説明

クリップ

【課題】 クリップを内装材やボディーパネルから取り外す際に、内装材の孔縁に仮固定腕が係止したり、引っ掛かることを防止して、取り外し不能となったり、或いは、仮固定腕が破損するのを防止できるクリップを提供する。
【解決手段】 本固定用取付孔40を係合凸部31により本固定する前に、仮固定用取付孔41を係合弾性腕32により係止して、仮固定を行う。このとき、係合弾性腕32の先端部32cを基部32dよりも肉厚を薄くしたので、仮固定する内装材41aの厚さが変化しても仮固定を行うことができる。また、係合弾性腕32につぼみ保持手段33を設けたので、本固定を行うと係合弾性腕32は柱部の柱側部に収納・保持されることになる。なお、このクリップ10は、一体成形により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップに係り、例えば自動車の車体の内装材に仮固定しておき、その後車体のパネルに本固定するクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、仮固定した後に本固定するクリップが知られている(例えば特許文献1参照)。
図17および図18に示すように、このクリップ100は、ボディパネルの取付孔に取付けて、サンバイザーを保持するものであり、第1支持体101とカバー部102とから構成されている。第1支持体101には、自動車の内装材103の仮固定孔103aに係止するための4本の仮固定腕104と、ボディーパネル(図示省略)の本固定孔に取付けるための上下一対のラッチ105が設けられている。一方、カバー部102には、ピン106が挿入方向に設けられており、第1支持体101の内部に挿入することによりラッチ105を外側に広げて、係止部105aによりボディパネルに固定するようになっている。
【0003】
従って、クリップ100を取付ける際には、仮固定腕104により内装材103の仮固定孔103aに第1支持体101を仮固定しておく。そして、内装材103をボディーパネルに取付ける際に、カバー部102を第1支持体101の内部に挿入するとともに第1支持体101をボディーパネルの本固定孔に押し込む。これにより、第1支持体101とカバー部102が一体化してクリップ100を形成するとともに、ラッチ105が外側に押し広げられて、ボディーパネルの本固定孔に係止される。
【特許文献1】USP5,560,575(Fig.3、4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているようなクリップ100においては、取り外し作業時に、次のような問題があった。つまり、クリップ100を内装材103と共にボディーパネル(図示省略)から外した途端、クリップ100の仮固定腕104は、ボディーパネル(図示省略)の小孔から解放されて弾性復帰し、図18に示すように拡開係止するので、続いて内装材103からクリップ100を外すことができなくなる。ボディーパネル(図示省略)と内装材103からクリップ100を一度に外そうとしても、同様の影響を受けて仮固定腕104は手前側に位置している内装材103の孔103aの内縁に引っかかりがちであり仮固定腕104を破損しやすい。
【0005】
本発明の目的は、クリップを内装材やボディーパネルから取り外す際に、内装材の孔縁に仮固定腕が係止したり、引っ掛かることを防止して、取り外し不能となったり、或いは、仮固定腕が破損するのを防止できるクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明にかかるクリップは、基板の一方の面側に設けられた頭部と、前記基板の他方の面側に立設された柱部と、前記柱部の柱側部に設けられて本固定用取付孔に係合する係合凸部と、前記柱側部における前記係合凸部と干渉しない位置に設けられて前記基板側が拡開して仮固定用取付孔に係合する係合弾性腕と、本固定時には前記係合弾性腕を閉じた状態で前記柱側部に保持するつぼみ保持手段とを有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕は、先端部が基部よりも肉厚が薄いことを特徴としている。
