説明

キャリア−位相測定値の連続差を用いたGPSナビゲーション

本発明は、計算の複雑度を最低限に抑えつつ、高精度の位置更新を生成する頻度を大幅に高める衛星ナビゲーション技法を提供する。本発明は、キャリア−位相測定値の連続的変化を用いて、物体の位置を時間的に前方に伝搬することによって、衛星からの信号に応じて物体をナビゲートするプロセスを含む。このプロセスは、物体の位置について解明するために必要な行列を低頻度で計算し、次の低頻度計算が完了するまで、最後に計算した行列を繰り返し用いて、高頻度で位置更新を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、衛星を用いた測地及びナビゲーションに伴う技術に関し、更に特定すれば、キャリア−位相測定値の連続差を用いたナビゲーションに関する。
【背景技術】
【0002】
グローバル・ポジショニング・システム(汎地球測地システム(GPS))のような衛星測地システムは、地球上における物体の位置を突き止めるために、宇宙にある衛星を用いる。GPSでは、衛星からの信号がGPS受信機に到達し、GPS受信機の位置を判定するために用いられる。現在、GPS衛星信号を固定した各相関器チャネルに対応する2種類のGPS測定が、民生用GPS受信機には利用可能になっている。これら2種類のGPS測定は、それぞれ、周波数が1.5754GHz及び1.2276GHz、又は波長が0.1903m及び0.2442mの2つのキャリア信号L1及びL2に対する疑似標的間距離(pseudorange)、及び積分キャリア位相である。疑似標的間距離測定(又はコード測定)は、あらゆる種類のGPS受信機が行うことができる基本的なGPSの観察量(observable)である。これは、キャリア信号上に変調されたC/A又はPコードを利用する。測定は、関連するコードが衛星から受信機まで進行するために要した見かけ上の時間、即ち、衛星クロックによる信号が衛星から発信した時刻を受信機のクロックによる信号が受信機に到達した時刻を差し引いた値を記録する。
【0003】
キャリア位相測定は、信号が受信機に到達する際に信号のキャリアを再現し積分することによって得られる。つまり、キャリア位相測定も、衛星クロックによる信号が衛星を発信した時刻と、受信機のクロックによるそれが受信機に到達した時刻によって決定される通過時間差の尺度である。しかしながら、衛星と受信機との間の推移における初期の完全な周期の数は、受信機が信号のキャリア位相を追跡し始めるときには未知であるので、通過時間差は、多数のキャリア周期によって誤差が出る虞れがある。即ち、キャリア位相測定には、全周期曖昧さ(whole-cycle ambiguity)がある。この全周期曖昧さを解決するために種々の技法が開発されている。このような技法の優れた全体像が、2004年、ニューヨークのJohn Wileyによって出版された、Alfred LeickによるGPS衛星調査、第3版の第7部、7.8章、"Ambiguity Fixing"(曖昧さの解消)において見出される。
【0004】
このように、物体をナビゲートするには、物体に取り付けられているGPS受信機が、多数の衛星からのGPS測定値を受信し、これらGPS測定値を、GPS受信機に結合されているコンピュータ・システムによって処理し、物体の位置に対する更新を生成する。物体の位置に対する更新を計算するために、GPS受信機と多数の衛星の各々との間の標的間距離(range)、即ち、距離(distance)を、信号の進行時間に光速を乗算することによって計算する。これらの標的間距離は、通常、疑似距離(偽距離)と呼ばれている。何故なら、受信機のクロックは、一般にかなりの時間誤差を有し、これが測定標的間距離における共通の偏倚(bias)を生ずるからである。この受信機のクロック誤差からの共通偏倚は、通常のナビゲーション計算の一部として、GPS受信機の位置座標と共に解明することができる。種々の他の要因も、計算した標的間距離における誤差又はノイズを生ずる原因となる可能性があり、天体暦(ephemeris)誤差、衛星クロックのタイミング誤差、大気の影響、受信機のノイズ、マルチパス誤差が含まれる。単体のGPSナビゲーションでは、GSP受信機が視野内にある複数の衛星に関するコード及び/又はキャリア−位相範囲を取得し、いずれの基準局を参考にすることはなく、標的間距離における誤差又はノイズを低減する方法は、通常非常に限られている。
【0005】
これらの誤差を解消又は低減するために、一般に、差動動作がGPS用途には用いられている。差動GPS(DGPS)動作は、基礎即ち基準GPS受信機を有する基準局と、ナビゲートする物体に取り付けられているローバー(rover)又はナビゲーションGPS受信機を有するナビゲーション・システムと、受信局とナビゲーション・システムとの間の通信リンクを必要とする。基準局は、通常既知の位置にあり、取得した測定値及び/又はそこで計算した補正値を送信し、ナビゲーション・システムがこれらを用いて、誤差要因の殆どを抹消する。キャリア−位相測定を用いる差動動作は、リアル・タイム力学的(RTK:real-time kinematic)測地/ナビゲーション動作と呼ばれることが多い。
【0006】
差動GPS(DGPS)の基礎的な概念は、GPS測定に固有の誤差の空間及び時間的相関を利用して、これら誤差要因によって生ずる疑似標的間距離及び/又はキャリア位相測定値におけるノイズ要因を抹消することである。しかしながら、GPS衛星のクロックのタイミング誤差が疑似標的間距離又はキャリア位相測定値上に偏倚として現れ、これが基準受信機とユーザ受信機との間で完全に相関付けられるが、他の誤差要因の殆どは、広域の用途では、即ち、基準及びユーザ受信機間の距離が大きくなると、相関付けられないか又は相関が減少する。
【0007】
広域用途におけるDGPSシステムの低精度を克服するために、種々の局所的、広域、又は大域的DGPS(以後、広域DGPS又はWADGPSと呼ぶ)技法が開発されている。WADGPSは、計算センタ又はハブと通信する多数の基準局のネットワークを含む。誤差の補正は、ハブにおいて、基準局の既知の所在地とこれらが行う測定値とに基づいて計算される。次いで、計算した誤差補正値を、衛星、電話機、又は無線機のような通信リンクを通じてユーザに送信する。多数の基準局を用いることによって、WADGPSは誤差補正の推定値の精度を高めることができる。
【0008】
単体、RTK、及び/又はWADGPSシステムのいずれを用いて、誤差を多かれ少なかれ補正した場合でも、ナビゲーションGPS受信機に結合されているコンピュータ・システムは、一般に、一連のエポック(epoch)の各々において1回ずつ受信機位置に対する更新を計算する。GPSキャリア−位相測定を用いてGPS受信機に位置を更新するために、多数の異なる技法が開発されている。これらの技法の例は、最小二乗及びカルマン・フィルタ・プロセスである。最小二乗技法は、2004年、ニューヨークのJohn Wileyによって出版された、Alfred LeickによるGPS衛星調査、第3版の第4章、「最小二乗調節」において詳細に検討されている。カルマン・フィルタについては、その章の末尾に端的に検討されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のGPSナビゲーション・システムでは、GSP受信機の位置は、一般に、1ヘルツの頻度、即ち、毎秒1回の割合で更新されている。中速から高速で移動する物体では、位置更新をもっと高い頻度で計算することが望まれる場合が多い。しかしながら、位置更新を1ヘルツの頻度よりも遥かに高い頻度で計算すると、最小二乗又はカルマン・フィルタ・プロセスを一通り行う複雑さにより、計算機システムの計算能力を超過する可能性がある。したがって、計算の複雑度を最低限に抑えつつ、高精度の位置更新を生成する頻度を大幅に高める衛星ナビゲーション技法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
衛星からの信号に応じて物体をナビゲートするプロセスは、キャリア−位相測定値における連続的な変化を用いて、物体の位置を時間的に前方に伝搬する(propagate)。このプロセスは、物体の位置を解明するために必要な行列を低頻度で計算し、次の低頻度計算が完了するまで、最後に計算した行列を繰り返し用いて、高頻度で位置更新を計算する。
