クラスタ内協調及びクラスタ間干渉回避方法、無線通信システム、集約局及び無線基地局
【課題】複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉回避だけでなく、協調クラスタ間の干渉回避効果を高くすること。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部61を備える。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部61を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局を協調させて無線端末に対する信号を送信する際のクラスタ内協調及びクラスタ間干渉回避方法、無線通信システム、集約局及び無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動無線通信システムでは、面的周波数利用効率を向上させるために、周波数繰返し回数を出来るだけ少なくすることが求められる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代のセルラ方式では、隣接セルで同一周波数帯の電波を利用する1セル周波数繰返し(周波数繰返し回数=1)が実現されている。
【0003】
一方、次世代のセルラ方式の下り回線では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が有力である。このOFDMA方式を用いたセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、隣接セル及び隣接セクタからの干渉が特性劣化の大きな原因となる。具体的には、隣接セル及び隣接セクタからの干渉電力の増加に伴いSINR(Signal−to―Interference and Noise power Ratio)が低下するため、特にMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送を行う際にその効果を発揮することが難しくなる。
【0004】
したがって、OFDMA方式でMIMO伝送を行うセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、MIMO伝送による著しいスループットの増大効果を得るためには、隣接セル及び隣接セクタからの干渉を回避する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような場合の干渉回避技術として、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対して信号を同時送信する協調送信が注目されている。マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調する複数の無線基地局のセル又はセクタの集合によって形成される協調クラスタ内の空間を直交化できるので、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)が回避される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。
【0006】
具体的には、非特許文献1に示された協調送信では、隣接する複数の無線基地局が集約局に接続され、集約局が複数の無線基地局を協調させる。協調クラスタは、協調する複数の無線基地局のセルの集合によって形成される。協調クラスタ内では、マルチユーザMIMO伝送により、複数の無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてブロック対角化Zero−forcing(BD−ZF)法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループットが改善される。
【0007】
また、非特許文献2に示された協調送信では、図19に示すように、隣接する3つの無線基地局(1-1、1-2、1-7)、(1-1、1-3、1-4)、(1-1、1-5、1-6)が集約局2に接続され、無線端末2との通信において、集約局2が無線端末2が在圏するエリアを配下とする3つの無線基地局を協調させる。協調クラスタCLは、協調する3つの無線基地局1の隣接3セクタによって形成される。さらに、協調クラスタCLを形成する隣接3セクタは、各無線基地局1のセクタアンテナからのビームが向き合うように構成されている。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、3つの無線基地局1による協調送信が行われる。マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループット及びセルスループットが改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Benjebbour, M.Shirakabe, Y.Ohwatari, J.Hagiwara, and T.Ohya, “Evaluation of user throughput for MU-MIMO coordinated wireless networks,” IEEE PIMRC 2008, pp.1-5, Sept. 2008.
【非特許文献2】CMCC, “Downlink CoMP-MU-MIMO transmission schemes,” 3GPP RAN1 #56, R1-090922, Feb. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の干渉回避技術は、協調クラスタ内の干渉を回避できるが、協調クラスタ間の干渉を回避できないという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉だけでなく協調クラスタ間の干渉回避効果も期待できるクラスタ内協調及びクラスタ間干渉回避方法、無線通信システム、集約局及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信システムは、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、複数種類のクラスタパタンが各クラスタへ割り当てられるので、クラスタ間の干渉を回避できる。しかも、前記クラスタパタンにしたがって指向性パタンを決定するので、複数の無線基地局から無線端末の在圏するエリアの中心に向けて送信される同一周波数領域の指向性ビームが向き合うように構成され、協調送信により無線端末の在圏するエリア内での干渉を防止することができるとともに、当該エリアの中心に位置する無線端末の信号品質の悪化を防止することができる。
【0013】
また本発明の集約局は、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約する集約局であり、クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、クラスタ内協調送信するデータ信号を同一クラスタの複数無線基地局に信号分配する信号分配部と、前記信号分配部により複数無線基地局に信号分配されたデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
また本発明の制御局装置は、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約している集約局を管理する制御局装置であり、クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部で決定されたクラスタパタンを前記各集約局へ通知する通知手段と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
また本発明の無線基地局は、無線通信システムにおいて隣接する他の無線基地局と共に複数セクタのセルを形成する無線基地局であって、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて自局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、クラスタ内協調送信するデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉回避だけでなく、協調クラスタ間の干渉回避効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る無線通信システムで形成される協調クラスタを示す図である。
【図3】実施形態1に係る指向性パタンを示す図である。
【図4】実施形態1に係る指向性パタン選択情報を示す図である。
【図5】実施形態1において、偶数周波数ブロックの指向性パタン割当て状態、及び奇数周波数ブロックの指向性パタン割当て状態を示す図を示す図である。
【図6】クラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図7】の実施形態1に係る無線通信システムの全体構成図である。
【図8】2種類のクラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図9】2種類のクラスタパタンを配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図10】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを示す図である。
【図11】実施形態1に係る3種類の指向性パタンに対応した指向性パタン選択情報を示す図である。
【図12】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを用いたクラスタパタン構成例を示す図である。
【図13】3種類のクラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図14】3種類のクラスタパタンを配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図15A】本発明の実施形態1に係る集約局の概略機能ブロック図である。
【図15B】本発明の実施形態1に係る無線基地局の概略機能ブロック図である。
【図16】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを用いた指向性パタン選択情報を示す図である。
【図17】3種類のクラスタパタンをダイナミックに配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2に係る無線基地局の詳細機能ブロック図である。
