説明

キーシート

【課題】ベースシートの表面上に常温で液状である樹脂組成物からキートップを成形しても、ベースシートの反りを抑制し、良好な耐薬品性を示すキーシートを提供する。
【解決手段】キートップ13は、ベースシート12の表面に形成され、ベースシート12の反りを抑制するコア部14と、コア部14の操作面側の表面14aに形成され、コア部よりも硬質なカバー部15と、により構成される。そして、コア部をなす第1硬化体の動的貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満であり、カバー部をなす第2硬化体の動的貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満であるため、キートップ13成形後のベースシート12の反りを抑制しつつ、キートップ13の耐薬品性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末機器、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、AV機器、デジタルカメラなどの撮像機器、車載電装機器、ゲーム機器、リモコン、キーボードなど、各種電子機器の操作部に用いられるキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末機器、撮像機器、車載電装機器などの操作部には、押釦(キートップ)を押圧操作して入力するキーシートが用いられている。最近では機器の薄型化への要求の高まりとともにキーシートについても薄型化が求められることが多くなっている。薄型化の要求に応えるべく、平坦な樹脂フィルムでなるベースシート上に突出するキートップを形成するキーシートの構成が増えてきている。このような構成のキーシートは、特開昭61−54258号公報(特許文献1)や特開平2−24128号公報(特許文献2)に開示されているように以前から提案されていたものであるが、薄型化に適しており、また、キートップが視覚的及び触覚的にも明確に認識される構成である点、比較的容易に製造できる点から近年でも多く採用されている。
【0003】
上記キーシートは、次のステップを経て製造される。まず、凹部が形成された型を用い、その凹部内に常温で液状である紫外線硬化型樹脂等の樹脂組成物を充填する。次にその凹部を覆うように型上にベースシートを配置した後、樹脂組成物を硬化させる。こうしたステップを経ることで、ベースシート上に一体となったキートップが形成されたキーシートが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−54258号公報
【特許文献2】特開平2−24128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、型の凹部内に紫外線硬化型樹脂等の樹脂組成物を充填し、その上にベースシートを配置した後、樹脂組成物を硬化することでベースシート上に一体成形したキートップを有するキーシートを製造すると、キートップの成形後にベースシートが反ってしまうという問題が生じる。また、キートップを成形した後、ベースシートに文字等の印刷を行うための前処理としての熱処理工程においてもベースシートが反ってしまうという問題が生じる。これらの問題はキーシートの薄型化の要求に応えるべく、ベースシートも薄いものを用いる必要があるために発生してきている。また、こうしたベースシートの反りは、樹脂組成物の成形の際に生ずる硬化収縮や成形型内で発生する応力が原因と考えられる。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、以下の課題が明らかになった。すなわち、ベースシートの反りの問題を克服しようとするとキートップの耐薬品性が悪くなるという問題が生じる。逆に、耐薬品性を向上させる樹脂組成物を選定すると、ベースシートの反りの問題が発生するという関係にあることが分かった。なお、ここでいう耐薬品性とは、キーシートが搭載される機器を使用する日常生活において、触れられるおそれのある薬品に対する耐性をいい、特に、日焼け止めクリームやハンドクリームに含まれることの多いベンジルアルコールやひまし油などに対する耐性をいう。
【0007】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、ベースシートの表面上に常温で液状である樹脂組成物の硬化体でなるキートップを成形することによって製造するキーシートについて、上記のように謂わばトレードオフの関係にあるベースシートの反りとキートップの耐薬品性の課題を両立するキーシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
すなわち、一枚片でなるベースシートと、該ベースシートの表面に突出して成形され、常温で液状である樹脂組成物の硬化体からなるキートップと、を備え、以下の構成を有するキーシートを提供する。
前記樹脂組成物は第1組成物と第2組成物とからなり、前記硬化体は第1組成物による第1硬化体と第2組成物による第2硬化体とを有する。そして、前記キートップは、第1硬化体がベースシートの表面上に形成され、ベースシートの反りを抑制するコア部と、第2硬化体がコア部の操作面側の表面に形成され、コア部よりも硬質であるカバー部と、からなる。
【0009】
上記構成のキーシートについて、キートップは、第1硬化体がベースシートの表面に形成され、ベースシートの反りを抑制するコア部と、第2硬化体がコア部の操作面側の表面に形成され、コア部よりも硬質なカバー部と、からなるため、キートップ成形後のベースシートの反りを抑制しつつ、キートップの耐薬品性、すなわち、ベンジルアルコールやひまし油に対する耐性を向上させることができる。なお、コア部の機能である「ベースシートの反りを抑制する」とは、コア部をなす第1組成物による第1硬化体を成形した際にベースシートが殆ど反らないことを意味し、完全に反らないことまでは要しない。
【0010】
本発明では、第1硬化体の動的貯蔵弾性率は、第2硬化体の動的貯蔵弾性率よりも小さいことを特徴とする。第1硬化体の動的貯蔵弾性率は、第2硬化体の動的貯蔵弾性率よりも小さいため、ベースシートの反りを抑制するコア部と、コア部よりも硬質でキートップの耐薬品性を向上するカバー部とを形成することができる。
【0011】
より具体的には、第1硬化体はその100℃・10Hz下の動的貯蔵弾性率が、2.0×10〜1.0×10Paであり、第2硬化体はその100℃、10Hz下の動的貯蔵弾性率が1.0×10〜9.5×10Paであることで、キートップを成形した後のベースシートの反りを抑制しつつ、キートップの耐薬品性を良好にすることができる。
【0012】
本発明では、第1組成物及び第2組成物がともに紫外線硬化型樹脂組成物であることを特徴とする。第1組成物及び第2組成物がともに紫外線硬化型樹脂組成物であるため、同一の紫外線照射装置により両組成物を硬化させることができる。
【0013】
また本発明は、コア部の厚さは、カバー部の厚さよりも厚いことを特徴とする。コア部の厚さがカバー部の厚さよりも厚いため、キートップの基部がコア部となり、ベースシートの反りを抑制し易くなり、また、カバー部の硬さから起因する脆さの影響を小さくできる。よって、繰り返しの押圧操作に対するキートップの割れ難さ、所謂打鍵耐久性を向上させることができる。
