説明

クランプ式電源ケーブル接続装置

【課題】 簡単な作業操作で電源ケーブルの導体を接続することができ、防水性が高く、中心導体の弾性限度範囲内で圧接して繰返し使用可能な電源ケーブル接続装置を得る。
【解決手段】 端縁から内側方向に形成されたスリットを備え、互いに接続する電源ケーブルの芯線導体先端部を受け入れるための互いに導通した保持孔を備えた中心導体と、中心導体の周囲を覆って絶縁する本体部と、保持孔を覆うように本体部に出入り自在に装着され、芯線導体先端部を保持孔に誘導する挿通孔を備えたキャップ部とを備え、キャップ部は先端部に向かうに従って縮径する内形状を有し、キャップ部の本体部への装着に伴ってキャップ部の内部形状に沿って互いに寄り集まる拡径状に分岐した複数のチャック部材と、キャップ部に挿通孔の周を取り巻いてキャップ部の本体部への装着に伴って挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるガスケット部材とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばはんだ付けや圧着工具が不要な電源ケーブル接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、同軸ケーブル先端への取付作業が簡便で安定した圧着効果を得ることのできる自己圧着方式の同軸ケーブル用コネクタを既に提供している(特許文献1参照)。この同軸ケーブル用コネクタは、中心コンタクト導体の外周面には後端から先端方向に間隔をおいた位置に形成された凹部の縮径作用により、同軸ケーブルの芯線導体との圧着効果を得ることができる。
【0003】
一方、電源ケーブルの接続においては、端子ボックスの基板に電源ケーブルをはんだ付け又は圧着工具等を使用して接続することが一般的であり、特に複数の太陽電池パネルを相互に電気的に接続するための接続装置では、接続作業が屋外であるため、半田付け作業を容易とする工夫が行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−230855号公報
【特許文献2】特開2004−63651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電源ケーブル接続装置(コネクタ)の取付工事では、場所によりはんだ付け作業が困難な場合も考えられ、圧着工具を使用するものはそのコネクタに合った圧着工具をその都度準備しなければならないと言う煩わしさが有る。特に、太陽電池パネルを相互に電気的に接続するための接続作業は、多くの場合屋外である。また、近年では戸建ての家屋の屋根にも取付け可能な太陽電池パネルの設置が多くなり、高く狭い場所での接続作業は作業者にとって危険であり、又、はんだ付けのための電源の確保等の問題より、作業性を向上させた電源ケーブル接続装置が望まれている。
【0006】
また、太陽電池パネル等の接続箇所は屋外であることが多いため、接続装置(コネクタ)については、防水性等の耐候性を向上させる必要もある。
【0007】
よって、本発明では、はんだ付けや圧着工具を使用することなく極めて簡単な作業操作で電源ケーブルの導体を接続することができ、防水性が高く太陽光発電・風力発電・各種装置の電源ケーブル用として使用でき、中心導体の弾性限度範囲内で圧接して繰返し使用可能なコネクタとしての電源ケーブル接続装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明に係るクランプ式電源ケーブル接続装置は、端縁から内側方向に1つ以上形成されたスリットを各々に備え、互いに接続する2本の電源ケーブルの芯線導体先端部を受け入れるための互いに導通した2つの保持孔を備えた中心導体と、
前記中心導体の周囲を覆って絶縁する本体部と、
前記各々の保持孔を覆うように本体部に出入り自在に装着され、前記芯線導体先端部を前記保持孔に誘導する挿通孔を各々備えた2つのキャップ部とを備えた電源ケーブル接続装置であって、
前記キャップ部の各々は、先端部に向かうに従って縮径する内形状を有し、
前記中心導体のスリットが形成された端縁部の周囲を覆い、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記キャップ部の内部形状に沿って互いに寄り集まる拡径状に分岐した複数のチャック部材と、
