説明

クリップ用支持構造

【課題】クリップを大型にすることなく、装着部材の仮置きや取付け孔に対するクリップの案内を可能とし、かつ、クリップの種類を増やすことなく、仮置きや案内の機能を調整可能とする。
【解決手段】クリップ用支持構造であって、装着部材20のクリップ座22は、リブ24とその側部に位置する補強プレート26とによって構成されている。クリップ座22のリブ24に結合した状態のクリップ10が相手パネル30の取付け孔32に対して弾性腕16が弾性変形し始めない程度に挿入されたときに、補強プレート26の先端部28が相手パネル30の裏面から所定寸法Sだけ突出するように構成されている。この寸法Sが、取付け孔32においてクリップの弾性腕16と係合する部分の孔幅以上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるセンタークラスタなどの装着部材をインストルメントパネルなどの相手パネルに取付けるためのクリップの支持構造に関する。詳しくは、当該クリップを装着部材側に結合した状態に保持するクリップ用支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術は、例えば特許文献1に開示されているように装着部材がクリップを結合するためのクリップ座を備え、クリップがクリップ座に結合される保持部を備えている。また、クリップは保持部の外側に位置する一対の弾性腕を備えている。そこで、保持部をクリップ座に結合したクリップが相手パネルの取付け孔に挿入されると、両弾性腕が押し撓められながら取付け孔を通過した後、この取付け孔の縁に係合する。これにより、装着部材が相手パネルに取付けられる。
【0003】
センタークラスタなどの装着部材は複数個のクリップ座を備えており、それぞれにクリップの保持部が結合される。これらのクリップを相手パネルの対応箇所に開けられている各取付け孔に挿入するとき、それぞれのクリップを取付け孔に的確に導くための案内が必要とされる。また、装着部材の取付け作業にあたっては、この装着部材を相手パネルに仮に取付けた仮置き状態とし、その後に各クリップをそれぞれの取付け孔に完全に挿入するといった手順をとることがある。このような手順は、装着部材の重量が大きい場合等において、装着部材を相手パネルに対して一挙に取付けるのが困難なときに採用される。
【0004】
従来、クリップを取付け孔に導くための案内の機能、あるいは装着部材を仮置きする機能は、クリップの端部を長くすることで対処している。すなわち、クリップにおいて、取付け孔に挿入されるときに先行する側の端部を長くすることにより、該クリップを取付け孔に軽く挿入した状態でも、その端部が相手パネルの裏面側に突出して装着部材が相手パネルに仮置きされる。また、クリップの端部が長くなっていることで、取付け孔に対するクリップの挿入を案内することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−188718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
装着部材の仮置きやクリップを取付け孔に導く案内の機能を果たすためにクリップの端部を長くすると、その分、クリップが大型になるとともに、比較的高価な素材で成形されるクリップの材料コストが増加する。また、仮置きや案内の機能を調整するには、複数種のクリップを準備しなければならない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クリップを大型にすることなく、装着部材の仮置きや取付け孔に対するクリップの案内を可能とし、かつ、クリップの種類を増やすことなく、仮置きや案内の機能を調整可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
所定の装着部材を相手パネルに取付けるためのクリップが、保持部と該保持部の外側に位置する弾性腕とを備え、保持部を装着部材のクリップ座に結合した状態のクリップを相手パネルの取付け孔に対して表面側から裏面側へ挿入することにより、弾性腕が弾性変形によって押し撓められながら取付け孔を通過し、相手パネルの裏面側で取付け孔の縁に係合するクリップ用支持構造であって、装着部材のクリップ座は、装着部材と一体に成形されているとともに、クリップの保持部が結合されるリブと、リブの側部に位置する補強プレートとによって構成されている。保持部をリブに結合した状態のクリップが相手パネルの取付け孔に対して弾性腕が弾性変形し始めない程度に挿入されたときに、補強プレートの先端部が相手パネルの裏面から所定寸法だけ突出するように構成されている。そして、この寸法が、相手パネルの取付け孔においてクリップの弾性腕と係合する部分の孔幅以上に設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、装着部材のクリップ座における補強プレートの先端部が相手パネルの裏面から突出する寸法を、取付け孔においてクリップの弾性腕と係合する部分の孔幅以上に設定することにより、補強プレートの先端部を取付け孔に挿入することで、装着部材を相手パネルに仮置きすることができ、かつ、取付け孔にクリップを挿入するときの案内を果たす。したがって、クリップ座と比較して高価な素材で成形されるクリップを大型にすることなく、装着部材の仮置きや取付け孔に対するクリップの案内が可能となり、クリップを小型のままに維持して材料コストを抑えることができる。