【0014】
さらに本発明は、キートップの側面に、ベースシートに固着して外方へ突出する薄肉伸長部を備えることができる。薄肉伸長部は、後述する鍔状部やキートップどうしを繋ぐキートップ連接部として構成することができる。こうした薄肉伸長部によりベースシートとの固着面積を増大させることができ、ベースシートとの固着力を高めることができる。
【0015】
前記薄肉伸長部については、第1硬化体によりコア部と一体に形成することができる。薄肉伸長部が第1硬化体によりコア部と一体に形成され、薄肉伸長部には第2硬化体が存在しないこととなるため、繰り返しの押圧操作に対しても薄肉伸長部を割れ難くすることができる。
【0016】
また、前記薄肉伸長部については、第1硬化体と第2硬化体との積層膜によりキートップと一体に形成することができる。薄肉伸長部が第1硬化体と第2硬化体との積層膜によりキートップと一体に形成されるため、コア部(第1硬化体)とカバー部(第2硬化体)とを同様の生産設備を用いた工程と方法で製造することができ、生産性を高めることができる。
【0017】
薄肉伸長部を設けたキートップを備えるキーシートについては、薄肉伸長部を鍔状に突出した鍔状部とすることができる。このようにすれば、キートップを押圧操作した際に、薄肉伸長部を変形させずにベースシートのみ撓ませることができ、薄肉伸長部を設けてもキーシートの押圧荷重を上昇させ難くすることができる。
【0018】
薄肉伸長部を設けたキートップを備えるキーシートについては、キートップを複数備え、薄肉伸長部が隣接したキートップどうしを繋ぐキートップ連接部として形成することができる。このようにすれば、キートップの成形型におけるキャビティ内に対する樹脂組成物の充填量を増やして、キャビティから溢れ出した樹脂組成物によって薄肉伸長部を形成することができる。よって、キャビティへの樹脂組成物の充填量を高精度に制御する必要性をなくすことができ、さらに生産し易いキーシートとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一枚片でなるベースシートと、該ベースシートの表面上に常温で液状である樹脂組成物を成形し、該樹脂組成物の硬化体からなるキートップと、を備えるキーシートについて、キートップ成形後のベースシートの反りを抑制しつつ、キートップの耐薬品性、すなわち、ベンジルアルコールやひまし油に対する耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のキーシートを示す平面図。
【図2】図1のSA−SA線断面図。
【図3】第1実施形態のキーシートにおける製造方法であって、キートップの成形型に凹設されたキャビティの内壁底面に第2組成物を塗布した際の説明図。
【図4】第1実施形態のキーシートにおける製造方法であって、第2組成物が塗布されたキャビティ内に第1組成物を充填した際の説明図。
【図5】第1実施形態のキーシートにおける製造方法であって、第1組成物及び第2組成物にベースシート側から紫外線を照射する際の説明図。
【図6】第1実施形態の第1変形例のキーシートを示す図2相当の断面図。
【図7】第2実施形態のキーシートを示す平面図。
【図8】図7のSB−SB線断面図。
【図9】第2実施形態の第1変形例のキーシートを示す図8相当の断面図。
【図10】第2実施形態の第2変形例のキーシートを示す図8相当の断面図。
【図11】第3実施形態のキーシートを示す図2相当の断面図。
【図12】第3実施形態のキーシートにおける製造方法であって、コア部の成形型に凹設されたキャビティ内に第1組成物を充填した際の説明図。
【図13】第3実施形態のキーシートにおける製造方法であって、成形型上にベースシートを配置して、ベースシート側から紫外線を照射して、第1組成物による第1硬化体を成形する際の説明図。
【図14】第3実施形態のキーシートにおける製造方法であって、カバー部の成形型に凹設されたキャビティ内に第2組成物を充填し、第1硬化体が一体成形されたベースシートを該成形型上に配置する際の説明図。
【図15】第3実施形態のキーシートにおける製造方法であって、第1硬化体が一体成形されたベースシートをカバー部の成形型上に配置して、ベースシート側から紫外線を照射する際の説明図。
【図16】第3実施形態の第1変形例のキーシートを示す図11相当の断面図。
【図17】第3実施形態の第2変形例のキーシートを示す図11相当の断面図。
【図18】第4実施形態のキーシートを示す平面図。
【図19】図18のSC−SC線断面図。
【図20】第4実施形態のキーシートを携帯通信端末機に取り付けた際の状態を示す平面図。
【図21】図20のSD−SD線断面図。
【図22】第4実施形態の第1変形例のキーシートを示す図19相当の断面図。
【図23】第4実施形態の第2変形例のキーシートを示す図19相当の断面図。
【図24】実施例で用いた樹脂組成物の硬化体の周波数10Hzにおける動的貯蔵弾性率と温度との関係を示すグラフ。
【図25】実施例におけるベースシートの反り高さの測定方法を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明について図面を参照してさらに詳しく説明する。なお、各実施形態で共通する構成については同一の符号を付して重複説明を省略し、さらに共通する材質、作用、効果、製造方法などについても重複説明を省略する。
【0022】
〔第1実施形態〕
第1実施形態のキーシート11とその製造方法を図1〜図5に示す。図1はキーシート11の平面図であり、図2はキーシート11のSA−SA線断面図を示す。図3〜図5はキーシート11の製造方法を示す説明図である。
本実施形態のキーシート11は、ベースシート12とキートップ13とを備えている。そして、キートップ13は、ベースシート12の表面12a上に形成されたコア部14と、コア部14の操作面側の表面14aに形成されたカバー部15とから構成されている。
【0023】
ベースシート12はキーシート11の基材であり、平面視で矩形状に形成されている。このベースシート12は、キーシート11を押圧操作した際に撓み変形して、キーシート11の裏面側に備えられる接点スイッチを押圧できる程度に可撓性を有している。このようなベースシート12は平坦な一枚片でなり、その厚さとしては、キーシート11の薄型化の要求から50μm〜300μmが好ましい。ベースシート12の材質は、廉価で汎用性のある合成樹脂製のフィルムが好適である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどや、それらをアロイ化又はブレンド化したフィルムを用いることができる。また、合成樹脂製のフィルム以外には、織布、不織布などが挙げられる。
【0024】
また、ベースシート12の表面又は裏面には、文字、数字及び記号等の表示部(図1における“ON”の文字)やその背景部といった加飾層が形成されている(断面図における加飾層の図示は省略する、以下同じ。)。この加飾層は印刷や塗装、転写などの周知技術の手法により設けることができる。
