説明

クッションクリップ

【課題】クッションとパネル部材とを常時干渉させる設定のクッションクリップであっても、クッションの塑性変形などに伴うクッションクリップのガタツキを解消する。
【解決手段】ドアを閉じたときの衝撃を緩衝するクッション10と、クッションの底面12bから突出しており、ボデーおよびドアのいずれか一方のパネル部材に開けられた取付け孔に挿入することで、該パネル部材に結合される係止脚30とを備えたクッションクリップであって、係止脚が係止爪34を有し、この係止爪34にはパネル部材の裏面側で取付け孔の内周縁に係止し、それによってパネル部材に係止脚を結合状態に保持する斜面34cが設けられている。この斜面は、係止爪34の弾性力に基づいてパネル部材をクッション10の底面12b側へ引き寄せる方向の分力を生じさせる傾きに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のスライドドアを閉じたときのオーバーストロークによる衝撃を緩衝するために、車両のボデーあるいはドアのいずれか一方に取り付けて使用されるクッションクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクッションクリップは、特許文献1にも開示されているように衝撃を緩衝するエラストマやゴム製のクッションと、ボデーあるいはドアのいずれかのパネル部材に開けられた取付け孔に挿入する樹脂製の係止脚とを備えている。この係止脚をパネル部材の表面側から取付け孔に挿入したとき、係止脚に設けられられている係止爪がパネル部材の裏面側で取付け孔の内周に係止し、該パネル部材に係止脚が結合される。
なお、一般的なクッションクリップにおいては、係止脚をパネル部材に結合した状態でのクッションとパネル部材とを常時干渉させるように設定された形式のものがある。そして、クッションの底面もしくは底面に設けられているシールリップをパネル部材の表面に当てて変形させ、その変形に伴う反力によって係止脚の係止爪をパネル部材の裏面に押し付け、パネル部材に対するクッションクリップのガタツキを抑えている。
【特許文献1】特開2003−307244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、クッションとパネル部材とを常時干渉させる形式では、クッションもしくはシールリップが塑性変形した場合、それに伴って係止脚の係止爪とパネル部材の裏面との間に隙間が生じ、クッションクリップがガタツキを起こして異音発生の原因となる。
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、クッションとパネル部材とを常時干渉させる設定のクッションクリップであっても、クッションの塑性変形などに伴うクッションクリップのガタツキを解消する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、ボデーに開閉可能に取り付けられたドアを閉じたときの衝撃を緩衝するクッションと、クッションと一体的にその底面から突出しており、ボデーおよびドアのいずれか一方のパネル部材に開けられた取付け孔に挿入することで、該パネル部材に結合される係止脚とを備えたクッションクリップであって、係止脚が係止爪を有し、この係止爪は、係止脚をパネル部材の表面側から取付け孔に挿入することで、弾性によって内方へ撓みながら取付け孔を通過してパネル部材の裏面側に位置するように構成されている。係止爪にはパネル部材の裏面側で取付け孔の内周縁に係止し、それによってパネル部材に係止脚を結合状態に保持する斜面が設けられている。この斜面は、係止爪の弾性力に基づいてパネル部材をクッションの底面側へ引き寄せる方向の分力を生じさせる傾きに設定されている。
【0005】
このように、係止脚における係止爪の斜面によってパネル部材をクッションの底面側へ引き寄せる方向の力を生じさせることで、パネル部材の表面とクッションの底面とを常に隙間ゼロで軽く接触した状態に保つことができる。また、同じ理由によって当然のことながらパネル部材の裏面と係止脚の係止爪との間に隙間が生じることもない。したがって、クッションの底面とパネル部材の表面とを常時干渉させる設定のクッションクリップであっても、クッションの塑性変形などに伴うクッションクリップのガタツキが解消される。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、クッションの底面に環状のシールリップが一体に設けられている。このシールリップは、係止脚がパネル部材に結合された状態ではパネル部材の表面に接触することで、外方へ広がるように弾性変形してパネル部材の表面に密着するように構成されている。
