説明

キースイッチ装置

【課題】 キートップの高さを低くしつつ薄型化が可能であるとともに、リンク部材が不必要に水平方向に移動することを防止してキー操作性が良好で確実にスイッチング動作を行うことが可能であり、また、ホルダ部材の厚さの有効利用を図って、より薄型化を可能にすることができるキースイッチ装置を提供する。
【解決手段】 第1リンク4における上側自由端のピン部11a、11bを摺動可能に係止する摺動係止部16、16をキートップ2に設けるとともに、摺動係止部16、16には、キートップ2の非押下時にピン部11a、11bが当接されるストッパ部を設け、非押下時におけるキートップ2の上昇位置を規制し、また、ラバースプリング6を、ホルダ部材7の貫通孔7a内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ等の入力装置に関し、特に、入力装置に使用されるキースイッチ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のキーボードにおけるキースイッチ装置として、例えば、実開平2−5236号公報、特開昭60−62017号公報等に記載されたキースイッチ装置が存在する。
【0003】ここに、実開平2−5236号公報には、外側矩形状枠体と内側矩形状枠体とをX字状に回動可能に支持してなるX枠体を有する押釦スイッチが記載されており、この押釦スイッチでは、外側矩形状枠体の上部をキートップの裏面と上ホルダーの溝部との間に回動可能に支持し、且つ、脚部をプリント基板に取り付けられた断面下向きコ字型の第2下ホルダーにスライド自在に支持し、また、内側矩形状枠体の上部をキートップの裏面と上ホルダーの平坦部との間にスライド自在に支持し、且つ、脚部をプリント基板に取り付けられた断面下向きコ字型の第1下ホルダーに回動可能に支持し、キートップとプリント基板との間にスイッチングを行うラバースイッチが配設されている。
【0004】ここに、ラバースイッチは、プリント基板に取り付けられた第1下ホルダーと第2下ホルダーとの間で、ラバースイッチの可動接点がプリント基板の固定接点と対向するように配置されている。このとき、ラバースイッチは、プリント基板上で位置決め配置されるのではなく、キートップに形成された突起の下端部をラバースイッチの穴部に装着することにより、キートップに対して位置決め配置されている。
【0005】また、特開昭60−60217号公報には、接点部と比較して平面形状の大きいスペースキー等のキートップの一端部を押下したとき、キートップが傾かずに平行状に上下動するようにすべく、側面視X字状に配置した一対のリンク部材における中途部同士を回動自在に連結し、この一対のリンク部材を、キートップ下面とホルダ部材との間に配置した押圧キーが記載されている。
【0006】ここに、基板に取り付けられた非可動キー部分には、各リンク部材の下側端部を係止する4つの案内ポケットが設けられており、また、各案内ポケットにより区画される領域から外れた外側位置にて基板には孔が形成されるとともに、この孔内にはスイッチ体が配置されている。かかるスイッチ体に対しては、キートップの下面に取り付けられた担体に形成されたスイッチタペットが非可動キー部分の孔を介して対向されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記実開平2−5236号公報に記載された押釦スイッチでは、プリント基板上にラバースイッチを位置決め配置するための貫通孔は何ら形成されてはおらず、キートップの突起の下端部をラバースイッチの穴部に装着することによりキートップに対するラバースイッチの位置決め固定を行い、また、X枠体、プリント基板に対する配置関係を決定している。かかる場合、キートップの押下操作に基づく押圧力は、ラバースイッチの略中央部に作用させてスイッチング動作を行うことが可能ではあるが、キートップの突起をラバースイッチの穴部に装着する作業は、煩雑な作業となって押釦スイッチの組立作業も当然に煩雑なものとなる。
【0008】また、ラバースイッチはキートップとの間で位置決めされるだけのものであり、ラバースイッチとプリント基板上との配置関係は極めて相対的なものであるから、ラバースイッチの可動接点とプリント基板上の固定接点とは必ずしも適正な関係に配置されるとは限らず、場合によっては、キートップが押下された際に可動接点と固定接点とが適正なスイッチング動作を行うことができないこともあり得る。
