キャブマウント構造
【課題】キャブとフレームとが締結された状態において、マウントブラケットの車両前後方向の振動を抑制し、マウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制する。
【解決手段】車両のキャブ11を車両のフレーム14に対して分離可能に締結するキャブマウント構造10において、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面25を形成すると共に、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面30を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、防振用の弾性部材20を配設する。
【解決手段】車両のキャブ11を車両のフレーム14に対して分離可能に締結するキャブマウント構造10において、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面25を形成すると共に、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面30を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、防振用の弾性部材20を配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャブを車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックのキャブマウントは、路面からキャブへの振動伝達やエンジンからキャブへの振動伝達を低減させるためのものであり、キャブに計4個(車両前側2個、車両後側2個)設けられている。そして、キャブの下にあるエンジンのメンテナンスが容易に行えるように、キャブは車両前側のキャブマウントを回転中心としてチルト可能な構造となっている。一方、車両後側のキャブマウントは、フレーム側とキャブ側とに分割可能な構造となっている。このようなキャブマウント構造は、特許文献1に記載されている。
【0003】
従来例に係るキャブマウント構造を図5に示す。図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50では、車両後側のキャブマウント51は、車両のキャブ52に設けられ、略U字状に形成された係合部53を有するキャブ側マウントブラケット54と、車両のフレーム55に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー56と、マウントラバー56に装着され、略U字状に形成されてキャブ側マウントブラケット54の係合部53を受ける受部57を有するフレーム側マウントブラケット58と、フレーム側マウントブラケット58の受部57の内側部に配設された防振用のクッションラバー59とを有している。キャブ側マウントブラケット54の係合部53をフレーム側マウントブラケット58の受部57に係合させた状態でキャブ52に設けられたフック60でフレーム側マウントブラケット58に設けられたアーム61を引き上げることで、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58との間でクッションラバー59が押しつぶされ、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58とが締結される。このようなキャブマウント51は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145115号公報
【特許文献2】特開2008−132834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50では、キャブ52とフレーム55とが締結された状態において、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58との間にはクッションラバー59が挟まっているため、キャブ52とフレーム55とは剛に締結された状態になっておらず、特にキャブ52の車両前後方向の支持剛性が低い。そのため、車両前後方向の振動がマウントブラケット51(キャブ側マウントブラケット54、フレーム側マウントブラケット58)に特定の周波数で発生する。具体的には、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58とが車両前後方向に相対的にずれるような振動が発生する。
【0006】
マウントブラケットが振動すると、その周波数で振動伝達率を増幅させてしまい、エンジンからの振動がキャブに伝わりやすくなり、キャブ内部の騒音悪化を招く。特に、マウントブラケットの共振周波数とエンジンの回転2次成分とが一致するエンジン回転域でキャブ内部の騒音悪化を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャブとフレームとが締結された状態において、マウントブラケットの車両前後方向の振動を抑制し、マウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、前記キャブに設けられ、車両正面視でU字状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、前記フレームに設けられ、車両正面視でU字状に形成されて前記係合部を受ける受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内側部に配設された防振用の弾性部材と、前記キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記キャブ側マウントブラケットと前記フレーム側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備え、前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の一方に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面が形成されると共に、前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の他方に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面が形成され、前記フレーム側マウントブラケットの受部の前後斜面に、前記弾性部材が配設されるものである。
【0009】
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部が、車両幅方向に傾斜したテーパー状とされても良い。
【0010】
前記締結機構は、前記フレーム側マウントブラケットの受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャブとフレームとが締結された状態において、マウントブラケットの車両前後方向の振動を抑制し、マウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造の斜視図である。
【図2】(a)はフレーム側マウントブラケットの斜視図であり、(b)はキャブ側マウントブラケットの斜視図である。
