説明

クランク機構、およびこのクランク機構を利用した圧縮機またはポンプ

【課題】 コンパクトな構成により、寿命を向上させ、メンテナンス性のよいクランク機構、および、このクランク機構を利用した圧縮機またはポンプを提供する。
【解決手段】 クランク軸2と、このクランク軸2の少なくとも一端側に設けられ、クランク軸2と一体的に回転が可能なクランクウェブ3と、このクランクウェブ3に設置され、クランク軸2回りに公転運動するクランクピ4ンと、このクランクピン4に回転自在に装着されたクランクピンローラ5と、このクランクピンローラ5を内嵌する長穴の溝8aが形成された矩形状のクロスヘッド6と、このクロスヘッド6を往復直線運動自在にガイドするフレーム9とを備え、前記長穴の溝8aを介して、クランクピン4の公転運動と前記クロスヘッド6の往復直線運動とを相互に変換することを特徴とするクランク機構および、このクランク機構を利用した圧縮機またはポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク機構、およびこのクランク機構を利用した圧縮機またはポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転運動を往復運動に変換する機構として、クランク機構が用いられ、例えば、原動機等に使用されるクランク機構として、従来から、図7および図8に示すように、回転運動をするクランク軸81と、連接棒82と、往復運動をするクロスヘッド83とから構成されたものが広く使用されている(特許文献1)。また、図8に示すように、クロスヘッド83は、通常、円弧状の形状が採用されている。
【特許文献1】特開2002−174131号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のような連接棒を使用する方式では、大端部および小端部等高い加工精度が要求され、製作コストが高いのみならず、構造上偏磨耗等によるメンテナンスコストも過大であり、しかも、回転部分の重量バランスが偏りやすいため、バランスウエイトが大きくなり、慣性トルクが大きくなることから、各部材に作用する負担が大きくなり、寿命を短縮してしまうという問題があった。また、バランスウエイトが過大となると、このバランスウエイトを固定しているボルトの緩みや折損により、バランスウエイトの脱落等の大きな事故を招き兼ねないというおそれもあった。
さらに、連接棒を介して回転運動を往復運動に変換すると、構造上歳差運動が発生し、往復運動部品の最大速度がクランクアングルの90度の位置ではなく、それ以前に発生するため、往復運動部品の加速度が大きくなり、バルブタイミング等に悪影響を与えるという問題もあった。
【0004】
そこで、本発明は、コンパクトな構成により、製作コストの低減および設置面積の省スペース化を図りながら、回転運動と往復直線運動との相互変換を達成し、寿命を向上させて、信頼性が高く、しかもメンテナンス性のよいクランク機構、および、このクランク機構を利用した圧縮機またはポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、クランク軸と、このクランク軸の少なくとも一端側に設けられ、前記クランク軸と一体的に回転が可能なクランクウェブと、このクランクウェブに設置され、前記クランク軸回りに公転運動するクランクピンと、このクランクピンを内嵌する長穴の溝が形成されたクロスヘッドと、このクロスヘッドを往復直線運動自在にガイドするフレームとを備えたクランク機構であって、前記長穴の溝を介して、前記クランクピンの公転運動と前記クロスヘッドの往復直線運動とを相互に変換することを特徴とする。
【0006】
このように、クランク軸と一体的に回転するクランクウェブにクランクピンを装着し、このクランクピンをクロスヘッドに形成された長穴の溝に嵌装させてクランク軸回りに公転運動させることにより、直接クロスヘッドを往復直線運動させることもでき、その逆に、クロスヘッドの往復直線運動をクランク軸の回転運動に変換することもできる。
かかる構成により、本願発明に係るクランク機構は、連接棒を廃止している。したがって、加工難易度の高い連接棒を廃止したことにより、製作コストを低減できるとともに、
クランク軸の回転方向のコンパクト化により、省スペース化を達成し、設置面積を小さくすることができる。また、偏芯した回転部分を軽量化することにより、バランスウエイトを低減ないし排除することが可能となること、および、連接棒の揺動運動に起因するクスロスヘッドの揺動運動を防止することができることから、各摺動面の磨耗を低減し、各部材の負担を軽減して、部材の損傷を防止し、寿命を向上させて、信頼性を高めることができる。
