説明

クラッチ装置

【課題】スプリングシートが確実に配置されたことを容易に確認することができるとともにスプリングシートの脱落または姿勢変化を防止して製造作業の負担を軽減することができるクラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチ装置100は、原動軸によって回転駆動するフリクションプレート103をクラッチプレート107に押圧するプレッシャープレート110を備えている。プレッシャープレート110は、凹状に形成された収容部111内にクラッチスプリング112およびスプリングシート113を備えている。スプリングシート113は、板状の2つの片部113a,113bが収容部111の底部111aに沿ったC字状に形成されており、片部113a,113bの外周部には外側に向って突出する突起部114a,114bが形成されている。また、収容部111の底部111a側の内壁部には、突起部114a,114bが嵌る逃げ部111bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機によって回転駆動する原動軸の回転駆動力を被動体を駆動させる従動軸に伝達および遮断するクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二輪自動車や四輪自動車などの車両においては、エンジンなどの原動機と車輪などの被動体との間に配置されて原動機の回転駆動力を被動体に伝達および遮断するためにクラッチ装置が用いられている。一般に、クラッチ装置は、原動機の回転駆動力によって回転するフリクションプレートと被動体に連結されたクラッチプレートとを互いに対向配置するとともに、これらのフリクションプレートとクラッチプレートとを密着および離隔させることにより回転駆動力の伝達および遮断を任意に行なうことができる。
【0003】
この場合、フリクションプレートとクラッチプレートとの密着は、プレッシャープレートをフリクションプレートまたはクラッチプレートを押圧することにより行なわれる。例えば、下記特許文献1には、プレッシャープレートに形成された凹状の収容部内にコイルスプリングをスプリングシートを介して配置することにより、このコイルスプリングの弾性力によってプレッシャープレートをフリクションプレートに押圧するクラッチ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−153655号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載したクラッチ装置においては、クラッチ装置を組み立てる製造過程においてスプリングシートをプレッシャープレートの収容部内の底部に確実に配置したか否かを確認し難くスプリングシートの配置工程に時間が掛かるという問題があった。また、プレッシャープレートの収容部内に一旦配置したスプリングシートがコイルスプリングを挿入する前に脱落したり姿勢が変化したりすることがある。このため、プレッシャープレートの収容部内からスプリングシートが脱落した場合においてはスプリングシートの再配置作業が必要になるとともに、収容部内におけるスプリングシートの姿勢が変化した場合には姿勢の再調整作業が必要となってクラッチ装置の製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、プレッシャープレートの収容部内にスプリングシートが確実に配置されたことを容易に確認することができるとともに収容部内に一旦配置したスプリングシートの脱落または姿勢変化を効果的に防止して製造作業の負担を軽減することができるクラッチ装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、原動軸の回転駆動力を従動軸に伝達および遮断するクラッチ装置において、原動軸の回転駆動によって回転駆動するフリクションプレートに対向配置されるクラッチプレートを保持するとともに従動軸に連結されるクラッチハブと、凹状の収容部を有するとともにクラッチハブに対して接近および離隔する方向にそれぞれ変位可能に設けられてフリクションプレートまたはクラッチプレートを押圧するためのプレッシャープレートと、収容部内に配置されてプレッシャープレートをフリクションプレート側またはクラッチプレート側に押圧する弾性体と、板状に形成された2つの片部が互いに離隔する方向および接近する方向にそれぞれ弾性変形可能に一体的に形成されて収容部内の底部と弾性体との間に配置されるスプリングシートとを備え、スプリングシートは、前記2つの片部のうちの少なくとも一方の外周部に外側に向って突出する突起部が形成されるとともに同突起部を含む前記2つの片部間の幅が収容部の内壁面の幅より広く形成されており、プレッシャープレートは、収容部内の内壁面における底部側に突起部の突出方向に広がった逃げ部を有することにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、クラッチ装置は、プレッシャープレートの収容部内に配置するスプリングシートが2つの片部が互いに離隔および接近する方向にそれぞれ弾性変形可能に一体形成される。そして、このスプリングシートは、これら2つの片部の少なくとも一方の外周部に外側に向って突出する突起部が形成されているとともに、この突起部を含む2つの片部間の幅が収容部の内壁面の幅より広く形成されている。また、このスプリングシートを収容するプレッシャープレートの収容部は、内壁面における底部側に突起部の突出方向に広がった逃げ部が形成されている。このため、クラッチ装置を組み立てる作業者は、スプリングシートの外幅を縮める方向に弾性変形させた状態でこのスプリングシートを収容部内に挿入した後、同収容部内の底部付近で弾性変形状態の一部または全部が開放される。