【0025】
キートップ13はキーシート11の「押圧操作部」となる部材であり、ベースシート12の操作面側に固着している。キートップ13の材質は、加飾層の視認性を高めるべく透明なものが好ましく、ポリマー、オリゴマー、モノマー、重合開始剤、添加剤などが含まれる常温で液状の反応硬化型の樹脂組成物(以下、「液状硬化型樹脂」という。)を使用することができる。液状硬化型樹脂の反応形態には、活性エネルギー線硬化型や熱硬化型を使用することができる。なかでも、生産性やコストの観点から、活性エネルギー線硬化型が好ましい。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線などが挙げられるが、安価な装置で硬化工程も簡単な紫外線を用いることが好ましく、液状硬化型樹脂には紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系樹脂が挙げられる。
【0026】
このキートップ13は、ベースシート12の操作面側の表面12a上に固着されるコア部14と、そのコア部14の操作面側の表面14aに固着されるカバー部15とを備えて構成されている。コア部14及びカバー部15は、ともに液状硬化型樹脂の硬化体から形成されるが、同一材料ではなく、異種材料により形成される。
【0027】
コア部14は、キートップ13の基部となる部材であり、キートップ13を成形した後のベースシート12の反りを抑制するための部材である。カバー部15はコア部14の耐薬品性を向上させるための部材である。キートップ13がコア部14のみで構成される場合、ベースシート12の反りは抑制されるが、耐薬品性に劣る。一方、キートップ13がカバー部15のみで構成されると、キートップ13の成形後にベースシート12が過度に反ってしまう。本発明では、キートップ13をコア部14とカバー部15とで構成したため、キートップ13の成形後にベースシート12が反ることを抑制しつつ、キートップ13の耐薬品性を向上させることができる。
【0028】
コア部14をなす液状硬化型樹脂(以下、「第1組成物」という。)の硬化体(以下、「第1硬化体」という。)16は、カバー部15をなす液状硬化型樹脂(以下、「第2組成物」という。)の硬化体(以下、「第2硬化体」という。)17よりも軟質である。換言すれば、第2硬化体17は第1硬化体16よりも硬質である。この硬質である性質は、例えば、動的貯蔵弾性率(以下、「E’」と表記する。)によって表現される。すなわち、コア部14をなす第1硬化体16のE’は、カバー部15をなす第2硬化体17のE’よりも小さい。
【0029】
具体的には、第1硬化体16の温度100℃、周波数10Hz下のE’が、10(Pa)オーダーの値、すなわち、1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満の範囲内であることが好ましい。一方、第2硬化体17の100℃、10Hz下のE’が10〜10(Pa)オーダーの値、すなわち、1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲内、より好ましくは、10又は10(Pa)オーダーの値、すなわち、1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲内である。さらに好ましくは、9.0×10Pa以上2.0×10Pa未満の範囲内である。
【0030】
ここで100℃下におけるE’を指標として用いる理由を説明する。一般に、100℃であると液状硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)における硬化体のガラス転移点(Tg)を超える温度となる。その温度では、液状硬化型樹脂の構造に由来する分子間力や水素結合の影響がほとんどなくなるため、その状態下のE’は、液状硬化型樹脂の分子構造における架橋点の数量に影響するものと考えられる。そして、一般に架橋点が多い程、換言すれば架橋密度が高い程、耐薬品性や耐傷付性が増す傾向にある。そのため、液状硬化型樹脂の種類によらず、Tgを超える温度である100℃下のE’を指標として用いている。
【0031】
コア部14をなす第1硬化体16の前記E’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満の範囲内にあるため、第1組成物から第1硬化体16が形成される際の硬化収縮や成形型内の内部応力が比較的小さいものと考えられ、コア部14の成形後におけるベースシート12の反りが抑制される。その反面、コア部14をなす第1硬化体16のみでキートップ13を構成すると、耐薬品性や耐傷付性に劣る。しかしながら、コア部14の少なくとも操作面側の表面14aにカバー部15を設けている。
【0032】
このカバー部15をなす第2硬化体17の前記E’が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲にあるため、コア部14の耐薬品性や耐傷付性を向上させることができる。よって、ベースシート12の反りを抑制しつつ、キートップ13の耐薬品性や耐傷付性を満たすことができる。
【0033】
このE’の値が高いほど架橋密度が高いと考えられる。架橋密度が高いと親和性の高い薬品が侵入しにくくなると考えられ、ベンジルアルコールやひまし油などに対する耐性が強まる。ベンジルアルコールに対する耐性としては、例えば、ベンジルアルコールに対する膨潤率で表される。この膨潤率は、(浸漬後の重量−浸漬前の重量)×100/(浸漬前の重量)から計算される値をいう。
【0034】
第2硬化体17は、そのE’が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲にあるため、ベンジルアルコールに対する膨潤率が0〜50%程度となり、キートップ13の耐薬品性を向上させることができる。耐薬品性や耐傷付性をさらに向上させる観点から、第2硬化体17の前記E’は、より好ましくは、1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲内、さらに好ましくは、9.0×10〜2.0×10Paの範囲内である。第2硬化体17の前記E’が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲内であれば、前記膨潤率を0〜10%程度とすることができ、9.0×10Pa以上2.0×10Pa未満の範囲内であれば、前記膨潤率を0〜4%程度とすることができるためである。
【0035】
キートップ13は透光性であり、平面視で矩形状に形成されている。キーシート11は単キー構造であり、キートップ13の厚さは、薄型化の実現と、確実に硬化した樹脂組成物の硬化体で形成されることから、概ね50μm〜550μm程度が好ましい。コア部14の厚さは、50〜500μmであることが好ましい。コア部14の厚さが50μm未満であると、カバー部15を設けた際にベースシート11が反り易くなってしまい、500μmを超えると、コア部14を形成した段階でベースシート12の反りが発生し易くなってしまうからである。カバー部15の厚さは1〜50μmの範囲が好ましい。カバー部15の厚さが1μm未満であると耐薬品性を向上させ難いためであり、50μmを超えるとベースシート12の反りが発生し易くなるためである。以上の観点から、コア部14の厚さはカバー部15の厚さより厚いことが好ましく、例えば、カバー部15の厚さはコア部14の厚さの1/5程度とすることができる。カバー部15の方が厚いと、コア部14の反り抑制効果がカバー部15に起因するベースシート12を反らせようとする作用に負け、ベースシート12の反り抑制効果が薄れるためである。
