説明

キャリアプレートの製造方法

【課題】 高精度の複数のコアピンを必要とする高価な金型の製作を不要とした、小型電子部品を挿入する複数の保持孔を有するキャリアプレートの製造方法を提供する。
【解決手段】 小型電子部品19に電極を形成するためのキャリアプレート1の製造方法であって、平板に所望数の貫通孔2を設けた剛性を有する基板3の上面4及び下面5と貫通孔2とにゴム状弾性体6を一体成形する工程と、ゴム状弾性体6が一体成形された貫通孔2の部分に貫通孔2より小さい保持孔7を切削加工により形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チップコンデンサや抵抗体等の小型電子部品の端部に外部電極を形成する際に用いるキャリアプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサや抵抗体等の小型電子部品を保持するキャリアプレートとしては、ゴム状弾性体に明けた貫通孔にその貫通孔の断面積より僅かに大きな断面積を有する小型電子部品を挿入し、ゴム状弾性体の弾性復元力によって小型電子部品をキャリアプレートに保持するものが広く使用されている。そして、ゴム状弾性体に明ける貫通孔を形成する方法としては、例えば、特許文献1で公開されている。
【0003】
このキャリアプレートでは、図8に示したように、予め剛性を有する硬質プレート30の平面部31に貫通孔32を形成した部材を準備し、この硬質プレート30の貫通孔32の直径よりもやや小さい直径の断面を有するコアピン33を貫通孔32に貫通させた状態で硬質プレート30の上面34と下面35及び貫通孔32内にゴム状弾性体を注入し、加硫させた後にコアピン33を引き抜くことでゴム状弾性体に所望の直径を有する小型電子部品を保持する保持孔(図示せず)を設けたキャリアプレートを製作している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法として、射出成形や圧縮成形によって金型内にゴム状弾性体の材料を注入することが考えられるが、いずれの成形方法においても、複数のコアピン33を備えた一対の金型36,37を用いなければならず、高価な金型が必要となる。
【0005】
また、近年小型電子部品の極小化に伴いコアピン33の直径がより小さいものが要求され、ピン折れやピンの曲がりといった不具合が発生し、そのため補修作業が増え、金型の保守費用も増大化する傾向があった。また、キャリアプレートはゴム状弾性体に形成する貫通孔32の位置がきわめて重要な治具であるが、金型を製作する場合には、一方の金型36にコアピン33を挿入するための下孔38の加工、コアピン33の加工、他方の金型37にコアピン33の先端部が嵌入する嵌合穴39の加工、及びゴム状弾性体の成形加工等の製作誤差が累積するため、高精度を有するキャリアプレートを得ることが極めて困難で高価なものとなっていた。
【0006】
そこで、この欠点を補うものとして、コアピンを使用しないでキャリアプレートのゴム状弾性体に貫通孔を形成する方法が特許文献2で公開されている。
【0007】
特許文献2に記載されている方法によれば、予め硬質プレートの平面部に貫通孔を形成した部材を準備し、この硬質プレートの上面と下面及び貫通孔内にゴム状弾性体を注入し一体成形した後、貫通孔に充填されたゴム状弾性体に表面からレーザビームを照射して小型電子部品を挿入する保持孔を貫通形成するため、高精度を有するコアピンを製作する必要がない。
【0008】
しかしながら、このレーザ加工による方法では、保持孔が深い貫通孔であることから、レーザビームの照射スポット径を極めて小さくしてレーザビームを保持孔の直径に合わせて周回させることで、少しずつゴム状弾性体を焼き切ることになるため、実用上必要とされる1000〜10000個といった数の保持孔をキャリアプレートに開けるには膨大な時間がかかり、かえって高価なものになってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平2−14508号公報
