説明

キーパッド及び携帯端末装置

【課題】装置の大型化を回避しつつ、斜め操作を容易に検出すること。
【解決手段】キーパッドは、スイッチを押圧するための複数の押圧凸部が裏面に形成された弾性シート部材と、弾性シート部材の表面に取り付けられ、弾性シート部材の表面のうち押圧凸部と重合する位置に配置された第1シート部と弾性シート部材の表面のうち前記押圧凸部と重合する位置以外の位置に配置されて第1シート部よりも肉厚に形成された第2シート部とを一体に有するシート状のキートップ部材とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーパッド及び携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末装置では、装置の薄型化やデザイン性の向上の観点から、多機能キーやテンキーとなるシート状のキートップ部材を含んだキーパッドを操作部として備えたものが知られている。また、キーパッドでは、最近の装置の多機能化に伴って、多機能キーとなるキートップ部材において、上下左右方向の十字部分の操作に加えて、十字部分の間に位置する斜め部分の操作が行われている。例えば、携帯端末装置のゲーム機能等が実行される場合には、多機能キーとなるキートップ部材の斜め部分がユーザによって押圧操作される。
【0003】
ここで、図7及び図8を用いて従来のキーパッドの構成について説明する。図7は、従来のキーパッド200を表面側から見た平面図であり、図8は、従来のキーパッド200を裏面側から見た平面図である。図7及び図8に示すように、キーパッド200では、スイッチを押圧するための複数の押圧凸部211が裏面に形成された弾性シート部材210の表面に、シート状のキートップ部材220が貼り付けられている。
【0004】
多機能キーとなるキートップ部材221の十字部分221a〜221dは、弾性シート部材210の表面のうち押圧凸部211と重合する位置に配置されている。キートップ部材221の斜め部分221e〜221hは、弾性シート部材210の表面のうち押圧凸部211と重合する位置以外の位置に配置されている。言い換えると、キートップ部材221の斜め部分221e〜221hは、2個の押圧凸部211に隣接した状態で配置されている。
【0005】
このような構成の下で、キートップ部材221の斜め部分221e〜221hが押圧されると、斜め部分に隣接する2個の押圧凸部211が2個のスイッチを同時に押圧する。これにより、斜め部分221e〜221hに対する押圧操作が検出される。なお、以下では、キートップ部材221の斜め部分221e〜221hに対する押圧操作を「斜め操作」と呼ぶことがある。
【0006】
また、最近では、キーパッドの背面側に補強材となる板金をさらに貼り付け、キートップ部材の斜め部分が押圧された場合に、押圧された斜め部分に隣接する2個のスイッチを板金により同時に押圧することにより、斜め操作を検出する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−224068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、弾性シート部材の表面にキートップ部材を貼り付けた従来のキーパッドでは、キートップ部材が比較的に薄型に形成されている場合に、斜め操作を検出することが困難となる問題がある。かかる問題について図9及び図10を用いて説明する。図9は、図7に示したキートップ部材221付近の拡大斜視図であり、図10は、図9のA−A線断面を拡大して示す図である。キートップ部材221が比較的に薄型に形成されている場合には、キートップ部材221の剛性が低下する。この場合、例えばキートップ部材221の斜め部分221gが押圧されると、押圧された斜め部分221g近傍でキートップ部材221が撓んでしまう。したがって、斜め部分221gに隣接する2個の押圧凸部211が2個のスイッチを確実に押圧することができなくなり、斜め操作が検出され難くなる。
【0009】
また、キーパッドの背面側に貼り付けた板金により2個のスイッチを同時に押圧する構成では、板金の剛性によりキートップ部材の撓みの防止を図ることができるものの、装置が大型化するという問題がある。具体的には、キーパッドの背面側に板金を貼り付ける場合には、装置筐体に、板金の厚みを吸収するための領域を設けることとなる。このため、装置筐体が板金の厚み方向に大型化してしまう。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化を回避しつつ、斜め操作を容易に検出することができるキーパッド及び携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願に開示するキーパッドは、スイッチを押圧するための複数の押圧凸部が裏面に形成された弾性シート部材と、前記弾性シート部材の表面に取り付けられ、前記弾性シート部材の表面のうち前記押圧凸部と重合する位置に配置された第1シート部と前記弾性シート部材の表面のうち前記押圧凸部と重合する位置以外の位置に配置されて前記第1シート部よりも肉厚に形成された第2シート部とを一体に有するシート状のキートップ部材とを備えた。