説明

ギヤードモータ

【課題】出力部材に設けた欠歯部を利用してケースの小型化を図ることのできるギヤードモータを提供すること。
【解決手段】ギヤードモータ1の歯車機構6において、歯車63に噛合する歯車64(出力部材640)の外周部には、周方向に複数の歯部645が形成された歯部形成部646と、歯部645が形成されていない欠歯部647とが設けられている。欠歯部647は、歯部645の歯先円F64より径方向内側に位置する円周面(円弧面)からなる小径部647aを備えている。歯車64(出力部材640)は、他の歯車よりケース51の内面519に近接している。但し、出力部材640がモータ2に従動して回転した際、常に小径部647aがケース51の内面519に対向する。このため、出力部材640とケース51の内面519とを近接させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび歯車機構がケースに収容されたギヤードモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギヤードモータは、モータと、モータの回転を伝達する歯車機構とが共通のケースに収容されており、歯車機構を介してモータの回転を出力する出力部材は、歯車機構の最終歯車として構成されている。ここで、モータに従動して出力部材が回転する角度範囲(従動角度範囲)が180°未満である場合、出力部材は、周方向に複数の歯部が形成された歯部形成部と、歯部が形成されていない欠歯部とを備えた欠歯歯車として構成されることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−130915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、出力部材に欠歯部を設けたことによって発生したスペースが有効に利用されていない。このため、ケース内には無駄な空間が広く存在し、歯車機構が占める空間の割にはケースが大きいという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、出力部材に設けた欠歯部を利用してケースの小型化を図ることのできるギヤードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、モータと、該モータの回転を伝達する歯車機構と、前記モータおよび前記歯車機構を内部に収容するケースと、を有し、前記歯車機構を介して前記モータの回転を出力する出力部材が前記歯車機構の最終歯車を構成しているギヤードモータであって、前記出力部材は、周方向に複数の歯部が形成された歯部形成部と、歯部が形成されていない欠歯部と、を備え、当該欠歯部は、前記歯部の歯先円より径方向内側に位置する小径部を備え、前記出力部材は、前記歯車機構の他の歯車より前記ケースの内面に近接し、かつ、当該出力部材が前記モータに従動して回転した際、常に前記小径部が前記ケースの内面に対向していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、出力部材は、歯車機構の他の歯車よりケースの内面に近接しているが、出力部材には、歯先円より径方向内側に位置する小径部を備えた欠歯部が設けられているとともに、出力部材が前記モータに従動して回転した際、常に小径部が前記ケースの内面に対向している。このため、ケースの内面と出力部材とを近接させることができるので、ケースの小型化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記歯部形成部にはグリスが塗布されているとともに、前記歯部形成部の角度範囲は、前記出力部材が前記モータに従動して回転する角度範囲より大であることが好ましい。かかる構成によれば、ギヤードモータの組み立て時に出力部材を回転させながらグリスを塗布する際、出力部材がモータに従動して回転する角度範囲の全体にグリスを確実に塗布することができる。
【0009】
本発明において、前記歯車機構の途中位置には前記出力部材が前記モータに従動して回転する角度範囲を規定するストッパー機構が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、出力部材が前段の歯車に従動して回転する際、前段の歯車の歯部が欠歯部に係合することを確実に防止することができる。
【0010】
