説明

クリア層形成用インク組成物及びその塗布方法並びにそれを用いた印刷物

【課題】基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、オーバーコート特性や重ね塗り性にも優れたクリア層形成用インク組成物及びその塗布方法、並びにそれを用いて形成された印刷物を提供する。
【解決手段】本発明は、基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜が形成された印刷物に対して、少なくとも1層のクリア層を形成するために用いるクリア層形成用インク組成物であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね塗り性に優れたクリア層形成用インク組成物、詳しくは、記録媒体上にインクジェットインクを用いて形成された文字、マーク、模様、図柄などの画像を被覆するためのクリア層に好適に用いられる、重ね塗り性に優れたエネルギー線硬化型クリア層形成用インク組成物、及びその塗布方法、並びにそれを用いて形成された印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
記録層の耐擦傷性の向上や光沢を付与するために、記録層上にクリア層をオーバーコート(ベタ塗り)することが行なわれている。この場合、クリア層に要求される特性としては、光沢性(濡れ性)、ハードコート性(硬度)、無黄変性(無変色性、透明性)などがある。
【0003】
近年、記録層の意匠性をさらに高めるために、記録層(印字)部分のみにクリア層を形成して光沢を付与し、又は記録層(印字)部分のみにクリア層を重ね塗りして厚盛りを形成し、立体感を付与することによって、高画質を演出することが求められている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には、エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いて、被記録部材に印刷塗膜を形成後、該塗膜の上にエネルギー線硬化型インクジェット用クリアインク組成物を用いてクリア塗膜を形成するエネルギー線硬化型インク組成物の重ね塗り方法において、下層に塗布するエネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の表面張力の好ましい範囲を規定し、上層に塗布するエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物の表面張力との間にも特定の関係を規定することにより、重ね塗り性に優れたエネルギー線硬化型インク組成物の重ね塗り方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、基材上に反射性金属粒子を含む第一インクジェットインクを適用して反射層を設け、その上に第二インクジェットインクを適用して保護層を設ける印刷システム、及びその際に基材および反射層に対する保護層形成用インクジェットインクの接触角の関係を規定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−181801号公報
【特許文献2】特表2009−507692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、未だクリア層の十分な重ね塗り性を得ることはできなかった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、オーバーコート特性や重ね塗り性にも優れたクリア層形成用インク組成物及びその塗布方法、並びにそれを用いて形成された印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下に記載する手段により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕 基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜が形成された印刷物に対して、少なくとも1層のクリア層を形成するために用いるクリア層形成用インク組成物であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物。
〔2〕 重合性化合物と光重合開始剤と表面張力調整剤とを含む、〔1〕に記載のクリア層形成用インク組成物。
〔3〕 表面張力調整剤は、シリコーン化合物を含む〔2〕に記載のクリア層形成用インク組成物。
〔4〕 シリコーン化合物は、分子内にエチレン性二重結合を有する〔3〕に記載のクリア層形成用インク組成物。
〔5〕 光重合開始剤は、少なくともアシルホスフィンオキサイド化合物を含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物を用いて形成されたクリア層を有することを特徴とする印刷物。
〔7〕 クリア層形成用インク組成物の硬化物の表面自由エネルギーは、40〜43.4(mJ/m)である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物。
〔8〕 基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜を形成して得た印刷物に対して、クリア層形成用インク組成物を用いて、少なくとも1層のクリア層を形成するクリア層形成用インク組成物の塗布方法であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物の塗布方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、記録層上にクリア層をベタ塗りする場合のオーバーコート特性のみならず重ね塗り性にも優れたクリア層形成用インク組成物を得ることができる。
また、本発明によるクリア層形成用インク組成物を用いて重ね塗りを行い、画像上の特定位置を盛り上げて立体感を持たせ、もしくは模様を形成することによって、印刷物に優れた意匠性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のクリア層形成用インク組成物を重ね塗りして2層のクリア層を形成して得た印刷物の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜が形成された印刷物に対して、少なくとも1層のクリア層を形成するために用いるクリア層形成用インク組成物であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とする。かかる特徴を備えることにより、基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、重ね塗り性にも優れたクリア層形成用インク組成物を得ることができる。