これにより、縮められたスプリングシートの2つの片部が離隔して収容部の内壁面に衝突して「パチッ」という音が発生するとともに、スプリングシートの外周部に形成された突起部が収容部の逃げ部に嵌る。この結果、プレッシャープレートの収容部内にスプリングシートが確実に配置されたことを容易に確認することができるとともに一旦収容部内に配置したスプリングシートの脱落または姿勢変化を効果的に防止して製造作業の負担を軽減することができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、突起部は、先端部に向かって幅が狭く形成されていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、突起部が先端部に向かって幅が狭く形成されている。これにより、作業者は、突起部を容易に収容部内の逃げ部に挿入することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、突起部は、2つの片部の外周部にそれぞれ形成されていることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、突起部が2つの片部の外周部にそれぞれ形成されている。これにより、収容部内からのスプリングシートの脱落および同収容部内での姿勢の変化をより効果的に防止することができ。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、スプリングシートは、前記2つの片部が円弧状に延びて各一方の端部が共に自由端となった略C字状または略U字に形成されていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、スプリングシートが2つの片部が円弧状に延びて各一方の端部が共に自由端となった略C字状または略U字に形成されている。これにより、スプリングシートを打抜き加工などのプレス加工によって容易かつ安価に製造することができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、スプリングシートは、前記2つの片部が自由端側に向かって広がって形成されていることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、スプリングシートが2つの片部が前記自由端側に向かって広がって形成されている。これにより、スプリングシートは、2つの片部における前記広がって形成された部分が収容部の内壁を押圧して2つの片部を離隔させる弾性力を集中させることができるため、より効果的にスプリングシートを収容部内に固定することができる。
【0017】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、プレッシャープレートにおける収容部に形成された逃げ部は、同収容部内に配置するスプリングシートの数より多い数のスプリングシートの厚さ未満の深さに形成されていることにある。
【0018】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、プレッシャープレートにおける収容部に形成された逃げ部が同収容部内に配置するスプリングシートの数を超える数のスプリングシートの厚さ未満の深さに形成されている。具体的には、例えば、収容部内に配置するスプリングシートの数が1つであれば、逃げ部の深さは2つのスプリングシートの厚さ未満に形成され、収容部内に配置するスプリングシートの数が2つであれば、逃げ部の深さは3つのスプリングシートの厚さ未満に形成される。これにより、作業者は、収容部内に規定数量を超えるスプリングシートを配置する組立てミスを防止することができる。
【0019】
また、請求項7に係る本発明の他の特徴は、前記クラッチ装置において、クラッチハブは、傾斜面からなる従動側カム面を有し、プレッシャープレートは、従動側カム面上を摺動する傾斜面からなる原動側カム面を有し、クラッチハブおよびプレッシャープレートは、従動軸の回転数が原動軸の回転数を上回ることによりクラッチハブとプレッシャープレートとの間で回転数に差が生じたとき、従動側カム面と原動側カム面とが互いに摺動しつつ相対的に回転変位することによってプレッシャープレートをクラッチハブから離隔する側に変位させてフリクションプレートとクラッチプレートとの押圧力を弱めることにある。
【0020】
このように構成した請求項7に係る本発明の他の特徴によれば、クラッチ装置は、クラッチハブおよびプレッシャープレートは、従動軸の回転数が原動軸の回転数を上回ることによりクラッチハブとプレッシャープレートとの間で回転数に差が生じたとき、従動側カム面と原動側カム面とが互いに摺動しつつ相対的に回転変位することによってプレッシャープレートをクラッチハブから離隔する側に変位させてフリクションプレートとクラッチプレートとの押圧力を弱める所謂バックトルクリミッタ機構を備えて構成されている。このようなバックトルクリミッタ機構を備えたクラッチ装置は、プレッシャープレートとクラッチハブとの相対的な回転変位によって収容部内で弾性体の位置が変位するため、スプリングシートの必要性が高い。すなわち、本願発明は、弾性体が収容部内で変位し得るバックトルクリミッタ機構を備えたクラッチ装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラッチ装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図2】図1に示すクラッチ装置内に組み込まれるプレッシャープレートの外観を概略的に示す平面図である。
【図3】図2に示すA−A線から見たプレッシャープレートの断面図である。
【図4】図3に示すB矢印方向から収納部の外観を示した斜視図である。
