説明

クランプ

【課題】管状部材における外径のバラツキが公差の範囲内であれば、保持部に対する管状部材の半嵌合や隙間によるガタツキを解消する。
【解決手段】クランプ10において、管状部材30を把持するための保持部14には、管状部材の外周面の一部を支持する受承面16と、この受承面に対向して管状部材の外周面を押える弾性アーム20とが設けられている。弾性アーム20は、管状部材30が受承面16に向けて押込まれるときに退避位置P2に作動し、該管状部材が通過した後に元位置P1に復帰する。弾性アーム20が退避位置から元位置に復帰するときの先端部20bの作動軌跡Lが、受承面で支持された管状部材が公差内の最大径であっても、その外周面に干渉しないように設定されている。弾性アームが元位置P1に復帰したときの弾性アーム20の係止突起22が、受承面で支持された管状部材公差内の最小径であっても、その外周面に干渉するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パイプ等の管状部材を車両ボデー等の相手箇所に配管する際に、管状部材を把持した状態で相手箇所に取付けられるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプについては、例えば特許文献1に開示された構成のものが既に知られている。このクランプは、車両用燃料タンク等の相手部材に固定することができるとともに、燃料パイプ等の管状部材を把持するための保持部が設けられている。この保持部は、管状部材の外周面を支持する円弧曲面状の受承面と、この受承面に支持された管状部材の外周面を押える弾性アームとを備えている。そして、弾性アームは、管状部材が受承面に向けて押込まれるときに該管状部材の干渉によって弾性変形する。つまり、弾性アームは管状部材を通過させるための退避位置に作動した後、元位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、保持部における受承面と弾性アームの先端部との間の距離は、管状部材の外径の公差を考慮して公差内の最大径に合わせている。これにより、受承面に向けて押込まれる管状部材が通過した後は、弾性アームを元位置へ適正に復帰させ、保持部に対する管状部材の半嵌合を避けている。しかしながら、管状部材の外径が公差内で最小径の場合には、受承面で支持された管状部材の外周面と弾性アームの先端部との間に隙間が生じ、管状部材にガタツキが生じる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、管状部材における外径のバラツキが公差の範囲内であれば、保持部に対する管状部材の半嵌合や隙間によるガタツキを解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、車両ボデー等の相手部材に取付けるための結合部と、相手部材に配管される金属パイプ等の管状部材を把持するための保持部とを備えたクランプであって、保持部には、管状部材の外周面の一部を支持する受承面と、この受承面に対向して位置する先端部によって管状部材の外周面を押える弾性アームとが設けられている。弾性アームは、管状部材が受承面に向けて押込まれるときに該管状部材の干渉によって退避位置に作動し、該管状部材が通過した後に元位置に復帰する作動が可能である。また、この弾性アームの先端部に係止突起が設けられている。
弾性アームが退避位置から元位置に復帰するときの先端部の作動軌跡が、受承面で支持された管状部材の外径が公差内の最大径であっても該管状部材の外周面に干渉しないように設定されている。そして、弾性アームが元位置に復帰したときの係止突起が、受承面で支持された管状部材の外径が公差内の最小径であっても該管状部材の外周面に干渉するように設定されている。
【0007】
この構成によれば、管状部材の外径が公差内で最大径であっても弾性アームは管状部材を受承面に向けて通過させた後、元位置に適正に復帰でき、また管状部材の外径が公差内で最小径であっても弾性アームの係止突起が管状部材の外周面に干渉して保持部と管状部材との間に隙間が生じるのを防止できる。したがって、管状部材における外径のバラツキが公差の範囲内であれば、保持部に対する管状部材の把持が不完全な半嵌合や隙間によるガタツキを解消して管状部材の安定した把持が可能になる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、弾性アームがその基部を支点とする回動によって元位置と退避位置との間を作動するように構成され、弾性アームが退避位置から元位置に回動するときの先端部の後方側に係止突起が設けられている。
これにより、弾性アームが退避位置から元位置に復帰するまでは先端部の係止突起が管状部材の外周面に干渉するのを防止でき、管状部材の半嵌合をより確実に解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クランプを表した斜視図。
【図2】クランプを表した正面図。
【図3】クランプの保持部に管状部材を押込んでいる途中を表した部分拡大図。
【図4】クランプの保持部に管状部材を嵌合させた状態を表した部分拡大図。
【図5】図4の一部を表した部分拡大図。
【図6】クランプにおける形状の変更例を表した部分拡大図。
【図7】クランプにおける形状の変更例を表した部分拡大図。
【図8】一般的なクランプの構成を表した部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
クランプ10は樹脂による一体成形品であり、図1および図2で示す構造に設定されている。このクランプ10の構成は、一つの結合部12と、その左側に1個、右側に2個の計3個の保持部14とに大別される。結合部12に対しては、車両ボデー等の相手部材に固定されたスタッドボルト等(図示省略)の挿通が可能であり、それによってクランプ10が相手部材に取付けられる。また、各保持部14は相手部材に配管される金属パイプ等の管状部材30をそれぞれ個別に把持することができる。
【0011】
クランプ10の結合部12は、スタッドボルト等が例えば図1の背面側から挿入されることにより、結合部12内の爪がスタッドボルト等の凹凸に係合して相互に抜け止めされた状態になる。クランプ10の各保持部14は、個々の上部が開放されているとともに、結合部12の両側において並列状に配置されている。各保持部14に、それぞれの開放部から管状部材30を押込んで嵌合させることにより、個々の管状部材30を平行状態で把持することができる。
なお、各保持部14は個々に外径の異なる管状部材30を対象としている。しかし、それぞれの構成は基本的に同じであるので、以下は結合部12の左側に位置する一つの保持部14について具体的な構成を説明する。