【0008】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕の先端部を回動可能に支持する薄肉ヒンジ部を設けたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕の先端部が前記柱部側に折曲形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕が、所定間隔で設けられている一対の腕部と、この腕部の先端を連結する連結部とから門型に構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕が設けられている前記柱側部に、門型の前記係合弾性腕の空間に対応する凸部が設けられていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明にかかるクリップは、前記係合弾性腕の基端部に当該係合弾性腕の厚さ方向に突出した突条が設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明にかかるクリップは、前記つぼみ保持手段が、前記係合弾性腕に設けられている係止凸部と、前記柱側部に設けられて前記係止凸部を係止する係止凹部から構成されることを特徴としている。
【0014】
また、本発明にかかるクリップは、前記係止凹部が、前記柱側部に設けられたスリットであることを特徴としている。
【0015】
また、本発明にかかるクリップは、前記薄肉ヒンジ部または前記折曲部が、前記係合弾性腕の一対の腕部を連結する連結部に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クリップを内装材やボディーパネルから取り外す際に、内装材の孔縁に仮固定腕が係止したり、引っ掛かることを防止して、取り外し不能となったり、或いは、仮固定腕が破損するのを防止したクリップが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のクリップに係る実施形態を示す斜視図、図2は図1中II方向から見たクリップの図、図3は図1中III方向から見たクリップの図、図4は図2中IV−IV位置の断面図、図5は底面図、図6(A)〜(C)は係合凸部の詳細図、図7は係合弾性腕の詳細図、図8は係合弾性腕の別の例が示されている。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態であるクリップ10は、基板11の一方の面側に設けられた頭部20と、基板11の他方の面側に立設された柱部30とから構成されている。柱部30は、H型柱34の断面H形の凹部に対応する位置に設けられて基板11側が拡開して本固定用取付孔40(図10参照)に係合する係合凸部31と、H型柱34の断面H形の中心を基準として前記係合凸部31とは90°の角度位置に係合凸部31と干渉しない様に設けられて基板11側が拡開して仮固定用取付孔41(図9参照)に係合する係合弾性腕32と、本固定時には係合弾性腕32を閉じた状態でH型柱34に保持するつぼみ保持手段33とを有している。
【0019】
頭部20は、例えばサンバイザーの軸を保持するものであり、先端21が湾曲して内側にサンバイザーの軸を保持するための収納空間22を有している。
なお、ここではサンバイザーを保持するためのクリップを例示したが、これに限るものではなく、単に内装材を車体パネルに取付けるための締結具等種々のものに適用することもできる。
【0020】
柱部30は、図4に示すように、中央に腹板34aを有し、この腹板34aの両端にフランジ34bを各々設けて断面H形をなし、腹板34aとフランジ34bに囲まれたところに凹部34eを有してH型柱34が形成されており、H型柱34の先端(図2において下端)であるフランジ34bの先端(下端)および両フランジ34b、34b間には、係合弾性腕32の厚さ方向に突出した突条として矩形状の枠材35が設けられている。これにより、運搬中や取付時等に係合弾性腕32の基端部に傷がつくのを防止している。
また、柱部30の4隅の角部に該当するフランジ34bの両端部分は、内側に弾性変形可能となっており、フランジ34bの角部はエッジを除去して滑らかなアール状に加工されて柱部30は全体として角部は丸みを帯びている。また、図1に示すように、フランジ34bの中央部には、係止凹部であるスリット34cが設けられており、このスリット34cの上側には凸部としての係止ブロック34dが設けられている。
【0021】
枠材35の図2中上側には、両フランジ34b、34bの間に係合凸部31が各々設けられている。図6(A)に示すように、この係合凸部31は全体矩形状をしており、中央部31dが高くなって、四方に広がるように上側傾斜面31a、下側傾斜面31b、側面傾斜面31c、31cが各々設けられている。図6(B)、(C)に示すように、上側傾斜面31aは、本固定時に車体パネル40aの本固定用取付孔40に係止される係合部であり、平行な凹凸31eが複数設けられて滑り止めを形成している。また、左右両側部にも側面傾斜面31c、31cが設けられており、先端部31dの幅が狭くなっている。なお、左右の側面傾斜面31c、31cおよび下側傾斜面31bは平坦面となっている。