【図3】図1のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造が適用されるトラックの概略図である。
【図5】従来例に係るキャブマウント構造の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
なお、図1及び図2中、矢印xが車両前後方向を示し、矢印yが車両幅方向を示し、矢印zが車両高さ方向(上下方向)を示している。また、図3及び図4中、矢印Frが車両前方向を示している。
【0015】
図4に示すように、本実施形態に係るキャブマウント構造10は、車両(本実施形態では、トラック)のキャブ11の車両前端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両前側のキャブマウント12と、キャブ11の車両後端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両後側のキャブマウント13とを備えている。
【0016】
車両前側の各キャブマウント12は、トラックのフレーム14に固定され、車両幅方向に沿って延びる筒状のマウントラバー15を有している。マウントラバー15には、キャブ11に装着されたトーションバー16が挿通されている。この構成により、キャブ11は車両前側のキャブマウント12(トーションバー16)を回転中心としてフレーム14に対してチルト可能な構造となっている。
【0017】
車両後側の各キャブマウント13は、キャブ11に設けられたキャブ側マウントブラケット17と、フレーム14に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー18と、マウントラバー18に装着されたフレーム側マウントブラケット19と、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との間に介設される防振用のクッションラバー(弾性部材)20(図1及び図2参照)と、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19とを分離可能に締結する締結機構21(図1参照)とを有している。
【0018】
図1から図3に示すように、キャブ側マウントブラケット17は、車両正面視(車両背面視)で略U字状に形成された係合部22と、係合部22の上部に車両幅方向に間隔を隔てて設けられ、上方向に延びる一対の支持部23と、係合部22の底部に貫通形成された挿通穴24とを有している。キャブ側マウントブラケット17の支持部23は、キャブ11の下面と繋がっている。本実施形態では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部は、上方向に向かうにつれてキャブ側マウントブラケット17の幅方向中心側から幅方向外側に傾斜したテーパー状とされている。また、本実施形態では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部には、車両前後方向に傾斜した谷状(凹状)の前後斜面25が形成されている。即ち、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部には、車両幅方向に沿って延びる谷が設けられている。キャブ側マウントブラケット17は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0019】
フレーム側マウントブラケット19は、車両正面視(車両背面視)で略U字状に形成されてキャブ側マウントブラケット17の係合部22を受ける受部26と、受部26の下面に車両前後方向に間隔を隔てて設けられ、下方向に延びる一対のフランジ部27と、受部26の底部に立設されたアーム28とを有している。フレーム側マウントブラケット19のフランジ部27は、マウントラバー18に装着された回動軸29に固定されている。本実施形態では、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部は、上方向に向かうにつれてフレーム側マウントブラケット19の幅方向中心側から幅方向外側に傾斜したテーパー状とされている。また、本実施形態では、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部には、車両前後方向に傾斜した山状(凸状)の前後斜面30が形成されている。即ち、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部には、車両幅方向に沿って延びる山が設けられている。フレーム側マウントブラケット19は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0020】
クッションラバー20は、板状に形成されており、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、ボルト及びナット(図示せず)によって取り付けられている。クッションラバー20は、例えば、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料からなる。
【0021】
締結機構21は、フレーム側マウントブラケット19の受部26の底部に立設されたアーム28と、キャブ11に設けられ、アーム28を引き上げるためのフック31とから構成されている。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0023】
キャブ11とフレーム14との締結方法は、図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50と同様である。即ち、キャブ側マウントブラケット17の係合部22がフレーム側マウントブラケット19の受部26に係合された状態で、キャブ11に設けられたフック31でフレーム側マウントブラケット19に設けられたアーム28を引き上げることで、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の前後斜面25(外側部)とフレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30(内側部)との間でクッションラバー20が押しつぶされ、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19とが締結される。
【0024】
本実施形態に係るキャブマウント構造10では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面25を形成すると共に、キャブ側マウントブラケット17の係合部22を受けるフレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面30を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、クッションラバー20を配設することで、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との締結時に、クッションラバー20は、車両前後方向の動きに対しクッションラバー20の剛性の低いせん断方向だけでなく剛性の高い圧縮方向にも力を受けることができる。
