説明

クラリスロマイシンの結晶フォームI

【課題】新規な抗生物質6−O−メチルエリスロマイシンA結晶フォームI、その製造方法、この化合物からなる薬物組成物及び治療薬としての使用方法を提供する。
【解決手段】6−O−メチルエリスロマイシンAが、少なくとも2種の別個の結晶形(同定のために、「フォームI」及び「フォームII」と指定される)で存在し得る。フォームI及びフォームII結晶は、全く同一の抗菌活性のスペクトルを有するが、フォームI結晶は、フォームII結晶のものの約3倍の固有溶解速度を有する。さらに、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル及びイソプロパノール又はエタノール、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル若しくはイソプロパノールと他の一般的な有機溶媒との混合物から再結晶したとき、6−O−メチルエリスロマイシンAは、これまで確認されなかったフォームI結晶として唯一生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療有用性を有する化合物及びその製造方法に関する。更に特に、本発明は、新規な化合物6−O−メチルエリスロマイシンA結晶フォーム(Form)I、その製造方法、この化合物からなる薬物組成物及び治療薬としての使用方法に関する。
【0002】
発明の背景
6−O−メチルエリスロマイシンA(クラリスロマイシン)は、式:
【0003】
【化1】

の半合成マクロライド系抗生物質であり、これはグラム陽性菌、ある種のグラム陰性菌、嫌気性細菌、マイコプラズマ及びクラミジアに対して優れた抗菌活性を示す。これは、酸性条件下で安定であり、経口で投与するとき効能がある。クラリスロマイシンは、子供及び大人の上部気道の感染のための有用な治療薬である。
【0004】
発明の要約
本発明者等は、6−O−メチルエリスロマイシンAが、少なくとも2種の別個の結晶形(同定のために、「フォームI」及び「フォームII」と指定される)で存在し得ることを見出した。結晶形は、それらの赤外スペクトル、示差走査熱量測定サーモグラム及び粉末X線回折パターンによって同定される。フォームI及びフォームII結晶は、全く同一の抗菌活性のスペクトルを有するが、フォームI結晶は意外にも、フォームII結晶のものの約3倍の固有溶解速度を有する。本発明者等の研究所に於ける研究により、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル及びイソプロパノール又はエタノール、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル若しくはイソプロパノールと他の一般的な有機溶媒との混合物から再結晶したとき、6−O−メチルエリスロマイシンAは、これまで確認されなかったフォームI結晶として唯一生成することが明らかになった。
【0005】
現在市場にある医薬は、熱力学的に一層安定であるフォームII結晶から製剤されている。それで、現在の商業的実在物の製造には、フォームI結晶をフォームIIに転化することが必要である。典型的に、これは、フォームI結晶を真空下で80℃より高い温度に加熱することによって行われる。従って、高温度処理することなく製造することができる6−O−メチルエリスロマイシンAの新規な形の発見は、実質的な処理費用節減になる。更に、フォームIIに対するフォームIの好ましい溶解特性は、抗生物質のバイオアベイラビリティを増加させ、顕著な製剤上の利点を提供する。
【0006】
従って、本発明は、その基本的な態様に於いて、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIと命名される新規な結晶性抗生物質又はその薬物的に許容される塩を提供する。
【0007】
本発明はまた、薬物的に許容される担体と組み合わせた、治療的に有効量の6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIからなる薬物組成物を提供する。
【0008】
本発明は更に、治療的に有効量の6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIを哺乳動物に投与することからなる、細菌感染治療が必要である宿主哺乳動物に於ける細菌感染の治療方法に関する。
【0009】
他の態様に於いて、本発明は、
(a)エリスロマイシンAを6−O−メチルエリスロマイシンAに転化する工程;
(b)6−O−メチルエリスロマイシンAを、(i)エタノール、(ii)酢酸イソプロピル、(iii)イソプロパノール、(iv)テトラヒドロフラン並びに(v)エタノール、酢酸イソプロピル、イソプロパノール及びテトラヒドロフランからなる群から選択された第一溶媒と、5〜12個の炭素原子の炭化水素、3〜12個の炭素原子のケトン、3〜12個の炭素原子のカルボン酸エステル、4〜10個の炭素原子のエーテル、ベンゼン、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、ニトロ及びハロゲンからなる群から選択された1個又は2個以上の置換基で置換されたベンゼン並びに極性非プロトン性溶媒からなる群から選択された第二溶媒との混合物、からなる群から選択された溶媒で処理する工程;
(c)工程(b)で生成された結晶性6−O−メチルエリスロマイシンAを単離する工程、並びに
(d)工程(c)で単離された6−O−メチルエリスロマイシンAを、環境温度と約70℃との間の温度で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIを生成する工程
からなる、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの製造方法を提供する。
