説明

クラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法およびクラスタ圧延機の形状制御装置

【課題】本発明は、形状データより直接、有効成分を読み取って制御することで圧延材の板や条の平坦な形状得る。
【解決手段】軸方向に数分割された分割ロールを有し、各分割ロールを個別にもしくは圧延材の板幅方向の中央部に対して対称に圧下位置が調整されるバックアップロールを上下に有するクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法であって、圧延機出側に設けられた形状検出器により被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出し、分割ロールの配置に応じて、被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、各ゾーンの形状偏差に対して、各分割ロールの操作量の重み付けを行い、ゾーン毎に形状検出器の検出値に基づいてバックアップロールの圧下量または開放量を計算し、その計算値に基づいてバックアップロールの圧下位置を出力して被圧延物の伸びを修正する形状制御方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法およびクラスタ圧延機の形状制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスタ圧延機とは、ワークロール1本に対して2本以上のバックアップロールや中間ロールにより支持した圧延機であり、側面から見た場合にぶどうの房(クラスタ:Cluster)のように、ワークロールが、バックアップロールおよび中間ロールによって取り囲まれるようにして配置された形式の圧延機の総称である。
このクラスタ圧延機により圧延される圧延材の板や条の平坦形状には、ワークロールだけでなく、中間ロールやバックアップロールも少なからず影響する。そのため、クラスタ圧延機を用いた形状制御では、これら各種の要因を的確に制御する必要がある。このため、従来より、クラスタ圧延機を用いて圧延材の板や条の平坦形状を高精度で制御する自動形状制御技術や形状制御装置が種々提案されている。
特許文献1には、圧延後の板形状を検出する形状検出機構により板幅方向に対する張力分布を測定し、さらにそのデータから求めた板形状の歪分布の4次直交関数を演算し、それぞれの次数に応じた形状制御アクチュエータの動作によって、目標とする歪分布を求める形状制御が開示されている。この制御方法は、現在のクラスタ圧延機の形状制御方法の主流である。この特許文献1の発明では、4次直交関数の成分の内、1次成分にて左右ロールギャップを変更する圧下レベリング制御機構を動かし、2次成分にてロールを湾曲して使用するロールベンディング制御機構を制御し、3次成分にて非対称ロールベンディング制御を行い、4次成分にてバックアップロールクラウン制御を実施するとある。また特許文献2には、上述の形状制御方法と合わせて幅方向に対して局所的な伸びはワークロールのクーラント流量を調整することで、熱膨張による局所的な形状制御も行われていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−328712号公報
【特許文献2】特開2005−59067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板幅中心に対して非対称な形状は3次成分のみの制御では不十分であり、非対称成分が制御後も残ってしまう。また4次以上の高次の成分での複雑な形状変化もあり、これらに対応するには、上記の歪分布を4次直交関数に演算し、各次数に応じた形状制御モードによる形状制御のみでは対処しきれないことがある。
そこで本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、非対称形状成分および高次な対称形状成分を4次直交関数で分析するのでなく、形状データより直接、有効成分を読み取り制御する方法にて制御して圧延材の板や条の平坦な形状得ることを目的とした形状制御方法および形状制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく、本発明は以下に示す技術的手段を講じた。
(1)軸方向に数分割された分割ロールを有し各分割ロールを個別にもしくは圧延材の板幅方向の中央部に対して対称に圧下位置が調整されるバックアップロールを上下に有するクラスタ圧延機を用いる、被圧延物の形状制御方法であって、圧延機出側に設けられた形状検出器により被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出し、前記分割ロールの配置に応じて前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記各ゾーンにおける前記被圧延物の形状偏差に対して、前記各分割ロールの操作量の重み付けを行い、前記ゾーン毎に前記形状検出器の検出値に基づいて前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算し、その計算値に基づいて前記バックアップロールの圧下位置を出力して、前記被圧延物の伸びを修正することを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
