説明

クエン酸塩ベースの透析用化学製剤

【課題】 透析液流路の閉塞を低減、又は防止することによって、透析効率が向上された透析液の調製に適した透析用製剤を提供する。
【解決手段】 クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する透析用クエン酸塩含有塩基濃縮物を形成し、該塩基濃縮物を酸濃縮物及び所定量の水に混合することによって透析液の最終組成物を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
A.本発明は、一般に、血液透析液の調製に使用される化学製剤に関し、より詳細には、バッチ、及びプロポーショニング透析システムの双方に適した二つの血液透析用濃縮物製剤に化学物質を分配することに関する。本願の文脈において、用語「バッチ」とは、適量の水と混合されて一人又は複数の患者の透析セッションを完了するに十分な透析液を生成する透析液組成物の量を意味する。用語「プロポーショニング」とは、透析液の調製に使用される従来タイプの計測システム、又は固定容積動的混合システムを意味する。二種の透析用濃縮物製剤は、一般に、粉末状の濃縮物を溶解して液体濃縮物を形成した後のバッチの調製と、従来のプロポーショニング計測システム等の血液透析液のオンライン作製との双方に適している。
【背景技術】
【0002】
B.関連技術の説明
腎臓は、人体において、過剰な水分と代謝性廃棄物(有毒物質)とを排除するとともに、グルコース及び電解質の正常レベルを維持することにより、ホメオスタシスと称される正常な身体内環境の維持を補助する。病気又は外傷性除去(traumatic removal)によりヒトの腎臓が機能しなくなると、過剰な水分と有毒な廃棄物(尿毒素)とが身体内に蓄積される。この尿毒素は、最終的に、廃棄物質が数種の人工的手段により除去されない場合、ヒトを死に至らしめる。血液透析や腹膜透析等の透析は、腎臓疾患を有する患者に対する治療方法である。血液透析では、患者の身体から血液を体外の人口腎臓回路を介して揚送して、血液毒素と過剰な水分とをダイライザの半透膜を介して、電解質及びプラズマ類似媒体(plasma-resembling medium) (即ち、血液透析液)中に濾過することにより除去する。腹膜透析では、患者の腹腔内に一定量の透析液を注入し、腹膜が半透膜として働く。一定の滞在時間後、透析液が排出されて、新鮮な腹膜透析液が腹腔に追加される。
【0003】
血液透析や複膜透析に使用される透析液を調製するための様々な濃縮物製剤が公知である。例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照されたい。これらの製剤は、特定の成分が異なるだけでなく、成分の濃度も異なる。一般に濃縮物製剤は、主要な成分として塩化ナトリウム、微量成分として塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを含有する。患者が必要とする場合、ブドウ糖(D−グルコース)を含有する場合もある。緩衝剤として酢酸ナトリウム、及び/又は、重炭酸ナトリウムも含有し、代謝性アシドーシスを中和している。酢酸緩衝剤が使用される場合、全ての成分が一つの濃縮物に混合され得る。重炭酸緩衝剤が使用される場合、カルシウムとマグネシウムとが炭酸塩として沈殿することを防止するために、二つの濃縮物を必要とする。
【0004】
従来の重炭酸ベースの二部に分かれた透析液は、「酸」濃縮物と、「塩基」(即ち、重炭酸塩)濃縮物と、水とを混合して調製されていた。通常、酸濃縮物は、酸の全て(例、酢酸)と、ブドウ糖、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及び塩化ナトリウムの生理的要求部分とを含有し、その一方、塩基濃縮物は、重炭酸ナトリウム、及び必要な塩化ナトリウムの平衡量とを含有する。販売されている透析用濃縮物のいくつかにおいて、塩基濃縮物は塩化ナトリウムを含有しない。酢酸は室温で液体であるため酢酸を用いた酸濃縮物の殆どが液体製品であるが、塩基濃縮物は、粉末濃縮物と液体濃縮物の双方として製造される。販売されている酸濃縮物と塩基濃縮物との他の多数の組み合わせは、透析液の調製方法と供給装置とに応じて相違する。例えば、Aksys PHD(登録商標)透析システム(アクシス有限会社(Aksys,Ltd.)[ 米国イリノイ州リンカンシア(Lincolnshire) 所在] から入手可能)は、別個の二容器内に収容された液体酸濃縮物と乾燥塩基濃縮物とを用いる。この二濃縮物を純水と連続的に混合して、酸と重炭酸塩との反応
生成物としての炭酸を生成させることによって、生理的限界値内のpH値を有する一方で、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの沈殿を防止するに十分な酸度を有する透析液を作製する。
【0005】
上述したように、腎臓疾患を有する患者の身体内には、過剰の水分と、血液尿素窒素(BUN)やクレアチニン等の廃棄生成物とが蓄積されている。事実上、一般に、これらニ物質の血中濃度の低下は、透析の全体的な有効性と効率とを判断するのに使用されている。透析効率は多数の要因にて損なわれ、その一つは血塊によるダイライザの血流路の封鎖である。ダイライザの血流路における凝血を防止、又は低減するために、いくつかの試みが行われている。特許文献4では、透析中の抗凝血物質の体外注入について説明している。1993年10月12日発行の特許文献5には、透析用製剤中の抗凝血剤の使用について説明されている。これらの特許文献に説明されている方法では、透析中、抗凝血剤の供給を制御する複雑な監視システムや調整システムを必要とするか、又は本来不安定な化学製剤を必要とするため、化学製剤を長期間保管することが不可能である。
【0006】
透析液を調製し供給する多数の供給システムが販売されている。従来、透析システムは、大量のバッチ(例、120L以上)の調製に使用されていた。透析液組成物を所定量の純水と共にバッチ槽に加えて、最終的な所望の濃度を有する透析液が得られるまで、組成物を溶解混合して一バッチを調製していた。非特許文献1に、工場等の施設において50リットル・カーボイ内で大量の透析液をオフライン調製することが説明されている。
【0007】
現在透析液の調製に使用されている二種の透析プロポーショニングシステムには、固定容積プロポーショニングシステムと、動的(即ち、サーボ制御)プロポーショニングシステムとがある。固定容積プロポーショニングシステムでは、固定容積の濃縮物と水とを混合して、最終的な透析液を作製する。二個のポンプで酸濃縮物と塩基濃縮物とを分配する一方で、第三のポンプを用いて水を計測する。最終的な透析液の組成は、導電センサにより監視される。動的プロポーショニングシステムでは、水と混合されるべき酸濃縮物と塩基濃縮物との量を導電度を監視することにより調整して、予め設定された導電度の血液透析液を作製する。これらのシステムでは、一般に、安全監視のために導電センサの第二セットが使用される。重炭酸塩含有透析液の調製方法が異なるために、酸濃縮物と塩基濃縮物と水との様々な混合比が生じる。各混合比は酸及び塩基濃縮物の特定のセットを必要とする。ある透析装置は、混合比の一つに使用されるよう設計されている一方、他の透析装置は別の混合比に使用されるよう設計されている。
【0008】
オンライン・プロポーショニングシステムの到来により、別個の水処理システムにて精製された水と透析液組成物の液体濃縮物とを、プロポーショニングポンプを用いて連続的にオンラインにて組み合わせることによって透析液が調製され得る。この技術を説明している代表的な特許は、特許文献6である。米国医療機器振興協会(Association for the Advancement of Medical Instrumentation(AAMI) RD61 2000)は、液体酸濃縮物と液体重炭酸濃縮物とがオンラインにて水と混合されて血液透析液療法に使用される最終透析液が製造されるこれら四種のプロポーショニングシステムについて記述している。これらの混合比は、35X,36.83X,45X及び36.1Xとして、一般に知られている。異なる混合比を、表1(b)に列挙する。最近の自動化技術の進歩と、オンラインにおける頻繁な品質測定とによって、プロポーショニングシステムの家庭設置による使用が可能になっている。新技術によりプロポーショニングシステムの不都合が克服されて、家庭における使用に特に適した比較的小型の構造が可能となっている。
【特許文献1】米国特許第4,336,881号明細書
【特許文献2】米国特許第4,489,535号明細書
【特許文献3】米国特許第4,756,838号明細書
【特許文献4】米国特許第5,032,615号明細書(ワード等(Ward et al. )
【特許文献5】米国特許第5,252,213号明細書(アブマッド等(Abmad et al. ))
【特許文献6】米国特許第3,441,135号明細書
【非特許文献1】Periodic Peritoneal Dialysis Using The Repeated Puncture Technique And An Automatic Cycling Machine, Vol. X Trans.Amer.Soc.Artif.Int.Organs,44.409-414(1964)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、透析液のバッチの調製、及びオンラインによる透析液の作製の双方に適した透析液組成物の濃縮物製剤の改良品を提供することにある。このアプローチは、血液凝固を低減することによって透析治療の効力を向上させる。本発明の更なる目的は、透析液の槽、即ち濃縮物の槽内で組成物を自動的に混合するに特に適した濃縮物製剤を提供することにある。本発明の更なる目的は、患者に対する安全性が保証され、安定な保存が可能で、かつ濃縮物製剤が調合封入された場所からの出荷時の温度超過に耐える濃縮物製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、クエン酸塩、重炭酸塩、及び塩を含有する透析液用クエン酸含有塩基濃縮物であって、前記塩基濃縮物を、酸濃縮物及び所定量の水に混合して透析液の最終組成物が作製されることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記酸濃縮物は、酢酸、二酢酸ナトリウム、乳酸及びクエン酸のうちから選択されることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の塩基濃縮物において、前記塩は、透析液中、約125〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の塩基濃縮物において、前記酸濃縮物中の酸は酢酸で、該酢酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在することを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7に記載の濃度を生成するに十分である請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記所定量の水は、請求項4乃至7に記載の濃度を生成するに十分である請求項1に記載のことを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択されることを要旨とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は液体であることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は乾燥体であることを要旨とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩はクエン酸で、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されていることを要旨とする。