【0012】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、通常、エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いて、基材に対して直接、または基材上に記録層としての印刷塗膜が形成された印刷物に対して、少なくとも1層のクリア層を形成するために用いられる。
本発明における基材は、その表面自由エネルギーが30〜45(mJ/m)であることが、とりわけ記録層の印刷性の点で重要である。また、表面自由エネルギーが低くなると、記録層を形成する際にインクがはじかれて、ドット径が安定しなくなる傾向にあり、この点から、表面自由エネルギーは、好ましくは31(mJ/m)以上、より好ましくは33(mJ/m)以上であることが望ましい。一方、表面自由エネルギーが高くなると、記録用インクのドットが広がりすぎて、にじみが生じる傾向にあり、この点から、表面自由エネルギーは、好ましくは43(mJ/m)以下、より好ましくは41(mJ/m)以下であることが望ましい。
【0013】
上記範囲の表面自由エネルギーを有する基材としては、例えばコロナ放電処理ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)が挙げられる。基材の表面自由エネルギーは、基材として使用する材料の選択のみならず、その表面処理や接着処理の有無などによっても変化する。従って、実際に使用する個別の基材について、その表面自由エネルギーを具体的に把握すべきである。本発明において、表面自由エネルギーは、例えば純水を用いてその基材の接触角を測定し、その接触角からASTM D5946モデル表面エネルギー変換チャートに従って表面自由エネルギーを求める(0017段落と同じ)などの方法によって測定することができる。
【0014】
基材の表面処理や接着処理の方法としては、例えば紫外線オゾン処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの処理を施すと、通常、表面自由エネルギーを高くする作用がある。
【0015】
本発明における記録層は、その表面自由エネルギーが40〜50(mJ/m)であると、とりわけ前記記録層上に良好にクリア層を形成させる点で重要である。また、表面自由エネルギーが低くなると、記録層上に形成すべきクリアインクがはじかれて、レベリング性が低下して光沢が出なくなる傾向にあり、この点から、表面自由エネルギーは、好ましくは40.5(mJ/m)以上、より好ましくは41.0(mJ/m)以上であることが望ましい。一方、表面自由エネルギーが高くなると、記録用インクのドットが広がりすぎて、重ね塗りが困難になる傾向にあり、この点から、表面自由エネルギーは、好ましくは46(mJ/m)以下、より好ましくは45(mJ/m)以下であることが望ましい。
【0016】
記録層の表面自由エネルギーは、記録層を形成するために通常使用するエネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物に含まれ得る着色剤、重合性化合物、及び表面張力調整剤の種類や添加量などを適宜選択することによって、制御することができる。とりわけ、表面張力調整剤の種類や添加量などの適切な選択が、記録層の表面自由エネルギーを所定値に制御するために有効である。
【0017】
基材上に形成した記録層としての印刷塗膜は、通常の方法に従って硬化した後に、硬化物の表面自由エネルギーを具体的に把握すべきである。本発明において、表面自由エネルギーは、例えば純水を用い測定して得た接触角からASTM D5946 モデル 表面エネルギー変換チャートに従って表面自由エネルギーを算出するなどの方法によって測定することができる。
【0018】
上記着色剤としては、従来公知の各種染料を使用してもよいが、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれかまたは両方を使用することが好ましい。
【0019】
無機顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0020】
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子なども有機顔料として用いてもよい。
【0021】
シアン色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
【0022】
マゼンタ色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
イエロー色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14C、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー213、及びC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
ブラック色を有する顔料としては、具体的には、例えば、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;キャボット社製のモナーク、リーガル;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;東海カーボン社製のトーカブラック;コロンビア社製のラヴェンなどが挙げられる。これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、HCF#2600、HCF#2350、HCF#2300、MCF#1000、MCF#980、MCF#970、MCF#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、及びデグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、プリンテックス85、プリンテックス75、プリンテックス55、プリンテックス45からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
インク組成物中の着色材の含有量は、無機機顔料の場合、組成物全体に対して5〜20質量%が好ましく、7〜18質量%がより好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。有機顔料の場合、組成物全体に対して1〜10質量%が好ましく、1.5〜7質量%がより好ましく、2〜6質量%が最も好ましい。またカーボンブラック顔料の場合、組成物全体に対して1〜10質量%が好ましく、1.5〜7質量%がより好ましく、2〜6質量%が最も好ましい。着色材の含有量が少なすぎると、画像の着色力が低下する傾向がある。一方、着色材の含有量が多すぎると、インク組成物の粘度が上昇し、流動性が損なわれやすい。
