説明

キートップ及びその製造方法

【課題】デザインの多様性を簡易な方法で実現するキートップ及びその製造方法の提供。
【解決手段】外側キートップ片2のメタリック調の塗膜5及び透明なトップコート6と、内側キートップ片3の白色の塗膜5及び透明なトップコート6とを組合せてキートップ1の組合せデザイン面を形成するため、マスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、キートップ1にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5とを組合せた組合せデザイン面を簡単に併設できる。外側キートップ片2と内側キートップ片3の組合せ面どうしを融着層4で固着するため、両者は強固に固着され外側キートップ片2と内側キートップ片3の脱落を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、リモコン、デジタルカメラ、AV機器、車載電装機器等の各種電子機器に用いられる押釦スイッチ用キーシートに関し、特に入力操作を行うキートップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やAV機器等の各種電子機器には、筐体やスイッチなど種々の外装部品を備えている。このうち入力操作を行うスイッチは、電子機器の筐体に形成された操作開口から、操作釦(キートップ)を表出させる構造のものが多い。具体的には複数の光源や接点スイッチ、素子、配線等を配置した基板に、複数のキートップをベースシートの表面に固着した一体構造のキーシートを載せ、そのキーシートの上方からキートップを表出する操作開口を形成した筐体を被せて組み込むのが通例である。
【0003】
このようなキートップは、文字・記号・模様などの装飾を有する。この装飾は印刷法・塗装法・めっき法などによって装飾層として成形体の表面に施されたり(第1従来例:特許文献1)、二色成形・インサート成形による複数部材の物理的係合によって形成されている(第2従来例:特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−167838号公報
【特許文献2】特開2001−23475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、競争環境が厳しい電子機器にあっては、キートップについてもデザインの多様性が市場から要求されている。例えば、複数の色調を組合わせる装飾、高分子塗膜と金属層の併設による装飾、立体的あるいは階層的な装飾などの組合せデザインが要望されている。しかしながら、このような複合的装飾には多くの問題点がある。第1従来例の装飾層は、複数の装飾要素を順次積層して施されるため、マスキングという困難な処理が必要である。第2従来例の物理的係合は、キートップのような小さな部材では成形金型が複雑でデザインの多様性が金型精度に依存する。
【0005】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち本発明の目的はキートップのデザインの多様性を簡易な方法で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
【0007】
すなわち本発明は、外部から視認可能なデザイン面をキートップ本体に有する押釦スイッチ用のキートップについて、組合せによりキートップ本体を形成する複数の分割キートップ片と、各分割キートップ片の外面に設けられ、分割キートップ片の組合せにより組合せデザイン面を形成する装飾層とを有することを特徴とするキートップを提供する。
【0008】
本発明では、組合せによりキートップ本体を形成する複数の分割キートップ片と、各分割キートップ片の外面に設けられ、分割キートップ片の組合せにより組合せデザイン面を形成する装飾層とを有する。つまり、装飾層を有する複数の分割キートップ片を組合せてキートップ本体と組合せデザイン面を形成する。このためマスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、キートップ本体に複数の装飾層による組合せデザイン面を簡単に併設することができる。
【0009】
本発明は前記キートップについて、キートップ本体に各分割キートップ片を組合せて形成される操作面を有し、該操作面に組合せデザイン面を有する。このためマスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、一つの操作面に組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できる。
【0010】
本発明は前記キートップについて、一の分割キートップ片の表面に設ける装飾層と、透明樹脂でなる他の分割キートップ片の裏面に設ける装飾層とを有し、キートップ本体に奥行き方向で離間する表面側と裏面側の装飾層とによる組合せデザイン面を有する。このためキートップ本体の表面側と裏面側で構成される遠近感のある、立体的ないし階層的な組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できる。