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又はプロポーショニングシステムにおいて一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在することを要旨とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項12に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記クエン酸は、多孔性を有するサブ容器内に収容されていることを要旨とする。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項12に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸は、塩基濃縮物中で錠剤、又はペレットの形態で存在することを要旨とする。
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の塩基濃縮物において、前記錠剤、又はペレット形態は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されていることを要旨とする。
【0021】
請求項17に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0022】
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩及び塩は該容器内で均等に混合されることを要旨とする。
【0023】
請求項19に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は、血液透析用の濃縮物溶液を調製するために使用されることを要旨とする。
請求項20に記載の発明は、請求項1に記載の塩基濃縮物において、更に重炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩のいずれかを含有することを要旨とする。
【0024】
請求項21に記載の発明は、(a)重炭酸ナトリウム、(b)クエン酸ナトリウム、及び(c)塩化ナトリウムを含有し、前記重炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムは、50:1〜15:8のモル比にて存在し、かつ塩化ナトリウムは、前記塩基濃縮物及び酸濃縮物が所定量の水中にて混合される際、最終的な透析液中125〜150mEq/Lのナトリウム濃度を提供するに十分な量で存在することを要旨とする。
【0025】
請求項22に記載の発明は、(a)最終的な透析液中、約15〜50mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約100〜150mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約80〜130mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な血液透析液中、約1〜8mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有し、前記酸濃縮物及び所定量の水に混合して最終的な透析液が作製されることを要旨とする。
【0026】
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸塩及びクエン酸の部分エステルうちから選択されることを要旨とする。
【0027】
請求項24に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0028】
請求項25に記載の発明は、請求項24に記載の塩基濃縮物において、前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、乾燥された前記濃縮物は、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含有することを要旨とする。
【0029】
請求項26に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩は、最終的な透析液中、約2.5〜4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量で存在し、前記ナトリウムは、最終的な透析液中、約123〜127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量で存在し、前記重炭酸塩は、30〜36.5mEq/Lの範囲内の量で存在することを要旨とする。
【0030】
請求項27に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0031】
請求項28に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な透析液中、約31.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0032】
請求項29に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0033】
請求項30に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0034】
請求項31に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な
透析液中、約30.0mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0035】
請求項32に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、(a)最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0036】
請求項33に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は重炭酸塩と分離されていることを要旨とする。
請求項34に記載の発明は、請求項33に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在することを要旨とする。
【0037】
請求項35に記載の発明は、請求項33に記載の塩基濃縮物において、前記塩基濃縮物中に存在するクエン酸は、錠剤、又はペレットの形態で存在することを要旨とする。
請求項36に記載の発明は、請求項35に記載の塩基濃縮物において、前記錠剤、又はペレット形態は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されていることを要旨とする。
【0038】
請求項37に記載の発明は、請求項22に記載の塩基濃縮物において、前記透析用塩基濃縮物は、血液透析用の濃縮物溶液を調製するために使用されることを要旨とする。
請求項38に記載の発明は、透析液を調製するためのキットであって、(a)クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基成分の容器と、(b)酢酸、クエン酸及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸成分の容器とを備え、前記塩基濃縮物及び酸濃縮物を所定量の水に加えることによって、最終的な透析液が作製されることを要旨とする。
【0039】
請求項39に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記酸濃縮物は、酢酸、クエン酸及び乳酸のうちから選択された酸を含有することを要旨とする。
請求項40に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0040】
請求項41に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記クエン酸塩は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
【0041】
請求項42に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
【0042】
請求項43に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記塩は、透析液中、約1.5〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする

【0043】
請求項44に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記酸濃縮物中の酸は酢酸で、該酢酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在することを要旨とする。
【0044】
請求項45に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択されることを要旨とする。
【0045】
請求項46に記載の発明は、請求項38に記載のキットにおいて、前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されていることを要旨とする。
請求項47に記載の発明は、請求項46に記載のキットにおいて、前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在することを要旨とする。
【0046】
請求項48に記載の発明は、請求項46に記載のキットにおいて、前記塩基濃縮物中のクエン酸は錠剤の形態で存在することを要旨とする。
請求項49に記載の発明は、請求項48に記載のキットにおいて、前記錠剤は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されていることを要旨とする。