【0010】
詳細な説明
6−O−メチルエリスロマイシンAは、エリスロマイシンAの6−ヒドロキシ基のメチル化によって製造される。しかしながら、6位に加えて、エリスロマイシンAには11、12、2’及び4’’位にヒドロキシ基が、そして3’位に窒素が含まれており、これらの全ては潜在的に、アルキル化剤に対し反応性がある。それで、6−ヒドロキシ基をアルキル化する前に、種々の反応性官能基を保護することが必要である。代表的な6−O−メチルエリスロマイシンAの製造は、米国特許第4,331,803号、同第4,670,549号、同第4,672,109号及び同第4,990,602号並びにヨーロッパ特許明細書第260938B1号に記載されており、これらは、参照してここに組み込まれる。保護基の最終的除去に続いて、6−O−メチルエリスロマイシンAは、脱保護反応からの残留溶媒、無機塩及び他の不純物を含有する固体、半固体又はシロップとして存在し得る。6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIは、上記の溶媒を使用して、このシロップ又は半固体から直接結晶化させることができる。また、粗製反応生成物が固化している場合、固体を上記の溶媒のいずれかから再結晶することができる。純粋な6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIはまた、上記の溶媒系の全てからフォームII又はフォームIとフォームIIとの混合物を再結晶することによっても得ることができる。本明細書で使用されるとき、用語「6−O−メチルエリスロマイシンA」は、あらゆる純度の状態又はそれらの混合物で、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI又はIIを含むことが意味される。
【0011】
用語「処理」は、上記の溶媒のいずれかから上記定義されたような6−O−メチルエリスロマイシンAを結晶化又は再結晶することを指す。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「炭化水素」は、式C2n+2を有する直鎖又は分枝鎖アルカンを指す。本発明の溶媒混合物で有用である炭化水素には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が含まれる。
【0013】
用語「アルキル」は、1個の水素原子の除去によって、直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素から誘導される一価の基を指す。アルキル基は、メチル、エチル、n−及びイソ−プロピル、n−、sec−、イソ−及びtert−ブチル等によって例示される。
【0014】
用語「ケトン」は、式RC(O)R’(式中、R及びR’は、直鎖又は分枝鎖アルキルである)の溶媒を指す。本発明の溶媒混合物で有用であるケトンには、アセトン、メチルエチルケトン、2−及び3−ペンタノン等が含まれる。
【0015】
用語「カルボン酸エステル」は、式RCOR’(式中、R及びR’は、直鎖又は分枝鎖アルキルである)の溶媒を意味する。本発明の溶媒混合物で有用であるカルボン酸エステルには、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が含まれる。
【0016】
用語「エーテル」は、式ROR’(式中、R及びR’は、直鎖又は分枝鎖アルキルである)の溶媒を意味する。本発明の溶媒混合物で有用であるエーテルには、エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等が含まれる。
【0017】
用語「極性非プロトン性」は、ヒドロキシ基を含有しないが、比較的高い双極子モーメントを有する溶媒を指す。本発明の溶媒混合物中で有用である極性非プロトン性溶媒には、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,1−ジメトキシエタン(DME)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等が含まれる。
【0018】
「薬物的に許容される塩」によって、信頼のおける医療判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答等無しにヒト又は下等動物の組織と接触させて使用するために適しており、妥当な利益/危険比に対応しているこれらの塩が意味される。薬物的に許容される塩は当該技術分野で公知である。例えば、S.M Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、1977年、第66巻、第1〜19頁に詳細に薬物的に許容される塩を記載している。この塩は、本発明の化合物の最終的単離及び精製の間にインシトゥ(in situ)で又は別に、遊離塩基官能基を適当な有機酸と反応させることにより製造することができる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptonate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩(heptonate)、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が含まれる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が含まれ、同様に非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム及びアミンカチオンには、これらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等が含まれる。