【0009】これに対して、特開昭60−60217号公報に記載された押圧キーでは基板に孔を形成し、この孔内にスイッチ体を配置する構成を有しているので、スイッチ体を基板の孔内に配置するだけでスイッチ体と基板の下方に配置されたスイッチフォイルのスイッチ部との配置関係を一定の関係に保持することが可能であり、実開平2−5236号の押釦スイッチにおけるような問題を解消することができるものではある。
【0010】しかしながら、特開昭60−60217号公報の押圧キーでは、スイッチ体が配置される基板の孔は、一対の各リンク部材における下側端部を係止する4つの案内ポケットにより区画される領域から外れた外側位置に形成されており、キートップの中央部や各リンク部材の回動支持部からはかなり離れた位置に存在している。しかも、担体のスイッチタペットと非可動キー部分の穴とは、図面からも明らかなように、両者の間に隙間を有するかなりルーズな挿通関係に設定されている。
【0011】前記押圧キーにおいて、キートップは、その押下時に各リンク部材を介して上下動案内されるものの、キートップの中央部や各リンク部材の回動支持部から離れた位置で押下された場合に、前記のように基板の孔が4つの案内ポケットにより区画される領域から外れた外側位置に形成されており、且つ、スイッチタペットと非可動キー部分の穴とがルーズな挿通関係に設定されていることに起因して、キートップは水平方向に移動してしまう虞が多分に存する。
【0012】このような場合には、スイッチタペットの下端とスイッチ体の上面との位置関係がずれてしまうこととなり、これにより、キートップの押下操作に基づく押圧力が適正にスイッチ体に作用しなくなる。この結果、スイッチ体が本来の弾性変形を行うことができなくなって、場合によっては、スイッチフォイルを適正にスイッチング動作させることができなくなってしまうものである。
【0013】更に、スイッチ全体の薄型化に関し、実開平2−5236号の押釦スイッチでは、ラバースイッチが、固定接点を上面に有するプリント基板上に載置されており、また、キートップの突起の下端部は、ラバースイッチの穴部に装着されていることから、押釦スイッチの全体の高さを考えた場合、プリント基板の厚さは当然に押釦スイッチの全体の高さに直接寄与する。
【0014】換言すれば、本願発明におけるようにホルダ部材に形成されたスプリング貫通孔にラバースプリングを配置し、ラバースプリングに対応してホルダ部材の下方に電気接点部を配置する構成を有しないことから、プリント基板の厚さ分に対応して押釦スイッチの高さが大きくなる。かかる構成を採用する以上、押釦スイッチ全体の高さを低くして薄型化を図ることは困難なものである。
【0015】また、特開昭60−60217号公報の押圧キーでは、基板に孔を形成し、かかる孔にスイッチ体が配置されていることから、基板の厚さを利用して基板の厚さ分に対応して押圧キーの全体の高さを低くすることは可能ではある。しかしながら、かかる押圧キーにおいては、特開昭60−60217号公報の図1に示されているように、キートップの下面に取り付けられた担体に形成されたスイッチタペットを介してスイッチ体を押圧するように構成されており、スイッチタペットは、基板の厚さの数倍の長さを有している。
【0016】かかる押圧キーの構成は、従来より存在するキーステム構造に他ならないものであり、押圧キーの全体の高さは、スイッチタペットの長さに大部分依存することとなって、本来的に押圧キーの全体の高さを低くして薄型化を図ることは困難なものである。また、前記のように、長いスイッチタペットを介してスイッチ体を押圧する構成を採用する以上、特開昭60−60217号公報の押圧キーには、薄型化を図ろうとするコンセプトは元々全く存在しないものである。
【0017】本発明は、前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、非押下時におけるキートップの上昇位置を規制することにより、キートップの高さを低くしつつ薄型化が可能であるとともに、リンク部材が不必要に水平方向に移動することを防止してキー操作性が良好で確実にスイッチング動作を行うことが可能であり、また、ホルダ部材の厚さの有効利用を図って、より薄型化することが可能であるキースイッチ装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明に係るキースイッチ装置は、キートップの下面とその下方に配置されたホルダ部材とに連結係止されるとともに、キートップの上下動を案内支持し、可動可能に配置された第1リンク部材と第2リンク部材と、キートップを上方に付勢するとともに、そのキートップの上下動に伴ってスイッチング動作を行うスプリング部材とを有するキースイッチ装置であって、キートップの下方に設けられ、第1リンク部材または第2リンク部材の上側自由端を摺動可能に係止する摺動係止部と、その摺動係止部に形成され、上側自由端に当接して非押下時におけるキートップの上昇位置を規制するストッパ部と、ホルダ部材に設けられ、第1リンク部材および第2リンク部材の下側自由端を可動可能に係止する複数の係止部と、ホルダ部材における複数の係止部に囲まれた領域に設けられ、スプリング部材の一部をホルダ部材よりも上方に突出させる貫通孔とを備えたものである。また、前記スプリング部材は、前記貫通孔内で前記ホルダ部材の下方に配置された支持部材に載置されていてもよい。