【0036】
キーシート11における製造方法の一例について説明する。
先ず図3で示すように、成形型1に凹設されたキートップ13と同形状のキャビティ1aの内壁底面1bに「第2組成物」として未硬化の紫外線硬化型樹脂(以下、「第2UV樹脂」という。)5を塗布する。次いで図4で示すように、第2UV樹脂5を塗布したキャビティ1a内へ「第1組成物」として未硬化の紫外線硬化型樹脂(以下、「第1UV樹脂」という。)4を充填する。
【0037】
次に図5で示すように、キャビティ1aを閉塞するように成形型1上に透光性のベースシート12を載置し、紫外線ランプ3から照射される紫外線をベースシート12側から第1UV樹脂4及び第2UV樹脂5に照射して、両UV樹脂4,5を硬化させる。それと同時に第1UV樹脂5による第1硬化体16がベースシート12に、第2UV樹脂による第2硬化体17が第1硬化体16に固着する。この時に、キャビティ1a内の第1UV樹脂4が硬化した第1硬化体16でなるコア部14と、第2UV樹脂5が硬化した第2硬化体17でなるカバー部15とが形成され、コア部14とカバー部15とでなるキートップ13が成形される。最後にキートップ13を成形型1から取り外し、キーシート11を得る。
【0038】
なお、紫外線ランプ3から照射される紫外線をベースシート12側から照射する例を示したが、他の製造方法としては、キートップ13の成形型1をガラス製や樹脂製の透光性材料で形成して、紫外線ランプ3から照射される紫外線をキートップ13の成形型1側から照射することもできる。このようにすれば、ベースシート12が透光性である必要はなく、遮光性のベースシート12も用いることができ、ベースシート12の機能や特性を広げることができる。
【0039】
また、第1UV樹脂4をキャビティ1aに充填する際に、キャビティ1aの内壁底面1bに塗布した第2UV樹脂5が流されたり、第1UV樹脂4と混ざり合ったりしないように、両UV樹脂4,5について適度な粘度設定をすることができる。同様の趣旨で、第1UV樹脂4を充填する前に第2UV樹脂5を先に半硬化させることもできる。半硬化とは、完全に硬化しない程度をいう。第2UV樹脂5を完全に硬化させて第2硬化体17としてから第1UV樹脂4を充填すると、第2硬化体17と第1UV樹脂4による第1硬化体16とが密着し難くなるため、第2UV樹脂5は半硬化状態としておくことが好ましい。紫外線ランプ3からの紫外線の光量や照射時間等を適宜設定することで半硬化状態にすることが可能である。
【0040】
キーシート11の作用、効果について説明する。
キーシート11によれば、キートップ13が、ベースシート12の操作面側の表面12a上に形成される第1硬化体16によるコア部14と、コア部14の操作面側の表面14aに形成される第2硬化体17によるカバー部15と、からなるため、キートップ13成形後のベースシート12の反りを抑制しつつ、キートップ13の耐薬品性、すなわち、ベンジルアルコールやひまし油に対する耐性を向上させることができる。
【0041】
コア部14をなす第1硬化体16の100℃、10Hz下のE’が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満の範囲内であり、カバー部15をなす第2硬化体17の100℃、10Hz下のE’が、1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満の範囲内であることにより、キートップ13成形後のベースシート12の反りを抑制しつつ、キートップ13の耐薬品性を高めることができる。
【0042】
また、第1組成物4及び第2組成物5がともに紫外線硬化型樹脂組成物であるため、同一の紫外線照射装置により両組成物を硬化させることができ、キーシート11を簡易且つ低コストで製造することが可能となる。さらに、コア部14の厚さがカバー部15の厚さよりも厚いため、キートップ13の基部がコア部14となり、ベースシート12の反りを抑制し易く、また、カバー部15の硬さから起因する脆さの影響を小さくできる。よって、繰り返しの押圧操作に対するキートップ13の打鍵耐久性を向上することができる。
【0043】
〔第1実施形態の変形例〕
第1実施形態のキーシート11では、カバー部15がキートップ13(コア部14)の操作面側の表面14a(上面)のみに形成された構成を示したが、第1変形例として図6で示すキーシート111は、コア部141の操作面側の表面141aのみならず、側面141bにもカバー部151が形成される例を示している。したがって、キートップ131はその操作面及び側面がカバー部141で覆われている。なお、図6はキーシート111の図2相当の断面図であり、キーシート111の平面図は図1と同様に表される。キーシート111の製造はキーシート11の製造において、成形型1のキャビティ1a内の内壁底面及び内壁側面を含む内壁面全体に第2UV樹脂5を塗布しておき、そこへ第1UV樹脂4を充填し、その他は第1実施形態と同様にして製造される。
【0044】
キーシート111は、キーシート11が有する作用、効果に加えて、カバー部151がコア部141の側面141bにも形成されているため、薬品がキートップ131の側面に流れ込んだ際にも損傷や変色し難くすることができる。
【0045】
第1実施形態及びその第1変形例のキーシート11,111では単キー構造の例を示したが、それらのキーシート11,111におけるキートップ13,131をベースシート12上に複数個設けることもできる。
【0046】
〔第2実施形態〕
第2実施形態のキーシート21を図7及び図8に示す。図7はキーシート21の平面図であり、図8はキーシート21のSB−SB線断面図である。キーシート21が第1実施形態のキーシート11と異なるのは、キートップ23が外方へ鍔状に突出する鍔状部28を有することである。その他の構成はキーシート11と同じである。
【0047】
キートップ23の側面23bには、ベースシート12に固着して、外方へ突出する「薄肉伸長部」として鍔状に突出する鍔状部28が設けられている。この鍔状部28は第1硬化体26からなり、コア部24と一体に形成されている。コア部24の操作面側の表面24aには第2硬化体27でなるカバー部25が設けられている。
【0048】
キーシート21によれば、鍔状部28により、第1硬化体26とベースシート12との固着面積が増大し、キートップ23とベースシート12との固着力を高めることができる。そして、キーシート21におけるキートップ23のみを機器の開口から露出させて取り付ける場合には、鍔状部28をその開口に係止する所謂フランジとして機能させることができる。また、キーシート21を押圧操作した際に、鍔状部28を変形させずにベースシート12のみ撓ませることができ、キーシート21の押圧荷重を上昇させ難くすることができる。
