説明

クリンカの製造方法

【課題】廃棄物や副産物等のリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料を、ロータリーキルンによって安定的に焼成し、土木資材として利用できる水和活性の無い或いは低いクリンカを得る技術を提供し、もってリサイクル資源の有効利用を促進すること。
【解決手段】焼成に際して液相と固相とが適度な量比で共存する焼成温度域の幅が狭いリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料をロータリーキルンによって焼成し、クリンカを製造するクリンカの製造方法であって、前記焼成原料中に、10〜50質量%の難溶融性粒子を存在させた状況下で焼成を行なうこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木資材として利用できる水和活性の無い或いは低いクリンカの製造方法に関するもので、特に、廃棄物や副産物等のリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料をロータリーキルンによって安定的に焼成するクリンカの製造方法に関するものである。
なお、本明細書において言う上記クリンカとは、ガラス相を5〜30質量%程度含む半溶融焼成物をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリーキルンでの焼成は主としてセメント製造で行なわれ、焼成品はセメントクリンカであったが、セメント需要の減少により遊休キルンの活用が検討され、セメントクリンカ以外の焼成物の製造とその活用についても、種々検討されている。
例えば、人工骨材は、膨張頁岩や膨張粘土などの原料を粉砕して粒度調整し、ベントナイトなどの粘結性材料や発泡剤等の種々の副原料を加えて組成調整した後に、造粒ないし押出成形したものをロータリーキルンを用いて高温で焼成して製造されている。このような人工骨材は、軽量、高強度であって、コンクリート骨材として使用するときの流動性が良く、さらには吸水性が低いなどの付加価値を高めたものである。
【0003】
しかし、焼成物を低級土木資材として用いる場合は、高付加価値を必要とせず、埋め戻し材、サンドコンパクションなどの用途では、品質のバラツキもある程度許容されるので、原料の間口を広げることができ、廃棄物、副産物等のリサイクル資源の利用も近年においては種々検討されている。
例えば、産業廃棄物、一般廃棄物、或いは建設発生土などの廃棄物を粉砕したものを主原料とした焼成原料を、ロータリーキルンにそのまま投入し、土木資材等に使用し得るクリンカを製造する試みもなされている(例えば、特許文献1或いは特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−13660号公報
【特許文献2】特開2004−244304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セメント調合原料以外の粘土鉱物や、リサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料は、一般的にセメント調合原料に比べて焼成可能な温度幅(固相と液相が適度に混在する焼成温度域の幅)が狭く、キルン内の温度の揺らぎによって急に液相量が多くなり、クリンカ状態を維持できず、キルン内壁に融着が生じたり、巨大クリンカが生成されてしまうなど、ロータリーキルンによる連続的な安定焼成が困難であることから、これらの焼成原料からのクリンカの製造は、まだ大きく普及していないのが現状であった。
【0006】
本発明は、上述した背景技術に鑑み成されたものであって、その目的は、焼成に際して液相と固相とが適度に共存する焼成温度域の幅が狭いリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料を、ロータリーキルンによって安定的に焼成し、土木資材として利用できる水和活性の無い或いは低いクリンカを得る技術を提供し、もって遊休キルンの活用と共にこれら廃棄物や副産物等のリサイクル資源の有効利用を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、焼成に際して液相と固相とが適度に共存する焼成温度域の幅が狭いリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料をロータリーキルンによって焼成し、クリンカを製造するクリンカの製造方法であって、焼成原料中に、10〜50質量%の難溶融性粒子を存在させた状況下で焼成を行なうこととした。
【0008】