本発明において、前記出力部材では、前記欠歯部に前記歯車機構を組み立てる際に当該出力部材の角度位置を決める位置決め部が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、出力部材に位置決め部を容易に設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、出力部材は、歯車機構の他の歯車よりケースの内面に近接しているが、出力部材には、歯先円より径方向内側に位置する小径部を備えた欠歯部が設けられているとともに、出力部材が前記モータに従動して回転した際、常に小径部が前記ケースの内面に対向している。このため、ケースを出力部材に近接させることができるので、ケースの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したギヤードモータの全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用したギヤードモータからカバーを外した状態の平面図である。
【図3】本発明を適用したギヤードモータの内部構成を示す説明図である。
【図4】本発明を適用したギヤードモータの歯車機構の説明図である。
【図5】本発明を適用したギヤードモータのモータピニオンと歯車との噛合部分の説明図である。
【図6】本発明を適用したギヤードモータにおいてモータピニオンと歯車との間に構成したストッパー機構の説明図である。
【図7】本発明を適用したギヤードモータの出力部材と歯車との噛合部分の平面図である。
【図8】本発明を適用したギヤードモータを製造する際に歯車と歯車との位相合わせを行う様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明を適用した歯車機構およびモータの一例を説明する。
【0014】
(全体構造)
図1は、本発明を適用したギヤードモータの全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)、(c)は、ギヤードモータの斜視図、ギヤードモータからカバーを外した状態の分解斜視図、およびさらにケースを外した状態の分解斜視図である。図2は、本発明を適用したギヤードモータからカバーを外した状態の平面図である。図3は、本発明を適用したギヤードモータの内部構成を示す説明図であり、図3(a)、(b)は、ギヤードモータを図2のS−S′線に相当する位置でギヤードモータを切断したときの断面図、および図2のO−A−B−C−D−Eに沿って歯車機構を切断したときの断面図である。
【0015】
図1および図2において、本発明を適用したギヤードモータ1は、概ね、ステッピングモータ構造を備えたモータ2と、複数の歯車からなる歯車機構6と、モータ2および歯車機構6を収容したハウジング5とから構成されている。ハウジング5は、上面が開口するカップ状のケース51と、ケース51の開口を塞ぐ板状のカバー52とを備えている。
【0016】
図3(a)に示すように、モータ2は、ステータ4とロータ3とから概略構成されている。ステータ4は、モータ軸線方向Lに重ねて配置された2つのステータ組4a、4bを備えており、ステータ組4a、4bの各々において、外ステータコア41と内ステータコア42とがモータ軸線方向Lで対向するように配置されている。外ステータコア41および内ステータコア42は、いずれも円環状のフランジ部と、フランジ部の内周縁からモータ軸線方向Lに折れ曲がった極歯とを備え、外ステータコア41および内ステータコア42をモータ軸線方向Lに配置した状態で、外ステータコア41の極歯と、内ステータコア42の極歯は、周方向で交互に配列される。
【0017】
ステータ4の内側にはロータ3が同軸状に配置されている。ロータ3は、軸穴330を備えたロータ本体33と、このロータ本体33の外周面に固着された永久磁石31とを備えており、永久磁石31の外周面は、極歯と対向している。かかるロータ3は、軸穴330に嵌った支軸70によって回転可能に支持されている。支軸70は、ケース51の底部510とカバー52とによって両端が支持された固定軸である。ロータ本体33において、カバー52側の端部は、外周面にモータピニオン34を備えた回転軸35になっている。このように構成したモータ2において回転軸35が突出する出力側L1とは反対側(反出力側L2)に配置されたステータ組4bの外ステータコア41は、ケース51の一部として形成されている。
【0018】
2つのステータ組4a、4bの各々において、外ステータコア41および内ステータコア42は、コイルボビン86に形成されている一対のフランジ部88の各々に重なっている。フランジ部88は、極歯の周りを囲む円筒部87によって繋がっており、円筒部87とフランジ部88によって区画された領域内にコイル45が巻回されている。コイルボビン86は、ステータ4の出力側L1の端面に対して径方向外側に位置する部分に肉厚の端子保持部85を備えており、端子保持部85は、ケース51の側面部に形成された切り欠き515(図1(c)参照)から径方向外側に突出している。かかる端子保持部85には、複数本のモータ側端子99が保持されている。端子保持部85は、径方向の外側が端子カバー11で覆われ、さらに外カバー12で覆われている。