【0047】
請求項50に記載の発明は、請求項46に記載のキットにおいて、前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0048】
請求項51に記載の発明は、請求項50に記載のキットにおいて、前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩及び塩は該容器内で均等に混合されることを要旨とする。
【0049】
請求項52に記載の発明は、請求項46に記載のキットにおいて、前記酸濃縮物及び塩基濃縮物は、血液透析用濃縮物と最終的な透析液とを調製するために使用されることを要旨とする。
【0050】
請求項53に記載の発明は、透析液を作製する方法であって、(a)クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基濃縮物を提供する工程と、(b)酢酸、乳酸及びクエン酸のうちから選択された酸を含有する酸濃縮物を提供する工程と、(c)前記塩基濃縮物及び酸濃縮物を所定量の水に加えて、透析液を作製する工程とを含むことを要旨とする。
【0051】
請求項54に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩、及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択されることを要旨とする。
【0052】
請求項55に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0053】
請求項56に記載の発明は、請求項55に記載の方法において、前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液を調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療する
プロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩、及び塩は該容器内で均等に混合されることを要旨とする。
【0054】
請求項57に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記酸濃縮物中の酸は酢酸であることを要旨とする。
請求項58に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択されることを要旨とする。
【0055】
請求項59に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記クエン酸塩は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
請求項60に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
【0056】
請求項61に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩は、透析液中、約1.5〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在することを要旨とする。
請求項62に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記酸濃縮物中の酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在することを要旨とする。
【0057】
請求項63に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)50:1〜15:8のモル比を有する重炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムと、(b)前記塩基及び酸が水と混合される際、血液透析液中、約125〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量の塩化ナトリウムとを含有することを要旨とする。
【0058】
請求項64に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0059】
請求項65に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約31.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0060】
請求項66に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0061】
請求項67に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと
、(c)最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0062】
請求項68に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約30.0mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0063】
請求項69に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有することを要旨とする。
【0064】
請求項70に記載の発明は、請求項54に記載の方法において、前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されていることを要旨とする。
請求項71に記載の発明は、請求項70に記載の方法において、前記濃縮物は乾燥体で、かつ一人又は複数の対象者の治療のための透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在することを要旨とする。
【0065】
請求項72に記載の発明は、請求項70に記載の方法において、前記塩基濃縮物中のクエン酸は、錠剤の形態で存在することを要旨とする。
請求項73に記載の発明は、請求項72に記載の方法において、前記錠剤は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されていることを要旨とする。
【0066】
請求項74に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記酸濃縮物と塩基濃縮物とは、血液透析液の調製に使用されることを要旨とする。
請求項75に記載の発明は、請求項53に記載の方法において、前記工程(c)に先だって、塩基濃縮物と酸濃縮物とが別々に水中に溶解されて塩基濃縮物と酸濃縮物とが作製されることを要旨とする。
【0067】
請求項76に記載の発明は、請求項75に記載の方法において、前記塩基濃縮物と酸濃縮物とが所定量の水に対して計測されて、オンラインにて透析液が連続的に作製されることを要旨とする。
【0068】
本発明は、オンライン法による透析液の調製、又はバッチ量の調製に適したクエン酸ベースの透析用製剤と、濃縮物溶液と、キットと、これらを使用する方法とに関する。透析用化学製剤は、第一容器内に保管された液体、又は乾燥体の濃縮物ユニットと、第二容器内に保管された液体、又は乾燥体のクエン酸塩含有重炭酸塩濃縮物ユニットとを備える。第一容器と第二容器との内容物は、透析液調製槽内に移されて水と混合され、透析液のバッチ量が作製される。これに変わって、容器の内容物を水流内に混合して、オンラインで透析液を作製してもよい。化学物質の混合と水による希釈は、形成された二酸化炭素が溶液中に溶解されたまま保持されるように、密閉環境内にて僅かな圧力を付与して実行される。本発明は、特に透析用化学製剤に関するものであり、化学物質を収容する容器と、溶
液を調製する装置とは、本発明の一部として見なされない。
【0069】
本発明の一実施形態において、クエン酸塩含有乾燥塩基濃縮物を提供する。クエン酸塩含有乾燥塩基濃縮物は、クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有し、該塩基濃縮物を酸濃縮物及び所定量の水と混合することによって、最終的な透析液が作製される。
【0070】
本実施形態の一局面において、乾燥塩基濃縮物は、(a)最終的な透析液中、約15〜50mEq/Lの範囲内の濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、(b)最終的な透析液中、約125〜150mEq/Lの範囲内の濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、(c)最終的な透析液中、約80〜130mEq/Lの範囲内の濃度を提供するに十分な量の塩化物と、(d)最終的な透析液中、約1〜8mEq/Lの範囲内の濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含み、該塩基濃縮物を酸濃縮物及び所定量の水と混合することによって、最終的な透析液が作製される。
【0071】
本実施形態の別の一局面において、塩基濃縮物は、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含有し、ここで重炭酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムとは、モル比が50:1〜15:8の範囲内にて存在し、塩化ナトリウムは、塩基濃縮物と酸濃縮物とが所定量の水中で混合される際、最終的な透析液中において125〜150mEq/Lの範囲内のナトリウム濃度を提供するに十分な量で存在する。
【0072】
本実施形態の別の一局面において、透析液を調製するためのキットを提供する。キットは(a)クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基成分容器と、(b)酢酸、クエン酸、二酢酸ナトリウム及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸成分容器とを備え、塩基濃縮物と酸濃縮物とを所定量の水に加えると最終的な透析液が製造される。液体酸濃縮物、及び乾燥重炭酸塩ユニットの目下好ましい製剤を、各々、表5、表6に列挙する。
【0073】
本発明の別の一実施形態では、透析液の作製方法を提供する。本方法は、(a)クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基濃縮物を提供する工程と、(b)酢酸、クエン酸、二酢酸ナトリウム及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸濃縮物を提供する工程と、(c)塩基濃縮物と酸濃縮物とを所定量の水に加えて、透析液を製造する工程とを含む。
【0074】