【0019】
6−O−メチルエリスロマイシンAは、種々の合成経路によってエリスロマイシンAから製造される。一つの方法に於いて、エリスロマイシンAが、
【0020】
【化2】

2’−O−3’−N−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−N−デメチルエリスロマイシンA(I)に転化される。次いで、6−ヒドロキシ基が、ブロモメタン又はヨードメタンのようなアルキル化剤及び塩基との反応によってメチル化される。接触水素化によるベンゾイル基の除去及び3’Nの還元性メチル化によって、6−O−メチルエリスロマイシンAが得られる。米国特許第4,331,803号参照。
【0021】
代わりの合成経路には、6−O−メチルエリスロマイシンA−9−オキシムのメチル化が含まれる。6−O−メチルエリスロマイシンA−9−オキシムは、塩基の存在下でのエリスロマイシンAとヒドロキシルアミン塩酸塩との反応のような公知の方法により又は米国特許第5,274,085号に記載されているような酸の存在下でのヒドロキシルアミンとの反応により製造される。オキシムとRX(式中、Rはアリル又はベンジルであり、Xはハロゲンである)との反応により、2’−O−3’−N−ジアリル又はジベンジルエリスロマイシンA−9−O−アリル又はベンジルオキシムハライドが生成される。上記のようにこの第四級塩をメチル化し、続いてR基を除去し、脱オキシム化することによって、6−O−メチルエリスロマイシンAが得られる。米国特許第4,670,549号参照。
【0022】
式II:
【0023】
【化3】

(式中、Rは、アルキル、アルケニル、置換若しくは非置換のベンジル、オキシアルキル又は置換フェニルチオアルキルであり、Rはベンゾイルであり、Rはメチル又はベンゾイルである)
の6−O−メチルエリスロマイシンAオキシム誘導体のメチル化、そしてRがベンゾイルであるときには、更に脱保護、脱オキシム化及び還元性メチル化によって、6−O−メチルエリスロマイシンAが得られる。米国特許第4,672,109号参照。
【0024】
6−O−メチルエリスロマイシンAの特に有用な製造には、オキシム誘導体III:
【0025】
【化4】

(式中、Rは、アルケニル、置換若しくは非置換のベンジル又はアルコキシアルキルであり、Rは置換シリルであり、RはR又はHである)
のメチル化が含まれる。次いで、保護基の除去及び脱オキシム化を、一段階で酸で処理することにより行って、6−O−メチルエリスロマイシンAを得る。ヨーロッパ特許明細書第260938B1号及び米国特許第4,990,602号参照。
【0026】
6−O−メチルエリスロマイシンAへの好ましい経路を、反応図式Iに略述する。ストレプトマイセス・エリスレウス(Streptomyces erythreus)の発酵によって製造されたエリスロマイシンAをオキシム化して、オキシム4(式中、Rはアルコキシアルキルである)を得る。基Rは、エリスロマイシンAと置換ヒドロキシルアミンRONHとの反応により又はエリスロマイシンAと、塩基の存在下でのヒドロキシルアミン塩酸塩若しくは酸の存在下でのヒドロキシルアミンとの反応、続くRXとの反応により導入される。次いで、2個のヒドロキシ基を、R及びRが同じものでは同時に又はR及びRが異なるものでは連続して保護する。特に有用な保護基は、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル等のような置換シリル基である。次いで、保護基を除去し、化合物を脱オキシム化して、6−O−メチルエリスロマイシンAを得る。脱保護/脱オキシム化の順序は重要ではない。保護基が置換シリルであるとき、脱保護及び脱オキシム化は、例えば、ギ酸又は亜硫酸水素ナトリウムを使用する酸での処理によって一段階で達成することができる。米国特許第4,990,602号参照。
【0027】
【化5】

【0028】
本発明の方法の局面により、上記の方法の何れかによって製造された6−O−メチルエリスロマイシンAを、所望の溶媒中に懸濁させ、溶媒のほぼ還流温度まで加熱する。次いで、加熱を続け、この懸濁液を、固体の大部分を溶解させるために十分な長さの時間、一般的に約10分〜約2時間の間撹拌する。次いで、懸濁液を熱時濾過する。必要であれば、濾液を、溶媒の還流温度又はその付近にまで加熱して、透明な溶液を生ぜしめる。次いで、濾液を、任意に氷−水浴中で更に冷却しながら、環境温度までゆっくり冷却する。本明細書の目的のために、環境温度は約20℃〜約25℃である。次いで、結晶性6−O−メチルエリスロマイシンAを、好ましくは濾過によって単離し、この湿潤固体を、真空オーブン中で環境温度と約70℃との間、好ましくは約40〜約50℃の温度で、水銀柱約2インチと大気圧との間の圧力で乾燥して、全ての残留する溶媒を除去することによって、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIに転化させる。
【0029】