【0026】
着色材として顔料が用いられる場合、顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体や顔料分散剤をさらに使用してもよい。顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ジアルキルアミノアルキル基を有する顔料誘導体、ジアルキルアミノアルキルスルホン酸アミド基を有する顔料誘導体などが挙げられる。顔料分散剤としては、具体的には、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。インク組成物中の顔料誘導体及び顔料分散剤の含有量はそれぞれ、組成物全体に対して、0.05〜5質量%が好ましい。
【0027】
インク組成物の調製方法としては、従来公知の調製方法を使用できるが、着色材として顔料を用いる場合、以下の調製方法が好ましい。
まず、着色材と、重合性化合物の一部と、必要により顔料分散剤とをプレミックスした混合物を調製し、この混合物を分散機により分散させて、一次分散体を調製する。分散機としては、具体的には、例えば、ディスパ;ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミルなどが挙げられる。
【0028】
次に、一次分散体に、残りの重合性化合物と、光重合開始剤と、必要により他の添加剤とを添加し、撹拌機を用いて均一に混合する。撹拌機としては、具体的には、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いて、インク組成物を混合してもよい。さらに、インク組成物中の粒子をより微細化する目的でビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて、インク組成物を混合してもよい。
【0029】
着色材として顔料を使用する場合、インク組成物中の顔料粒子の分散平均粒子径は20〜200nmが好ましく、50〜160nmがより好ましい。分散平均粒子径が小さ過ぎると粒子が細かいために印刷物の耐候性が低下する傾向がある。一方、分散平均粒子径が大き過ぎると200nmを超えると印刷物の精細さが低下する傾向がある。
【0030】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、通常、重合性化合物と光重合開始剤と表面張力調整剤とを含む。
重合性化合物としては、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個又は2個以上有する単官能モノマー又は多官能モノマーを用いることができる。
【0031】
上記分子内にエチレン性二重結合を1個有する単官能モノマーとしては、例えばアミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、及びこれらにリンやフッ素などの官能基が付与された(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートを用いることが、低粘度、低臭気の点で好ましい。
【0032】
分子内にエチレン性二重結合を2個有する多官能モノマーとしては、例えば、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートを用いることが、低粘度、高反応性の点で好ましい。
【0033】
分子内にエチレン性二重結合を3個有する多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが、低粘度、高反応性の点で好ましい。
【0034】
分子内にエチレン性二重結合を4個有する多官能モノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを用いることが、低粘度、高反応性の点で好ましい。
【0035】
分子内にエチレン性二重結合を5個有する多官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートを用いることが、高反応性の点で好ましい。
【0036】
分子内にエチレン性二重結合を6個有する多官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いることが、高反応性の点で好ましい。
【0037】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、重合性化合物として、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記モノマー以外の他の重合性化合物を併用することも可能である。このような他の重合性化合物としては、エチレン性二重結合含有化合物であれば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー等、特に制限なく使用できる。
【0038】
重合性化合物として、オリゴマーまたはプレポリマーをさらに含有してもよい。このようなオリゴマーまたはプレポリマーとしては、具体的には、例えば、ダイセルUCB社製のEbecryl230、Ebecryl244、Ebecryl245、Ebecryl270、Ebecryl280/15IB、Ebecryl284、Ebecryl285、Ebecryl4830、Ebecryl4835、Ebecryl4858、Ebecryl4883、Ebecryl8402、Ebecryl8803、Ebecryl8800、Ebecryl254、Ebecryl264、Ebecryl265、Ebecryl294/35HD、Ebecryl1259、Ebecryl1264、Ebecryl4866、Ebecryl9260、Ebecryl8210、Ebecryl1290、Ebecryl1290K、Ebecryl5129、Ebecryl2000、Ebecryl2001、Ebecryl2002、Ebecryl2100、Ebecryl7100、KRM7222、KRM7735、KRM4842、KRM210、KRM215、KRM4827、KRM4849、KRM6700、KRM6700−20T、KRM204、KRM205、KRM6602、KRM220、KRM4450、KRM770、IRR567、IPR81、IPR84、IPR83、IPR80、IPR657、IPR800、IPR805、IPR808、IPR810、IPR812、IPR1657、IPR1810、IRR302、IPR450、IPR670、IPR830、IPR835、IPR870、IPR1830、IPR1870、IPR2870、IRR267、IPR813、