(2)軸方向に数分割されたバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出する形状検出器を有するクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法であって、前記バックアップロールの分割された分割ロールの配置に応じて、前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記ゾーンごとに前記形状検出器により検出された検出値と前記被圧延物の目標形状値との差である形状偏差を求め、当該形状偏差を基に中間ロールベンダ、圧下装置、バックアップロールをそれぞれに駆動する機械的アクチュエータを操作した後の残余の形状偏差に対応させて、前記分割ロールの配置に対応して設けられたスプレー装置のノズルから噴射されるクーラント量を前記残余の形状偏差より求め、前記求めた量のクーラントを前記バックアップロールに噴射することで前記バックアップロールの伸びを制御して前記被圧延物の板形状制御を行うことを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
(3)軸方向に数分割されてなる分割ロールを個別にもしくは左右対象に圧下位置が調整されるバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出する板形状検出器を有するクラスタ圧延機の形状制御装置であって、前記分割ロールの配置に応じて前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記各ゾーンにおける前記被圧延物の形状偏差に対して、前記各分割ロールの操作量の重み付けを行い、前記ゾーン毎に前記形状検出器の検出値に基づいて前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算する演算制御装置と、前記圧下量または開放量の計算値に基づいて前記バックアップロールの圧下位置を出力する出力手段を有して、前記バックアップロールの伸びを修正することを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。
(4)軸方向に数分割されたバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出する形状検出器を有するクラスタ圧延機の形状制御装置であって、前記形状制御装置は、前記バックアップロールの分割された分割ロールの配置に応じて、前記形状検出器による前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記ゾーンごとに前記形状検出器により検出された検出値と前記被圧延物の目標形状値との差である形状偏差を求め、当該形状偏差を基に中間ロールベンダ、圧下装置、バックアップロールをそれぞれに駆動させた後に生じる残余の形状偏差を求め、当該残余の形状偏差を基に前記分割ロールに噴射するクーラント量を求める演算制御装置と、前記分割ロールの配置に対応してクーラントが噴射されるノズルを配したスプレー装置を有し、前記スプレー装置のノズルから前記求めた量のクーラントを前記分割ロールに噴射させて、前記被圧延物の板形状制御を行うことを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクラスタ圧延機を用いた被圧延物の形状制御方法によれば、被圧延物の伸びを各ゾーンの形状偏差に対して修正することができるので、またはバックアップロールの伸びをゾーン毎に制御することができるので、被圧延物の平坦形状が向上できる。
本発明のクラスタ圧延機の形状制御装置によれば、被圧延物の形状偏差を基にバックアップロールの伸びを修正することができるので、またはクーラント制御によりバックアップロールの個々の分割ロールの温度を制御することができるので、被圧延物の平坦形状を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の被圧延物の形状制御方法が採用されるクラスタ圧延機の好ましい一実施形態を示した模式的側面図である。
【図2】図1に示したクラスタ圧延機を示した模式的正面図である。
【図3】形状検出器からの出力データと直交関数展開したときの1次から4次までのデータの一例を示したグラフである。
【図4】本発明のクラスタ圧延機を用いた被圧延物の形状制御方法を実現する形状制御装置の好ましい一実施形態を示したシステム構成図である。
【図5】形状検出器の好ましい一例と、この形状検出器で得られた一被圧延物の板幅方向の伸び率の一例を示した伸び率の分布図である。
【図6】本発明の形状制御方法に係るバックアップロールの分割ロールの制御方法を示したフローチャートである。
【図7】分割ロールの配置に応じたゾーン配列の一例と、被圧延物の板幅方向における形状検出器の検出位置と検出例を示した図である。
【図8】各ゾーンに対応した分割ロールの押込みによる形状制御の典型例を示したグラフであり、(1)は形状制御前の状態を示し、(2)は形状制御後の状態を示す。
【図9】(1)はスプレー装置のクーラント噴射ノズルの配置の好ましい一例を示した模式的側面図であり、(2)は板幅方向の各分割ロールに対するノズル配置の好ましい一例と、伸び率分布の一例を示した模式図である。
【図10】クーラント制御による形状制御の典型例を示したグラフであり、(1)は形状制御前の状態を示し、(2)は形状制御後の状態を示す。
【図11】本発明の形状制御方法に係るバックアップロールの分割ロールの制御方法を示したフローチャートである。
【図12】6次形状偏差に基づく分割ロールの押込みによるA6形状制御の典型例を示したグラフであり、(1)は形状制御前の状態を示し、(2)は形状制御後の状態を示す。
【図13】6次形状偏差に基づく分割ロールに対するクーラント制御の典型例を示したグラフであり、(1)は形状制御前の状態を示し、(2)は形状制御後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のクラスタ圧延機を用いた被圧延物の形状制御方法およびクラスタ圧延機の形状制御装置の好ましい実施形態を図1ないし図3に基づき以下に説明する。