【0025】
要するに、本実施形態に係るキャブマウント構造10では、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との締結時に、キャブ側マウントブラケット17の前後及び左右をクッションラバー20が支持する状態となるため、車両後側のマウントブラケット13(キャブ側マウントブラケット17、フレーム側マウントブラケット19)の共振周波数をエンジンの回転2次成分よりも十分高くすることが可能となり、フレーム14側からキャブ11側への振動伝達を効果的に抑制することが可能となる。従って、本実施形態に係るキャブマウント構造10によれば、キャブ11内部の騒音悪化を抑制することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0027】
例えば、上述の実施形態とは逆に、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した山状(凸状)の前後斜面を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した谷状(凹状)の前後斜面を形成しても良い。
【0028】
また、クッションラバー20を、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に接着等によって取り付けるようにしても良い。
【0029】
また、フレーム側マウントブラケット19をマウントラバー18を介してフレーム14に取り付けるとしたがこれには限定はされず、フレーム側マウントブラケット19をフレーム14に直接取り付けるようにしても良い。フレーム側マウントブラケット19に設けたクッションラバー20によってキャブ11における所望の防振効果が得られるようにチューニングすることで、マウントラバー18を省略し得る。
【符号の説明】
【0030】
10 キャブマウント構造
11 キャブ
14 フレーム
17 キャブ側マウントブラケット
19 フレーム側マウントブラケット
20 クッションラバー(弾性部材)
21 締結機構
22 係合部
25 前後斜面(キャブ側マウントブラケット側)
26 受部
28 アーム
30 前後斜面(フレーム側マウントブラケット側)
31 フック
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャブを車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックのキャブマウントは、路面からキャブへの振動伝達やエンジンからキャブへの振動伝達を低減させるためのものであり、キャブに計4個(車両前側2個、車両後側2個)設けられている。そして、キャブの下にあるエンジンのメンテナンスが容易に行えるように、キャブは車両前側のキャブマウントを回転中心としてチルト可能な構造となっている。一方、車両後側のキャブマウントは、フレーム側とキャブ側とに分割可能な構造となっている。このようなキャブマウント構造は、特許文献1に記載されている。
【0003】
従来例に係るキャブマウント構造を図5に示す。図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50では、車両後側のキャブマウント51は、車両のキャブ52に設けられ、略U字状に形成された係合部53を有するキャブ側マウントブラケット54と、車両のフレーム55に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー56と、マウントラバー56に装着され、略U字状に形成されてキャブ側マウントブラケット54の係合部53を受ける受部57を有するフレーム側マウントブラケット58と、フレーム側マウントブラケット58の受部57の内側部に配設された防振用のクッションラバー59とを有している。キャブ側マウントブラケット54の係合部53をフレーム側マウントブラケット58の受部57に係合させた状態でキャブ52に設けられたフック60でフレーム側マウントブラケット58に設けられたアーム61を引き上げることで、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58との間でクッションラバー59が押しつぶされ、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58とが締結される。このようなキャブマウント51は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145115号公報
【特許文献2】特開2008−132834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50では、キャブ52とフレーム55とが締結された状態において、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58との間にはクッションラバー59が挟まっているため、キャブ52とフレーム55とは剛に締結された状態になっておらず、特にキャブ52の車両前後方向の支持剛性が低い。そのため、車両前後方向の振動がマウントブラケット51(キャブ側マウントブラケット54、フレーム側マウントブラケット58)に特定の周波数で発生する。具体的には、キャブ側マウントブラケット54とフレーム側マウントブラケット58とが車両前後方向に相対的にずれるような振動が発生する。
【0006】
マウントブラケットが振動すると、その周波数で振動伝達率を増幅させてしまい、エンジンからの振動がキャブに伝わりやすくなり、キャブ内部の騒音悪化を招く。特に、マウントブラケットの共振周波数とエンジンの回転2次成分とが一致するエンジン回転域でキャブ内部の騒音悪化を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャブとフレームとが締結された状態において、マウントブラケットの車両前後方向の振動を抑制し、マウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、前記キャブに設けられ、車両正面視でU字状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、前記フレームに設けられ、車両正面視でU字状に形成されて前記係合部を受ける受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内側部に配設された防振用の弾性部材と、前記キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記キャブ側マウントブラケットと前記フレーム側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備え、前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の一方に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面が形成されると共に、前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の他方に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面が形成され、前記フレーム側マウントブラケットの受部の前後斜面に、前記弾性部材が配設されるものである。