【図19】従来の協調送信システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。本実施形態の無線通信システムは、複数の無線基地局10(10−1乃至10−7、…)と、複数の無線基地局10と光ファイバ20により接続される集約局30と、集約局30に接続されるネットワーク網40とから構成されている。複数の集約局30は制御局70によって集約される。同図には1クラスタCLだけを図示している。クラスタCLは、複数の無線基地局10−2乃至10−7が協調送信する単位である。本実施の形態では、中央部に配置された無線基地局10−1が形成する中央セルC−1と、中央の無線基地局10−1を囲むように配置された他の複数の無線基地局10−2乃至10−7が中央セルC−1の周囲に隣接して形成する複数の隣接セルセルC−2乃至C−7とで、1つのクラスタCLを形成している。このような、複数の無線基地局10−2乃至10−7が協調送信する単位であるクラスタCLが二次元的に配置されて広域の通信エリアが形成される。本実施の形態は、クラスタ内のクラスタ間の干渉回避を実現すると共に、クラスタ内の干渉合成能力を実現する無線通信システムである。
【0019】
図2(a)は、本実施形態に係る無線通信システムから1つのクラスタだけを取り出した状態を示しており、クラスタ内に形成される部分的な協調エリアが概念的に図示されている。図2(b)は1セルのセクタ構成を示す図であり、本実施形態では1セルは6セクタS1乃至S6で構成されるが、セクタ構成は6セクタに限定されない。
【0020】
図2(a)に示すように、本実施形態に係る無線通信システムでは、1つのクラスタを7つの無線基地局10−1乃至10−7で形成している。隣接する3つの無線基地局がそれぞれ1つの協調エリアを形成している。具体的には、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-2、10-3)が協調エリアCL1を形成し、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-3、10-4)が協調エリアCL2を形成している。以下同様に、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-4、10-5)(10-1、10-5、10-6)(10-1、10-6、10-7)(10-1、10-7、10-2)が協調エリアCL3、CL4、CL5、CL6をそれぞれ形成している。図2(a)に示す例では、3つの無線端末50−1,50−2,50−3がクラスタ内に在圏しており、無線端末50−1は無線基地局10−1の配下、無線端末50−2は無線基地局10−2の配下、無線端末50−3は無線基地局10−3の配下となっている。
【0021】
協調エリアCL1乃至CL6をそれぞれ形成している隣接する3つの無線基地局のセットに対して、同一周波数領域で当該協調エリアCLに向けて指向性ビームを互いに向き合う方向で送信する指向性パタンが割り当てられる。
【0022】
図3は、無線基地局10に適用される指向性パタンの一例を示す図である。同図(1)に示す指向性パタン1は、垂直方向を基準にして反時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。同図(2)に示す指向性パタン2は、垂直方向を基準にして時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。
【0023】
図4は指向性パタン1、2と周波数ブロックとの関係を示す図である。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロック1乃至周波数ブロック2n+1で分割し、奇数番号の周波数ブロックに指向性パタン1を割り当て、偶数番号の周波数ブロックに指向性パタン2を割り当てている。図4に示す割り当て例では、時間軸方向に指向性パタン1、2と周波数ブロックとの対応関係は固定であるが、時間スロット単位で指向性パタン1、2と周波数ブロックとの対応関係を変化させても良い。
【0024】
図5(a)(b)に示すように、1クラスタを構成する全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して同一周波数領域では同一の指向性パタン1または2を割り当てることで、周波数ブロック毎に所定の協調エリアCLが形成される。図5(a)に示す例では、偶数番号の周波数ブロックでは1クラスタ内に協調エリアCL2、CL4、CL6が形成される。図5(b)に示す例では、奇数番号の周波数ブロックでは1クラスタ内に協調エリアCL1、CL3、CL5が形成される。周波数方向に多重することで図2(a)に示すように1クラスタ内に協調エリアCL1乃至CL6が形成される。
【0025】
ここで、クラスタパタンとクラスタ間干渉との関係について考察する。
図6に示すように、周波数ブロック(f1)では全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、別の周波数ブロック(f2)では全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、1つのクラスタパタンが構成される。前述した通り、クラスタパタンが適用されるクラスタ内は協調エリアCL1乃至CL6が形成され、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できる。
【0026】
図7は本実施形態1に係る無線通信システムのシステム構成図であり、クラスタ単位で設置される集約局30を管理する制御局70まで示されている。ただし、図7に示す全てのクラスタには、図6に示す同一クラスタパタンのみを繰り返し適用した状態が示されている。図7には同一クラスタパタンのみを繰り返し適用した場合のクラスタ間干渉の様子を示している。個々のクラスタを形成する複数無線基地局10−1乃至10−7は同一の集約局30に接続されている。集約局30がクラスタを形成する配下の無線基地局10−1乃至10−7に対して、図6に示すクラスタパタンを適用してマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いることにより、協調クラスタCL内の空間を直交化している。
【0027】
しかしながら、1つのクラスタパタンを1単位として、クラスタパタン単位間(以下、単にクラスタ間又はクラスタ境界という)に着目すると、クラスタ境界となる隣接クラスタ間で同一周波数領域での指向性ビームが向き合っていることが分かる。すなわち、全てのクラスタに単一のクラスタパタンを割り当てると、クラスタ境界でクラスタ間干渉が発生してしまう。
【0028】
本発明者等は、クラスタパタンの種類を増やして、複数種類のクラスタパタンを混在させることにより、クラスタ間干渉を回避する効果があることに着目し、本発明をするに到った。
【0029】
図8に2種類のクラスタパタンの構成例を示している。
クラスタパタン1は、図6と同様に構成されている。すなわち、図8(a)に示すように、周波数ブロック(f1)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、別の周波数ブロック(f2)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、クラスタパタン1を構成している。
【0030】
図8(b)に示すように、クラスタパタン2は、クラスタパタン1とは指向性パタン及び周波数の組み合わせが逆になるようにしている。すなわち、周波数ブロック(f2)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、周波数ブロック(f1)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、クラスタパタン2を構成している。
【0031】
図9はクラスタパタン1とクラスタパタン2の配置例を示している。同図に示すように、クラスタパタンの種類を2つにしたことにより、クラスタ境界の一部では同一周波数領域では3つの指向性ビームが向き合わない領域(最大でも2つの指向性ビームが向き合うだけ)が形成されている。なお、クラスタ境界の一部にはクラスタ間干渉が高いままの箇所も残存しているが、図7に示す全てのクラスタに単一のクラスタパタンを割り当てた場合に比べれば、大幅にクラスタ間干渉を回避できている。
【0032】
クラスタパタンの種類を増やすことにより、さらにクラスタ間干渉回避効果が高くなると考えられる。クラスタパタンの種類を増やす方法の1つとして、指向性パタンの種類を増加させることが考えられる。図10に示すように3種類の指向性パタン11,12,13を用いることができる。図10(1)に示す指向性パタン11は、垂直方向を基準方向として、反時計回りに45度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。図10(2)に示す指向性パタン12は、垂直方向を基準方向として、時計回りに45度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。図10(3)に示す指向性パタン13は、垂直方向を基準方向として、時計回りに90度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。
【0033】
図11は指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの関係を示す図である。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロックで分割し、周波数ブロック3n+1(n=0,1,2、…)に指向性パタン11を割り当て、周波数ブロック3n+2(n=0,1,2、…)に指向性パタン12を割り当て、周波数ブロック3n+3(n=0,1,2、…)に指向性パタン13を割り当てている。図11に示す割り当て例では、時間軸方向に指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの対応関係は固定であるが、時間スロット単位で指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの対応関係を変化させても良い。
【0034】
図12に3種類の周波数ブロック(f1、f2、f3)と3種類の指向性パタン11,12,13とを組み合わせて1つのクラスタパタンを構成した例が示されている。周波数ブロックf1では指向性パタン11による協調エリアCL11、CL12が形成され、周波数ブロックf2では指向性パタン12による協調エリアCL21、CL22が形成され、周波数ブロックf3では指向性パタン13による協調エリアCL31、CL32が形成される。これら3つの指向性パタン11,12,13を組み合わせてクラスタパタン1が構成されている。クラスタパタン1が適用されたクラスタは、クラスタ内に6つの協調エリアCL11乃至CL32を有する。
【0035】
図13には指向性パタン11,12,13と周波数ブロックf1、f2、f3との組み合わせにより構成可能な3種類のクラスタパタン1,2,3を示している。クラスタパタン1は、図12に示すものと同じである。クラスタパタン2は、指向性パタン11を周波数ブロックf3に割当て、指向性パタン12を周波数ブロックf1に割当て、指向性パタン13を周波数ブロックf2に割当てた構成となっている。クラスタパタン3は、指向性パタン11を周波数ブロックf2に割当て、指向性パタン12を周波数ブロックf3に割当て、指向性パタン13を周波数ブロックf1に割当てた構成となっている。
【0036】