前記キャップ部に挿通孔の周を取り巻くように配され、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるガスケット部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明に係るクランプ式電源ケーブル接続装置は、請求項1に記載のキャップ部内で前記ガスケット部材に当接させて出入り方向に移動可能に配されたクランプ部材を更に備え、
前記クランプ部材が、前記内形状として前記チャック部材の先細り状テーパー面に当接するテーパー面凹部を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明に係るクランプ式電源ケーブル接続装置は、請求項1又は2に中心導体が、一方の保持孔を備えたオス導体と、他方の保持孔を備えたメス導体とに分離可能であり、
前記本体部が、前記オス導体の周囲を覆って絶縁するオス本体部と、前記メス導体の周囲を覆って絶縁するメス本体部とに分離可能であり、
前記メス導体は、内部に棒状のオス導体を保持可能な筒状導体を備え、
前記筒状導体は、筒側壁に軸線に沿って並設された複数のスリットを備え、中央部が端部よりも縮径したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明に係るクランプ式電源ケーブル接続装置は、請求項1〜3の何れかに記載の電源ケーブルが、2つ以上の芯線導体とこれら芯線導体を覆うシースとを備え、
前記中心導体が2つ以上前記本体部に備わっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、はんだ付けや圧着工具を使用することなく極めて簡単な作業操作で電源ケーブルの導体を接続することができ、防水性が高く太陽光発電・風力発電・各種装置の電源ケーブル用として使用できる接続装置を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は上半分を切欠いた正面図、b図は左側面図、c図は右側面図である。
【図2】図1のクランプ式電源ケーブル接続装置のケーブル接続の状態を示す断面図である。
【図3】本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の別の実施例の構成を示す説明図であり、ケーブル接続の正面状態を示す断面図である。
【図4】図3のクランプ式電源ケーブル接続装置の説明図であり、a図は図3のオス部材側の上半分を切欠いた正面図、b図はa図のオス部材のメス部材側の側面図、c図は図のメス部材側の上半分を切欠いた正面図、d図はc図のメス部材のオス部材側の側面図である。
【図5】本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の更に別の実施例の構成を示す上半分を切欠いた正面図である。
【図6】図5の接続装置の構成部材の説明図であり、a図は図5のオス部材側の上半分を切欠いた正面図、b図はa図のオス部材のメス部材側の側面図、c図はd図のメス部材のオス部材側の側面図、d図は図5のメス部材側の上半分を切欠いた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、端縁から内側方向に1つ以上形成されたスリットを各々に備え、互いに接続する2本の電源ケーブルの芯線導体先端部を受け入れるための互いに導通した2つの保持孔を備えた中心導体と、前記中心導体の周囲を覆って絶縁する本体部と、前記各々の保持孔を覆うように本体部に出入り自在に装着され、前記芯線導体先端部を前記保持孔に誘導する挿通孔を各々備えた2つのキャップ部とを備えた電源ケーブル接続装置である。
【0015】
この接続装置において、キャップ部の各々は、先端部に向かうに従って縮径する内形状を有し、中心導体のスリットが形成された端縁部の周囲を覆い、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記キャップ部の内部形状に沿って互いに寄り集まる拡径状に分岐した複数のチャック部材と、このキャップ部に挿通孔の周を取り巻くように配され、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるガスケット部材とを備える。
【0016】