図1に示すように、本発明を有するクラスタ圧延機1は、ワークロール11(上ワークロール11a)の上に2本の中間ロール12(12a,12b)を有しており、さらにその中間ロール12を3本のバックアップロール13(13a,13b,13c)が補強して上ロール群10Uを構成している。下ロール群10Dは上ロール群10Uの上下を逆にした構成を有し、ワークロール11(下ワークロール11b)の下に2本の中間ロール12(12c、12d)を有し、さらに3本のバックアップロール13(13d、13e,13f)によって補強されていて、合計6本のロールで構成されている。これらのバックアップロール13は、大径を有するバックアップロール13a,13c,13d,13fと、その間に配された小径のバックアップロール13b、13eとで構成されている。したがって、このクラスタ圧延機1は、上下で12本のロールを有する12段圧延機である。
【0009】
各ロールは、正逆転が可能であり、ロールを正転および逆転させて被圧延物としての圧延材Wを往復動で圧延することができる。したがって、クラスタ圧延機1の入出側のそれぞれにディフレクタロール(形状検出ロール)31,32と巻取機33,34とが配設されており、矢印Aで示す方向に圧延される場合には、圧延材Wはディフレクタロール32を介して巻取機34によって巻き取られる。逆方向に圧延される場合には、圧延材Wはディフレクタロール31を介して巻取機33によって巻き取られる。
【0010】
また、クラスタ圧延機1の入出側には、それぞれ形状検出器14,15が配置されており、これにより圧延材Wの平坦形状が測定される。さらにワークロール11とディフレクタロール31,32とのそれぞれの間に厚さ計16、17が設けられている。この厚さ計16,17によって圧延材Wの圧延前後の厚さが測定される。
【0011】
下ロール群10Dのバックアップロール13のロール軸の下方には圧下装置18が設けられている。この圧下装置18は、例えば油圧圧下装置であり、図示しない圧力(油圧)制御回路が接続され、この圧力制御回路から油圧圧下装置に作動圧(作動油圧)が指示される。上ロール群10Uのバックアップロール13には、荷重計19が設けられている。この荷重計19は、複数のロードセル(図示せず)で構成され、中間ロール12を介して下ロール群10Dのバックアップロール13から受ける圧延荷重を計測する。
【0012】
図2に示すように、クラスタ圧延機1では、中間ロール12にベンディング制御部40が付与されている。ベンディング制御部40は、左右、別々に値を設定でき、対称または非対称に制御が可能である。バックアップロール13は複数に分割された分割ロール13Pからなっており、その分割ロール13P毎に押込量を調整して上バックアップロール13Uのクラウン量と下バックアップロール13Dのクラウン量を変更することが可能なクラウン制御部50が上,下バックアップロール13U,13Dに付与されている。
左右の圧下装置18(18a、18b)には、レベリング制御部60が付与されている。このレベリング制御部60は、左右の圧下装置18に圧力を指示することによりワークロール11a,11b間のロールギャップを、その軸心方向の一方側を広く、他方側を狭くするように変更してレベリングを制御することで、圧延材Wの片伸びを修正するのに有効な制御方法である。
【0013】
次に、形状検出器14,15(前記図1参照)から検出される板形状の検出値に基づく伸び率の分布とその分布状態を直交関数展開したときの1次から4次の演算結果を図3によって説明する。まず図3(1)に示すように、形状検出器14,15(前記図1参照)の各荷重検出セル(例えばロードセル)から出力された検出値に基づいて圧延材Wの幅方向における圧延材Wの送給方向の伸び率分布を求める。そして図3(2)〜(5)に示すように、直交関数展開で1次から4次までの成分を取り出す。その成分を基にして、アクチュエータ(図示せず)で、前記図2に示したように、バックアップロール13Dのレベリング制御、上下の中間ロール12のベンディング制御、およびバックアップロール13Uのクラウン制御を行う。
【0014】
さらに図示はしないが、形状検出器14,15で検出した板形状の検出値から板形状の伸び率の分布に対応する6次直交関数展開を実施して、その係数のうち4次および6次の係数が目標値に一致するように各分割ロール13Pに対する形状偏差(目標値と検出値との差)を求める。上述の1次から4次の各制御を行った場合には、形状偏差にその残余の形状偏差を用いる。そして、上下それぞれの分割ロール13Pの配置に応じて、圧延材Wの板幅方向の各検出点を複数のゾーンに区分し、形状偏差に対して各分割ロール13Pの操作量の重み付けを行い、その形状偏差に基づいて各分割ロール13Pの操作量(圧下量または開放量)を求める。この操作量により複数に分割されたバックアップロール13の軸心方向においてその軸心線をそれぞれ個別に上,下方向に変位させてロールクラウンを形成し、複合伸びを修正する。また各分割ロール13Pの最適クーラント量を求め、複合伸びを修正する形状制御を実施する。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の形状制御方法および形状制御装置を詳細に説明する。