6−O−メチルエリスロマイシンAを溶媒混合物から再結晶させる、本発明の局面により、6−O−メチルエリスロマイシンAを第一溶媒中に懸濁させ、溶媒のほぼ還流温度まで加熱する。次いで、加熱を続け、この懸濁液を、固体の大部分を溶解させるために十分な長さの時間、一般的に約10分〜約2時間の間撹拌する。次いで、懸濁液を熱時濾過する。必要であれば、濾液を還流するまで加熱して、透明な溶液を生ぜしめることができる。次いで、第二溶媒を熱濾液に添加し、混合物を、任意に氷浴中で更に冷却しながら、環境温度までゆっくり冷却する。代表的な第二溶媒には、これらに限定されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、アセトン、メチルエチルケトン、2−及び3−ペンタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,1−ジメトキシエタン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ベンゼン、トルエン並びにクロロベンゼンが含まれる。5〜12個の炭素原子の炭化水素が、好ましい第二溶媒である。最も好ましい第二溶媒はヘプタンである。冷却後に、6−O−メチルエリスロマイシンA結晶フォームIを濾過により単離し、前記のようにして乾燥する。添加する第二溶媒の量は、第一溶媒及び第二溶媒中の薬物の溶解度に依存し、当業者により容易に決定することができる。典型的な比は、約1:10〜約2:1第二溶媒の体積部の範囲内である。第一溶媒の第二溶媒に対する好ましい比は、1:1体積部である。
【0030】
6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIを単離するための好ましい溶媒は、エタノール、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン及びイソプロパノールである。
【0031】
6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIを単離するための最も好ましい溶媒は、エタノールである。
【0032】
薬物組成物
本発明はまた、1種又は2種以上の非毒性で薬物的に許容される担体と一緒に配合された6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIからなる薬物組成物を提供する。この薬物組成物は特に、固体若しくは液体状で経口投与用に、非経口注射用に又は直腸投与用に製剤することができる。
【0033】
本発明の薬物組成物は、ヒト及びその他の動物に、経口で、直腸で、非経口で、槽内で、膣内で、腹腔内で、局所に(散剤、軟膏剤又は滴剤として)、口腔で又は口若しくは鼻スプレー剤として投与することができる。本明細書で使用するとき用語「非経口」投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内注射及び注入を含む投与の様式を指す。
【0034】
非経口注射用の本発明の薬物組成物は、薬物的に許容される滅菌水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液又は乳液並びに使用直前に滅菌注射可能溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末からなる。適当な水性及び非水性担体、希釈剤、溶剤又はビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの適当な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)並びにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルが含まれる。適当な流動性は、例えば、レシチンのような被覆物質を使用することにより、分散剤の場合に必要な粒子サイズを維持することにより又は界面活性剤を使用することにより維持することができる。
【0035】
これらの組成物にはまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような添加剤を含有させることができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含有させることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウム等のような等張剤を含有させることも望ましいであろう。注射可能薬物剤形の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる試薬を含有させることによってもたらされる。
【0036】
ある場合には、医薬の効果を延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの医薬の吸収を遅くすることが望ましい。これは、低い水溶性を有する結晶性又は無定形物質の懸濁液を使用することによって達成できる。次いで、医薬の吸収速度はその溶解速度に依存し、その溶解速度は結晶サイズ及び結晶形に依存し得る。また、非経口で投与される医薬形態の遅延した吸収は、医薬を油ビヒクル中に溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0037】
注射可能デポ剤形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生物分解性ポリマー中で医薬のミクロカプセルマトリックスを形成することによって作られる。医薬のポリマーに対する比及び使用される特定のポリマーの性質に依存して、医薬放出速度を制御することができる。他の生物分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。デポ剤注射可能製剤はまた、体組織と親和性であるリポソーム又はミクロエマルジョン中に医薬を取り込むことによって製造される。
【0038】
注射可能配合物は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することにより又は使用する直前に滅菌水若しくは他の滅菌注射可能媒体中に溶解又は分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を含有させることによって滅菌することができる。
【0039】