このように、シールリップがパネル部材の表面に密着することで取付け孔のシールが果たされ、クッションが衝撃の緩衝機能に加えてシール機能を備えることになり、クッションクリップの使用範囲が広がる。
【0007】
第3の発明は、第2の発明において、シールリップは、クッションの外周面に連続し、かつ、クッションの底面に対しては環状の溝で仕切られ、シールリップが弾性変形するときの支点がクッションの底面よりも上側に設定されている。
これにより、シールリップを小さい力で弾性変形させることが可能となり、パネル部材の取付け孔に対する係止脚の挿入荷重を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
図1〜図3で示すクッションクリップは、自動車のスライドドアなどを閉めたときのオーバーストロークによる衝撃を緩衝するクッション10と、このクッション10の軸心部において、その底面12bから図面で下方へ突出した係止脚30とによって構成されている。クッション10と係止脚30とは、それぞれに要求される個別の材料を用いた二色成形によって互いに一体化されている。そして、クッション10にはエラストマやゴムといった比較的軟質の弾性素材が使用され、係止脚30にはポリプロピレンなどの比較的硬質の樹脂材が使用される。
【0009】
クッション10は、全体に円柱形状をした本体部分12と、その先端軸心部に位置する突起部分14とによって構成されている。突起部分14は、本体部分12の先端面12aから突出している。また、この突起部分14は、本体部分12と比べて体積が小さい上に、その外周に成形された凹部16および軸心部に成形された孔18によって撓みやすい形状になっている。したがって、クッション10が衝撃を受けたときには、本体部分12よりも先に突起部分14が弾性変形する。
【0010】
本体部分12における底面12bの外周には、環状に連続したシールリップ20が設けられている。このシールリップ20は、図3の一部を拡大して表した図4からも明らかなように本体部分12の外周面に連続して外方へ広がった形状をしている。これにより、シールリップ20の先端部20aは、本体部分12の外周面よりも外側に位置しているとともに、本体部分12の底面12bよりも図面で下方に位置している。
シールリップ20は、本体部分12の底面12bに対して環状の溝22で仕切られている。この結果、シールリップ20が後述するようにボデー40の表面40aに接触して外方へ撓むように変形するときの支点20b(図4)は、本体部分12の底面12bよりも上側になっている。
【0011】
係止脚30は、その全長のほぼ半分を占める円柱状の基部32がクッション10(本体部分12)の内部に位置し(図3)、この基部32において前述したようにクッション10と一体化されている。係止脚30において、本体部分12の底面12bから突出している中空部分33に左右一対の係止爪34が設けられている。両係止爪34は、中空部分33のスリット36によって該中空部分33から一部を残して切り離され、係止脚30の軸心方向(内方)へ弾性によって撓むことが可能である。
両係止爪34は、つぎに説明するボデー40の取付け孔42に対する係止脚30の挿入を案内する案内斜面34aと、最も外方へ張り出した張出し部34bとをそれぞれ有する。また、両係止爪34は、個々の張出し部34bを境として案内斜面34aとは逆に傾斜した斜面34cをそれぞれ有する。
【0012】
クッションクリップの使用状態を表した図5において、係止脚30は自動車のボデー40に開けられた取付け孔42に挿入されて、このボデー40に結合されている。したがって、この実施の形態ではボデー40が本発明の「パネル部材」に相当するが、このボデー40に対して開閉操作されるドア50の構成プレートを「パネル部材」とし、それに取付け孔を開けて係止脚30を結合することも可能である。
係止脚30をボデー40の表面40a側から取付け孔42に挿入すると、両係止爪34は個々の案内斜面34aが取付け孔42の内周に接触しながら進行する。これにより、両係止爪34が内方へ押し撓められつつ、取付け孔42を通過してボデー40の裏面40b側に位置する。この状態においては、両係止爪34が弾性によって外方へそれぞれ復帰し、個々の斜面34cが取付け孔42の内周縁に係止する。これによって、係止脚30がボデー40に結合された状態に保持され、結果としてボデー40にクッションクリップが取り付けられる。
【0013】