IRR483、IPR811、IPR436、IPR438、IPR446、IPR505、IPR524、IPR525、IPR554W、IPR584、IPR586、IPR745、IPR767、IPR1701、IPR1755、IPR740/40TP、IPR600、IPR601、IPR604、IPR605、IPR607、IPR608、IPR609、IPR600/25TO、IPR616、IPR645、IPR648、IPR860、IPR1606、IPR1608、IPR1629、IPR1940、IPR2958、IPR2959、IPR3200、IPR3201、IPR3404、IPR3411、IPR3412、IPR3415、IPR3500、IPR3502、IPR3600、IPR3603、IPR3604、IPR3605、IPR3608、IPR3700、IPR3700−20H、IPR3700−20T、IPR3700−25R、IPR3701、IPR3701−20T、IPR3703、IPR3702、RDX63182、RDX6040、IRR419;
【0039】
サートマー社製のCN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991;BASF社製のLaromer EA81、Laromer LR8713、Laromer LR8765、Laromer LR8986、Laromer PE56F、Laromer PE44F、Laromer LR8800、Laromer PE46T、Laromer LR8907、Laromer PO43F、Laromer PO77F、Laromer PE55F、Laromer LR8967、Laromer LR8981、Laromer LR8982、Laromer LR8992、Laromer LR9004、Laromer LR8956、Laromer LR8985、Laromer LR8987、Laromer UP35D、Laromer UA19T、Laromer LR9005、Laromer PO83F、Laromer PO33F、Laromer PO84F、Laromer PO94F、Laromer LR8863、Laromer LR8869、Laromer LR8889、Laromer LR8997、Laromer LR8996、Laromer LR9013、Laromer LR9019、Laromer PO9026V、Laromer PE9027V;
【0040】
コグニス社製のフォトマー3005、フォトマー3015、フォトマー3016、フォトマー3072、フォトマー3982、3215、フォトマー5010、フォトマー5429、フォトマー5430、フォトマー5432、フォトマー5662、フォトマー5806、フォトマー5930、フォトマー6008、フォトマー6010、フォトマー6019、フォトマー6184、フォトマー6210、フォトマー6217、フォトマー6230、フォトマー6891、フォトマー6892、フォトマー6893−20R、フォトマー6363、フォトマー6572、フォトマー3660;
【0041】
根上工業社製のアートレジンUN−9000HP、アートレジンUN−9000PEP、アートレジンUN−9200A、アートレジンUN−7600、アートレジンUN−5200、アートレジンUN−1003、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−901T、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−6060PTM、アートレジンUN−6060P;
【0042】
日本合成化学社製の紫光UV−6630B、紫光UV−7000B、紫光UV−7510B、紫光UV−7461TE、紫光UV−3000B、紫光UV−3200B、紫光UV−3210EA、紫光UV−3310B、紫光UV−3500BA、紫光UV−3520TL、紫光UV−3700B、紫光UV−6100B、紫光UV−6640B、紫光UV−1400B、紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、紫光UV−7550B、紫光UV−7605B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−7640B、紫光UV−2000B、紫光UV−2010B、紫光UV−2250EA、紫光UV−2750B;
【0043】
日本化薬社製のカヤラッドR−280、カヤラッドR−146、カヤラッドR131、カヤラッドR−205、カヤラッドEX2320,カヤラッドR190、カヤラッドR130、カヤラッドR−300,カヤラッドC−0011、カヤラッドTCR−1234、カヤラッドZFR−1122、カヤラッドUX−2201,カヤラッドUX−2301,カヤラッドUX3204、カヤラッドUX−3301、カヤラッドUX−4101,カヤラッドUX−6101、カヤラッドUX−7101、カヤラッドMAX−5101、カヤラッドMAX−5100,カヤラッドMAX−3510、カヤラッドUX−4101などが挙げられる。インク組成物中のオリゴマー及びプレポリマーの量は、特に限定されるものではないが、組成物全体に対して、5〜30質量%が好ましい。
【0044】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、上記の重合性化合物に加えて、光重合開始剤と表面張力調整剤をも含み得る。
光重合開始剤としては、低エネルギーで重合を開始させることができるアシルホスフィンオキサイド化合物、α−アミノアルキルフェノン化合物、及びチオキサントン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む光重合開始剤を用いることが好ましい。使用する光重合開始剤が少なくともアシルホスフィンオキサイド化合物を含むことが、光源として特に発光ダイオード(LED)光を用いた場合の硬化性、並びに得られるクリアインクの透明性及び長期保存時の無黄変性の点から好ましい。
【0045】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。市場で入手可能なアシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、チバ社製の“DAROCURE TPO”などが挙げられる。
【0046】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オンなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、チバ社製の“IRGACURE 369”、“IRGACURE 907”などが挙げられる。
【0047】