経口投与のための固体投与形態には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が含まれる。このような固体投与形態に於いて、活性化合物は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような少なくとも1種の不活性で薬物的に許容される賦形剤若しくは担体及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸のような充填剤若しくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸エステル、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴムのような結合剤、c)グリセロールのような湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、e)パラフィンのような溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアラートのような湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトクレーのような吸収剤並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物のような滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合に、剤形はまた緩衝剤からなっていてよい。
【0040】
類似の種類の固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟充填及び硬充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用することができる。
【0041】
錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体投与形態は、腸溶コーティング及び薬物製剤技術分野で公知のその他のコーティングのようなコーティング及びシェルと共に製造することができる。これらは任意に不透明化剤を含有していてよく、またそれらが、腸管の一定の部位で、任意に遅延された方法で、活性成分(群)のみを又は当該成分を優先的に放出する組成物のものであってよい。使用することができる埋没組成物の例にはポリマー物質及びろうが含まれる。
【0042】
活性化合物はまた、適当な場合には、1種又は2種以上の上記の賦形剤と共にミクロカプセル化形態であってよい。
【0043】
経口投与のための液体投与形態には、薬物的に許容される乳剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体投与形態には、例えば、水又はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、粉砕ナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル並びにこれらの混合物のような、他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤のような当該技術分野で一般的に使用されている不活性の希釈剤が含有されていてよい。
【0044】
不活性の希釈剤の他に、経口組成物にはまた、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味化、矯味・矯臭及び芳香付与剤のような佐剤が含有されていてよい。
【0045】
懸濁剤には、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天並びにトラガカント並びにこれらの混合物のような懸濁化剤が含有されていてよい。
【0046】
直腸又は膣投与のための組成物は好ましくは、本発明の化合物を、室温では固体であるが、体温では液体であり、それで直腸又は膣腔内で溶融し、活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ろうのような適当な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって製造することができる坐剤である。
【0047】
本発明の化合物はまた、リポソームの形態で投与することができる。当該技術分野で公知のように、リポソームは一般的にリン脂質又は他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中に分散された、モノ−又はマルチ−ラメラ水和物液晶によって形成される。リポソームを形成することができる非毒性の生理学的に許容され、代謝可能である全ての脂質を使用することができる。リポソームの形態の本発明の組成物には、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤等が含有されていてよい。好ましい脂質は、天然及び合成の両方の、リン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0048】
リポソームの形成方法は当該技術分野で公知である。例えば、Prescott編、「細胞生物学に於ける方法(Methods in Cell Biology)」、第14巻、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York,N.Y.)、(1976年)、第33頁以降を参照。
【0049】
本発明の化合物の局所投与のための剤形には、散剤、スプレー剤、軟膏及び吸入剤が含まれる。活性成分は、滅菌条件下で、薬物的に許容される担体及び必要であるかもしれない全ての必要な保存剤、緩衝剤又はプロペラントと混合される。点眼配合剤、眼軟膏剤、散剤及び水剤も、本発明の範囲内であることが意図される。