【0022】
また、図3に示すように、係合凸部31の上側傾斜面31aは、常時は柱部30のH型柱34の枠材35よりも外側に突出しているが、押圧力が作用すると係合凸部31はフランジ34b、34b間の凹部34eの内部に弾性変形して収納されるようになっている。なお、押圧力が除去されると、元の位置に復帰して両フランジ34b、34bの先端よりも突出するようになっている。
【0023】
図3および図7(A)に示すように、係合弾性腕32は所定間隔で設けられている一対の腕部32aと連結部32bとから門型に構成されており、係合弾性腕32の面内における変形を防止している。この係合弾性腕32は、常時は図7(B)に示すように、所定角度でH型柱34のフランジ34bから開くように付勢されており、係合弾性腕32をつぼめる方向(矢印A方向)に外力が作用すると弾性変形するようになっている。また、図7(B)に示すように、係合弾性腕32では、先端部32cが基部32dよりも肉厚が薄く形成されており、先端部32cは内側(矢印A側)に例えば90度折り曲げられて形成されている。従って、先端部32cに内側向きの外力が作用すると、先端部32cは弾性変形し、外力が取り除かれると元の90度に復帰するようになっている。
【0024】
なお、連結部32bの上側部分を先端部32cとして薄肉とすることもできるし、連結部32b全体を先端部32cとして薄肉とすることもできる。
また、図8に示すように、先端部32cを回動可能に支持するために、肉厚が薄い薄肉ヒンジ部32eを設けて容易に回動できるようにしてもよい。この薄肉ヒンジ部32eを連結部32bに設けることができるが、腕部32aに設けるようにしてもよい。薄肉ヒンジ部32eを設ける場合には、先端部32cの肉厚を基部32dの肉厚と同じにすることも可能である。
【0025】
図7(B)に示すように、腕部32aの柱側部であるH型柱34のフランジ34bに対向する側の中央部付近には、つぼみ保持手段33が設けられている。このつぼみ保持手段33は、腕部32aをつぼめた状態でフランジ34bに固定するものであり(図11参照)、例えば腕部32aから突出して先端に係止凸部としての膨出部33aを有するものと、図1に示すように、フランジ34bに設けた係止凹部としてのスリット34cとで構成することができる。従って、係合弾性腕32をH型柱34側につぼめて、膨出部33aをスリット34c内に押し込んで係止することにより、係合弾性腕32はつぼんだ状態で保持されることになる。なお、前述したように、H型柱34の外面には係止ブロック34dが突出して設けられており、この係止ブロック34dは係合弾性腕32の一対の腕部32aおよび連結部32bによって囲まれる空間32fに位置するように配置されている。これにより、つぼんだ状態の係合弾性腕32を所定の位置に保持するようになっている。係止ブロック34dの高さ位置としては、パネル40aと重なるところが望ましい。パネル40aの厚さのバリエーションを考慮し、最も厚いものから最も薄いものまで対応可能な様に高さ範囲の所定長さにわたって設けられている。また、係止ブロック34dの突出量はパネル40aの孔寸法LB1と同一またはLB1より僅かに小さくなるよう、フランジ34bからの突出高さが設定されていることが望ましい。また、係合弾性腕32の厚さよりも大きく設定されていもよい。これにより、パネル取付時において、両側に設けた比較的剛で強固な係止ブロック34dが、金属パネル孔縁に接触して、又は、狭い間隔で対峙して、横ズレを防止し、一方、柔軟で破損し易い腕部32aは、係止ブロック34dのまわりの空所に入り込んで金属パネル孔縁に強く当接したり、挟まれることを防止して、破損・変形することが防止できる。
【0026】
また、図2に示すように、柱部30の先端(図2において下端)には、基板11から垂下する腹板34aの延長上であって先端(下端)に向かって尖った三角形状をした先端部36が設けられており、先端部36には同様に基板11から腹板34a上を垂下するフランジ36aが設けられている。つまり、正面から見ると下方へとがった三角形状で、下方から見ると図5の様に十字状を成すことでクリップ10を本固定用取付孔40および仮固定用取付孔41に挿入し易くなっている。
【0027】
次に、クリップ10の取付動作について説明する。