図4は、クラスタ圧延機の概略構成を示す。クラスタ圧延機1は、12段式(多段式)圧延機であり、上下各一対のワークロール11(11U,11D)と、ワークロール11より大径の中間ロール12と、中間ロール12よりさらに大径のバックアップロール13(13U,13D)を有している。ワークロール11は、2つのワークロール11U,11Dで被圧延物W(以下圧延材Wという。)を挟み込んで圧延するもので、ワークロール11の圧延荷重は、中間ロール12を介して上,下バックアップロール13U,13Dにより加えられる。下バックアップロール13Dのロール軸の下方には、圧下装置18(18a,18b)としての油圧圧下装置が配置され、この油圧圧下装置によって下バックアップロール13Dに圧延荷重が加えられる。油圧圧下装置には圧力制御回路としての油圧制御回路(図示せず)が接続され、その油圧制御回路から作動圧力としての作動油圧が供給される。一方、下バックアップロール13Dの圧延荷重を受ける上バックアップロール13Uには、複数の荷重検出セル(例えばロードセル(図示せず))からなる荷重計19が取付けられ圧延荷重を計測している。
【0016】
ワークロール11のロール径、ロール胴長は、圧延材Wに応じて適宜選択されるが、本実施例ではそれぞれ80mm,850mmである。
中間ロール12のロール径、ロール胴長、およびチョック間距離は、これも圧延材Wに応じて適宜選択されるが、本実施例ではそれぞれ150mm,950mm,2000mmである。中間ロール軸12Cの各両端部には、それぞれ上下一対の図面矢印で示した中間ロールベンダ41(便宜上、矢印で示す)が配設されており、この中間ロールベンダ41によって中間ロール軸12Cをワークである圧延材Wに対して凸になる方向(プラス方向)に曲げ(ベンディングし)、圧延材Wの全体形状を修正する。逆に凹なる方向(マイナス方向)の場合は逆に曲げる。中間ロールベンダ41にはそれぞれ油圧制御回路(図示せず)が接続されており、対応する油圧制御回路から供給される油圧によって中間ロール12を例えば前述したプラス側にベンディングさせるようになっている。油圧制御回路は、図示しない油圧源からの油圧を調圧して油圧圧下装置や中間ロールベンダ41に供給する電磁弁(例えば、特開平7-303910号公報等参照。)等の制御要素から構成されており、この制御要素は演算制御装置30から指令されるレベリング偏差、ベンダ偏差、バックアップロール偏差等の制御信号によって作動制御される。
【0017】
バックアップロール13は、軸方向にそって複数に分割されており、各分割ロール13Pの軸心線をそれぞれ個別に上,下方向に変位させてロールクラウンを形成し、圧延ライン中心に対称な2次曲線(A2)または4次曲線(A4)を作ることで形状の制御を行い圧延材Wの全体形状を修正する。本実施例では、上バックアップロール13Uが5分割、下バックアップロール13Dが6分割されており、大径ロールが360mm、小径ロールが220mmである。
【0018】
また、演算制御装置30は、システム全体のコントローラとしての機能を有している。すなわち、形状検出器14,15からの検出値をスイッチSWの切り替えにより取得して、目標値との比較を行う。そして、後に詳述する直交関数展開によって1次から6次の直交関数φ(i)〜φ(i)に形状検出器14,15で検出した形状信号を代入し、板形状を関数で近似して形状モード係数A1〜A6を求める。それによって得られたレベリング偏差1に基づいてレベリング制御部60でレベリング制御を行い、ベンダ偏差1および2に基づいてベンディング制御部40で中間ロールベンディング制御を行い、ベンダ偏差2およびバックアップロール偏差に基づいてクラウン制御部50でバックアップロールクラウン制御を行う。さらにバックアップロールクラウン制御中に形状モード係数A6が目標値から離れると、バックアップロールを圧下もしくは解放させて目標との差を小さくする制御を、クラウン制御部50で上記バックアップロールクラウン制御と併用して行う。
【0019】
図5に示すように、ディフレクタロール31は、一体回転する多数(実施例では30個)の小ロール31aを同軸上に配列して構成されており、各小ロール31aにはロールの外周に掛かる張力を計測する公知のセンサ31sが組み込まれている。各センサはそれぞれ演算制御装置30(前記図4参照)の入力側に接続され、センサ出力を演算制御装置30に供給している。そして、これらのセンサによって形状検出器14,15(図1参照)を構成している。各センサが検出する張力は、圧延材Wの長手方向の伸びに対応しており、形状検出器14,15の出力分布が伸び分布(板形状)と対応する。ディフレクタロール31および小ロール31aの各ロール幅は、圧延する圧延材Wの板幅に応じて異なるが、実施例ではそれぞれ780mm,26mm(30個:30チャンネル分)である。従って、実施例において一つの小ロール31aが測定する伸びは、圧延材Wの幅方向26mmの領域の伸びの平均値を検出していることになる。
実施例では、圧延材Wの幅方向を小ロール31aのロール幅に対応し、後述するようにバックアップロール13の配置に応じて、多数のゾーン(9ゾーン:Z1〜Z9)に分割して、それぞれのゾーンに属する領域の伸び率を小ロール31aに組み込まれたセンサがそれぞれ検出し、各ゾーンの伸びの平均値が求められる。
ディフレクタロール32(前記図1参照)も、ディフレクタロール31と同様の構成をしており、ディフレクタロール32の形状検出器15を構成する各小ロールのセンサもそれぞれ演算制御装置30の入力側に接続され、センサ出力を演算制御装置30に供給している。
【0020】
演算制御装置30は、図示しない入出力装置、中央演算装置、ROMやRAMの記憶装置、操作者による指令信号を入力するための操作盤等から構成されている。操作盤からの圧延開始指令によって演算制御装置30は、ROMに記憶されている形状制御プログラムを実行し、このプログラムに基づいて、入出力装置を介して形状検出器14、15から圧延材Wの伸びデータを取り込み、中間ロールベンダ41による中間ロール12のベンディング量(ベンダ作動量)、出力手段としてのバックアップロール独立押出機構51による個々のバックアップロール13の押出し量をそれぞれ演算し、演算したベンディング量、バックアップロールの押出し量に応じた制御信号(ベンディング制御信号、クラウン制御信号)を、入出力装置を介して油圧制御回路に出力するように構成されている。そして、演算制御装置30の出力側にはモニタ装置が接続されており、上述した形状検出器14、15によって検出される圧延材の伸び分布等を表示させることができる。
