説明

キーシート

【課題】機器の筐体に形成した一つの操作開口から露出する複数のキートップと、キートップを載置するゴム状弾性体でなるベースシートと、ベースシートの歪みを規制する金属薄板製の補強部材と、を備えるキートップ相互間が狭く配置されるキーシートについて、見栄えが良くデザイン性に優れたキーシートを得ること。
【解決手段】金属薄板製の補強部材13におけるキートップ側表面13aの少なくとも外部から視認可能な部位に金属板被覆層17を設けた。そのため、隣接するキートップ14,14相互の間隙や、キートップ14と機器1の筐体1aとの間隙から金属薄板製の補強部材13の金属色が見えてしまうことがないキーシート11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置など各種機器の操作部に用いる押釦スイッチ用のキーシートに関し、特に機器の筐体に形成した一つの操作開口から複数のキートップを露出させて使用する場合に好適なキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの通信機器や民生機器は、装置自体や操作部の小型化の要請の他、優れたデザインへの要求から、図9に示す携帯電話機1のように、筐体1aに形成した1つの操作開口1bから、複数のキートップ2が0.15mm〜0.2mm程度の狭間配置で露出する押釦スイッチ用のキーシート3が知られている。このキーシート3は、図10で示すように、ゴム状弾性体でなるベースシート4に、複数のキートップ2を固着しているが、ベースシートの外縁側部分4aを全周にわたって圧接して保持し、圧接部分の内側では拘束されないため、キーシート3が撓まないよう硬質樹脂や硬質フィルムなどの補強部材5でベースシート4を補強している。こうしたキーシート3については、例えば特開2004−319396号公報(特許文献1)や特開2005−190849号公報(特許文献2)に記載されている。
【特許文献1】特開2004−319396号公報
【特許文献1】特開2005−190849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各種機器のさらなる薄型化の要請から、押釦スイッチ用のキーシートについても薄型化が求められ、キーシートを構成するキートップ、ベースシート、補強部材に関し、これまで以上の薄型化が図られている。しかしながら、補強部材については、硬質フィルムや硬質樹脂を用いる限りでは、これまで以上の薄型化は困難である。そのため、硬質フィルムや硬質樹脂に代えて、同じ強度であればさらなる薄型化が可能な金属薄板を用いることが検討されている。しかしながら、キートップも薄型化してくると、補強部材とキートップの間の高さも低くなってくるため、キートップどうしの隙間から見える地の部分が目立つようになる。そのため、金属薄板を用いるとキートップとは別の金属薄板の金属色が視認され、見栄えの良くないキーシートとなる。
【0004】
そこで、本発明は、キートップ相互間が狭く配置されるとともに、特にキーシートを構成するキートップ、ベースシート、補強部材の何れもが薄く形成されるキーシートにおいて、見栄えが良くデザイン性に優れたキーシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく本発明は、機器の筐体に形成した一つの操作開口から露出する複数のキートップと、キートップを載置するゴム状弾性体でなるベースシートと、ベースシートの歪みを規制する金属薄板製の補強部材と、を備えるキーシートについて、金属薄板製の補強部材におけるキートップ側表面の少なくとも外部から視認可能な部位に金属板被覆層を設けることを特徴とするキーシートを提供する。
【0006】
金属薄板製の補強部材を用いたため、樹脂製フィルムや樹脂製薄板を用いた場合に比べて補強部材の厚みを薄くすることができる。また、隣接するキートップ相互の間隙や、キートップと機器の筐体との間隙から金属薄板製の補強部材の表面が見えてしまうが、この補強部材におけるキートップ側表面の少なくとも外部から視認可能な部位に金属板被覆層を設けたため、該補強部材の金属色が見えてしまうことがない。そのため、見栄えの良いキーシートとすることができる。
【0007】
金属板被覆層については、キートップ表面と同系色とすることができる。金属板被覆層とキートップ表面が同系色であれば、隣接するキートップ相互の間隙や、キートップと機器の筐体との間隙が目立たず、それらの隙間が狭く感じられるとともに、キートップ全体が一体的に感じられ、見栄えの良いキーシートとすることができる。
【0008】
金属薄板製の補強部材の厚みは50μm〜2000μmとすることができる。金属薄板製の補強部材の厚みが、50μm〜2000μmであれば、キーシートを機器に搭載した際のキーシートの歪みや撓みを防止することができ、歪みや撓みに起因する問題、すなわち操作不良、押圧ストローク量の相違による操作感の悪化、キートップ相互の潜り込みなどを防ぐことができる。また、キーシート全体の厚みを薄くすることができる。
【0009】
さらに、機器の内部に設けた照光源の発光でキートップが照光する照光式キーシートであって、金属薄板製の補強部材の底面における照光源と対向する位置に、光吸収色でなる光吸収層を設けることができる。金属薄板製の補強部材の底面における、機器に設けた照光源と対向する位置に光吸収層を設けたため、LEDなどの照光源から金属薄板製の補強部材に直接的に当たる光が吸収され、照光源の周りのキートップが明るくなりすぎる照光むらの発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキーシートによれば、キートップ、ベースシート、金属薄板製の補強部材の厚みを薄くすることでキーシート全体のさらなる薄型化を可能とし、かつ、キートップ相互の間隙が目立たず見栄えの良い、デザイン性に優れたキーシートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、「機器」として携帯電話機に適用する押釦スイッチ用のキーシートについて説明する。また、以下の説明において、単に「補強部材」という場合は特にことわりのない限り金属薄板製の補強部材を言うものとする。