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示するキーパッドの一つの態様によれば、装置の大型化を回避しつつ、斜め操作を容易に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施例に係る携帯電話機を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、外装ケース等を取り外した筐体の内部構成例を示す外観斜視図である。
【図3】図3は、本実施例におけるキーパッドを表面側から見た平面図である。
【図4】図4は、本実施例におけるキーパッドを裏面側から見た平面図である。
【図5】図5は、図3に示した多機能キートップ部材付近の拡大斜視図である。
【図6】図6は、図5のB−B線断面を拡大して示す図である。
【図7】図7は、従来のキーパッドを表面側から見た平面図である。
【図8】図8は、従来のキーパッドを裏面側から見た平面図である。
【図9】図9は、図7に示したキートップ部材付近の拡大斜視図である。
【図10】図10は、図9のA−A線断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示するキーパッド及び携帯端末装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本願の開示する携帯端末装置が限定されるものではない。例えば、以下の実施例では、本願の開示する携帯端末装置を携帯電話機に適用する例を示すが、本願の開示する携帯端末装置は、PDA(Personal Digital Assistant)などの他の携帯端末装置にも適用することができる。
【実施例】
【0015】
まず、図1を用いて、本実施例に係る携帯電話機の外観構成について説明する。図1は、本実施例に係る携帯電話機10を示す外観斜視図である。本実施例に係る携帯電話機10は、掌サイズの2つの筐体20、30を備える。これら2つの筐体20、30は、スライド機構等の連結部を介してスライド自在に連結されている。
【0016】
筐体20は、多機能キー21、決定キー22、モードキー23、ダイヤルキー24等の操作キーを有して操作部として機能するキーパッド100が設けられた固定側の筐体である。筐体30は、送話部31、受話部32、液晶表示部33等が設けられた可動側の筐体である。なお、図1は、固定側の筐体20に対して可動側の筐体30をスライドすることによって、可動側の筐体30が固定側の筐体20に対して開放された状態を示している。
【0017】
また、筐体20は、内面となるキーパッド100側に位置する前面外装ケース25と、外面となる背面側に位置する背面外装ケース26との2つ割り構造である。筐体30は、外面となる液晶表示部33側に位置する前面外装ケース34と、内面となる背面側に位置する背面外装ケース35との2つ割り構造である。
【0018】
次に、図2を用いて、キーパッド100付近における筐体20の内部構成について説明する。図2は、外装ケース等を取り外した筐体20の内部構成例を示す外観斜視図である。同図に示すように、固定側の筐体20は、内部枠体等に支持された回路基板150を備える。回路基板150は、各種の回路部品を実装した基板であり、キーパッド100側となる表面側に、複数のドームスイッチ151を配列したドームシート152が実装されている。ドームスイッチ151は、キーパッド100が有する多機能キー21、決定キー22、モードキー23、ダイヤルキー24それぞれのキーに対応して配置されている。
【0019】
このうち、多機能キー21の上下左右方向の後述する4個の十字部分21a〜21dにそれぞれ対応する4個のドームスイッチ151は、多機能キー21の十字部分21a〜21dに対する押圧操作に応じて選択的にオンとなる。また、後述する斜め操作が行われた場合には、4個のドームスイッチ151のうち、多機能キー21の斜め部分21e〜21hに隣接する2個のドームスイッチ151がオンとなる。なお、多機能キー21の十字部分21a〜21dにそれぞれ対応する4個のドームスイッチ151を押下する際に必要な力は、他のドームスイッチを押下する際に必要な力よりも低く設定されている。例えば、他のドームスイッチを押下する際に必要な力が1.2Nであるとすると、4個のドームスイッチ151を押下する際に必要な力は1.0N程度とされ、0.2N程度低く設定されている。これは、斜め操作が行われた場合に4個のドームスイッチ151のうち、多機能キー21の斜め部分21e〜21hに隣接する2個のドームスイッチの押下を容易とするためである。
【0020】