【0011】
本発明は前記キートップについて、分割キートップ片の組合せ面どうしを固着する接着層を有する。このため分割キートップ片は接着層によって固着され、繰り返しの押圧操作を受けても分割キートップ片どうしが剥離しない。よって分割キートップ片の脱落を防げる。
【0012】
本発明は前記キートップについて、分割キートップ片の組合せ面どうしを固着する融着層を有する。このため分割キートップ片は融着層によって強固に固着され、繰り返しの押圧操作を受けても分割キートップ片どうしが剥離しない。よって分割キートップ片の脱落を防止できる。
【0013】
本発明は前記キートップについて、一の分割キートップ片に係合突起を設け、他の分割キートップ片に貫通孔を設け、貫通孔を挿通する係合突起の先端側に貫通孔に対して固定するかしめ部を有する。このため、係合突起が貫通孔から抜けることがなく、分割キートップ片の脱落を防止できる。その「かしめ部」は、係合突起の先端側を加熱したり又は機械的圧力を加えることで変形させて固定する部分を意味する。
【0014】
また、本発明は融着層を有する前記キートップの製造方法であって、装飾層から先端が突出する融着突起を組合せ面に有する一の分割キートップ片と他の分割キートップ片とを組合せ、熱又は超音波を印加し、分割キートップ片どうしを固着するキートップの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、融着突起を熱や超音波を印加して分割キートップ片どうしを固着するため、分割キートップ片どうしを強固且つ簡単に固着できる。また超音波融着ならば簡単且つ瞬時に固着可能である。
【0016】
また融着突起の先端側に装飾層が無いため、融着突起が融解する際に装飾層が異物となって融着層内に実質的に残存しない。よって融着層が破損し難く、分割キートップ片どうしを強固に固着できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキートップによれば、複数の成形体に対して装飾層を施しておき、これら成形体を係合面で固定してキートップとし、同時にこれら装飾層にて組合せデザイン面を構成する。このためキートップに複数の装飾層を簡単に併設することができる。例えば複数の装飾層を順次設ける際に行うマスキング処理のような複雑な工程を不要にでき、簡単にデザインの多様性を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する構成については、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0019】
第1実施形態〔図1,図2〕
第1実施形態のキートップ1は、「分割キートップ片」としての外側キートップ片2と内側キートップ片3を備えている。これらの組合せは「キートップ本体」を構成する。外側キートップ片2は硬質樹脂で円環状に形成されており、この外側キートップ片2の内周を埋めるように円柱状の内側キートップ片3が硬質樹脂で形成されている。そして外側キートップ片2と内側キートップ片3の操作面となる上面には「組合せデザイン面」を有している。
【0020】
外側キートップ片2は上端の径より下端の径がやや大きい断面台形状である。下端の外周面2aには環状の鍔部2bが設けられ、内周面2cには環状の溝部2dが形成されている。溝部2dの底となる環状面2eにはその周方向で離間する複数の凹部2fが設けられている(図2)。この凹部2fには内側キートップ片3と固着する融着層4が形成されている。外側キートップ片2の上面側には、メタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6が「装飾層」として施されている。
【0021】
内側キートップ片3は、その外周面3aが外側キートップ片2の内周面2cと相対形状の円錐台状に形成されている。外周面3aの下端には溝部2dと係合する鍔部3bが設けられ、この鍔部3bの上面には凹部2fと対向する円錐台の融着突起3cが形成されている(図2)。融着突起3cの上面には融着層4が固着しており、この融着層4は融着突起3cの先端側が融解し形成されたものである。内側キートップ片3の上面には、融着突起3cの先端側には付着しない白色の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6が「装飾層」として施されている。
【0022】
次に、キートップ1の製造方法について説明する。
【0023】
先ず外側キートップ片2と内側キートップ片3を別々に形成する。外側キートップ片2は射出成形にて前述の形状に形成するが、凹部2f内には融着層4を有していない。その後、外側キートップ片2の上面側にメタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。また、内側キートップ片3は射出成形にて前述の形状に形成するが、融着突起3cは円錐状に形成されている。その後、内側キートップ片3の上面に融着突起3cの先端側を除いて白色の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。なお融着突起3cの先端の角度は60°に形成してあり、好ましい先端の角度範囲は30°〜90°である。先端の角度が90°より大きいと装飾層が付着し易くなる。すなわち装飾層は融着突起3cを融解した際に異物となって混在し融着力を低下させる原因となる。これを防ぐには付着した装飾層を除去する必要があるが、これでは生産効率が著しく低下し実際的ではない。他方、先端の角度が30°より小さいと、融着突起3cが細くなる。このため融着力を確保できる融解体積にするには、融着突起3cを背高に設定して体積を増加する必要があるが、成形が困難である。よって先端角は30°〜90°として設定する。