本発明の別の一実施形態では、透析液の作製方法を提供する。本方法は、(a)クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基濃縮物を提供する工程と、(b)酢酸、クエン酸、二酢酸ナトリウム及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸濃縮物を提供する工程と、(c)塩基濃縮物と酸濃縮物とを所定量の水に加えて、透析液溶液をバッチ基準で製造する工程とを含む。
【0075】
本発明の別の一実施形態では、塩基濃縮物と酸濃縮物とは別々に水に溶解されて、塩基溶液と酸溶液とが作製される。次いで、塩基溶液と酸溶液とは計測された容積の水中に計測されて、オンラインにて連続的に透析液が製造される。塩基濃縮物、及び/又は酸濃縮物の水への溶解は、塩基濃縮物、及び/又は酸濃縮物が乾燥した粉末状である場合に必要となる。
【0076】
本発明のこれらの実施形態、及び他の実施形態は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
本発明者らは家庭、介護施設、及び限定された介護環境にて使用されるに特に適した連日血液透析装置を開発している。この装置は、ケンリー等(Kenley et al)
の1997年1月7日発行の米国特許第5,591,344号に開示されており、参照により本願に援用される。この装置は、透析を開始する直前に透析液のバッチを一度に調製する。透析用化学物質は、容器内において装置の位置へと運搬される。各容器は、粉末状または液状の透析用化学物質のバッチ量を収容している。従って、本発明の一実施形態では、透析用化学物質は、上記のケンリー等の特許に開示されている装置に関連して使用される。特に好ましい装置は、アクシス有限会社から販売されているAksysPHD(登録商標)バッチ透析システムである。PHD(登録商標)は、米国および欧州において、透析患者の家庭での使用を認可されている。
【0078】
透析液を調製するには、一バッチ量容器内の乾燥透析用化学物質と、一バッチ量容器内の液体透析用化学物質とを、透析液槽内に分散させる。この工程は、上記のケンリー等の特許にて詳細に説明されている。
【0079】
本発明の別の一実施形態では、透析用化学物質は、固定容積、又は動的プロポーショニングシステム等の透析液プロポーショニングシステム内にて使用される。
本発明では、重炭酸ベースの透析液を調製するための透析用濃縮物製剤について検討する。この濃縮物製剤は、クエン酸塩を含有する重炭酸塩濃縮物と、酸濃縮物とから構成され、これらは別々の容器内に保管され、互いに混合されて血液透析又は腹膜透析に適した透析液が作製される。本発明による酸濃縮物と重炭酸濃縮物とは、内科医が透析用製剤を患者の特定の健康上の必要性に適するように作製し、また患者がケンリー等の特許に開示されている家庭用透析装置を使用してバッチサイズ量の透析液を容易に調製することが可能であるように、特別に公式化されている。最終的な透析液は、以下の成分(表1(a))を含有し、以下の比率(表1(b))で調製されることが好ましい。
【0080】
【表1(a)】

【0081】
【表1(b)】

本発明の酸濃縮物は、塩化ナトリウムと、D−グルコースと、カリウム、カルシウム及びマグネシウムの少量の塩化物と、酢酸、クエン酸、二酢酸ナトリウム(CHCONa.CHCOH;CAS番号000126−96−5)、乳酸又はその他の任意の酸等の酸とを含有する。これらに、酢酸、クエン酸、乳酸に対応する塩(酢酸塩、クエン酸塩又は乳酸塩)を加えてもよい。
【0082】
本願に使用される用語「塩化物」は、塩化物アニオンを意味する。従って、用語「塩化物」には、塩化物アニオンと、塩化物アニオンと生理学的に許容可能なカチオンとから形成され得る、塩化物アニオンの塩の形態とが含まれる。用語「塩化物」は、塩素原子が、例えば有機分子内の炭素原子に対して共有結合されている化合物を含むことを意図しない。生理学的に許容可能なカチオンの例には、水素イオン(即ち陽子)、金属カチオン、アンモニウムカチオンがある。一般に、金属カチオンが好ましく、適切な金属カチオンの例には、カチオン形態を有するナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムがある。これらのうちではナトリウムとカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。塩化物塩を含有する組成物は、生理学的に許容可能なカチオンの混合物を含有し得る。適切な塩化物源には、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム等がある。好ましい実施形態にて、塩化物は塩化ナトリウムの形態にある。
【0083】
本願に使用される用語「酢酸塩」は、酢酸と酢酸の塩とを含む任意の形態を有する酢酸アニオンを意味する。酢酸は、化学式HCCOを有する有機モノカルボン酸である。酢酸塩は、一つ以上の酢酸アニオンと、一つ以上の生理学的に許容可能なカチオンとから構成される。生理学的に許容可能なカチオンの例には、陽子、アンモニウムカチオン及び金属カチオンがあるが、金属カチオンが好ましい。適切な金属カチオンの例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムがあり、ナトリウムとカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。酢酸塩源には、例えば任意の酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、二酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム四水和物等がある。
【0084】
本発明の酢酸塩化合物の例には、酢酸、酢酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム、酢酸ナト
リウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム及び酢酸マグネシウム四水和物がある。好ましい実施形態にて、酸濃縮物組成物の酢酸塩は、酢酸または二酢酸ナトリウムとして存在する。
【0085】
本願に使用される用語「乳酸塩」は、乳酸と乳酸の塩とを含む任意の形態を有する乳酸アニオンを意味する。乳酸は、化学式HCCH(OH)COを有する有機モノカルボン酸である。乳酸塩は、一つ以上の乳酸アニオンと、一つ以上の生理学的に許容可能なカチオンとから構成されている。生理学的に許容可能なカチオンの例には、陽子、アンモニウムカチオン及び金属カチオンがあるが、金属カチオンが好ましい。適切な金属カチオンの例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムがあるが、ナトリウムとカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0086】
本発明の乳酸塩化合物の例には、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム及び乳酸マグネシウム三水和物がある。一実施形態にて、酸濃縮物組成物の乳酸塩は、乳酸の形態で存在する。
【0087】
本願に使用される「mEq/L」は、存在する水の量との比率における、存在する特定の透析液成分(溶質)の濃度を意味する。より詳細には、mEq/Lは、水1リットル当たりの溶質のミリ等量数を意味する。リットル当たりのミリ等量は、1リットル当たりの溶質のモル数を、溶質1分子当たりの電荷種(電荷基)の数で除算した後、1000で除算して計算される。
【0088】
本発明の好ましい水は、本質的に化学物質と微生物汚染とを含まず、かつ透析液組成物のための米国医療機器振興協会(Association for the Advancement of Medical Instrumentation(AAMI))制定による純度要求に最低限従うように処理される。この水はまた、処理水、又はAAMI品質の水とも称され得る。透析液用の水処理を記述したモノグラフ、水処理システムのモニタリング、及び水処理システムの規定は、AAMI(Standards Collection, Volume 3, Dialysis, Section 3.2 Water Quality for Dialysis, 3ed., 1998, AAMI, 3330 Washington Boulevard, Arlington, Va. 22201 )から入手し得る。また、本発明の透析液組成物の他の全成分は、少なくとも米国薬局方(USP)級の純度レベルにあることが好ましい。この純度は、一般に約95%である。成分の純度は、少なくとも約95%が好ましく、少なくとも約98%がより好ましく、少なくとも約99%が更に好ましい。
【0089】
血液と透析液の間の拡散を促進するには、透析液に浸透物質を加えて流体間の浸透勾配を維持することが望ましい。浸透物質の存在は、血液から過剰な流体と代謝性副産物とが透析液へ流入することを促進する。透析液組成物に適切な浸透物質は、糖類である。糖類は、ブドウ糖(D−グルコース)、ポリグルコース(グルコース残基が繰り返された高分子、例、D−グルコース単位が繰り返されたイコデキストリン(icodextrin))、又はフルクトースのうちから選択されることが好ましい。糖類を使用せずに透析液を作製することが可能であるが、糖類が添加される場合、一般にD−グルコースが使用される。更に、同等に機能する、生体親和性を備えた任意の非糖類浸透物質を、代替品として使用し得ることが理解されよう。糖類は、通常、最終的な透析液中に無水物基準で0〜40g/Lの濃度を提供するに十分な量で酸濃縮物中に存在する。好ましい実施形態では、ブドウ糖(即ち、無水D−グルコース)は、酸濃縮物中に可溶な形態にて含有され、透析用製剤を調製する際の任意の潜在的な溶解上の問題を回避している。
【0090】
表2に、酸濃縮物の好ましい成分、濃度の範囲、及びイオン強度を列挙する。本発明の好ましい実施形態では、酸濃縮物は容器内に予め包装され、透析液調製槽内にて所定量の水と共に重炭酸塩濃縮物と混合される。その後、上述したケンリー等の特許に開示された
装置のような家庭透析システムを用いて希釈されて、54.5Lのバッチが作製される。
【0091】
【表2】

酸濃縮物中のカリウム、カルシウム及びマグネシウムイオンの所望の濃度は、患者ごとに異なる。一般に、塩化カリウムは、酸濃縮物中、約0.00〜41g/Lの範囲内で存在する。塩化カルシウム(無水形、CaCl.2HO)は、酸濃縮物中、概ね約0.00〜40g/Lの範囲内で存在する。塩化マグネシウム(六水和物、MgCl.6HO)は、酸濃縮物中、概ね約7〜21g/Lの範囲内で存在する。前述した濃度を備え、約−10〜20Fの範囲の温度を含む幅広い温度において冷凍固化又は沈殿せずに出荷及び長時間保管され得る安定した酸濃縮物が製造される。
【0092】
