クリップと取付部材との組付構造
【課題】取付部材の板厚が薄くても、取付部材にクリップを簡単に組付けでき、組付状態でのクリップの抜外れを確実に防止できるクリップと取付部材との組付構造を提供する。
【解決手段】この組付構造は、フランジ部12及び係止脚13を備えるクリップ10と、取付部材30との組付けに係り、取付部材30は、クリップ10の係止脚13が挿入される挿入孔32と、挿入孔周縁に形成され、係止脚13が挿入孔32に挿入されたとき、フランジ部12の表面上方に配置され、係止脚13の抜け方向への移動を規制する押え片40と、挿入孔32に連通したスリット34,34を介し形成された弾性片36とを備え、弾性片36は、係止脚13を押し付けたとき、フランジ部12が取付部材30の表面に当接するまで撓み、係止脚13が挿入孔32に挿入されたとき、弾性復帰し、先端が係止脚32周縁に位置するように構成されている。
【解決手段】この組付構造は、フランジ部12及び係止脚13を備えるクリップ10と、取付部材30との組付けに係り、取付部材30は、クリップ10の係止脚13が挿入される挿入孔32と、挿入孔周縁に形成され、係止脚13が挿入孔32に挿入されたとき、フランジ部12の表面上方に配置され、係止脚13の抜け方向への移動を規制する押え片40と、挿入孔32に連通したスリット34,34を介し形成された弾性片36とを備え、弾性片36は、係止脚13を押し付けたとき、フランジ部12が取付部材30の表面に当接するまで撓み、係止脚13が挿入孔32に挿入されたとき、弾性復帰し、先端が係止脚32周縁に位置するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材を被取付部材に固定するためのクリップと、前記取付部材との組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体パネル等の被取付部材には、トリムボードや外装パネル等の取付部材が固定されている。被取付部材に取付部材を固定するための固定方法の一例として、取付部材にクリップを予め取付けておき、該クリップを被取付部材の取付孔に挿入することにより、取付部材を被取付部材に固定する方法が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、頭部及び軸部を有する雄部材と、フランジ部及び胴部並びに胴部下端から略筒状に配された複数の弾性脚片を有する雌部材とを備え、前記雄・雌部材が、前記軸部の前記胴部内への押し入れによって仮止め態様となり、前記軸部の更なる押し入れによって前記脚片を拡径して前記フランジ部との間に部材を挟み込む本止め態様となるクリップが開示されている。また、前記フランジ部裏面の対向する2箇所からは、取付部材に形成された挿入孔に係合する係合爪部が突設されている。
【0004】
そして、雌部材に雄部材を仮止め状態で係合させ、雌部材の胴部及び弾性脚片を取付部材の挿入孔に挿入すると、同貫通孔に雌部材の係合爪部がそれぞれ係合して、取付部材にクリップが仮保持される。その状態で、被取付部材の取付孔に雌部材の弾性脚片を挿入し、更に雄部材を押し込むと、弾性脚片が拡径して被取付部材の取付孔に係合し、被取付部材に取付部材が固定される。
【0005】
下記特許文献2には、クリップを用いて取付部材を被取付部材に連結する部材連結装置が開示されている。前記クリップは、頭部及び軸部からなるピンと、フランジ及び前記ピンが挿入されると拡径する複数の脚を有する軸部からなるブッシュとを備え、前記ブッシュ軸部は、前記ブッシュフランジから前記取付部材の取付孔部分における厚さに相当する長さで離れた位置に半径方向外方に突出した2つの係止部を有している。
【0006】
そして、取付部材に形成された挿入孔にブッシュの軸部を挿入すると、ブッシュ外周の2つの係止部が挿入孔の裏側周縁にそれぞれ係合し、更にブッシュにピンを挿入すると、ブッシュ内周に設けた弾性係止爪がピンに係合し、取付部材にクリップが仮保持される。その後、被取付部材の取付孔にブッシュを挿入し、更にピンを深く押し込むことにより、ブッシュの脚が拡径して取付孔に係合し、被取付部材に取付部材が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−106531号公報
【特許文献2】特開2004−28244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、雌部材のフランジ部裏面から突設した2つの係合爪部を撓ませつつ、取付部材の挿入孔に押し込むことにより、同挿入孔に係合爪部を係合させて、クリップを取付部材に仮保持させている。この場合、取付部材の板厚が厚い場合には、特に問題はないが、板厚が薄い場合、係合爪部の長さを短く設定しなければならず、係合爪部が撓みにくくなり、取付部材にクリップを組付ける際の作業性に問題がある。
【0009】
上記特許文献2でも上記特許文献1と同様の問題点がある。すなわち、取付部材の板厚が薄い場合、ブッシュ軸部におけるフランジから係止部までの距離を短くしなければならず、係止部を挿入孔の裏側周縁に係合させる際に、ブッシュ軸部が撓みにくくなり、取付部材にクリップを組付ける際の作業性に問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2では、クリップが取付部材に仮保持された状態で、クリップの仮保持に寄与する2つの係止部を設けたブッシュの軸部が、取付部材の挿入孔裏側から突出している。そのため、予期せぬ外力がブッシュの軸部に作用した場合に、前記2つの係止部が挿入孔から外れて、仮保持状態が解除されてしまうことがある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、取付部材の板厚が薄い場合であっても、取付部材にクリップを簡単に組付けることができると共に、その組付状態で取付部材からクリップが抜け外れることを確実に防止できる、クリップと取付部材との組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、フランジ部及びその裏面に延設された係止脚を備え、取付部材に保持されて、被取付部材の取付孔に前記係止脚が挿入されることにより、取付部材を被取付部材に固定するクリップと、前記取付部材との組付構造であって、
前記取付部材は、前記クリップの係止脚が挿入される挿入孔と、該挿入孔の周縁に形成され、前記係止脚が挿入孔に挿入されたときに前記フランジ部の表面上方に配置され、係止脚の抜け方向への移動を規制する押え片と、前記挿入孔に連通した一対のスリットを介して形成された弾性片とを備え、
前記弾性片は、前記係止脚を押し付けたとき、前記フランジ部が前記取付部材の表面に当接するまで撓み変形して、前記係止脚が挿入孔に挿入されたとき、弾性復帰して、その先端が前記係止脚周縁に位置するように構成されていることを特徴とするクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0013】
上記発明によれば、クリップの係止脚を取付部材の弾性片に押し付けて弾性片を撓ませることにより、フランジ部を取付部材の表面に当接させることができるので、その状態でクリップを挿入孔方向に移動させることにより、フランジ部を押え片の裏面側に挿入することができる。その結果、押え片がフランジ部の表面上方に配置されるので、係止脚の抜け方向への移動が規制される。また、クリップの係止脚が取付部材の挿入孔に挿入されると、弾性片が弾性復帰して、その先端が係止脚の周縁に位置し、係止脚の戻りが防止されるので、クリップを挿入孔に保持することができる。こうしてクリップを取付部材に仮保持させた状態で、クリップの係止脚を、被取付部材の取付孔に挿入して係合させることにより、クリップを介して取付部材を被取付部材に固定することができる。
【0014】
このように、この組付構造では、クリップの係止脚を弾性片に押し付けて、挿入孔へ移動させるだけの簡単な操作で、取付部材にクリップを組付けることができるので、取付部材の板厚が薄い場合であっても、弾性片の撓みにより組付作業性を向上させることができる。
【0015】
また、クリップは、押え片により抜け止め保持されると共に、弾性片の先端により戻りが防止されているので、クリップを挿入孔にしっかりと保持することができ、例えば、不測の外力等がクリップに作用しても、取付部材からクリップが脱落することなく、取付部材にクリップを確実に組付けることができる。
【0016】
更に、弾性片を撓ませて係止脚を挿入孔へと移動させるため、挿入孔を長孔に形成する必要がないうえ、係止脚が挿入孔へ移動したときには、弾性片の先端が挿入孔の周縁に位置するようになっているので、挿入孔周縁に大きな隙間が形成されず、見栄えを向上させることができる。
【0017】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記押え片は、前記挿入孔の周縁であって、前記弾性片の延出方向両側に、配置されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、押え片が弾性片の延出方向両側に配置されているので、フランジ部がバランスよく押えられて、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0019】