さらに、連接棒を廃止したことにより、歳差運動による悪影響を排除し、クランク軸の回転角に対するクロスヘッドの往復運動速度をサインカーブ化することもできる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のクランク機構であって、前記クランクピンには、回転自在にクランクピンローラが装着されるとともに、前記クロスヘッドに形成された長穴の溝は、前記クランクピンローラの径に相当する幅であって、前記クランクピンローラが嵌装された状態で転動しながら前記公転運動することにより、往復摺動可能な長さに形成されたことを特徴とする。
【0008】
このように、クランクピンには、クランクピンローラを装着し、クロスヘッドに形成された長穴の溝の側面と転動しながら摺動させて、クロスヘッドを往復直線運動するように構成したことから、摺動面の摩擦抵抗を減少させ、磨耗を低減し、円滑な作動を確保することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のクランク機構であって、前記クロスヘッドは、矩形状の平板で構成され、前記フレームは、ガイドローラを介して、前記クロスヘッドを前記往復直線運動の方向に摺動自在にガイドし、前記ガイドローラは、前記クロスヘッドの上下の端面または左右の側面を前記往復移動の方向にガイドするように、前記クロスヘッドまたは前記フレームに設置されたこと特徴とする。
【0010】
このように、クロスヘッドを矩形状の平板で構成したことにより、円弧状に形成した従来のもの(図7、図8参照)と比べて、精度管理が容易で、製作コストを低減でき、メンテナンス性にも優れている。
また、ガイドローラを設けて、フレームとクロスヘッドとの摺動面を転がりでガイドする構成としたため、摺動抵抗を減少させるとともに、摺動面の磨耗や焼き付き等の損傷を防止することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のクランク機構であって、前記クロスヘッドの上下方向をガイドする前記ガイドローラと摺動する前記フレームまたは前記クロスヘッドの摺動面には、補強部材が設けられたことを特徴とする。
ここで、この明細書において、「補強部材」とは、強度、および硬度等を向上させた部材をいい、熱処理等により表面硬度を上げた部材のほか、シート状のライナーや溶射等による表面処理部材も含まれる。
【0012】
このように、ガイドローラと摺動する前記フレームまたは前記クロスヘッドの摺動面に補強部材を設けたことにより、摺動面の表面強度を向上させながら、構造部材としての靭性をも確保することができる。したがって、フレームおよびクロスヘッドの剛性を損なうことなく、ガイドローラが転動することによる摺動面の損傷を防止することができ、メンテナンス性ないし寿命も向上する。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4に記載のクランク機構であって、前記クロスヘッドには、前記長穴の溝の側面を補強する補強部材を備えたことを特徴とする。
【0014】
このように、クロスヘッドには、前記長穴の端面に形成されたクランクピンおよびクランクピンローラとの摺動面を補強する補強部材を備えて構成したことにより、耐荷重性、耐摩耗性等が要求される前記摺動面を強度の高い材料で構成することができ、コストダウンを図りながら、前記摺動面の寿命を向上させ、メンテナンス性を向上させている。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載するクランク機構を有する圧縮機またはポンプであって、さらに、前記クロスヘッドが往復直線運動する方向に連結されるピストンロッドと、このピストンロッドに連結されるピストンと、このピストンを往復運動自在に収容し、前記ピストンの摺動方向の前後にそれぞれ圧力室を形成し、この圧力室に外部からそれぞれ連通する連通孔が形成されたシリンダとを備えることを特徴とする。
【0016】
このように、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載するクランク機構を圧縮機またはポンプに利用することにより、寿命を向上させて、信頼性が高く、しかもメンテナンス性のよい圧縮機またはポンプを提供することができる。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の圧縮機またはポンプであって、前記クロスヘッドに連結されるピストンロッドは、前記クロスヘッドの往復直線運動の方向に対して、両側に連結されると共に、前記ピントンロッドにそれぞれ前記ピストンが連結されたことを特徴とする。
【0018】
このように、本願発明に係るクランク機構は、連接棒を廃止したことにより、クロスヘッドの両端にピストンロッドが連結できるため、コンパクトな構成により、寿命を向上させて、信頼性が高く、しかもメンテナンス性のよい水平対向型の圧縮機またはポンプを提供することができる。