図9はクリップを内装材に仮固定した状態を示す側面図、図10はクリップを車体パネルに本固定した状態を示す正面図、図11はクリップを車体パネルに本固定した状態を示す側面図、図12は本固定用取付孔および仮固定用取付孔を示す平面図である。
図12に示すように、内装材41aに設けられている仮固定用取付孔41の大きさはLA1×LA2であり、車体パネル40aに設けられている本固定用取付孔40の大きさはLB1×LB2である。なお、LA1>LB1、LA2>LB2である。また、取付孔40、41を正方形とすることもできる。
【0028】
クリップ10を車体パネル40aの本固定用取付孔40(図10参照)に取付ける際に、まず、図9に示すように、クリップ10を内装材41aの仮固定用取付孔41に仮固定する。すなわち、クリップ10を先端部36から内装材41aに設けられている矩形状の仮固定用取付孔41に押し込むと、開いている係合弾性腕32が内装材41aの仮固定用取付孔41の周縁部に押されてつぼむ。このとき、係合弾性腕32が完全につぼむと、係合弾性腕32に設けられている膨出部33aがH型柱34に設けられているスリット34cに係止されて係合弾性腕32が広がらなくなるので、仮固定用取付孔41の大きさLA1を、膨出部33がスリット34cに嵌合しない大きさに設定しておく。
【0029】
図9に示すように、係合弾性腕30が仮固定用取付孔41を通り過ぎると、係合弾性腕30はその弾性により先端部32c側を開き、先端部32cにより内装材41aの裏面(図9においては下面)を係止する。このとき、先端部32cは基部32dよりも肉厚が薄く形成されており、内装材41aの厚さに応じて先端部32cが曲がる。すなわち、図9に示すように、内装材41aの厚さがT1の時には先端部32cの角度はθ1となり、内装材の厚さがT2の時には先端部32cの角度はθ2となる。従って、先端部32cの角度が変化することにより、厚さが異なる内装材41aに対しても、クリップ10を仮固定することができる。
【0030】
本固定する際には、図9に示すようなクリップ10を仮固定した内装材41aを車体パネル40aに重ね、クリップの先端部36を車体パネル40aの本固定用取付孔40に押し込む。図11に示すように、本固定用取付孔40の幅LB1は、柱部30の枠材35より大きめで係合弾性腕32を押圧してつぼめる大きさであり、この本固定用取付孔40を通過することにより係合弾性腕32はつぼんでつぼみ保持手段33である膨出部33aをH型柱34のスリット34cに押し込んで嵌合させることになる。このため、係合弾性腕32dはつぼんだ状態で固定されることになる。このとき、H型柱34のフランジ34bに設けられている係止ブロック34dが係合弾性腕32の一対の腕部32aの間に位置するので、係合弾性腕32を正規の位置に収納するとともに、係止ブロック34dが本固定用取付孔40と接触し、クリップ10のガタツキや振れを防止することができる。
【0031】
クリップ10の柱部30を本固定用取付孔40に押し込むと、本固定用取付孔40の内周面が枠材35の外側に突出している係合凸部31の下側斜面31bに沿って押圧し、係合凸部31を徐々に本固定用取付孔40の内側に変位させて通過する。係合凸部31は、本固定用取付孔40を通過すると、その弾性により再度本固定用取付孔40の外側に変位して、上側傾斜面31aが本固定用取付孔40を係止してクリップ10を車体パネル40aに本固定する。このとき、上側傾斜面31aの凹凸31eが段階的に本固定用取付孔40の周縁部を係止するので、クリップ10を確実に取付けることができる。
【0032】
以上、前述したクリップ10によれば、クリップ10を内装材41aに仮固定するための係合弾性腕32の先端に設けた薄肉の先端部32cが内装材41aの厚さの変化に対応して変形するので、ガタツキを防止して確実に仮固定できる。
【0033】
次に、本発明に係るクリップであって、車体パネル40aから取り外し可能な構造について説明する。
図13は本固定用取付孔にクリップを取り付けた状態を示す平面図、図14は本固定用取付孔の斜視図、図15(A)〜(C)はクリップの取り外し時におけるクリップの回転と係合凸部との関係を示す説明図である。
【0034】
前述したように、車体パネル10aから取り外し可能なクリップ10は、基板11の一方の面側に設けられた頭部20と、基板11の他方の面側に立設された柱部30と、柱部30のH型柱34に設けられて取付孔である本固定用取付孔40に係合する係合凸部31とを有している。そして、柱部30が本固定用取付孔40の内部において回転可能であり、係合凸部31が取付孔40の対向する一対の平面部42、42によって係止されるとともに、本固定用取付孔40の対向する他の一対の側に設けられている押圧部43、43により押圧されて本固定用取付孔40から取り外し可能となっている。