【0019】
(歯車機構6の概略構成)
図4は、本発明を適用したギヤードモータ1の歯車機構6の説明図であり、図4(a)、(b)は、歯車機構6の斜視図および分解斜視図である。
【0020】
図2、図3(b)および図4に示すように、本形態のギヤードモータ1は、モータピニオン34を含む複数の歯車からなる歯車機構6を備えており、モータ2のロータ3の回転は、歯車機構6を介して外部に出力される。本形態において、歯車機構6は、モータピニオン34の他に、計4つの歯車61、62、63、64を備えており、最終段の歯車64は、出力軸641を備えた出力部材640として構成されている。出力部材640において、出力軸641は、丸棒部分を相対向する2面で切り欠いた形状の板状部である。このため、出力軸641は、周方向において形状が変わっており、出力軸641に被駆動部材(図示せず)を連結する際の取り付け方向には周方向において方向性がある。
【0021】
最終段の歯車64を除く3つの歯車61、62、63はいずれも、ケース51に固定された地板55と、カバー52とによって両端が支持された支軸71、72、73(図3(b)参照)によって回転可能に支持されている。最終段の歯車64は、それ自身に形成された軸部642、643がカバー52側の軸受部521と地板55側の軸受部551とに回転可能に支持されている。本形態において、地板55は、平板部550と、平板部550の相対向する位置から出力側L1に向けて起立した一対の連結板556、557とを備えており、連結板556、557は、ケース51の内面に固定されている。また、地板55の平板部550の中央には、支軸70やロータ3の回転軸35等が貫通する中央孔558が形成されている。本形態において、歯車61、62、63は、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等からなる樹脂製の歯車である。
【0022】
本形態において、モータピニオン34からみて第1番目の歯車61の大径歯車部611は、回転軸35の出力側L1の外周側に形成されたモータピニオン34と噛合し、歯車61の小径歯車部612には、第2番目の歯車62の大径歯車部621が噛合している。歯車62の小径歯車部622には、第3番目の歯車63の大径歯車部631が噛合し、歯車63の小径歯車部632には最終段の歯車64の歯部645が噛合している。このようにして歯車機構6は減速歯車列として構成されている。ここで、4つの歯車61、62、63、64は、モータピニオン34の周りに配置されている。
【0023】
このように構成したギヤードモータ1において、モータ2のステータ4に給電されてロータ3が回転すると、その回転は、モータピニオン34、歯車61、歯車62、歯車63を介して出力部材640(歯車64)に伝達され、出力軸641が回転する。本形態では、ロータ3は時計回りCWの方向および反時計回りCCWの方向に回転し、それに伴い、出力部材640(歯車64)は、所定の角度範囲にわたって往復回転する。ここで、出力部材640の出力軸641は、丸棒部分を相対向する2面で切り欠いた形状の板状部であるため、かかる出力軸641の方向性を利用して所定の向きに被駆動部材(図示せず)を出力軸641に連結すると、モータ2の回転を利用して被駆動部材の姿勢等を切り換えることができる。その際、出力部材640の時計回りCWの回転範囲および反時計回りCCWの回転範囲は、図5および図6を参照して以下に説明するように、モータピニオン34と歯車61との間に構成されたストッパー機構によって規定されるため、被駆動部材の姿勢等が切り換えられる範囲もストッパー機構によって制限される。
【0024】
(モータピニオン34と歯車61とのストッパー機構等の構成)
図5は、本発明を適用したギヤードモータ1のモータピニオン34と歯車61との噛合部分の説明図であり、図5(a)、(b)は、モータピニオン34と歯車61との噛合部分の平面図、および噛合部分を拡大して示す平面図である。図6は、本発明を適用したギヤードモータ1においてモータピニオン34と歯車61との間に構成したストッパー機構の説明図であり、図6(a)、(b)は、モータピニオン34の回転がストッパー機構によって停止する直前の様子を示す平面図、およびモータピニオン34の回転がストッパー機構によって停止した状態を示す平面図である。