【0019】
【作用】前記構成を有するキースイッチ装置においては、スイッチング動作を行う際、キートップの押下入力操作が行われ、その入力操作に基づく押圧力は、貫通孔内に配置されたスプリング部材に作用する。これにより、スプリング部材は弾性変形し、その弾性変形に基づきスイッチング動作が行われる。そして、キートップの押下入力操作を解除すると、キートップは、スプリング部材の弾性力により上方へ付勢され、第1リンク部材または第2リンク部材の上側自由端の摺動が、キートップの下方に設けられた摺動係止部のストッパ部にて規制され、これにより、キートップの上昇が規制されて元の非押下位置に復帰する。
【0020】
【実施例】次に、本発明を具体化した実施例について図1R>1〜図8を参照して説明する。図1はキースイッチの側断面図を示し、キースイッチ1はキートップ2と、第1リンク4と第2リンク5とを側面視X字状に配置した案内支持手段3と、該案内支持手段3にて押圧されるキャップ状のラバースプリング6と、案内支持手段3を支持するための合成樹脂製のホルダ部材7と、ラバースプリングを位置決め配置するホルダ部材7の貫通孔7aにスイッチング部29,29(図7および図8参照)が臨むようにホルダ部材7の下面に張設されたフレキシブルな印刷基板9と、その下面側に張設された補強板10とからなる。
【0021】図1、図2および図7に示すように、ラバースプリング6は、印刷基板9におけるスイッチング部(電気接点部)29,29の上方を覆うように、ホルダ部材7の貫通孔7a内に嵌挿配置する。このように貫通孔7a内に挿嵌配置された状態では、図1、図2および図6に示すように、ラバースプリング6の略下半分は、貫通孔7a内に存在しており、また、その略上半分はホルダ部材7の上方へ突出してしている。従って、ラバースプリング6の略下半分が貫通孔7a内に配置されることから、ホルダ部材7の厚さの有効利用が図られることとなり、この結果、キースイッチ1全体の高さを低くすることが可能となる。
【0022】本実施例に使用されるラバースプリング6は、電気絶縁性のシリコーンゴム或いはEPDM(エチレンプロピレンジエンメチレン)等で構成され、平面視略円板状の厚い頭部と、該頭部の周囲から下向きに延びる截頭円錐状のドーム部と、該ドーム部の外周に略水平に半径外向きに延びる厚肉の鍔部とからなる下向き開放のキャップ状に一体成形する。
【0023】キートップの押下時に、第1リンク4と第2リンク5との連結交叉部下面にて押圧されるラバースプリング6の頭部の下面には、スイッチング部29,29の接点部に当接して両スイッチング部を電気的にON・OFFするための導電性を有する導電ゴムからなる可動接点部30を固着する。なお、ラバースプリング6全体を、シリコーンゴムにカーボンブラック等の導電性粒子を分散充填させて導電性を備えるように形成しても良い。
【0024】ABS樹脂等の合成樹脂にて成形されたキートップ2は、その上面(表面)に数字、英字等の文字が刻印または印刷等により付されている。キートップ2の下面には、後述する第1リンク4における上自由端側のピン部11a,11bを略水平方向でキートップ2の前後方向に摺動可能に係止するための前後長手溝状の摺動係止部16,16と、第2リンク5における上自由端のピン部13a,13bを回動のみ可能に係止するための孔状の回動係止部15,15とを一体的に備えた前後長手の左右一対の係止部材17,17を一体成形或いは接着剤等により接着して突設させる(図5参照)。
【0025】図4(a),(b)を参照して、ガラス繊維強化合成樹脂製等の合成樹脂製の第1リンク4および第2リンク5を詳細に説明する。図4(a)は第1リンク4の平面図、図4(b)は第2リンク5の平面図である。第1リンク4は基部18と上下自由端部19,20とにより平面視で実質上略H状に一体成形したもので、基部18にはその側面に水平方向に貫通する支持孔21を備える。下自由端部20の左右両側端から延びるアーム部20a,20bの側面には、各々ピン部12a,12bを横向きに突設し、上自由端部19の側面にはピン部11a,11bを横向きに突設する。