本発明の第3は、前記第第2の発明において、前記押え片は、前記弾性片の延出方向に対して平行に配置されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、押え片が弾性片の延出方向に平行に配置されているので、フランジ部の挿入孔周縁の対向する位置が押えられて、フランジ部がよりしっかりと押えられて、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0021】
本発明の第4は、前記第1〜3のいずれか1つの発明において、前記押え片の前記弾性片側の端部が、前記取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0022】
上記発明によれば、押え片の弾性片側の端部が、取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしているので、フランジ部が押え片の端部に引っ掛からずに押え片の裏面側に挿入され、係止脚を挿入孔にスムーズに移動させることができる。
【0023】
本発明の第5は、前記第第2の発明において、前記押え片は、前記挿入孔の両側に一対配置され、前記弾性片に近い方の両押え片の間隔が広く、前記弾性片から遠ざかるほど両押え片の間隔が狭くなるように斜めに形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、一対の押え片の弾性片側の間口が広いので、クリップの係止脚を挿入孔へと移動させるときに、フランジ部が押え片の端部に引っ掛からずに押え片の裏面側に挿入され、係止脚を挿入孔にスムーズに移動させることができる。
【0025】
本発明の第6は、前記第1〜5のいずれか1つの発明において、前記弾性片には、前記係止脚が前記挿入孔へ移動したときに、前記フランジ部の外周に位置する突起が形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0026】
上記発明によれば、係止脚が挿入孔へ移動したときに、フランジ部外周に突起が位置するので、クリップに対して移動方向とは逆向きの外力が作用しても、フランジ部外周に突起が突き当たって移動が阻止され、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0027】
本発明の第7は、前記第1〜6のいずれか1つの発明において、前記取付部材は、板状部材から形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0028】
上記発明によれば、取付部材は板状部材から形成されているので、挿入孔、弾性片及び押え片の各部分を、例えば、プレス加工等による打ち抜き・曲げ加工で成形することができ、取付部材を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、クリップの係止脚を取付部材の弾性片に押し付けて弾性片を撓ませつつ、クリップを挿入孔方向に移動させるだけの簡単な操作で、取付部材にクリップを組付けることができるので、取付部材の板厚が薄い場合であっても、弾性片の撓みにより組付作業性を向上させることができる。
【0030】
また、クリップは、押え片により抜け止め保持されると共に、弾性片の先端により戻りが防止されているので、クリップを挿入孔にしっかりと保持して、取付部材にクリップを確実に組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】同組付構造の組付け手順を示し、(a)はクリップを係止脚に押し付けた状態の説明図、(b)は(a)の状態からクリップを挿入孔方向へ移動させた状態の説明図、(c)は(b)の状態からクリップを更に挿入孔方向へ移動させた状態の説明図、(d)は挿入孔にクリップが完全に挿入された状態の説明図である。
【図3】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す斜視図である。
【図4】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す底面図である。
【図5】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す側面図である。
【図6】同組付構造を用いて、被取付部材に取付部材を固定した状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【図8】同組付構造の平面図である。
【図9】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第4実施形態を示す斜視図である。
【図11】同組付構造の平面図である。
【図12】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第5実施形態を示す斜視図である。
【図13】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1〜6を参照して、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第1実施形態について説明する。
【0033】
図6に示すように、クリップ10を介して被取付部材1に取付部材30を固定する構造が知られている。本発明に係るクリップと取付部材との組付構造(以下、「組付構造」という)は、上記の被取付部材1及び取付部材30の固定作業に先立って行われる、取付部材30に仮保持されるクリップ10と、取付部材30との組付構造に関するものである。被取付部材1としては、自動車の車体パネル等が挙げられ、取付部材30としては、パネル部材,ガーニッシュ,トリムボード,カバー,アシストグリップ等が挙げられるが、これらは特に限定されるものではない。
【0034】
図1に示すように、この実施形態の組付構造に用いられるクリップ10は、グロメット11と、該グロメット11に挿入されるピン15とからなる、いわゆる2ピースクリップである。前記グロメット11は、中心に差込孔12aを有する環状のフランジ部12と、該フランジ部12裏面の差込孔12a周縁から延設された複数の係止脚13とを備えている。複数の係止脚13は、フランジ部12裏面側の円筒状部を、分割溝13aを介して複数に分割されて形成され、それぞれ撓み可能となっている。各係止脚13の内側には、図示しない押圧突起が突設されている。
【0035】
また、フランジ部12の表面には、周方向に均等な間隔を設けて複数の凸部12bが突設されている。隣り合う凸部12b,12bの間には、マイナスドライバ等の工具が差し込まれて、グロメット11に挿入されたピン15を抜き外すことができるようになっている。
【0036】
一方、ピン15は、円板状の頭部16と、該頭部16の裏面中央から垂設された軸部17とを備えている。該軸部17の外周には、前記グロメット11の分割溝13aに入り込むリブ18が形成されている。このリブ18の途中には仮止め爪18aが形成されている。更に軸部17の先端には環状突部17aが突設されている。
【0037】
そして、ピン15の軸部17をグロメット11の途中まで差し込む。すなわち、軸部17の環状突部17aを係止脚13内側の押圧突起の手前まで差し込むと、仮止め爪18aが差込孔12aの裏側周縁に係合し、係止脚13が拡径しない状態で、グロメット11にピン15が仮止めされる(図5参照)。この状態では、取付部材30の挿入孔32(後述)及び被取付部材1の取付孔3に、係止脚13を挿通できるようになっている。
【0038】
また、上記状態からピン15を更に深く押し込むと、係止脚13内側の押圧突起が軸部17に押圧されて係止脚13が拡径し、押圧突起が環状突部17aを乗り越えると、環状突部17aの基端側に押圧突起が係合して、係止脚13が拡径した状態に維持されて、取付孔3に係合するようになっている(図6参照)。
【0039】
以上のように、この実施形態に用いられる2ピースクリップは、グロメット11にピン15を途中まで差し込んだ状態で、取付部材30の挿入孔32及び被取付部材1の取付孔3に挿通可能とされ、ピン15を更に深く差し込むことにより、グロメット11の係止脚13を拡径させて取付孔3に固定されるように構成されている。
【0040】
次に、取付部材30の構造について説明する。この実施形態の取付部材30は、薄く伸ばした板状部材から形成されている。例えば、SPCC(冷間圧延鋼板),SPFC(熱間圧延鋼板)等の金属製の板状部材や、PP(ポリプロピレン),PE(ポリエチレン)等の合成樹脂製の板状部材などを採用することができる。
【0041】
取付部材30の所定箇所には、前記クリップ10の係止脚13が挿入される円形状の挿入孔32が形成されている。この挿入孔32の周方向に対向する位置から、一対のスリット34,34が互いに平行となるように所定長さで形成されており、各スリット34の一端は前記挿入孔32に連通している。この一対のスリット34,34によって取付部材30に撓み可能な弾性片36が形成されている。また、弾性片36の先端36aは、挿入孔32の内周の一部をなし、円弧状に凹んだ形状とされている。
【0042】