【0049】
〔第2実施形態の変形例〕
第2実施形態の第1変形例のキーシート211を図9に示す。図9はキーシート211の図8相当の断面図である。第2実施形態のキーシート21では、そのキートップ23について、カバー部25がコア部24の操作面側の表面24aのみに形成された構成を示したが、キーシート211は、キーシート111と同様、キートップ231の側面(コア部241の側面241b)にもカバー部251が形成されている。その他の構成は、キーシート21と同様であり、キートップ231の側面には、ベースシート12に固着する「薄肉伸長部」としての鍔状部281が第1硬化体261によりコア部241と一体に形成されている。
【0050】
キーシート211は、キーシート21が有する作用、効果に加えて、カバー部251がキートップ231の側面(コア部241の側面241b)にも形成されているため、薬品がキートップ231の側面に流れ込んだ際にも損傷や変色し難いものを得ることができる。
【0051】
第2実施形態の第2変形例のキーシート212を図10に示す。図10はキーシート212の図8相当の断面図である。第2実施形態の第1変形例のキーシート211では、「薄肉伸長部」としての鍔状部281が第1硬化体261からなり、コア部241と一体に形成されている例を示したが、キーシート212は、その鍔状部282が第1硬化体262と第2硬化体272との積層膜によりキートップ232と一体に形成されている。すなわち、第1硬化体262と第2硬化体272との積層膜からなる鍔状部282は、第1硬化体262でなるコア部242と第2硬化体272でなるカバー部252とから一体的に連続して形成されている。
【0052】
第2変形例のキーシート212によれば、第1変形例のキーシート211が有する作用、効果に加えて、鍔状部282が第1硬化体262と第2硬化体272との積層膜によりキートップ232と一体に形成されるため、キートップ232の耐薬品性に対する安全性をさらに高めることができる。
【0053】
なお、第2実施形態及びその第1、第2変形例のキーシート21,211,212では単キー構造の例を示したが、それらのキーシート21,211,212におけるキートップ23,231,232をベースシート12上に複数個設けることもできる。
【0054】
〔第3実施形態〕
第3実施形態のキーシート31とその製造方法を図11〜図15に示す。図11はキーシート31の図2相当の断面図である。なお、キーシート31は平面視では図1と同様に表されるため平面図を省略する。図12〜図15はキーシート31の製造方法を示す説明図である。
【0055】
キーシート31は、第2実施形態の第2変形例のキーシート212と比較すると、キートップ33がベースシート12の縁と略同等の大きさに広がる「薄肉伸長部」としての鍔状部38を有することで相違する。その他の構成はキーシート212と同じである。キーシート31では、ベースシート12の縁と略同等の大きさに広がる鍔状部38としているため、キートップ33を押圧操作すると、この鍔状部38が僅かに撓み変形する。
【0056】
このキーシート31も第1実施形態のキーシート11で例示した製造方法と同様の方法により製造することができる。しかしながら、キーシート31の製造は生産性と品質の観点から次の製造方法が適している。
【0057】
先ず図12で示すように、コア部34成形用の成形型1に凹設されたコア部34と同形状のキャビティ1a内に第1組成物4としての第1UV樹脂4をキャビティ1aの容積より多く充填する。そして、図13で示すように、キャビティ1aを閉塞するように成形型1上にベースシート12を配置し、ベースシート12の上方からキャビティ1aに向けて加圧する。すると、第1UV樹脂4がキャビティ1aから押し出され、成形型1の表面上に広がる。
【0058】
次に、紫外線ランプ3から照射される紫外線を透光性のベースシート12側から照射して第1UV樹脂4を硬化させる。このとき、ベースシート12の表面12a上に第1UV樹脂4が硬化した第1硬化体36でなるコア部34が形成される。次いで図14で示すように、カバー部35成形用の成形型2を用い、その成形型2に凹設されたキャビティ2a内に第2組成物5としての第2UV樹脂5を充填する。ここで、成形型2におけるキャビティ2aは、成形型1におけるキャビティ1aよりも一回り大きい。具体的にはキートップ33におけるカバー部35の厚さ分だけ大きく設計されている。
【0059】
そして、図15で示すように、その成形型2上に、ベースシート12に一体成形したコア部34がキャビティ2aに入り込むようにベースシート12を配置する。このとき、ベースシート12側からキャビティ2a内の第2UV樹脂5に向けて圧力をかけることにより、第2UV樹脂5が成形型2の表面上に広がる。そして、ベースシート12側から紫外線を照射することで、コア部34及び鍔状部38を含む第1硬化体36の表面上に第2UV樹脂5が硬化した第2硬化体37が成形される。最後に成形型2から取り外すことで、図11で示す、コア部34(第1硬化体36)とカバー部35(第2硬化体37)とからなるキートップ33と、第1硬化体36と第2硬化体37との積層膜からなる鍔状部38を有するキーシート31を得ることができる。
【0060】
なお、紫外線ランプ3から照射される紫外線をベースシート12側から照射する例を示したが、他の製造方法としては、成形型1,2をガラス製や樹脂製の透光性材料で形成して、その成形型1,2側から紫外線を照射することもできる。このようにすれば、ベースシート12が透光性である必要はなく、遮光性のベースシート12も用いることができ、ベースシート12の機能や特性を広げることができる。
【0061】
また、第1UV樹脂4を硬化させて第1硬化体36(コア部34)を成形する際に、その後に成形する第2UV樹脂5による第2硬化体37との密着性を良好にするために、第1UV樹脂4を完全に硬化させず、半硬化状態にして、第2UV樹脂5の成形の際に完全に硬化させるようにすることが好ましい。紫外線ランプ3からの紫外線の光量や照射時間を適宜設定することで半硬化状態にすることが可能である。
【0062】
さらに、ベースシート12は当初大判の樹脂フィルムとしておき、キャビティ1a,2aの周囲に押し出された第1UV樹脂4や第2UV樹脂5による鍔状部38を成形し、最後にキートップ33を成形型2から脱型した後に、裁断刃(図示せず)を用いて当該樹脂フィルムにおける外周の不要な部分を切断して、ベースシート12の形状とすることができる。
【0063】
以上の通り、キーシート31によれば、第1実施形態のキーシート11が有する効果に加えて、次の効果を奏する。すなわち、鍔状部38が第1硬化体36と第2硬化体37との積層膜によりキートップ33と一体に形成されるため、コア部34とカバー部35並びに、第1硬化体36と第2硬化体37とを同様の生産設備を用いた工程と方法で製造することができ、キーシート31の生産性を高めることができる。したがって、品質に優れるキーシートを廉価に製造することができる。
【0064】
〔第3実施形態の変形例〕