本発明を実行する際、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムの塩化物塩を用いることが好ましいが、水溶性を有する生理学的に許容可能なナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムイオンの他の塩を、対応する塩化物塩の全部、又は一部の代わりに使用し得ることを開業医は理解するであろう。適切な塩には、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、及びグルコン酸塩がある。所望であれば、塩酸、乳酸、二酢酸ナトリウム、又は任意の他の適切な酸を、酸濃縮物中に使用される酢酸の全て、又は一部の代替として使用してもよい。
【0093】
本発明の重炭酸塩ベースの濃縮物は、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びクエン酸塩を所定の比率にて含有する乾燥混合物からなる。表3に、クエン酸塩含有重炭酸塩濃縮物の好ましい成分、濃度の範囲、及びイオン強度を列挙する。重炭酸塩濃縮物のバッチ単位と、本発明の任意の酸濃縮物のバッチ単位とを、適切な量の水中にて混合することに
よって、生理学的に許容可能な透析液が形成される。
【0094】
透析診療室にて最も普遍的に塩基濃縮物が調製される塩基は重炭酸ナトリウムであり、重炭酸ナトリウムは本組成物および本方法における好ましい塩基である。透析液中の重炭酸塩濃縮物は、約25〜40mEq/Lであることが好ましい。任意にて、塩基濃縮物中の重炭酸ナトリウムの全部、又は一部は、生理学的に許容可能な異なる塩基と代替されてもよい。重炭酸ナトリウムのアニオン部分を代替した代替塩としては、例えば、炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩がある。従って、塩基濃縮物の塩基は、任意の重炭酸塩、及び任意にて炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩のうちから選択され得る。ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムから選択された一つ以上の生理学的に許容可能なカチオンも塩の形態で存在すると想定される。これらの塩と酸とは電子的に中性である。即ち、負電荷と正電荷とが等数だけ存在する。
【0095】
本願に使用される用語「クエン酸塩」は、クエン酸(3個の陽子で錯化された乳酸アニオン)、クエン酸アニオンを含む塩、及びクエン酸アニオンの部分エステル等、任意の形態を有するクエン酸アニオンを意味する。クエン酸アニオンは、有機三カルボン酸塩である。ケミカルアブストラクト(Chemical Abstracts Registry )No.77−92−2に指定されているクエン酸は、分子式HOC(COH)(CHCOH)と、分子量192.12g/molとを有する。クエン酸塩(即ち、クエン酸アニオンを含む塩)は、一つ以上のクエン酸アニオンと、一つ以上の生理学的に許容可能なカチオンとから構成されている。生理学的に許容可能なカチオンの例には、陽子、アンモニウムカチオン及び金属カチオンがある。適切な金属カチオンには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムがあるが、ナトリウムとカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。クエン酸アニオンを含有する組成物は、生理学的に許容可能なカチオンの混合物を含有し得る。
【0096】
クエン酸アニオンの部分エステルは、1個又は2個のカルボキシル基(即ち、−CO)のエステル形態(即ち、−COOR、式中、Rは有機基)を有するが、3個のカルボキシル基の全てがエステル形態を有するわけではない。クエン酸アニオンの部分エステルは、1個又は2個のR基に加えて、1個又は2個の生理学的に許容可能なカチオンを含むと想定される(従って、R基とカチオンとの合計は3個となる)。R基は有機基であり、低級アルキル基が好ましい。
【0097】
クエン酸塩は、陽子、及び/又は金属カチオンと関連していることが好ましい。このようなクエン酸塩化合物の例には、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム及びクエン酸マグネシウムがある。一実施形態にて、クエン酸塩は、塩基組成物中においてクエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、又はクエン酸水素二カリウムのうちの一つ以上の形態で存在する。好ましい実施形態にて、クエン酸ナトリウムがクエン酸アニオン源を提供する。クエン酸ナトリウムは、乾燥した化学物質の粉末、結晶、ペレット又は錠剤の形態を有し得る。重炭酸塩組成物にクエン酸アニオンを導入するには、生理学的に耐性を有する任意の形態を備えたクエン酸、又はクエン酸ナトリウムが用いられ得る。クエン酸又はクエン酸ナトリウムは、一水和物等の水和物の形態を有し得る。
【0098】
クエン酸塩は以前から、カルシウムと結合して血流中で抗凝血剤として機能し得ることが認識されている。血液透析において、局所抗凝血剤としてのクエン酸塩の使用が首尾良く行われている。ダイアライザ前に、クエン酸濃縮物(1.6モル/L迄)が動脈側に注入され、その後、更なるカルシウム塩とマグネシウム塩とがダイアライザ後に注入されて
、血流中のイオン化カルシウム及びイオン化マグネシウムのバランスが維持される。また、47mEq/Lもの高いクエン酸塩濃度が血液とプラズマ収集バッグに用いられ、輸血用血液を保存し、かつ該血液の凝固を防止する。高濃度のクエン酸塩と共に収集された血液及びプラズマが、患者に輸血される。一般に、プラズマ提供により3.2gのクエン酸ナトリウムが供与者の血流に導入される。このクエン酸塩量は身体内で急速に代謝されて、血流中の天然の緩衝剤である重炭酸塩に変換する。従って、重炭酸塩濃縮物中のクエン酸塩濃度は、抗凝血剤の性質に応じて選択される必要がある。他の手段が採用されない場合、最終的な透析液に希釈された際のクエン酸塩の濃度は、約8mEq/Lを超過するべきではなく、約4mEq/Lを超過しないことが好ましい。クエン酸塩の濃度が8mEq/Lよりも高い場合、透析液組成物中のマグネシウム及び/又はカルシウムの濃度は、クエン酸塩との反応により損失されたカルシウム及びマグネシウムイオンを補償するために増大される必要がある。このことは、イオン化カルシウム及びマグネシウムの生理学的バランスを複雑にし得るため、8mEq/Lより高い濃度のクエン酸塩は透析液にて推奨されない。
【0099】
クエン酸ナトリウムがクエン酸塩源として使用される場合、重炭酸塩濃縮物は、塩の乾燥化学物質混合物として存在し得る。クエン酸ナトリウムは重炭酸塩と反応しないため、クエン酸塩と重炭酸塩とは物理的に分離される必要がない。所望であれば、これらの塩は錠剤、又はペレットに形成され得る。クエン酸、又はクエン酸二ナトリウムがクエン酸塩源として使用される場合、クエン酸塩は重炭酸塩と物理的に分離されて化学反応が回避される。従って、本発明の一実施形態では、重炭酸塩ベースとクエン酸塩とは、容器内でナトリウム塩をバリア層として用いて物理的に分離される。例えば、重炭酸ナトリウムを加え、塩化ナトリウムを加え、最後にクエン酸塩を加えることによって、試薬は層状化され得る。本発明の一局面では、クエン酸塩は錠剤化、又はペレット化されて、重炭酸塩と接触し得る表面積が低減され得る。
【0100】
別の一実施形態にて、クエン酸塩はサブ容器内に配置されて、その後サブ容器は残りの重炭酸塩濃縮物成分を収容する容器内に配置され得る。本実施形態の一局面にて、サブ容器はクエン酸塩を重炭酸塩から物理的に分離するが、混合工程中にクエン酸塩を溶解する水のサブ容器内への侵入を許可する多孔体、例えばフィルタバッグであり得る。本実施形態の別の一局面にて、サブ容器は、混合の直前に穿孔される非多孔体、例えば密閉プラスチックバッグである。
【0101】
更なる別の実施形態にて、サブ容器は、プラスチック製、又は紙製の薄膜等の物理的障壁を使用して形成された容器内の小室である。物理的障壁はクエン酸塩を重炭酸塩から分離して、混合の直前に破裂される。例えば、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムとが容器に加えられて、紙又はプラスチック薄膜のインサートにより密閉される。その後、クエン酸塩が容器に加えられる。別の一実施形態では、クエン酸塩は錠剤化、又はペレット化され、錠剤又はペレットの独立体が容器に加えられて、塩基濃縮物が形成される。クエン酸塩の錠剤、又はペレットは、絶縁被膜、即ちD−グルコース、又は塩化ナトリウムにより被覆されて、重炭酸塩との接触から保護されてもよい。クエン酸塩は、1個又は複数個の錠剤、又はペレットとして存在し得る。本発明を実行する際、塩化ナトリウム塩層を介して重炭酸塩ベースと分離されたクエン酸塩ペレット又は錠剤により、乾燥塩基濃縮物が調製されることが好ましい。
【0102】
本発明の別の一実施形態では、塩基濃縮物は、最終的な透析液中、クエン酸塩約2.5〜4mEq/L、ナトリウム約123〜127mEq/L、塩化物約84〜89mEq/L、重炭酸塩約30〜36.5mEq/Lの範囲内の濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩、ナトリウム、塩化物及び重炭酸塩を含有する。表3を参照されたい。本実施形態の一局面にて、塩基濃縮物は、最終的な透析液中、重炭酸塩36.5mEq/L、ナトリウ
ム127mEq/L、塩化物88mEq/L、クエン酸塩2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩、ナトリウム、塩化物及びクエン酸塩を含有する。本実施形態の別の一局面では、塩基濃縮物は、最終的な透析液中、重炭酸塩31.5mEq/L、ナトリウム123mEq/L、塩化物89mEq/L、クエン酸塩2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩、ナトリウム、塩化物及びクエン酸塩を含有する。本実施形態の更なる別の一局面では、塩基濃縮物は、最終的な透析液中、重炭酸塩36.5mEq/L、ナトリウム123mEq/L、塩化物84mEq/L、クエン酸塩2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩、ナトリウム、塩化物及びクエン酸塩を含有する。本実施形態の別の一局面では、塩基濃縮物は、重炭酸塩35mEq/L、ナトリウム127mEq/L、塩化物88mEq/L、クエン酸塩4mEq/Lを含有する。
【0103】
【表3】

商業的に入手可能なプロポーショニングシステム(AAMI RD61:2000による)における本発明の実施形態を、下の表4に列挙する。酸濃縮物と塩基濃縮物とは乾燥体にて供給され得る。表4には、現在商業的に入手可能な様々なプロポーショニング透析液生成システムにおける酸濃縮物:重炭酸塩濃縮物:水の比が列挙されている。例として、表4において、クエン酸塩濃度4mEq/L、酢酸濃度4mEq/L、重炭酸塩濃度31mEq/Lによって、最終的な塩基濃縮物濃度39mEq/Lが提供され得る。これら濃度は、重炭酸塩のクエン酸塩に対するモル比が、表1(a)に示したように、50:1〜15:8の間で変動すると非常に相違し、またプロポーショニング装置が異なると比率も変動することを理解されたい。塩基濃縮物は、一般に、液体容器が開封されるか、又は乾燥パッケージが水に溶解された後、24時間以内に使用される。