【0011】
本発明の一実施形態では、前述のプロセスは、物体の初期位置と、初期位置について解明するための行列を決定する初期化プロセスを含む。また、このプロセスは、初期化プロセスの後、一連の長期エポックの各々で1回ずつ、物体の位置補正と、位置補正について解明するための行列とを決定する低頻度プロセスも含む。位置補正値及び行列は、高頻度プロセスが、初期化プロセスの後一連の長期プロセスの各々で1回ずつ物体の位置更新を決定する際に用いるために、整列する。各短期エポックにおける位置更新は、低頻度プロセスからの最後に整列された行列と、現短期エポックを含む2回の連続する短期エポックにおいて得られたキャリア−位相想定値の差とに基づいて決定する。
【0012】
本発明の一実施形態では、物体をナビゲートするプロセスは、いわゆる「最大可用性」(maximum availability)動作モードで実行され、低頻度で得られた位置補正値を用いて、高頻度で得られた位置更新を補正する。この動作モードでは、高頻度プロセスにおいて位置更新を計算する際に用いられるキャリア−位相測定値を補正するために、電離層又は対流圏効果に対する補正を用いる必要がない。したがって、計算ではL1キャリア−位相測定値のみを用い、仰角が数度という低さの衛星を用いることができる。これによって、最大数の衛星が計算に関与することが可能となり、計算結果は、堅牢性が向上しノイズが低減する。何故なら、L1の信号は、通常L2の信号よりも強力であり、得るのが容易であるからである。
【0013】
本発明の別の実施形態では、物体をナビゲートするプロセスは、いわゆる「最大精度」(maximum accuracy)動作モードで実行され、低頻度で得られた位置補正値は、高頻度で得られた位置更新を補正するためには用いられない。むしろ、高頻度プロセスは、基準点に結ばれた相対位置フレーム内で実行する。高頻度プロセスにおいて時と共に増大する誤差を最少に抑えるために、キャリア−位相測定値の変化を用いて位置更新を計算し、利用可能な関連情報全てを用いて調節する。これらの情報は、限定ではなく、(1)電離層屈折効果を除去するための二重周波数キャリア−位相測定値、(2)注意深くモデル化した成層圏効果、(3)広域又は汎地球測地システムによって与えられる衛星クロック及び軌道補正値等を含む。この動作モードは、絶対位置更新ではなく相対位置更新が望まれる状況では、非常に有用である。この動作モードの有益な使用の一例は、RTKシステムとの共同である。これによって、キャリア−位相測定値に対する補正値を供給するローバー受信機と基地局との間の通信リンクが中断しても、RTK基地受信機の位置に対するナビゲーションを行うRTKシステムが、相対ナビゲーション・モードで動作し続けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による、キャリア−位相測定値の連続差を用いて、移動体をナビゲートするためのナビゲーション・システム100を示す。システム100は、GPS受信機110に結合されている、マイクロコンピュータを用いたコンピュータ・システムとすることができる。GPS受信機110は、移動体に取り付けられており、生のGPS観測量を、システム100が処理するために供給する。これらの観察量は、GPSコード及びキャリア位相測定値、天体暦、ならびに複数の衛星101から受信した信号に応じて取得したその他の情報を含む。
【0015】
差動動作を容易にするために、システム100は、通信リンク124を通じて基準局120にも結合することができる。基準局120は、そこで測定したGPS測定量、及びそこで計算したGPS誤差補正量を供給する。広域又は大域的用途では、システム100を、無線及び/又は衛星リンク134を通じて、基準局の一群(図示せず)と通信する1つ以上の中央ハブ130に結合するとよい。ハブ(複数のハブ)130は、一群からの基準局からのGPS観察量を受信して、システム100に伝達される補正値を計算する。
【0016】
本発明の一実施形態では、システム100は、中央演算装置(CPU)140、メモリ148、複数の入力ポート153、154、及び155、1つ以上の出力ポート156、ならびに任意選択肢であるユーザ・インターフェース158を含み、これらは1つ以上の通信バス152によって相互接続されている。入力ポート154は、それぞれ、GPS受信機110、基準局120、及び/又はハブ130からのデータを受信するためにあり、出力ポート(複数のポート)156は、計算結果を出力するために用いることができる。あるいは、計算結果をユーザ・インターフェース158の表示装置上に示してもよい。
【0017】
メモリ148は、高速ランダム・アクセス・メモリを含むことができ、1つ以上の磁気ディスク記憶デバイスのよう不揮発性大容量ストレージを含むことができる。また、メモリ148は、中央演算装置140から離れて位置する大容量ストレージを含むこともできる。好ましくは、メモリ148は、オペレーティング・システム162、データベース170、及びGPSアプリケーション・プログラム又は手順164を格納する。GPSアプリケーション・プログラム164は、本発明の一実施形態にしたがってキャリア−位相測定値における連続変化を用いたナビゲーション方法を実施する手順166を含む。メモリ148に格納されているオペレーティング・システム162及び手順164は、コンピュータ・システム100のCPU150が実行するためにある。また、好ましくは、メモリ148は、GPS測定値や補正値、ならびに本文書において論ずる他のデータ構造のような、GPSアプリケーション手順166の実行中に用いられるデータ構造も格納する。
【0018】
オペレーティング・システム162は、限定ではなく、埋め込み型オペレーティング・システム、UNIX(登録商標)、Solaris、Windows(登録商標)95、98、NT4.0、2000又はXPとするとよい。更に一般的には、オペレーティング・システム162は、データを伝達し、処理し、アクセスし、格納し、検索するための手順及び命令を有する。
【0019】
以下に述べる理由のために、メモリ148はリアル・タイム・エクゼキュティブ(RTX:real time executive)も格納することができる。これは、リアル・タイム・マルチタスキング動作のためのコンピュータ・プログラムである。本発明の一実施形態では、RTX167は、オペレーティング・システム162を手順166内に埋め込んで多数のスレッドを設け、手順166において異なるタスクを「疑似同時に」実行できるようにする。これは、異なるタスクが同時に実行しているように見え、システム100が異なるジョブを同時に行っているように見えることを意味する。これによって、手順166は、異なるスレッドで実行する2つ以上の同時タスク又はプロセスを含むことが可能になる。RTX167は、スレッドの各々の開始及び停止を制御し、スレッド同士が相互作用することを可能にする。また、RTX167はスレッドに対してデータを整列し、スレッド間でデータを送出し、イベントを順番に維持することによってプロセスを直列化することも可能にする。
【0020】
加えて、RTX167は、別のスレッド上のイベントによってトリガされるイベント上でスレッドの実行を待たせるというような、標準的なマルチタスク制御もサポートする。イベントとは、スレッド上で設定又は消去(clear)することができる状態のことである。1つ以上のイベント上で待つようにスレッドを設定すると、全てのイベントが設定されるまで、そのスレッドは保留される。これによって、スレッド間での同期確立及び通信が大幅に簡素化する。RTX167では、スレッドの実行は優先順位に基づく。優先度が高いスレッド程、優先度が低いスレッドよりも先に実行する。優先度が同じスレッド間では、順繰りにスレッドを実行する。各スレッドには、実行するためのタイム・スライスが与えられる。市販のRTXをRTX167として用いることができる。このような市販のリアル・タイム・エクゼキュティブの例には、CMX Systems, Inc.のCMX-RTX、Australian Real Time Embedded Systems (ARTESYS)のConcurrent Real time Executive (CORTEX)、及びAccelerated Technology Inc.のNucleusが含まれる。