【0021】
次に図6を参照して分割バックアップロールクラウンによる圧延材Wの形状修正手順を説明する。
「始め」S1によって、圧延開始指令を操作盤から入力して、プログラムを実行させる。まず「形状検出器から得られた形状信号SI(SI1〜SIn)を検出」S2により、形状検出器によって各ロールの形状信号SIとしての伸び率を検出する。なお、nは自然数とする。そして「形状信号SInから各ゾーンの平均伸び率Ze(Ze1〜Zem)を演算」S3により、形状検出器の各ロールから得られた形状信号SInとしての伸び率から、各ゾーン区間内の伸びの平均である平均伸び率Zeを求める。なお、mは自然数とする。伸びの平均値を求めるために、どのセンサでゾーンを区切り、検出値を平均するかは特に限定しないが、実施例の場合では、平均伸び値Zem(m=1〜9)は、図7に示す9個のゾーンZ1〜Z9に対応するセンサの検出値の平均値から求められる。なお、この平均値は、各センサの検出値の単純平均値であってもよいし、各センサの検出値に異なる重み係数を乗算した上で平均値を求めるようにしてもよい。各ゾーンの平均伸び率Zemは各々の分割ロール13Pに属しており、本実施例では、分割ロールTEDにはZe1とZe2、分割ロールTQDはZe3とZe4、分割ロールTCはZe5、分割ロールTQWはZe6とZe7、分割ロールTEWはZe8とZe9、分割ロールBEDにはZe1、分割ロールBQDはZe2とZe3、分割ロールBCDはZe4とZe5、分割ロールBCWはZe5とZe6、分割ロールBQWはZe7とZe8、分割ロールBEWはZe9に対応している。次に、各分割ロール13Pに属している伸び率の和を計算する(分割ロールTEDの場合はZe1+Ze2)。なおこの伸び率の和は、単純和であっても良いし、異なる重み係数を乗算した上で和を求めても良い。
【0022】
そして図6に示す「各ゾーンにおける目標伸び率と実績伸び率の偏差の分布を演算」S4によって、各ゾーンにおける目標伸び率(当該ゾーン内における目標伸び率の和)と実績伸び率(当該ゾーン内における実績伸び率の和)の偏差を求める。すなわち、各ゾーンの伸びΛiは、形状検出器の各点の伸びλj(i)の平均値(バックアップロールに対応して重み付けを行っても良い)として求める。
【0023】
次に「伸び率偏差が所定の誤差範囲内の値か判断」S5によって、伸び率和が所定の誤差範囲内の値であるかを判断する。その結果、伸び率和の偏差(伸び率偏差という。)が所定の誤差範囲内の値である場合は、その分割ロール13Pの押込み量を修正せず、「終了」S9により当該プログラムを終了する。伸び率偏差が所定の誤差範囲を超えて大きく(または小さく)なった場合は、「各ゾーンの伸び率偏差分布より、各分割ロールに対して必要な押込み量t1〜txを決定」S6によって、各分割ロールに必要な押込み量を求める。なお、xは自然数である。すなわち、ゾーンにおける伸び率の実績値と目標値の差ΔΛiに対して、上下のバックアップロールのゾーンに対応する分割ロールの操作量の重み付けを行い、上下の分割ロール13Pの操作量のΔQu(i)、ΔQd(i)を求める。同様にして他のゾーンの偏差から分割ロール13Pの操作量を求め、それぞれの操作量に対して重み付けを行い、各分割ロール13Pの出力を決定する。
【0024】
次に「制御指令より、各分割ロールのアクチュエータを操作」S7によって、出力手段としてのアクチュエータを操作してその分割ロール13Pの押込み量を減らす(増やす)ことで、所属しているゾーンの伸びの修正を行う。なお軸方向に近接している上,下バックアップロール13U,13Dは互いの動作に制限を設けており、伸びが生じたゾーンが重複している分割ロール13Pがそれぞれ無関係に動作することを防いでいる。この分割ロール13Pの押込み量の修正方法には種々の方法を取り得るが、和に応じて公知のPID制御(比例(Proportional)制御と積分(Integral)制御と微分(Differential)制御を組み合わせた制御)等によって押込み量をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0025】
バックアップロール13の分割ロール13Pの修正が終わると次の「各ゾーンの伸び率偏差が一定値以下に収まっているか判断」S8に進み、伸び率偏差が動作終了条件範囲内に収まっているか判定する。条件を満たしていれば当該プログラムによる動作を終了させる「終了」S9に進み、満たしていなければ、S5以降を繰り返す。
【0026】
図8は、上述の形状制御により圧延材の形状が修正される典型例を示し、目標形状を超えて検出ロールのチャンネルNo.7〜11、19〜24で大きな伸びがある形状に対しては、ゾーン3、4とゾーン6、7で伸びが大きいことから、そのゾーンの属するTQEとTQDが開放されるように動作を行うことで、伸びが補正され、目標形状に修正されることになる。
【0027】
次に、図9を参照してクーラント制御による圧延材Wの形状制御手順を説明する。圧延機の前後にはそれぞれ上下のバックアップロール13の各分割ロール13Pに向けてクーラント(あるいは潤滑剤)を噴射させるスプレー装置70が配設されており、各スプレー装置70は、分割ロール13Pの軸方向に、それぞれの分割ロール13Pに対応したノズル71を備えており、各ノズル71のクーラント噴射量が制御可能に構成されている。