【0104】
【表4】

本発明では、重炭酸塩又は酢酸塩の代替として、塩基としてクエン酸塩を、一モル対一モルの割合で使用することに関する。従って、現在、最終的な透析液中、39mEq/Lの重炭酸塩と4mEq/Lの酢酸塩とを必要とする患者には、代わりに35mEq/Lの重炭酸塩と、4mEq/Lのクエン酸塩と、4mEq/Lの酢酸塩とが提供され得る。例えば別の一実施形態では、33mEq/Lの重炭酸塩と、5mEq/Lのクエン酸塩と、3mEq/Lの酢酸塩とが使用され得る。これら塩基の選択は、患者のクエン酸塩及び酢酸塩に対する耐性に依存すると想定される。この耐性は、処置を行う内科医により決定される。
【0105】
本発明を実行する際、本発明による酸濃縮物と重炭酸塩濃縮物との双方は、各透析セッションの単位投薬量に適した物理的に独立したユニットの形態を有することが好ましい。各ユニットは、水と混合されると所望濃度の成分を有する透析用製剤のバッチを形成するように、所定量の様々な成分を含有する。投薬量のユニット形態は、ツルー等(Treu
et al)による1998年8月8日発行の米国特許第5,788,099号に開示されているような、予め包装された密閉された投薬量ユニットの容器内に収容されることが好ましく、1回又はそれ以上の透析セッション用にキット形態に組み合わせられ得る。ツルー等の特許に説明されている容器は、主として患者が使用し得るように特別に設計されており、特に上記のケンリー等の特許に説明されている家庭用透析装置と共に有利に使用される。しかしながら、本発明による透析用化学製剤は、勿論他の容器の構成および装置にも適用可能である。本発明の一実施形態にて、容器はクエン酸塩、重炭酸塩、及び塩を含有する乾燥塩基成分の器部と、酢酸、クエン酸、二酢酸ナトリウム、乳酸又は任意の他の酸から選択された酸を含有する液体酸濃縮物の器部とを備えるキットとして、予め包装され得る。塩基濃縮物と酸濃縮物とを所定量の水に加えると、最終的な透析液が製造される。これら構成要素の使用説明書のセットも、キット内に含まれる。
【0106】
本発明に従って、化学物質を2個の濃縮物の瓶に分配することにより多数の利点が得られる。第一に、本発明の濃縮物を使用するバッチ又はプロポーショニングシステムによって患者の安全性が確保される。例えば、本発明の酸濃縮物の導電度は、約2〜3mS/cmの範囲内にある一方、重炭酸塩濃縮物の導電度は、約10.5〜12.7mS/cmの範囲内にある。これらを組み合わせると、導電度は約12.5〜15.7mS/cmとなる。2個の酸濃縮物の瓶が誤って混合された場合、最終的な導電度は12.8mS/cm
より低くなるであろう。同様に、2個の重炭酸塩濃縮物の瓶を誤って混合した場合、組み合わせた導電度は15.7mS/cmを超過するであろう。いずれの場合でも、透析工程を開始するに先立って、透析液の導電度を測定するシステムが、透析工程を開始させないであろう。また装置は、一般に、実際の導電度を+/−5%の範囲において指定導電度と比較するように設計されている。いずれかの瓶の内容物が最終的な透析液中に混合されなかった場合、導電度の損失が測定されて透析工程が停止されるものと想定される。
【0107】
通常、バッチ槽混合システム内においては、酸濃縮物と塩基濃縮物とを収容する容器同士を混合して得られた血液透析液の導電度レベルは、前述した範囲内に存在するものと想定される。安全警報装置が作動することなく、透析セッションは無事に進行するであろう。しかしながら、このシステムにおいて、例えば2個の酸濃縮物容器、又は2個の塩基濃縮物容器等、2個の類似する容器を不注意に混合すると、導電度が所定の範囲を超過するか、又はその範囲に到達せずに、警報装置が作動して透析セッションの開始が防止される。
【0108】
第二に、化学物質を本発明による酸濃縮物と重炭酸塩濃縮物とに分配すると、現在販売されているパッケージと比較すると総体積が縮小され、最終的な透析液の所定量当たりの濃縮物の重量が軽減される。バクスター・アンド・フレゼニス社(Ba xter and
Fresenius)で製造されているような従来の透析システムは、一回の4時間の透析処置につき酸濃縮物3.43リットルと塩基濃縮物6.23リットルを必要とする。一日の透析セッションは通常90分であるため、従来のシステムでは、一日の透析に必要とする酸濃縮物と塩基濃縮物との容積は、各々1.29リットルと2.34リットルになる。これと対比して、本発明による濃縮物の総容積は、従来のシステムの3.63リットル(1.29L+2.34L)に対して、0.9リットル(2×450mL)程度に収まる。他言すれば、本発明の酸濃縮物及び重炭酸塩濃縮物は、従来のシステムと比較すると容積において約1/4(3.64/0.9)に縮小されている。更に、ほぼ飽和された酸濃縮物は、従来の酸濃縮物製剤の問題であった冷凍とD−グルコースの再結晶とを防御する。
【0109】
第三に、化学物質を本発明による酸濃縮物と重炭酸塩濃縮物とに分配すると、析液中のナトリウム及び塩化物イオン濃度をより精密に制御することが可能になる。従来のシステムの問題の一つは、ナトリウムイオンと塩化物イオンとの高い正確性を維持することにあった。内科医の多くは、ナトリウムイオンと塩化物イオンとが+/−2%の範囲にて変動することを好む。ANSI/AAMI RD−61:2000標準では、ナトリウムの2.5%の変動を推奨している。従来のシステムでは、重炭酸ナトリウム濃縮物を(塩化ナトリウムと伴に、又は伴わずに)作製した後に希釈するため、高い正確性を得ることは不可能であった。本発明の濃縮物製剤は、酸濃縮物中に塩化ナトリウムを少量のみの含有し、残りの全ナトリウムは直接希釈される粉末として存在している。ナトリウムイオンの殆どを乾燥粉末に変更したため、透析液中の90%塩化ナトリウムと100%重炭酸ナトリウムとの+/−1%の正確性を達成することが可能である。更に、濃縮物製剤(+/−1%)中で乾燥粉末成分の重量を調節することが容易であるため、最終溶液における高レベルの正確性を達成することが可能である。
【0110】
第四に、本発明による酸濃縮物及び重炭酸塩濃縮物の双方は、ほぼ等しい容積を占有するため、容器のデザインを統一して、成形及び製造工程におけるコストを低減することが可能である。更に、容器の同一のデザインは、製造者及び使用者の双方に対して容易性を提供する。装置に対する接続が同一であり、色分け、視覚によるラベル確認、導電度の保証により混同が排除されるため、本発明の酸濃縮物と重炭酸濃縮物とを用いたバッチ透析液の調製は、患者に品質の保証と安全性とを提供する。
【0111】
最後に、乾燥重炭酸塩基の粉末と共にクエン酸イオンを粉末化すると、(1)クエン酸イオン及びナトリウムイオンの正確性が向上し得る、(2)酸製剤中に溶解されたクエン酸塩と比較すると、粉末では保管寿命が長期化される、(3)クエン酸塩透析に現在の標準的な酸濃縮物を使用することが可能である、(4)必要な更なる液体コード数が低減される、(5)クエン酸塩ベースの透析用製剤の製造操作が簡素化される等の多数の利点が獲得される。
【0112】
以下の実験例にて、バッチ透析液の調製と、プロポーショニングシステムを使用して透析液を調製する家庭用透析装置の使用方法を説明する。代表的な酸濃縮物製剤及び重炭酸塩濃縮物製剤と、二種の濃縮物の様々な組み合わせにより調製されたバッチ透析用製剤とを列挙した表も示す。所望の電解質バランスを有する透析用製剤の54.5Lバッチが調製される酸濃縮物と重炭酸塩濃縮物との特定の組み合わせの選択は、患者の状態と健康的要求とに高度に依存し、従って内科医により処方されるであろう。これら二成分を水中で混合して該溶液を54.5Lに希釈して調製された透析液のバッチは、pH調整等の更なる操作を全く必要としない。濃縮物の容器は、40〜60リットルのバッチ量の化学物質が作製されるように構成されている。濃縮物の容器は、クエン酸塩を含有する酸濃縮物と塩基濃縮物との連続する流れを、プロポーショニングシステムと、複数の処置供給システムとに提供するように構成されていてもよい。
【0113】
実験例1:バッチ透析液の調製
濃縮物の調製に使用される全化学試薬は、特に指定しない限りUSP等級である。
(a) バッチ量の酸濃縮物ユニットの調製
酸濃縮物を製造するには、70°F程度の室温にてD−グルコースを所定量の水に対して連続的に攪拌することにより溶解する。次いで、他の塩と酢酸とを攪拌溶液中にゆっくり加え、適量の水を加えることによって、溶液の容積を最終容積、例えば399mLに増大させて酸濃縮物を製造する。所望であれば、濃縮物を消毒済み0.2μmフィルタを介して濾過するか、又は高圧蒸気殺菌法によって滅菌してもよい。その後、上述したツルー等の特許に説明されているようなバッチ量の容器内に、酸濃縮物を注入して、容器を密閉する。
(b) バッチ量の乾燥重炭酸塩ユニットの調製
乾燥重炭酸塩濃縮物を製造するには、NaCl280.3gと、NaHCO160.2gとを、クエン酸ナトリウム14gと共によく混合する。得られた粉末混合物454.4gを、上述したツルー等の特許に説明されているようなバッチ量容器内に配置して、容器を密閉する。代替的に、塩類を単にバッチ量容器内に加えて密閉してもよい。塩は全て透析液槽内で完全に溶解されて均一に分配されるため、容器内で更なる混合を行う必要はない。
(c)バッチ透析液の調製
透析装置に、透析用化学物質溶液の54.5リットル槽が設置されている。槽は透析用化学物質を受容し、かつ化学物質を槽内に導入する手段として働く化学物質充填台を備えている。槽は、化学物質充填台の高さ迄、即ち限度容量のほぼ50%迄充填される。化学物質充填台は、槽の内部に対して流体が流れるように連通する傾斜した棚部を有する。バッチ量の乾燥重炭酸塩化学物質とバッチ量の液体酸濃縮物とが収容されている容器の内容物は、重力により徐々に容器から放出されて、充填台の傾斜棚上に堆積される。槽と充填台との構造に応じて、容器は手動により、又は(ツルー等の特許に開示されているように)自動的に開封され得る。ノズルは、逆浸透性濾過水(reverse-osmosis filtered water)を傾斜棚上に噴射して、化学物質を槽の内部へ分散させる。その後、槽は、RO水によ
り完全に充填される。溶液は、RO水を槽の底部へ槽の側面に対してほぼ平行に導入すると共に、スプレイヤー(sprayer)によって溶液を槽の底部から引き込んで、該溶液を槽の頂部から再導入する乱流形態で、槽内にて流体を旋回させることにより混合される。
【0114】
透析液が槽の底部から引き込まれ槽の頂部にて再導入される流路には、導電センサが備えられる。導電センサは、導電度の測定値を、装置の作動を制御する中央処理ユニットへ送信する。導電度の測定値が、特定の透析用製剤の予期値と一致した場合、溶液は混合されたものと見なされて、混合工程が終了する。その後、公知の方法により透析セッションを開始する。
【0115】
表5に、異なる液体酸濃縮物の代表的な一連の製剤を列挙する。バッチ透析液の調製に使用されるべき特定の製剤は患者の病状に応じて、内科医により処方されるものと想定される。(粉末を除く)酸濃縮物が所望の容積に希釈された際の導電度は、約2〜3mS/cmの範囲内にあるものと想定される。