本発明の中心導体としては、互いに導通した2つの保持孔を備えたものであればよく、好ましくは、2つの保持孔を同じ方向に並列させてU字状に配したものや2つの保持孔を対向した両端部に備えたもの等が挙げられる。保持孔には端縁から内側方向に1つ以上のスリット、好ましくは2つ以上のスリットを備え、保持孔内に挿入された電源ケーブルの芯線導体先端部を挟持する。
【0017】
本発明のキャップ部としては、芯線導体先端部を保持孔に誘導する挿通孔を備え、保持孔を覆うように本体部に出入り自在となるものであればよい。キャップ部と本体部との出入りはスライドするものであればよいが、キャップ部と本体部とにネジ山を配した螺合による出入りが最も簡略した構造であって、安定している。
【0018】
本発明のキャップ部には、先端部に向かうに従って縮径する内形状を有している。また、中心導体のスリットが形成された端縁部の周囲には、キャップ部の本体部への装着に伴ってこの内部形状に沿って互いに寄り集まる拡径状に分岐した複数のチャック部材と、このキャップ部に挿通孔の周を取り巻くように配され、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるガスケット部材とを備えることにより、キャップ部が本体部に近接するに従い、複数のチャック部材が保持孔内に保持された芯線導体先端部を挟持する。また、ガスケット部材が挿通孔を縮小させて電源ケーブルシースへ押圧することにより、挿通孔からの水の侵入を防止する。
【0019】
本発明のチャック部材は、キャップ部が本体部に近接するに従って、この内形状に沿って互いに寄り集まるように構成されれば良い。また、本発明のガスケット部材はキャップ部の本体部への装着に伴って挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるように構成されればよい。
【0020】
好ましい態様としては、キャップ部内で出入り方向に移動可能に配されたクランプ部材を更に備え、前記キャップ部の先端部に向かうに従って縮径する内形状として、チャック部材の先細り状テーパー面に当接するテーパー面凹部をこのクランプ部材に形成し、このクランプ部材の先端部にガスケット部材を配する。これにより、キャップ部の本体部への装着に伴って、チャック部材による電源ケーブル芯線の挟持と、挿通孔と電源ケーブルシースとの間の防水性の向上とを同時に達成することができる。
【0021】
即ち、キャップ部の本体部への装着に伴って、クランプ部材がガスケット部材に押されながらチャック部材の先細り状テーパー面をクランプ部材のテーパー面凹部で軸心方向に押すことになるため、チャック部材が縮径することによりチャック部材によって電源ケーブル芯線が挟持され、クランプ部材がガスケット部材を圧して膨らみ、挿通孔と電源ケーブルシース間との隙間を埋めて防水性を高める。尚、ガスケット部材の弾性力はキャップ部の本体部への装着によって常に発生するため、常にチャック部材が電源ケーブルの芯線導体を挟持し、挿通孔と電源ケーブルシース間との隙間を埋めるように働く利点もある。
【0022】
本発明の本体部としては、中心導体の周囲を覆って絶縁するものであればよい。好ましい態様としては、中心導体が、一方の保持孔を備えたオス導体と、他方の保持孔を備えたメス導体とに分離可能であり、本体部が、前記オス導体の周囲を覆って絶縁するオス本体部と、前記メス導体の周囲を覆って絶縁するメス本体部とに分離可能であるものが挙げられる。
【0023】
この場合、メス導体は、内部に棒状のオス導体を保持可能な筒状導体を備え、この筒状導体は、筒側壁に軸線に沿って並設された複数のスリットを備え、中央部が端部よりも縮径したものでは、オス導体とメス導体との接触面積が大きくなるため、大電流であっても流すことが可能となる。
【0024】
本発明の接続装置は、2つの保持孔を備えた中心導体を備えるため、少なくとも単芯の電源ケーブル同士を接続することができる。従って、2芯、3芯の電源ケーブル同士を接続するには、接続装置自体を2つ、3つに増やして芯線同士を接続すればよい。好ましい態様としては、1つの接続装置に中心導体が2つ以上前記本体部に備わっているものであれば、2つ以上の芯線導体とこれら芯線導体を覆うシースとを備えた電源ケーブルを1つの接続装置で接続することが可能となる。
【0025】