図14には、図13に示す3種類のクラスタパタン1,2,3を通信エリアに固定的に割り当てた状態が示されている。同図に示すように、3種類のクラスタパタン1,2,3をほぼ均等に分散配置したことにより、クラスタ境界では同一周波数で指向性ビームが向かい合って干渉する箇所がさらに削減されている。すなわち、クラスタパタンの種類を増やすことにより、クラスタ間干渉回避効果が高くなっていることが確認できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る無線通信システムを構成する集約局30及び各無線基地局10の機能構成について説明する。図15A及びBは、集約局30及び各無線基地局10(第1無線基地局装置から第M無線基地局装置)の機能ブロック図である。本実施形態では、無線基地局10の数をM、各無線基地局10のアンテナ素子11の数をNt、無線端末50の数をNuとする。なお、本実施形態に係る無線通信システムの全体システム構成は図7に示す通りであり、各クラスタを構成する複数無線基地局10−1乃至10−7を集約局30が集約し、これら集約局30を制御局70が管理する。
【0038】
クラスタパタン決定部61は、集約局30に接続されている複数の無線基地局10−1〜10−7に適用するクラスタパタンを複数種類(例えば、図13、図14に示す3種類)の中から決定する。このとき、本実施形態では図14に示すように3種類のクラスタパタン1,2,3が略均等に配置されるように、クラスタ単位(集約局単位)で各集約局配下の無線基地局10−1〜10−7に適用するクラスタパタン1,2,3が決定される。そのため、クラスタパタン決定部61は、図13に示すように多数の集約局30を管理する制御局70に配置することが望ましい。制御局70は、多数の集約局30から報告される対象移動端末のチャネル状態などからクラスタ間干渉が最小又は所望値以下に抑えられるクラスタパタン1,2,3の配置(割当て)を決定する。クラスタ単位で決定したクラスタパタン(1,2又は3)が通知手段を介して各集約局30へ通知される。または、個々の集約局30の内部にクラスタパタン決定部61を備え、集約局30間で適用するクラスタパタン情報を交換して隣接クラスタ間又は所定エリア内で同一クラスタパタンが適用されないように決定しても良い。または、1つの集約局30に備えたクラスタパタン決定部61が他のクラスタまで含めた全体のクラスタパタン配置を決定し、他の集約局30に対して決定したクラスタパタンを通知するようにしても良い。
【0039】
集約局30は、クラスタパタン決定部61が決定したクラスタパタンに基づいて指向性パタンを無線基地局10−1乃至10−7に対して割り当てる。集約局30は、指向性パタン決定部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部(第1変調部乃至第Nu変調部)33と、プリコーディング部34と、無線基地局数M個の送信部(第1送信部乃至第M送信部)35とを具備する。
【0040】
指向性パタン決定部31は、クラスタパタン決定部61が決定したクラスタパタン種別が指示される。指向性パタン決定部31は、例えば、図13に示すクラスタパタン1が指示されたものとする。指向性パタン決定部31は、クラスタパタン1に基づいて、配下の複数の無線基地局10−1乃至10−7に対してスロット時間毎に周波数ブロックと指向性パタンとの組み合わせを決定してプリコーディング部34へ指示する。たとえば、図11に示す時間スロット1のタイミングでは、周波数ブロック3n+1では指向性パタン1が割り当てられ、周波数ブロック3n+2では指向性パタン12割り当てられ、周波数ブロック3n+3では指向性パタン3が割り当てられ、その結果として時間スロット1ではクラスタパタン1が無線基地局10−1乃至10−7に対して割り当てられる。
【0041】
図14に示すように、クラスタパタン1が適用されたクラスタに対して隣接している他のクラスタでは、同様にして当該他のクラスタを構成している複数無線基地局10に対してクラスタパタン2が割り当てられ、さらに他のクラスタに隣接する別のクラスタではクラスタパタン3が割り当てられる。
【0042】
以上のようにして、クラスタパタン決定部61によって複数種類のクラスタパタン1,2,3が混在して分散配置されるように、各クラスタに対してクラスタパタンが決定され、決定したクラスタパタンを受けて指向性パタン決定部31が配下の各無線基地局10に対して周波数ブロック毎に指向性パタンを決定する。
【0043】
図14に示すように、各クラスタに対してクラスタパタン1,2,3を固定的に割り当ててもよい。この場合、クラスタパタン決定部61はシステム構築時又はクラスタ構成が変化するシステム更新時に、各クラスタに対して割り当てるクラスタパタンを決定し、決定したクラスタパタンを集約局30の指向性パタン決定部61に通知する。
【0044】
信号分配部32は、集約局30配下の全無線基地局10に接続される全無線端末50−1乃至50−Nuに対するデータ信号を、ネットワーク網40から受信し、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。信号分配部32は、Nu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0045】
変調部33は、符号化部331と、インタリーブ部332と、直並列変換部333と、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr毎の信号変調部334(すなわち、サブキャリア数L×送信ストリーム数Nr個の信号変調部334)とを具備する。
【0046】
符号化部331は、所定の符号化方法を用いて、信号分配部32から入力されたデータ信号に対する符号化を行う。ここで、符号化方法としては、ターボ符号を用いても良いし、畳み込み符号を用いても良いし、LDPC符号を用いても良く、本発明は符号化方法に係わりなく実施可能である。符号化部331は、符号化が行われたデータ信号をインタリーブ部332に入力する。
【0047】
インタリーブ部332は、符号化部331から入力されたデータ信号に対するインタリーブを行う。ここで、インタリーブ方法としては、いずれの方法を用いて良く、本発明はインタリーブ方法に係りなく実施可能である。インタリーブ部332は、インタリーブが行われたデータ信号を直並列変換部333に入力する。
【0048】
直並列変換部333は、インタリーブ部332から入力されたデータ信号系列を、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr分のデータ信号に並列変換する。直並列変換部333は、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎のデータ信号を、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎に設けられた信号変調部334に入力する。
【0049】
各信号変調部334は、直並列変換部333から入力されたデータ信号に対して多値変調を行う。ここで、変調多値数は、固定的であってもよいし、チャネルの状況に応じて適応的に変更されてもよい。各信号変調部334は、多値変調が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。
【0050】
プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、プリコーディングを行う。プリコーディング部34は、指向性パタン決定部31から入力された指向性パタン情報に応じて協調可能なクラスタで(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合うセクタ)マルチユーザMIMO(BD-ZF, ZF等)・Coordinated Beamforming(CB)等による複数セル同時プリコーディグを選択する。
【0051】
プリコーディング部34は、入力されたデータ信号に対して、選択されたプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、集約局30配下のM個の無線基地局10の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号(すなわち、無線基地局数M×各無線基地局10のアンテナ素子数Nt分のデータ信号)を生成する。プリコーディング部34で生成されたM×Nt個のデータ信号は、M個の無線基地局10毎に設けられた第1送信部35乃至第M送信部35にそれぞれ入力する。
【0052】
送信部35は、各無線基地局10のアンテナ素子数Nt毎に、逆フーリエ変換部351と、並直列変換部352と、ガードインターバル挿入部353と、搬送波周波数変調部354と、電気−光変換部355とを具備する。
【0053】
逆フーリエ変換部351は、プリコーディング部34から入力されたデータ信号を周波数領域から時間領域に変換する。逆フーリエ変換部351は、時間領域に変換されたデータ信号を並直列変換部352に変換する。
【0054】
並直列変換部352は、逆フーリエ変換部351から入力された、サブキャリア数L及びアンテナ素子分のデータ信号系列をアンテナ素子数Nt分のデータ信号系列に直列変換する。並直列変換部352は、アンテナ素子数Nt毎のデータ信号系列を、アンテナ素子数Nt毎に設けられたガードインターバル挿入部353に入力する。
【0055】
ガードインターバル挿入部353は、並直列変換部352から入力されたデータ信号系列に対してガードインターバルを挿入し、ガードインターバルが挿入されたデータ信号系列を搬送波周波数変調部354に入力する。
【0056】
搬送波周波数変調部354は、ガードインターバル挿入部353から入力されたデータ信号系列を搬送波周波数に変調し、変調されたデータ信号を電気−光変換部355に入力する。
【0057】
電気−光変換部355は、搬送波周波数変調部354から入力されたデータ信号を電気信号から光信号に変調し、変調されたデータ信号を、光ファイバ20を介して無線基地局10に入力する。
【0058】
各無線基地局10は、集約局30に光ファイバ20を介して接続されている。無線基地局10は、Nt個のアンテナ素子11と、Nt個のアンテナ素子11にそれぞれ接続されるNt個の光−電気変換部12と、を具備する。
【0059】
光−電気変換部12は、集約局30から光ファイバ20を介して入力されたデータ信号を光信号から電気信号に復調し、復調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0060】
以上のように、集約局30において各無線基地局10の個々のアンテナ素子11へ入力されるデータ信号を生成しており、プリコーディング部34におけるプリコーディングによって各無線基地局10から送信される指向性ビームの方向が制御される。
【0061】
以上の説明では、複数種類のクラスタパタン1,2,3を固定的に割り当てているが、自律的にダイナミックな割り当ても可能である。隣接クラスタからの干渉が最小となるようにクラスタパタンを自律的に決定しても良い。
【0062】