【図5】図1に示すクラッチ装置内に組み込まれるスプリングシートの外観を概略的に示す平面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の変形例に係るスプリングシートの外観を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の他の変形例に係るスプリングシートの外観を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るクラッチ装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るクラッチ装置100の全体構成の概略を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このクラッチ装置100は、二輪自動車(オートバイ)における原動機であるエンジン(図示せず)の駆動力を被動体である車輪(図示せず)に伝達および遮断するための機械装置であり、同エンジンと変速機(トランスミッション)(図示せず)との間に配置されるものである。
【0023】
(クラッチ装置100の構成)
クラッチ装置100は、アルミニウム合金製のクラッチハウジング101を備えている。クラッチハウジング101は、有底円筒状に形成されており、クラッチ装置100の筐体の一部を構成する部材である。このクラッチハウジング101における図示左側側面には、入力ギア102がトルクダンパ102aを介してリベット102bによって固着されている。入力ギア102は、エンジンの駆動により回転駆動する図示しない駆動ギアと噛合って回転駆動する。クラッチハウジング101における内周面には、複数枚(本実施形態においては11枚)のフリクションプレート103がクラッチハウジング101の軸線方向に沿って変位可能、かつ同クラッチハウジング101と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。
【0024】
フリクションプレート103は、後述するクラッチプレート107に押し当てられる平板環状の部品であり、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。これらのフリクションプレート103における各両側面(表裏面)には、クラッチオイルを保持するための深さ数μm〜数十μmの図示しない油溝が形成されているとともに、耐摩耗性を向上させる目的で表面硬化処理がそれぞれ施されている。
【0025】
クラッチハウジング101の内部には、略フランジ状に形成されたクラッチハブ104がクラッチハウジング101と同心で配置されている。このクラッチハブ104の内周面には、クラッチハブ104の軸線方向に沿って多数のスプライン溝が形成されており、同スプライン溝にシャフト105がスプライン勘合している。シャフト105は、中空状に形成された軸体であり、一方(図示左側)の端部側がニードルベアリング105aを介して入力ギア102およびクラッチハウジング101を回転自在に支持するとともに、前記スプライン勘合するクラッチハブ104をナット105bを介して固定的に支持する。すなわち、クラッチハブ104は、シャフト105とともに一体的に回転する。一方、シャフト105における他方(図示左側)の端部は、二輪自動車における図示しない変速機に連結されている。
【0026】
シャフト105の中空部には、一方(右側)の端部側にプッシュ部材106aが設けられるとともに同プッシュ部材106aに隣接してプッシュロッド106bがシャフト105の軸線方向に延びた状態で設けられている。これらのうち、プッシュ部材106aは、シャフト105の軸線方向に沿って延びる棒状部材であり、一方(図示左側)の端部がシャフト105の中空部に摺動自在に嵌合するとともに他方(図示右側)の端部がプレッシャープレート110に設けられたリレーズベアリング110aに連結している。プッシュロッド106bは、シャフト105における一方(図示左側)の端部側が二輪自動車における図示しないクラッチ操作レバーに連結されており、同クラッチ操作レバーの操作によってシャフト105の中空部内をシャフト105の軸線方向に沿って摺動しながらプッシュ部材106aを押圧する。
【0027】
クラッチハブ104の外周面には、複数枚(本実施形態においては10枚)のクラッチプレート107が前記フリクションプレート103を挟んだ状態で、クラッチハブ104の軸線方向に沿って変位可能、かつ同クラッチハブ104と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。クラッチプレート107は、前記フリクションプレート103に押し当てられる平板環状の部品であり、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。これらのクラッチプレート107における各両側面(表裏面)には、図示しない複数の紙片からなる摩擦材が貼り付けられているとともに各摩擦材間に図示しない油溝が形成されて構成されている。また、クラッチプレート107の内周部には、クラッチハブ104とスプライン勘合させるための内歯状のスプラインが形成されている。
【0028】
一方、クラッチハブ104の内側には、それぞれ3つの筒状支持柱104aおよび従動側カム面104bがプレッシャープレート110側(図示右側)に向って突出した状態でそれぞれ形成されている。これらの3つの筒状支持柱104aは、プレッシャープレート110を支持するために柱状に延びた円筒状の部分であり、その内周部に雌ネジが形成されている。また、3つの従動側カム面104bは、クラッチハブ104の円周方向に沿って徐々にプレッシャープレート110側(図示右側)に突出する傾斜面でそれぞれ構成されている。なお、図1においては、3つのうちの1つの従動側カム面104bを破線で示している。