より具体的には、端縁から内側方向に1つ以上形成されたスリットを各々に備え、互いに接続する2本の電源ケーブルの芯線導体先端部を受け入れるための互いに導通した2つの保持孔を備えた2つ以上の中心導体と、これら2つ以上の中心導体を並列に並べられた周囲を覆って絶縁する本体部と、各々の保持孔を覆うように本体部に出入り自在に装着され、2つ以上の前記芯線導体をシースで覆った電源ケーブルが挿通する挿通孔を各々備えた2つのキャップ部とを備えた電源ケーブル接続装置であって、
前記2つ以上の中心導体の保持孔のスリットが形成された端縁部の各々にその周囲を覆って先端肩部に先細り状テーパー面が形成された互いに拡縮径可能に複数分岐したチャック部材と、
これらチャック部材の各々に各々の先細り状テーパー面に当接可能なテーパー面凹部を備えたクランプ部材と、
これらクランプ部材の内、1つのキャップ部内のクランプ部材同士を保持する連結板と、
前記キャップ部に挿通孔の周を取り巻いて配されたガスケット部材と、
前記連結板とガスケット部材との間に配置され、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記ガスケット部材を前記挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧する連結部材とを備える。
【実施例】
【0026】
図1は本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は上半分を切欠いた正面図、b図は左側面図、c図は右側面図である。図2は図1のクランプ式電源ケーブル接続装置のケーブル接続の状態を示す断面図である。図に示す通り、本実施例の接続装置10は、電源ケーブル28の芯線導体29の先端部を受け入れる2つの保持孔12を左右の端部に備えた中心導体11を絶縁性の硬質プラスチック製の本体部13に備える。
【0027】
中心導体11には、保持孔12の端縁から各々内側方向に十字方向に4本のスリット14を各々備える。保持孔12の周囲にはチャック部材15が本体部13から延設されている。チャック部材15は先端肩部に先細り状テーパー面16が形成され、保持孔12と同様に十字方向に4本のスリット17によって互いに拡縮径可能に複数分岐している。
【0028】
本体部13の両端には、各々キャップ部18が螺合される。尚、本体部13とキャップ部18とはOリング23によって防水性を持たせている。キャップ部18は本体部13と同様に絶縁性の硬質プラスチックからできている。キャップ部18の先端部には電源ケーブル28が挿通する挿通孔19が形成され、挿通孔19の内部にはガスケット部材20が電源ケーブル28の外周を取り巻くように配されている。
【0029】
ガスケット部材20の本体部13側には、クランプ部材21がキャップ部18内で出入り方向に移動可能に配されている。このクランプ部材21は、キャップ部18の先端部に向かうに従って縮径する内形状として、チャック部材15の先細り状テーパー面16に当接するテーパー面凹部22を備えている。
【0030】
これにより、キャップ部18の本体部13への螺入により、クランプ部材21がガスケット部材20に押されながらチャック部材15の先細り状テーパー面16をクランプ部材21のテーパー面凹部22で軸心方向に押す。これによりチャック部材15が縮径することによりチャック部材15によって電源ケーブルの芯線導体29が挟持され、クランプ部材21がガスケット部材20を圧して膨らみ、挿通孔19と電源ケーブルシース間との隙間を埋めて防水性を高める。
【0031】
尚、ガスケット部材20の弾性力はキャップ部18の本体部13への装着によって常に発生するため、常にチャック部材15が電源ケーブル28の芯線導体29を挟持し、挿通孔19と電源ケーブルシース間との隙間を埋めるように働く利点もある。また、クランプ部材21は、先端縁から内側方向に1つ以上のスリットを備え、先端から後端に掛けて拡径状の外観を備えさせるように構成しても良い。この場合、クランプ部材21に外方向に力が加わると、先端部がガスケット部材20を圧すると同時に、先端縁のスリットによって縮径してガスケット部材20と共に挿入されたケーブルのシースを固定する働きも有する。
【0032】
図3は本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の別の実施例の構成を示す説明図であり、ケーブル接続の正面状態を示す断面図である。図4は図3のクランプ式電源ケーブル接続装置の説明図であり、a図は図3のオス部材側の上半分を切欠いた正面図、b図はa図のオス部材のメス部材側の側面図、c図は図3のメス部材側の上半分を切欠いた正面図、d図はc図のメス部材のオス部材側の側面図である。