係止脚30がボデー40に結合された状態では、図5の一部を拡大して表した図6からも明らかなように、クッション10(本体部分12)の底面12bがボデー40の表面40aに接触している。また、シールリップ20も外方へ撓められた状態に変形してボデー40の表面40aに密着している。これにより、ボデー40の表面40a側における取付け孔42の周囲がシールされ、この表面40a側から取付け孔42に水が侵入するのを防止される。そして、シールリップ20が撓むときの支点20bは、前述したように本体部分12の底面12bよりも上側になっているため、シールリップ20が小さい力で変形することになり、係止脚30をボデー40の取付け孔42に挿入する荷重が低減される。
【0014】
係止脚30における両係止爪34の斜面34cは、個々の係止爪34の弾性力に基づいてボデー40をクッション10(本体部分12)の底面12b側へ引き寄せる方向の分力を生じさせる。これにより、ボデー40の表面40aと本体部分12の底面12bとを常に隙間ゼロで軽く接触した状態に保つことができ、同時にボデー40の裏面40bと両係止爪34との間に隙間が生じることも回避する。このため、ボデー40の表面40aと本体部分12の底面12bとを常時干渉させる設定のクッションクリップで、仮に本体部分12が塑性変形を起こしても、それに伴うボデー40の裏面40bと両係止爪34との間の隙間が常に吸収される。したがって、ボデー40に対するクッションクリップのガタツキが解消される。
【0015】
なお、図5で示すドア50を閉じたときの衝撃は、クッション10によって受け止められる。この衝撃により、クッション10の突起部分14が最初に変形し、その後に本体部分12が変形する。このとき、主として本体部分12と突起部分14との硬さの違いによってクッション10の変形量に応じて変化する荷重(反力)の特性が二段階になる。つまり、突起部分14の変形に基づく初期荷重は小さく、その後は本体部分12の変形も加わって荷重が急激に増加する。このように、クッションクリップの初期荷重を小さくすることで、ドア50が勢いよく閉められたときの衝撃を軟らかく受け止め、その跳ね返り等を防止し、その後はドア50からの大きな衝撃力を緩衝する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】クッションクリップの外観を表した正面図。
【図2】クッションクリップの外観を表した側面図。
【図3】クッションクリップを表した縦断面図。
【図4】図3の一部を拡大して表した断面図。
【図5】クッションクリップの使用状態を表した縦断面図。
【図6】図5の一部を拡大して表した断面図。
【符号の説明】
【0017】
10 クッション
12b 底面
20 シールリップ
30 係止脚
34 係止爪
34c 斜面
40 ボデー(パネル部材)
40a 表面
40b 裏面
42 取付け孔
50 ドア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデーに開閉可能に取り付けられたドアを閉じたときの衝撃を緩衝するクッションと、クッションと一体的にその底面から突出しており、ボデーおよびドアのいずれか一方のパネル部材に開けられた取付け孔に挿入することで、該パネル部材に結合される係止脚とを備えたクッションクリップであって、
係止脚が係止爪を有し、この係止爪は、係止脚をパネル部材の表面側から取付け孔に挿入することで、弾性によって内方へ撓みながら取付け孔を通過してパネル部材の裏面側に位置するように構成されているとともに、係止爪にはパネル部材の裏面側で取付け孔の内周縁に係止し、それによってパネル部材に係止脚を結合状態に保持する斜面が設けられ、この斜面は、係止爪の弾性力に基づいてパネル部材をクッションの底面側へ引き寄せる方向の分力を生じさせる傾きに設定されているクッションクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたクッションクリップであって、
クッションの底面に環状のシールリップが一体に設けられ、このシールリップは、係止脚がパネル部材に結合された状態ではパネル部材の表面に接触することで、外方へ広がるように弾性変形してパネル部材の表面に密着するように構成されているクッションクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載されたクッションクリップであって、
シールリップは、クッションの外周面に連続し、かつ、クッションの底面に対しては環状の溝で仕切られ、シールリップが弾性変形するときの支点がクッションの底面よりも上側に設定されているクッションクリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−222074(P2009−222074A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64086(P2008−64086)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】