【0050】
本発明の薬物組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物及び投与の様式について所望の治療応答を得るために有効な活性化合物(群)の量を得るように変えることができる。選択された用量レベルは、特定の化合物の活性、投与の経路、治療する状態の重篤度並びに治療する患者の状態及び以前の治療履歴に依存するであろう。しかしながら、所望の治療効果を得るために必要なものよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増加させることは、当該技術分野の技術の範囲内である。
【0051】
一般的に、1日当たり体重1キログラム当たり約1〜約1000、更に好ましくは、約5〜約200mgの6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの用量レベルが、哺乳動物患者に投与される。所望により、有効な1日の用量を、投与の目的のために複数回の用量、例えば、1日当たり2〜4回に分けた用量に分割することができる。
【0052】
下記の実施例は、当業者が本発明を実施することができるために提供され、本発明の単なる例示である。これらは、請求の範囲に定義されるような本発明の範囲を制限するものとして読まれるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1a】図1a、1b及び1cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【図1b】図1a、1b及び1cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【図1c】図1a、1b及び1cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【図2a】図2a、2b及び2cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【図2b】図2a、2b及び2cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【図2c】図2a、2b及び2cは、それぞれ、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIIの粉末X線回折スペクトル、赤外スペクトル及び示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【実施例1】
【0054】
6−O−メチルエリスロマイシンフォームIの製造
6−O−メチルエリスロマイシンAを、C−9カルボニルのオキシム化、C−2’及びC−4’’ヒドロキシ基の保護、C−6ヒドロキシ基のメチル化、脱オキシム化及び保護基の除去並びに米国特許第4,990,602号の方法によるエタノールからの再結晶により、エリスロマイシンAから製造した。再結晶して得られた物質を、真空オーブン(40〜45℃、4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIを得た。
【0055】
6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIは、その赤外スペクトル、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム及び粉末X線回折パターンによって特性化される。示差走査熱量測定サーモグラムは、当該技術分野で公知の方法によって得られ、図1cに示す。図1cに於いて、132.2℃での発熱性の転移が観察され、これは相転移に起因すると信じられる。溶融に起因するであろう223.4℃での吸熱ピークも観察できる。306.9℃での発熱ピークが続く283.3℃での他の吸熱ピークは、分解に起因するであろう。DSC走査の後、サンプルの色は黒であった。
【0056】
粉末X線回折パターンは、当該技術分野で公知の方法によって得られる。図1aは、粉末X線回折パターンを示す。6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの粉末X線回折パターンに於ける2θ角度位置は、5.16゜±0.2、6.68゜±0.2、10.20゜±0.2、12.28゜±0.2、14.20゜±0.2、15.40゜±0.2、15.72゜±0.2及び16.36゜±0.2である。
【実施例2】
【0057】
6−O−メチルエリスロマイシンフォームI結晶のフォームII結晶への転化
実施例1に於けるようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI結晶(0.40g)を、バイアル中に入れ、真空オーブン(4〜9インチHg、100〜110℃)中で、18時間加熱して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームII結晶を得た。6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIIは223.4℃で溶融した。6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIIの示差走査熱量測定サーモグラムに於いて、分解に起因するであろう283.3℃での吸熱ピークが観察できた。DSC走査の後、サンプルの色は黒であった。6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIの粉末X線回折パターンに於ける2θ角度位置は、8.52゜±0.2、9.48゜±0.2、10.84゜±0.2、11.48゜±0.2、11.88゜±0.2、12.36゜±0.2、13.72゜±0.2、14.12゜±0.2、15.16゜±0.2、16.48゜±0.2、16.92゜±0.2、17.32゜±0.2、18.08゜±0.2、18.40゜±0.2、19.04゜±0.2、19.88゜±0.2及び20.48゜±0.2である。