【0116】
表6に、異なるバッチ量の乾燥重炭酸塩化学物質の代表的な一連の製剤を示す。透析液は、表5に示す製剤の一つと、表6に示す製剤の一つとを混合して調製される。表5の場合と同様、表6から選択されるべき特定の製剤は患者の病状に応じて、内科医により処方されるものと想定される。製剤はバッチ透析液54.5リットルに希釈される。また塩と重炭酸塩との正確な量は、調製される最終透析液に応じて変動し得る。
【0117】
代表的な酸濃縮物製剤が16種存在し、代表的な重炭酸塩製剤が6種存在することから、96種の可能な最終透析液の組み合わせが存在する。
【0118】
実験例2:プロポーショニングシステムのための濃縮物の調製
濃縮物の調製に使用される全化学試薬は、特に指定しない限りUSP等級である。
(a) バルク量の酸濃縮物の調製
この工程は、一般に大きい容器(50〜25,000リットル)内で実行される。酸濃縮物を製造するには、70°F程度の室温にてD−グルコースを所定量の水に対して連続的に攪拌することにより溶解する。次いで、他の塩と酢酸とをゆっくり加えながら混合物を攪拌する。混合物に適量の水を加えて最終的な選択容積に増大させて酸濃縮物を作製する。所望であれば、このようにして得られた濃縮物を、消毒済み0.2μmフィルタを介して濾過するか、又は高圧蒸気殺菌法によって滅菌してもよい。その後、酸濃縮物は充填装置内に移されて、市販のバッチ量容器内に充填される(100mL容器〜55ガロンドラム)。次いで、容器は密閉されて消費者へ輸送される。
(b) バッチ量の乾燥重炭酸塩濃縮物の調製
乾燥重炭酸塩濃縮物バルクを製造するには、NaCl,NaHCO、及びクエン酸ナトリウムの適量を適当な大きさの容器、又はバッグ内に計測する。使用者は、使用に先立って乾燥化学物質の全内容物を混合容器内に移して、化学物質を完全に溶解する必要がある。代替的に、製造者が上記の(a)セクションに説明されたような酸濃縮物バルクの包装と同様の方法にて濃縮物を包装してもよい。
(c) 最終的な透析液の生成
プロポーショニングシステムの場合、酸濃縮物及び重炭酸塩濃縮物は、(濃縮物製造者、又は装置製造者のいずれかにより提供された)即時分配可能な容器(ready-to-dispense container )内にて供給水と共に透析装置へ供給される。一般に、透析装置は、所望の最終透析液が製造されるように、適切に調整して正確な混合比に到達させる能力を有する。
【0119】
上述した実験例は説明を目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の技術分野に属する当業者には、本発明の趣旨から逸脱せずに、本発明に特定の変更、置換及び改良を為し得ることが明らかであろう。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

注)gmsで表される重量は、最終容積54.5リットルのバッチシステムに使用される一般的な製剤の量を表す。これらの重量は、異なるバッチ、プロポーショニングシステムにより比例的に増減するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸塩、重炭酸塩、及び塩を含有する透析液用クエン酸塩含有塩基濃縮物であって、前記塩基濃縮物を、酸濃縮物及び所定量の水に混合して最終的な透析液組成物が作製される塩基濃縮物。
【請求項2】
前記酸濃縮物は、酢酸、二酢酸ナトリウム、乳酸及びクエン酸のうちから選択される請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項3】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択される請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項4】
前記クエン酸塩は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項5】
前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項6】
前記塩は、透析液中、約125〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項3に記載の塩基濃縮物。
【請求項7】
前記酸濃縮物中の酸は酢酸で、該酢酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在する請求項2に記載の塩基濃縮物。
【請求項8】
前記所定量の水は、請求項4乃至7に記載の濃度を生成するに十分である請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項9】
前記クエン酸塩は、クエン酸アニオンの塩、クエン酸塩及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択される請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項10】
前記塩基濃縮物は液体である、請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項11】
前記塩基濃縮物は乾燥体である、請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項12】
前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されている請求項11に記載の塩基濃縮物。
【請求項13】
前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又はプロポーショニングシステムにおいて一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在する請求項12に記載の塩基濃縮物。
【請求項14】
前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記クエン酸は、多孔性を有するサブ容器内に収容されている請求項12に記載の塩基濃縮物。
【請求項15】
前記クエン酸は、塩基濃縮物中で錠剤、又はペレットの形態で存在する請求項12に記載の塩基濃縮物。
【請求項16】
前記錠剤、又はペレット形態は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されている
請求項15に記載の塩基濃縮物。
【請求項17】
前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択される請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項18】
前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩及び塩は該容器内で均等に混合される請求項17に記載の塩基濃縮物。
【請求項19】
前記塩基濃縮物は、血液透析用の濃縮物溶液を調製するために使用される請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項20】
更に重炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩のいずれかを含有する請求項1に記載の塩基濃縮物。
【請求項21】
(a) 重炭酸ナトリウム、
(b) クエン酸ナトリウム、及び
(c) 塩化ナトリウムを含有し、前記重炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムは、50:1〜15:8のモル比にて存在し、かつ塩化ナトリウムは、前記塩基濃縮物及び酸濃縮物が所定量の水中にて混合される際、最終的な透析液中125〜150mEq/Lのナトリウム濃度を提供するに十分な量で存在する塩基濃縮物。
【請求項22】
(a) 最終的な透析液中、約15〜50mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約100〜150mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約80〜130mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な血液透析液中、約1〜8mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有し、前記酸濃縮物及び所定量の水に混合して最終的な透析液が作製される透析用塩基濃縮物。
【請求項23】
前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩及びクエン酸アニオンの部分エステルうちから選択される、請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項24】
前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択される、請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項25】
前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、乾燥された前記濃縮物は、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含有する請求項24に記載の塩基濃縮物。
【請求項26】
前記クエン酸塩は、最終的な透析液中、約2.5〜4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量で存在し、前記ナトリウムは、最終的な透析液中、約123〜127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量で存在し、前記重炭酸塩は、30〜36.5mEq/Lの範囲内の量で存在する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項27】
(a) 最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項28】
(a) 最終的な透析液中、約31.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項29】
(a) 最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項30】
(a) 最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項31】
(a) 最終的な透析液中、約30.0mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項32】