例えば、図2(a)に示すように、無線基地局10−1乃至10−3がクラスタ内に在圏する少なくとも3つの無線端末50−1,50−2,50−3に対してデータ信号を送信するものとする。図7に示すように各クラスタを管轄する各集約局30は、それぞれ配下の無線基地局10−1乃至10−3に対してチャネル推定用の参照信号を送信する。無線基地局10−1乃至10−3は、自局に接続する無線端末50−1,50−2,50−3(すなわち、協調エリアCL1(図2(a))に在圏する無線端末)に対して、集約局30からの参照信号を送信する。
【0063】
無線端末50−1,50−2,50−3は、各無線基地局10−1乃至10−3から受信した参照信号を用いてチャネル推定し、チャネル推定結果であるチャネル情報を各無線基地局10−1乃至10−3に送信する。ここで、各無線端末50-1,50-2,50-3は、チャネル推定情報として、全周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよいし、上り回線の逼迫を防ぐために、一部の周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよい。
【0064】
各無線基地局10−1乃至10−3は、無線端末50−1,50−2,50−3から受信したチャネル情報をそれぞれ集約局30に送信し、集約局30はチャネル推定情報をそのまま上位装置である制御局70へ送信する。又は、他のクラスタからの干渉情報に変換して上位装置である制御局70へ送信する。制御局70に備えたクラスタパタン決定部61が、隣接クラスタからの干渉が最小となるようにクラスタパタンを決定する。図17は3つのクラスタパタン1,2,3を自律的にダイナミックに割り当てた一例を示している。
【0065】
また、以上の説明では図11に示すように、時間軸方向に指向性パタンと周波数ブロックとの関係は固定であったが、図16に示すように時間スロット毎に、指向性パタンと周波数ブロックとの組み合わせを切り替えるようにしても良い。たとえば、クラスタにおけるトラヒック量に基づいて、周波数ブロック及び時間スロットに異なる指向性パタンを定めることにより、無線通信システムにおけるスループットを向上させることが可能となる。
【0066】
また、上述の実施形態の協調送信方法においては、MU−MIMOプリコーディングを行うには、BD−ZF法やZero−Forcing法や非線形プリコーディング、最小2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)などその他の方法を用いてプリコーディングを行ってもよい。
【0067】
このように、本実施形態によれば、隣接クラスタからの干渉が抑制されるように複数種類のクラスタパタンを固定的又はダイナミックに配置するので、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉回避だけでなく、協調クラスタ間の干渉回避効果を期待できる。
【0068】
以上の説明では、集約局におけるプリコーディング部でMIMO伝送処理用にプリコーディングして無線基地局毎に指向性パタンの送信データを生成しているが、上記実施の形態で説明した集約局の機能を無線基地局に搭載しても良い。
【0069】
図18は実施の形態2に係る無線通信システムにおける各無線基地局の機能ブロックを示している。
本実施形態2の無線通信システムは、各無線基地局が集約局からMIMO伝送処理用にプリコーディングされた送信データを受け取るのではなく、各無線基地局がMIMO伝送処理用にプリコーディング機能を備える。無線通信システムは、同一構成を有する複数の無線基地局10(第1無線基地局10−1から第M無線基地局10-M)で構成されている。
【0070】
無線基地局10は、変調部33、プリコーディング部34、送信部35を備えている。これら各構成要素は前述した集約局30における対応する各機能要素と同一機能を有する。無線基地局10は、隣接クラスタからの干渉を回避可能なクラスタパタンに基づいて決定した指向性パタンにしたがって周波数ブロック毎にビーム形成する。
【0071】
クラスタパタン決定部61は、接続端末50からのチャネル推定情報及び隣接クラスタのクラスタパタン決定情報から自局が属しているクラスタのクラスタパタンを複数のクラスタパタンから決定する。指向性パタン決定部31は決定したクラスタパタンにしたがって自局の指向性パタンを周波数ブロック単位で決定する。周波数ブロック単位で決定した指向性パタンはプリコーディング部34へ与えられる。
【0072】
一方、クラスタパタン決定情報は同一クラスタ内の無線基地局10へクラスタパタン決定情報交換手段36を介して通知されると共に、隣接クラスタの無線基地局10へも通知される。隣接クラスタの無線基地局10内のクラスタパタン決定部61は、隣接クラスタで決定したクラスタパタンとは異なるクラスタパタンを自局へ適用するクラスタパタンとして決定する。これにより、隣接するクラスタ間では異なるクラスタパタンが適用されることとなり、クラスタ間干渉を回避できることになる。なお、対象端末が配下に在圏していない無線基地局10はクラスタ間干渉の干渉局とならないので、クラスタパタン及び指向性パタンの決定動作は実行しなくても良い。
【0073】
また、クラスタを形成する複数の無線基地局10−1から10−7は、データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタ情報、各無線基地局が接続端末である無線端末50から受信したチャネル情報、協調送信の対象無線端末50への送信データを、送信データ・チャネル情報交換手段37を介して共有化する。
【0074】
なお、クラスタパタン決定情報交換手段36及び送信データ・チャネル情報交換手段37は、全ての無線基地局10が備えていても良いし、特定の無線基地局10だけが備えていて他の無線基地局へ必要な情報を通知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0075】
10−1〜10−7…無線基地局、20…光ファイバ、30…集約局、40…ネットワーク網、50−1〜50−3…無線端末、11…アンテナ素子、12…光−電気変換部、31…指向性パタン決定部、32…信号分配部、33…変調部、34…プリコーディング部、35…送信部、36…クラスタパタン決定情報交換手段、37…送信データ・チャネル情報交換手段、61…クラスタパタン決定部、331…符号化部、332…インタリーブ部、333…直並列変換部、334…信号変調部、351…逆フーリエ変換部、352…並直列変換部、353…ガードインターバル挿入部、354…搬送波周波数変調部、355…電気−光変換部、C、C1〜C7…セル、CL、CL1〜CL6…協調クラスタ、S1〜S6…セクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局を協調させて無線端末に対する信号を送信する際のクラスタ内協調及びクラスタ間干渉回避方法、無線通信システム、集約局及び無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動無線通信システムでは、面的周波数利用効率を向上させるために、周波数繰返し回数を出来るだけ少なくすることが求められる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代のセルラ方式では、隣接セルで同一周波数帯の電波を利用する1セル周波数繰返し(周波数繰返し回数=1)が実現されている。
【0003】
一方、次世代のセルラ方式の下り回線では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が有力である。このOFDMA方式を用いたセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、隣接セル及び隣接セクタからの干渉が特性劣化の大きな原因となる。具体的には、隣接セル及び隣接セクタからの干渉電力の増加に伴いSINR(Signal−to―Interference and Noise power Ratio)が低下するため、特にMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送を行う際にその効果を発揮することが難しくなる。
【0004】
したがって、OFDMA方式でMIMO伝送を行うセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、MIMO伝送による著しいスループットの増大効果を得るためには、隣接セル及び隣接セクタからの干渉を回避する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような場合の干渉回避技術として、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対して信号を同時送信する協調送信が注目されている。マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調する複数の無線基地局のセル又はセクタの集合によって形成される協調クラスタ内の空間を直交化できるので、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)が回避される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。
【0006】
具体的には、非特許文献1に示された協調送信では、隣接する複数の無線基地局が集約局に接続され、集約局が複数の無線基地局を協調させる。協調クラスタは、協調する複数の無線基地局のセルの集合によって形成される。協調クラスタ内では、マルチユーザMIMO伝送により、複数の無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてブロック対角化Zero−forcing(BD−ZF)法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループットが改善される。
【0007】
また、非特許文献2に示された協調送信では、図19に示すように、隣接する3つの無線基地局(1-1、1-2、1-7)、(1-1、1-3、1-4)、(1-1、1-5、1-6)が集約局2に接続され、無線端末2との通信において、集約局2が無線端末2が在圏するエリアを配下とする3つの無線基地局を協調させる。協調クラスタCLは、協調する3つの無線基地局1の隣接3セクタによって形成される。さらに、協調クラスタCLを形成する隣接3セクタは、各無線基地局1のセクタアンテナからのビームが向き合うように構成されている。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、3つの無線基地局1による協調送信が行われる。マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループット及びセルスループットが改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Benjebbour, M.Shirakabe, Y.Ohwatari, J.Hagiwara, and T.Ohya, “Evaluation of user throughput for MU-MIMO coordinated wireless networks,” IEEE PIMRC 2008, pp.1-5, Sept. 2008.