第3実施形態の第1変形例のキーシート311を図16に、第2変形例のキーシート312を図17に示す。図16及び図17はキーシート311,312の図11相当の断面図である。
【0065】
第1変形例のキーシート311及び第2変形例のキーシート312は、それぞれ、キートップ331,332の側面にベースシート12の縁と略同等の大きさに広がる「薄肉伸長部」としての鍔状部381,382を有する。第3実施形態のキーシート31では、鍔状部38が第1硬化体36と第2硬化体37との積層膜から構成された例を示したが、キーシート311,312では、第1硬化体361,362からなる鍔状部381,382としている。すなわち、鍔状部381,382が第1硬化体361,362によりコア部341,342と一体連続的に形成されている。
【0066】
また、第2硬化体371,372は、キーシート11,21のように、キートップ331,332を構成するカバー部351,352のみに存在する。第1変形例のキーシート311では、カバー部351がコア部341の操作面側の表面341aのみに形成されている。第2変形例のキーシート312では、カバー部352がコア部342の操作面側の表面342aと側面342bとに形成されている。
【0067】
キーシート311,312によれば、鍔状部381,382が第1硬化体361,362のみからなり、第1硬化体361,362よりも硬質な第2硬化体371,372が存在しないこととなるため、繰り返しの押圧操作に対しても鍔状部381,382を割れ難くすることができる。また、第3実施形態のキーシート31に比べて、押圧荷重を上昇させ難くすることができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
第4実施形態のキーシート41を図18〜図21に示す。図18はキーシート41の平面図、図19は図18のSC−SC線断面図、図20はキーシート41を搭載した機器(携帯通信端末機)101の平面図、図21は図20のSD−SD線断面図である。
キーシート41は、第3実施形態のキーシート31について、キートップ43を複数備えた複数キー構造である点のみで異なるため、第3実施形態の変形例ともいえる。しかしながら、複数キー構造としたため、「薄肉伸長部」が隣接したキートップ43どうしを繋ぐキートップ連接部48として構成されることから第3実施形態とは区別して本実施形態にて説明する。
【0069】
キーシート41は、図18に示すように、数字や文字入力向けの所謂テンキーとしてのキートップ43と、多方向キー向けの正方形状のキートップ43aと、そのキートップ43aの周囲にあり、ファンクションキー向けの4つのキートップ43bと、をベースシート12の操作面側の表面12a上に備えている。
【0070】
キーシート41は、ベースシート12の操作面側の表面12a全体に第1硬化体46が形成され、第1硬化体46の操作面側の表面46a全体に第2硬化体47が形成されている。第1硬化体46は、部分的に厚肉となって突出して形成されていることでキートップ43を構成するコア部44が形成される。第2硬化体47は、第1硬化体46の操作面側の表面46a全体に形成されることで、コア部44を覆う部分としてカバー部45が形成される。したがって、コア部44及びカバー部45からなるキートップ43を除く残余の部分が、第1硬化体46と第2硬化体47との積層膜からなるキートップ連接部48として形成される。キーシート41も第3実施形態のキーシート31で説明した製造方法により製造することが好ましい。
【0071】
キーシート41は、ベースシート12の操作面側の表面12a全体が第1硬化体46と第2硬化体47で覆われ、キートップ43とキートップ連接部48とで構成されるため、外観上の見栄えの良いものとすることができる。例えば、コア部44の成形型やカバー部45の成形型について、型の内壁面の表面粗さを加工することにより、キートップ43を鏡面に仕上げ、キートップ連接部48をシボ面とすれば、キートップ連接部48からキートップ43を強調させて視認させることができる。こうした外観面の特徴を生かせることから、キーシート41は次のように携帯通信端末機101に搭載されるのが好適である。
【0072】
図20及び図21で示すように、ディスプレイ部102と操作部103とを備える機器(携帯通信端末機)101において、その操作部103側の筐体104(ケース104a,104b)に、仕切桟のない操作開口104cから全体的に露出されるようにしてキーシート41が搭載されている。図20及び図21は簡易的に示したものであるが、携帯通信端末機101は、上側ケース104a及び下側ケース104bによる筐体104内のキーシート41の操作面とは反対側に接点部品106等が設置された基板105があり、さらに基板105の下方にバッテリー109が蓋110で閉じられている。
【0073】
キーシート41は、その裏面側の外縁で両面テープ108により上側ケース104aに固着されており、操作面側の略全面が操作開口104cから露出している。キーシート41は可撓性を有しており、筐体104内でキーシート41の下方にある基板105上の皿バネ等でなる接点部品106を押圧することができるようになっている。図21では接点部品106の上に押し子107aを有する絶縁性シート107が設けられている例を示している。
【0074】
以上のキーシート41は、複数キー構造であることから、複数のキーについて同時に第3実施形態のキーシート31と同等の作用、効果を奏することができる。よって、キーシート41は反りが抑制されていることから、機器101の筐体104に容易に貼り付けることができる。
【0075】
〔第4実施形態の変形例〕
第4実施形態の第1変形例のキーシート411を図22に、第2変形例のキーシート412を図23に示す。図22及び図23はキーシート411,412の図19相当の断面図である。
【0076】
第1変形例のキーシート411及び第2変形例のキーシート412は、それぞれ、キートップ431,432の側面にベースシート12の縁と略同等の大きさに広がる「薄肉伸長部」としてのキートップ連接部481,482を有する。第4実施形態のキーシート41では、キートップ連接部48が第1硬化体46と第2硬化体47との積層膜から構成される例を示したが、キーシート411,412では、第1硬化体461,462からなるキートップ連接部481,482としている。すなわち、キートップ連接部481,482が第1硬化体461,462によりコア部441,442と一体連続的に形成されている。
【0077】
また、第2硬化体471,472は、キートップ431,432を構成するカバー部451,452としてのみ存在する。第1変形例のキーシート411では、カバー部451がコア部441の操作面側の表面441aのみに形成され、第2変形例のキーシート412では、カバー部452がコア部442の操作面側の表面442aと側面442bとに形成されている。
【0078】