また、クリップ座における補強プレートの突出寸法を調整することにより、クリップの種類を増やすことなく、仮置きや案内の機能を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】クリップを表した正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】クリップ座を表した正面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】クリップをクリップ座に結合した状態を相手パネルと共に表した正面図。
【図6】図5の側面図。
【図7】クリップを取付け孔に軽く挿入した状態を表した断面図。
【図8】装着部材を相手パネルに仮置きした具体的な状態を表した断面図。
【図9】装着部材を相手パネルに取付けた状態を表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1および図2で示されているクリップ10は、樹脂材による一体成形品であって、その構造は保持部12と、保持部12の両外側部に位置する一対の弾性腕16とに大別される。保持部12は、クリップ10の先端側で閉塞され、基端側で開放された「U」字状をしている。この保持部12は、閉塞された先端側を支点として左右両側へ開くように弾性変形することができる。保持部12の相対向する内側面には、開放された基端近くにおいて係合爪14がそれぞれ設けられている。
一対の弾性腕16は、クリップ10の先端側において互いに一体に連結され、基端側ではそれぞれ自由端になっている。したがって両弾性腕16は、それぞれクリップ10の先端側を支点として内方へ弾性変形することが可能である。また両弾性腕16は、クリップ10の先端側と基端側との間において最も外方へ張り出した肩部18を有する。
【0012】
図3および図4に示されている装着部材20は、センタークラスタなどの樹脂製品であって、図面では全体の一部だけを示している。装着部材20には、その意匠面の裏側においてクリップ10を結合するためのクリップ座22が一体に成形されている。このクリップ座22は、センタークラスタなどの装着部材20を後述の相手パネル30にクリップ10を用いて取付けるのに必要な複数箇所に成形されている。
【0013】
クリップ座22は、リブ24とその両側においてリブ24と直交する状態で位置する補強プレート26とによって構成されている。リブ24の板厚は、クリップ10の保持部12に挿入可能な寸法に設定されている。リブ24には、その両面にわたって貫通する係合孔25が開けられている。
クリップ座22における両補強プレート26の先端部28は、リブ24の先端を超えて長く突出している(図3および図4)。つまり、これらの先端部28の突出量は、クリップ座22に結合されたクリップ10の先端よりも大きく張り出すように設定されている。なお、クリップ座22によっては、補強プレート26がリブ24の片側にだけ設けられているタイプがあり、その場合は一枚の補強プレート26の先端部28を突出させることになる。
【0014】
装着部材20が取付けられる相手パネル30は、インストルメントパネルなどの樹脂パネルであり、装着部材20のクリップ座22の個数と対応する複数箇所において表裏に貫通した取付け孔32が開けられている。この取付け孔32は、寸法A(短辺)×寸法B(長辺)の長方形である(図5および図6)。クリップ座22に結合されたクリップ10が取付け孔32に挿入されたとき、該取付け孔32における短辺の寸法Aはクリップ10の両弾性腕16が弾性変形によって押し撓められながら通過する値であり、長辺の寸法Bは車種等によって異なるが、いずれにしてもクリップ座22における両補強プレート26の間の幅よりも大きく設定されている。
【0015】
図7で示すようにクリップ10が取付け孔32に軽く挿入されたとき、つまりクリップ10の両弾性腕16が取付け孔32の挿入側の縁に軽く接触したとき、クリップ座22における補強プレート26の先端部28は相手パネル30の裏面から寸法Sだけ突出している。これにより、後述のようにクリップ座22に結合されたクリップ10を相手パネル30の取付け孔32に挿入するときに、先端部28がクリップ10を取付け孔32に導くための案内機能を果たす。
また先端部28の突出寸法Sは、取付け孔32の短辺の寸法A以上に設定されており、それによって後述のように装着部材20を相手パネル30に仮に取付けた仮置き状態に保持することができる。
【0016】
つづいて、装着部材20を相手パネル30に取付ける手順について説明する。