次に、図3及び図4を用いて、キーパッド100の構成について具体的に説明する。図3は、本実施例におけるキーパッド100を表面側から見た平面図であり、図4は、本実施例におけるキーパッド100を裏面側から見た平面図である。図3及び図4に示すように、キーパッド100は、弾性シート部材110と、弾性シート部材110の表面に取り付けられたキートップ部材120とを有する。
【0021】
弾性シート部材110は、例えばシリコン等の弾性材料により形成されたシート状の部材であり、その裏面(「第1の面」に相当)に複数の押圧凸部111を形成している。押圧凸部111は、ドームシート152のドームスイッチ151それぞれに対応して配置されており、ドームスイッチ151を押圧するための押し子として機能するものである。このうち多機能キー21の上下左右方向の4個の十字部分21a〜21dにそれぞれ対応する4個の押圧凸部111は、多機能キー21の十字部分21a〜21dのいずれかに対する押圧操作に応じて、4個のドームスイッチ151を選択的に押圧する。
【0022】
キートップ部材120は、例えばポリカーボネート等の剛性材料により形成されたシート状の部材であり、弾性シート部材110の表面(「第2の面」に相当)に接着剤等により貼り付けられている。キートップ部材120は、多機能キー21となる多機能キートップ部材121、決定キー22となる決定キートップ部材122、モードキー23となるモードキートップ部材123、ダイヤルキー24となるダイヤルキートップ部材124等を含んでいる。このうち、多機能キートップ部材121は、上下左右方向の十字部分21a〜21dの押圧操作に加えて、十字部分21a〜21dの間に位置する斜め部分21e〜21hの押圧操作を検出する。なお、以下では、多機能キートップ部材121の斜め部分21e〜21hに対する押圧操作を「斜め操作」と呼ぶことがあるものとする。
【0023】
次に、図5及び図6を用いて、斜め操作を検出するための多機能キートップ部材121付近の具体的な構成について説明する。図5は、図3に示した多機能キートップ部材121付近の拡大斜視図であり、図6は、図5のB−B線断面を拡大して示す図である。図5及び図6に示すように、多機能キートップ部材121は、第1シート部125と第2シート部126とを一体として有する。
【0024】
第1シート部125は、多機能キー21となる多機能キートップ部材121の十字部分21a〜21dに相当する部分であり、弾性シート部材110の表面のうち押圧凸部111と重合する位置に配置されている。
【0025】
第2シート部126は、多機能キートップ部材121の十字部分21a〜21dの間に位置する斜め部分21e〜21hに相当する部位であり、弾性シート部材110の表面のうち押圧凸部111と重合する位置以外の位置に配置されている。第2シート部126は、押圧凸部111と重合する位置に配置された第1シート部125よりも肉厚に形成されている。例えば、第2シート部126は、第1シート部125よりも0.1〜2.0mm程度肉厚に形成されている。また、第2シート部126は、弾性シート部材110の押圧凸部111の突出方向と反対の方向に突出した状態で第1シート部125よりも肉厚に形成されている。
【0026】
また、弾性シート部材110の第2シート部126に対応する部位、言い換えると、弾性シート部材110の多機能キートップ部材121の斜め部分21e〜21hに相当する部位には、弾性シート部材110を厚み方向に貫通する切欠部112が設けられている。
【0027】
次に、斜め操作を検出する際のキーパッド100の作用について説明する。ここでは、多機能キートップ部材121の斜め部分21e〜21hに相当する第2シート部126がユーザにより押圧されたものとして説明を行う。
【0028】
本実施例に係るキーパッド100では、多機能キートップ部材121の第2シート部126が、押圧凸部111と重合する位置に配置された第1シート部125よりも肉厚に形成されている。すなわち、第2シート部126の剛性が、第1シート部125の剛性よりも大きくなっている。このため、キーパッド100では、多機能キートップ部材121の第2シート部126が押圧されたとしても、剛性の大きい第2シート部126が撓み難くなる。したがって、第2シート部126に対する押圧力が、第1シート部125を介して第2シート部126に隣接する2個の押圧凸部111に確実に伝達され、隣接する2個の押圧凸部111が2個のドームスイッチ151を同時に押圧する。その結果、キーパッド100は、斜め操作を容易に検出することができる。また、多機能キートップ部材121の第1シート部125と第1シート部125よりも肉厚に形成された第2シート部126とがシート状に一体に形成されているので、板金等の剛性向上用の他の部品を組み込むことなく、装置の大型化を回避することができる。
【0029】
また、本実施例に係るキーパッド100では、多機能キートップ部材121の第2シート部126は、弾性シート部材110の押圧凸部111の突出方向と反対の方向に突出した状態で第1シート部125よりも肉厚に形成されている。このため、多機能キートップ部材121の第2シート部126とドームシート152との間に隙間を確保することができ、斜め操作時に第2シート部126を正常に押し切る程度のストローク長を容易に確保することができる。その結果、キーパッド100は、斜め操作を容易に検出することができる。