【0029】
プレッシャープレート110は、フリクションプレート103を押圧することによりこのフリクションプレート103とクラッチプレート107とを密着させるための部品であり、アルミニウム材をクラッチプレート107の外径と略同じ大きさの外径の略円盤状に成形して構成されている。このプレッシャープレート110の盤面には、図2〜図4に示すように、円周方向に沿って3つの長孔状の収容部111が形成されている。収容部111は、クラッチハブ104側(図示左側)に向って突出した筒状の部分であり、クラッチハブ104側の端部が内側に向ってリング状に張り出した底部111aを有して構成されている。
【0030】
そして、この収容部111の内壁面における底部111a側中央部には、プレッシャープレート110の径方向に沿って収容部111を貫通した状態で溝状の逃げ部111bが形成されている。逃げ部111bは、後述するスプリングシート113の突起部114a,114bが嵌る部分であり、同突起部114a,114bの幅および厚さに対応する幅Wおよび深さD、具体的には、突起部114a,114bの幅よりも若干広い幅および突起部114a,114bの厚さよりも若干深い深さにそれぞれ形成されている。
【0031】
この場合、突起部114a,114bの幅よりも若干広い幅は、突起部114a,114bの幅よりも+0.1mm〜数ミリ程度が適当である。また、逃げ部111bの深さDとは、収容部111の底部111aと切り欠かれた内壁部の底部との距離である。そして、本実施形態においては、逃げ部111bの深さDは、収容部111内に配置する1つのスプリングシート113の2つ分の厚さ未満の深さに形成されている。なお、図2においては、3つの収納部111のうち、図示右側の収容部111にのみスプリングシート113を配置した状態を示している。また、図4においては、収容部111内に配置されたスプリングシート113を二点鎖線で示している。
【0032】
この収容部111内には、クラッチハブ104の筒状支持柱104aが貫通した状態で配置されるとともにこの筒状支持柱104aの外側にクラッチスプリング112およびスプリングシート113がそれぞれ配置される。これらのうち、クラッチスプリング112は、収容部111内に配置されてプレッシャープレート110をクラッチハブ104に向けて押圧する弾性力を発揮する弾性体であり、ばね鋼を螺旋状に巻いたコイルスプリングによって構成されている。また、スプリングシート113は、収容部111内において底部111aとクラッチスプリング112との間に配置される金属製の板状体である。本実施形態においては、スプリングシート113は、厚さ0.5mmのばね鋼板で構成されている。
【0033】
このスプリングシート113は、詳しくは図5に示すように、板状に形成された2つの片部113a,113bが互いに離隔する方向(図示破線矢印参照)および接近する方向(図示破線矢印参照)に弾性変形可能に一体成形されて構成されている。より具体的には、スプリングシート113は、2つの片部113a,113bにおける一方(図示左側)の端部が互いに繋がるとともに他方(図示右側)の端部が共に開放された自由端で構成されて全体として収容部111の底部111aに沿った平面視略C字状に形成されている。この場合、スプリングシート113は、2つの片部113a,113bが自由端側に向って広がった形状に形成されている。そして、2つの片部113a,113bの外周部には、互いに対称な位置にそれぞれ外側に向って突出した突起部114a,114bがそれぞれ形成されている。
【0034】
突起部114a,114bは、収容部111の逃げ部111bに嵌って収容部111の内壁部に引っ掛かることにより収容部111内からのスプリングシート113の脱落や姿勢変化を防止するための部分であり、片部113a,113b側に対して先端部の幅が狭い略台形状に形成されている。したがって、この突起部114a,114bの片部113a,113bの外周部からの突出量は、収容部111の内壁部に引っ掛かるに足る量に設定されている。具体的には、突起部114a,114bの突出量は、収容部111の内壁部に引っ掛かる引掛り量Lが0.1mm〜1.0mmの範囲が適当である。また、本実施形態における突起部114a,114bは、約3mmの長さに亘って片部113a,113bから突出して形成されている。そして、このスプリングシートは、打抜きによるプレス加工によって製造される。
【0035】
一方、プレッシャープレート110におけるクラッチハブ104側の盤面には、各収容部111の間に原動側カム面115がクラッチハブ104(図示左側)に向って突出した状態で形成されている。これらの3つの原動側カム面115は、前記クラッチハブ104の従動側カム面104b上を摺動する部分であり、プレッシャープレート110の円周方向に沿って徐々にクラッチハブ104(図示左側)に突出する傾斜面で構成されている。
【0036】
このプレッシャープレート110は、クラッチハブ104に3つの取付ボルト116によって取り付けられている。具体的には、プレッシャープレート110は、収容部111内にクラッチハブ104の筒状支持柱104a、スプリングシート113およびクラッチスプリング112が配置された状態で取付ボルト116が筒状支持柱104aにストッパ部材117を介して締め付けられて固定されている。この場合、ストッパ部材117は、プレッシャープレート110がクラッチハブ104に対して離隔する方向に変位する量を規制するための金属製の部材であり、平面視で略三角形状に形成されている。これにより、プレッシャープレート110は、クラッチハブ104に対して近接および離隔する方向に変位可能な状態で取り付けられる。
【0037】