【特許文献2】特開2000−30990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、以上のような問題を解消すべく、高精度の多数のコアピンを必要とする高価な金型の製作を不要とし、また、保持孔を後加工で開ける場合に、すべての保持孔についてその直径に合わせてレーザビームを周回させるような手間をかけることのない、小型電子部品の保持孔を有するキャリアプレートを製作する製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を実現するため、請求項1に記載の発明は、小型電子部品に電極を形成するためのキャリアプレートの製造方法であって、平板に所望数の貫通孔を設けた剛性を有する基板の上面及び下面と前記貫通孔とにゴム状弾性体を一体成形する工程と、前記ゴム状弾性体が一体成形された貫通孔の部分に前記貫通孔より小さい保持孔を切削加工により形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、小型電子部品に電極を形成するためのキャリアプレートの製造方法であって、剛性を有する平板状の基板の上面及び下面にゴム状弾性体を一体成形する工程と、前記ゴム状弾性体と前記基板を貫通する所望数の保持孔を同時切削加工により形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記保持孔は、キャリアプレートの板厚方向の中心部における直径より前記ゴム状弾性体の外表面部における直径の方が大きい段付き孔であって、少なくとも前記段付き孔の小径部分を前記基板を貫通する保持孔と同時切削加工することを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載のいずれか一つの構成に加えて、前記ゴム状弾性体の厚みは、小型電子部品の全長より大きな寸法であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4に記載のいずれか一つの構成に加えて、前記ゴム状弾性体の引き裂き強度(JIS K 6252 クレセント型)が5〜50kN/mのシリコーンゴムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、小型電子部品を保持する保持孔は、基板とゴム状弾性体とを一体化した後で切削加工によって形成するため、基板とゴム状弾性体とを一体化する金型に保持孔用のコアピンを使用する必要がない。そのため、高精度の複数のコアピンの加工とコアピンの金型への組み付け作業をする必要がなく、安価な金型と汎用の多軸ボール盤等による切削加工でキャリアプレートを完成することができるから、結果として安価なキャリアプレートを提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、基板とゴム状弾性体とを同時切削加工して保持孔を形成するため、基板とゴム状弾性体とを一体化する金型に保持孔用のコアピンを使用する必要がないことは勿論、予め基板に孔加工する必要もないので、基板とゴム状弾性体の一体成形金型の構造が簡単なものでよいため安価な金型でよい。また、ゴム状弾性体の表面研磨が必要な場合には、保持孔の同時切削加工を行う加工機に取り付けたままで、ゴム状弾性体の表面の研磨加工が行えるので段取り替えの手間が省ける。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の効果に加えて、ゴム状弾性体の外表面から段付き保持孔の段付き部までの寸法を一定に設定すれば、保持孔への小型電子部品の押し込み量が多少多すぎた場合でも保持孔の段付き部に小型電子部品の端部が当たって正しい位置に位置決めされるので、キャリアプレートへの小型電子部品をセットするための位置決め装置に高精度を要求しなくてよい。そのため、小型電子部品の位置決め装置の購入費や保守費を低く押さえることができ、結果として小型電子部品の製造コストを低く押さえることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の効果に加えて、小型電子部品が硬質な基板側の保持孔に接触することがないから、小型電子部品を傷つけることがないと共に、小型電子部品を弾性的に保持する保持しろを十分に確保できるから少ないゴム状弾性体の使用量でも十分な保持作用を実現できる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の効果に加えて、ゴム状弾性体に十分な引き裂き強度があるため、保持孔に小型電子部品を繰り返し抜き差しした場合であっても保持孔が損傷することがなく保持力が長期に渡って持続されることになる。そのため、耐久性のあるキャリアプレートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面に従って説明する。
[発明の実施の形態1]
【0021】
図1は、この発明の実施の形態1に係るキャリアプレートの一部を破断した斜視図である。
【0022】
この発明に係るキャリアプレート1自体は、小型電子部品の外部電極形成する際に使用する治具として特許文献1や特許文献2等で既に知られているものである。
【0023】