また、本発明によれば、クロスヘッドの往復直線運動の平面内で水平対向型の圧縮機またはポンプを構成できるため、クランク軸の方向にクランクを2箇所連結した従来の構成に対して、クランク軸の方向においても省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、コンパクトな構成により、製作コストの低減および設置面積の省スペース化を図りながら、回転運動と往復直線運動との相互変換を達成し、寿命を向上させて、信頼性が高く、しかもメンテナンス性のよいクランク機構、および、このクランク機構を利用した圧縮機またはポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本実施形態に係るクランク機構の構成を示す斜視図であり、図2は本実施形態に係るクランク機構の正面図であり、図3は図2のX−X断面図である。
ここで、説明の便宜上、本クランク機構の上下方向、および前後方向を定めることとし、図3において、本図上での上下をクランク機構の上下方向とし、本図上で左側を前とし、右側を後とする。また、本クランク機構を、後述する圧縮機またはポンプに使用した場合においても同様とし、各部品についてもこの方向を適用する場合がある。
【0021】
図1から図3に示すように、本実施形態に係るクランク機構1は、回転するクランク軸2と、このクランク軸2と一体的に回転するクランクウェブ3と、このクランクウェブ3に偏芯して設置されたクランクピン4と、このクランクピン4に回転自在に装着されたクランクピンローラ5と、往復直線運動(図2に示すA方向の往復運動)するクロスヘッド6と、このクロスヘッド6に装着される補強部材8と、クランク機構1の筐体を構成するフレーム9、およびクロスヘッド6を往復直線運動自在にガイドするガイドローラ11,12とを備えて構成されている。
【0022】
図1および図3に示すように、前記クランク軸2は、一端側にロックナット2aを備えた段付の丸棒として構成されている。前記一端側の端部には、後記するクランクウェブ3がキー2bを介して一体的に回転ができるようにロックナット2aで固着されている。一方、他端側の端部にはクランク軸2を駆動するVプーリが装着されるキー溝2cが形成されている。また、クランク軸2の中央部の外周面2d(図3参照)にはテーパローラ軸受21を介してクランク軸2が回転自在に軸支されている。
【0023】
前記クランクウェブ3は、厚肉のリング状に形成され、先端側の端面には、前記クランク軸2のロックナット2aが装着される段部3aが形成されている(図3参照)。また、内周面には、キー溝3bが形成されており、クランク軸2とクランクウェブ3は、このキー溝3bに装着されるキー2bを介して固着されている(図1参照)。
クランクウェブ3には、クランク軸2の回転中心から所定量偏芯させた位置にクランクピン4が挿通される穿孔3cが形成され、この穿孔3cにはナット4aが装着される座ぐり穴が設けられている。
なお、本実施形態に係るクランクウェブ3は、従来のクランクアームに相当するものであるが、回転部分のアンバランスの対策においては、静不釣合いではなく、「非不釣合い」の思想から、ロータ全体の重量に対するアンバランス量の割合を考慮して振動を軽減している。その結果、バランスウエイトを排除し、バランスウエイトの脱落という危険を完全に回避している。
【0024】
前記クランクピン4の先端側(クロスヘッド6側)にはクランクピンローラ5が回転自在に固着され、他端側には前記ナット4aが螺着される雄ねじが形成されている。なお、クランクピンローラ5には、前記非不釣合いの思想から、軽量化を図りながら、円滑な回転を確保すべく、ニードルベアリングを使用している。
【0025】
図1および図2に示すように、クロスヘッド6は、矩形状の平板で構成している。本実施形態においては、クロスヘッド6の上下方向はクロスヘッド6の上下の端面に配置されたガイドローラ11によりガイドし、往復運動方向に対する左右方向は上下のフレーム9b,9cからクロスヘッド6の左右の側面に当接するように配置されたガイドローラ12により往復直線運動可能にガイドしている。なお、ガイドローラ11,12には、円滑な回転を確保し、メンテナンス性を考慮して、ニードルベアリングを使用している。
クロスヘッド6の中央部には、クランクピンローラ5が往復摺動する際に干渉しないような逃げ穴6aが形成されている(図1参照)。
また、この逃げ穴6a周縁部には、後記する補強部材8が設置される段部6bが形成され(図1参照)、この段部6bには、補強部材8の取付ボルト8bの位置に対応して、四隅に雌ねじ6cが形成されている。
【0026】
クロスヘッドに設置される補強部材8は、矩形状の平板で構成され、中央部にはクランクピンローラ5の公転運動をガイドし、それを往復直線運動に変換するための貫通した長穴の溝8aが形成されている。
したがって、この長穴の溝8aの幅は、クランクピンローラ5の径に相当し、クランクピンローラ5が前記長穴の溝8aの側面に沿って転動可能に適切なクリアランスを構成できるように設定されている。また、前記長穴の溝8aの長さは、クランクピンローラ5が公転運動するに伴う往復移動の長さに対応して定められている。