この実施形態の弾性片36は、一定幅で伸びる帯状に形成されている。そして、この弾性片36は、係止脚13を押し付けたとき、フランジ部12が取付部材3の表面に当接するまで撓み変形できるように構成されている。すなわち、図2(a)に示すように、クリップ10の係止脚13を弾性片36に押し付けていくと、弾性片36が撓み始め、更にクリップ10を押し付けると、図2(b)に示すように、弾性片36が大きく撓んで、クリップ10のフランジ部12が取付部材30の表面に当接するまで、弾性片36が撓み変形可能となっている。
【0043】
上記状態では、後述する押え片40がフランジ部12の表面上方に位置すると共に、弾性片36の撓み変形によって、挿入孔32に連通するガイド溝Gが形成されるので、クリップ10を挿入孔方向に移動させることができるようになっている(図2(b),(c)参照)。そして、係止脚13が挿入孔32に挿入され、その内周に当接するまで移動すると、弾性片36が元の形状に弾性復帰して、その先端36aが係止脚13の周縁に位置し、係止脚13の戻りが防止されるようになっている(図2(d)及び図4参照)。
【0044】
また、係止脚13が挿入孔32の内周に突き当たるまで移動したときに、弾性片36から係止脚13が離れるように、弾性片36の先端36a(挿入孔32の内周一部をなす部分)の位置が設定されている。すなわち、挿入孔32の内径Dが、係止脚13の外径に適合して形成されているか、又は、係止脚13の外径よりも大きく形成されている(図4参照)。その結果、係止脚13が挿入孔32内に完全に挿入されたときに、弾性片36が弾性復帰するようになっている。
【0045】
なお、この実施形態における一対のスリット34,34は、互いに平行に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、一対のスリット34,34の間隔を、挿入孔32に近づくほど狭くして、略ハの字状をなすようにスリット34,34を形成してもよい。この場合、弾性片36の基端側が幅広となるので、クリップ10の係止脚13を弾性片36に押し付けやすくなり、弾性片36の弾性復元力も向上させることができる。
【0046】
上記取付部材30には、更にクリップ10の係止脚13の抜け方向への移動を規制する押え片40が切起こしにより形成されている。この実施形態の押え片40は、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に一対配置されている。
【0047】
すなわち、挿入孔32の弾性片36の延出方向に沿った両側周縁に、切欠き38,38がそれぞれ形成されている。図4に示すように、各切欠き38は、弾性片36の延出方向に直交した一対の短溝38a,38aと、弾性片36の延出方向に平行に伸びると共に、一対の短溝38a,38aの先端に連結された長溝38bとを有している。前記一対の短溝38a,38aは、一方が弾性片36の先端36aよりも基端側に配置され、他方が挿入孔32を超えた位置に配置されている。更に切欠き38には、弾性片36側の短溝38aの基端から挿入孔32側へ向けて、前記長溝38bと平行に伸びるガイド形成溝38cが形成されている。
【0048】
上記形状の切欠き38を介して、取付部材30の裏面から表面に向けて折曲されて、一対の押え片40,40が切起こしにより形成されている。図5に示すように、一対の押え片40,40は、その上端(折曲部分とは反対側の側縁)どうしが近接するように、取付部材30の表面に対して所定角度で斜めに折曲されている。こうして、切起こしにより形成された一対の押え片40,40は、弾性片36の延出方向に対して平行に配置されるようになっている(図1参照)。
【0049】
また、各押え片40は、取付部材30の表面から押え片40の上端までの高さH(図5参照)が、クリップ10のフランジ部12の厚さよりも大きくなるように切起こされている。その結果、クリップ10の係止脚13が挿入孔32に挿入されたときに、フランジ部12の表面上方に一対の押え片40,40が配置されて、係止脚13の抜け方向への移動が規制されるようになっている。
【0050】
上記のように切起こされた各押え片40は、更に前記ガイド形成溝38cを介して弾性片36側の端部が、取付部材30の表面から離れるように折曲されて、ガイド部41をなしている。
【0051】
以上のように、この実施形態における取付部材30は、板状部材から形成されているので、挿入孔32、弾性片36及び押え片40の各部分を、例えば、プレス加工等による打ち抜き・曲げ加工で成形することができ、取付部材30を簡単に製造することができる。
【0052】
次に、上記構成からなる組付構造の使用方法について説明する。
【0053】
まず、グロメット11にピン15を途中まで差し込んで、仮止め爪18aを差込孔12aの裏側周縁に係合させて、係止脚13を拡径させない状態でグロメット11にピン15を仮止めさせる。
【0054】
そして、ピン15の頭部16を把持して、係止脚13を弾性片36の基端側に押し付けていく。すると、図2(a)に示すように、係止脚13により弾性片36が押し付けられるので、弾性片36が取付部材30の裏面側に撓む。このとき、取付部材30から弾性片36が離れるので、挿入孔32に連通するガイド溝Gが形成される。
【0055】
このガイド溝Gにより係止脚13を挿入孔方向に向けてガイドしつつ、更に係止脚13を弾性片36に押し付ける。すると、フランジ部12がガイド部41を通って、押え片40の裏面側に入り込むと共に、弾性片36が大きく撓んで、フランジ部12を取付部材30の表面に当接させることができる(図2(b)参照)。
【0056】
このとき、押え片40のガイド部41によって、フランジ部12が押え片40の端部に引っ掛かることが抑制されるので、フランジ部12を押え片40の裏面側にスムーズに挿入することができる。
【0057】
その後、図2(c)に示すように、弾性復元力に抗して弾性片36を撓ませつつ、ガイド溝Gを介して係止脚13をガイドさせながら、クリップ10を挿入孔方向に移動させる。そして、係止脚13が挿入孔32の内周に突き当たるまで挿入すると、弾性片36から係止脚13が離れて、弾性片36が弾性復帰し、図2(d)に示すように、その先端36aが係止脚13の周縁に位置する(この実施形態では、先端36aが係止脚13の周縁に当接する)。その結果、係止脚13が弾性片36の基端部側へ戻ってしまうことが防止され、クリップ10を挿入孔32に保持することができる。
【0058】
なお、図2(b)に示すように、フランジ部12が押え片40の裏面側に挿入され、取付部材30の表面から離れない状態で、弾性片36が弾性復帰すると、係止脚13の先端が押圧されて、クリップ10を挿入孔方向へと移動させる付勢力が作用するようになっている。そのため、クリップ10を挿入孔32へ移動させやすくなる。
【0059】
また、この状態では図3及び図5に示すように、各押え片40の裏面側にクリップ10のフランジ部12が挿入されて、各押え片40がフランジ部12の表面上方に配置されるので、係止脚13の抜け方向への移動が規制される。その結果、挿入孔32からクリップ10が抜け外れることを確実に防止することができる。
【0060】
この実施形態では、一対の押え片40,40は、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されているので、フランジ部12の対向する位置が広い範囲でバランスよく押えられて、クリップ10を挿入孔32の位置にしっかりと保持することができる。
【0061】
以上説明したように、この組付構造では図2(a)〜(d)に示す組付け作業、すなわち、係止脚13を弾性片36に押し付けて弾性片36を撓ませつつ、ガイド溝Gを介して係止脚13を挿入孔32へ移動させるだけの簡単な操作で、取付部材30にクリップ10を組付けることができ、クリップ10と取付部材30との組付作業性を向上させることができる。また、取付部材30の板厚が薄い場合であっても、この組付構造では、クリップ10の押し付けによって、弾性片36自体が撓むように構成されているので、上述した引用文献1,2のようにクリップの脚部の撓みやすさが問題となることがなく、クリップ10と取付部材30とをスムーズに組付けることができる。
【0062】
また、クリップ10は、一対の押え片40,40により抜け止め保持されると共に、弾性片36の先端36aにより戻りが防止されているので、クリップ10を挿入孔32にしっかりと保持することができる。例えば、クリップ10に引き抜き力や衝撃力が作用したり、取付部材30の搬送中においてクリップ10に振動が伝わったりしても、取付部材30からクリップ10が脱落することを防止して、取付部材30にクリップ10を確実に組付けることができる。
【0063】
更に、クリップ10の係止脚13を取付部材30の弾性片36に押し付けることにより弾性片36を撓ませて、フランジ部12を取付部材30の表面に当接させるように構成されているため、クリップ10を挿入するための孔を長孔にすることなく、クリップ10の移動経路を長くとることが可能になるので、係止脚13の移動方向に沿って押え片40を長く設けることができ、取付部材30にクリップ10をしっかりと組付けることができる。
【0064】