そして、このクラッチ装置100内には、所定量のクラッチオイル(図示しない)が充填されている。クラッチオイルは、主として、フリクションプレート103とクラッチプレート107との間に供給されてこれらの間で生じる摩擦熱の吸収や摩擦材の摩耗を防止する。すなわち、このクラッチ装置100は、所謂湿式多板摩擦クラッチ装置である。
【0038】
(クラッチ装置100の組立て)
次に、上記のように構成したクラッチ装置100におけるプレッシャープレート110およびスプリングシート113の組み付けについて説明する。クラッチ装置100を組み立てる作業者は、所定の作業工程を経てフリクションプレート103およびクラッチプレート107をクラッチハウジング101およびクラッチハブ104に組み付けた組付体(半製品)を用意するとともにプレッシャープレート110、クラッチスプリング112、スプリングシート113、取付ボルト116およびストッパ部材117をそれぞれ用意する。
【0039】
次に、作業者は、スプリングシート113をプレッシャープレート110の収容部111内にセットする。具体的には、作業者は、プレッシャープレート110の収容部111内にクラッチハブ104の円筒支持柱104aを貫通させることによりプレッシャープレート110をクラッチハブ104に被せる。次いで、作業者は、手またはプライヤーなどの工具を用いてスプリングシート113における片部113aと片部113bとを互いに接近させる方向に弾性変形させてスプリングシート113の幅方向を縮めた状態で保持してプレッシャープレート110の収容部111内にスプリングシート113を挿入する。この場合、作業者は、スプリングシート113の2つの突起部114a,114b間の幅が収容部111の内壁の内幅よりも狭くなる状態までスプリングシート113を収縮方向に弾性変形させる。
【0040】
次いで、作業者は、スプリングシート113を収容部111の底部111a付近まで挿入した状態で工具による保持状態を解消して配置する。これにより、スプリングシート113は、片部113aと片部113bとが互いに離隔する方向に変位して元の形状に復帰しようとする。この場合、スプリングシート113の片部113a,113bにそれぞれ形成された突起部114a,114bが収容部111の内壁部に形成された逃げ部111bに対向している場合には、同突起部114a,114bが逃げ部111b内に嵌って「パチッ」という音が発生する。すなわち、突起部114a,114bが逃げ部111b内に嵌る場合には、スプリングシート113の片部113a,113bが収容部111の内壁部に衝突して「パチッ」という音が発生する。
【0041】
一方、突起部114a,114bが収容部111の内壁部に形成された逃げ部111bに対してずれた位置関係にある場合には、突起部114a,114bが収容部111の内壁部に接触した状態となって片部113a,113bが収容部111の内壁部に衝突しないため、明確に聞き取れる音は発生しない。したがって、作業者は、突起部114a,114bが逃げ部111bに嵌った音を確認できない場合には、スプリングシート110が収容部111内に正しく配置されていないものとして、突起部114a,114bが逃げ部111bに嵌るように収容部111内におけるスプリングシート113の位置や向きを変える。
【0042】
これにより、突起部114a,114bの位置が逃げ部111bの位置に一致した場合には、同突起部114a,114bが逃げ部111b内に嵌るため片部113a,113bが収容部111の内壁部に衝突して「パチッ」という音を発する。すなわち、作業者は、スプリングシート113の片部113a,113bが収容部111の内壁部に衝突した音によってスプリングシート113の突起部114a,114bが逃げ部111bに嵌ってスプリングシート113が収容部111内に取り付けられたことを確認することができる。なお、突起部114a,114bが逃げ部111b内に嵌った状態においてスプリングシート113は、完全に弾性変形が解消した元の形状に復帰するように構成されていてもよいし、突起部114a,114bが逃げ部111b内に嵌った状態において弾性変形の一部が維持されるように構成されていてもよい。この場合、後者、すなわち、スプリングシート113の弾性変形の一部を残した状態で突起部114a,114bを逃げ部111b内に嵌るように構成した方がスプリングシート113の取付状態をより安定的に維持できるため好ましい。
【0043】
そして、この場合、収容部111の内壁部に形成された逃げ部111bは、その深さDが2つのスプリングシート113の厚さ未満の深さで形成されている。このため、作業者は、1つの収容部111内に2枚以上のスプリングシート113を配置することができないため、スプリングシート113を規定数以上配置するという組立てミスを未然に防止することができる。また、スプリングシート113における突起部114a,114bは、先端部の幅が片部113a,113b側の幅より狭い先細りの形状に形成されている。このため、作業者は、収容部111の逃げ部111b内に容易にスプリングシート113の突起部114a,114bを嵌めることができる。また、スプリングシート113は、2つの片部113a,113bが自由端側に向かって広がって形成されている。これにより、スプリングシート113は、2つの片部113a,113が収容部111の内壁を押圧する力を最も広がった部分に集中させることができため、より効果的にスプリングシート113を収容部111内に固定することができる。
【0044】