【0030】
また、本実施例に係るキーパッド100では、弾性シート部材110の第2シート部126に対応する部位に切欠部112が設けられている。このため、ユーザにより押圧された第2シート部126が切欠部112内を直進することとなり、第2シート部126が弾性シート部材110の第2シート部126に対応する部位の周縁部分を引っ張ることを防止することができる。その結果、キーパッド100は、第2シート部126を押圧する際のクリック感を向上することができ、斜め操作をより一層容易に検出することができる。
【0031】
上述してきたように、本実施例によれば、多機能キーにおける十字部分に相当する第1シート部125よりも十字部分の間の斜め部分に相当する第2シート部126を肉厚に形成している。このため、多機能キーにおける斜め部分の剛性が十字部分の剛性よりも増大し、斜め部分に隣接する2個の押圧凸部111が2個のドームスイッチ151を確実に押圧する。その結果、斜め操作を容易に検出することができる。さらに、板金等の補強部材を組み込むことなく多機能キーの斜め部分の剛性を増大させることができ、装置の大型化を回避することができる。
【0032】
(他の実施例)
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において、種々の異なる実施例にて実施することもできる。
【0033】
すなわち、本実施例では、筐体20、30をスライド自在に連結するスライド機構を用いたスライド方式の携帯電話機を例に挙げて説明したが、本願の開示する携帯端末装置は、スライド方式以外の携帯端末装置にも適用することができる。例えば、本願の開示する携帯端末装置は、折り畳み方式や平面回転方式の連結部により一方の筐体に対して他方の筐体を可動自在とした携帯端末装置にも同様に適用することができる。
【0034】
また、本実施例では、携帯端末装置としての携帯電話機への適用例を説明したが、本願の開示する携帯端末装置は、これに限定されるものではない。例えば、本願の開示する携帯端末装置は、PDAのような小型情報処理端末、小型音楽再生装置、携帯テレビ、携帯型ゲーム機等の他の各種携帯端末装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 携帯電話機(携帯端末装置)
20 筐体
21 多機能キー
21a〜21d 十字部分
21e〜21h 斜め部分
30 筐体
100 キーパッド
110 弾性シート部材
111 押圧凸部
112 切欠部
120 キートップ部材
121 多機能キートップ部材
125 第1シート部
126 第2シート部
150 回路基板
151 ドームスイッチ
152 ドームシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチを押圧するための複数の押圧凸部が第1の面に形成された弾性シート部材と、
前記弾性シート部材の前記第1の面と異なる第2の面に取り付けられ、前記弾性シート部材の前記第2の面のうち前記押圧凸部と重合する位置に配置された第1シート部と前記弾性シート部材の前記第2の面のうち前記押圧凸部と重合する位置以外の位置に配置されて前記第1シート部よりも肉厚に形成された第2シート部とを一体に有するキートップ部材と
を備えたことを特徴とするキーパッド。
【請求項2】
前記第2シート部は、前記押圧凸部の突出方向と反対の方向に突出した状態で前記第1シート部よりも肉厚に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のキーパッド。
【請求項3】
前記弾性シート部材は、当該弾性シート部材を厚み方向に貫通する切欠部を前記第2シート部と対応する部分に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のキーパッド。
【請求項4】
キーパッドを備えた携帯端末装置であって、
前記キーパッドは、
スイッチを押圧するための複数の押圧凸部が第1の面に形成された弾性シート部材と、
前記弾性シート部材の前記第1の面と異なる第2の面のうち前記押圧凸部と重合する領域に配置された第1シート部と前記弾性シート部材の前記第2の面のうち前記押圧凸部と重合する領域以外の領域に配置されて前記第1シート部よりも肉厚に形成された第2シート部とを一体に有するキートップ部材と
を備えたことを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−204544(P2011−204544A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72090(P2010−72090)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】