【0025】
図5において、モータピニオン34(第1歯車)は、全周にわたって歯部345が形成されており、本形態において歯数は9枚である。モータピニオン34は歯車61の大径歯車部611に噛合しており、歯車61の大径歯車部611には、モータピニオン34の歯部345と係合してモータピニオン34の回転を止めるストッパー部8が構成されている。より具体的には、歯車61の大径歯車部611の外周部には、歯部615が形成された歯部形成部616と、歯部615が形成されていない欠歯部617とが形成されており、欠歯部617はストッパー部8として機能する。
【0026】
ここで、欠歯部617では、歯部形成部616との2つの境界部分のいずれにおいても、歯車61の歯部615の歯先円F61より径方向外側に突出した突出部617aと、突出部617aに対して周方向において歯部形成部616とは反対側で隣り合う位置で突出部617aより径方向内側に窪んだ窪み部617bとが設けられており、突出部617aと窪み部617bとは周方向で繋がっている。
【0027】
本形態において、窪み部617bは、歯車61の歯先円F61より径方向内側まで凹んでいる。但し、窪み部617bは、歯車61のピッチ円P61より径方向外側に位置する。ここで、歯車61のピッチ円P61は、歯底円R61と歯先円F61との間に位置することから、窪み部617bは、歯底円R61と歯先円F61との中間より径方向外側に位置する。すなわち、歯底円R61の直径と歯先円F61の直径との間の直径を備えた仮想円であって歯底円R61および歯先円F61に対して同心状の仮想円より径方向外側に窪み部617bが位置する。なお、窪み部617bは、歯部615の1つ分の長さと略同等の周長を有する周面(円弧面)として構成されている。また、欠歯部617のうち、2個所の窪み部617bによって周方向で挟まれた部分は、歯先円F61と同一の直径を有する同心状の仮想円上で周方向に延在する周面(円弧面)になっている。
【0028】
このように構成した歯車機構6において、モータピニオン34が回転し、図6(a)に示すように、モータピニオン34の歯部345が歯部形成部616の端部に到達すると、モータピニオン34の歯部345が歯車61の突出部617aに当接し、その直後、図6(b)に示すように、モータピニオン34の歯部345は、窪み部617bに当接する。その結果、モータピニオン34の回転が停止する。かかる停止動作の際、図6(a)に示すように、モータピニオン34の歯部345が歯車61の突出部617aに当接したとき、歯部345のうち、ピッチ円P34に相当する部分が歯車61の突出部617aに当接する。その際、歯車61の突出部617aの側面が傾斜しているので、歯部345のピッチ円P34に相当する部分が突出部617aに当接したときの圧力角は大きい。例えば、圧力角は50°以上である。このため、モータピニオン34にブレーキがかかることになる。また、図6(b)に示すように、モータピニオン34の歯部345が窪み部617bに当接する際、歯部345の先端側から根元側に近い部分が歯車61の窪み部617bに当接する。従って、モータピニオン34を停止させた際の荷重は、歯部345のピッチ円P34に相当する部分と突出部617aとの当接部分と、歯部345の先端側と歯車61の窪み部617bとの当接部分とに分担されることになる。
【0029】
このように本形態の歯車機構6およびギヤードモータ1では、モータピニオン34(第1歯車)と歯車61(第2歯車)との係合を利用したストッパー機構を構成するにあたって、歯車61には、歯部615が形成されていない欠歯部617からなるストッパー部8を設けるとともに、かかる欠歯部617(ストッパー部8)には、歯車61の歯先円F61より径方向外側に突出した突出部617aと、突出部617aに対して周方向で隣り合う位置で突出部617aより径方向内側に窪んだ窪み部617bとが設けられている。このため、モータピニオン34の歯部345が欠歯部617の窪み部617bに当接する際、突出部617aも、モータピニオン34の歯部345のピッチ円P34の近傍に当接する。このため、歯車61に設けた欠歯部617(ストッパー部8)によってモータピニオン34の回転を停止させた際でも、モータピニオン34の回転力が歯部345の歯先に集中しないので、歯部345に折れ、変形、クラック等の損傷が発生しにくい。
【0030】
また、窪み部617bは、歯車61の歯先円F61より径方向内側まで凹んでいる。このため、モータピニオン34の歯部345が窪み部617bに当接する前に、突出部617aがモータピニオン34の歯部345のピッチ円P34の近傍に確実に当接する。このため、歯車61に設けた欠歯部617によってモータピニオン34の回転を停止させた際、モータピニオン34の回転力が歯部345の歯先に集中することを確実に防止することができるので、歯部345の損傷がより発生しにくいという利点がある。