【0035】
ここで、押圧部43としては、図13および図14に示すように、矩形状の本固定用取付孔40の対向する二辺を内装材41aと反対側(図14において裏面側)に「く」字状に曲げ上げて形成することができる。すなわち、押圧部43は、クリップ10を取付けた際に仮固定に用いられた係合弾性腕32側に位置することになる。
【0036】
また、柱部30が本固定用取付孔40の内部において回転可能である必要があるため、柱部30の長辺が本固定用取付孔40の短辺より短くするのが望ましい。また、柱部30の隅部が弾性変形可能となるように、例えばH型柱34のフランジ34bを弾性変形しやすい構造とするのが望ましい。また、柱部30の隅部となるフランジ34bの角部をラウンド加工するのが望ましい。さらに、柱部30を回転させたときに車体パネル40aと干渉する位置のフランジ34bに切欠きを設けて、柱部30が容易に回転できるようにするのが望ましい。
【0037】
次に、クリップ10の取り外し動作について説明する。図15(A)〜(C)には、取り外しの段階が示されている。
図10および図11に示すように、車体パネル40aの本固定用取付孔40に取付けられ、係合凸部31により本固定用取付孔40に係止されているクリップ10を取外すには、クリップ10を柱部30を中心として旋回することにより、係合凸部31を取付孔40の対向する一対の端面に設けられている押圧部43、43により押圧して、係合凸部31の係止を解除することにより取外すことができる。
【0038】
すなわち、図15(A)に示すように、本固定状態では、クリップ10の係合凸部31の上側傾斜面31aが本固定用取付孔40の周縁部を係止して、クリップ10が脱落しないように固定している。この状態から、図15(B)に示すように、クリップ10の柱部30を本固定用取付孔40に対して相対的に旋回させると、本固定用取付孔40の周縁部に設けられている押圧部43との接触点が徐々に係合凸部31の上側傾斜面31aに沿って下方(図15(B)の断面図中下方)に移動する。このとき、係合凸部31の側面には、側面傾斜面31cが設けられているので、旋回し易くなっている。そして、図15(C)に示すように、柱部30の旋回角度が90度近くなると、押圧部43との接触点が係合部である上側傾斜面31aから外れて、下側傾斜面31bへ移動する。
【0039】
係合凸部31に設けられている下側傾斜面31bは、先端の係合部である上側傾斜面31aから取り外し方向(図15(C)断面図中上方向)に拡がるテーパーとなっている。このため、係合凸部31による係止を解除して着脱可能クリップ10を所定距離取外し方向に引き出した後は、上側傾斜面31aが係止凸部31を取り外し方向に付勢するので、スムーズにクリップ10を本固定用取付孔40から取外すことができる。
なお、仮固定に用いられていた係合弾性腕32は、本固定時につぼみ保持手段33によってつぼんだ状態に保持されてH型柱34のフランジ34bに略密着しているので、クリップ10の柱部30を本固定用取付孔40から引き抜く際に邪魔にならない。
【0040】
以上、前述した着脱可能クリップ10によれば、クリップ10を旋回させることにより、本固定用取付孔40からクリップ10を壊すことなく容易且つ完全に取外すことができるので、取外したクリップ10を再度使用したりあるいはリサイクルすることができる。なお、クリップ10は一体成形可能となっているので、従来の着脱可能クリップのように二部品からなる場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0041】
なお、本発明のクリップは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、本固定用取付孔40に設ける押圧部43として対向する二辺を内装材41aと反対側に「く」字状に曲げ上げて形成した場合について説明したが、この他、図16に示すように、押圧部44を本固定用取付孔40の対向する二辺を内装材と反対側、すなわちクリップ10の係合凸部31側に折り曲げて形成することもできる。さらに、本発明に係るクリップは本固定用取付孔40の形状は矩形に限定されず、多角形孔や丸孔にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のクリップに係る実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1中II方向から見たクリップの図である。