ここで、上記本発明において、上記難溶融性粒子の溶融温度(液相化温度)が上記主原料の溶融温度(液相化温度)より100℃以上高いものであること、或いは上記主原料の平均粒子径が20〜30μmであり、上記難溶融性粒子の平均粒子径が100〜300μmであること、また、上記難溶融性粒子が石英粒子を主体とした砂、電炉のスラグ、炭化珪素、グラファイト、砕石ダストのいずれか1種以上であること、更には、上記焼成原料の水硬率(HM)が0.05〜1.1であることは、いずれも好ましい本発明の実施の形態である。
なお、本明細書において言う上記リサイクル資源とは、逆有償、即ちお金を払って引き取ってもらう所謂廃棄物や副産物等を含む広い概念で用いている。また、上記溶融温度(液相化温度)とは、概ね対象物質の80質量%以上が液相になる温度をいう。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明に係るクリンカの製造方法によれば、焼成原料中に所定量の難溶融性粒子を存在させた状況下で焼成を行なうこととしたため、この難溶融性粒子は焼成中において常に固相として振る舞い、キルン内の温度の揺らぎによって急激な温度上昇があっても、一定量の固相が焼成中に常に存在することとなり、キルンの厳格な温度管理を行なうことなく、部分溶融によるクリンカリングが良好に行なわれ、焼成中に液相を生成し易いリサイクル資源の粉末を主原料としたクリンカを安定的に製造することが可能となる。
従って、焼成原料として用いることができるリサイクル資源の選択範囲を広げることができる。
また、添加した難溶融性粒子は反応に殆ど関与せず、その物理化学的性状はクリンカ中においてそのまま維持されるため、例えば酸化スラグのような高密度のものを難溶融性粒子として用いた場合には、クリンカの密度を改善することができ、また、Cr6+の生成などが起こって反応しては困るような例えばCrの多い鋳物砂を難溶融性粒子として用いた場合には、該粒子をあまり反応させることなくクリンカ中に封じ込め、資源として再利用することができる。
さらに、本発明によって得られたクリンカは、埋め戻し材、サンドコンパクション、路盤材などの土木資材として有効に利用できるため、処理に困っていた多くの廃棄物や副産物をリサイクル資源として、その再利用の拡大化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、上記した本発明に係るクリンカの製造方法の実施の形態を、詳細に説明する。
【0011】
本発明においては、焼成に際して液相と固相とが適度に共存する焼成温度域の幅が狭いリサイクル資源の粉末を主原料として用いる。即ち、一般的にロータリーキルンによる焼成が困難な廃棄物や副産物等のリサイクル資源の粉末を主原料として用いる。
このようなリサイクル資源として用いることができる廃棄物には、産業廃棄物としては、例えば、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等)、建設廃材、コンクリート廃材、ボーリング廃土、各種焼却灰(例えば、石炭灰、焼却飛灰等)、廃鋳物砂、廃ガラス、等が挙げられる。また、一般廃棄物としては、例えば、都市ごみ焼却灰、浄化槽残渣等が挙げられる。また、副産物には、高炉スラグ、水砕スラグ、建設現場や工事現場等から発生する土壌や残土、河川浚渫土等が挙げられる。
【0012】
本発明においては、上記したようなリサイクル資源のいずれか一種以上が用いられ、該リサイクル資源を、粉砕機、例えばセメント製造設備であるジョークラッシャ、ハンマークラッシャ、ディスクミルなどの粗砕機、粉砕機を用いて、好適には平均粒子径が20〜30μmに粉砕された該リサイクル資源の粉末が、主原料として用いられる。
【0013】
また、本発明においては、必要に応じて上記リサイクル資源の粉末に組成調整材を混合し、原料の組成が調整される。
組成調整材としては、石灰石粉末、またはセメント調合原料、再生骨材を製造する際に発生する副生微粉、セメントダストなどを好適に用いることができる。これらのうち、セメント調合原料は、これを焼成すればセメントクリンカとなるものであり、新たにセメント鉱物(固相)を生成するので好ましい。
【0014】
また、上記リサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料は、その水硬率(HM)が0.05〜1.1に調整されることが好ましい。
これは、水硬率が0.05未満のリサイクル資源は殆ど見当たらないので当該技術を適用する機会が無い。一方、水硬率が1.1を上回ると、セメントクリンカ鉱物が生成され易くなり、物理化学的に固相と液相の量比が温度変化によって変化し難くなるので、本願発明の効果が顕著でなくなる。
なお、水硬率は、CaO/[ SiO2 +A12 3 +Fe2 3 ] によって算出される値である。この水硬率の調整は、上記組成調整材の添加等によって行なえば良い。また、本明細書において言う上記焼成原料とは、上記リサイクル資源の粉末からなる主原料、必要に応じて混合される上記組成調整材、そして後に説明する難溶融性粒子等を含む焼成するものの全体を指していう。
【0015】