【0031】
さらに、窪み部617bは、歯車61のピッチ円P61より径方向外側に位置する。すなわち、歯車61の歯底円R61の直径と歯先円F61の直径との中間の直径を備えた仮想円であって歯底円R61および歯先円F61に対して同心状の仮想円より径方向外側に窪み部617bが位置する。このため、モータピニオン34において周方向で隣り合う歯部345が突出部617aを両側から挟んで食い込んだ状態となって抜けなくなるという事態を回避することができる。
【0032】
また、本形態では、上記のストッパー機構を構成する第1歯車は、モータ2の回転軸35に設けられたモータピニオン34であり、第2歯車は、モータピニオン34に噛合する歯車61(入力歯車)である。このため、トルクが比較的小さい部分にストッパー機構(ストッパー部8)が設けられているので、歯部345に加わる負荷が小さい。それ故、歯部345の損傷が発生しにくい。
【0033】
(出力部材640の構成)
図7は、本発明を適用したギヤードモータ1の出力部材640と歯車63との噛合部分の平面図である。
【0034】
図7に示すように、本形態のギヤードモータ1の歯車機構6において、歯車63の小径歯車部632は、全周にわたって歯部635が形成されており、本形態において歯数は10枚である。これに対して、歯車63の小径歯車部632に噛合する歯車64(出力部材640)の外周部には、周方向に複数の歯部645が形成された歯部形成部646と、歯部645が形成されていない欠歯部647とが設けられている。このため、歯車64において、欠歯部647は、歯車63の歯部635と係合して歯車63の回転を阻止するストッパー部として機能する。
【0035】
ここで、欠歯部647は、歯部645の歯先円F64より径方向内側に位置する円周面(円弧面)からなる小径部647aと、小径部647aと歯部形成部646とに挟まれた位置で小径部647aより大径に形成された大径部647b、647cとを備えており、大径部647b、647cは、歯先円F64と同一の直径を有する円周面(円弧面)である。
【0036】
このように構成したギヤードモータ1において、歯車64(出力部材640)は、他の歯車61、62、63、64よりケース51の内面519に近接している。但し、出力部材640がモータ2に従動して回転した際、常に小径部647aがケース51の内面519に対向するようになっている。このため、出力部材640とケース51の内面519とを近接させることができる。それ故、ケース51の小型化、すなわち、ハウジング5およびギヤードモータ1の小径化を図ることができる。
【0037】
このように構成したギヤードモータ1の歯車機構6において、出力部材640がモータ2に従動して回転する角度範囲は、図5および図6を参照して説明した歯車61のストッパー部8によって規定された角度(θa)である。これに対して、出力部材640において、歯部形成部646の角度範囲はθbであり、歯部形成部646の角度範囲θbは、出力部材640がモータ2に従動して回転する角度範囲θaより大である。このため、出力部材640が歯車63に従動して回転する際、歯車63の歯部635が欠歯部647に係合することはない。
【0038】
ここで、歯車機構6に用いた歯車には、グリスが塗布されているため、出力部材640の歯部645にもグリス9が塗布されている。本形態において、出力部材640がモータ2に従動して回転する角度範囲はθaであるが、グリス9は、角度範囲θaより広い角度範囲θbの全体にわたって塗布されている。すなわち、本形態では、歯部形成部646の角度範囲θbは、出力部材640がモータ2に従動して回転する角度範囲θaより大であるため、ギヤードモータ1の組み立て時に出力部材640を回転させながらグリス9を塗布する。その際、歯部形成部646の角度範囲θbにわたって出力部材640を回転させることができるので、モータ2に従動して回転する角度範囲θaの全体にわたってグリス9を確実に塗布することができる。
【0039】
(歯車61と歯車64(出力部材640)との位相合わせ)
図8は、本発明を適用したギヤードモータ1を製造する際に歯車61と歯車64との位相合わせを行う様子を示す説明図である。
【0040】