【0021】
図1において破線105で示すように、実施形態の中には、GPS受信機110及びコンピュータ・システム100の一部又は全部を、可搬、ハンドヘルド、又は装着可能な位置追跡デバイス、あるいは車両装備又はその他の移動測地及び/又はナビゲーション・システムのような、単一筐体内にある単一デバイスに統合する場合もある。他の実施形態では、GPS受信機110及びコンピュータ・システム100は、単一のデバイスには一体化しない。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態にしたがって、キャリア−位相測定値における連続差を用いて物体をナビゲートする方法200を示すフローチャートである。方法200は、手順167内に実装され、システム100によって実行することができる。図2に示すように、方法200は、初期化プロセス201ならびに2つの同時プロセス、即ち、高頻度プロセス(high-rate process)210及び低頻度プロセス(low-rate process)220を含む。初期化プロセス201は、物体の初期位置、及び高頻度プロセス210が必要とするその他の初期パラメータを計算するために用いられる。高頻度プロセス210は、一連の位置伝搬プロセス215を含み、その各々が一連の短期エポック(minor epoch)の1つにおいて物体の位置に対する更新を計算する。低頻度プロセス220は、一連の位置補正プロセス225を含み、その各々が一連の長期エポック(major epoch)の1つにおいて物体の位置に対する補正値を計算する。図2Bに示すように、長期エポックTの中には、10個というようなある数の短期エポックtmn(m=0,1,2,3,...、n=0,1,2,3,...)があるとよい。動作モードに応じて、短期エポックが長期エポックと一致してもよい。これについては以下で論ずる。
【0023】
初期化プロセスにおいて初期位置を計算するためには、様々な従来の衛星ナビゲーション方法のいずれでも用いることができるが、本発明の一実施形態では、最小二乗プロセスを用いて、初期位置、ならびに2つの同時プロセス210及び220が必要とするその他の初期パラメータを計算する。基本的に、衛星に対する測定値を用いたナビゲーションは、1組の線形統計的差分方程式によって支配される、離散時間制御プロセスとして記述することができる。関与する衛星の各々について、方程式は次のように表すことができる。
z=hv・xv+n (1)
ここで、xvは、離散時間制御プロセスの状態に対する補正値を表す状態補正ベクトルであり、この場合、受信機の位置及び受信機のクロック時間を含むことができ、zは測定インノベーション(measurement innovation)の値を表し、インノベーションとは、衛星に対する測定値と本来の指定状態から計算される測定値に対する期待値との間の差によって定義され、hvは測定感度ベクトルであり、状態変化に対する測定値の感度の特性である。hvベクトルは、疑似標的間距離測定値をGPS受信機の位置と関係付ける方程式をテーラー級数に展開することによって形成する。hvの要素は、補正ベクトルに対する測定インノベーションの一次導関数を含む。状態補正ベクトルxvは、少なくともGPS受信機の位置に対する補正値を含む。また、これはGPS受信機のクロックに対する補正値も含むことができる。キャリア−位相測定値の場合、状態補正ベクトルは、未知の曖昧係数を含むことができ、これは、従来のキャリア−位相曖昧解明技法を用いて解くことができる。以下の論述を容易にするために、状態ベクトルは4要素ベクトルである、即ち、状態は受信機の位置及び受信機のクロック時間のみを含むことを想定している。
【0024】
式(1)は、状態補正ベクトルを、共通エポックにおける多数の衛星に対する1組の測定値と関係付けるように拡張することができる。
zv=Hm・xv+nv (2)
この式において、zvは、多数の衛星に対するインノベーションから成るベクトルであり、Hmは多数の衛星に対する測定感度から成る行列であり、xvは状態ベクトルのままであり、nvはzvにおけるインノベーションに伴う1組の測定ノイズ値を含む測定ノイズ・ベクトルである。測定感度行列Hmは、衛星の幾何学的形状に依存し、受信機と衛星との間の幾何学的関係の総合を示す。ベクトルzvにおける測定インノベーションは、プレフィックス残差(prefix residual)と呼ばれることが多い。式(2)に対する最小二乗解は次のようになる。
xv=(Hm・H・Hm)−1Hm・zv (3)
ここで、上付き文字Tは転置動作を表し、上付き文字「−1」は行列反転動作を表す。
【0025】
式(2)を解くことの、式(3)用いる代替案では、以下の式で示される加重最小二乗解について解く。
xv=(Hm・Wm−1・Hm)−1Hm・Hm−1・zv (4)
ここで、Wmは、ノイズ・ベクトルnにおける測定ノイズの標準偏差を表す対角要素と、測定値間の共分散を表す非対角要素とを有する測定共分散行列である。測定値間の共分散は、一般に0と仮定するので、Wmの非対角要素は一般には0である。
説明を容易にするために、以下の論述では、単純な最小二乗式、式(3)を用いる。式(3)を更に簡略化して、次の式を得ることができる。
xv=Am・Hm・zv (5a)
又は
xv=Bm・zv (5b)
ここで、Am=(Hm・Hm)−1、及びBm=Am・Hmである。
【0026】
また、場合によっては、残差感度行列Smを形成することが有用なこともある。これは、インノベーションzv又はプレフィックス残差を、インノベーションzvにおけるGPS測定値に対応するポストフィックス残差にマッピングする。
Δm=Sm・zv (6)
ここで、
Sm=(Im−Hm(Hm・Hm)−1・Hm
=Im−Hm・Bm (7)
ここで、Imは、階数が測定値の数又はzvにおける要素の数に等しい、正方単位行列である。
【0027】
初期化プロセス201において、補正ベクトルxvにおける位置補正値を、本来の推定位置に加算して、受信機位置の補正推定値を求める。受信機のクロックに対する補正は撹乱パラメータとして扱われ更新されない場合が多い。これは、受信機クロックの依存性が線形であり、その値における大きな誤差が解に影響を及ぼさないために可能となる。標的間距離式、式(1)〜式(7)は非線形であるので、初期の位置推定値に大きな誤差があると、計算全体を繰り返す必要がある場合がある。このため、初期化プロセス201は、第1エポックにおいて得られたのと同じ1組の測定値を用いて繰り返せばよいか、あるいは、代わりに、数回の測定エポックを順次繰り返してもよい。つまり、高精度の初期位置ならびに付随する行列Am及びHm(又はBm及びSm)が得られるまでには、初期化プロセス201において数回の長期エポックを要する場合もある。
【0028】
一旦初期位置ならびに付随する行列Am及びHm(又はBm及びSm)を計算したならば、高頻度プロセス210及び低頻度プロセス220を開始する。低頻度プロセス220は、受信機位置ならびに行列Am及びHm(又はBm及びSm)に対する補正値を、長期エポック毎に、位置補正プロセス225を用いて計算する。位置補正プロセス225は、式(1)〜式(7)までによって先に記述したのと同様の最小二乗計算を含む。高頻度プロセス210は、位置伝搬プロセス215を用いて、初期化の後に、短期エポックの各々又は一連の短期エポックにおいてGPS受信機110の更新位置を計算することによって、GPS受信機110の位置を時間的に前方に伝搬する。本発明の一実施形態では、プロセス210及び220の実行は、RTX167によって制御される。RTX167は、初期化プロセス201の後に2つの別個のスレッドを開始して、プロセス210及び220をそれぞれ実行する。プロセス225は、高頻度プロセス210におけるプロセス215よりも低い頻度で実行されるので、そして各プロセス225の実行は、以下で更に詳しく説明するように、高頻度プロセスからのある計算結果の受信次第で決まる場合があるので、高頻度プロセス210を実行するスレッドに高い優先度を与えるとよく、低頻度プロセス220を実行するスレッドには低い優先度を与えるとよい。また、RTXは、各スレッド上でのデータの整列、及びスレッド間におけるデータの受け渡しも制御する。これについては以下で更に詳しく説明する。