更にまた、弾性片36を撓ませて係止脚13を挿入孔32へと移動させるため、挿入孔32を長孔に形成する必要がないうえ、係止脚13が挿入孔32へ移動したときには、弾性片36の先端36aが挿入孔32の周縁に位置するようになっているので、挿入孔周縁に大きな隙間が形成されず、見栄えを向上させることができる。
【0065】
以上のように、取付部材30にクリップ10を組付けた後、挿入孔32の裏側から突出した係止脚13(図5参照)を、被取付部材1の取付孔3に整合させて挿入し、被取付部材1の表面に取付部材30を当接させる。その後、ピン15をグロメット11に対して深く押し込むことにより、複数の係止脚13を拡径させて取付孔3の裏側周縁に係合させ、図6に示すように、クリップ10を介して被取付部材1に取付部材30を固定することができる。
【0066】
この実施形態では取付部材30に組付けるクリップ10として、グロメット11及びピン15からなる2ピースクリップを採用している。そのため、上記のように、クリップ10を取付部材30に組付け後、取付孔3に係止脚13を挿入し、ピン15を深く押し込むだけの簡単な操作で、取付部材30を被取付部材1に固定でき、作業性を向上させることができる。また、2ピースクリップを構成するグロメット11の係止脚13は、ピン15を深く押し込む前までは拡径していない状態となっているので、予め拡径した係止脚を取付孔3に挿入する場合よりも挿入抵抗を小さくして、係止脚13を取付孔3にスムーズに挿入することができる。
【0067】
ところで、2ピースクリップを用いて、被取付部材に取付部材を固定する場合、従来は被取付部材の取付孔に、取付部材の挿入孔を整合させておき、その状態で2ピースクリップを両孔に挿入して、グロメットに対してピンを押し込むという作業が必要となり、作業が複雑で、かつ、時間がかかるという問題がある。しかし、この実施形態の組付構造においては、2ピースクリップを、取付部材30に予め組付けておくことができるので、組付け作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0068】
図7,8には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0069】
この実施形態では、取付部材30に形成された押え片が前記第1実施形態と異なっている。すなわち、図7に示すように、一対の押え片40a,40aは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されているが、その配置角度が弾性片36に対して斜めとなっている。
【0070】
図8に示すように、各押え片40aを切起こすための切欠き38は、弾性片36の延出方向に対して斜めに配置された一対の短溝38a,38aと、これら一対の短溝38a,38aの先端に連結された長溝38bとから形成されている。また、両切欠き39の弾性片36側の短溝38a,38aどうしは互いに離れた位置に配置され、弾性片36とは反対側の短溝38a,38aどうしは互いに近接した位置に配置されている。
【0071】
その結果、一対の押え片40a,40aは、弾性片36に近い方の両押え片40a,40aの間隔が広く、弾性片36から遠ざかるほど両押え片40a,40aの間隔が狭くなるように斜めに形成されている。
【0072】
この実施形態によれば、一対の押え片40a,40aの弾性片36側の間口が広いので、クリップ10の係止脚13を取付孔へと移動させるときに、フランジ部12が押え片40aの端部に引っ掛からずに押え片40aの裏面側に挿入され、係止脚13を挿入孔32にスムーズに移動させることができる。
【0073】
図9には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0074】
この実施形態では、取付部材30に形成された押え片が前記実施形態と異なっている。図9に示すように、一対の押え片40b,40bは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に、かつ、同弾性片36の延出方向に平行に配置されている。
【0075】
押え片40bを切起こすための切欠き38は、弾性片36の先端36aよりも基端側に配置された短溝38aと、該短溝38aの両端から弾性片36の延出方向に平行に伸びる一対の長溝38b,38bとからなる。そして、押え片40bは、その基端側の所定箇所が取付部材30の表面に対して直角に折曲され、更に長手方向途中箇所が取付部材30の表面に対して平行に折曲されて形成されている。
【0076】
この実施形態によれば、各押え片40bは、クリップ10の挿入側が開口した形状となっているので(図9参照)、クリップ10の係止脚13を取付孔へと移動させるときに、フランジ部12が押え片40bの端部に引っ掛からずに押え片40bの裏面側に挿入され、係止脚13を挿入孔32にスムーズに移動させることができる。
【0077】
図10,11には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この実施形態における取付部材30は、前記実施形態と異なり、合成樹脂による射出成形で形成されている。また、図10に示すように、一対の押え片40c,40cは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されており、これらは弾性片36の延出方向に沿って形成された矩形状の一対の切欠き37,37の周縁から突設されている。各押え片40cは、切欠き37の、挿入孔32から離れた位置の長辺周縁、及び、弾性片36から離れた位置の短辺周縁から立設した周壁37aと、該周壁37aの上端に連結され、切欠き37を覆う押え壁37bとから形成されている。
【0079】
この実施形態によれば、取付部材30は射出成型品であるので、押え片40cの形状を自由に設定することができる。例えば、この第3実施形態の押え片40cは、弾性片36側及び挿入孔32側が開口しているので(図10参照)、クリップ10のフランジ部12を押え片40cの裏側に容易に挿入させることができる。また、押え片40cの弾性片36とは反対側は、周壁37aにより閉塞されているので、フランジ部12をしっかりと保持することもできる。
【0080】
図12,13には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0081】
この実施形態は、前記第4実施形態と基本的に同一形状をなしている。それに加え、弾性片36の先端部の表面側に、所定高さで突起36bが突設されている。図12,13に示すように、この突起36bは、クリップ10の係止脚13が挿入孔32へ移動したときに、フランジ部12の外周に位置するようになっている。
【0082】
この実施形態によれば、クリップ10の係止脚13が挿入孔32へ移動したときに、フランジ部12外周に突起36bが位置するので(図12,13参照)、クリップ10に対して移動方向とは逆向きの外力が作用しても、フランジ部12外周に突起36bが突き当たって移動が阻止され、クリップ10を挿入孔32の位置にしっかりと保持することができる。
【0083】
なお、弾性片36の先端部表面に設けた突起36bは、前記第1〜4の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 被取付部材
3 取付孔
10 クリップ
12 フランジ部
13 係止脚
30 取付部材
32 挿入孔
34 スリット
36 弾性片
36b 突起
40,40a,40b,40c 押え片
41 ガイド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材を被取付部材に固定するためのクリップと、前記取付部材との組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体パネル等の被取付部材には、トリムボードや外装パネル等の取付部材が固定されている。被取付部材に取付部材を固定するための固定方法の一例として、取付部材にクリップを予め取付けておき、該クリップを被取付部材の取付孔に挿入することにより、取付部材を被取付部材に固定する方法が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、頭部及び軸部を有する雄部材と、フランジ部及び胴部並びに胴部下端から略筒状に配された複数の弾性脚片を有する雌部材とを備え、前記雄・雌部材が、前記軸部の前記胴部内への押し入れによって仮止め態様となり、前記軸部の更なる押し入れによって前記脚片を拡径して前記フランジ部との間に部材を挟み込む本止め態様となるクリップが開示されている。また、前記フランジ部裏面の対向する2箇所からは、取付部材に形成された挿入孔に係合する係合爪部が突設されている。
【0004】
そして、雌部材に雄部材を仮止め状態で係合させ、雌部材の胴部及び弾性脚片を取付部材の挿入孔に挿入すると、同貫通孔に雌部材の係合爪部がそれぞれ係合して、取付部材にクリップが仮保持される。その状態で、被取付部材の取付孔に雌部材の弾性脚片を挿入し、更に雄部材を押し込むと、弾性脚片が拡径して被取付部材の取付孔に係合し、被取付部材に取付部材が固定される。
【0005】