【0033】
図に示す通り、本実施例の接続装置30においても、電源ケーブル48の芯線導体49の先端部を受け入れる2つの保持孔32を左右の端部に備えた中心導体31を絶縁性の硬質プラスチック製の本体部33に備える。本体部33はその中央で2つの本体部33a、33bに分割可能となっており、本体部33に備わった中心導体31についても、2つの中心導体31a、31bに分割可能となっている。
【0034】
図4に示す通り、オス本体部33aは、棒状のオス導体31aを備え、導体部が表面に表れないように、オス導体31aの先端には絶縁樹脂31cが装着されると共にオス導体31aの周囲を覆うようにオス本体部33aが筒状に構成されている。メス本体部33bは、筒状のメス導体31bを備え、導体部が表面に表れないように、筒状のメス導体の外周を覆うようにメス本体部33bが筒状に構成されている。
【0035】
また、図4のc図に示す通り、筒状のメス導体31bは、筒側壁に軸線に沿って並設された複数のスリット31dを備え、その中央部が端部よりも縮径している。これにより、オス導体31aをメス導体31bに挿入させた場合には、オス導体31aとメス導体31bとの接触面積が大きくなるため、大電流であっても流すことが可能となる。
【0036】
尚、オス本体部33aとメス本体部33bとは、メス本体部33bからオス本体部33a方向に延設された一組のフック部44bをオス本体部33aの掛止孔44aに掛止させることによって一体となる。また、両者の防水性はメス本体部33bに装着されたOリング45で確保される。
【0037】
中心導体31には、保持孔32の端縁から各々内側方向に十字方向に4本のスリット34を各々備える。保持孔32の周囲にはチャック部材35が本体部33から延設されている。チャック部材35は先端肩部に先細り状テーパー面36が形成され、保持孔32と同様に十字方向に4本のスリット(図示せず)によって互いに拡縮径可能に複数分岐している。
【0038】
本体部33の両端には、各々キャップ部38が螺合される。尚、本体部33とキャップ部38とはOリング43によって防水性を持たせている。キャップ部38は本体部33と同様に絶縁性の硬質プラスチックからできている。キャップ部38の先端部には電源ケーブル48が挿通する挿通孔39が形成され、挿通孔39の内部にはガスケット部材40が電源ケーブル48の外周を取り巻くように配されている。
【0039】
ガスケット部材40の本体部33側には、クランプ部材41がキャップ部38内で出入り方向に移動可能に配されている。このクランプ部材41は、キャップ部38の先端部に向かうに従って縮径する内形状として、チャック部材35の先細り状テーパー面36に当接するテーパー面凹部42を備えている。
【0040】
これにより、キャップ部38の本体部33への螺入により、クランプ部材41がガスケット部材40に押されながらチャック部材35の先細り状テーパー面36をクランプ部材41のテーパー面凹部42で軸心方向に押す。これによりチャック部材35が縮径することによりチャック部材35によって電源ケーブルの芯線導体49が挟持され、クランプ部材41がガスケット部材40を圧して膨らみ、挿通孔39と電源ケーブルシース間との隙間を埋めて防水性を高める。尚、クランプ部材41は、先端縁から内側方向に1つ以上のスリットを備え、先端から後端に掛けて拡径状の外観を備えさせるように構成しても良い。この場合、クランプ部材41に外方向に力が加わると、先端部がガスケット部材40を圧すると同時に、先端縁のスリットによって縮径してガスケット部材40と共に挿入されたケーブルのシースを固定する働きも有する。
【0041】
図5は本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置の更に別の実施例の構成を示す上半分を切欠いた正面図である。図6は図5の接続装置の構成部材の説明図であり、a図は図5のオス部材側の上半分を切欠いた正面図、b図はa図のオス部材のメス部材側の側面図、c図はd図のメス部材のオス部材側の側面図、d図は図6のメス部材側の上半分を切欠いた正面図である。
【0042】