まず、図5および図6で示すように装着部材20のクリップ座22にクリップ10を結合するには、クリップ10の保持部12に対し、その開放側からクリップ座22のリブ24を相対的に挿入する。これにより、リブ24の先端部分が保持部12を左右へ押し開きながら両係合爪14の間を通過し、これらの係合爪14がリブ24の係合孔25に両側から係合し、クリップ10とクリップ座22が結合状態に保持される。
【0017】
つぎに、クリップ座22に結合されたクリップ10を相手パネル30の取付け孔32に挿入する。ただし、既に説明したようにセンタークラスタなどの装着部材20には複数個のクリップ座22があり、インストルメントパネルなどの相手パネル30には各クリップ座22に対応する数の取付け孔32がある。また、実際のインストルメントパネルは、図8および図9で示すように車両の前方側(図面の左側)に傾斜している。一方、センタークラスタには、オーディオ機器やディスプレイなどが組付けられてその重量が大きくなっている。
【0018】
このような状況下で、装着部材20の各クリップ座22に結合されたクリップ10を相手パネル30の各取付け孔32にそれぞれ挿入するとき、各クリップ座22における補強プレート26の先端部28が個々の取付け孔32に先行して挿入される。これにより、補強プレート26の先端部28が各クリップ10を個々の取付け孔32に的確に導き込むこととなる。
また、前述のように補強プレート26における先端部28の突出寸法Sは、取付け孔32の短辺の寸法A以上に設定されていることから、先端部28が取付け孔32に先行して挿入された状態で、作業者が装着部材20から手を離しても補強プレート26の突出部分が取付け孔32の縁に係合する(図8)。この結果、装着部材20は相手パネル30に仮に取付けられた図8の状態(仮置きの状態)に保たれる。
【0019】
図8で示す状態からクリップ10を相手パネル30の取付け孔32に挿入することにより、クリップ10の両弾性腕16が取付け孔32の短辺側の両縁に接触して内方へ押し撓められながら取付け孔32を進行していく。そして、クリップ10が取付け孔32に対して完全に挿入されると、両弾性腕16の肩部18が取付け孔32を通過し、相手パネル30の裏面側において取付け孔32の縁にそれぞれ係止する(図9)。この結果、装着部材20がクリップ10を介して相手パネル30に取付けられる。
また、取付け孔32の長辺の寸法Bは、前述のようにクリップ座22における両補強プレート26の間の幅よりも大きく設定されていることから、複数のクリップ座22と取付け孔32との相対的な位置精度のバラツキを寸法Bの範囲で吸収することができる。
【0020】
以上のように、装着部材20を相手パネル30に対して図8で示す仮置きの状態にできることから、この仮置きの状態とした後に図9の取付け状態にするといった手順をとることができる。これにより、特に重量が大きい装着部材20をワンアクションで図9の取付け状態にするのと比較して作業が容易となる。
なお、補強プレート26における先端部28の突出寸法Sは任意に変更することができ、それによってクリップ10の種類は同じであっても、取付け孔32に対するクリップ10の案内や装着部材20の仮置きの機能を調整することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 クリップ
12 保持部
16 弾性腕
20 装着部材
22 クリップ座
24 リブ
26 補強プレート
28 先端部
30 相手パネル
32 取付け孔
S 突出寸法


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装着部材を相手パネルに取付けるためのクリップが、保持部と該保持部の外側に位置する弾性腕とを備え、保持部を装着部材のクリップ座に結合した状態のクリップを相手パネルの取付け孔に対して表面側から裏面側へ挿入することにより、弾性腕が弾性変形によって押し撓められながら取付け孔を通過し、相手パネルの裏面側で取付け孔の縁に係合するクリップ用支持構造であって、
装着部材のクリップ座は、装着部材と一体に成形されているとともに、クリップの保持部が結合されるリブと、リブの側部に位置する補強プレートとによって構成され、保持部をリブに結合した状態のクリップが相手パネルの取付け孔に対して弾性腕が弾性変形し始めない程度に挿入されたときに、補強プレートの先端部が相手パネルの裏面から所定寸法だけ突出するように構成され、この寸法が、相手パネルの取付け孔においてクリップの弾性腕と係合する部分の孔幅以上に設定されているクリップ用支持構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−233508(P2012−233508A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101018(P2011−101018)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】