そして、圧延材Wが矢印Aで示す方向に圧延される場合には、後方のスプレー装置70の各ノズル71から、噴射量が調整されたクーラントがそれぞれ噴射される。スプレー装置70の各ノズル71から分割ロール13Pに噴射されるクーラントの噴射量分布を調整することによっても、圧延される圧延材Wの幅方向の厚み分布、すなわち長手方向伸びの幅方向分布(形状)を制御することができる。上述の各ゾーンZ1〜Z9の伸び率和を演算し、ゾーンZ1〜Z9の伸びを修正するために必要な、上,下バックアップロール13U,13Dの各分割ロール13Pの収縮量を求める。
【0028】
図10は、上述のクーラント制御により、圧延材Wの形状が修正される典型例を示し、目標形状を超えて、検出ロールのチャンネルNo.17〜19の伸び率が局所的に伸びている形状に対しては、そのゾーンZ5,Z6が属しているBQWのクーラント流量を調整し、分割ロールBQWの収縮を行うことで、伸びが補正され、目標形状に修正されることになる。
【0029】
次に図11を参照して、直交関数展開の形状モード係数A6に基づく分割ロール13Pの制御方法を示す。まず特開平10−263650号公報等に開示された圧延材の平坦形状の直交関数展開による形状係数A1〜A4に応じた各機械的アクチュエータ操作を実施する。すなわち、圧延開始前に板中央からの距離をyとした目標形状F(y)を、板幅ごとに下記(A)式の4次のべき級数として任意のべき級数係数λ1〜λ4を設定しておき、「始め」S11によって、圧延開始指令を操作盤から入力する。これによって、このプログラムが実行される。そして「圧延条件に基づいて、目標の形状モード係数A01〜A06を演算」S12では、A01〜A04をべき級数係数λ1〜λ4と、検出ロールの有効チャンネル数ごとに設定されたパラメータp〜u、w、xより下記(B)〜(E)式より求める。なおA05、A06は固有値で規定しているが、同様の算出方法で求めても良い。
次に「形状検出器から得られた形状信号SI(SI1〜SIn)を検出」S13により、形状検出器によって各ロールの形状信号SIとしての伸び率を検出する。
【0030】
【数1】

【0031】
すなわち、下記(1)〜(4)式で示す1次から4次の直交関数φ(i)〜φ(i)のxに前記形状信号SIを代入し、板形状を関数で近似する。但し、b〜h,kは直交関数係数、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0032】
【数2】

【0033】
そして「形状モード係数A1〜A6を演算」S14により下記(5)式に従って、まず形状モード係数A1〜A4を演算する。但し、βiは形状信号SI(SI1〜SIn)(伸び率)、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0034】
【数3】

【0035】
次に、「(1)A1が目標A01になるように圧下レベリング制御 (2)A2が目標A02になるように対称ロールベンダ制御 (3)A3が目標A03になるように非対称ロールベンダ制御 (4)A4が目標A04になるようにバックアップロールクラウン制御」S15によって、以下のように制御を行う。
【0036】
(1)形状モード係数A1が目標の形状モード係数A01になるように、ワークロール11a,11b間のロールギャップを、アクチュエータとしての圧下装置18を駆動することで下バックアップロール13Dのレベリングを調整して制御する(圧下レベリング制御)。具体的には、圧下装置18を用いて、ワークロール11a,11b間のロールギャップを、その軸心線方向の一方側で広く他方側で狭くするように制御する。形状偏差ΔA1,ΔA3が共に正の値の場合は圧延材Wのオペレータサイドを、共に負の値の場合はドライブサイドを操作するようにアクチュエータ(図示せず)を駆動し、左右のロールギャップを調節する。したがって、この制御方法は圧延材Wに生じた片伸びの修正に有効である。
【0037】
(2)形状モード係数A2が目標の形状モード係数A02になるように、上下各1対の中間ロールの軸間隔をそれぞれ均等に変更するようにアクチュエータ(図示せず)を操作して、そのベンディングを制御する(対称ロールベンダ制御)。例えば、形状偏差ΔA2、ΔA4が共に正の値の場合は圧延材Wのエッジ部を延ばすように形状偏差ΔA2、ΔA4を制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔を調節する。また形状偏差ΔA2,ΔA4が負の値の場合は圧延材Wのセンタ部を延ばすように形状偏差ΔA2,ΔA4を制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔を調節する。この対称ロールベンダ制御は、圧延材Wが左右対称形ではあるが、中伸びまたは耳伸びを修正するのに有効である。
【0038】
(3)形状モード係数A3が目標の形状モード係数A03になるように、中間ロールの軸間隔を不均等に変更するようにアクチュエータ(図示せず)を操作して、そのベンディングを制御する(非対称ロールベンダ制御)。例えば、形状モード係数A1の補正値A1’を下記(6)式に従って演算し、これを制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔の調節を行う。但し、A1’は形状モード係数A1にエッジ部の補正を加えたもの、βiは板幅方向のiチャンネルの形状信号S(S1〜Sn)(伸び率)、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)、gは両エッジから補正を加えるチャンネル数、αは補正を入れるチャンネルのゲインである。
【0039】
【数4】

【0040】