図に示す通り、本実施例の接続装置50においては、3芯の電源ケーブル68の各芯線導体69の先端部を受け入れる3つの保持孔52を各々左右の端部に備えた中心導体51を絶縁性の硬質プラスチック製の本体部53に備える。本体部53はその中央で2つの本体部53a、53bに分割可能となっており、本体部53に備わった中心導体51についても、2つの中心導体51a、51bに分割可能となっている。
【0043】
図6に示す通り、オス本体部53aは、3つの棒状のオス導体51aを備え、各々の導体部が表面に表れないように、オス導体51aの先端には絶縁樹脂51cが装着されると共にオス導体51aの周囲を覆うようにオス本体部53aが筒状に構成されている。メス本体部53bは、前述の3つのオス導体51aの対向位置に3つの筒状のメス導体51bを備え、導体部が表面に表れないように、3つの筒状のメス導体51bの外周の各々を覆うようにメス本体部53bに筒が形成されている。
【0044】
また、図6のd図に示す通り、3つの筒状のメス導体51bの各々には、筒側壁に軸線に沿って並設された複数のスリット51dが備わり、その中央部が端部よりも縮径している。これにより、オス導体51aをメス導体51bに挿入させた場合には、オス導体51aとメス導体51bとの接触面積が大きくなるため、大電流であっても流すことが可能となる。
【0045】
尚、オス本体部53aとメス本体部53bとは、メス本体部53bからオス本体部53a方向に延設された一組のフック部64bをオス本体部53aの掛止孔64aに掛止させることによって一体となる。また、両者の防水性はメス本体部53bに装着されたOリング65で確保される。
【0046】
中心導体51には、保持孔52の端縁から各々内側方向に十字方向に4本のスリット54を各々備える。保持孔52の周囲にはチャック部材55が本体部53から延設されている。チャック部材55は先端肩部に先細り状テーパー面56が形成され、保持孔52と同様に十字方向に4本のスリット(図示せず)によって互いに拡縮径可能に複数分岐している。
【0047】
本体部53の両端には、各々キャップ部58が螺合される。尚、本体部53とキャップ部58とはOリング63によって防水性を持たせている。キャップ部58は本体部53と同様に絶縁性の硬質プラスチックからできている。キャップ部58の先端部には電源ケーブル68が挿通する挿通孔59が形成され、挿通孔59の内部にはガスケット部材60が電源ケーブル68の外周を取り巻くように配されている。
【0048】
ガスケット部材60の本体部53側には、3つのチャック部材55の先細り状テーパ面56に当接するテーパー面凹部62を備えた3つのクランプ部材61と、これら3つのクランプ部材61同士を保持する連結板66と、この連結板66に一端を当接する第1連結部材67aと、この第1連結部材67aに一端を当接しガスケット部材60に他端を当接する第2連結部材67bとを備え、クランプ部材61のキャップ部58内での移動が順にガスケット部材60に伝達されることになる。
【0049】
即ち、クランプ部材61は、キャップ部58の先端部に向かうに従って縮径する内形状として、チャック部材55の先細り状テーパー面56に当接するテーパー面凹部62を備えている。キャップ部58の本体部53への螺入により、クランプ部材61の移動が、連結板66から第1連結部材67aに、この第1連結部材67aから第2連結部材67bに伝えられ、第2連結部材67bがガスケット部材60を押さえ付ける。尚、第2連結部材67bは、先端縁から内側方向に1つ以上のスリットを備え、第1連結部材67aから外方向に力が加わると、先端部がガスケット部材60を圧すると同時に、先端縁のスリットによって縮径してガスケット部材60と共に挿入されたケーブルのシースを固定する働きも有する。
【0050】
また、チャック部材55の先細り状テーパー面56をクランプ部材61のテーパー面凹部62で軸心方向に押す。これによりチャック部材55が縮径することによりチャック部材55によって電源ケーブルの芯線導体69が挟持され、クランプ部材61の移動が結果的にガスケット部材60を圧して膨らみ、挿通孔59と電源ケーブルシース間との隙間を埋めて防水性を高める。
【0051】
以上のように、本発明のクランプ式電源ケーブル接続装置は次のような効果を奏する。
(1) はんだ付けや圧着工具が不要である。
(2) 防水型で気密性が取れているため屋外や粉塵等の多い工場内の電源ケーブル用として最適である。