チオキサントン化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。市場で入手可能なチオキサントン化合物としては、例えば、日本化薬社製の“MKAYACURE DETX−S”、ダブルボンドケミカル社製の“Chivacure ITX”などが挙げられる。
【0048】
本発明のクリア層形成用インク組成物中に用いる上記光重合開始剤の含有量は、本発明のクリア層形成用インク組成物全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であることが、低エネルギーの照射でも硬化性及び密着性に優れたインクを得ることができる点から望ましい。また、上記光重合開始剤の含有量は、本発明のクリア層形成用インク組成物全体に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であることが、未反応成分の残存を抑えることができる点から望ましい。
【0049】
表面張力調整剤としては、シリコーン化合物、フッ素化合物などが挙げられる。これらの中でもシリコーン化合物が好ましい。上記重合性化合物とともにシリコーン化合物などの表面張力調整剤を使用すると、表面張力などの液物性をインクジェット方式に適した範囲に調整することができるとともに、画像上でのレベリング性に優れるクリア層形成用インク組成物を得ることができる。また、シリコーン化合物の中でも、分子内にエチレン性二重結合を有するシリコーン化合物が好ましい。上記重合性化合物と、分子内にエチレン性二重結合を有するシリコーン化合物とを使用することにより、画像との密着性をさらに向上させることができる。
【0050】
上記シリコーン化合物としては、例えば、ビックケミー社製のBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570;デグサ社製のTEGO−Rad2100、TEGO−Rad2200N、TEGO−Rad2250、TEGO−Rad2300、TEGO−Rad2500、TEGO−Rad2600、TEGO−Rad2700;共栄社化学社製のグラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B−1484、ポリフローATF−2、KL−600、UCR−L72、UCR−L93などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明のクリア層形成用インク組成物中に用いる上記表面張力調整剤の含有量は、特に限定されないが、インク組成物全体に対して2質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記表面張力調整剤の含有量が多いと、未溶解物が生じたり、泡立ちを引き起こすことがある。
【0052】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、クリア層の耐光性をより向上させる目的で、紫外線吸収剤及び酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、オキザリルアニリド系紫外線吸収剤などを用いることができる。
【0053】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。市場で入手できるトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、CIBA社製の“TINUVIN460”、“TINUVIN405”、“TINUVIN400"などが挙げられる。
【0054】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールなどが挙げられる。市場で入手できるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、CIBA社製の“TINUVIN900”、“TINUVIN928”などが挙げられる。
【0055】
オキザリルアニリド系紫外線吸収剤としては、例えば、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)−(オキザリルアミド)、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソデシルフェニル)−(オキザリルアミド)などが挙げられる。市場で入手できるオキザリルアニリド系紫外線吸収剤としては、例えば、Clariant社製の“Sanduvor VSU Powder”、“Sanduvor 3206 Liq.”などが挙げられる。
【0056】
その他の紫外線吸収剤としては、例えば、プロパンジオニックアシッド[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエーテル〔Clariant社の“Sanduvor PR−25 Gran”(商品名)〕などが挙げられる。
【0057】
また、酸化防止剤としては、例えば、リンオキサイド系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。
リンオキサイド系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォネートなどが挙げられる。市場で入手できるリンオキサイド系酸化防止剤としては、例えば、Clariant社製の“Sandostab P−EPQ Powder”が挙げられ、さらに、アデカ社製のPEP−4C、PEP−8、PEP−8W、PEP−24G、PEP−36、PEP−36Z、HP−10、2112RG、260、522A、1178、1500、C、135A、3010、TPPなどが挙げられる。
【0058】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、アデカ社製のAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330などが挙げられる。
【0059】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、アデカ社製のAO−412S、AO−503などが挙げられる。
【0060】
本発明のクリア層形成用インク組成物中に用いる上記紫外線吸収剤及び上記酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、インク組成物全体に対してそれぞれ0.05〜10.0質量%とすればよい。
【0061】
また、本発明のクリア層形成用インク組成物は、さらに必要により、レベリング剤、消泡剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料などの一般的な添加剤を、任意成分として含有してもよい。