【図3】図1中III方向から見たクリップの図である。
【図4】図2中IV−IV位置の断面図である。
【図5】底面図である。
【図6】(A)〜(C)は係合凸部の詳細図である。
【図7】(A)、(B)は係合弾性腕の詳細図である。
【図8】係合弾性腕の別の例を示す側面図である。
【図9】クリップを内装材に仮固定した状態を示す側面図である。
【図10】クリップを車体パネルに本固定した状態を示す正面図である。
【図11】クリップを車体パネルに本固定した状態を示す側面図である。
【図12】(A)は本固定用取付孔および仮固定用取付孔を示す平面図、(B)は断面図である。
【図13】本固定用取付孔にクリップを取り付けた状態を示す平面図である。
【図14】本固定用取付孔の斜視図である。
【図15】(A)〜(C)はクリップの取り外し時における回転と係合凸部との関係を示す説明図である。
【図16】本固定用取付孔の別の例を示す斜視図である。
【図17】従来のクリップを示す分解斜視図である。
【図18】クリップを取付けたときの断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 クリップ
11 基板
20 頭部
30 柱部
31 係合凸部
32 係合弾性腕
32a 腕部
32b 連結部
32c 先端部(折曲部)
32d 基部
32e 薄肉ヒンジ部
33 つぼみ保持手段
33a 膨出部(係止凸部)
34c スリット(係止凹部)
34d 係止ブロック(凸部)
35 枠材(突条)
40 本固定用取付孔
41 仮固定用取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面側に設けられた頭部と、前記基板の他方の面側に立設された柱部と、前記柱部の柱側部に設けられて本固定用取付孔に係合する係合凸部と、前記柱側部における前記係合凸部と干渉しない位置に設けられて前記基板側が拡開して仮固定用取付孔に係合する係合弾性腕と、本固定時には前記係合弾性腕を閉じた状態で前記柱側部に保持するつぼみ保持手段とを有することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記係合弾性腕は、先端部が基部よりも肉厚が薄いことを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記係合弾性腕の先端部を回動可能に支持する薄肉ヒンジ部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記係合弾性腕の先端部が前記柱部側に折曲形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のクリップ。
【請求項5】
前記係合弾性腕が、所定間隔で設けられている一対の腕部と、この腕部の先端を連結する連結部とから門型に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のクリップ。
【請求項6】
前記係合弾性腕が設けられている前記柱側部に、門型の前記係合弾性腕の空間に対応する凸部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
前記係合弾性腕の基端部に当該係合弾性腕の厚さ方向に突出した突条が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のクリップ。
【請求項8】
前記つぼみ保持手段が、前記係合弾性腕に設けられている係止凸部と、前記柱側部に設けられて前記係止凸部を係止する係止凹部から構成されることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項9】
前記係止凹部が、前記柱側部に設けられたスリットであることを特徴とする請求項8に記載のクリップ。
【請求項10】
前記薄肉ヒンジ部または前記折曲部が、前記係合弾性腕の一対の腕部を連結する連結部に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−105236(P2006−105236A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291413(P2004−291413)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】