なお、補強部材8に形成された長穴の溝8aは、クロスヘッド6の往復運動方向に対して直交する方向に沿って配置される構成としているが、これに限定されるものではなく、交差する方向に配置されていればよい。
また、長穴の溝8aの側面は、クランクピンローラ5と線接触により転動するため、この部分の摺動特性を向上させる必要があるため、本実施形態においては、補強部材8には焼入れ処理が施されている。その結果、クランクピンローラ5の小型化を達成し、軽量化を図っている。
【0027】
図3に示すように、フレーム9は、クロスヘッド6を往復直線運動可能にガイドして収容する筐体として構成され、フレーム本体9aと、上フレーム9b、下フレーム9c、および、ベアリングハウジング9dとを備えて構成されている。
前記フレーム本体9aは、前後のフレーム9a1,9a2と、この前後のフレーム9a1,9a2を結合するリブ9a3とから構成された溶接構造とされている。
前記上下のフレーム9b,9cは、平板で形成され、フレーム本体9aの上下面を覆うようにフレーム本体9aに固着されている。また、上下のフレーム9b,9cには、クロスヘッド6に回転自在に設置されたガイドローラ11の外周面との摺動面を形成する補強部材10が、前記クロスヘッド6の往復移動方向に沿って設置されている。なお、本実施形態においては、補強部材10には、焼入処理を施した部材を使用している。
さらに、上下のフレーム9b,9cには、前記クロスヘッド6の往復運動方向に対する左右の側面をガイドするガイドローラ12が、ガイドローラシャフト12aを介してガイドローラ12の外周面をクロスヘッド6の左右の側面とそれぞれ当接させる所定の位置に設置されている(図1を併せて参照)。なお、このガイドローラ12には、円滑な回転を確保すべく、ニードルベアリングが使用され、これにより、往復摺動自在にクロスヘッド6の往復運動方向に対する左右方向をガイドしている。
前記ベアリングハウジング9dは、フレーム本体9aの側板9a2に固着され、テーパローラ軸受21を介して、クランク軸2を回転自在に保持し、かつスラスト荷重をも負担できる構造としている。
【0028】
次に、図1から図3を参照しながら、本実施形態に係るクランク機構の作用について説明する。ここでは、本クランク機構1によるクランク軸2の回転をクロスヘッド6の往復直線運動に変換する場合の作用について説明するが、その逆にクロスヘッド6の往復直線運動をクランク軸2の回転運動に変換する場合であっても同様である。
クランク軸2には、Vプーリが図示しないキーで結合されており、このVプーリを図示しないVベルトを介して図示しないモータ等で回転させることにより、クランク軸2を回転させることができる。このクランク軸2の回転運動は、キー2bで一体に連結されたクランクウェブ3に伝達される。このクランクウェブ3には、前記クランク軸2の回転中心から所定量偏芯させた位置にクランクピン4が設置され、このクランクピン4には、回転自在にクランクピンローラ5が装着されているため、クランクピンローラ5はクランク軸2の回りに公転運動を行う。
なお、本実施形態においては、一例として、Vプーリを介してクランク軸2を回転させているが、これに限定されることはなく、歯車等を使用してもよく、クランク軸2を回転させる手段に関わらず本発明を実施することができる。
【0029】
一方、クロスヘッド6は、前記往復直線運動をさせる方向にガイドローラ11,12を介してフレーム9に摺動自在にガイドされている。また、クロスヘッド6には、このクロスヘッド6が往復直線運動する方向と直交する方向に、補強部材8を介して、前記クランクピンローラ5の径に相当する幅であって、前記クランクピンローラ5が内嵌された状態で前記公転運動することにより、往復摺動可能な長さの長穴の溝8aが形成されている。
さらに、クロスヘッド6は、クランクピンローラ5を前記クロスヘッド6に配置された補強部材8に形成された長穴の溝8aに内嵌させた状態となるように、クランクウェブ3に対面して配置されている。
【0030】
したがって、クロスヘッド6に補強部材8を介して形成された長穴の溝8aは、クロスヘッド6の往復直線運動の方向とは直交する方向に形成されているため、クロスヘッド6は、前記往復直線運動の方向には、クランクピン4の移動方向に拘束されて移動する。これに対し、前記往復直線運動の方向と直交する方向(図2のB方向)には前記長穴の溝8aが形成されているため、クロスヘッド6は外力を受けない。
よって、クロスヘッド6は、クランク軸2の回転運動により、前記往復直線運動の方向に往復直線運動をする。
【0031】
続いて、本クランク機構を利用した圧縮機について説明する。なお、本クランク機構をポンプに利用した場合にも同様であり、クランク機構自体も同一であるのでその説明は省略する。
なお、本発明に係る請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のクランク機構は、ホンプや圧縮機に限定されるものではなく、広く、内燃機関および外燃機関等にも適用が可能である。