【0029】
キャリア−位相測定値は、一般に、1センチメートル未満の精度があるので、これらを用いれば、殆ど誤差が増大せずに、受信機位置を時間的に前方に伝搬することができる。図3に示すように、高頻度プロセス内の現短期エポックにおける位置伝搬プロセス215は、ステップ310を含むことでき、ここで、低頻度プロセス220に付随するキューから、受信機位置ならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列に対して最後に計算した補正値が得られる。Am及びHm(又はBm及びSm)行列は、低頻度プロセス220による行列の計算に含まれない1つ以上の衛星からの寄与を含むように、あるいは信頼性のない測定値を生成した1つ以上の衛星からの寄与を削除するように、更新する必要がある場合もある。行列の更新は任意選択肢であるので、ステップ310のこの部分については、説明の最後付近で論ずることにする。
【0030】
プロセス215は、更にステップ320を含み、ここでGPS受信機110の速度を用いて、位置の近似伝搬を計算する。本発明の一実施形態では、以前の短期エポックにおいて計算した受信機位置に、速度と以前のエポックからの経過時間との積である初期補正値を加算することによって、高頻度プロセス210内の各短期エポックにおける受信機位置に対する近似更新を最初に計算する。これは次の式で示される。
Xvp=Xvp+vv・Δt (8)
ここで、vvは、速度を表し、Δtは2回の短期エポック間の経過時間即ち短期エポック間隔であり、XvpはGPS受信機110の計算した位置を表す。ステップ320は、プロセス215に含まれ、インノベーション(プレフィックス残差)を小さく抑えることによって、最良の位置推定値が高頻度補正計算において用いられることを確保する。このステップは、実際には必要とされない。何故なら、以下で説明するようにキャリア−位相の変化を用いる位置伝搬は、自動的に、ステップ320において計算した初期補正値の欠如に合わせて調節するはずであるからである。また、プレフィックス残差に対する最も大きな寄与は、通常、受信クロック誤差であり、ステップ320における計算に含まれても含まれなくてもよい。
【0031】
引き続き図3を参照すると、プロセス215は更にステップ330を含み、ここで現行の短期エポックと直前の短期エポックとの間の時間間隔の間におけるキャリア−位相測定値の変化を用いて、その同じ時間間隔における受信機の位置変化を計算する。ステップ320における速度更新は、現短期エポックにおける受信機位置の正しい推定値となる。しかし、これは、モデル化されていない加速度や速度ノイズを考慮していない。これらは、キャリア−位相測定値の変化を用いることによって補正することができる。キャリア−位相測定値の変化を用いて位置変化を計算するために、初期化プロセス(現短期エポックが初期化プロセス後の最初の数回の短期エポックの1つである場合)又は高頻度プロセスからの式(5a)をAm及びHm行列と共に用いる。効率を上げるには、Bm行列及び式(5b)を用いるとよい。しかしながら、Bm行列を用いる場合、Sm行列及び式(6)も用いて、高頻度処理の間における周期のずれ(cycle slip)又は信号の損失を処理する代替方法を設けるとよい。これについては、本発明の一実施形態にしたがって衛星信号の損失を処理する方法と関連付けて以下で論ずる。Sm行列は、通常、ユーザ位置に非常に不感応である。したがって、最後の補正プロセス225以来かなりの距離を通過した場合にのみ際計算が必要となる。
【0032】
Am及びHm又はBm及びSmのどちらの行列を用いても、これらは各長期エポックで1回ずつ位置補正プロセス225において計算されるので、これらは十分な精度で一連の短期エポックにおいて高頻度位置更新を計算するために繰り返し用いることができ、したがって、短期エポック毎に再計算する必要はない。これは、高頻度プロセス210における計算負荷を著しく簡素化し、式(5a)又は式(5b)及び(6)を実施するために短期エポック毎に再計算する必要がある唯一の特定値は、インノベーション・ベクトルzvのエレメントである。行列の計算に関与する衛星毎に、
=(φ−ρ)−(φi−1−ρi−1) (9)
ここで、φは、対応する波長によってメートルに換算した(scale)キャリア−位相測定値を表すために用いられ、ρは、衛星と受信機間の理論的標的間距離を表すために用いられる。下付き文字iは、現エポックを表すために用いられ、下付き文字i−1は、直前のエポックを表すために用いられる。理論的標的間距離ρは、短期エポックi−1において計算した受信機位置を用いて計算することができる。これは、式(8)を用いて更新してもしなくてもよい。理論的標的間距離ρi−1は、単に、短期エポックi−1において計算した受信機位置を用いて計算すればよい。これは、式(8)を用いて更新されるのではない。
【0033】
プロセス200は、異なる動作モードで実行することができる。本発明の一実施形態では、プロセス200は、「最大可用性」又は「高頻度伝搬」モードと呼ばれるモードにおいて実行する。この動作モードでは、電離層又は対流圏の屈折効果に対する補正を用いる必要はなく、式(9)においてインノベーションを計算するときに衛星に対する数度の仰角の測定値を含ませることができる。屈折効果は無視することができる。何故なら、1つの長い間隔(即ち、各長期エポックに対応する時間期間)における屈折効果の変化は、多くの場合約1秒であるが、一般にキャリア−位相測定ノイズ未満であるからである。このため、L2のキャリア−位相測定値からの電離層補正を適用することなく、L1のキャリア−位相測定値を用いることができる。L1信号はL2信号よりも強く、L1測定値の方が辺境条件の下では取得し易いので、L1測定のみを用いて得られる結果の方が堅牢であり得る。あるいは、L2測定値が利用可能な場合、各L1と対応するL2キャリア−位相測定値の平均(平均化の前にメートルに換算する)を用いることもできる。これによって、計算される位置におけるノイズが多少減少する。何故なら、L1及びL2測定値におけるノイズが平均化プロセスの間にある程度相殺されるからである。
【0034】
このため、式(9)を用いて計算したインノベーションを式(5a)またh(5b)において用いて、状態に対する変化xvを計算する。状態は受信位置Xvpに対する変化xvpを含む。単に位置変化を短期エポック間隔で除算することによって、速度補正値Δvvも、位置変化xvpから生成することができる。つまり、速度補正値は、以下の式で示される。
Δvv=xvp/Δt (10)
短期エポック間隔が1秒の1/10程度に短い場合、状態補正値xv及び速度補正値Δvにノイズがあると、速度ノイズが増幅される結果となる場合もある。このため、xvの位置変化又は速度補正値のいずれか、又は双方を平滑化してから、これらを用いて位置及び速度を更新することが望ましい場合もある。状態ベクトルに対してトラッキング・フィルタを用いると、スムージング・プロセスにおいて誤差が蓄積されないことを確実とすることができる。
【0035】
更に、プロセス215はステップ340を含み、ここで、キャリア−位相測定値の変化から生成した位置変化を用いて、受信機位置を更新する。このとき、以下の式を用いる。
Xvp=Xvp+xvp (11a)
ここで、xvpは受信機位置Xvpに対する補正値を表す。実施形態の中には、受信機位置Xvpがxyzデカルト座標であり、地球を中心とした、地球固定座標系に関する場合がある。xvpが、北、東、増大座標系(north, east, up coordinate system)である場合、位置変化xvpは、最初にしかるべき回転行列Rmと乗算しなければならない。回転行列は、低頻度プロセスにおいて計算され、Am及びHm(又はBm及びSm)行列と共に高頻度プロセスに転送される。この場合、
Xvp=Xvp+Rm・xvp (11b)
ここで、xvpは、北、東、増大座標における位置変化を表し、Xvpはデカルト座標における受信機位置を表す。
【0036】