下記特許文献2には、クリップを用いて取付部材を被取付部材に連結する部材連結装置が開示されている。前記クリップは、頭部及び軸部からなるピンと、フランジ及び前記ピンが挿入されると拡径する複数の脚を有する軸部からなるブッシュとを備え、前記ブッシュ軸部は、前記ブッシュフランジから前記取付部材の取付孔部分における厚さに相当する長さで離れた位置に半径方向外方に突出した2つの係止部を有している。
【0006】
そして、取付部材に形成された挿入孔にブッシュの軸部を挿入すると、ブッシュ外周の2つの係止部が挿入孔の裏側周縁にそれぞれ係合し、更にブッシュにピンを挿入すると、ブッシュ内周に設けた弾性係止爪がピンに係合し、取付部材にクリップが仮保持される。その後、被取付部材の取付孔にブッシュを挿入し、更にピンを深く押し込むことにより、ブッシュの脚が拡径して取付孔に係合し、被取付部材に取付部材が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−106531号公報
【特許文献2】特開2004−28244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、雌部材のフランジ部裏面から突設した2つの係合爪部を撓ませつつ、取付部材の挿入孔に押し込むことにより、同挿入孔に係合爪部を係合させて、クリップを取付部材に仮保持させている。この場合、取付部材の板厚が厚い場合には、特に問題はないが、板厚が薄い場合、係合爪部の長さを短く設定しなければならず、係合爪部が撓みにくくなり、取付部材にクリップを組付ける際の作業性に問題がある。
【0009】
上記特許文献2でも上記特許文献1と同様の問題点がある。すなわち、取付部材の板厚が薄い場合、ブッシュ軸部におけるフランジから係止部までの距離を短くしなければならず、係止部を挿入孔の裏側周縁に係合させる際に、ブッシュ軸部が撓みにくくなり、取付部材にクリップを組付ける際の作業性に問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2では、クリップが取付部材に仮保持された状態で、クリップの仮保持に寄与する2つの係止部を設けたブッシュの軸部が、取付部材の挿入孔裏側から突出している。そのため、予期せぬ外力がブッシュの軸部に作用した場合に、前記2つの係止部が挿入孔から外れて、仮保持状態が解除されてしまうことがある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、取付部材の板厚が薄い場合であっても、取付部材にクリップを簡単に組付けることができると共に、その組付状態で取付部材からクリップが抜け外れることを確実に防止できる、クリップと取付部材との組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、フランジ部及びその裏面に延設された係止脚を備え、取付部材に保持されて、被取付部材の取付孔に前記係止脚が挿入されることにより、取付部材を被取付部材に固定するクリップと、前記取付部材との組付構造であって、
前記取付部材は、前記クリップの係止脚が挿入される挿入孔と、該挿入孔の周縁に形成され、前記係止脚が挿入孔に挿入されたときに前記フランジ部の表面上方に配置され、係止脚の抜け方向への移動を規制する押え片と、前記挿入孔に連通した一対のスリットを介して形成された弾性片とを備え、
前記弾性片は、前記係止脚を押し付けたとき、前記フランジ部が前記取付部材の表面に当接するまで撓み変形して、前記係止脚が挿入孔に挿入されたとき、弾性復帰して、その先端が前記係止脚周縁に位置するように構成されていることを特徴とするクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0013】
上記発明によれば、クリップの係止脚を取付部材の弾性片に押し付けて弾性片を撓ませることにより、フランジ部を取付部材の表面に当接させることができるので、その状態でクリップを挿入孔方向に移動させることにより、フランジ部を押え片の裏面側に挿入することができる。その結果、押え片がフランジ部の表面上方に配置されるので、係止脚の抜け方向への移動が規制される。また、クリップの係止脚が取付部材の挿入孔に挿入されると、弾性片が弾性復帰して、その先端が係止脚の周縁に位置し、係止脚の戻りが防止されるので、クリップを挿入孔に保持することができる。こうしてクリップを取付部材に仮保持させた状態で、クリップの係止脚を、被取付部材の取付孔に挿入して係合させることにより、クリップを介して取付部材を被取付部材に固定することができる。
【0014】
このように、この組付構造では、クリップの係止脚を弾性片に押し付けて、挿入孔へ移動させるだけの簡単な操作で、取付部材にクリップを組付けることができるので、取付部材の板厚が薄い場合であっても、弾性片の撓みにより組付作業性を向上させることができる。
【0015】
また、クリップは、押え片により抜け止め保持されると共に、弾性片の先端により戻りが防止されているので、クリップを挿入孔にしっかりと保持することができ、例えば、不測の外力等がクリップに作用しても、取付部材からクリップが脱落することなく、取付部材にクリップを確実に組付けることができる。
【0016】
更に、弾性片を撓ませて係止脚を挿入孔へと移動させるため、挿入孔を長孔に形成する必要がないうえ、係止脚が挿入孔へ移動したときには、弾性片の先端が挿入孔の周縁に位置するようになっているので、挿入孔周縁に大きな隙間が形成されず、見栄えを向上させることができる。
【0017】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記押え片は、前記挿入孔の周縁であって、前記弾性片の延出方向両側に、配置されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、押え片が弾性片の延出方向両側に配置されているので、フランジ部がバランスよく押えられて、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0019】
本発明の第3は、前記第第2の発明において、前記押え片は、前記弾性片の延出方向に対して平行に配置されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、押え片が弾性片の延出方向に平行に配置されているので、フランジ部の挿入孔周縁の対向する位置が押えられて、フランジ部がよりしっかりと押えられて、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0021】
本発明の第4は、前記第1〜3のいずれか1つの発明において、前記押え片の前記弾性片側の端部が、前記取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0022】
上記発明によれば、押え片の弾性片側の端部が、取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしているので、フランジ部が押え片の端部に引っ掛からずに押え片の裏面側に挿入され、係止脚を挿入孔にスムーズに移動させることができる。
【0023】
本発明の第5は、前記第第2の発明において、前記押え片は、前記挿入孔の両側に一対配置され、前記弾性片に近い方の両押え片の間隔が広く、前記弾性片から遠ざかるほど両押え片の間隔が狭くなるように斜めに形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、一対の押え片の弾性片側の間口が広いので、クリップの係止脚を挿入孔へと移動させるときに、フランジ部が押え片の端部に引っ掛からずに押え片の裏面側に挿入され、係止脚を挿入孔にスムーズに移動させることができる。
【0025】
本発明の第6は、前記第1〜5のいずれか1つの発明において、前記弾性片には、前記係止脚が前記挿入孔へ移動したときに、前記フランジ部の外周に位置する突起が形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0026】
上記発明によれば、係止脚が挿入孔へ移動したときに、フランジ部外周に突起が位置するので、クリップに対して移動方向とは逆向きの外力が作用しても、フランジ部外周に突起が突き当たって移動が阻止され、クリップを挿入孔の位置にしっかりと保持することができる。
【0027】
本発明の第7は、前記第1〜6のいずれか1つの発明において、前記取付部材は、板状部材から形成されているクリップと取付部材との組付構造を提供するものである。
【0028】
上記発明によれば、取付部材は板状部材から形成されているので、挿入孔、弾性片及び押え片の各部分を、例えば、プレス加工等による打ち抜き・曲げ加工で成形することができ、取付部材を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、クリップの係止脚を取付部材の弾性片に押し付けて弾性片を撓ませつつ、クリップを挿入孔方向に移動させるだけの簡単な操作で、取付部材にクリップを組付けることができるので、取付部材の板厚が薄い場合であっても、弾性片の撓みにより組付作業性を向上させることができる。
【0030】