【実施例3】
【0058】
再結晶による6−O−メチルエリスロマイシンフォームIの単離
テトラヒドロフランからの再結晶
テトラヒドロフラン(100mL)中の、実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(20g)の混合物を、還流するまで加温し、15分間撹拌した。この熱溶液を濾過して微量の不溶性物質を除去し、環境温度まで冷却した。結晶化は起こらず、それで10gの6−O−メチルエリスロマイシンAをこの溶液に添加し、懸濁液を再び還流するまで加熱し、熱時濾過し、そして氷浴中で冷却した。得られた固体を濾過によって集め、真空オーブン(40〜45℃、4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(16.74g)を得た。
【0059】
イソプロピルアルコールからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(15g)及びイソプロピルアルコール(100mL)の混合物を、還流するまで加温し、20分間加熱した。この熱溶液を濾過して微量の不溶性物質を除去した。この濾液を、50mLのイソプロピルアルコール洗液と一緒に他のフラスコに移し、この溶液を再び還流するまで加熱した。次いで、この透明な溶液を環境温度までゆっくり冷却し、7時間放置した。得られた固体を濾過によって集め、真空オーブン(40〜45℃、4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(13.3g)を得た。
【0060】
酢酸イソプロピルからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(10g)及び酢酸イソプロピル(100mL)の混合物を、73℃まで加温した。この熱溶液を濾過して微量の不溶性物質を除去した。次いで、この透明な溶液を環境温度までゆっくり冷却した。得られた固体を濾過によって集め、真空オーブン(40〜45℃、4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(3.6g)を得た。
【0061】
酢酸イソプロピル−ヘプタンからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(10g)及び酢酸イソプロピル(100mL)の混合物を、還流するまで加温した。少量の不溶性物質を濾過によって除去し、濾液を他の容器に移した。フィルターフラスコを酢酸イソプロピル(5mL)で洗浄し、濾液及び洗液を一緒にして、還流するまで加熱した。得られた透明な溶液にヘプタン(100mL)を添加し、この透明な溶液を環境温度まで1.5時間かけて冷却し、その間に沈殿が生成した。固体を濾過によって集め、真空オーブン(45〜50℃、4〜8インチHg)中で一晩乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(7.0g)を得た。
【0062】
酢酸イソプロピル−N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(12g)及び酢酸イソプロピル(100mL)の混合物を、還流するまで加温した。少量の不溶性物質を濾過によって除去し、濾液を他の容器に移した。濾液を還流するまで加熱し、N,N−ジメチルホルムアミド(30mL)を添加した。この透明な溶液を環境温度まで1.5時間かけて冷却し、その間に沈殿が生成した。固体を濾過によって集め、真空オーブン(49〜50℃、4〜8インチHg)中で一晩乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(6.4g)を得た。
【0063】
テトラヒドロフラン−ヘプタンからの再結晶
テトラヒドロフラン(75mL)中の、実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(10g)の透明な溶液にヘプタン(150mL)を添加した。得られた濁った溶液を71.5℃に加熱し、この点でこれは透明に変わった。この混合物を環境温度まで2時間かけて冷却し、次いで氷−水浴中で0.5時間冷却した。得られた固体を濾過し、真空オーブン(45〜50℃、3〜4インチHg)中で4日間乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(0.50g)を得た。
【0064】
エタノール−ヘプタンからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(10g)及びエタノール(100mL)の混合物を、還流するまで加温した。少量の不溶性物質を濾過によって除去し、濾液を他の容器に移した。フィルターフラスコをエタノール(20mL)で洗浄し、濾液及び洗液を一緒にして、透明な溶液が得られるまで、78℃で加熱した。この透明な溶液にヘプタン(100mL)を添加し、この透明な溶液を環境温度までゆっくり冷却し、4日間撹拌した。得られた固体を濾過によって集め、真空オーブン(45〜50℃、4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(4.5g)を得た。
【0065】
イソプロパノール−ヘプタンからの再結晶
実施例1に記載したようにして製造した6−O−メチルエリスロマイシンA(4.0g)及びイソプロパノール(50mL)の混合物を、還流するまで加温した。ヘプタン(50mL)を添加し、この溶液を環境温度までゆっくり冷却し、次いで氷−水浴中で冷却した。得られた固体を濾過によって集め、真空オーブン(4〜8インチHg)中で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームI(3.6g)を得た。