【非特許文献2】CMCC, “Downlink CoMP-MU-MIMO transmission schemes,” 3GPP RAN1 #56, R1-090922, Feb. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の干渉回避技術は、協調クラスタ内の干渉を回避できるが、協調クラスタ間の干渉を回避できないという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉だけでなく協調クラスタ間の干渉回避効果も期待できるクラスタ内協調及びクラスタ間干渉回避方法、無線通信システム、集約局及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信システムは、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、複数種類のクラスタパタンが各クラスタへ割り当てられるので、クラスタ間の干渉を回避できる。しかも、前記クラスタパタンにしたがって指向性パタンを決定するので、複数の無線基地局から無線端末の在圏するエリアの中心に向けて送信される同一周波数領域の指向性ビームが向き合うように構成され、協調送信により無線端末の在圏するエリア内での干渉を防止することができるとともに、当該エリアの中心に位置する無線端末の信号品質の悪化を防止することができる。
【0013】
また本発明の集約局は、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約する集約局であり、クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、クラスタ内協調送信するデータ信号を同一クラスタの複数無線基地局に信号分配する信号分配部と、前記信号分配部により複数無線基地局に信号分配されたデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
また本発明の制御局装置は、それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約している集約局を管理する制御局装置であり、クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部で決定されたクラスタパタンを前記各集約局へ通知する通知手段と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
また本発明の無線基地局は、無線通信システムにおいて隣接する他の無線基地局と共に複数セクタのセルを形成する無線基地局であって、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部と、前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて自局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、クラスタ内協調送信するデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉回避だけでなく、協調クラスタ間の干渉回避効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る無線通信システムで形成される協調クラスタを示す図である。
【図3】実施形態1に係る指向性パタンを示す図である。
【図4】実施形態1に係る指向性パタン選択情報を示す図である。
【図5】実施形態1において、偶数周波数ブロックの指向性パタン割当て状態、及び奇数周波数ブロックの指向性パタン割当て状態を示す図を示す図である。
【図6】クラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図7】の実施形態1に係る無線通信システムの全体構成図である。
【図8】2種類のクラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図9】2種類のクラスタパタンを配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図10】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを示す図である。
【図11】実施形態1に係る3種類の指向性パタンに対応した指向性パタン選択情報を示す図である。
【図12】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを用いたクラスタパタン構成例を示す図である。
【図13】3種類のクラスタパタンの構成を説明するためのパタン構成図である。
【図14】3種類のクラスタパタンを配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図15A】本発明の実施形態1に係る集約局の概略機能ブロック図である。
【図15B】本発明の実施形態1に係る無線基地局の概略機能ブロック図である。
【図16】実施形態1に係る3種類の指向性パタンを用いた指向性パタン選択情報を示す図である。
【図17】3種類のクラスタパタンをダイナミックに配置した場合のクラスタ間干渉の様子を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2に係る無線基地局の詳細機能ブロック図である。
【図19】従来の協調送信システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。本実施形態の無線通信システムは、複数の無線基地局10(10−1乃至10−7、…)と、複数の無線基地局10と光ファイバ20により接続される集約局30と、集約局30に接続されるネットワーク網40とから構成されている。複数の集約局30は制御局70によって集約される。同図には1クラスタCLだけを図示している。クラスタCLは、複数の無線基地局10−2乃至10−7が協調送信する単位である。本実施の形態では、中央部に配置された無線基地局10−1が形成する中央セルC−1と、中央の無線基地局10−1を囲むように配置された他の複数の無線基地局10−2乃至10−7が中央セルC−1の周囲に隣接して形成する複数の隣接セルセルC−2乃至C−7とで、1つのクラスタCLを形成している。このような、複数の無線基地局10−2乃至10−7が協調送信する単位であるクラスタCLが二次元的に配置されて広域の通信エリアが形成される。本実施の形態は、クラスタ内のクラスタ間の干渉回避を実現すると共に、クラスタ内の干渉合成能力を実現する無線通信システムである。
【0019】
図2(a)は、本実施形態に係る無線通信システムから1つのクラスタだけを取り出した状態を示しており、クラスタ内に形成される部分的な協調エリアが概念的に図示されている。図2(b)は1セルのセクタ構成を示す図であり、本実施形態では1セルは6セクタS1乃至S6で構成されるが、セクタ構成は6セクタに限定されない。
【0020】
図2(a)に示すように、本実施形態に係る無線通信システムでは、1つのクラスタを7つの無線基地局10−1乃至10−7で形成している。隣接する3つの無線基地局がそれぞれ1つの協調エリアを形成している。具体的には、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-2、10-3)が協調エリアCL1を形成し、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-3、10-4)が協調エリアCL2を形成している。以下同様に、隣接する3つの無線基地局(10-1、10-4、10-5)(10-1、10-5、10-6)(10-1、10-6、10-7)(10-1、10-7、10-2)が協調エリアCL3、CL4、CL5、CL6をそれぞれ形成している。図2(a)に示す例では、3つの無線端末50−1,50−2,50−3がクラスタ内に在圏しており、無線端末50−1は無線基地局10−1の配下、無線端末50−2は無線基地局10−2の配下、無線端末50−3は無線基地局10−3の配下となっている。
【0021】
協調エリアCL1乃至CL6をそれぞれ形成している隣接する3つの無線基地局のセットに対して、同一周波数領域で当該協調エリアCLに向けて指向性ビームを互いに向き合う方向で送信する指向性パタンが割り当てられる。
【0022】
図3は、無線基地局10に適用される指向性パタンの一例を示す図である。同図(1)に示す指向性パタン1は、垂直方向を基準にして反時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。同図(2)に示す指向性パタン2は、垂直方向を基準にして時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。
【0023】
図4は指向性パタン1、2と周波数ブロックとの関係を示す図である。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロック1乃至周波数ブロック2n+1で分割し、奇数番号の周波数ブロックに指向性パタン1を割り当て、偶数番号の周波数ブロックに指向性パタン2を割り当てている。図4に示す割り当て例では、時間軸方向に指向性パタン1、2と周波数ブロックとの対応関係は固定であるが、時間スロット単位で指向性パタン1、2と周波数ブロックとの対応関係を変化させても良い。
【0024】
図5(a)(b)に示すように、1クラスタを構成する全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して同一周波数領域では同一の指向性パタン1または2を割り当てることで、周波数ブロック毎に所定の協調エリアCLが形成される。図5(a)に示す例では、偶数番号の周波数ブロックでは1クラスタ内に協調エリアCL2、CL4、CL6が形成される。図5(b)に示す例では、奇数番号の周波数ブロックでは1クラスタ内に協調エリアCL1、CL3、CL5が形成される。周波数方向に多重することで図2(a)に示すように1クラスタ内に協調エリアCL1乃至CL6が形成される。
【0025】
ここで、クラスタパタンとクラスタ間干渉との関係について考察する。