次に、作業者は、スプリングシート113がそれぞれ配置された各収容部111内にクラッチスプリング112をそれぞれ配置した後、これらのクラッチスプリング112上にストッパ部材117を被せる。次いで、作業者は、ストッパ部材117を介して取付ボルト116を円筒支持柱104a内に締め付ける。これにより、プレッシャープレート110は、クラッチハブ104に対して押圧された状態で同クラッチハブ104に接近する方向および離隔する方向にそれぞれ変位可能な状態で組み付けられる。このクラッチスプリング112およびストッパ部材117の各配置工程および取付ボルト116の締め付け工程においては、スプリングシート113は突起部114a,114bが収容部111の逃げ部111bに嵌っているため収容部111に対して脱落および位置や姿勢が変化することはない。そして、作業者は、その他の製造工程を経てクラッチ装置100を完成させる。このクラッチ装置100を完成させる他の製造工程については、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0045】
(クラッチ装置100の作動)
次に、上記のように構成したクラッチ装置100の作動について説明する。このクラッチ装置100は、前記したように、車両におけるエンジンと変速機との間に配置されるものであり、車両の運転者によるクラッチ操作レバーの操作によってエンジンの駆動力の変速機への伝達および遮断を行なう。
【0046】
すなわち、車両の運転者(図示せず)がクラッチ操作レバー(図示せず)を操作してプッシュロッド106bを後退(図示左側に変位)させた場合には、プッシュ部材106aがリレーズベアリング110aを押圧しない状態となり、プレッシャープレート110がクラッチスプリング112の弾性力によってフリクションプレート103を押圧する。これにより、フリクションプレート103とクラッチプレート107とは、クラッチハブ104側に変位しつつ互いに押し当てられて摩擦連結された状態となる。この場合、フリクションプレート103とクラッチプレート107とは、クラッチハブ104に形成された従動側カム面104bとプレッシャープレート110に形成された原動側カム面115とによるカム作用によって強い押圧力が作用して密着する。この結果、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力がフリクションプレート103、クラッチプレート107、クラッチハブ104およびシャフト105を介して変速機に伝達される。
【0047】
一方、車両の運転者がクラッチ操作レバー(図示せず)を操作してプッシュロッド106bを前進(図示右側に変位)させた場合には、プッシュ部材106aの先端部がリレーズベアリング110aを押圧する状態となり、プレッシャープレート110がクラッチスプリング112の弾性力に抗しながら図示右側に変位してプレッシャープレート110とフリクションプレート103とが離隔する。これにより、フリクションプレート103とクラッチプレート107とは、プレッシャープレート110側に変位しつつ互いに押し当てられて連結された状態が解除されて互いに離隔する。この結果、フリクションプレート103からクラッチプレート107への駆動力の伝達が行われなくなり、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力の変速機への伝達が遮断される。
【0048】
また、変速機側の回転数が入力ギア102の回転数を上回った場合、すなわち、クラッチ装置100にバックトルクが作用した場合においては、クラッチハブ104に形成された従動側カム面104bとプレッシャープレート110に形成された原動側カム面115とによるカム作用によってプレッシャープレート110がクラッチハブ104に対して相対的に回転変位しながら互いに離隔する方向に変位して押圧力が小さくなる。この場合、プレッシャープレート110の収容部111内においては、クラッチスプリング112がスプリングシート113上を相対的に摺動変位するため、クラッチスプリング112の倒れや捩れなどの変形を有効に防止することができる。また、この場合、クラッチスプリング112とスプリングシート113とは互いにばね鋼で構成されているため、一方のみが偏摩耗して他方に食い込むなどの損傷を防止することができる。
【0049】
そして、プレッシャープレート110がクラッチハブ104に対して相対的に回転変位することにより、フリクションプレート103とクラッチプレート107とは、互いに押し当てられて連結された状態が解除されて互いに離隔する。この結果、フリクションプレート103からクラッチプレート107への駆動力の伝達が行われなくなり、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力の変速機への伝達が遮断される。
【0050】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、クラッチ装置100は、プレッシャープレート110の収容部111内に配置するスプリングシート113が2つの片部113a,113bが互いに離隔および接近する方向にそれぞれ弾性変形に可能に一体形成される。そして、このスプリングシート113は、これら2つの片部113a,113bの各外周部に外側に向って突出する突起部114a,114bがそれぞれ形成されているとともに、これらの突起部114a,114bを含む2つの片部113a,113b間の幅が収容部111の内壁面の幅より広く形成されている。また、このスプリングシート113を収容するプレッシャープレート110の収容部111は、内壁面における底部111a側に突起部114a,114bの突出方向に広がった逃げ部111bがそれぞれ形成されている。このため、クラッチ装置100を組み立てる作業者は、スプリングシート113の外幅を縮める方向に弾性変形させた状態でこのスプリングシート113を収容部111内に挿入した後、同収容部111内の底部111a付近で弾性変形状態を開放する。これにより、縮められたスプリングシート113の2つの片部113a,113bが離隔して収容部111の内壁面に衝突して「パチッ」という音が発生するとともに、スプリングシート113の外周部に形成された突起部114a,114bが収容部111の逃げ部111bに嵌る。この結果、プレッシャープレート110の収容部111内にスプリングシート113が確実に配置されたことを容易に確認することができるとともに一旦収容部111内に配置したスプリングシート113の脱落または姿勢変化を効果的に防止して製造作業の負担を軽減することができる。