図1に示したように、この発明の実施の形態1に係るキャリアプレート1は、所望数の貫通孔2を設けた剛性を有する硬質な基板3の上面4及び下面5と貫通孔2とにゴム状弾性体6を一体成形し、ゴム状弾性体6で充填されている貫通孔2の中央に上下方向(垂直方向)に貫通させた小型電子部品を弾性的に保持するための保持孔7を有している。
【0024】
基板3の材料としては、アルミニウム合金、炭素鋼、ステンレス、チタン合金、マグネシウム合金、硬質プラスチック等から選ばれるが、加工性や取り扱い性を考慮するとアルミニウム合金が望ましい。基板3は平板の周辺部を残してその中央の上面4と下面5に一段のザグリ加工を施し、ザグリ加工した部位に上下に貫通する貫通孔2を形成している。ゴム状弾性体6は保持孔7で小型電子部品を弾性的に保持できるように、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM、フッ素ゴム等から選ばれるが、加工性や成形性を考慮するとシリコーンゴムが望ましい。
【0025】
次に、この発明の実施の形態1に係るキャリアプレートの製造方法について説明する。
【0026】
図2は、この発明の実施の形態1に係るキャリアプレートを製造する成形金型の要部断面図である。
【0027】
図2に示したように、予め、平板状の剛性を有する硬質の基板3に、外周面から所定の幅の外周リブ8を残して表面4と裏面5のそれぞれの中央部に同一深さのザグリ加工を行い、均一な厚みからなる平板状の芯部11の周りに所定厚さの外周リブ8を有する平板を製作する。次に、芯部11に所望する数と大きさの貫通孔2の孔明け加工を行い、ゴム状弾性体6との一体成形前の材料を得る。
【0028】
基板3の形状及び表面加工、貫通孔2の孔明け加工は、公知のフライス盤、ボール盤、ワイヤーカット機等を使った切削加工や研削加工又はワイヤーカット等により行うことができる。
【0029】
次いで、貫通孔2等の所定の加工が済んだ基板3を圧縮成形機の上金型12と下金型13との間にセットし、上金型12と下金型13とで基板3を挟み込む。
【0030】
次に、上金型12、下金型13と基板3とで構成されるキャビティ内に液状の弾性材料を注入口14から注入し、排出口15から溢れるまでの量がキャビティ内に充填されるようにする。このとき、基板3の上面4側のキャビティに流れ込んだ弾性材料は、貫通孔2を通過して下面5側のキャビティにも流れ込み基板3の上面4、下面5及び貫通孔2のすべてに弾性材料が充填される。実施の形態1に係るキャリアプレート1は、基板3にゴム状弾性材6を一体化させる成形工程では保持孔7を形成することがないので、従来のように保持孔7用のコアピンを必要としない。
【0031】
次に、基板3が上金型12と下金型13とに挟み込まれた状態のまま硬化炉(図示せず)に入れ、弾性材料を加熱硬化させる。弾性材料が硬化したら、基板2を上金型12と下金型13から取り外すことで、ゴム状弾性材6が基板3と一体化された保持孔のないキャリアプレート1が完成する。
【0032】
また、キャリアプレート1のゴム状弾性材6の外表面16,17の平面度の精度を向上させる必要がある場合には、上金型12と下金型13から取り外した後に、研磨加工を行えばよい。
【0033】
なお、基板3とゴム状弾性体6との接着強度が低い場合には、基板3の上面4と下面5に適宜プライマー処理を施すようにすればよい。
【0034】
上記の製造方法では、基板3にゴム状弾性材6を一体化させる方法として圧縮成形について説明したが、これに限らず、射出成形、トランスファ成形等の成形方法を採用してもよい。
【0035】
図3は、ゴム状弾性体が基板と一体化された保持孔のない実施の形態1に係るキャリアプレートを示した要部断面図である。
【0036】
ゴム状弾性体6が基板3と一体化された保持孔7のないキャリアプレート1に保持孔7を形成するには、図3に示したように、基板3に形成した貫通孔2の直径よりも小さい直径を有するドリル18をゴム状弾性体6の上側の外表面16で、かつ、貫通孔2の中央に当たる所定位置に位置決めして、ドリル18を回転させなが下方へ移動させることで、基板3の上面4、貫通孔2、下面に充填されているゴム状弾性体6を切削除去する。
【0037】
ドリル18は市販されている孔明けドリルでよいが、特に樹脂用ドリルを用いた場合には、ゴム状弾性体6への切り込みがよく、ドリル18の送り工程で生じるゴム状弾性体6の引き連れ現象による保持孔7の上下の縁部にバリの発生が抑えられるので好ましい。
【0038】
図4は、ゴム状弾性体に保持孔を形成した実施の形態1に係るキャリアプレートに小型電子部品を差し込んだ状態を示した要部断面図である。
【0039】