キーシート411,412によれば、キートップ連接部481,482が第1硬化体461,462のみからなり、第1硬化体461,462よりも硬質な第2硬化体471,472が存在しないこととなるため、繰り返しの押圧操作に対してもキートップ連接部481,482を割れ難くすることができる。また、第4実施形態のキーシート41に比べて、押圧荷重を上昇させ難くすることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに説明する。ここでは、第3実施形態で述べた製造方法と同様に、複数キー構造の第4実施形態のキーシート41を製造した。よって、重複する製造方法の説明は省略し、製造したキーシート41における各部の材質や寸法、各例のキーシートにおける評価項目とその評価方法について説明する。
【0080】
各実施例及び比較例で用いたUV樹脂は、オリゴマーとして、エステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アクリレート及びウレタンアクリレートの少なくとも1種を主成分として含み、その他に上記オリゴマーと同様同等の分子構造を有するモノマー成分や、光重合開始剤等を配合し、図24に示すように、様々なE’の値が振れるように配合調整した。UV樹脂としては、例えば、株式会社スリーボンド製のアクリル系紫外線硬化型樹脂3000シリーズ、藤倉化成株式会社製の商品名フジハードHOシリーズ、三菱レイヨン株式会社製の商品名ダイヤビーム、日本合成化学工業株式会社製の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、太陽インキ製造株式会社製の紫外線硬化型ソルダーレジストなどが挙げられる。
【0081】
(実施例1)
ベースシート12には、厚さ125μmのPETフィルムを用いた。キーシート41におけるベースシート12の寸法は、横50mm、縦85mmとした。以下の実施例及び比較例においても同様のベースシート12とした。
コア部44及びベースシート12に固着する側のキートップ連接部(以下、「コア部44等」という。)をなす第1硬化体46、すなわち、第1UV樹脂4には、試料1Aとして、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、5.6×10Paのものを用いた。
カバー部45及び第1硬化体46に固着する側のキートップ連接部(以下、「カバー部45等」という。)をなす第2硬化体47、すなわち、第2UV樹脂5には、試料2Aとして、その硬化体の100℃、10HzでのE’が9.5×10Paのものを用いた。
コア部44とカバー部45とからなるキートップ43,43a,43bの高さは、0.3mmとし、キートップ43は、横10mm、縦7mm、キートップ43aは18mm四方、キートップ43bは横7mm、縦9mmとした。その内、カバー部45の厚さは10μmとした。キートップ連接部48の厚さは第1硬化体46と第2硬化体47とがそれぞれ約10μmずつの約20μmとした。これらの寸法は、全ての実施例及び比較例においても同様とした。
【0082】
(実施例2)
カバー部45等をなす第2UV樹脂5として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、1.3×10Paである試料2Bを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0083】
(実施例3)
カバー部45等をなす第2UV樹脂5として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、1.6×10Paである試料2Cを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0084】
(実施例4)
カバー部45等をなす第2UV樹脂5として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、1.0×10Paである試料2Dを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0085】
(実施例5)
カバー部45等をなす第2UV樹脂5として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、2.6×10Paである試料2Eを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0086】
(実施例6)
コア部44等をなす第1UV樹脂4として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、3.5×10Paである試料1Bを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0087】
(実施例7)
コア部44等をなす第1UV樹脂4として、その硬化体の100℃、10HzでのE’が、7.4×10Paである試料1Cを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0088】
(比較例1)
比較例1のキーシート(図示せず)は、キートップ及びキートップ連接部を実施例1で用いた第1UV樹脂(試料1A)による第1硬化体のみからなるものとして構成した。
【0089】
(比較例2)
比較例2のキーシート(図示せず)は、キートップ及びキートップ連接部を実施例1で用いた第2UV樹脂(試料2A)による第2硬化体のみからなるものとして構成した。
【0090】
(比較例3)
比較例3のキーシートは、実施例1のキーシート41と比較して、第1UV樹脂と第2UV樹脂とを逆にした。すなわち、キートップのコア部等を第2UV樹脂(試料2A)による第2硬化体から構成し、カバー部等を第1UV樹脂(試料1A)による第1硬化体から構成した。
【0091】
上記の各実施例及び比較例(以下、「各例」という。)において使用した第1UV樹脂及び第2UV樹脂については、それらの硬化体のE’及びベンジルアルコールに対する膨潤率を測定した。また、各例のキーシートについては、キーシートにおけるキートップの操作面側の表面における耐薬品性と鉛筆硬度、ベースシートの反りの高さを測定した。これらの項目は以下のように測定した。
【0092】
〔第1硬化体及び第2硬化体のE’〕
各例で用いた第1UV樹脂(第1硬化体)及び第2UV樹脂(第2硬化体)について、それぞれ単独で、幅5.0mm×長さ30.0mm×厚さ0.3±0.03mmの動的粘弾性用サンプルを作製した。これらのサンプルについて、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル株式会社製、商品名:EXSTAR6000シリーズDMS6100)を用いて、チャック間距離10mm、周波数10Hz、測定温度が−20℃から130℃、昇温レート1.5℃/分の条件下、引張モードにて動的粘弾性を測定した。各例で用いたUV樹脂(試料)の周波数10HzにおけるE’と温度との関係を図24に示す。
図24で示すように、試料1A、1B及び1Cは、低温領域(−20℃〜20℃付近)でE’が10〜10(Pa)オーダーと高いE’を示し、30℃付近からE’が急激に下降し、高温領域(80℃以上)でE’が10(Pa)オーダーの値を示した。一方、試料2A、2B及び2Cは、―20℃から130℃にかけてE’が緩やかに減少する程度であり、6.0×10(Pa)〜10(Pa)オーダーと高いE’を示した。試料2D及び2Eは、低温領域でE’が10(Pa)オーダーの値であり、30℃を超えてからE’が急激に減少し、100℃以上でE’が10(Pa)オーダーの値を示した。