【0051】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態におけるクラッチ装置100と同様の構成部分にはクラッチ装置100に付した符号に同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、クラッチスプリング112をコイルスプリングで構成した。しかし、クラッチスプリング112は、プレッシャープレート110の収容部111内に配置されてフリクションプレート103とクラッチプレート107とを密着させるための弾性力をプレッシャープレート110を介して発揮する弾性体であれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、クラッチスプリング112が、本発明に係る弾性体に相当する。したがって、この弾性体は、コイルスプリング以外の弾性体、例えば、板ばねや油圧などで構成することもできる。
【0053】
また、上記実施形態においては、スプリングシート113をばね鋼で構成した。しかし、スプリングシート113は、クラッチスプリング112との関係において耐久性を確保できる材料であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スプリングシート113は、ばね鋼以外の金属材料(ステンレス鋼材やアルミニウム材)または樹脂材などで構成することもできる。
【0054】
また、上記実施形態においては、スプリングシート113を構成する2つの片部113a,113bのそれぞれに突起部114a,114bを形成した。しかし、突起部114a,114bは、2つの片部113a,113bの少なくとも一方に少なくとも1つ形成されていればよい。また、突起部114a,114bを形成する位置も特に限定されるものではないが、上記実施形態のように片部113a,113bの中央部に設けることによってスプリングシート113の配置の向きが限定されなくなるため、スプリングシート113の配置作業の作業負担を軽減することができる。
【0055】
また、上記実施形態においては、突起部114a,114bを台形形状に形成した。しかし、突起部114a,114bは、片部113a,113bから外側に向って張り出した形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、突起部114a,114bは、図6(a)に示すように方形状に形成してもよいし、図6(b)に示すように三角形状に形成してもよいし、図6(c)に示すように円形状に形成することもできる。
【0056】
また、上記実施形態においては、スプリングシート113は、平面視で略C字状に形成した。しかし、スプリングシート113は、板状に形成された2つの片部113a,113bが互いに離隔する方向および接近する方向にそれぞれ弾性変形可能に一体的に形成されて、かつ、2つの片部113a,113bのうちの少なくとも一方の外周部に少なくとも1つの突起部114aおよび/または突起部114bが形成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スプリングシート113は、図7に示すように、平面視で略U字状に形成することもできる。
【0057】
また、上記実施形態においては、スプリングシート113は、片部113a,113bの自由端側(図5において図示右側)に向って幅広になるように形成した。しかし、スプリングシート113は、図7に示すように、片部113aと片部113bとが互いに平行になるように形成することもできる。
【0058】
また、上記実施形態においては、収容部111の内壁部に形成した逃げ部111bの深さDを2つのスプリングシート113の厚さ未満の深さで形成した。しかし、逃げ部111bの深さDは、収容部111内に配置するスプリングシート113の数に応じて適宜設定することができる。例えば、収容部111内に2つのスプリングシート113を配置する場合においては、逃げ部111bの深さDを3つのスプリングシート113の厚さ未満の深さで形成すればよい。なお、この逃げ部111bの深さDは、収容部111内に配置するスプリングシート113の厚さ以上に形成されていればよい。このため、収容部111内に1つのスプリングシート113を配置する場合において、逃げ部111bの深さDを2つ以上のスプリングシート113を配置可能な深さに形成することもできる。
【0059】
また、収容部111の内壁部に形成した逃げ部111bは、収容部111の底部111aにプレッシャープレート110の径方向に沿って貫通するように形成した。しかし、逃げ部111bの長さは、スプリングシート113における突起部114aと突起部114bとの幅以上の長さに形成されていればよい。また、逃げ部111bは、収容部111の内壁面に形成されていればよく、上記実施形態のように必ずしも底部111aをクラッチハブ104側に貫通して形成する必要もない。
【0060】