図4に示したように、ゴム状弾性体6と基板3とが一体化された保持孔のないキャリアプレート1に、ドリル18を使用して後加工で板厚方向に貫通した保持孔7が形成されると、保持孔7の直径より僅かに大きな差し渡し寸法を有する断面からなる小型電子部品19を、位置決め装置(図示せず)を使用して保持孔7に一定深さだけ挿入することで、後工程の外部電極塗布作業の準備段階である挿入位置決めを行う。外部電極塗布作業では、小型電子部品19が挿入位置決めされたキャリアプレート1を反転して小型電子部品19の突出部が下側になるようにし、電極液が収容された電極液漕に小型電子部品19の先端部をディッピングすることでその先端部に電極液を塗布し、その後乾燥工程を経て小型電子部品19の先端部に電極が形成される。そして、以上の工程を小型電子部品19の両端部について実施することで小型電子部品19の両端部に電極が形成されたものが完成できる。
【0040】
なお、保持孔7の切削加工に当たっては、被加工物であるゴム状弾性体6の物性如何によってもその加工性が左右されるが、発明者らの研究によると、引き裂き強度(JIS K 6252 クレセント型)が5〜50kN/mの場合に真円に近い形状の断面を有する良好な保持孔7が得られることがわかった。引き裂き強度が5kN/m未満であると小型電子部品の繰り返し抜き差し操作によって引き裂かれるといった現象が多発するため実用に耐えられず、引き裂き強度が50kN/mを越えるとドリルの切り込み性が著しく低下し保持孔7の上下の縁部にバリが発生し、小型電子部品19の保持力にバラツキを生じてしまうため実用に耐えられない。
【0041】
保持孔7の切削加工に使用する工作機械はフライス盤、ボール盤、NCマシニングセンタ等が使用できる。切削工具に直径2mmの樹脂用ドリルを使用した場合には、ドリル18の回転数は5000〜60000rpmが好ましく、この加工条件であれば保持孔7一個当たり数秒で加工することが可能のである。また、切削工具を取り付ける回転軸を複数備えた多軸形式の工作機械を使用することで加工時間をより短縮することができる。また、保持孔7の数が多く隣り合う保持孔7同士の間隔が多軸の回転軸のピッチより小さい場合には、
一つ置きの保持孔7の同時加工を二回に分けて行うことで対応できる。
[発明の実施の形態2]
【0042】
図5は、ゴム状弾性体が基板と一体化された保持孔のない実施の形態2に係るキャリアプレートの要部断面図である。図6は、ゴム状弾性体に保持孔を形成した実施の形態2のキャリアプレートに小型電子部品を差し込んだ状態を示した要部断面図である。
【0043】
図5に示した実施の形態2に係るキャリアプレート1は、ゴム状弾性材6を基板3と一体成形する前の基板3には貫通孔2を形成していない点と、基板3に設けるザグリ加工の深さを実施の形態1に係るキャリアプレート1より大きくして基板3の保持孔7を切削加工する板厚を小さくしている点が、実施の形態1に係るキャリアプレート1と異なっている。
【0044】
そのため、実施の形態2に係るキャリアプレート1を製造するには、基板3に貫通孔2がないので、上金型12、下金型13と基板3とで構成されるキャビティが上面4側と下面5側の二つに分断されることになるため、圧縮成形機における液状の弾性材料を注入する工程が実施の形態1とは異なり、基板3の上面側と下面側とで別々に液状の弾性材料を注入することになる。他の工程は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
実施の形態2に係るキャリアプレート1は、基板3に貫通孔2がないので成形時に液状の弾性材料が貫通孔2を充填する必要がない。そのため、直径2mm程度の細い貫通孔2を液状の弾性材料を流すための圧力や時間を考慮する必要がないから、実施の形態1に係るキャリアプレート1よりもさらに成形作業が容易で成形時間も短縮できる。
【0046】
実施の形態2に係るキャリアプレート1には基板3の芯部11に貫通孔2がないためその芯部11の板厚は、基板3の芯部11に貫通孔2を有する実施の形態1に係るキャリアプレート1の芯部11の板厚より薄くすることが可能である。しかし、アルミニウム合金にあっては芯部11の板厚が0.5mm未満であると外部電極形成工程で小型電子部品19をゴム状弾性体6の保持孔7に抜き差しする際の応力に耐えきれず、キャリアプレート1全体に撓みが生じてしまい実用的ではなくなる。また、実施の形態1及び2に係るキャリアプレート1の芯部11の板厚が10mmを越えると基板3の切削屑が大量に発生し、硬質の基板3の芯部11の切削加工に続いて下面5側のゴム状弾性体6を切削する際に、ゴム状弾性体6よりも硬い基板3の切削屑が下面5側のゴム状弾性体6から排出されるときに保持孔7の下側の縁を損傷することがあり、小型電子部品19の保持力にバラツキを生じてしまうため実用に耐えられない。したがって、アルミニウム合金と同等の剛性を有する材料からなる基板3にあっては、芯部11の板厚が0.5〜10mmであることが好ましい。