図6に示すように、周波数ブロック(f1)では全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、別の周波数ブロック(f2)では全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、1つのクラスタパタンが構成される。前述した通り、クラスタパタンが適用されるクラスタ内は協調エリアCL1乃至CL6が形成され、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できる。
【0026】
図7は本実施形態1に係る無線通信システムのシステム構成図であり、クラスタ単位で設置される集約局30を管理する制御局70まで示されている。ただし、図7に示す全てのクラスタには、図6に示す同一クラスタパタンのみを繰り返し適用した状態が示されている。図7には同一クラスタパタンのみを繰り返し適用した場合のクラスタ間干渉の様子を示している。個々のクラスタを形成する複数無線基地局10−1乃至10−7は同一の集約局30に接続されている。集約局30がクラスタを形成する配下の無線基地局10−1乃至10−7に対して、図6に示すクラスタパタンを適用してマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いることにより、協調クラスタCL内の空間を直交化している。
【0027】
しかしながら、1つのクラスタパタンを1単位として、クラスタパタン単位間(以下、単にクラスタ間又はクラスタ境界という)に着目すると、クラスタ境界となる隣接クラスタ間で同一周波数領域での指向性ビームが向き合っていることが分かる。すなわち、全てのクラスタに単一のクラスタパタンを割り当てると、クラスタ境界でクラスタ間干渉が発生してしまう。
【0028】
本発明者等は、クラスタパタンの種類を増やして、複数種類のクラスタパタンを混在させることにより、クラスタ間干渉を回避する効果があることに着目し、本発明をするに到った。
【0029】
図8に2種類のクラスタパタンの構成例を示している。
クラスタパタン1は、図6と同様に構成されている。すなわち、図8(a)に示すように、周波数ブロック(f1)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、別の周波数ブロック(f2)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、クラスタパタン1を構成している。
【0030】
図8(b)に示すように、クラスタパタン2は、クラスタパタン1とは指向性パタン及び周波数の組み合わせが逆になるようにしている。すなわち、周波数ブロック(f2)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン1を割当て、周波数ブロック(f1)で全ての無線基地局10−1乃至10−7に対して指向性パタン2を割当てることで、クラスタパタン2を構成している。
【0031】
図9はクラスタパタン1とクラスタパタン2の配置例を示している。同図に示すように、クラスタパタンの種類を2つにしたことにより、クラスタ境界の一部では同一周波数領域では3つの指向性ビームが向き合わない領域(最大でも2つの指向性ビームが向き合うだけ)が形成されている。なお、クラスタ境界の一部にはクラスタ間干渉が高いままの箇所も残存しているが、図7に示す全てのクラスタに単一のクラスタパタンを割り当てた場合に比べれば、大幅にクラスタ間干渉を回避できている。
【0032】
クラスタパタンの種類を増やすことにより、さらにクラスタ間干渉回避効果が高くなると考えられる。クラスタパタンの種類を増やす方法の1つとして、指向性パタンの種類を増加させることが考えられる。図10に示すように3種類の指向性パタン11,12,13を用いることができる。図10(1)に示す指向性パタン11は、垂直方向を基準方向として、反時計回りに45度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。図10(2)に示す指向性パタン12は、垂直方向を基準方向として、時計回りに45度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。図10(3)に示す指向性パタン13は、垂直方向を基準方向として、時計回りに90度、225度の2方向にピークを持つ指向性ビームから構成される。
【0033】
図11は指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの関係を示す図である。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロックで分割し、周波数ブロック3n+1(n=0,1,2、…)に指向性パタン11を割り当て、周波数ブロック3n+2(n=0,1,2、…)に指向性パタン12を割り当て、周波数ブロック3n+3(n=0,1,2、…)に指向性パタン13を割り当てている。図11に示す割り当て例では、時間軸方向に指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの対応関係は固定であるが、時間スロット単位で指向性パタン11、12、13と周波数ブロックとの対応関係を変化させても良い。
【0034】
図12に3種類の周波数ブロック(f1、f2、f3)と3種類の指向性パタン11,12,13とを組み合わせて1つのクラスタパタンを構成した例が示されている。周波数ブロックf1では指向性パタン11による協調エリアCL11、CL12が形成され、周波数ブロックf2では指向性パタン12による協調エリアCL21、CL22が形成され、周波数ブロックf3では指向性パタン13による協調エリアCL31、CL32が形成される。これら3つの指向性パタン11,12,13を組み合わせてクラスタパタン1が構成されている。クラスタパタン1が適用されたクラスタは、クラスタ内に6つの協調エリアCL11乃至CL32を有する。
【0035】
図13には指向性パタン11,12,13と周波数ブロックf1、f2、f3との組み合わせにより構成可能な3種類のクラスタパタン1,2,3を示している。クラスタパタン1は、図12に示すものと同じである。クラスタパタン2は、指向性パタン11を周波数ブロックf3に割当て、指向性パタン12を周波数ブロックf1に割当て、指向性パタン13を周波数ブロックf2に割当てた構成となっている。クラスタパタン3は、指向性パタン11を周波数ブロックf2に割当て、指向性パタン12を周波数ブロックf3に割当て、指向性パタン13を周波数ブロックf1に割当てた構成となっている。
【0036】
図14には、図13に示す3種類のクラスタパタン1,2,3を通信エリアに固定的に割り当てた状態が示されている。同図に示すように、3種類のクラスタパタン1,2,3をほぼ均等に分散配置したことにより、クラスタ境界では同一周波数で指向性ビームが向かい合って干渉する箇所がさらに削減されている。すなわち、クラスタパタンの種類を増やすことにより、クラスタ間干渉回避効果が高くなっていることが確認できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る無線通信システムを構成する集約局30及び各無線基地局10の機能構成について説明する。図15A及びBは、集約局30及び各無線基地局10(第1無線基地局装置から第M無線基地局装置)の機能ブロック図である。本実施形態では、無線基地局10の数をM、各無線基地局10のアンテナ素子11の数をNt、無線端末50の数をNuとする。なお、本実施形態に係る無線通信システムの全体システム構成は図7に示す通りであり、各クラスタを構成する複数無線基地局10−1乃至10−7を集約局30が集約し、これら集約局30を制御局70が管理する。
【0038】
クラスタパタン決定部61は、集約局30に接続されている複数の無線基地局10−1〜10−7に適用するクラスタパタンを複数種類(例えば、図13、図14に示す3種類)の中から決定する。このとき、本実施形態では図14に示すように3種類のクラスタパタン1,2,3が略均等に配置されるように、クラスタ単位(集約局単位)で各集約局配下の無線基地局10−1〜10−7に適用するクラスタパタン1,2,3が決定される。そのため、クラスタパタン決定部61は、図13に示すように多数の集約局30を管理する制御局70に配置することが望ましい。制御局70は、多数の集約局30から報告される対象移動端末のチャネル状態などからクラスタ間干渉が最小又は所望値以下に抑えられるクラスタパタン1,2,3の配置(割当て)を決定する。クラスタ単位で決定したクラスタパタン(1,2又は3)が通知手段を介して各集約局30へ通知される。または、個々の集約局30の内部にクラスタパタン決定部61を備え、集約局30間で適用するクラスタパタン情報を交換して隣接クラスタ間又は所定エリア内で同一クラスタパタンが適用されないように決定しても良い。または、1つの集約局30に備えたクラスタパタン決定部61が他のクラスタまで含めた全体のクラスタパタン配置を決定し、他の集約局30に対して決定したクラスタパタンを通知するようにしても良い。
【0039】
集約局30は、クラスタパタン決定部61が決定したクラスタパタンに基づいて指向性パタンを無線基地局10−1乃至10−7に対して割り当てる。集約局30は、指向性パタン決定部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部(第1変調部乃至第Nu変調部)33と、プリコーディング部34と、無線基地局数M個の送信部(第1送信部乃至第M送信部)35とを具備する。
【0040】
指向性パタン決定部31は、クラスタパタン決定部61が決定したクラスタパタン種別が指示される。指向性パタン決定部31は、例えば、図13に示すクラスタパタン1が指示されたものとする。指向性パタン決定部31は、クラスタパタン1に基づいて、配下の複数の無線基地局10−1乃至10−7に対してスロット時間毎に周波数ブロックと指向性パタンとの組み合わせを決定してプリコーディング部34へ指示する。たとえば、図11に示す時間スロット1のタイミングでは、周波数ブロック3n+1では指向性パタン1が割り当てられ、周波数ブロック3n+2では指向性パタン12割り当てられ、周波数ブロック3n+3では指向性パタン3が割り当てられ、その結果として時間スロット1ではクラスタパタン1が無線基地局10−1乃至10−7に対して割り当てられる。
【0041】
図14に示すように、クラスタパタン1が適用されたクラスタに対して隣接している他のクラスタでは、同様にして当該他のクラスタを構成している複数無線基地局10に対してクラスタパタン2が割り当てられ、さらに他のクラスタに隣接する別のクラスタではクラスタパタン3が割り当てられる。