【0062】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、従来の方法を使用して調製することができる。例えば、上記の重合性化合物と光重合開始剤と表面張力調整剤と必要により他の添加剤とを、撹拌機を用いて均一に混合することによりクリア層形成用インク組成物を調製することができる。使用する撹拌機としては、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0063】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、希釈溶媒を実質的に含有しないインク組成物であって、インクの連続吐出性を高める点で、25℃において4〜50mPa・sの粘度を有することが好ましい。かかる粘度に調整するため、本発明のクリア層形成用インク組成物はアルコール、エステル、ケトン、グリコール系、炭化水素系等のなどの希釈溶媒をインク組成物全体に対して0〜5質量%含有してよい。また、本発明のクリア層形成層インク組成物は、インクジェット方式に適した液物性を有し、画像上での良好なレベリング性を発現する点で、25℃において23〜34mN/mの表面張力を有することが好ましい。
【0064】
本発明のクリア層形成用インク組成物に適用し得るインクジェット方式としては、特に限定されないが、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えてインクに照射する放射圧を利用した音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式などが挙げられる。
【0065】
基材上に塗布されたインク組成物を重合し硬化させてクリア層を形成するために照射する活性エネルギー線としては、水銀灯やメタルハライドランプのほか、紫外線LED、紫外線レーザなどを使用することができる。
【0066】
本発明は、上記した本発明のクリア層形成用インク組成物を用いて形成されたクリア層を有する印刷物にも関する。
即ち、印刷物を形成する場合、先ずエネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物のような着色材を含有する画像形成用インク組成物を通常インクジェット記録装置により吐出させ、文字、マーク、模様、図柄などを所定パターンで形成した画像塗膜を形成し、この画像塗膜に紫外線などの活性エネルギー線を照射して硬化させる。次いで、その画像上に着色材を含有しないクリア層形成用インク組成物を通常インクジェット記録装置により吐出させてクリア層塗膜を形成し、このクリア層塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化させる。
【0067】
本発明のクリア層形成用インク組成物は、基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、オーバーコート特性や重ね塗り性にも優れるため、記録媒体表面ないし記録媒体上に形成された画像の全体をベタで被覆する従来のオーバーコート印刷に適することはもとより、クリアインクの積層工程を繰り返して、従来の数倍以上であって好適には5μmないし1mm以上、より好適には100〜300μmの層厚を有する厚膜のクリア層を形成する場合にも適している。即ち、本発明のクリア層形成用インク組成物によれば、画像全体又は画像上の特定位置を盛り上げて立体感を持たせ、もしくは模様を形成することによって、印刷物に優れた意匠性を付与する場合にも適している。
【0068】
本発明は、本発明のクリア層形成用インク組成物を重ね塗りする方法にも関する。即ち、本発明は、基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜を形成して得た印刷物に対して、クリア層形成用インク組成物を用いて、少なくとも1層のクリア層を形成するクリア層形成用インク組成物の塗布方法であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物の塗布方法に関する。形成すべきクリア層の数は、印刷物に付与すべき意匠性、具体的にはクリア層の重ね塗りによって形成すべき所望の立体感もしくは模様に応じて適宜決定することができる。
【0069】
画像形成用インク組成物に用いられる着色材としては、従来の各種染料を使用してもよいが、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれか又は両方を使用することが好ましい。画像形成用インク組成物中の着色材の含有量は、インク組成物全体に対して、1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましく、3〜6質量%が最も好ましい。上記着色材の含有量が少なすぎると、画像の着色力が低下する傾向がある。一方、上記着色材の含有量が多すぎると、粘度が上昇し、流動性が損なわれやすい。また、着色材として顔料が用いられる場合、顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体や顔料分散剤を使用してもよい。
【0070】
画像形成用インク組成物に用いられる重合性化合物としては、活性エネルギー線によってラジカル重合あるいはカチオン重合を開始し、硬化する重合性化合物であれば特に制限なく使用することができる。なかでも、ラジカル重合により硬化する重合性化合物が好ましく、本発明のクリア層形成用インク組成物中に用いる重合性化合物と同様の化合物を使用することがより好ましい。画像形成用インク組成物中に用いる重合性化合物の含有量は、インク組成物全体に対して10〜90質量%が好ましい。
【0071】
また、画像形成用インク組成物に用いられる光重合開始剤としては、本発明のクリア層形成用インク組成物に用いられる光重合開始剤と同様のものを使用することができる。画像形成用インク組成物中に用いる光重合開始剤の含有量は、インク組成物全体に対して総量で5〜15質量%であることが好ましい。
【0072】
同様に、画像形成用インク組成物は表面張力調整剤を含有することが好ましく、本発明のクリア層形成用インク組成物に用いられる表面張力調整剤と同様のものを使用することができる。画像形成用インク組成物中に用いる表面張力調整剤の含有量は、インク組成物全体に対して2.5質量%以下が好ましく、0.005〜2.5質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づきさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下において、「部」とある記載は「質量部」を意味する。また、実施例および比較例中の平均粒子径は、数平均粒子径を意味する。