【0047】
保持孔7は、一般に長さ方向に一様な円形断面をした貫通孔を使用するが、図7に示したように、保持孔7を加工するための保持孔7より小さな下孔(貫通孔)7aを明けた後に、所定の直径を有する止め孔(未貫通孔)7bを形成した形状とすることもできる。このように保持孔7を二重の円筒形状としたものにあっては、ゴム状弾性体6の外表面から段付き部20の水平面までの寸法を一定として、小型電子部品19の先端を段付き部20の水平面に当接させるようにすれば、高精度の位置決め装置を使用しなくとも垂直方向の高い位置決め精度が得られるので、小型電子部品19の外部電極形成工程のコストダウンに寄与できる。
【0048】
なお、水平面を有する段付き部20を加工するには、刃先が水平な回転切削工具を使用すればよい。
【0049】
また、保持孔7を段付き部20を有する段付き孔とすることは、実施の形態2に限らず、実施の形態1のように予め基板3の芯部11に貫通孔2を有するものであっても適用できる。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
以下、この発明の係るキャリアプレートの実施例1について説明する。
【0051】
実施例1は、厚さ10mmのアルミニウム合金の平板から縦150mm、横250mmの平板を切り出して、外周面から10mm幅の外周リブ8を残して表面4と裏面5のそれぞれの中央部に深さ2mmのザグリ加工を行い、結果として厚さ6mmの平板状の芯部11の周りに厚さ10mmの外周リブ8を有するアルミニウム合金の平板を得た。
【0052】
次に、このザグリ加工が施されたアルミニウム合金の平板の芯部11に直径3mmの貫通孔2を、平面から見て短手方向(縦方向)に30列、長手方向(横方向)に60列となるよう、合計1800個形成した。
【0053】
次に、この平板状の芯部11に孔加工を施したアルミニウム合金の基板3の芯部11の上面4と下面5にプライマー(プライマーNo.4、信越化学工業(株)製)を塗布して硬化焼き付けさせた。
【0054】
次に、このプライマー処理を施した基板3を圧縮成形機の上金型12と下金型13との間にセットし、液状シリコーンゴム(KE−1950−60、信越化学工業(株)製)をザグリ加工した上面4と下面5の凹部と芯部11の貫通孔2を充填するように注入し、150℃、20分の条件で加熱硬化させてゴム状弾性体6と基板3との一体成形品である保持孔形成前のキャリアプレート1を得た。
【0055】
次に、保持孔7を形成するため、ドリルマシン(ファナック(株)製)に直径2mmの樹脂用ドリルを回転軸にセットして20000rpmで回転軸を回転させ、ゴム状弾性体6と基板3との一体成形品である保持孔形成前のキャリアプレート1の芯部に設けた貫通孔2の中央に樹脂用ドリルの中心を位置決めして、回転軸を下降させることで貫通孔2と同数の板厚方向に貫通した保持孔7を形成しキャリアプレート1の完成品を得た。
【0056】
この保持孔7を有するキャリアプレート1を使用して、1.6mm×16mmの正方形の断面を有する高さ3.2mmのセラミックコンデンサ(小型電子部品18)を保持孔7に保持させて、ゴム状弾性体6の外表面から露出したセラミックコンデンサの端部に電極液を塗布したところ、1800個すべてのセラミックコンデンサに均一な量の電極が形成された。
[実施例2]
【0057】
以下、この発明の係るキャリアプレートの実施例2について説明する。
【0058】
実施例2は、厚さ10mmのアルミニウム合金の平板から縦150mm、横250mmの平板を切り出して、外周面から10mm幅の外周リブ8を残して表面4と裏面5のそれぞれの中央部に深さ4mmのザグリ加工を行い、結果として厚さ2mmの平板状の芯部11の周りに厚さ10mmの外周リブ8を有するアルミニウム合金の平板を得た。
【0059】
次に、このザグリ加工を施したアルミニウム合金の基板3の芯部11の上面4と下面5にプライマー(プライマーNo.4、信越化学工業(株)製)を塗布して硬化焼き付けさせた。
【0060】
次に、このプライマー処理を施した基板3を圧縮成形機の上金型12と下金型13との間にセットし、予め混錬しシーティングしておいたミラブル型シリコーンゴム(KE−951U、信越化学工業(株)製)100質量部、C−8(信越化学工業(株)製)2質量部をザグリ加工した上面4と下面5の凹部に投入し、180℃、30分の条件でプレス加硫して状弾性体6と基板3との一体成形品である保持孔形成前のキャリアプレート1を得た。