(3) 接続装置の外観は耐侯性・絶縁性の優れた樹脂を使用することができるため軽量で広い環境対応性と安全性を持つ。
(4) 中心導体が分割可能な接続装置では、接触抵抗が低いため大電流を流す事ができる。
(5) 中心導体が分割可能な接続装置では、絶縁樹脂等により、未接続状態でも容易に中心導体に触れることができないため、感電や機器接触によるショート事故等を未然に防止できる。
【符号の説明】
【0052】
10、30、50…接続装置、
11、31、51…中心導体、
31a、51a…オス導体、
31b、51b…メス導体、
31c、51c…絶縁樹脂、
31d、51d…スリット、
12、32、52…保持孔、
13、33、53…本体部、
33a、53a…オス本体部、
33b、53b…メス本体部、
14、34、54…スリット、
15、35、55…チャック部材、
16、36、56…先細り状テーパー面、
17 …スリット、
18、38、58…キャップ部、
19、39、59…挿通孔、
20、40、60…ガスケット部材、
21、41、61…クランプ部材、
22、42、62…テーパー面凹部、
23、43、63…Oリング、
44a、64a…掛止孔、
44b、64b…フック部、
45、65…Oリング、
66…連結板、
67a…第1連結部材、
67b…第2連結部材、
28、48、68…電源ケーブル、
29、49、69…芯線導体、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端縁から内側方向に1つ以上形成されたスリットを各々に備え、互いに接続する2本の電源ケーブルの芯線導体先端部を受け入れるための互いに導通した2つの保持孔を備えた中心導体と、
前記中心導体の周囲を覆って絶縁する本体部と、
前記各々の保持孔を覆うように本体部に出入り自在に装着され、前記芯線導体先端部を前記保持孔に誘導する挿通孔を各々備えた2つのキャップ部とを備えた電源ケーブル接続装置であって、
前記キャップ部の各々は、先端部に向かうに従って縮径する内形状を有し、
前記中心導体のスリットが形成された端縁部の周囲を覆い、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記キャップ部の内部形状に沿って互いに寄り集まる拡径状に分岐した複数のチャック部材と、
前記キャップ部に挿通孔の周を取り巻くように配され、前記キャップ部の本体部への装着に伴って前記挿通孔を挿通する電源ケーブルシースへ押圧されるガスケット部材とを備えたことを特徴とするクランプ式電源ケーブル接続装置。
【請求項2】
前記キャップ部内で前記ガスケット部材に当接させて出入り方向に移動可能に配されたクランプ部材を更に備え、
前記クランプ部材が、前記内形状として前記チャック部材の先細り状テーパー面に当接するテーパー面凹部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ式電源ケーブル接続装置。
【請求項3】
前記中心導体が、一方の保持孔を備えたオス導体と、他方の保持孔を備えたメス導体とに分離可能であり、
前記本体部が、前記オス導体の周囲を覆って絶縁するオス本体部と、前記メス導体の周囲を覆って絶縁するメス本体部とに分離可能であり、
前記メス導体は、内部に棒状のオス導体を保持可能な筒状導体を備え、
前記筒状導体は、筒側壁に軸線に沿って並設された複数のスリットを備え、中央部が端部よりも縮径したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ式電源ケーブル接続装置。
【請求項4】
前記電源ケーブルが、2つ以上の芯線導体とこれら芯線導体を覆うシースとを備え、
前記中心導体が2つ以上前記本体部に備わっていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のクランプ式電源ケーブル接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250988(P2010−250988A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96632(P2009−96632)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(594043063)株式会社木村電気工業 (4)
【Fターム(参考)】