【0012】
保持部14は、管状部材30の外周面の一部を支持する受承面16と、クランプ10の壁部18から受承面16に向けて延びた弾性アーム20とを備えている。受承面16は、保持部14の開放部から押込まれる管状部材30を受け止めるように位置しているとともに、管状部材30の外径とほぼ同一の曲率半径の円弧面で構成されている。一方、弾性アーム20は、その基部20aにおいてクランプ10の壁部18と一体に結合されている。この弾性アーム20は、壁部18に対して樹脂の弾性によって撓むことができ、その基部20aを支点として回動することができる(図3および図4)。
弾性アーム20の先端部20bは、受承面16で支持された管状部材30の外周面を該受承面16と対向する側から押える部分であり、他の部分よりも幅が広くなっている。また、先端部20bにおける図3あるいは図4の左側には、受承面16の側へ突出した係止突起22が設けられている。
【0013】
保持部14の開放部から受承面16に向けて管状部材30が押込まれると、弾性アーム20は管状部材30の干渉を受けて図3で示すように押し撓められる。そして、管状部材30が弾性アーム20を通過すると、該弾性アーム20は図4で示すように復帰する。すなわち、弾性アーム20は管状部材30の干渉を受けることによって図5の仮想線で示す退避位置P2に移動した後、管状部材30の干渉がなくなることで図5の実線で示す元位置P1に復帰する。弾性アーム20が元位置P1にあるとき、受承面16で支持されている管状部材30の外周面に先端部20bの係止突起22が干渉している。
係止突起22は、弾性アーム20が退避位置P2から元位置P1に回動するときの先端部20bの後方側に位置している。したがって、このときの弾性アーム20の回動途中において係止突起22が管状部材30の外周面に干渉することはない。
【0014】
管状部材30の外径には公差があり、例えば図8で示す従前のクランプ110では、つぎの理由によって弾性アーム120のアーム長Sを、公差内で最大径の管状部材30に合わせて設計している。仮に、アーム長Sを公差内で最小径の管状部材30に合わせたものとすると、管状部材30が最大径の場合に、弾性アーム120が図5の退避位置P2に相当する位置から元位置P1に相当する位置に向けて移動するとき、その途中で弾性アーム120の先端が管状部材30の外周に当たってそれ以上は戻れない。この結果、保持部114における管状部材30の把持が不完全となり、いわゆる半嵌合状態になる。
そこで、上述のように弾性アーム120のアーム長Sを公差内で最大径の管状部材30に合わせて設計しているのであるが、管状部材30が最小径の場合には、図8で示すように弾性アーム120の先端と管状部材30の外周との間に隙間が生じ、保持部114に対して管状部材30がガタツキを起こす。
【0015】
本実施の形態におけるクランプ10では、弾性アーム20が図5で示す退避位置P2から元位置P1に向かって移動するときの作動軌跡Lが、受承面16で支持されている管状部材30の外径が公差内で最大径であっても、その外周面に干渉しないように設定されている。そして、弾性アーム20が元位置P1に復帰したときの係止突起22は、管状部材30の外径が公差内で最小径であっても、その外周面に干渉するように設定されている。したがって、管状部材30の外径が公差の範囲内にあれば、保持部14における管状部材30の半嵌合や隙間によるガタツキを解消することができる。
なお、図5で示す弾性アーム20の「元位置P1」は、係止突起22が管状部材30の外周に干渉して弾性アーム20の復帰動作が止まった位置である。したがって、厳密には図1あるいは図2で示す弾性アーム20のフリー位置と「元位置P1」とは多少異なるとともに、「元位置P1」は管状部材30の外径の公差によっても変化する。しかし、弾性アーム20の「元位置P1」と、図1あるいは図2のフリー位置との差は極めて小さいものと言える。
【0016】
以上は本発明を実施するための最良の形態を説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば図6で示す弾性アーム20の係止突起22は、管状部材30の外周面に干渉したときに弾性変形する形状に設定されている。また、図7で示す弾性アーム20の先端部20bには肉抜き部24が設けられ、係止突起22を含む先端部20b全体が弾性変形するようになっている。これらの形状により、係止突起22を干渉させた状態での管状部材30のガタツキを、あらに効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0017】
10 クランプ
12 結合部
14 保持部
16 受承面
20a 基部
20b 先端部
20 弾性アーム
22 係止突起
30 管状部材
L 作動軌跡
P1 元位置
P2 退避位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデー等の相手部材に取付けるための結合部と、相手部材に配管される金属パイプ等の管状部材を把持するための保持部とを備えたクランプであって、
保持部には、管状部材の外周面の一部を支持する受承面と、この受承面に対向して位置する先端部によって管状部材の外周面を押える弾性アームとが設けられ、弾性アームは、管状部材が受承面に向けて押込まれるときに該管状部材の干渉によって退避位置に作動し、該管状部材が通過した後に元位置に復帰する作動が可能であるとともに、この弾性アームの先端部に係止突起が設けられ、弾性アームが退避位置から元位置に復帰するときの先端部の作動軌跡が、受承面で支持された管状部材の外径が公差内の最大径であっても該管状部材の外周面に干渉しないように設定され、弾性アームが元位置に復帰したときの係止突起が、受承面で支持された管状部材の外径が公差内の最小径であっても該管状部材の外周面に干渉するように設定されているクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたクランプであって、
弾性アームがその基部を支点とする回動によって元位置と退避位置との間を作動するように構成され、弾性アームが退避位置から元位置に回動するときの先端部の後方側に係止突起が設けられているクランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169358(P2011−169358A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32097(P2010−32097)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】