各長期エポックにおいて1回、位置補正値Δxvpを位置変化xvp又は伝搬位置Xvpに加算することによって、受信機位置Xvpを補正する。ここで、追加の補正値Δxvpは、低頻度プロセス220によって得られる。これについては、以下で更に詳しく論ずる。Δxvpを周期的に加算することにより、式(8)〜(10)を用いて計算する高頻度更新値Δxvpのいずれの不正確が蓄積されるのも防止するのに役立つ。Δxvpの加算は、各長期エポックにおいて1回ステップ330又はステップ340において行うとよい。
【0037】
更に、プロセス215はステップ350を含み、ここで現短期エポックが、長期エポックの先頭又は末尾のような、長期エポックにおける所定の期間に対応するか否か判定を行う。このような対応が見られた場合、プロセス215は更にステップ360を含み、ここで、低頻度プロセス220が状態補正値ならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を計算する際に用いるために、新たに計算した受信機位置Xvpを整列させる。また、プロセス215はステップ370も含むことができ、ここで、ユーザ・インターフェース、出力ポート156、及び/又はシステム100と連動するその他のデータ出力機構から、新たに計算した受信機位置X→を出力する。その後、高頻度プロセス210は、次の位置伝搬プロセス215に移行し、現行の及び次の端エポック間におけるキャリア−位相測定値の変化を用いて、受信機位置を次の短期エポックに伝搬する。
【0038】
Am及びHm(又はBm及びSm)行列は受信機位置には比較的不感応であり、各短期エポックにおいて計算する必要はないが、式(1)又は(9)を得るために用いられるテーラー展開の非線形性の影響が些細な誤差のみに限られるように、これらを十分頻繁に計算する必要はある。ステップ360における受信機位置Xvpの整列は、長期エポック毎に1回行われ、低頻度プロセス220における位置補正プロセス225を開始するきっかけとなる。図4に示すように、位置補正プロセス225はステップ410を含み、ここで新たに更新した受信機位置Xvp及びXvpを更新した特定の短期エポックに対応するGPS測定値を用いて、式(1)〜式(7)を用いて状態補正値ならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を計算する。ステップ410における理論的標的間距離を、新たに更新した受信機位置Xvpに基づいて計算し、非常に精度が高いので反復は必要ないと仮定する。
【0039】
ステップ410における計算が完了するには、数回の短期エポックを要する場合がある。計算の結果は、これらが生成されて直ぐに高頻度プロセス210に利用可能となる必要はない。つまり、位置補正プロセス225は、更に、ステップ420を含み、ここで、高頻度プロセス210が用いるために、新たに計算した状態補正値ならびにAm及びHm(又はBm及びSm)マトリクスを整列する。新たに整列した状態補正値は、受信機位置補正値Δxvpを含み、先に論じたステップ330又は340において用いられる。新たに整列した状態におけるクロック補正値を用いて、次の1組の測定値を取り込むべき受信機のクロックの時点を補正する。
【0040】
先に論じたように、補正ベクトルは、異なる座標系で形成することができ、その1つは、より一般的なx,y,z、地球中心、地球固定座標ではなく、北、東、増大座標を用いる。北、東、増大座標系の利点は、衛星の台数が3台(又は精密度の希釈(dilution)が乏しい場合は4台)に減少した場合に、いわゆる高度保持モードを実施するのがはるかに簡単であることにある。いずれの場合でも、この代替モードを採用する場合、補正値を地球固定座標に回転するために必要な回転行列Rmも、位置補正プロセス225において計算する必要がある。この回転行列は、Am及びHm(又はBm及びSm)行列、ならびに状態補正値と共に、高頻度プロセス210が用いるために、整列させることができる。
【0041】
補正した受信機位置の代わりに、位置補正ベクトルΔxvpを高頻度プロセス210に渡す理由は、ステップ410における計算が完了する前に、高頻度プロセスにおいて数回の短期エポックが生ずる可能性があるからである。補正ベクトルΔxvpを高頻度プロセス210に渡すことによって、先に論じたように長期エポックにおけるいずれの時点においても補正を行うことが可能となる。また、補正した受信位置の代わりに位置補正ベクトルを高頻度処理に渡すことにより、以下で論ずるような、代替モード、即ち、「最大精度」即ち「拡張精度相対ナビゲーション」モードで高頻度測地を行うことが可能となる。
【0042】
図5及び図6は、本発明の代替実施形態による「最大精度」モードにおけるナビゲーション・プロセス200を示す。この動作モードでは、初期化プロセス201からの初期位置は、絶対的な意味で特に高精度である必要はない。しかし、この初期位置に対して後に計算する受信機位置は、非常に高精度でなければならない。例えば、ユーザ入力位置も初期位置として用いることができる。また、このモードでは、高頻度プロセス210における位置伝搬プロセス215を、高頻度で、即ち、1秒の1/10毎に1回、又は低頻度、即ち、毎秒1回繰り返すことができる。言い換えると、短期エポックは、システム100がこのモードで動作しているときには、長期エポックと一致してもよい。いずれの場合でも、各位置伝搬プロセス215は、最初に初期化プロセスによって計算され続いて低頻度プロセス220によって計算されるAm及びHm(又はBm及びSm)行列に依存することには変わらない。
【0043】
更に、「最大精度」モードでは、2つの異なる座標系を、高頻度プロセス210及び低頻度プロセス220によってそれぞれ用いることができる。本発明の一実施形態では、高頻度プロセス210は、位置伝搬プロセス215を用いて、短期エポック毎に1回「相対的」受信位置Xvpに対する更新を計算し、低頻度プロセス220は、位置補正プロセス225を用いて、長期エポック毎に1回、相対的受信機位置Xvpと「絶対」受信位置Xvpとの間のオフセットを計算する。相対位置Xvpは、特定の座標系に結ばれている位置である。これの一例は、標準コード差分位置(standard code differential position)であり、座標系は、GPSコード測定値に対する補正値のような、誤差補正値を生成する基準局と連動する基準受信機が用いるそれに対応する。絶対位置Xvpは、通常、地球中心、地球固定デカルト座標である。低頻度プロセス220からの位置オフセットは、高頻度プロセス210において計算する相対位置には適用されない。代わりに、これらは、低頻度プロセス220に付随する別個の位置オフセット・キュー内に整列する。このキューは、しかしながら、理論的標的間距離を適正に計算できるように、高頻度プロセス210にも利用可能とする必要がある。そうでないと、高頻度プロセス210を用いた相対的ナビゲーションの精度が、衛星の幾何学的形状の変化による影響を受ける可能性がある。
【0044】
図5に示すように、高頻度プロセス210内の現短期エポックにおいて、位置伝搬プロセス215はステップ510を含むことができ、ここで、低頻度プロセス220に付随するキューから、最後に計算した位置オフセットならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を取得する。任意選択肢では、これらの行列に寄与する衛星又は1組の衛星の位置変化を考慮するために、Am及びHm(又はBm及びSm)行列を更新しなければならない場合もある。これについては、先のステップ310の説明において論じており、以下でも更に詳しく論ずる。
【0045】
引き続き図5を参照すると、プロセス215は更に任意のステップ520も含み、ここで、式(8)に関して先に論じたように、GPS受信機110の速度を用いて、相対位置Xvpの近似伝搬(approximate propagation)を計算する。ステップ520における速度更新は、現エポックにおける受信機位置の正しい推定値となることができる。しかし、これはモデル化されていない加速度や速度ノイズを考慮していない。これらは、キャリア−位相測定値の変化を用いることによって補正することができる。このため、プロセス215は更にステップ530も含み、ここで現短期エポック及び直前の短期エポック間の時間間隔の間におけるキャリア−位相測定値の変化を計算し、この同じ時間間隔における相対受信機位置Xvpの変化を計算する。この目的のために、式(5a)と、初期化プロセスからのAm及びHm行列(現短期エポックが初期化プロセス210後の最初の数回の短期エポックの1つである場合)又は高頻度プロセスからのAm及びHm行列を用いる。効率を高めるには、特にこの動作モードでは、Bm及びSm行列ならびに式(5b)及び(6)を代わりに用いる。