また、クリップは、押え片により抜け止め保持されると共に、弾性片の先端により戻りが防止されているので、クリップを挿入孔にしっかりと保持して、取付部材にクリップを確実に組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】同組付構造の組付け手順を示し、(a)はクリップを係止脚に押し付けた状態の説明図、(b)は(a)の状態からクリップを挿入孔方向へ移動させた状態の説明図、(c)は(b)の状態からクリップを更に挿入孔方向へ移動させた状態の説明図、(d)は挿入孔にクリップが完全に挿入された状態の説明図である。
【図3】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す斜視図である。
【図4】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す底面図である。
【図5】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す側面図である。
【図6】同組付構造を用いて、被取付部材に取付部材を固定した状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【図8】同組付構造の平面図である。
【図9】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第4実施形態を示す斜視図である。
【図11】同組付構造の平面図である。
【図12】本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第5実施形態を示す斜視図である。
【図13】同組付構造において、クリップと取付部材とを組付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1〜6を参照して、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第1実施形態について説明する。
【0033】
図6に示すように、クリップ10を介して被取付部材1に取付部材30を固定する構造が知られている。本発明に係るクリップと取付部材との組付構造(以下、「組付構造」という)は、上記の被取付部材1及び取付部材30の固定作業に先立って行われる、取付部材30に仮保持されるクリップ10と、取付部材30との組付構造に関するものである。被取付部材1としては、自動車の車体パネル等が挙げられ、取付部材30としては、パネル部材,ガーニッシュ,トリムボード,カバー,アシストグリップ等が挙げられるが、これらは特に限定されるものではない。
【0034】
図1に示すように、この実施形態の組付構造に用いられるクリップ10は、グロメット11と、該グロメット11に挿入されるピン15とからなる、いわゆる2ピースクリップである。前記グロメット11は、中心に差込孔12aを有する環状のフランジ部12と、該フランジ部12裏面の差込孔12a周縁から延設された複数の係止脚13とを備えている。複数の係止脚13は、フランジ部12裏面側の円筒状部を、分割溝13aを介して複数に分割されて形成され、それぞれ撓み可能となっている。各係止脚13の内側には、図示しない押圧突起が突設されている。
【0035】
また、フランジ部12の表面には、周方向に均等な間隔を設けて複数の凸部12bが突設されている。隣り合う凸部12b,12bの間には、マイナスドライバ等の工具が差し込まれて、グロメット11に挿入されたピン15を抜き外すことができるようになっている。
【0036】
一方、ピン15は、円板状の頭部16と、該頭部16の裏面中央から垂設された軸部17とを備えている。該軸部17の外周には、前記グロメット11の分割溝13aに入り込むリブ18が形成されている。このリブ18の途中には仮止め爪18aが形成されている。更に軸部17の先端には環状突部17aが突設されている。
【0037】
そして、ピン15の軸部17をグロメット11の途中まで差し込む。すなわち、軸部17の環状突部17aを係止脚13内側の押圧突起の手前まで差し込むと、仮止め爪18aが差込孔12aの裏側周縁に係合し、係止脚13が拡径しない状態で、グロメット11にピン15が仮止めされる(図5参照)。この状態では、取付部材30の挿入孔32(後述)及び被取付部材1の取付孔3に、係止脚13を挿通できるようになっている。
【0038】
また、上記状態からピン15を更に深く押し込むと、係止脚13内側の押圧突起が軸部17に押圧されて係止脚13が拡径し、押圧突起が環状突部17aを乗り越えると、環状突部17aの基端側に押圧突起が係合して、係止脚13が拡径した状態に維持されて、取付孔3に係合するようになっている(図6参照)。
【0039】
以上のように、この実施形態に用いられる2ピースクリップは、グロメット11にピン15を途中まで差し込んだ状態で、取付部材30の挿入孔32及び被取付部材1の取付孔3に挿通可能とされ、ピン15を更に深く差し込むことにより、グロメット11の係止脚13を拡径させて取付孔3に固定されるように構成されている。
【0040】
次に、取付部材30の構造について説明する。この実施形態の取付部材30は、薄く伸ばした板状部材から形成されている。例えば、SPCC(冷間圧延鋼板),SPFC(熱間圧延鋼板)等の金属製の板状部材や、PP(ポリプロピレン),PE(ポリエチレン)等の合成樹脂製の板状部材などを採用することができる。
【0041】
取付部材30の所定箇所には、前記クリップ10の係止脚13が挿入される円形状の挿入孔32が形成されている。この挿入孔32の周方向に対向する位置から、一対のスリット34,34が互いに平行となるように所定長さで形成されており、各スリット34の一端は前記挿入孔32に連通している。この一対のスリット34,34によって取付部材30に撓み可能な弾性片36が形成されている。また、弾性片36の先端36aは、挿入孔32の内周の一部をなし、円弧状に凹んだ形状とされている。
【0042】
この実施形態の弾性片36は、一定幅で伸びる帯状に形成されている。そして、この弾性片36は、係止脚13を押し付けたとき、フランジ部12が取付部材3の表面に当接するまで撓み変形できるように構成されている。すなわち、図2(a)に示すように、クリップ10の係止脚13を弾性片36に押し付けていくと、弾性片36が撓み始め、更にクリップ10を押し付けると、図2(b)に示すように、弾性片36が大きく撓んで、クリップ10のフランジ部12が取付部材30の表面に当接するまで、弾性片36が撓み変形可能となっている。
【0043】
上記状態では、後述する押え片40がフランジ部12の表面上方に位置すると共に、弾性片36の撓み変形によって、挿入孔32に連通するガイド溝Gが形成されるので、クリップ10を挿入孔方向に移動させることができるようになっている(図2(b),(c)参照)。そして、係止脚13が挿入孔32に挿入され、その内周に当接するまで移動すると、弾性片36が元の形状に弾性復帰して、その先端36aが係止脚13の周縁に位置し、係止脚13の戻りが防止されるようになっている(図2(d)及び図4参照)。
【0044】
また、係止脚13が挿入孔32の内周に突き当たるまで移動したときに、弾性片36から係止脚13が離れるように、弾性片36の先端36a(挿入孔32の内周一部をなす部分)の位置が設定されている。すなわち、挿入孔32の内径Dが、係止脚13の外径に適合して形成されているか、又は、係止脚13の外径よりも大きく形成されている(図4参照)。その結果、係止脚13が挿入孔32内に完全に挿入されたときに、弾性片36が弾性復帰するようになっている。
【0045】
なお、この実施形態における一対のスリット34,34は、互いに平行に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、一対のスリット34,34の間隔を、挿入孔32に近づくほど狭くして、略ハの字状をなすようにスリット34,34を形成してもよい。この場合、弾性片36の基端側が幅広となるので、クリップ10の係止脚13を弾性片36に押し付けやすくなり、弾性片36の弾性復元力も向上させることができる。
【0046】
上記取付部材30には、更にクリップ10の係止脚13の抜け方向への移動を規制する押え片40が切起こしにより形成されている。この実施形態の押え片40は、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に一対配置されている。
【0047】
すなわち、挿入孔32の弾性片36の延出方向に沿った両側周縁に、切欠き38,38がそれぞれ形成されている。図4に示すように、各切欠き38は、弾性片36の延出方向に直交した一対の短溝38a,38aと、弾性片36の延出方向に平行に伸びると共に、一対の短溝38a,38aの先端に連結された長溝38bとを有している。前記一対の短溝38a,38aは、一方が弾性片36の先端36aよりも基端側に配置され、他方が挿入孔32を超えた位置に配置されている。更に切欠き38には、弾性片36側の短溝38aの基端から挿入孔32側へ向けて、前記長溝38bと平行に伸びるガイド形成溝38cが形成されている。
【0048】
上記形状の切欠き38を介して、取付部材30の裏面から表面に向けて折曲されて、一対の押え片40,40が切起こしにより形成されている。図5に示すように、一対の押え片40,40は、その上端(折曲部分とは反対側の側縁)どうしが近接するように、取付部材30の表面に対して所定角度で斜めに折曲されている。こうして、切起こしにより形成された一対の押え片40,40は、弾性片36の延出方向に対して平行に配置されるようになっている(図1参照)。