【0042】
以上のようにして、クラスタパタン決定部61によって複数種類のクラスタパタン1,2,3が混在して分散配置されるように、各クラスタに対してクラスタパタンが決定され、決定したクラスタパタンを受けて指向性パタン決定部31が配下の各無線基地局10に対して周波数ブロック毎に指向性パタンを決定する。
【0043】
図14に示すように、各クラスタに対してクラスタパタン1,2,3を固定的に割り当ててもよい。この場合、クラスタパタン決定部61はシステム構築時又はクラスタ構成が変化するシステム更新時に、各クラスタに対して割り当てるクラスタパタンを決定し、決定したクラスタパタンを集約局30の指向性パタン決定部61に通知する。
【0044】
信号分配部32は、集約局30配下の全無線基地局10に接続される全無線端末50−1乃至50−Nuに対するデータ信号を、ネットワーク網40から受信し、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。信号分配部32は、Nu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0045】
変調部33は、符号化部331と、インタリーブ部332と、直並列変換部333と、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr毎の信号変調部334(すなわち、サブキャリア数L×送信ストリーム数Nr個の信号変調部334)とを具備する。
【0046】
符号化部331は、所定の符号化方法を用いて、信号分配部32から入力されたデータ信号に対する符号化を行う。ここで、符号化方法としては、ターボ符号を用いても良いし、畳み込み符号を用いても良いし、LDPC符号を用いても良く、本発明は符号化方法に係わりなく実施可能である。符号化部331は、符号化が行われたデータ信号をインタリーブ部332に入力する。
【0047】
インタリーブ部332は、符号化部331から入力されたデータ信号に対するインタリーブを行う。ここで、インタリーブ方法としては、いずれの方法を用いて良く、本発明はインタリーブ方法に係りなく実施可能である。インタリーブ部332は、インタリーブが行われたデータ信号を直並列変換部333に入力する。
【0048】
直並列変換部333は、インタリーブ部332から入力されたデータ信号系列を、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr分のデータ信号に並列変換する。直並列変換部333は、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎のデータ信号を、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎に設けられた信号変調部334に入力する。
【0049】
各信号変調部334は、直並列変換部333から入力されたデータ信号に対して多値変調を行う。ここで、変調多値数は、固定的であってもよいし、チャネルの状況に応じて適応的に変更されてもよい。各信号変調部334は、多値変調が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。
【0050】
プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、プリコーディングを行う。プリコーディング部34は、指向性パタン決定部31から入力された指向性パタン情報に応じて協調可能なクラスタで(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合うセクタ)マルチユーザMIMO(BD-ZF, ZF等)・Coordinated Beamforming(CB)等による複数セル同時プリコーディグを選択する。
【0051】
プリコーディング部34は、入力されたデータ信号に対して、選択されたプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、集約局30配下のM個の無線基地局10の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号(すなわち、無線基地局数M×各無線基地局10のアンテナ素子数Nt分のデータ信号)を生成する。プリコーディング部34で生成されたM×Nt個のデータ信号は、M個の無線基地局10毎に設けられた第1送信部35乃至第M送信部35にそれぞれ入力する。
【0052】
送信部35は、各無線基地局10のアンテナ素子数Nt毎に、逆フーリエ変換部351と、並直列変換部352と、ガードインターバル挿入部353と、搬送波周波数変調部354と、電気−光変換部355とを具備する。
【0053】
逆フーリエ変換部351は、プリコーディング部34から入力されたデータ信号を周波数領域から時間領域に変換する。逆フーリエ変換部351は、時間領域に変換されたデータ信号を並直列変換部352に変換する。
【0054】
並直列変換部352は、逆フーリエ変換部351から入力された、サブキャリア数L及びアンテナ素子分のデータ信号系列をアンテナ素子数Nt分のデータ信号系列に直列変換する。並直列変換部352は、アンテナ素子数Nt毎のデータ信号系列を、アンテナ素子数Nt毎に設けられたガードインターバル挿入部353に入力する。
【0055】
ガードインターバル挿入部353は、並直列変換部352から入力されたデータ信号系列に対してガードインターバルを挿入し、ガードインターバルが挿入されたデータ信号系列を搬送波周波数変調部354に入力する。
【0056】
搬送波周波数変調部354は、ガードインターバル挿入部353から入力されたデータ信号系列を搬送波周波数に変調し、変調されたデータ信号を電気−光変換部355に入力する。
【0057】
電気−光変換部355は、搬送波周波数変調部354から入力されたデータ信号を電気信号から光信号に変調し、変調されたデータ信号を、光ファイバ20を介して無線基地局10に入力する。
【0058】
各無線基地局10は、集約局30に光ファイバ20を介して接続されている。無線基地局10は、Nt個のアンテナ素子11と、Nt個のアンテナ素子11にそれぞれ接続されるNt個の光−電気変換部12と、を具備する。
【0059】
光−電気変換部12は、集約局30から光ファイバ20を介して入力されたデータ信号を光信号から電気信号に復調し、復調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0060】
以上のように、集約局30において各無線基地局10の個々のアンテナ素子11へ入力されるデータ信号を生成しており、プリコーディング部34におけるプリコーディングによって各無線基地局10から送信される指向性ビームの方向が制御される。
【0061】
以上の説明では、複数種類のクラスタパタン1,2,3を固定的に割り当てているが、自律的にダイナミックな割り当ても可能である。隣接クラスタからの干渉が最小となるようにクラスタパタンを自律的に決定しても良い。
【0062】
例えば、図2(a)に示すように、無線基地局10−1乃至10−3がクラスタ内に在圏する少なくとも3つの無線端末50−1,50−2,50−3に対してデータ信号を送信するものとする。図7に示すように各クラスタを管轄する各集約局30は、それぞれ配下の無線基地局10−1乃至10−3に対してチャネル推定用の参照信号を送信する。無線基地局10−1乃至10−3は、自局に接続する無線端末50−1,50−2,50−3(すなわち、協調エリアCL1(図2(a))に在圏する無線端末)に対して、集約局30からの参照信号を送信する。
【0063】
無線端末50−1,50−2,50−3は、各無線基地局10−1乃至10−3から受信した参照信号を用いてチャネル推定し、チャネル推定結果であるチャネル情報を各無線基地局10−1乃至10−3に送信する。ここで、各無線端末50-1,50-2,50-3は、チャネル推定情報として、全周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよいし、上り回線の逼迫を防ぐために、一部の周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよい。
【0064】
各無線基地局10−1乃至10−3は、無線端末50−1,50−2,50−3から受信したチャネル情報をそれぞれ集約局30に送信し、集約局30はチャネル推定情報をそのまま上位装置である制御局70へ送信する。又は、他のクラスタからの干渉情報に変換して上位装置である制御局70へ送信する。制御局70に備えたクラスタパタン決定部61が、隣接クラスタからの干渉が最小となるようにクラスタパタンを決定する。図17は3つのクラスタパタン1,2,3を自律的にダイナミックに割り当てた一例を示している。
【0065】
また、以上の説明では図11に示すように、時間軸方向に指向性パタンと周波数ブロックとの関係は固定であったが、図16に示すように時間スロット毎に、指向性パタンと周波数ブロックとの組み合わせを切り替えるようにしても良い。たとえば、クラスタにおけるトラヒック量に基づいて、周波数ブロック及び時間スロットに異なる指向性パタンを定めることにより、無線通信システムにおけるスループットを向上させることが可能となる。
【0066】
また、上述の実施形態の協調送信方法においては、MU−MIMOプリコーディングを行うには、BD−ZF法やZero−Forcing法や非線形プリコーディング、最小2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)などその他の方法を用いてプリコーディングを行ってもよい。
【0067】
このように、本実施形態によれば、隣接クラスタからの干渉が抑制されるように複数種類のクラスタパタンを固定的又はダイナミックに配置するので、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉回避だけでなく、協調クラスタ間の干渉回避効果を期待できる。
【0068】
以上の説明では、集約局におけるプリコーディング部でMIMO伝送処理用にプリコーディングして無線基地局毎に指向性パタンの送信データを生成しているが、上記実施の形態で説明した集約局の機能を無線基地局に搭載しても良い。
【0069】
図18は実施の形態2に係る無線通信システムにおける各無線基地局の機能ブロックを示している。