【0026】また、第2リンク5も基部22と上下自由端部23,24とにより平面視で実質上略H状に一体成形する。基部22の一側面には横向きに支持軸25を突設し、該支持軸25を前記第1リンク4における支持孔21に嵌挿し、第1リンク4と第2リンク5とを支持軸25回りに回動可能に連結する。第2リンク5における下自由端部24の左右両側端から延びるアーム部24a,24bの側面には、各々ピン部14a,14bを横向きに突設し、上自由端部23の側面にはピン部13a,13bを横向きに突設する。
【0027】ここに、第1リンク4および第2リンク5の両端部と支持孔21および支持軸25から構成される中途交叉部とは、図1乃至図3に示すように、側面視で一直線上に配設されている。また、第1リンク4と第2リンク5の両端部は、側面視において各リンク4、5の中央部に比べて薄肉状に形成されている。
【0028】この実施例では側面視において、第1リンク4における支持孔21の中心線から上下のピン部11a,12aの中心線までの距離、および、第2リンク5における支持軸25の中心線からピン部13a,14aまでの距離がそれぞれ相等しくなるように形成する。このように構成すると、後述のように、第1リンク4の下自由端側のピン部12a,12b箇所を中心にして案内支持手段3が回動変位することにより、キートップ2はホルダ部材7の上面に対して平行状に昇降動することができる。
【0029】図7および図8は、ガラス繊維強化合成樹脂製等の合成樹脂(両リンク4,5と別部材であることが望ましい)のホルダ部材7の一部を示す図であり、該ホルダ部材7にはキャップ状のラバースプリング6下端の鍔部が位置ずれ不能に嵌挿できる略矩形状の貫通孔7aを穿設し、該貫通孔7aの左右両側縁には、左右一対の回動係止部27と、前後長手溝状の摺動係止部28とを、その各係止部27,28が下方に開放するように一体的に射出形成されている。
【0030】そして、この回動係止部27,27に対しては、第1リンク4における下端側のピン部12a,12bが回動可能に嵌挿し、摺動係止部28,28に対しては第2リンク5における下端側のピン部14a,14bが前後摺動するように嵌挿する。
【0031】尚、貫通孔7aは、図8に示されているように、一対の回動係止部27と一対の摺動係止部28により区画される領域に渡ってホルダ部材7に穿設されており、また、ホルダ部材7の下方に配置された印刷基板9のスイッチング部29、29は、貫通孔7aの略中央部に配置されることとなる。これにより、貫通孔7aに配置されるラバースプリング6の可動接点部30とスイッチング部29、29とは離間して対向され、また、第1リンク4と第2リンク5の中途交叉部がラバースプリング6の上面略中央部に載置されることから(図1および図2参照)、キートップ2を押下した際に発生する押圧力は、中途交叉部からラバースプリング6の上面略中央部に作用する。
【0032】この結果、キートップ2や案内支持手段3とラバースプリング6との配置関係を常に適正に保持しながら可動接点部30とスイッチング部29、29とを介して確実なスイッチング動作を行うことができる。
【0033】このとき、ピン部11a,11bおよび14a,14b並びに摺動係止部16,28の形状寸法は、第1リンク4、第2リンク5が図6における左右方向に対して略不動となり、且つピン部11a,14aの図1における左右方向の摺動を妨げないように決定される。具体的には、本実施例においては、各ピン部先端が対応する摺動係止部の外側側面と略接して摺動するようにしている。また、このため、支持孔21より支持軸25が抜け出ることが防止される。
【0034】この構成により、キートップ2の押下時に、ホルダ部材7の回動係止部27の箇所を中心として第1リンク4が下向き回動するので、該第1リンク4と第2リンク5との側面視X字状に回動連結された中途交叉部は、ラバースプリング6の頭部を斜め下向きに押圧することになる。そして、その押下量が、一定の限度を越えた時点でラバースプリング6は座屈され、可動接点部30を介して印刷基板9のスイッチング部29、29が短絡され、所定のスイッチング動作が行われる。
【0035】このとき、第1リンク4と第2リンク5の両端部は、側面視で中央部の厚さに比べて薄肉状に形成されているので、キートップ2を押下してスイッチング動作を行う際、キートップ2の下降動作に伴って両リンク4、5の各端部が互いに接近しても、各端部が薄肉状に形成されていることに基づき、キートップ2の下降途中における各端部の接触が防止される。従って、キートップ2の下降動作が妨げられることはなく、大きなキーストロークを維持しつつ良好なキー操作性を実現することができる。