【0061】
次に、保持孔7を形成するため、ドリルマシン(ファナック(株)製)に直径2mmの樹脂用ドリルを回転軸にセットして40000rpmで回転軸を回転させ、ザグリ加工が施されたアルミニウム合金の平板の芯部11に一体化されたゴム状弾性体6の部分に、平面から見て短手方向(縦方向)に30列、長手方向(横方向)に60列の合計1800個の箇所で回転軸を下降させることで、板厚方向に貫通する保持孔7を形成してキャリアプレート1の完成品を得た。
【0062】
この保持孔7を有するキャリアプレート1を使用して、1.6mm×1.6mmの正方形の断面を有する高さ3.2mmのセラミックコンデンサ(小型電子部品18)を保持孔7に保持させて、ゴム状弾性体6の外表面から露出したセラミックコンデンサの端部に電極液を塗布したところ、1800個すべてのセラミックコンデンサに均一な量の電極が形成された。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の実施の形態1に係るキャリアプレートの一部を破断した斜視図である。
【図2】同実施の形態1に係るキャリアプレートを製造する成形金型の要部断面図である。
【図3】ゴム状弾性体が基板と一体化された保持孔のない実施の形態1に係るキャリアプレートを示した要部断面図である。
【図4】ゴム状弾性体に保持孔を形成した実施の形態1に係るキャリアプレートに小型電子部品を差し込んだ状態を示した要部断面図である。
【図5】ゴム状弾性体が基板と一体化された保持孔のない実施の形態2に係るキャリアプレートの要部断面図である。
【図6】ゴム状弾性体に保持孔を形成した実施の形態2のキャリアプレートに小型電子部品を差し込んだ状態を示した要部断面図である。
【図7】実施の形態2の保持孔の別の態様を示した要部拡大断面図である。
【図8】従来のキャリアプレートを製造するコアピンを有する成形金型の要部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 キャリアプレート
2 貫通孔
3 基板
4 上面
5 下面
6 ゴム状弾性体
7 保持孔
7a 下孔
7b 止め孔
9 外周リブ
11 芯部
12 上金型
13 下金型
16、17 外表面
18 ドリル
19 小型電子部品
20 段付き部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電子部品に電極を形成するためのキャリアプレートの製造方法であって、平板に所望数の貫通孔を設けた剛性を有する基板の上面及び下面と前記貫通孔とにゴム状弾性体を一体成形する工程と、前記ゴム状弾性体が一体成形された貫通孔の部分に前記貫通孔より小さい保持孔を切削加工により形成する工程と、を有することを特徴とするキャリアプレートの製造方法。
【請求項2】
小型電子部品に電極を形成するためのキャリアプレートであって、剛性を有する平板状の基板の上面及び下面にゴム状弾性体を一体成形する工程と、前記ゴム状弾性体と前記基板を貫通する所望数の保持孔を同時切削加工により形成する工程と、を有することを特徴とするキャリアプレートの製造方法。
【請求項3】
前記保持孔は、キャリアプレートの板厚方向の中心部における直径より前記ゴム状弾性体の外表面部における直径の方が大きい段付き孔であって、少なくとも前記段付き孔の小径部分を前記基板を貫通する保持孔と同時切削加工することを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリアプレートの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム状弾性体の厚みは、小型電子部品の全長より大きな寸法であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のキャリアプレートの製造方法。
【請求項5】
前記ゴム状弾性体の引き裂き強度(JIS K 6252 クレセント型)が5〜50kN/mのシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のキャリアプレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−344826(P2006−344826A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169958(P2005−169958)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】