【0009】
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部が、車両幅方向に傾斜したテーパー状とされても良い。
【0010】
前記締結機構は、前記フレーム側マウントブラケットの受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャブとフレームとが締結された状態において、マウントブラケットの車両前後方向の振動を抑制し、マウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造の斜視図である。
【図2】(a)はフレーム側マウントブラケットの斜視図であり、(b)はキャブ側マウントブラケットの斜視図である。
【図3】図1のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造が適用されるトラックの概略図である。
【図5】従来例に係るキャブマウント構造の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
なお、図1及び図2中、矢印xが車両前後方向を示し、矢印yが車両幅方向を示し、矢印zが車両高さ方向(上下方向)を示している。また、図3及び図4中、矢印Frが車両前方向を示している。
【0015】
図4に示すように、本実施形態に係るキャブマウント構造10は、車両(本実施形態では、トラック)のキャブ11の車両前端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両前側のキャブマウント12と、キャブ11の車両後端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両後側のキャブマウント13とを備えている。
【0016】
車両前側の各キャブマウント12は、トラックのフレーム14に固定され、車両幅方向に沿って延びる筒状のマウントラバー15を有している。マウントラバー15には、キャブ11に装着されたトーションバー16が挿通されている。この構成により、キャブ11は車両前側のキャブマウント12(トーションバー16)を回転中心としてフレーム14に対してチルト可能な構造となっている。
【0017】
車両後側の各キャブマウント13は、キャブ11に設けられたキャブ側マウントブラケット17と、フレーム14に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー18と、マウントラバー18に装着されたフレーム側マウントブラケット19と、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との間に介設される防振用のクッションラバー(弾性部材)20(図1及び図2参照)と、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19とを分離可能に締結する締結機構21(図1参照)とを有している。
【0018】
図1から図3に示すように、キャブ側マウントブラケット17は、車両正面視(車両背面視)で略U字状に形成された係合部22と、係合部22の上部に車両幅方向に間隔を隔てて設けられ、上方向に延びる一対の支持部23と、係合部22の底部に貫通形成された挿通穴24とを有している。キャブ側マウントブラケット17の支持部23は、キャブ11の下面と繋がっている。本実施形態では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部は、上方向に向かうにつれてキャブ側マウントブラケット17の幅方向中心側から幅方向外側に傾斜したテーパー状とされている。また、本実施形態では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部には、車両前後方向に傾斜した谷状(凹状)の前後斜面25が形成されている。即ち、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部には、車両幅方向に沿って延びる谷が設けられている。キャブ側マウントブラケット17は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0019】
フレーム側マウントブラケット19は、車両正面視(車両背面視)で略U字状に形成されてキャブ側マウントブラケット17の係合部22を受ける受部26と、受部26の下面に車両前後方向に間隔を隔てて設けられ、下方向に延びる一対のフランジ部27と、受部26の底部に立設されたアーム28とを有している。フレーム側マウントブラケット19のフランジ部27は、マウントラバー18に装着された回動軸29に固定されている。本実施形態では、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部は、上方向に向かうにつれてフレーム側マウントブラケット19の幅方向中心側から幅方向外側に傾斜したテーパー状とされている。また、本実施形態では、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部には、車両前後方向に傾斜した山状(凸状)の前後斜面30が形成されている。即ち、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部には、車両幅方向に沿って延びる山が設けられている。フレーム側マウントブラケット19は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0020】
クッションラバー20は、板状に形成されており、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、ボルト及びナット(図示せず)によって取り付けられている。クッションラバー20は、例えば、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料からなる。
【0021】
締結機構21は、フレーム側マウントブラケット19の受部26の底部に立設されたアーム28と、キャブ11に設けられ、アーム28を引き上げるためのフック31とから構成されている。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0023】
キャブ11とフレーム14との締結方法は、図5に示す従来例に係るキャブマウント構造50と同様である。即ち、キャブ側マウントブラケット17の係合部22がフレーム側マウントブラケット19の受部26に係合された状態で、キャブ11に設けられたフック31でフレーム側マウントブラケット19に設けられたアーム28を引き上げることで、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の前後斜面25(外側部)とフレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30(内側部)との間でクッションラバー20が押しつぶされ、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19とが締結される。
【0024】