【0024】
次に外側キートップ片2と内側キートップ片3を組合せてキートップ1を形成する。外側キートップ片2の凹部2fと内側キートップ片3の融着突起3cを対向させて、外側キートップ片2の内周面2cと内側キートップ片3の外周面3aを係合する。そして超音波融着機を用いて内側キートップ片3の下面より超音波を印加し、融着突起3cの先端を融解させる。その後、再硬化による融着層4を凹部2f内に形成して外側キートップ片2と内側キートップ片3を固着する。キートップ1はこうして製造される。
【0025】
次に、キートップ1を構成する各部材の材質を説明する。なお以下の説明は後述の各実施形態についても共通である。
【0026】
外側キートップ片2、内側キートップ片3の「硬質樹脂」の材質は、機械的強度、耐久性等の要求性能、及び軽量化により、熱可塑性樹脂又は反応硬化性樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。さらにこれらの硬質樹脂で加工性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂が好ましく、高硬度を考慮すると、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。また透明性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル共重合樹脂が好ましい。
【0027】
最後に、本実施形態によるキートップ1の作用・効果について説明する。
【0028】
第1実施形態は、外側キートップ片2のメタリック調の塗膜5及び透明なトップコート6と内側キートップ片3の白色の塗膜5及び透明なトップコート6とを組合せてキートップ1の組合せデザイン面が形成される。このためマスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、キートップ1にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5とを組合せた組合せデザイン面を簡単に併設することができる。
【0029】
キートップ1の操作面にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5による組合せデザイン面を有する。このためマスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、一つの操作面に組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できる。
【0030】
外側キートップ片2と内側キートップ片3の組合せ面どうしを固着する融着層4を有する。このため外側キートップ片2と内側キートップ片3は融着層4によって強固に固着され、繰り返しの押圧操作を受けても外側キートップ片2と内側キートップ片3が剥離しない。よって外側キートップ片2と内側キートップ片3の脱落を防止できる。
【0031】
キートップ1の製造方法によれば、融着突起3cを熱や超音波を印加して外側キートップ片2と内側キートップ片3を固着するため、外側キートップ片2と内側キートップ片3を強固且つ簡単に固着できる。また超音波融着ならば簡単且つ瞬時に固着可能である。
【0032】
また融着突起3cの先端側に白色の塗膜5や透明なトップコート6が無いため、融着突起3cが融解する際に白色の塗膜5や透明なトップコート6が異物となって融着層4内に実質的に残存しない。よって融着層4が破損し難く、外側キートップ片2と内側キートップ片3を強固に固着できる。
【0033】
第2実施形態〔図3,図4〕
第2実施形態のキートップ7が、第1実施形態のキートップ1と異なるのは、キートップ7を構成する外側キートップ片2の溝部2dと、内側キートップ片3の鍔部3bの構造である。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0034】
外側キートップ片2の溝部2dには凹部2fが形成されておらず、環状面2eから突出する複数の円柱状の係合突起2gが周方向で離間して設けられている。この係合突起2gは内側キートップ片3の鍔部3bに設けてある貫通孔3dを挿通し、先端側には貫通孔3dの孔径より大きいかしめ部2hが形成されている。
【0035】
内側キートップ片3の鍔部3bには融着突起3cが形成されておらず、肉厚を貫通する貫通孔3dが設けられている。この貫通孔3dの下面側には溝部3eが形成されており、溝部3e内にかしめ部2hを収容している。
【0036】