【0012】
第1実施形態〔図1〜図4〕; 第1実施形態によるキーシート11を、図1の平面図、図2の底面図、そして図3、図4の断面図で示す。これらの図で示すように、キーシート11は、ゴム状弾性体でなるベースシート12の上に金属薄板製の補強部材13を有し、さらにその上にキートップ14が積層した層構成をなしている。
【0013】
本実施形態におけるベースシート12では、その上面12a側で補強部材13と固着している。すなわち、ベースシート12の基台部12cに、補強部材13の貫通孔15が嵌りこみ、ベースシート12と補強部材13が一体化している。また、底面12b側に、押し子12dと、基板(図示せず)に載置される厚肉部12eが設けられている。そして図2や図4で示すように、この厚肉部12eには照光源となるLED(図示せず)などが入り込む凹部12fが設けられている。
【0014】
キートップ14は、接着剤16を介して基台部12cと固着している。また、補強部材13は、その上面13aに、キートップ14の上面14aと同系色の金属板被覆層17が設けられている。さらに、補強部材13の底面13bには、LEDに対向する部位には光吸収層18が設けられている。
【0015】
ベースシート12をなすゴム状弾性体としては、反発弾性が良く柔軟性のある、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性エラストマーを使用できる。また、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系などの熱可塑性エラストマーも使用できる。これらのうち、シリコーンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーは、反発弾性が優れていることに加え、高い耐久性をもつ点で好ましい。
【0016】
補強部材13は、板厚の薄さが要求されることから、薄くても剛性を有する金属薄板が用いられる。より具体的には、ステンレス、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、ニッケル、スズなどの金属薄板を用いることができるが、薄板状に成形が容易なステンレス、アルミニウム、金、銅などを用いることが好ましい。補強部材13の厚みは50μm〜2000μmであることが好ましい。50μm未満では剛性が弱くキーシート11の歪みを抑えることが困難であり、2000μmを超えると、キーシート全体が厚くなりすぎ現実的ではない。補強部材13の端には、アース部13cが設けられており、静電気による誤入力を防止し、防汚化を図ることができる。
【0017】
補強部材13の上面13aに設ける金属板被覆層18は、補強部材13を保護し、また、補強部材13を被覆してその金属色を見せないようにするものである。打ち抜き加工やレーザー加工によって貫通孔15を形成した補強部材13に対し、所望の色調を有する液に浸漬するディッピング方法や、スクリーン印刷、タンポ印刷、転写印刷などの印刷方法、スプレーコート法などで金属板被覆層18を設けることができる。金属板被覆層18の色は、キートップ14の表面と同系色とすれば、キートップ14,14どうしの隙間から金属色を見えなくするだけでなく、キートップ14の境界が強調されずに狭く感じさせるキーシート11とすることができる。
【0018】
また、補強部材13の底面13bに設ける光吸収層22は、黒色などの光吸収色を有する薄層であり、機器1の内部にある照光源が発光しキートップ14を照光するいわゆる照光式のキートップ14とする場合に、照光源からの直接光を吸収し、むらのない均一な照光を可能とする。すなわち、光吸収層22が無ければ、照光源からの光が補強部材13に当たり反射、散乱される結果、照光源近くのキートップ14が他のキートップ14に比べて明るくなりすぎてしまう。これに対し、光吸収層22があるため、照光源からの直接光が光吸収層22に当たって吸収され、他の部分は光の吸収が少ないことから全体が均一に照光されるのである。よって、キートップ14の裏側が光る裏面照光の場合に好適である。
【0019】
キートップ14は、文字や数字、記号、図形などを表す表示部14cを有し、指での押圧操作が実際になされる部分である。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの硬質樹脂や、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマーなどのゴム状弾性体を用いて形成される。キーシート11全体の薄型化の要請から、その厚みが薄いことが要求され、好ましくは0.5mm〜2mm、より好ましくは1mm前後の厚みとしている。照光式キーシートとして用いられる場合には、ポリカーボネートなどの透明な素材が用いられる。また、抜き文字状に表面装飾を施すことにより、文字部分を照光させることができる。
【0020】
以上のようなキーシート11を製造するには、まず、補強部材13を所定の形状に形成し、ディッピングなどにより金属板被覆層21を設ける。次に、熱硬化性エラストマーを選択した場合には、その熱硬化性エラストマー成形用の成形金型キャビティ内に、また、熱可塑性エラストマーを選択した場合には、その熱可塑性エラストマーの射出成形金型のキャビティ内に、この補強部材13を移載する。その後、ベースシート12となるゴム状弾性体を注入し、型成形を行う。こうしてベースシート12と補強部材13とを一体成形する。最後に、ベースシートの基台部12cとキートップ14の底面とを位置合わせして接着剤16で固着する。こうしてキーシート11を得る。以上の製造方法において、それぞれ別個に成形しておいたベースシート12と、補強部材13とを接着剤(図示せず)によって固着することも可能である。