本実施形態に係るキャブマウント構造10では、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面25を形成すると共に、キャブ側マウントブラケット17の係合部22を受けるフレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面30を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に、クッションラバー20を配設することで、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との締結時に、クッションラバー20は、車両前後方向の動きに対しクッションラバー20の剛性の低いせん断方向だけでなく剛性の高い圧縮方向にも力を受けることができる。
【0025】
要するに、本実施形態に係るキャブマウント構造10では、キャブ側マウントブラケット17とフレーム側マウントブラケット19との締結時に、キャブ側マウントブラケット17の前後及び左右をクッションラバー20が支持する状態となるため、車両後側のマウントブラケット13(キャブ側マウントブラケット17、フレーム側マウントブラケット19)の共振周波数をエンジンの回転2次成分よりも十分高くすることが可能となり、フレーム14側からキャブ11側への振動伝達を効果的に抑制することが可能となる。従って、本実施形態に係るキャブマウント構造10によれば、キャブ11内部の騒音悪化を抑制することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0027】
例えば、上述の実施形態とは逆に、キャブ側マウントブラケット17の係合部22の外側部に、車両前後方向に傾斜した山状(凸状)の前後斜面を形成し、フレーム側マウントブラケット19の受部26の内側部に、車両前後方向に傾斜した谷状(凹状)の前後斜面を形成しても良い。
【0028】
また、クッションラバー20を、フレーム側マウントブラケット19の受部26の前後斜面30に接着等によって取り付けるようにしても良い。
【0029】
また、フレーム側マウントブラケット19をマウントラバー18を介してフレーム14に取り付けるとしたがこれには限定はされず、フレーム側マウントブラケット19をフレーム14に直接取り付けるようにしても良い。フレーム側マウントブラケット19に設けたクッションラバー20によってキャブ11における所望の防振効果が得られるようにチューニングすることで、マウントラバー18を省略し得る。
【符号の説明】
【0030】
10 キャブマウント構造
11 キャブ
14 フレーム
17 キャブ側マウントブラケット
19 フレーム側マウントブラケット
20 クッションラバー(弾性部材)
21 締結機構
22 係合部
25 前後斜面(キャブ側マウントブラケット側)
26 受部
28 アーム
30 前後斜面(フレーム側マウントブラケット側)
31 フック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、
前記キャブに設けられ、車両正面視でU字状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、前記フレームに設けられ、車両正面視でU字状に形成されて前記係合部を受ける受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内側部に配設された防振用の弾性部材と、前記キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記キャブ側マウントブラケットと前記フレーム側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備え、
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の一方に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面が形成されると共に、
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の他方に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面が形成され、
前記フレーム側マウントブラケットの受部の前後斜面に、前記弾性部材が配設されることを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部が、車両幅方向に傾斜したテーパー状とされる請求項1に記載のキャブマウント構造。
【請求項3】
前記締結機構は、前記フレーム側マウントブラケットの受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有する請求項1又は2に記載のキャブマウント構造。
【請求項1】
車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、
前記キャブに設けられ、車両正面視でU字状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、前記フレームに設けられ、車両正面視でU字状に形成されて前記係合部を受ける受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内側部に配設された防振用の弾性部材と、前記キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記キャブ側マウントブラケットと前記フレーム側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備え、
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の一方に、車両前後方向に傾斜した山状の前後斜面が形成されると共に、
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部の内の他方に、車両前後方向に傾斜した谷状の前後斜面が形成され、
前記フレーム側マウントブラケットの受部の前後斜面に、前記弾性部材が配設されることを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
前記キャブ側マウントブラケットの係合部の外側部及び前記フレーム側マウントブラケットの受部の内側部が、車両幅方向に傾斜したテーパー状とされる請求項1に記載のキャブマウント構造。
【請求項3】
前記締結機構は、前記フレーム側マウントブラケットの受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有する請求項1又は2に記載のキャブマウント構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−228984(P2012−228984A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99379(P2011−99379)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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