次に、キートップ7の製造方法について説明する。
【0037】
先ず外側キートップ片2と内側キートップ片3を別々に形成する。外側キートップ片2は射出成形にて前述の形状に形成するが、係合突起2gは先端まで同径の円柱状に形成され、かしめ部2hを有していない。その後、外側キートップ片2の上面側にメタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。また、内側キートップ片3は射出成形にて前述の形状に形成する。その後、内側キートップ片3の上面に白色の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。
【0038】
次に外側キートップ片2と内側キートップ片3を組合せてキートップ7を形成する。外側キートップ片2の係合突起2gを内側キートップ片3の貫通孔3dに挿通して、外側キートップ片2の内周面2cと内側キートップ片3の外周面3aを係合する。そしてかしめ治具を用いて内側キートップ片3の下面より係合突起2gの先端を変形させてかしめ部2hを形成する。キートップ7はこうして製造される。
【0039】
第2実施形態のキートップ7は、第1実施形態のキートップ1と同様にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5による組合せデザイン面を簡単に併設することができ、一つの操作面に組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0040】
キートップ7は、係合突起2gの先端側に貫通孔3dに対して固定するかしめ部2hを有するため、係合突起2gが貫通孔3dから抜けることがなく、外側キートップ片2と内側キートップ片3の脱落を防止できる。
【0041】
第3実施形態〔図5,図6〕
第3実施形態のキートップ8が、第1実施形態のキートップ1と異なるのは、キートップ8を構成する外側キートップ片2の溝部2dと、内側キートップ片3の鍔部3bの構造、及び組合せデザイン面の構成である。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0042】
外側キートップ片2の溝部2dには凹部2fが形成されておらず、環状面2eは平坦に形成されている。この環状面2eは、接着層9を介して鍔部3bの上面と固着している。
【0043】
内側キートップ片3は透明な硬質樹脂で形成され、鍔部3bには融着突起3cが形成されておらず、上面は平坦に形成されている。内側キートップ片3の上面には塗膜5が形成されておらず、下面に文字印刷による塗膜5が「装飾層」として施されている。
【0044】
次に、キートップ8の製造方法について説明する。
【0045】
先ず外側キートップ片2と内側キートップ片3を別々に形成する。外側キートップ片2は射出成形にて前述の形状に形成する。その後、外側キートップ片2の上面側にメタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。また、内側キートップ片3は射出成形にて前述の形状に形成する。その後、内側キートップ片3の下面に文字印刷の塗膜5を形成する。
【0046】
次に外側キートップ片2と内側キートップ片3を組合せてキートップ8を形成する。内側キートップ片3の鍔部3bの上面に接着剤を塗布し、外側キートップ片2の内周面2cと内側キートップ片3の外周面3aを係合する。そして接着剤を硬化して外側キートップ片2と内側キートップ片3を固着する。キートップ8はこうして製造される。
【0047】
第3実施形態によるキートップ8の作用・効果について説明する。
【0048】
本実施形態は、塗膜5と透明なトップコート6を上面側に有する外側キートップ片2と塗膜5を下面に有する内側キートップ片3を組合せてキートップ8と組合せデザイン面を形成するため、マスキング処理のような複雑な処理を行わなくても、キートップ1にメタリック調の塗膜5と文字印刷の塗膜5による組合せデザイン面を簡単に併設することができる。
【0049】
キートップ8は、外側キートップ片2における操作面の外縁にメタリック調の塗膜5と、透明な内側キートップ片3の裏面に文字印刷の塗膜5を有しており、奥行き方向で離間する組合せデザイン面を構成する。このためキートップ8の表面と裏面で構成される遠近感のある、立体的ないし階層的な組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できる。
【0050】
外側キートップ片2の環状面2eと内側キートップ片3の鍔部3bの上面を固着する接着層9を有するため、外側キートップ片2と内側キートップ片3は接着層9によって固着され、繰り返しの押圧操作を受けても外側キートップ片2と内側キートップ片3が剥離しない。よって外側キートップ片2と内側キートップ片3の脱落を防げる。
【0051】
第4実施形態〔図7,図8〕
第4実施形態のキートップ10が、第1実施形態のキートップ1と異なるのは、キートップ10を構成する外側キートップ片2と、内側キートップ片3の構造と、組合せデザイン面の構成である。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0052】