【0046】
先に論じたように、Am及びHm又はBm及びSmのどちらの行列を用いても、これらを短期エポック毎に再計算する必要はない。式(5a)又は式(5b)及び(6)を実施するために短期エポック毎に再計算する必要がある唯一の特定値は、インノベーション・ベクトルzvの要素であり、行列の計算に関与する衛星毎に、
=(φ−ρ)−(φi−1−ρi−1) (12)
となる。ここで、φは、対応する波長によってメートルに換算したキャリア−位相測定値を表すために用いられ、ρは、衛星と受信機間の理論的標的間距離を表すために用いられる。下付き文字iは、現エポックを表すために用いられ、下付き文字i−1は、直前のエポックを表すために用いられる。理論的標的間距離ρは、短期エポックi−1において計算した相対受信機位置Xvpを用いて計算することができる。これは、式(8)を用いて更新してもしなくてもよい。理論的標的間距離ρi−1は、短期エポックi−1において計算した相対受信機位置Xvpを用いて計算すればよい。これは、式(8)を用いて更新されるのではない。しかしながら、理論的な標的間距離を計算するときは、それぞれの相対位置に対応する絶対受信機位置を用いることが好ましい。絶対受信機位置の近似値は、最後に計算した位置オフセットと、それぞれの受信機位置とに基づいて計算することができる。
【0047】
このため、式(9)を用いて計算したインノベーションを式(5a)又は式(5b)において用いて、状態に対する変化xvを計算する。これは、相対受信機位置Xvpに対する変化xvpを含む。また、式(10)におけるように、速度補正値Δvvも、単に位置変化xvpを、2つの連続する位置伝搬プロセス215間の時間間隔で除算することによって、位置変化から生成することができる。
プロセス215は、更に、ステップ540を含み、ここでは、位置変化xvpを用いて、相対受信機位置Xvpを更新する。その際、以下の式を用いる。
Xvp=Xvp+xvp (14)
ここで、xvpは、Xvpと同じ座標系にある。xvpがXvpとは異なる座標系にある場合、回転行列を用いれば、xvpをXvpと同じ座標系に変換することができる。回転行列は、低頻度プロセスにおいて計算し、Am及びHm(又はBm及びSm)行列と共に高頻度プロセスに転送すればよい。
【0048】
「最大精度」動作モードでは、式(9)においてインノベーションを計算するためには、高頻度プロセスにおけるキャリア−位相測定値の変化を用いて受信機位置を更新しているときのいずれの位置誤差の増大も極力抑えるように、既知のあらゆる誤差要因を考慮しなければならない。精度を維持するために取る具体的な措置は、インノベーションにおける電離層効果を補正するために、L2キャリア−位相測定値を用いることを含む。これは、高周波測定値において多少ノイズを増大させるが、電離層効果を考慮しない場合に経時的に発生する位置ドリフトを除去する。同様に、そして同じ理由で、2回の連続する位置伝搬プロセス215間の各短期エポック間隔における対流圏屈折効果の変化も計算し、インノベーションから除去しなければならない。最後に、一層精度を高め相対的ナビゲーションを延長するためには、いずれかの利用可能な広域又は大域差分GPS補正によってステップ530におけるインノベーションを調節するとよい。具体的には、2回の連続する位置伝搬プロセス215間の短期エポック間隔の間に発生する衛星クロック又は起動に対する補正値のいずれの変化でも、インノベーションに適用するとよい。クロック及び軌道補正値は、米国のJohn Deere and Companyから入手可能なStarFire グローバル差分システム(global differential system)のような、種々の広域又はグローバル衛星ナビゲーション・システムの1つから得ることができる。
【0049】
精度を高めるためには、他のノイズ要因及びバイアスも考慮するとよい。例えば、効果は小さいが、衛星クロック周波数のその設計値からのあらゆる相違と、短期エポック間隔の期間との積を用いて、対応するキャリア−位相測定値を調節することができる。衛星クロック周波数におけるこの相違を検討しないと、毎秒約1センチメートルの傾斜が生ずる可能性があり、計算した速度において毎秒約1センチメートルのエラーが生ずる結果となる可能性がある。
「最大精度」動作モードでは、低頻度プロセス220によって計算した位置オフセットは、相対位置Xvpを更に補正するためには適用しない。何故なら、こうすることにより、ナビゲートした位置Xvpがドリフトして真の測地位置即ち「絶対」位置に戻ってしまうからである。
【0050】
このように、「最大精度」モードは、相対的なナビゲーション・モードであり、基準局120とローバー受信機110との間の通信リンクが一時的に失われたときに、開始するにあたって基準局120の位置が特に高精度でない場合であっても、短距離RTK測地の高い相対精度を維持するために用いることができる。誤差補正値は基準局120によって与えられるか、又は基準局120において得られた測定値に基づいて計算されシステム100に送信されるので、システム100と基準局120との間の通信リンク124が一時的に失われている場合、通信リンクを再開するまで、最後に受信し計算した誤差補正値を繰り返し用いることができる。誤差補正は、一般に、数秒から数分というような短時間期間で大きく変化しないので、その時間フレームにわたって補正値を繰り返し用いても、計算結果の精度に重大な悪影響を及ぼすはずはない。
【0051】
長期エポック内に数個の短期エポックがある場合、プロセス215は更にステップ550を含み、ここでは、現短期エポックが、長期エポックの先頭又は末尾のような、長期エポックにおける所定の期間に対応するか否か判定を行う。このような対応が見られる場合、又は短期エポックが実際に長期エポックと一致する場合、プロセス215は更にステップ360を含み、ここでは、低頻度プロセス220が次の位置オフセットならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を計算する際に用いるために、新たに計算した受信機位置Xvpを整列させる。また、プロセス215はステップ570も含むことができ、ここで、ユーザ・インターフェース、出力ポート156、及び/又はシステム100と連動するその他のデータ出力機構から、新たに計算した受信機位置Xvpを出力する。その後、高頻度プロセス210は、次の位置伝搬プロセス215に移行し、現行の及び次の端エポック間におけるキャリア−位相測定値の変化を用いて、相対受信機位置Xvpを時間的に更に遠くに伝搬する。
【0052】
ステップ560における相対受信機位置Xvpの整列は、各長期エポックに1回行われ、低頻度プロセス220における位置補正プロセス225を開始するきっかけとなる。図6に示すように、「最大精度」動作モードにおける位置補正プロセス225はステップ610を含み、ここで最後に計算した相対受信機位置Xvpを取得する。この相対位置Xvpをステップ610において、最終位置補正プロセスにおいて整列した位置オフセットを用いて絶対値に変換し、絶対受信機位置Xvpの正しい推定値を得る。
【0053】
推定した絶対受信機位置を用いて、位置補正プロセス225は、更に、ステップ620を含み、式(1)〜式(7)を用いて状態補正値ならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を計算し、理論的標的間距離を、推定した絶対受信機位置を用いて計算する。このようにして計算した理論的標的間距離は、十分に精度が高いので、反復が不要であると仮定する。新たに計算した状態補正値から、ステップ620において、状態補正値における位置補正値を最後に整列した位置オフセットに加算することによって、新たはオフセットも計算する。更に、位置補正プロセス225はステップ630を含み、ここで、先に論じたように、高頻度プロセス210が用いるために、新たに計算した位置オフセットならびにAm及びHm(又はBm及びSm)行列を整列する。
【0054】