図5および図6を参照して説明したように、歯車61にはストッパー部8が構成されており、かかるストッパー部8によって歯車64(出力部材640/出力歯車)が回転する角度範囲がθaに設定されている。また、出力部材640の出力軸641には被駆動部材が所定の向きに連結される。このため、歯車61と歯車64(出力部材640)とについては位相を合わせる必要がある。但し、歯車61は、モータ2の回転が最初に入力される入力歯車であり、歯車61と歯車64とは直接噛合せずに歯車64(出力部材640)に他の歯車62、63を介して前段で接続している歯車(前段の歯車)である。
【0041】
そこで、本形態では、図7等に示すように、歯車64には、歯車64の角度位置を示す第1孔649(位置決め部)が形成されている。本形態において、第1孔649は、歯車64の欠歯部647を利用して形成されている。より具体的には、第1孔649は、欠歯部647の大径部647b、647cのうち、周長が長い方の大径部647cに形成されている。ここで、第1孔649は、大径部647cの外縁で一部が途切れて開放状態になった内周輪郭形状が真円の孔として形成されている。但し、第1孔649では、180°以上の角度範囲にわたって内周壁649aが存在する。本形態では、第1孔649には、略200°の角度範囲にわたって内周壁649aが存在する。
【0042】
一方、図5等に示すように、歯車61には、歯車61の角度位置を示す第2孔619が形成されている。本形態において、第2孔619は、歯車61の大径歯車部611において欠歯部617に相当する部分に形成されている。ここで、第2孔619は、内周輪郭形状が周方向に長軸を向ける長円状あるいは楕円状の孔として形成されている。
【0043】
従って、ギヤードモータ1の製造工程において、歯車機構6を組み付ける際には、まず、図8(a)に示すように、治具(図示せず)を利用して地板55に支軸71、72、73を取り付けた状態で、地板55の中央孔558の内側に丸棒状の第1ピン91および丸棒状の第2ピン92を起立させておく。ここで、第1ピン91については、歯車64の回転中心(軸受部551)を中心とする所定の角度位置に起立させ、第2ピン92については、歯車61の回転中心(支軸71)を中心とする所定の角度位置に起立させておく。
【0044】
次に、出力部材640および歯車61、62、63を配置する。そして、図8(b)に示すように、軸受部551に嵌るように出力部材640を配置する際には、第1ピン91に第1孔649が嵌った位置を出力部材640の組み付け角度位置とする。また、支軸71に嵌るように歯車61を配置する際、第2ピン92に第2孔619が嵌った位置を歯車61の組み付け角度位置とする。
【0045】
しかる後に、図8(c)に示すように、歯車63を出力部材640と噛合させる。また、歯車62を歯車63と噛合させる。その際、歯車62を歯車61と噛合させるが、第2孔619は長円状または楕円状の孔であるので、第2ピン92が第2孔619に嵌った状態のまま、歯車61の角度位置を微調整して歯車62と歯車61とを噛合させる。
【0046】
このようにして、歯車機構6を地板55に組み付けると、歯車61と歯車64(出力部材640)との位相を合わせることができる。
【0047】
以上説明したように、本形態では、出力部材640には、出力部材640の角度位置を示す第1孔649が形成され、出力部材640に対して他の歯車62、63を介して接続する前段の歯車61には、歯車61の角度位置を示す第2孔619が形成されている。このため、第1孔649および第2孔619を基準に出力部材640および前段の歯車61の各々の角度位置を決定した後、出力部材640と前段の歯車61との間に他の歯車62、63を組み付ければ、出力部材640と前段の歯車61との位相を調整した状態で他の歯車62、63を組み付けることができる。従って、直接噛合していない歯車同士であっても位相を合わせることができる。また、欠歯を利用して位相を合わせる場合と違って、歯数が少ない場合でも、噛み合い率が低下することがない。
【0048】
ここで、第1孔649は、内周輪郭形状が真円であり、第2孔619は、内周輪郭形状が周方向に長軸を向ける長円あるいは楕円である。このため、出力部材640の角度位置を精度よく調整でき、噛み合いのクリアランスについては前段の歯車61によって調節することができる。
【0049】
また、第1孔649では、180°以上の角度範囲にわたって内周壁649aが存在するため、第1孔649に第1ピン91を嵌めた後、組み付けが完了するまでの間に第1ピン91が傾くことを防止することができる。
【0050】