(4)形状モード係数A4が目標の形状モード係数A04になるように、アクチュエータ(図示せず)を操作してバックアップのロールクラウンを制御する(バックアップロールクラウン制御)。この制御は、軸心線方向の複数個所で分割されているバックアップロール13における、分割バックアップロール毎に、その軸心線位置を上,下方向に変更することで、ロールクラウンを調節する制御を行う。この制御方法は、形状モード係数A4と目標値A04との偏差ΔA4を制御量としてアクチュエータ(図示せず)を操作する。この制御方法は、圧延材Wが左右対称形を保っている状態では、中伸び,端伸び,クオータ伸びを修正するのに有効である。
【0041】
具体的には上記(5)式から求めた形状モード係数A1〜A4と各目標の形状モード係数A01〜A04との偏差ΔA1〜ΔA4を算出し、この偏差ΔA1〜ΔA4の正、負の符号及びその値に基づき前述した圧下レベレング制御、中間対称ロールベンダ制御、中間非対称ロールベンダ制御、バックアップロールクラウン制御のそれぞれの制御量を求め、それぞれのアクチュエータ(図示せず)を動作させる。
【0042】
その後、前述の(5)式を用いて6次成分A6まで演算を行う。すなわち、(6)式で示す6次の直交関数φ(i)のxに前記形状信号SIを代入し、板形状を関数で近似する。但し、g,h,k,mは直交関数係数、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0043】
【数5】

【0044】
次に「A6の値の大きさと設定板幅から、動作させる分割ロールとその動作量を演算」S16によって、形状モード係数A6と目標の形状モード係数A06との差値(以下A6偏差という。)および圧延材Wの板幅より、バックアップロールの分割ロール13Pの最適押込み量を求める。次に「演算値により分割ロールの動作を出力」S17により、バックアップロールの分割ロール13Pの押込み量の演算値に基づいて、分割ロール13Pを所定の量だけ押込む。例えば、プラスの押込み量では下方向に押込み、マイナスの押込み量ではその逆となる。この分割ロール13Pの押込み量の修正方法には種々の方法を取り得るが、A6偏差に応じて公知のPID制御等によって押込み量をフィードバック制御するようにしてもよい。バックアップロールの分割ロール13Pの修正が終わると次のステップに進む。そして「A6偏差が設定誤差範囲内に収束しているか判断」S18により、A6偏差が終了条件範囲内に収まっているか判定する。この判定で、終了条件の範囲内に収まっている場合には、圧延を終了する「終了」S19に進んで圧延を終了しる。一方、終了条件の範囲内に収まっていない場合には、A6偏差より再度押し込み量の演算値を求め、S16以降を繰り返す。
【0045】
図12に、A6偏差と設定板幅に基づくバックアップロールの分割ロール13Pの形状制御により、圧延材Wの形状が修正される典型例を示す。板幅720mm、A6=3×10E−5(>0)である形状に対して、バックアップロールの分割ロールTQD及び分割ロールTQWを開放し、かつ分割ロールBED及び分割ロールBEWを開放させることで、A6偏差を減少させる補正を行い、伸びを目標形状に修正させている。
【0046】
次に直交関数展開の形状モード係数A6に基づく分割ロール13Pのクーラント制御方法の好ましい一例を示す。上述のようにA6偏差の演算を行い、その後A6偏差と圧延材の幅よりA6偏差を修正するために必要な、上,下バックアップロール13U,13Dの各分割ロール13Pを収縮させる収縮量を求める。図13(1)に示すように、検出されたA6偏差を冷却用クーラントのスプレー装置70の修正成分として対象となる分割バックアップロール13Pのクーラント流量の調整を行い、圧延材Wの形状が修正される典型例を示す。板幅625mm、A6=8×10−5(>0)である形状に対して、分割ロールTED,TEWのスプレー装置の内側のノズル71a,71bおよび分割ロールTQD,TQWのスプレー装置の内側のノズル71c,71dによって冷却し、分割バックアップロール13Pの一部を収縮させることで、伸びを補正し、A6偏差が動作終了条件内に入るまでクーラント流量の調整を行うことによって、伸びを目標形状に修正することができる。
以上の本発明の制御は従来の制御に合わせて行っても良く、また一つ一つ個別に実施、あるいは数種類を任意に選択してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 圧延機
10U 上ロール群
10D 下ロール群
11,11a,11b ワークロール
12,12a〜12d 中間ロール
13,13a〜13e バックアップロール
13U 上バックアップロール
13D 下バックアップロール
13P 分割ロール
14,15 形状検出器
16,17 厚さ計
18,18a,18b 圧下装置
19 荷重計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に数分割された分割ロールを有し、各分割ロールを個別にもしくは圧延材の板幅方向の中央部に対して対称に圧下位置が調整されるバックアップロールを上下に有するクラスタ圧延機を用いる、被圧延物の形状制御方法であって、圧延機出側に設けられた形状検出器により被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出し、前記分割ロールの配置に応じて、前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記各ゾーンにおける前記被圧延物の形状偏差に対して、前記各分割ロールの操作量の重み付けを行い、前記ゾーン毎に前記形状検出器の検出値に基づいて前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算し、その計算値に基づいて前記バックアップロールの圧下位置を出力して、前記被圧延物の伸びを修正することを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法において、前記検出値から前記被圧延物の板形状の歪分布に対応する6次正規直交関数を演算し、前記6次正規直交関数の係数のうち4次及び6次の係数を目標値に一致するように前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算し、その計算値に基づいて前記バックアップロールの圧下位置を出力して前記圧延材の複合伸びを修正することを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