外側キートップ片2は、円環状の平板に形成されている。第1実施形態の外側キートップ片2と同様に、下端の外周面2aには環状の鍔部2bが設けられ、内周面2cには環状の溝部2dが形成されている。この溝部2dの底となる環状面2eにはその周方向で離間する複数の凹部2fが設けられている。この凹部2fには内側キートップ片3と固着する融着層4が形成されている。外側キートップ片2の上面側には、メタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6が「装飾層」として施されている。
【0053】
内側キートップ片3は、円環状の平板に形成されている。上面の外縁及び外周面3aは外側キートップ片2の溝部2dと係合する組合せ面になっている。上面の組合せ面には凹部2fと対向する円錐台の融着突起3cが形成されている。融着突起3cの上面には融着層4が固着しており、この融着層4は融着突起3cの先端側が融解し形成されたものである。内側キートップ片3の上面には、融着突起3cの先端側には付着しない白色の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6が「装飾層」として施されている。
【0054】
次にキートップ10の製造方法について説明するが、基本的には第1実施形態のキートップ1の製造方法と同様である。
【0055】
先ず外側キートップ片2と内側キートップ片3を別々に形成する。外側キートップ片2は射出成形にて前述の形状に形成するが、凹部2f内には融着層4を有していない。その後、外側キートップ片2の上面側にメタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。また、内側キートップ片3は射出成形にて前述の形状に形成するが、融着突起3cは円錐状に形成されている。その後、内側キートップ片3の上面に融着突起3cの先端側を除いて白色の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6を順次塗布して形成する。
【0056】
次に外側キートップ片2と内側キートップ片3を組合せてキートップ10を形成する。外側キートップ片2の凹部2fと内側キートップ片3の融着突起3cを対向させて、外側キートップ片2の溝部2dと内側キートップ片3の上面の外縁及び外周面3aを係合する。そして超音波融着機を用いて内側キートップ片3の下面より超音波を印加し、融着突起3cの先端を融解させる。その後、再硬化による融着層4を凹部2f内に形成して外側キートップ片2と内側キートップ片3を固着する。キートップ10はこうして製造される。
【0057】
第4実施形態によるキートップ10は、第1実施形態のキートップ1と同様にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5による組合せデザイン面を簡単に併設することができ、外側キートップ片2と内側キートップ片3は融着層4によって強固に固着され両者の脱落を防止でき、外側キートップ片2と内側キートップ片3を超音波融着によって簡単に且つ瞬時に固着できるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0058】
キートップ10は、外側キートップ片2の上面と内側キートップ片3の上面で構成される段差面を操作面として組合せデザイン面を有するため、デザインの多様性を簡単に実現できる。
【0059】
第5実施形態〔図9,図10〕
第5実施形態のキートップ11が、第1実施形態のキートップ1と異なるのは、上側キートップ片12と、下側キートップ片13を備えている。これらの組合せは「キートップ本体」を構成する。残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0060】
上側キートップ片12は略直方体で下向きの突出部12aを有する断面L字形状に形成されている。上側キートップ片12における断面クランク状の係合面12bには複数の円柱状の係合突起12cが設けられている。この係合突起12cは下側キートップ片13に設けてある貫通孔13aを挿通し、先端側には貫通孔13aの孔径より大きいかしめ部12dが形成されている。外側キートップ片12の上面には、メタリック調の塗膜5とこの塗膜5を保護する透明なトップコート6が「装飾層」として施されている。
【0061】
下側キートップ片13は略直方体で上向きの突出部13bを有する断面L字形状に形成されている。下側キートップ片13における断面クランク状の係合面13cには肉厚を貫通する貫通孔13aが設けられている。内側キートップ片13の上面側には、白色の塗膜5が「装飾層」として施されており、さらに上側キートップ片12と一つの操作面を構成する上面13dには、白色の塗膜5を保護する透明なトップコート6が形成されている。この透明なトップコート6は外側キートップ片12の上面に形成する透明なトップコート6と一体ものである。
【0062】
次に、キートップ11の製造方法について説明する。
【0063】