本実施形態2の無線通信システムは、各無線基地局が集約局からMIMO伝送処理用にプリコーディングされた送信データを受け取るのではなく、各無線基地局がMIMO伝送処理用にプリコーディング機能を備える。無線通信システムは、同一構成を有する複数の無線基地局10(第1無線基地局10−1から第M無線基地局10-M)で構成されている。
【0070】
無線基地局10は、変調部33、プリコーディング部34、送信部35を備えている。これら各構成要素は前述した集約局30における対応する各機能要素と同一機能を有する。無線基地局10は、隣接クラスタからの干渉を回避可能なクラスタパタンに基づいて決定した指向性パタンにしたがって周波数ブロック毎にビーム形成する。
【0071】
クラスタパタン決定部61は、接続端末50からのチャネル推定情報及び隣接クラスタのクラスタパタン決定情報から自局が属しているクラスタのクラスタパタンを複数のクラスタパタンから決定する。指向性パタン決定部31は決定したクラスタパタンにしたがって自局の指向性パタンを周波数ブロック単位で決定する。周波数ブロック単位で決定した指向性パタンはプリコーディング部34へ与えられる。
【0072】
一方、クラスタパタン決定情報は同一クラスタ内の無線基地局10へクラスタパタン決定情報交換手段36を介して通知されると共に、隣接クラスタの無線基地局10へも通知される。隣接クラスタの無線基地局10内のクラスタパタン決定部61は、隣接クラスタで決定したクラスタパタンとは異なるクラスタパタンを自局へ適用するクラスタパタンとして決定する。これにより、隣接するクラスタ間では異なるクラスタパタンが適用されることとなり、クラスタ間干渉を回避できることになる。なお、対象端末が配下に在圏していない無線基地局10はクラスタ間干渉の干渉局とならないので、クラスタパタン及び指向性パタンの決定動作は実行しなくても良い。
【0073】
また、クラスタを形成する複数の無線基地局10−1から10−7は、データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタ情報、各無線基地局が接続端末である無線端末50から受信したチャネル情報、協調送信の対象無線端末50への送信データを、送信データ・チャネル情報交換手段37を介して共有化する。
【0074】
なお、クラスタパタン決定情報交換手段36及び送信データ・チャネル情報交換手段37は、全ての無線基地局10が備えていても良いし、特定の無線基地局10だけが備えていて他の無線基地局へ必要な情報を通知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0075】
10−1〜10−7…無線基地局、20…光ファイバ、30…集約局、40…ネットワーク網、50−1〜50−3…無線端末、11…アンテナ素子、12…光−電気変換部、31…指向性パタン決定部、32…信号分配部、33…変調部、34…プリコーディング部、35…送信部、36…クラスタパタン決定情報交換手段、37…送信データ・チャネル情報交換手段、61…クラスタパタン決定部、331…符号化部、332…インタリーブ部、333…直並列変換部、334…信号変調部、351…逆フーリエ変換部、352…並直列変換部、353…ガードインターバル挿入部、354…搬送波周波数変調部、355…電気−光変換部、C、C1〜C7…セル、CL、CL1〜CL6…協調クラスタ、S1〜S6…セクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、
前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約する集約局であり、
クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、
クラスタ内協調送信するデータ信号を同一クラスタの複数無線基地局に信号分配する信号分配部と、
前記信号分配部により複数無線基地局に信号分配されたデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、
を具備したことを特徴とする集約局。
【請求項3】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約している集約局を管理する制御局装置であり、
クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部で決定されたクラスタパタンを前記各集約局へ通知する通知手段と、
を具備したことを特徴とする制御局装置。
【請求項4】
無線通信システムにおいて隣接する他の無線基地局と共に複数セクタのセルを形成する無線基地局であって、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて自局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、
クラスタ内協調送信するデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、
を具備したことを特徴とする無線基地局。
【請求項5】
前記各クラスタに割り当てるクラスタパタンは、固定であることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記各クラスタに割り当てるクラスタパタンは、クラスタ間の干渉状況に応じてダイナミックに切り替えることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項7】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおける協調送信方法であり、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定する工程と、
前記決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当て工程と、を具備し、
前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする協調送信方法。
【請求項1】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、
前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約する集約局であり、
クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、
クラスタ内協調送信するデータ信号を同一クラスタの複数無線基地局に信号分配する信号分配部と、
前記信号分配部により複数無線基地局に信号分配されたデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、
を具備したことを特徴とする集約局。
【請求項3】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて、複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ単位で無線基地局を集約している集約局を管理する制御局装置であり、
クラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部で決定されたクラスタパタンを前記各集約局へ通知する通知手段と、
を具備したことを特徴とする制御局装置。
【請求項4】
無線通信システムにおいて隣接する他の無線基地局と共に複数セクタのセルを形成する無線基地局であって、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、隣接する他のクラスタとのクラスタ間の干渉が所定値以下になるようにクラスタパタンを決定するクラスタパタン決定部と、
前記クラスタパタン決定部が決定したクラスタパタンに基づいて自局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、
クラスタ内協調送信するデータ信号を、マルチユーザMIMO伝送用のプリコーディングにより、前記指向性パタン決定部によって周波数領域毎に割り当てられた指向性パタンとなる指向性ビームを形成するプリコーディング部と、
を具備したことを特徴とする無線基地局。
【請求項5】
前記各クラスタに割り当てるクラスタパタンは、固定であることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記各クラスタに割り当てるクラスタパタンは、クラスタ間の干渉状況に応じてダイナミックに切り替えることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項7】
それぞれ複数セクタのセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおける協調送信方法であり、
複数無線基地局のセルの集合で構成されるクラスタ内において隣接セクタ間で同一周波数領域毎に前記各無線基地局から放射される指向性ビームが向き合うように指向性パタンが定められたクラスタパタンが、指向性パタンと周波数領域の組み合わせを変えて複数用意され、クラスタ間の干渉が所定値以下になるように、前記各クラスタパタンの各クラスタへの割り当てを決定する工程と、
前記決定したクラスタパタンに基づいて、クラスタ単位で前記複数無線基地局に対して周波数領域毎に指向性パタンを割り当て工程と、を具備し、
前記複数の無線基地局が同一の時間スロットで前記指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、クラスタ内においてセクタが互いに隣接する一方の前記無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う他方の前記無線基地局の指向性ビームとの間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする協調送信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−34053(P2012−34053A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169762(P2010−169762)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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