【0049】
また、各押え片40は、取付部材30の表面から押え片40の上端までの高さH(図5参照)が、クリップ10のフランジ部12の厚さよりも大きくなるように切起こされている。その結果、クリップ10の係止脚13が挿入孔32に挿入されたときに、フランジ部12の表面上方に一対の押え片40,40が配置されて、係止脚13の抜け方向への移動が規制されるようになっている。
【0050】
上記のように切起こされた各押え片40は、更に前記ガイド形成溝38cを介して弾性片36側の端部が、取付部材30の表面から離れるように折曲されて、ガイド部41をなしている。
【0051】
以上のように、この実施形態における取付部材30は、板状部材から形成されているので、挿入孔32、弾性片36及び押え片40の各部分を、例えば、プレス加工等による打ち抜き・曲げ加工で成形することができ、取付部材30を簡単に製造することができる。
【0052】
次に、上記構成からなる組付構造の使用方法について説明する。
【0053】
まず、グロメット11にピン15を途中まで差し込んで、仮止め爪18aを差込孔12aの裏側周縁に係合させて、係止脚13を拡径させない状態でグロメット11にピン15を仮止めさせる。
【0054】
そして、ピン15の頭部16を把持して、係止脚13を弾性片36の基端側に押し付けていく。すると、図2(a)に示すように、係止脚13により弾性片36が押し付けられるので、弾性片36が取付部材30の裏面側に撓む。このとき、取付部材30から弾性片36が離れるので、挿入孔32に連通するガイド溝Gが形成される。
【0055】
このガイド溝Gにより係止脚13を挿入孔方向に向けてガイドしつつ、更に係止脚13を弾性片36に押し付ける。すると、フランジ部12がガイド部41を通って、押え片40の裏面側に入り込むと共に、弾性片36が大きく撓んで、フランジ部12を取付部材30の表面に当接させることができる(図2(b)参照)。
【0056】
このとき、押え片40のガイド部41によって、フランジ部12が押え片40の端部に引っ掛かることが抑制されるので、フランジ部12を押え片40の裏面側にスムーズに挿入することができる。
【0057】
その後、図2(c)に示すように、弾性復元力に抗して弾性片36を撓ませつつ、ガイド溝Gを介して係止脚13をガイドさせながら、クリップ10を挿入孔方向に移動させる。そして、係止脚13が挿入孔32の内周に突き当たるまで挿入すると、弾性片36から係止脚13が離れて、弾性片36が弾性復帰し、図2(d)に示すように、その先端36aが係止脚13の周縁に位置する(この実施形態では、先端36aが係止脚13の周縁に当接する)。その結果、係止脚13が弾性片36の基端部側へ戻ってしまうことが防止され、クリップ10を挿入孔32に保持することができる。
【0058】
なお、図2(b)に示すように、フランジ部12が押え片40の裏面側に挿入され、取付部材30の表面から離れない状態で、弾性片36が弾性復帰すると、係止脚13の先端が押圧されて、クリップ10を挿入孔方向へと移動させる付勢力が作用するようになっている。そのため、クリップ10を挿入孔32へ移動させやすくなる。
【0059】
また、この状態では図3及び図5に示すように、各押え片40の裏面側にクリップ10のフランジ部12が挿入されて、各押え片40がフランジ部12の表面上方に配置されるので、係止脚13の抜け方向への移動が規制される。その結果、挿入孔32からクリップ10が抜け外れることを確実に防止することができる。
【0060】
この実施形態では、一対の押え片40,40は、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されているので、フランジ部12の対向する位置が広い範囲でバランスよく押えられて、クリップ10を挿入孔32の位置にしっかりと保持することができる。
【0061】
以上説明したように、この組付構造では図2(a)〜(d)に示す組付け作業、すなわち、係止脚13を弾性片36に押し付けて弾性片36を撓ませつつ、ガイド溝Gを介して係止脚13を挿入孔32へ移動させるだけの簡単な操作で、取付部材30にクリップ10を組付けることができ、クリップ10と取付部材30との組付作業性を向上させることができる。また、取付部材30の板厚が薄い場合であっても、この組付構造では、クリップ10の押し付けによって、弾性片36自体が撓むように構成されているので、上述した引用文献1,2のようにクリップの脚部の撓みやすさが問題となることがなく、クリップ10と取付部材30とをスムーズに組付けることができる。
【0062】
また、クリップ10は、一対の押え片40,40により抜け止め保持されると共に、弾性片36の先端36aにより戻りが防止されているので、クリップ10を挿入孔32にしっかりと保持することができる。例えば、クリップ10に引き抜き力や衝撃力が作用したり、取付部材30の搬送中においてクリップ10に振動が伝わったりしても、取付部材30からクリップ10が脱落することを防止して、取付部材30にクリップ10を確実に組付けることができる。
【0063】
更に、クリップ10の係止脚13を取付部材30の弾性片36に押し付けることにより弾性片36を撓ませて、フランジ部12を取付部材30の表面に当接させるように構成されているため、クリップ10を挿入するための孔を長孔にすることなく、クリップ10の移動経路を長くとることが可能になるので、係止脚13の移動方向に沿って押え片40を長く設けることができ、取付部材30にクリップ10をしっかりと組付けることができる。
【0064】
更にまた、弾性片36を撓ませて係止脚13を挿入孔32へと移動させるため、挿入孔32を長孔に形成する必要がないうえ、係止脚13が挿入孔32へ移動したときには、弾性片36の先端36aが挿入孔32の周縁に位置するようになっているので、挿入孔周縁に大きな隙間が形成されず、見栄えを向上させることができる。
【0065】
以上のように、取付部材30にクリップ10を組付けた後、挿入孔32の裏側から突出した係止脚13(図5参照)を、被取付部材1の取付孔3に整合させて挿入し、被取付部材1の表面に取付部材30を当接させる。その後、ピン15をグロメット11に対して深く押し込むことにより、複数の係止脚13を拡径させて取付孔3の裏側周縁に係合させ、図6に示すように、クリップ10を介して被取付部材1に取付部材30を固定することができる。
【0066】
この実施形態では取付部材30に組付けるクリップ10として、グロメット11及びピン15からなる2ピースクリップを採用している。そのため、上記のように、クリップ10を取付部材30に組付け後、取付孔3に係止脚13を挿入し、ピン15を深く押し込むだけの簡単な操作で、取付部材30を被取付部材1に固定でき、作業性を向上させることができる。また、2ピースクリップを構成するグロメット11の係止脚13は、ピン15を深く押し込む前までは拡径していない状態となっているので、予め拡径した係止脚を取付孔3に挿入する場合よりも挿入抵抗を小さくして、係止脚13を取付孔3にスムーズに挿入することができる。
【0067】
ところで、2ピースクリップを用いて、被取付部材に取付部材を固定する場合、従来は被取付部材の取付孔に、取付部材の挿入孔を整合させておき、その状態で2ピースクリップを両孔に挿入して、グロメットに対してピンを押し込むという作業が必要となり、作業が複雑で、かつ、時間がかかるという問題がある。しかし、この実施形態の組付構造においては、2ピースクリップを、取付部材30に予め組付けておくことができるので、組付け作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0068】
図7,8には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0069】
この実施形態では、取付部材30に形成された押え片が前記第1実施形態と異なっている。すなわち、図7に示すように、一対の押え片40a,40aは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されているが、その配置角度が弾性片36に対して斜めとなっている。
【0070】
図8に示すように、各押え片40aを切起こすための切欠き38は、弾性片36の延出方向に対して斜めに配置された一対の短溝38a,38aと、これら一対の短溝38a,38aの先端に連結された長溝38bとから形成されている。また、両切欠き39の弾性片36側の短溝38a,38aどうしは互いに離れた位置に配置され、弾性片36とは反対側の短溝38a,38aどうしは互いに近接した位置に配置されている。
【0071】
その結果、一対の押え片40a,40aは、弾性片36に近い方の両押え片40a,40aの間隔が広く、弾性片36から遠ざかるほど両押え片40a,40aの間隔が狭くなるように斜めに形成されている。
【0072】
この実施形態によれば、一対の押え片40a,40aの弾性片36側の間口が広いので、クリップ10の係止脚13を取付孔へと移動させるときに、フランジ部12が押え片40aの端部に引っ掛からずに押え片40aの裏面側に挿入され、係止脚13を挿入孔32にスムーズに移動させることができる。