【0021】
キーシート11は、キートップ14が薄く形成されているが、金属板被覆層21を有する補強部材13を補強部材として用いており、キートップ14,14どうしの隙間から金属色が視認されることのない見栄えが良いキーシート11である。また、この補強部材13の底面13bには光吸収層22を有しており特定箇所での照光輝度のむらがなく、均一照光可能なキーシート11である。
【0022】
第2実施形態〔図5、図6〕; 第2実施形態のキーシート21は第1実施形態の変形例である。図5及び図6に断面図を示すが、これらの図で示すように、金属薄板製の補強部材23をベースシート22の底面22b側に設けたところが第1実施形態と異なる点である。補強部材23の上面23aに金属板被覆層27が、底面13bに光吸収層28が設けられている点は第1実施形態と同じである。
【0023】
また、キーシート21は、照光式のキーシート21として用いられるが、第1実施形態で示すキーシート11と異なり、図6で示すように、ベースシート22には照光源が入り込む凹部が設けられていない。すなわち、キーシート21は、機器1に搭載した場合に、ベースシート22の下面22bよりも照光源が下方に配置される構成で用いられるものである。本実施形態のキーシート21も第1実施形態で示したキーシート11と同様の材料を用い、同様の方法にて製造することができる。
【0024】
キーシート21は、キートップ24が薄く形成されているが、金属板被覆層27を有する補強部材23を補強部材として用いており、キートップ24,24どうしの隙間から金属色が視認されることのない見栄えが良いキーシート21である。また、補強部材23の底面23bには光吸収層28を有しており特定箇所での照光輝度のむらがなく、均一照光可能なキーシート21である。
【0025】
第3実施形態〔図7、図8〕; 第3実施形態のキーシート31を図7、図8の断面図で示す。本実施形態のキーシート31は、ベースシート32に形成した基台部32cを仕切るように、金属薄板製の補強部材33がベースシート32の底面32bに固着されている。そして、補強部材33の上面33aには、金属板被覆層37が設けられている。本実施形態のキーシート31にも第1実施形態のキーシート11で用いた材料を用いることができる。
【0026】
キーシート31の製造についても第1実施形態と同様に行うことができるが、補強部材33の貫通孔35にベースシート32が嵌り込まないので、接着剤や接着テープなどでベースシート32と補強部材33を固着する方が容易である。
【0027】
実施施形態の変更例; 以上の実施形態では、携帯電話機1に使用するキーシート11,21,31を例示したが、それ以外の機器、例えばPDAやリモートコントローラなどにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態によるキーシートの外観平面図。
【図2】図1のキーシートの底面図。
【図3】図1のキーシートのSB−SB線断面図。
【図4】図1のキーシートのSC−SC断面図。
【図5】第2実施形態によるキーシートの図3相当の断面図。
【図6】図5のキーシートの図4相当の断面図。
【図7】第3実施形態によるキーシートの図3相当の断面図。
【図8】図7のキーシートの図4相当の断面図。
【図9】携帯電話機の外観斜視図。
【図10】図9のSA−SA線断面に相当する従来のキーシートの断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 携帯電話機(機器)
1a 筐体
1b 操作開口
2 キートップ
3 キーシート
4 ベースシート
4a 外縁側部分
5 補強部材
11,21,31 キーシート
12,22,32 ベースシート
12a,22a,32a (ベースシートの)上面(表面)
12b,22b,32b (ベースシートの)底面
12c,22c,32c 基台部
12d,22d,32d 押し子
12e,22e,32e 厚肉部
12f,22f,32f 凹部
13,23,33 金属薄板製の補強部材
13a,23a,33a (金属薄板製の補強部材の)上面(表面)
13b,23b,33b (金属薄板製の補強部材の)底面
13c アース部
14,24,34 キートップ
14a,24a,34a (キートップの)上面(表面)
14b,24b,34b (キートップの)底面
14c 表示部
15,25,35 貫通孔
16,26 接着剤
17,27,37 金属板被覆層
18,28 光吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の筐体に形成した一つの操作開口から露出する複数のキートップと、キートップを載置するゴム状弾性体でなるベースシートと、ベースシートの歪みを規制する金属薄板製の補強部材と、を備えるキーシートにおいて、
金属薄板製の補強部材におけるキートップ側表面の少なくとも外部から視認可能な部位に金属板被覆層を設けることを特徴とするキーシート。
【請求項2】
金属板被覆層とキートップ表面が同系色である請求項1記載のキーシート。
【請求項3】
金属薄板製の補強部材の厚みが、50μm〜2000μmである請求項1または請求項2記載のキーシート。
【請求項4】
機器の内部に設けた照光源の発光でキートップが照光する照光式キーシートであって、金属薄板製の補強部材の底面における照光源と対向する位置に、光吸収色でなる光吸収層を設ける請求項1〜請求項3何れか1項記載のキーシート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−173184(P2007−173184A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373124(P2005−373124)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】