先ず上側キートップ片12と下側キートップ片13を別々に形成する。上側キートップ片12は射出成形にて前述の形状に形成するが、係合突起12cは先端まで同径の円柱状に形成され、かしめ部12dを有していない。その後、上側キートップ片2の上面側にメタリック調の塗膜5を塗布して形成する。また、下側キートップ片13は射出成形にて前述の形状に形成する。その後、下側キートップ片13の上面側に白色の塗膜5を塗布して形成する。
【0064】
次に上側キートップ片12と下側キートップ片13を組合せてキートップ11を形成する。上側キートップ片12の係合突起12cを下側キートップ片13の貫通孔13aに挿通して、上側キートップ片12の係合面12bと下側キートップ片13の係合面13bを係合する。そしてかしめ治具を用いて下側キートップ片13の下面より係合突起12cの先端を変形させてかしめ部12dを形成する。このときかしめ部12dは下側キートップ片13の下面より突出している。その後、一つの操作面を構成する上側キートップ片12の上面に施されたメタリック調の塗膜5と下側キートップ片13の上面に施された白色の塗膜5を保護する透明なトップコート6を塗布して形成する。キートップ11はこうして製造される。
【0065】
第5実施形態のキートップ11は、第1実施形態のキートップ1と同様にメタリック調の塗膜5と白色の塗膜5による組合せデザイン面を簡単に併設することができ、一つの操作面に組合せデザイン面によるデザインの多様性を簡単に実現できるほか、さらに次の作用・効果を発揮する。
【0066】
キートップ11は、係合突起12cの先端側に貫通孔13aに対して固定するかしめ部12dを有するため、係合突起12cが貫通孔13aから抜けることがなく、上側キートップ片12と下側キートップ片13の脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態のキートップの断面図。
【図2】第1実施形態のキートップの分解説明図。
【図3】第2実施形態のキートップの断面図。
【図4】第2実施形態のキートップの分解説明図。
【図5】第3実施形態のキートップの断面図。
【図6】第3実施形態のキートップの分解説明図。
【図7】第4実施形態のキートップの断面図。
【図8】第4実施形態のキートップの分解説明図。
【図9】第5実施形態のキートップの断面図。
【図10】第5実施形態のキートップの分解説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 キートップ(第1実施形態)
2 外側キートップ片
2a 外周面
2b 鍔部
2c 内周面
2d 溝部
2e 環状面
2f 凹部
2g 係合突起
2h かしめ部
3 内側キートップ片
3a 外周面
3b 鍔部
3c 融着突起
3d 貫通孔
4 融着層
5 塗膜
6 トップコート
7 キートップ(第2実施形態)
8 キートップ(第3実施形態)
9 接着層
10 キートップ(第4実施形態)
11 キートップ(第5実施形態)
12 上側キートップ片
12a 突出部
12b 係合面
12c 係合突起
12d かしめ部
13 下側キートップ片
13a 貫通孔
13b 突出部
13c 係合面
13d 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から視認可能なデザイン面をキートップ本体に有する押釦スイッチ用のキートップにおいて、
組合せによりキートップ本体を形成する複数の分割キートップ片と、
各分割キートップ片の外面に設けられ、分割キートップ片の組合せにより組合せデザイン面を形成する装飾層とを有することを特徴とするキートップ。
【請求項2】
キートップ本体に各分割キートップ片を組合せて形成される操作面を有し、該操作面に組合せデザイン面を有する請求項1記載のキートップ。
【請求項3】
一の分割キートップ片の表面に設ける装飾層と、透明樹脂でなる他の分割キートップ片の裏面に設ける装飾層とを有し、キートップ本体に奥行き方向で離間する表面側と裏面側の装飾層とによる組合せデザイン面を有する請求項1記載のキートップ。
【請求項4】
分割キートップ片の組合せ面どうしを固着する接着層を有する請求項1〜請求項3何れか1項記載のキートップ。
【請求項5】
分割キートップ片の組合せ面どうしを固着する融着層を有する請求項1〜請求項3何れか1項記載のキートップ。
【請求項6】
一の分割キートップ片に係合突起を設け、他の分割キートップ片に貫通孔を設け、貫通孔を挿通する係合突起の先端側に貫通孔に対して固定するかしめ部を有する請求項1〜請求項3何れか1項記載のキートップ。
【請求項7】
請求項5記載の押釦スイッチ用のキートップの製造方法であって、
装飾層から先端が突出する融着突起を組合せ面に有する一の分割キートップ片と他の分割キートップ片とを組合せ、熱又は超音波を印加し、分割キートップ片どうしを固着するキートップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−179952(P2007−179952A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379383(P2005−379383)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】