【0074】
実施例及び比較例において使用した基材及びその表面自由エネルギーの測定値は、以下のとおりであった。


(註)
未処理のPP:商品名 新神戸電機製ポリシート、新神戸電機社製
オゾン処理したPP:商品名 トレファンS648、東レ株式会社製
PET:商品名 HK−42WF、東山フイルム社製
PVC:商品名 コントロールタック、3M社製
ABS:商品名 タフエースT EAT100C、住友ベークライト社製
【0075】
クリア層形成用インク及び画像形成用インクを調製するために用いた各成分を以下の表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
<画像形成用インクの調製>
プラスチック製ビンに、表2及び表3に示す顔料(20部)、顔料分散剤(16部)、IO−A(68部)を計り取った。P−11の場合には、顔料(40部)、顔料分散剤(8部)、IO−A(52部)を計り取った。
これにジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により1時間分散処理して、一次分散体を得た。次に、得られた一次分散体に、表2及び表3に示す配合量で残りの成分を加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、各画像形成用インクP−1〜P−11を調製した。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
<クリア層形成用インクの調製>
表4に示す配合量で各成分を計り取り、この混合物をマグネチックスターラーで30分間撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、各クリア層形成用インクを調製した。
【0081】
【表4】

【0082】
接触角は、以下の方法に従って測定した。また、画像層形成用インク組成物の硬化物(記録層)及びクリア層形成用インク組成物の硬化物(クリア層)の表面自由エネルギーは、下記の方法に従って求め、その結果を表2〜4中に示した。
【0083】
[接触角の測定]
各対象物の表面上に、滴下液量4.0μlで自由滴下モードにて液体を滴下し、株式会社マツボー社製 DAT1100 Fibro System ABを用いて、滴下の0.3秒後における接触角を測定した。
【0084】
[基材及び記録層の表面自由エネルギーの測定]
基材及び記録層の表面自由エネルギーは、下記手順に従って求めた。
1.インク硬化物の純水による接触角の測定
基材上又は帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、#5バーコーターを用いてインクベタ印刷物をそれぞれ作成し、印刷膜厚:10μmの印刷膜をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させてベタ印刷物の硬化物を得た。
【0085】
2.純水による接触角の測定
上記接触角の測定方法に準じて基材上又はインク硬化物上に純水を滴下し、接触角を測定した。
【0086】
3.表面自由エネルギー
上記に従って得た接触角の各測定値につき、下記表(ASTM D5946 モデル 表面エネルギー変換チャート)に従って、基材及びインク硬化物の表面自由エネルギーを求めた。
【0087】
【表5】

【0088】
上記のようにして得られた調製直後の例1〜7(例1,2及び7は比較例)のクリア層形成用インクを下記のように評価した。その結果を表6〜14に示す。
【0089】
[クリア層形成用インク組成物についての各対象物に対する接触角の測定]
帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、#5バーコーターを用いてインクベタ印刷物をそれぞれ作成し、印刷膜厚:10μmの印刷膜をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させてベタ印刷物(すなわち、画像層形成用インク組成物の硬化物(記録層)及びクリア層形成用インク組成物の硬化物(クリア層))の硬化物を得た。
この硬化物を上記接触角の測定方法に準じて、基材、記録層及びクリア層の上にクリア層形成用インク組成物の滴下を行い、それぞれの接触角を測定した。
【0090】
[粘度]
インク組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数20rpmの条件下で測定した。
【0091】
[分散平均粒子径]
粒度分布測定装置FPER−1000(大塚電子社製)を用いて、顔料粒子の分散平均粒子径を測定した。
【0092】
[表面張力]
インク組成物の表面張力は、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)を用いて、25℃において測定した。
【0093】
[クリア層形成用インク組成物のベタ印刷による印刷性試験(対各基材)]
上記の各基材(各印刷メディア)上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、50mm×50mmのクリア層形成用インク組成物のベタ印刷膜をそれぞれ形成した。印刷膜形成後30秒後、基材上に塗布されたインクの状態を観察し下記の判断基準でインクのぬれ性を評価した。結果を表7に示す。



ここで、本評価に使用するピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置は、インク供給系として、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、及びピエゾヘッドを備えたものである。また、液滴サイズ約7pl、解像度600×600dpiでインクを射出できるよう、駆動周波数10KHzでインクジェット記録装置を駆動させた。
【0094】
[クリア層形成用インク組成物の厚盛り印刷による印刷性試験(対各基材)]
上記の各基材(印刷メディア)上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、幅2mm、長さ50mmのクリア層形成用インク組成物の細線印刷物をそれぞれ形成した。細線印刷物形成後30秒後、基材上に塗布されたインクの状態を観察し下記の判断基準でインクのぬれ性を評価した。結果を表8に示す。


【0095】
[クリア層形成用インク組成物のベタ印刷による印刷性試験(対画像記録層)]
帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、50mm×50mmの画像形成用インク組成物のベタ印刷膜をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させて画像形成用インク組成物のベタ印刷物を得た。