また、上記実施形態においては、クラッチ装置100は、クラッチハブ104に形成した従動側カム面104bとプレッシャープレート110に形成した原動側カム面115とが互いに摺動変位してカム作用する所謂バックトルクリミッタ機構を備えて構成されている。しかし、本発明に係るスプリングシート113およびプレッシャープレート110は、従動側カム面104bおよび原動側カム面115からなるバックトルクリミッタ機構を有さないクラッチ装置100にも適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、プレッシャープレート110は、フリクションプレート103を押圧するように構成されている。しかし、プレッシャープレート110は、フリクションプレート103とクラッチプレート107とを互いに密着させるようにフリクションプレート103またはクラッチプレート107を押圧するように構成されていればよい。すなわち、プレッシャープレート110は、クラッチプレート107を押圧するように構成してよい。例えば、上記実施形態におけるフリクションプレート103とクラッチプレート107の配置位置を入れ替えてプレッシャープレート110がクラッチプレート107を押圧するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0062】
L…引掛り量、W…逃げ部の幅、D…逃げ部の深さ、
100…クラッチ装置、101…クラッチハウジング、102…入力ギア、102a…トルクダンパ、102b・・・リベット、103…フリクションプレート、104…クラッチハブ、104a…筒状支持柱、104b…従動側カム面、105…シャフト、105a…ニードルベアリング、105b…ナット、106a…プッシュ部材、106b…プッシュロッド、107…クラッチプレート、
110…プレッシャープレート、110a…リレーズベアリング、111…収容部、111a…底部、111b…逃げ部、112…クラッチスプリング、113…スプリングシート、113a,113b…片部、114a,114b…突起部、115…原動側カム面、116…取付ボルト、117…ストッパ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動軸の回転駆動力を従動軸に伝達および遮断するクラッチ装置において、
前記原動軸の回転駆動によって回転駆動するフリクションプレートに対向配置されるクラッチプレートを保持するとともに前記従動軸に連結されるクラッチハブと、
凹状の収容部を有するとともに前記クラッチハブに対して接近および離隔する方向にそれぞれ変位可能に設けられて前記フリクションプレートまたは前記クラッチプレートを押圧するためのプレッシャープレートと、
前記収容部内に配置されて前記プレッシャープレートを前記フリクションプレート側または前記クラッチプレート側に押圧する弾性体と、
板状に形成された2つの片部が互いに離隔する方向および接近する方向にそれぞれ弾性変形可能に一体的に形成されて前記収容部内の底部と前記弾性体との間に配置されるスプリングシートとを備え、
前記スプリングシートは、前記2つの片部のうちの少なくとも一方の外周部に外側に向って突出する突起部が形成されるとともに同突起部を含む前記2つの片部間の幅が前記収容部の内壁面の幅より広く形成されており、
前記プレッシャープレートは、前記収容部内の内壁面における底部側に前記突起部の突出方向に広がった逃げ部を有することを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置において、
前記突起部は、先端部に向かって幅が狭く形成されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクラッチ装置において、
前記突起部は、前記2つの片部の外周部にそれぞれ形成されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したクラッチ装置において、
前記スプリングシートは、前記2つの片部が円弧状に延びて各一方の端部が共に自由端となった略C字状または略U字に形成されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項5】
請求項4に記載したクラッチ装置において、
前記スプリングシートは、前記2つの片部が前記自由端側に向かって広がって形成されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したクラッチ装置において、
前記プレッシャープレートにおける前記収容部に形成された前記逃げ部は、同収容部内に配置する前記スプリングシートの数より多い数の前記スプリングシートの厚さ未満の深さに形成されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したクラッチ装置において、
前記クラッチハブは、傾斜面からなる従動側カム面を有し、
前記プレッシャープレートは、前記従動側カム面上を摺動する傾斜面からなる原動側カム面を有し、
前記クラッチハブおよび前記プレッシャープレートは、前記従動軸の回転数が前記原動軸の回転数を上回ることにより前記クラッチハブと前記プレッシャープレートとの間で回転数に差が生じたとき、前記従動側カム面と前記原動側カム面とが互いに摺動しつつ相対的に回転変位することによって前記プレッシャープレートを前記クラッチハブから離隔する側に変位させて前記フリクションプレートと前記クラッチプレートとの押圧力を弱めることを特徴とするクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104544(P2013−104544A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251174(P2011−251174)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000128175)株式会社エフ・シー・シー (109)
【Fターム(参考)】