【0073】
図9には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0074】
この実施形態では、取付部材30に形成された押え片が前記実施形態と異なっている。図9に示すように、一対の押え片40b,40bは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に、かつ、同弾性片36の延出方向に平行に配置されている。
【0075】
押え片40bを切起こすための切欠き38は、弾性片36の先端36aよりも基端側に配置された短溝38aと、該短溝38aの両端から弾性片36の延出方向に平行に伸びる一対の長溝38b,38bとからなる。そして、押え片40bは、その基端側の所定箇所が取付部材30の表面に対して直角に折曲され、更に長手方向途中箇所が取付部材30の表面に対して平行に折曲されて形成されている。
【0076】
この実施形態によれば、各押え片40bは、クリップ10の挿入側が開口した形状となっているので(図9参照)、クリップ10の係止脚13を取付孔へと移動させるときに、フランジ部12が押え片40bの端部に引っ掛からずに押え片40bの裏面側に挿入され、係止脚13を挿入孔32にスムーズに移動させることができる。
【0077】
図10,11には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この実施形態における取付部材30は、前記実施形態と異なり、合成樹脂による射出成形で形成されている。また、図10に示すように、一対の押え片40c,40cは、挿入孔32の周縁であって、弾性片36の延出方向両側に配置されており、これらは弾性片36の延出方向に沿って形成された矩形状の一対の切欠き37,37の周縁から突設されている。各押え片40cは、切欠き37の、挿入孔32から離れた位置の長辺周縁、及び、弾性片36から離れた位置の短辺周縁から立設した周壁37aと、該周壁37aの上端に連結され、切欠き37を覆う押え壁37bとから形成されている。
【0079】
この実施形態によれば、取付部材30は射出成型品であるので、押え片40cの形状を自由に設定することができる。例えば、この第3実施形態の押え片40cは、弾性片36側及び挿入孔32側が開口しているので(図10参照)、クリップ10のフランジ部12を押え片40cの裏側に容易に挿入させることができる。また、押え片40cの弾性片36とは反対側は、周壁37aにより閉塞されているので、フランジ部12をしっかりと保持することもできる。
【0080】
図12,13には、本発明に係るクリップと取付部材との組付構造の第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0081】
この実施形態は、前記第4実施形態と基本的に同一形状をなしている。それに加え、弾性片36の先端部の表面側に、所定高さで突起36bが突設されている。図12,13に示すように、この突起36bは、クリップ10の係止脚13が挿入孔32へ移動したときに、フランジ部12の外周に位置するようになっている。
【0082】
この実施形態によれば、クリップ10の係止脚13が挿入孔32へ移動したときに、フランジ部12外周に突起36bが位置するので(図12,13参照)、クリップ10に対して移動方向とは逆向きの外力が作用しても、フランジ部12外周に突起36bが突き当たって移動が阻止され、クリップ10を挿入孔32の位置にしっかりと保持することができる。
【0083】
なお、弾性片36の先端部表面に設けた突起36bは、前記第1〜4の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 被取付部材
3 取付孔
10 クリップ
12 フランジ部
13 係止脚
30 取付部材
32 挿入孔
34 スリット
36 弾性片
36b 突起
40,40a,40b,40c 押え片
41 ガイド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部及びその裏面に延設された係止脚を備え、取付部材に保持されて、被取付部材の取付孔に前記係止脚が挿入されることにより、取付部材を被取付部材に固定するクリップと、前記取付部材との組付構造であって、
前記取付部材は、前記クリップの係止脚が挿入される挿入孔と、該挿入孔の周縁に形成され、前記係止脚が挿入孔に挿入されたときに前記フランジ部の表面上方に配置され、係止脚の抜け方向への移動を規制する押え片と、前記挿入孔に連通した一対のスリットを介して形成された弾性片とを備え、
前記弾性片は、前記係止脚を押し付けたとき、前記フランジ部が前記取付部材の表面に当接するまで撓み変形して、前記係止脚が挿入孔に挿入されたとき、弾性復帰して、その先端が前記係止脚周縁に位置するように構成されていることを特徴とするクリップと取付部材との組付構造。
【請求項2】
前記押え片は、前記挿入孔の周縁であって、前記弾性片の延出方向両側に、配置されている請求項1記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項3】
前記押え片は、前記弾性片の延出方向に対して平行に配置されている請求項2記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項4】
前記押え片の前記弾性片側の端部が、前記取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしている請求項1〜3のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項5】
前記押え片は、前記挿入孔の両側に一対配置され、前記弾性片に近い方の両押え片の間隔が広く、前記弾性片から遠ざかるほど両押え片の間隔が狭くなるように斜めに形成されている請求項2記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項6】
前記弾性片には、前記係止脚が前記挿入孔へ移動したときに、前記フランジ部の外周に位置する突起が形成されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項7】
前記取付部材は、板状部材から形成されている請求項1〜6のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項1】
フランジ部及びその裏面に延設された係止脚を備え、取付部材に保持されて、被取付部材の取付孔に前記係止脚が挿入されることにより、取付部材を被取付部材に固定するクリップと、前記取付部材との組付構造であって、
前記取付部材は、前記クリップの係止脚が挿入される挿入孔と、該挿入孔の周縁に形成され、前記係止脚が挿入孔に挿入されたときに前記フランジ部の表面上方に配置され、係止脚の抜け方向への移動を規制する押え片と、前記挿入孔に連通した一対のスリットを介して形成された弾性片とを備え、
前記弾性片は、前記係止脚を押し付けたとき、前記フランジ部が前記取付部材の表面に当接するまで撓み変形して、前記係止脚が挿入孔に挿入されたとき、弾性復帰して、その先端が前記係止脚周縁に位置するように構成されていることを特徴とするクリップと取付部材との組付構造。
【請求項2】
前記押え片は、前記挿入孔の周縁であって、前記弾性片の延出方向両側に、配置されている請求項1記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項3】
前記押え片は、前記弾性片の延出方向に対して平行に配置されている請求項2記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項4】
前記押え片の前記弾性片側の端部が、前記取付部材の表面から離れるように折曲されたガイド部をなしている請求項1〜3のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項5】
前記押え片は、前記挿入孔の両側に一対配置され、前記弾性片に近い方の両押え片の間隔が広く、前記弾性片から遠ざかるほど両押え片の間隔が狭くなるように斜めに形成されている請求項2記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項6】
前記弾性片には、前記係止脚が前記挿入孔へ移動したときに、前記フランジ部の外周に位置する突起が形成されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【請求項7】
前記取付部材は、板状部材から形成されている請求項1〜6のいずれか1つに記載のクリップと取付部材との組付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−196890(P2010−196890A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46100(P2009−46100)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】
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