【0036】そして、キートップ2が下向きに押圧されていない状態(フリー状態)において、ラバースプリング6の弾性力により、キートップ2が最上昇位置にあるとき、前記第2リンク5における下端側のピン部14a,14bが摺動係止部28,28の一側面(回動係止部27に近い側の側面)の前ストッパ部31に当接するように構成する。この場合、回動係止部27から前ストッパ部31まで水平距離(L1)を変更することにより、キートップ2が最上昇位置にあるときの、ホルダ部材7上面からの高さ寸法(H1)を規制することができる。そして、摺動係止部28の長溝の前後長さ(L2)を変更することにより、案内支持手段3そのものの昇降距離(H2)を規制することができる。
【0037】なお、キートップ2が最上昇位置から、案内支持手段3にてラバースプリング6を最大限下向きに押圧する(押し切り状態という)迄のキートップ2の昇降距離をストロークというが、前記押し切り状態より手前(高い位置)で、第2リンク5における下端側のピン部14a,14bが摺動係止部28,28の他側面(回動係止部27より遠い側の側面)の後ストッパ部32に当接することで、実質上キートップ2の最下降位置を規制することもできる。
【0038】この結果、摺動溝の長さが同じでも、前ストッパ部31の位置を変更するだけで、キートップ2の最上昇位置と実質上のストロークとを同時に変更することができ、例えば、ストロークが短く且つキートップの最上昇位置の低い、キーを提供することができる。
【0039】このように、ホルダ部材7における回動係止部27から摺動係止部28の前ストッパ部31までの距離(L1)を変更することや、これに加えて摺動部28の前ストッパ部31から後ストッパ部32間での距離(L2)、換言すれば、摺動溝の長さを変更することで、案内支持手段3の両リンク4,5の支持軸25からピン部迄の寸法や、ラバースプリングの上下寸法を変更することなく、キートップ2の最上昇位置やストロークを大小任意に変更することができる。
【0040】前記距離(L1)や(L2)を変更するには、ホルダ部材7の射出成形用金型の一方の金型における摺動係止部28位置および/または摺動溝部の溝長さを変更させても良いし、摺動係止部28の肉厚を大きめに射出形成したのち、ストロークを変更させようとする箇所の摺動係止部28の摺動溝を切削することにより、前ストッパ部31および/または後ストッパ部32を決めるように調節しても良い。
【0041】そこで、本実施例においては、単一のキーボード内において、文字コードおよび改行コード等を出力するキーに関してはストローク量を長くし、また、上記文字コードよりも奥側に並ぶハーフキー(一般に、ファンクションキーとして利用されている)等のキーに関してはストローク量を少なくしている。このようにしてそれらのキータッチを変え、使用者がブラインドタッチにより利用する際に、それらのキーの違いを目視によらず確認可能とし、使用効率を向上している。
【0042】この際、全てのキーのホルダ部材7は一枚の板状に一体成形されるため、そのホルダ部材7上に形成される各ストッパ部31,32の位置が二種類あっても、その製造コストは従来のものと変わらない。また、第1リンク4および第2リンク5は、異なるストロークのキーであっても共通のものを用いるので、ストローク量に応じて案内支持手段3の形状を変更していた従来のものに比べて、その製造コストを大幅に減少せしめることが可能である。
【0043】キートップ2の最上昇位置の規制やストロークの大小調節のためには、ホルダ部材7でなく、キートップ2下面に設ける一対の係止部材17,17の形状を変更しても良い。すなわち、第1リンク4における上自由端側のピン部11a,11bを略水平方向で前後方向に摺動可能に係止するための摺動係止部16,16の一方のストッパ部(回動係止部15に近い側)の位置および/または摺動係止部16の摺動溝長さを変更するようにしても良いのである。
【0044】具体的には、キートップ2の非押下時において、第1リンク4のピン部11a、11bはストッパ部に当接し、キートップ2の上昇位置が規制されるものである。さらに、回動係止部15と摺動係止部16とを別々にキートップ2下面に設けるようにしても良い。
【0045】なお、前述のように、ラバースプリング6の押し切りの手前で後ストッパ部32に第2リンク5における下端側のピン部14a,14bが当接するように摺動係止部28の位置および摺動長さを設定すると、ラバースプリング6を極限まで押圧することが防止できて、ラバースプリング6に無理な力が作用せず、ラバースプリング6を保護することができる。