先に論じたように、ステップ310又は510において、Am及びHm(又はBm及びSm)行列は、あり得る衛星数な変化を考慮して更新することができる。行列Amは受信機の位置には殆ど感応しないが、行列を最後に計算して以来衛星数に変化があった場合には、再計算又は調節する必要がある場合もある。例えば、1台の衛星上における周期のずれ(cycle-slip)又は固定(lock)の消失は、その衛星に関する測定値を計算から除去しなければならず、異なる行列Amを計算すべきことを意味する。Hm行列は、Hm行列におけるこの衛星に対応する行を単に削除することによって、又は衛星数増大の場合には追加することによって、容易に調節することができる。Hm行列からAmを再計算することは、計算上集約的であり、高頻度処理から得られる利点の多くが帳消しとなる。しかしながら、衛星の除去(又は追加)に対してAm行列を調整するために必要な計算は、とても簡単である。即ち、要素が未調節のAm行列と、Hm行列において削除(又は追加)された衛星と関連付けられた行との内積であるベクトルrvを計算する。
rv=Σavij・hv (Σはjについて加算) (15)
ここで、avijは、行列Amのi行及びj列における要素を表し、hvはHm行列において除去(又は追加)された衛星kと関連付けられた行におけるj番目の要素を表す。スカラーsも計算され、rvとHmの同じ行の内積を含む。即ち、
s=1−Σrv・hv (Σはiについて加算) (16)
Amの要素に対する調節は次の式で示される。
avij=avij+(rv・rv)/s (17)
【0055】
式(16)及び式(17)は、Am行列から衛星を除去する場合に該当する。衛星を追加する場合は、式(16)におけるマイナス符号をプラス符号に切り換え、式(17)におけるプラス符号をマイナス符号に切り換える必要がある。
加重最小二乗計算では、式(15)〜式(17)は、各H要素に、測定共分散行列Wにおける測定ノイズの対応する標準偏差(重み)を乗算し、式(16)における「1」を二乗した重みの逆数と置き換えることによって修正することができる。
【0056】
衛星信号の損失を処理するための代わりの方法は、「失われた」衛星と関連付けられたSm行列の行を用いて、低頻度プロセス220における次の位置補正プロセス225の計算まで、失われた衛星に関するインノベーション又はプレフィックス残差の一時的置換(replacement)を計算することである。即ち、ポストフィックス残差は0に非常に近いはずであることがわかっているので、j番目の衛星についてのプレフィックス残差は逸失したと仮定し、これを0に設定して、置換プレフィックス残差についても求めることができる。これによって、逸失した測定値が回答に影響を及ぼさず、少なくとも4つの有効な測定値が残っている限り、有効な解が得られることを確保する。即ち、式(6)を用いて、ポストフィックス残差又はSm行列の関連するj番目の行sij及びインノベーションの積を0に設定して、次の式を得る。
0=Σsij・zi (Σはi=1〜nについて加算) (18)
【0057】
式(18)は未知数が1つの単一式であるので、置換インノベーションzを得るために容易に解くことができる。多数の測定値を逸失した場合、(18)の形式の式を各々に形成することができる。つまり、未知数の数と同じだけの式ができ、これらの式は、少なくとも4つの正しい測定値があれば、解くことができる。
新たなSm行列を形成するのではなく、新たな測定値(即ち、追加の衛星に対する)を追加する必要がある場合、最も簡単な手順は、新たな測定値を考慮した、低頻度プロセス220における次の位置補正プロセス225の完了まで待つことである。
【0058】
場合によっては、プロセス200における計算に用いるGPSキャリア−位相測定値を編集して、それらの信頼性を確保しなければならないこともある。本発明の一実施形態では、高頻度プロセスにおけるステップ330又は530での、式(9)を用いたインノベーションの計算の直後に、測定値の妥当性を検査する。インノベーションに対する最も大きな寄与は、殆ど常に受信機のクロック値の変化であるので、受信機のクロックからの寄与を除去し、次いで編集することができる。しかしながら、同じ効果は、図7に示す方法を用いれば、容易に得ることができる。
【0059】
図7に示すように、本発明の一実施形態によれば、測定値の妥当性を検査するプロセス700はステップ710を含み、ここでインノベーションを、それらの値に応じてランク順に並べる。プロセス700は、更に、ステップ720を含み、ここでインノベーションの中から、最大値と次の最大値との間の差、及び最小値と次の最小値との間の差を得る。プロセス700は、更に、ステップ730を含み、ここでこれら2つの差の内大きい方を、閾値と突き合わせて検査する。
【0060】
このようにして、GPS測定値の中にある大きな異常値のいずれをも検出する。適正な閾値は、移動するGPS受信機の動力学(dynamics)の関数である。インノベーションを計算するために位置を前方に伝搬するために速度を用いる場合、動力学による誤差は加速度項によって支配される。期待動力学が1「g」未満であり、高頻度計算が10ヘルツである場合、加速度のインノベーションに対する寄与はせいぜい5センチメートルにしかなり得ない。したがって、動力学が1「g」未満である場合、プロセス700における編集技法を用いて、単一のキャリア−位相の周期ずれを検出するのは容易なはずである。
【0061】
動力学が大きくなるに連れて、プロセス700における編集技法は、大きな閾値を用いる必要があり、キャリア−位相測定値における1つの周期ずれを検出することができない。しかしながら、6台以上の衛星が利用可能であれば、ポストフィックス測定残差は、種々のRAIM技法の1つを用いて検査することができ、1つの周期ずれ誤差でさえも検出し排除することができる。このようなRAIM技法の一例は、所有者が同一の特許出願である、"Method for Receiver Autonomous Integrity Monitoring and Fault Detection and Elimination"(受信機自律保全性監視ならびに障害検出及び解消のための方法)と題する米国特許出願第10/656,956号において見出すことができる。その内容は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。Sm行列を用いて、式(6)によってインノベーションをポストフィックス残差にマッピングすることにより、非常に強力な編集を行うことができる。これは、ポストフィックス残差が総じてセンチメートル・レベル未満であるからである。
【0062】
結論として、本発明は、キャリア−位相測定値の変化を用いて、受信機位置を時間的に前方に、非常に高精度かつ低計算負担で、伝搬することができる。例えば、本プロセスは、受信機が単体モード、ローカル又はワイド・エリア差動モード、あるいはキャリア−位相差動(RTK)モードで動作しているときであっても用いることができる。以上、この高精度、高頻度位置伝搬プロセスからの大きな便益が得られる2つの動作モードについて詳細に説明した。本プロセスは、他の動作モードでも、当業者には明白な多少の修正によって、等しく動作するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】GPS受信機に結合されているコンピュータ・システムを有する衛星ナビゲーション・システムのブロック図である。
【図2】キャリア−位相測定値の連続際を用いるナビゲーション方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態によるナビゲーション方法の一態様を更に詳しく示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態によるナビゲーション方法の別の態様を更に詳しく示すフローチャートである。
【図5】本発明の代替実施形態によるナビゲーション・システムの一態様を更に詳細に示すフローチャートである。
【図6】本発明の代替実施形態によるナビゲーション方法の別の態様を更に詳しく示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にしたがってGPS測定値を編集する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの信号に応じて物体をナビゲートする方法であって、