【0032】
図4は、本クランク機構を利用した圧縮機の構成を示す平面図である。
図4に示すように,本実施形態に係る圧縮機30は、前記実施形態に係るクランク機構1と、このクランク機構1に係るクロスヘッドの端面6eに連結されるピストンロッド31と、このピストンロッド31に連結されるピストン32と、このピストン32を往復直線運動自在に収容するシリンダ33と、このシリンダの内部に形成された第1および第2の圧力室34,35と、この圧力室34,35に外部から連通する連通孔36,37とを備えて構成されている。
なお、これ以外の構成は、圧縮機またはポンプの構成として周知のものであるので、その説明は省略する。
【0033】
前記ピストンロッド31は、両端部に雄ねじ31a,31bが形成された段付の丸棒として構成されている。一端側の端部は、クロスヘッドの端面6eに挿入されて、クロスヘッドナット38で固着している。
ピストンロッド31の他端側には、ピストン32が装着されるため、この他端側の先端部には、雄ねじ31bが形成されている。
【0034】
前記ピストン32は、ピストン本体32aと、ピストンカバー32bとから構成されている。前記ピストン本体32aは、有底の円筒状に形成され、開放側の端面を覆うようにピストンカバー32bが嵌装されている。ピストン32は、ピストンロッド31の他端側に挿入した状態で、ピストンナット39をピストンロッド31の他端側の雄ねじ31bに螺着することによりピストンロッド31に固着されている。
【0035】
前記シリンダ33は、ピストン32を往復運動自在に収容する円筒状のシリンダ本体33aと、フロントヘッド33b、およびリアヘッド33cとを備えて構成されている。シリンダ本体33aの内周面には、ピストン32との機密性および円滑な摺動を確保すべく、シールリング42およびパッキン43が装着されている。
シリンダ本体33aには、図示しないガスケットを介して、フロントヘッド33bおよびリアヘッド33cが固着されており、ピストン32の往復運動方向の前後にそれぞれ密閉された圧力室34,35が形成されている。そして、この圧力室34,35には、それぞれシリンダ33の外部まで連通する連通孔36,37が形成されている。
したがって、図4において、クロスヘッド6が本図上で右方向に移動すれば、それに伴いピストン32も右方向へ移動し、第1の圧力室34に連通する第1の連通孔36からエアが導入されるとともに、第2の圧力室35に連通する第2の連通孔37からエアが排出される。なお、本実施形態においては、各圧力室34,35に導入および排出される流体をエアとして説明したが、これに限定されることはなく、本発明はオイルや水素ガス、プロパンガス、その他各種の冷媒等種々の流体に適用することができる。
【0036】
最後に、本発明に係るクランク機構の変形例について説明する。
図5は、本クランク機構を利用した水平対向型の圧縮機またはポンプの主要な構成を示す図である。図5に示すように、本クランク機構1に係るクロスヘッド6の両側にピストンロッド31を連結し、本図上で左右にそれぞれシリンダ33およびピストン32を構成して、水平対向型の圧縮機またはポンプを構成したものである。
【0037】
さらに、別の変形例について説明する。
図6は、本願発明に係る別の変形例を説明するための図である。本変形例は、円柱形状のクランクピン4と、このクランクピン4を抱き込むように構成し、前記実施形態に係るクランクピンローラ5(図1参照)の代わりに採用した箱型の2つ割りのスライド部材51と、このスライド部材51の内周面側に装着された軸受41とを備えて構成されている。
本変形例に係るクランク機構1′は、クランクピン4の公転運動に伴い、スライド部材51がクロスヘッド6に形成された長穴の溝61の側面で往復摺動することにより、クロスヘッド6が往復移動する点で、前記実施形態に係るクランク機構1(図1参照)と同様の作用を奏するものである。
【0038】
以上、本発明について最良と思われる実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内で適宜変更して実施することができる。
例えば、本実施形態においては、クランクウェブは、クランク軸とは別体として構成し、クランク軸にキーを介して嵌装する構造を採用したが、これに限定されることはなく、クランク軸と一体に構成してもよい。
さらに、クラング軸を片持ちに構成し、駆動されるVプーリを挟んでクランク軸の両側にクロスヘッドを配置することも可能である。
【0039】