【実施例4】
【0066】
6−O−メチルエリスロマイシンフォームI及びIIの溶解速度
溶解の研究を、一定表面積(13/32’’直径)医薬コンパクトを使用して、300mLの0.05M燐酸塩緩衝液中で37℃で60rpmで行った。アリコートを定期的に取り出し、HPLC(5cm×4.6mm3μODS−2「リトルチャンプ(Little Champ)」(登録)カラム;50:50アセトニトリル−0.05M pH4.0燐酸塩緩衝液移動相;1.0mL/分流速)によって直接定量した。表1に示されるように、6−O−メチルエリスロマイシンAフォームIは、フォームIIより約3倍大きい固有溶解速度を有する。
【0067】
【表1】

【0068】
上記の実施例は、例示の目的のために示し、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者に自明である変形及び変更は、付属する請求の範囲で定義されるような本発明の範囲及び本質内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)6−O−メチルエリスロマイシンAを、
(i)エタノール、
(ii)酢酸イソプロピル、
(iii)イソプロパノール、
(iv)テトラヒドロフラン並びに
(v)エタノール、酢酸イソプロピル、イソプロパノール及びテトラヒドロフランからなる群から選択された第一溶媒と、
5〜12個の炭素原子の炭化水素、
3〜12個の炭素原子のケトン、
3〜12個の炭素原子のカルボン酸エステル、
4〜10個の炭素原子のエーテル、
ベンゼン、
1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、ニトロ及びハロゲンからなる群から選択された1個又は2個以上の置換基で置換されたベンゼン及び
極性非プロトン性溶媒
からなる群から選択された第二溶媒との混合物、
からなる群から選択された溶媒で結晶化する工程;
(b)工程(a)で生成された結晶性6−O−メチルエリスロマイシンAを単離する工程、並びに
(c)工程(b)で単離された6−O−メチルエリスロマイシンAを、40℃乃至50℃の温度で乾燥して、6−O−メチルエリスロマイシンAのフォームI結晶を生成する工程
からなる、6−O−メチルエリスロマイシンAのフォームI結晶の製造方法。
【請求項2】
工程(a)の前に下記の工程を行う請求項1に記載の方法、
(i)エリスロマイシンAからエリスロマイシンA9−オキシム誘導体を得る工程、
(ii)工程(i)で製造されたエリスロマイシンA9−オキシム誘導体の2’及び4’’ヒドロキシ基を保護する工程、
(iii)工程(ii)の生成物をメチル化剤と反応させる工程、及び
(iv)工程(iii)の生成物を脱保護及び脱オキシム化して、6−O−メチルエリスロマイシンAを生成する工程。
【請求項3】
溶媒が、
(a)エタノール、
(b)酢酸イソプロピル、
(c)イソプロパノール及び
(d)テトラヒドロフラン
からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
溶媒がエタノールである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
溶媒が、エタノール、酢酸イソプロピル、イソプロパノール及びテトラヒドロフランからなる群から選択された第一溶媒と、
5〜12個の炭素原子の炭化水素、
3〜12個の炭素原子のケトン、
3〜12個の炭素原子のカルボン酸エステル、
4〜10個の炭素原子のエーテル、
ベンゼン、
1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、ニトロ及びハロゲンからなる群から選択された1個又は2個以上の置換基で置換されたベンゼン及び
極性非プロトン性溶媒
からなる群から選択された第二溶媒との混合物からなる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
第二溶媒が、5〜12個の炭素原子の炭化水素である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第二溶媒がヘプタンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
溶媒が、
(a)エタノール、
(b)酢酸イソプロピル、
(c)イソプロパノール、
(d)テトラヒドロフラン
(e)酢酸イソプロピル−ヘプタン、
(f)酢酸イソプロピル−N,N−ジメチルホルムアミド、
(g)テトラヒドロフラン−ヘプタン、
(h)エタノール−ヘプタン及び
(i)イソプロパノール−ヘプタン
からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
請求項2記載の方法によって製造された6−O−メチルエリスロマイシンAのフォームI結晶。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公開番号】特開2010−90156(P2010−90156A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280116(P2009−280116)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【分割の表示】特願平10−509015の分割
【原出願日】平成9年7月25日(1997.7.25)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】