(a) 最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩
とを含有する請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項33】
前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は重炭酸と分離されている請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項34】
前記塩基濃縮物は乾燥体で、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在する請求項33に記載の塩基濃縮物。
【請求項35】
前記塩基濃縮物中に存在するクエン酸は、錠剤、又はペレットの形態で存在する請求項33に記載の塩基濃縮物。
【請求項36】
前記錠剤、又はペレット形態は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されている請求項35に記載の塩基濃縮物。
【請求項37】
前記透析用塩基濃縮物は、血液透析用の濃縮物溶液を調製するために使用される請求項22に記載の塩基濃縮物。
【請求項38】
透析液を調製するためのキットであって、
(a) クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基成分の容器と、
(b) 酢酸、クエン酸及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸成分の容器とを備え、前記塩基濃縮物及び酸濃縮物を所定量の水に加えることによって、最終的な透析液が作製されるキット。
【請求項39】
前記酸濃縮物は、酢酸、クエン酸及び乳酸のうちから選択された酸を含有する請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択される請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記クエン酸塩は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項38に記載のキット。
【請求項42】
前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項38に記載のキット。
【請求項43】
前記塩は、透析液中、約1.5〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項38に記載のキット。
【請求項44】
前記酸濃縮物中の酸は酢酸で、該酢酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在する請求項38に記載のキット。
【請求項45】
前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択される請求項38に記載のキット。
【請求項46】
前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されている請求項38に記載のキット。
【請求項47】
前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は
一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在する請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記塩基濃縮物中のクエン酸は錠剤の形態で存在する、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
前記錠剤は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されている請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択される請求項46に記載のキット。
【請求項51】
前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩及び塩は該容器内で均等に混合される請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記酸濃縮物及び塩基濃縮物は、血液透析用濃縮物と最終的な透析液とを調製するために使用される請求項46に記載のキット。
【請求項53】
透析液を作製する方法であって、
(a) クエン酸塩、重炭酸塩及び塩を含有する塩基濃縮物を提供する工程と、
(b) 酢酸、クエン酸及び乳酸のうちから選択された酸を含有する酸濃縮物を提供する工程と、
(c) 前記塩基濃縮物及び酸濃縮物を所定量の水に加えて、透析液を作製する工程とを含む方法。
【請求項54】
前記クエン酸塩は、クエン酸、クエン酸アニオンの塩、及びクエン酸アニオンの部分エステルから選択される請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム及びクエン酸二水素一ナトリウムのうちから選択される請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記濃縮物は、一人又は複数の対象者の治療用の透析液を調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記クエン酸ナトリウム、重炭酸塩、及び塩は該容器内で均等に混合される請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記酸濃縮物中の酸は酢酸である、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのうちから選択される請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記クエン酸塩は、透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記重炭酸塩は、透析液中、約15〜50mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在する請求項53に記載の方法。
【請求項61】
前記塩は、透析液中、約1.5〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供する量で存在
する請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記酸濃縮物中の酸は、血液透析液中、約1〜8mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量で存在する請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記塩基濃縮物は、
(a) 50:1〜15:8のモル比を有する重炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムと、
(b) 前記塩基及び酸が水と混合される際、血液透析液中、約125〜150mEq/Lの最終的な濃度を提供するに十分な量の塩化ナトリウムとを含有する、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約31.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約36.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約2.5mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項67】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約127mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約88mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩
とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約30.0mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約89mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記塩基濃縮物は、
(a) 最終的な透析液中、約35mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の重炭酸塩と、
(b) 最終的な透析液中、約123mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のナトリウムと、
(c) 最終的な透析液中、約84mEq/Lの濃度を提供するに十分な量の塩化物と、
(d) 最終的な透析液中、約4mEq/Lの濃度を提供するに十分な量のクエン酸塩とを含有する請求項53に記載の方法。
【請求項70】
前記クエン酸塩はクエン酸であり、該クエン酸は前記重炭酸塩と分離されている請求項54に記載の方法。
【請求項71】
前記濃縮物は乾燥体で、かつ一人又は複数の対象者の治療のための透析液のバッチを調製するため、又は一人又は複数の対象者を治療するプロポーショニングシステムのために容器内に収容されて、前記塩は該容器内においてクエン酸と重炭酸塩との間に堆積された層として存在する請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記塩基濃縮物中のクエン酸は、錠剤の形態で存在する請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記錠剤は、D−グルコース又は塩化ナトリウムで被覆されている請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記酸濃縮物と塩基濃縮物とは、血液透析液の調製に使用される請求項53に記載の方法。
【請求項75】
前記工程(c)に先だって、塩基濃縮物と酸濃縮物とが別々に水中に溶解されて塩基濃縮物と酸濃縮物とが作製される請求項53に記載の方法。
【請求項76】
前記塩基濃縮物と酸濃縮物とが所定量の水に対して計測されて、オンラインにて透析液が連続的に作製される請求項75に記載の方法。

【公開番号】特開2006−56873(P2006−56873A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153448(P2005−153448)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(500155637)アクシス リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AKSYS, LTD.
【Fターム(参考)】