また、セメント製造に用いられるロータリーキルンでの好適焼成温度である1000〜1500℃で焼成するためには、水硬率の設定範囲を決める理由からして、上記リサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料は、CaO−A12 3 −SiO2 成分系において、CaO量が5〜50質量%程度の範囲に調整されることが好ましい。
【0016】
上記リサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料は、例えば、セメントを製造するロータリーキルン、人工骨材を製造するロータリーキルン、或いは廃棄物処理を行なうロータリーキルン等を用いて焼成される。
本発明は、これらのロータリーキルンによる焼成原料の焼成に際して、原料に予め難溶融性粒子を混合しておく、或いは焼成中の原料に対して難溶融性粒子を散布する等の方法によって添加し、焼成原料中に所定量の難溶融性粒子を存在させた状況下で焼成を行なうことに最大の特徴を有する。
【0017】
即ち、本発明は、液相を生成し易いリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料中に所定量の難溶融性粒子を存在させた状況下でロータリーキルンでの焼成を行なことにより、キルン内の温度の揺らぎによって急激な温度上昇があって該主原料の液相化が進んでも、一定量の固相が常に存在する状況を形成し、液相と固相とのバランスを保つことにより実質的に焼成可能な温度幅を広げ、キルンの厳格な温度管理を行なうことなく、部分溶融によるクリンカリングを良好に行なわせ、該焼成原料をロータリーキルンによって安定的に焼成するものである。
なお、本明細書において言う上記難溶融性粒子とは、焼成温度での焼成中に容易に液相化せず、固相としての役割を果たし、少なくとも一部が焼成の最後までクリンカ中に残るものをいう。
【0018】
上記焼成原料中に存在させる難溶融性粒子としては、溶融温度(液相化温度)自体が主原料である廃棄物粉末よりも高いもの、或いは焼成温度で一部溶融するものの主原料であるリサイクル資源の粉末に比して粒径が大きく液相生成が遅いものが挙げられる。
上記溶融温度(液相化温度)自体が主原料であるリサイクル資源の粉末より高い難溶融性粒子は、その溶融温度(液相化温度)が主原料であるリサイクル資源の粉末よりも100℃以上、更には150℃以上高いものであることが好ましい。
これは、主原料と該難溶融性粒子とで粒径に大きな差がない場合、この程度の溶融温度差を難溶融性粒子が有していなければ、キルン内の温度の揺らぎを考慮した場合、焼成中に常に固相として振る舞うことは困難であるためである。このような難溶融性粒子としては、シリカ質粒子、アルミナ質粒子、或いは結晶度の良い電炉スラグ粒子などが挙げられる。
なお、本明細書において言う上記溶融温度(液相化温度)とは、前述したように対象物質の80質量%以上が液相になる温度をいう。
また、上記焼成原料に比して粒径が大きい難溶融性粒子は、その平均粒子径が100〜300μmであることが好ましい。
これは、主原料であるリサイクル資源の粉末は、上記したように平均粒子径が20〜30μm程度に粉砕されたものが好適に使用されるため、平均粒子径100μm以上の粒子でなければ、キルン内の温度の揺らぎを考慮した場合、その一部が溶融したとしても焼成中に常に固相として振る舞うことは困難であるためであり、逆に平均粒子径300μmを越える大径の粒子を用いる場合には、その調達が難しいことと、主原料と該難溶融性粒子の混合物においては搬送中に細粉で乾燥した主原料粉末と分離し易いことなどから好ましくない。
【0019】
上記難溶融性粒子として好適に用いることができるものとしては、石英粒子を主体とした砂、電炉スラグ、炭化珪素、グラファイト、砕石ダスト等を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、また二種以上を混合して用いてもよい。
これら難溶融性粒子の粒径は、D50が100〜300であることが更に好ましい。これは、上記範囲にすることによって、搬送中においても主原料となる細粉との分離がし難く、かつ粒子が分解して液相を形成する速度が遅いか、細粒粒子と接触する縁辺部でのみ焼成反応が進んで反応縁を形成してそれ以上反応が進まないからである。
【0020】
上記難溶融性粒子の含有量は、焼成原料中に10〜50質量%であり、好ましくは20〜30質量%である。
難溶融性粒子の含有量が10質量%に満たない場合には、焼成中に常に固相として振る舞う粒子の量が少なく、主原料の急激な液相生成時に全体として形状を維持できず、安定的にクリンカを製造することが困難となる。逆に難溶融性粒子の含有量が50質量%を越える場合には、主原料から液相が生成しても全体が十分な粘性を得ることができないのでクリンカが形成され難くなり好ましくない。