【0093】
〔第1硬化体及び第2硬化体のベンジルアルコールに対する膨潤率〕
各例で用いた第1UV樹脂(第1硬化体)及び第2UV樹脂(第2硬化体)について、それぞれ単独で、厚さ300μm、幅10mm、長さ30mmの膨潤率測定用サンプルを作製した。これらのサンプルのベンジルアルコールに浸漬前の重量と、室温下でベンジルアルコールに浸漬し、24時間放置した後の浸漬後の重量と、を測定した。そして、(浸漬後の重量−浸漬前の重量)×100/(浸漬前の重量)から計算される値をベンジルアルコール(BA)に対する膨潤率とした。
【0094】
〔キートップの操作面側表面における耐薬品性〕
キートップの操作面側の表面に、ベンジルアルコールを数滴塗布した。これを室温で96時間放置した後に拭き取り、キートップの操作面に塗布跡が視認されないものを“○○”、角度を変えて見た際に一部の角度から跡が視認されたものを“○”、何れの角度からも跡が視認され、明らかに跡残りがあったものを“×”、と評価した。また、ベンジルアルコールに替えてひまし油により同様の試験、評価を行った。
【0095】
〔キートップの操作面側の表面における鉛筆硬度〕
キートップの操作面における鉛筆硬度は、日本工業規格であるJIS K5600−5−4に準拠して測定した。
【0096】
〔ベースシートの反りの高さ〕
ベースシートの反りは、図25で示すように、ベースシートの最下点Lから最上点Uまでの高さh(mm)を測定することにより評価した。
【0097】
〔実施例及び比較例の結果〕
以上の評価項目の結果を表1及び表2に示す。これらの結果から次のことが分かった。
【表1】

【表2】

【0098】
実施例1〜7のキーシート41は、第2UV樹脂による第2硬化体のE’が10〜10(Pa)オーダーの値の範囲内にあり、キートップの操作面がその第2硬化体でなるカバー部であるため、キートップ操作面の鉛筆硬度をHB以上とすることができ、耐傷付性に優れ、かつ、耐薬品性に優れたキートップとすることができた。なおかつ、第1UV樹脂による第1硬化体のE’が10(Pa)オーダーの値の範囲内であるため、ベースシートの反りが6.0mm未満である5.5mm以下となり、反りを抑制することができた。
特に、第2硬化体のE’が1.0×10Pa以上2.0×10Pa未満の範囲内である実施例1〜4は、鉛筆硬度がH以上と耐傷付性に優れるとともに耐薬品性に優れ、なおかつ、反りが5.2mm以下であった。
さらに、第2硬化体のE’が9.0×10Pa以上2.0×10Pa未満の範囲内である実施例1〜3では、第2硬化体のベンジルアルコールに対する膨潤率が3.5%以下となり、より耐薬品性の安全性を高めることができた。
【0099】
比較例1のキーシートは、そのキートップ及びキートップ連接部が第1UV樹脂(試料1A)による第1硬化体のみからなるものとして構成したため、耐薬品性に劣るものとなった。比較例2及び比較例3のキーシートは、反りが極めて大きく、機器に載置し難いばかりでなく、納品・搬送においても嵩が増すために不利となり、製品として用い難いものとなった。
【符号の説明】
【0100】
1,2 成形型
1a,2a キャビティ
3 紫外線ランプ
4 第1組成物
5 第2組成物
11 キーシート
12 ベースシート
12a ベースシートの操作面側の表面
13,23,33,43 キートップ
14,24,34,44 コア部
14a,24a,34a,44a コア部の操作面側の表面
15,25,35,45 カバー部
16,26,36,46 第1硬化体
17,27,37,47 第2硬化体
18,28,38 鍔状部(薄肉伸長部)
48 キートップ連接部(薄肉伸長部)
101 機器(携帯通信端末機)
102 ディスプレイ部
103 操作部
104 筐体
104a 上側ケース
104b 下側ケース
104c 操作開口
105 基板
106 接点部品
107 絶縁性シート
107a 押し子
108 両面テープ
109 バッテリー
110 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚片でなるベースシートと、該ベースシートの表面に突出して成形され、常温で液状である樹脂組成物の硬化体からなるキートップと、を備えるキーシートにおいて、
前記樹脂組成物は第1組成物と第2組成物とからなり、
前記硬化体は第1組成物による第1硬化体と第2組成物による第2硬化体とを有し、
前記キートップは、
第1硬化体がベースシートの表面上に形成され、ベースシートの反りを抑制するコア部と、
第2硬化体がコア部の操作面側の表面に形成され、コア部よりも硬質なカバー部と、からなることを特徴とするキーシート。
【請求項2】
第1硬化体の動的貯蔵弾性率は、第2硬化体の動的貯蔵弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のキーシート。
【請求項3】
第1硬化体の100℃・10Hz下の動的貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満であり、第2硬化体の100℃・10Hz下の動的貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa未満である請求項1又は請求項2に記載のキーシート。
【請求項4】
第1組成物及び第2組成物がともに紫外線硬化型樹脂組成物である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のキーシート。
【請求項5】
コア部の厚さは、カバー部の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のキーシート。
【請求項6】
キートップの側面に、ベースシートに固着して外方へ突出する薄肉伸長部を備え、
該薄肉伸長部が、第1硬化体によりコア部と一体に形成される請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のキーシート。
【請求項7】
キートップの側面に、ベースシートに固着して外方へ突出する薄肉伸長部を備え、
該薄肉伸長部が、第1硬化体と第2硬化体との積層膜によりキートップと一体に形成される請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のキーシート。
【請求項8】
薄肉伸長部が鍔状に突出した鍔状部である請求項6又は請求項7に記載のキーシート。
【請求項9】
キートップを複数備え、
薄肉伸長部が隣接したキートップどうしを繋ぐキートップ連接部として形成される請求項6又は請求項7に記載のキーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−243729(P2012−243729A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116041(P2011−116041)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】