また、クロスヘッドの往復摺動可能にガイドするガイドローラに関し、上下方向のガイドローラはクロスヘッドに配置し、左右方向のガイドは上下のフレームに配置することとしたが、両者をフレームに設置してもよく、また両者をクロスヘッドに設置してもよい。さらに、前記ガイドローラは、必ずしも設置する必要はなく、クロスヘッドとフレームとを転がり摺動ではなく、すべり摺動としてもよい。ただし、クロスヘッドの上下方向のガイド部には、クランク軸の回転方向の遠心力が作用するため、本実施形態のようにガイドローラを設置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係るクランク機構の構成の主要部を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るクランク機構の主要部を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係るクランク機構を説明するための図1におけるX−X断面図である。
【図4】本実施形態に係るクランク機構に連結されるシリンダ部の構成を示す図である
【図5】本実施形態に係るクランク機構を利用した水平対向型の圧縮機等を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係るクランク機構の変形例を示す図である。
【図7】従来のクランク機構を示す断面図である。
【図8】図7のY−Y断面図である。
【0041】
1 クランク機構
2 クランク軸
2a ロックナット
2b キー
3 クランクウェブ
4 クランクピン
5 クランクピンローラ
6 クロスヘッド
6a 逃げ穴
6b 段部
8 補強部材
8a 長穴の溝
8b 取付ボルト
9 フレーム
10 補強部材
11 ガイドローラ
12 ガイドローラ
30 圧縮機
31 ピストンロッド
32 ピストン
33 シリンダ
34 第1の圧力室
35 第2の圧力室
36 第1の連通孔
37 第2の連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、このクランク軸の少なくとも一端側に設けられ、前記クランク軸と一体的に回転が可能なクランクウェブと、このクランクウェブに設置され、前記クランク軸回りに公転運動するクランクピンと、このクランクピンを内嵌する長穴の溝が形成されたクロスヘッドと、このクロスヘッドを往復直線運動自在にガイドするフレームとを備え、
前記長穴の溝を介して、前記クランクピンの公転運動と前記クロスヘッドの往復直線運動とを相互に変換することを特徴とするクランク機構。
【請求項2】
前記クランクピンには、回転自在にクランクピンローラが装着されるとともに、前記クロスヘッドに形成された長穴の溝は、前記クランクピンローラの径に相当する幅であって、前記クランクピンローラが嵌装された状態で転動しながら前記公転運動することにより、往復摺動可能な長さに形成されたことを特徴とする請求項1に記載のクランク機構。
【請求項3】
前記クロスヘッドは、矩形状の平板で構成され、
前記フレームは、ガイドローラを介して、前記クロスヘッドを前記往復直線運動の方向に摺動自在にガイドし、
前記ガイドローラは、前記クロスヘッドの上下の端面または左右の側面を前記往復移動の方向にガイドするように、前記クロスヘッドまたは前記フレームに設置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクランク機構。
【請求項4】
前記クロスヘッドの上下方向をガイドする前記ガイドローラと摺動する前記フレームまたは前記クロスヘッドの摺動面には、補強部材が設けられたことを特徴とする請求項3に記載のクランク機構。
【請求項5】
前記クロスヘッドには、前記長穴の溝の側面を補強する補強部材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のクランク機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載するクランク機構を有し、
さらに、前記クロスヘッドが往復直線運動する方向に連結されるピストンロッドと、
このピストンロッドに連結されるピストンと、
このピストンを往復運動自在に収容するとともに、前記ピストンの摺動方向の前後にそれぞれ圧力室が形成され、この圧力室に外部からそれぞれ連通する連通孔が形成されたシリンダと、
を備えることを特徴とする圧縮機またはポンプ。
【請求項7】
前記クロスヘッドに連結されるピストンロッドは、前記クロスヘッドの往復直線運動の方向に対して、両側に連結されると共に、前記ピストンロッドにそれぞれ前記ピストンが連結されたことを特徴とする請求項6に記載の圧縮機またはポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220074(P2006−220074A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34671(P2005−34671)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000231707)新日本石油精製株式会社 (33)
【出願人】(391019706)新潟ウオシントン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】