なくとも片面に備える積層体、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂層を最内層(シーラント)とし、二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの延伸フィルムを基材とし、必要に応じてエチレン―ビニルアルコール共重合体、金属や無機化合物(例えばシリカ等のセラミック)の蒸着層、アルミ箔等の金属箔などを中間層としたラミネートフィルムを用いることができる。これらのフィルムは、柔軟性があって折り畳み可能で、空袋時の輸送や保管に便利であり、使用後に折り畳めばかさばらず、減容性や廃棄性に優れた容器となる。内容物の劣化や変質を抑制するため、酸素や水蒸気の透過性の低いフィルムを用いることが好ましく、この観点では、金属や無機化合物(セラミック等)からなる層を含むフィルムが好ましい。
【0024】
前記フィルムのシーラントは、少なくともパウチ26の内面側に設けられることが望ましく、この場合、スパウト25の外表面の熱可塑性樹脂とパウチ26のシーラントとの溶着により、スパウト25をパウチ26の一端縁(図5の水平な端縁)に取り付けることが可能となる。
スパウト25は、パウチ26の開口部に取り付けられる部分(基部)がパウチ26の一端縁に沿って左右に拡がった形状をしており、パウチ26の開口部の端縁への溶着が容易になっている。
【0025】
パウチなど容器の寸法は特に限定されるものではないが、例えば、高さ100〜500mm程度、幅70〜300mm程度、充填量100〜5000cm程度である。
内容物は、特に限定されるものではないが、例えば液体や液状物のほか、粉体や粒体、あるいは粘稠体などの流動性の低い内容物であっても適用可能である。具体例としては、食品、飲料、化粧水、医薬品、調味液、シロップ、調味料、化粧品、洗剤、穀物、肥料、接着剤、インク類、化学薬品、有機溶剤、オイル類、クリーム類、各種溶液、或いは合成樹脂等の粉状物または粒状物が挙げられる。粉体または粒体は、乾燥したものでも、液体を含むものでもよい。粘稠体としては、ゼリーや粘性の高いオイル類、液状接着剤等が挙げられる。
【符号の説明】
【0026】
10…キャップ、11…膜状部、12…筒状部、13…押し込み位置規制部、14…注出口部、20…筒状注出口、21…先端面、21a…開口部、25…スパウト、26…パウチ(容器本体)、27…容器、28…キャップ付き容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の筒状注出口に押し込みで取り付けられるキャップであって、
前記筒状注出口の開口部を閉鎖する膜状部と、前記膜状部に連結されて前記筒状注出口の外側に設けられる筒状部と、前記筒状注出口の先端面に突き当たって前記キャップの前記筒状注出口への押し込み位置を規制する押し込み位置規制部と、前記筒状注出口と前記膜状部との隙間から流出する内容物を注出する注出口部とを備え、
前記筒状注出口の先端面から前記注出口部までの距離が、前記筒状注出口の先端面から前記押し込み位置規制部までの距離よりも大きいことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記注出口部が、前記筒状注出口の内側から外側へ向けて、前記筒状注出口に垂直な方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
容器の筒状注出口に請求項1または2に記載のキャップが取り付けられてなることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項4】
前記容器が、筒状注出口を有するスパウトと、可撓性を有するパウチとから構成されることを特徴とする請求項3に記載のキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30850(P2012−30850A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172267(P2010−172267)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】