また、図7等を参照して説明したように、出力部材640は、周方向に複数の歯部645が形成された歯部形成部646と、歯部645が形成されていない欠歯部647とが形成されており、欠歯部647がストッパー部として機能する。このため、歯車機構6を組み付けた後、第1ピン91を抜いた場合でも、出力部材640が過度に回転してしまうことを防止することができる。また、本形態では、歯車64に対する位置決め部としての第1孔649を欠歯部647に形成したため、歯部形成部646に第1孔649を形成する場合に比して、第1孔649(位置決め部)を容易に形成することができるという利点がある。
【0051】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、ストッパー部8を入力歯車(歯車61)に設けたが、他の歯車62、63等に設けてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、モータ2を駆動源とするギヤードモータ1の歯車機構6にストッパー部8を設けたが、モータ2を駆動源とするギヤードモータ1以外の装置の歯車機構6にストッパー部8を設ける場合に本発明を適用してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、ストッパー部8において、周方向で離間する2個所に突出部617aを設け、2個所の突出部617aの各々に窪み部617bを設けたが、2個所に設けた突出部617aの間が連続した窪み部617bになっている構造を採用してもよい。
【0054】
上記実施の形態では、歯車61(前段の歯車)と歯車64(出力歯車)との角度位置の調整に第1孔649と第2孔619とを利用したが、歯車64(出力歯車)と他の歯車62、63との角度位置の調整に第1孔649と第2孔とを利用してもよい。また、第1孔649については、外周が切り欠かれていない形状であってもよく、第2孔619については、長円や楕円以外の円であってもよい。
【0055】
上記実施の形態では、モータピニオン34と歯車64との間に3つの歯車61、62、63が介在したが、モータピニオン34と歯車64との間に1つの歯車、あるいは4つ以上の歯車が介在する歯車機構6に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ギヤードモータ
2 モータ
3 ロータ
4 ステータ
6 歯車機構
8 ストッパー部
9 グリス
34 モータピニオン(第1歯車)
51 ケース
55 地板
61 歯車(入力歯車/前段の歯車/第2歯車)
62 歯車(他の歯車)
63 歯車(他の歯車)
64 歯車(出力歯車)
91 第1ピン
92 第2ピン
616 歯部形成部
617 欠歯部
617a 突出部
617b 窪み部
619 第2孔
646 歯部形成部
647 欠歯部
647a 小径部
647b、647c 大径部
649 第1孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータの回転を伝達する歯車機構と、前記モータおよび前記歯車機構を内部に収容するケースと、を有し、前記歯車機構を介して前記モータの回転を出力する出力部材が前記歯車機構の最終歯車を構成しているギヤードモータであって、
前記出力部材は、周方向に複数の歯部が形成された歯部形成部と、歯部が形成されていない欠歯部と、を備え、
当該欠歯部は、前記歯部の歯先円より径方向内側に位置する小径部を備え、
前記出力部材は、前記歯車機構の他の歯車より前記ケースの内面に近接し、かつ、当該出力部材が前記モータに従動して回転した際、常に前記小径部が前記ケースの内面に対向していることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
前記歯部形成部にはグリスが塗布されているとともに、
前記歯部形成部の角度範囲は、前記出力部材が前記モータに従動して回転する角度範囲より大であることを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記歯車機構の途中位置には前記出力部材が前記モータに従動して回転する角度範囲を規定するストッパー機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記出力部材では、前記欠歯部に前記歯車機構を組み立てる際に当該出力部材の角度位置を決める位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−46442(P2013−46442A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180858(P2011−180858)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】