前記衛星の幾何学的形状に関連する測定感度行列に基づいて、前記物体の位置を解明するために少なくとも1つの行列を決定するステップと、
前記衛星からの信号に応じて前記物体において得られるキャリア−位相測定値の連続変化に基づいて、前記物体の位置の後続の変化を決定するために、前記少なくとも1つの行列を繰り返し用いるステップと
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、該方法は更に、
前記物体の位置変化を判定するためにある時間期間繰り返し用いた後、これを更新するステップ
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、該方法は更に、
前記少なくとも1つの行列の新たな更新を計算するまで、前記キャリア−位相測定値の連続変化に基づいて、前記物体の位置の後続の変化を決定するために、前記更新した少なくとも1つの行列を繰り返し用いるステップ
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項4】
物体をナビゲートするプロセスであって、
前記物体の初期位置を決定する初期化プロセスと、
前記初期化プロセスの後に一連の短期エポックの各々で1回ずつ前記物体の位置更新を決定する第1プロセスであって、隣接する短期エポックの間に得られるキャリア−位相測定値の差に基づいて前記位置更新を決定する、第1プロセスと、
前記初期化プロセスの後に一連の長期エポックの各々で1回ずつ前記物体の位置補正を決定する第2プロセスであって、それぞれの長期エポックにおける所定期間に対応する短期エポックにおいて得られる前記位置更新及びキャリア−位相測定値に基づいて前記位置補正を決定する、第2プロセスと
を備えていることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項4記載のプロセスにおいて、該プロセスは更に、前記位置補正の決定後に得られる位置更新に対して、前記位置補正を適用することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項4記載のプロセスにおいて、前記第2プロセスは更に、長期エポック毎に前記位置補正について解明するために少なくとも1つの行列を決定することを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項6記載のプロセスにおいて、前記少なくとも1つの行列は、前記第2プロセスが次の長期エポックにおいて前記位置補正について解明するために少なくとも1つの他の行列を生成するまで、多数の後続の短期エポックの各々において、前記位置更新を生成するために、前記第1プロセスによって用いられることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項6記載のプロセスにおいて、信頼性のある測定値を得ることに関して、衛星数の変化を考慮するために、前記少なくとも1つの行列を前記第1プロセスによって補正することを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項4記載のプロセスにおいて、前記高頻度プロセスは更に、2回の連続する短期エポックにおいて得られるキャリア−位相測定値の差に基づいて、前記位置更新を決定する前に、近似位置更新を計算するために、前記物体の速度を用いることを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項4記載のプロセスにおいて、前記第2プロセスにおける位置補正を、最小二乗法を用いて決定することを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項4記載のプロセスにおいて、前記第1プロセス及び前記第2プロセスは、リアル・タイム・エクゼキュティブを用いて同時に実行することを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項4記載のプロセスにおいて、前記衛星に関連する電離層、又は対流圏屈折効果に対する補正を含まずに、前記第1プロセスにおいて前記位置補正を決定することを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項4記載のプロセスにおいて、各位置更新は、前記物体の相対位置の更新であり、前記位置補正は、前記物体の相対位置と絶対位置との間のオフセットを表すことを特徴とするプロセス。
【請求項14】
請求項13記載のプロセスにおいて、前記位置補正は、当該位置補正の決定の後に得られるいずれの位置更新を補正するために用いられないことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
請求項13記載のプロセスにおいて、前記位置補正は、前記位置更新を決定するために必要な、前記物体と前記衛星との間の理論的標的距離を掲載するために、前記第1プロセスにより用いられることを特徴とするプロセス。
【請求項16】
請求項13記載のプロセスにおいて、電離層及び対流圏屈折効果に対する補正は、前記位置更新を決定する際に含まれることを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項16記載のプロセスにおいて、電離層屈折効果を除去するために、二重周波数キャリア−位相測定値を用いて、前記位置更新を決定するために用いられる前記キャリア−位相測定値を調節することを特徴とするプロセス。
【請求項18】
請求項13記載のプロセスにおいて、ワイド・エリア又は汎地球測地システムからの補正値を、前記位置更新を決定する際に用いることを特徴とするプロセス。
【請求項19】
プロセッサによって実行されると、該プロセッサに、衛星からの信号に応じて物体をナビゲートするプロセスを実行させるコンピュータ読み取り可能命令を内部に格納してあるコンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、前記コンピュータ命令が、
前記衛星の幾何学的形状に関連する測定感度行列に基づいて、前記物体の位置を解明するために少なくとも1つの行列を決定する命令と、
キャリア−位相測定値の連続変化に基づいて、前記物体の位置の後続の変化を決定するために、前記少なくとも1つの行列を繰り返し用いる命令と、
を備えていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項20】
請求項19記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体において、前記命令は更に、
前記物体の位置変化を判定するためにある時間期間繰り返し用いた後、これを更新する命令
を備えていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項21】
請求項20記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体において、前記命令は更に、
前記少なくとも1つの行列の新たな更新を計算するまで、前記キャリア−位相測定値の連続変化に基づいて、前記物体の位置の後続の変化を決定するために、前記更新した少なくとも1つの行列を繰り返し用いる命令
を備えていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−536510(P2007−536510A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511354(P2007−511354)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/007259
【国際公開番号】WO2005/114250
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(504278123)ナヴコム テクノロジー インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】