【請求項3】
軸方向に数分割されたバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出する形状検出器を有するクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法において、前記バックアップロールの分割された分割ロールの配置に応じて、前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記ゾーンごとに前記形状検出器により検出された検出値と前記被圧延物の目標形状値との差である形状偏差を求め、当該形状偏差を基に中間ロールベンダ、圧下装置、バックアップロールをそれぞれに駆動する機械的アクチュエータを操作した後の残余の形状偏差に対応させて、前記分割ロールの配置に対応して設けられたスプレー装置のノズルから噴射されるクーラント量を前記残余の形状偏差より求め、前記求めた量のクーラントを前記バックアップロールに噴射することで前記バックアップロールの伸びを制御して前記被圧延物の板形状制御を行うことを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法において、前記形状検知機構で検出した板形状の検出値から板形状の歪分布に対応する6次直交関数を演算し、前記6次直交関数の係数のうち4次および6次の係数を目標値に一致するように前記各分割ロールに対応するクーラント量を求めて、前記バックアップロールの複合伸びを修正することで前記被圧延物の板形状制御を行うことを特徴とするクラスタ圧延機を用いる被圧延物の形状制御方法。
【請求項5】
軸方向に数分割されてなる分割ロールを個別にもしくは左右対象に圧下位置を調整されるバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に圧延材の圧延方向の伸びを板形状として検出する板形状検出器を有するクラスタ圧延機の形状制御装置であって、前記分割ロールの配置に応じて前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記各ゾーンにおける前記被圧延物の形状偏差に対して、前記各分割ロールの操作量の重み付けを行い、前記ゾーン毎に前記形状検出器の検出値に基づいて前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算する演算制御装置と、前記圧下量または開放量の計算値に基づいて前記バックアップロールの圧下位置を出力する出力手段を有して、前記バックアップロールの伸びを修正することを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクラスタ圧延機であって、前記演算制御装置は、前記検出値から前記被圧延物の板形状の歪分布に対応する6次直交関数を演算し、前記6次直交関数の係数のうち4次および6次の係数を目標値に一致するように前記バックアップロールの圧下量または開放量を計算することを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。
【請求項7】
軸方向に数分割されたバックアップロールを上下に有し、圧延機出側に被圧延物の圧延方向の伸びを板形状として検出する形状検出器を有するクラスタ圧延機の形状制御装置であって、前記形状制御装置は、前記バックアップロールの分割された分割ロールの配置に応じて、前記形状検出器による前記被圧延物の板幅方向の各形状検出点を複数のゾーンに区分し、前記ゾーンごとに前記形状検出器により検出された検出値と前記被圧延物の目標形状値との差である形状偏差を求め、当該形状偏差を基に中間ロールベンダ、圧下装置、バックアップロールをそれぞれに駆動させた後に生じる残余の形状偏差を求め、当該残余の形状偏差を基に前記分割ロールに噴射するクーラント量を求める演算制御装置と、前記分割ロールの配置に対応してクーラントが噴射されるノズルを配したスプレー装置を有し、前記スプレー装置のノズルから前記求めた量のクーラントを前記分割ロールに噴射させて、前記被圧延物の板形状制御を行うことを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のクラスタ圧延機であって、前記演算制御装置は、前記検出値から前記被圧延物の板形状の歪分布に対応する6次直交関数を演算し、前記6次直交関数の係数のうち4次および6次の係数を目標値に一致するように前記各分割ロールに対するクーラント量を求めることを特徴とするクラスタ圧延機の形状制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−94820(P2013−94820A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240428(P2011−240428)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】