この画像形成用インク組成物のベタ印刷物上に、印刷膜厚:10μm、50mm×50mmのクリア層形成用インク組成物のベタ印刷膜をそれぞれ形成した。印刷膜形成後30秒後、基材上に塗布されたインクの状態を観察し下記の判断基準でクリア層形成用インク組成物の画像形成用インク組成物のベタ印刷物上でのぬれ性を評価した。結果を表10に示す。


【0096】
[クリア層形成用インク組成物の厚盛り印刷による印刷性試験(対画像記録層)]
帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、幅2mm、長さ50mmの画像形成用インク組成物の細線印刷物をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させて画像形成用インク組成物の細線印刷物を得た。
この画像形成用インク組成物の細線印刷物に、印刷膜厚:10μm、幅2mm、長さ50mmのクリア層形成用インク組成物の細線印刷物をそれぞれ形成した。印刷膜形成後30秒後、画像形成用インク組成物の細線印刷物上に塗布されたクリア層形成用インク組成物の状態を観察し下記の判断基準でクリア層形成用インク組成物の画像形成用インク組成物のベタ印刷物上でのぬれ性を評価した。結果を表11に示す。


【0097】
[クリア層形成用インク組成物のベタ印刷による印刷性試験(対クリアインク硬化物層)]
帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、50mm×50mmのクリア層形成用インクのベタ印刷膜をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させて画像層形成用インク組成物のベタ印刷物を得た。
このクリア層形成用インクのベタ印刷物上に、印刷膜厚:10μm、50mm×50mmのクリア層形成用インク組成物のベタ印刷膜をそれぞれ形成した。印刷膜形成後30秒後、基材上に塗布されたインクの状態を観察し下記の判断基準でクリア層形成用インク組成物の画像層形成用インク組成物のベタ印刷物上でのぬれ性を評価した。結果を表13に示す。


【0098】
[クリア層形成用インク組成物の厚盛り印刷による印刷性試験(対クリアインク硬化物層)]
帝人社製のポリエステル繊維基材“テトロン”292Wからなる各印刷メディア上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、印刷膜厚:10μm、幅2mm、長さ50mmのクリア層形成用インク組成物の細線印刷物をそれぞれ形成した。
この印刷膜に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製“NLBU21W01−E2”)を用い、トータル照射光量が700mJ/cmとなるように、紫外線を照射して硬化させて画像層形成用インク組成物の細線印刷物を得た。
このクリア層形成用インク組成物の細線印刷物に、印刷膜厚:10μm、幅2mm、長さ50mmのクリア層形成用インク組成物の細線印刷物をそれぞれ形成した。印刷膜形成後30秒後、画像層形成用インク組成物の細線印刷物上に塗布されたクリア層形成用インク組成物の状態を観察し下記の判断基準でクリア層形成用インク組成物の画像層形成用インク組成物のベタ印刷物上でのぬれ性を評価した。結果を表14に示す。



なお、P-1インク及び例1のインクはプリンターヘッドから不吐出であったため、評価用の印刷サンプルが作れなかったので、ベタ印刷による印刷性試験及び厚盛り印刷による印刷性試験が行えなかった。(表中では斜線(/)で表示)
【0099】
【表6】

【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
【表12】

【0106】
【表13】

【0107】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、基材、記録層、クリア層のいずれに対しても密着性が優れ、記録層上にクリア層をベタ塗りする場合のオーバーコート特性のみならず重ね塗り性にも優れたクリア層形成用インク組成物を得ることができる。
また、本発明によるクリア層形成用インク組成物を用いて重ね塗りを行い、画像上の特定位置を盛り上げて立体感を持たせ、もしくは模様を形成することによって、印刷物に優れた意匠性を付与することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 基材
2 記録層
3a 第1クリア層
3b 第2クリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜が形成された印刷物に対して、少なくとも1層のクリア層を形成するために用いるクリア層形成用インク組成物であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物。
【請求項2】
重合性化合物と光重合開始剤と表面張力調整剤とを含む、請求項1に記載のクリア層形成用インク組成物。
【請求項3】
表面張力調整剤は、シリコーン化合物を含む請求項2に記載のクリア層形成用インク組成物。
【請求項4】
シリコーン化合物は、分子内にエチレン性二重結合を有する請求項3に記載のクリア層形成用インク組成物。
【請求項5】
光重合開始剤は、少なくともアシルホスフィンオキサイド化合物を含む請求項1〜4のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物を用いて形成されたクリア層を有することを特徴とする印刷物。
【請求項7】
クリア層形成用インク組成物の硬化物の表面自由エネルギーは、40〜43.4(mJ/m2)である請求項1〜6のいずれかに記載のクリア層形成用インク組成物。
【請求項8】
基材又は基材上に記録層としての印刷塗膜を形成して得た印刷物に対して、クリア層形成用インク組成物を用いて、少なくとも1層のクリア層を形成するクリア層形成用インク組成物の塗布方法であって、
該基材の表面自由エネルギーは30〜45(mJ/m)であり、
該記録層の表面自由エネルギーは40〜50(mJ/m)であり、
該クリア層形成用インク組成物の、
該基材に対する接触角は30〜65度であり、
該記録層に対する接触角は40〜55度であり、及び
該クリア層に対する接触角は45〜60度
であることを特徴とするクリア層形成用インク組成物の塗布方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−177965(P2011−177965A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42617(P2010−42617)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】