【0046】また、前記押し切り状態の手前で、案内支持手段3における第1リンク4および/または第2リンク5のピン部が摺動係止部16、28の後ストッパ部32に当接することで、それ以上のキートップ2の押下に対して第1リンク4や第2リンク5が弾性的に撓むことを利用して、押し切りまでのキータッチの衝撃を和らげることができる。
【0047】さらに、本実施例においては、単一のキーボード上に二種類のストロークを有する例を示したが、例えば携帯用コンピュータ等のキーストロークよりも薄型であることが要求されるキーボードと据え置き型等のより大きなキーストロークが要求されるキーボードとを同一の案内支持手段で構成することも可能である。このようにした場合においても、従来、別部品として製造していた案内支持手段を共通とすることができるので、トータルの製造コストは大幅に減少する。
【0048】なお、スイッチング部29を形成するフレキシブル印刷基板9に代えてメンブレンスイッチ回路板等の基板であっても良く、また、可変容量型キーボードにも適用できる。
【0049】
【発明の効果】以上説明した通り本発明に係るキースイッチ装置によれば、キートップの下方に設けられ、第1リンク部材または第2リンク部材の上側自由端を摺動可能に係止する摺動係止部に、その上側自由端に当接して非押下時におけるキートップの上昇位置を規制するストッパ部を備えているので、キートップの高さを低くしつつ薄型化が可能となり、また、第1リンク部材および第2リンク部材が不必要に水平方向に移動するのを防止することが可能となる。これにより、キー操作性が良好となり、確実にスイッチング動作を行うことができる。
【0050】また、ホルダ部材における複数の係止部に囲まれた領域に形成された貫通孔により、スプリング部材の一部をホルダ部材よりも上方に突出させるようにしたので、ホルダ部材の厚さの有効利用を図って、より薄型化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】キースイッチの側断面図である。
【図2】ストッパ部の位置を変更した場合のキースイッチの側断面図である。
【図3】キースイッチを押し切り状態に下場合の側断面図である。
【図4】(a)は第1リンクの平面図、(b)は第2リンクの平面図である。
【図5】キートップの下面図である。
【図6】図1のVI−VI矢視断面図である。
【図7】ラバースプリング及び貫通孔の平面図である。
【図8】ホルダ部材の貫通孔部分の斜視図である。
【符号の説明】
1 キースイッチ
2 キートップ
3 案内支持手段
4 第1リンク
5 第2リンク
6 ラバースプリング
7 ホルダ部材
7a 貫通孔
9 印刷基板
10 補強板
11a,11b,12a,12b ピン部
13a,13b,14a,14b ピン部
15,27 回動係止部
16,28 摺動係止部
29 スイッチング部
30 可動接点部
31 ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 キートップの下面とその下方に配置されたホルダ部材とに連結係止されるとともに、キートップの上下動を案内支持し、可動可能に配置された第1リンク部材と第2リンク部材と、前記キートップを上方に付勢するとともに、そのキートップの上下動に伴ってスイッチング動作を行うスプリング部材とを有するキースイッチ装置であって、前記キートップの下方に設けられ、前記第1リンク部材または第2リンク部材の上側自由端を摺動可能に係止する摺動係止部と、その摺動係止部に形成され、前記上側自由端に当接して非押下時におけるキートップの上昇位置を規制するストッパ部と、前記ホルダ部材に設けられ、前記第1リンク部材および第2リンク部材の下側自由端を可動可能に係止する複数の係止部と、前記ホルダ部材における複数の係止部に囲まれた領域に設けられ、前記スプリング部材の一部をホルダ部材よりも上方に突出させる貫通孔とを備えたことを特徴とするキースイッチ装置。
【請求項2】 前記スプリング部材は、前記貫通孔内で前記ホルダ部材の下方に配置された支持部材に載置されることを特徴とする請求項1記載のキースイッチ装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【公開番号】特開2002−324449(P2002−324449A)
【公開日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−115781(P2002−115781)
【分割の表示】特願2002−81082(P2002−81082)の分割
【出願日】平成4年2月14日(1992.2.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】