また主原料であるリサイクル資源の粉末中にもともと難溶融性粒子が含まれている場合は、後から添加する難溶融性粒子の添加量を減らせばよい。本発明において重要な事項は、焼成中の液相と固相との量比のバランスである。概して、液相/(液相+固相)が0.2〜0.3の割合であることが好ましく、焼成原料は、この割合になるように調整されることが好ましい。
【0021】
上記難溶融性粒子の主原料等への添加は、焼成工程でもよいし、原料調整工程でもよい。または、焼成工程と原料調整工程との両方にわけて、難溶融性粒子を主原料等に添加してもよい。
原料調整工程における添加の方法としては、主原料よりも溶融温度(液相化温度)自体が高い難溶融性粒子を用いる場合には、主原料であるリサイクル資源の粉砕工程前に該難溶融性粒子をリサイクル資源に添加し、リサイクル資源と共に混合粉砕してもよく、また難溶融性粒子と主原料であるリサイクル資源とをそれぞれ別々に粉砕し、粉砕後に両者を混合してもよい。また、主原料であるリサイクル資源の粉末に比して粒径が大きい難溶融性粒子を用いる場合には、難溶融性粒子を粉砕することなく、或いは主原料であるリサイクル資源とは別に適度な粒径に粉砕した後、該難溶融性粒子を粉砕後のリサイクル資源に添加混合する。
また、焼成工程における添加の方法としては、焼成中にある主原料に難溶融性粒子を散布することが挙げられ、その散布位置は、焼成中のロータリーキルンの液相生成域またはそれより窯尻(上流)側である。散布方法は、例えば、電炉製錬工程におけるコークスの吹き込みのようにして行なえばよい。
【0022】
焼成原料中に所定量の難溶融性粒子を存在させた状況下で行なう焼成は、その焼成温度を主原料であるリサイクル資源の粉末の溶融温度(液相化温度)と、難溶融性粒子の溶融温度(液相化温度)との間の適度な温度で行なうことにより、固相と液相とが適度に共存する状態で焼成が進行し、部分溶融によるクリンカリングが良好に行なわれ、安定的にリサイクル資源の粉末を主原料としたクリンカを製造することができる。
【0023】
以上の方法によって得られたクリンカは、焼成原料中の反応系によって形成される鉱物やガラスから成る基質と、反応に大きくは寄与しない難溶融性粒子と、前記両者の粒子境界部のリアクションリム(反応縁:難溶融性粒子の粒子境界付近と反応系の平衡反応によって形成される細粒の鉱物の集合体)とから構成されるクリンカとなり、水和活性の無い或いは低いものである。該クリンカは、サンドコンパクション、路盤材、埋め戻し材など土木資材として各種の用途に用いることができる。また、製造されたクリンカは、そのまま使用しても良いが、必要に応じて粉砕し、粒度調整して用いても良い。なお、焼成原料中に発泡剤を添加したり、焼成温度を制御することにより発泡させた発泡軽量クリンカを得ることもできる。また、焼成原料をロータリーキルンのみで焼成するのでなく、例えば加圧焼結も加えることにより、緻密な焼成品を得ることもできる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例と比較例を記載する。
【0025】
リサイクル資源である石炭灰、砕石ダストと、組成調整材である石灰石微粉とを、おおよそ5:1:4の混合比で混合し、粉砕機(振動ミル)で混合粉砕し、平均粒子径20μmの主原料を調整した。その主原料の化学組成及び水硬率、溶融温度を、表1に示す。
なお、化学組成は、X線による乾式分析により測定した。また、溶融温度は、電気炉での形状変化と、ロータリーキルンでのクリンカリング状況から推察して定性的に判断した。
【表1】

【0026】
上記主原料或いは該主原料と次に示す難溶融性粒子とから成る焼成原料を、直径0.6m、長さ6.0mのロータリーキルンに投入し、焼成を行なった。
焼成に際し、実施例1では、溶融温度(液相化温度)が1500℃以上、平均粒子径が50μm程度の珪砂粒子を、難溶融性粒子として、主原料100重量部に対して50重量部となる量(焼成原料中33質量%となる量)を、予め前記調整した主原料に添加混合した。
また、実施例2では、溶融温度(液相化温度)が1500℃以上、平均粒子径が100μm程度の珪砂粒子を、難溶融性粒子として、主原料100重量部に対して20重量部となる量(焼成原料中17質量%となる量)を、ロータリーキルンの焼点手前中心に落下するように、窯前より鉄製パイプと圧送機で吹き込み散布しながら行なった。
また、実施例3では、主原料の平均粒径より明らかに大きい平均粒径200μm程度の流紋岩質の砕石ダスト(相生ダスト)を、難溶融性粒子として、主原料100重量部に対して30重量部となる量(焼成原料中23質量%となる量)を、予め前記調整した主原料に添加混合した。
さらに、比較例として、難溶融性粒子を添加することなく、上記主原料をそのままロータリーキルンによって焼成した。
なお、焼成温度は約1260℃、焼成原料投入量は100kg/hで行なった。また、キルンバーナ燃料は微粉炭と重油の混焼とした。
【0027】
実施例1,2,3の製造方法により得られたクリンカの物性を、表2に示す。
なお、表2中の絶乾密度及び吸水率は、JIS A 1.135に準拠して測定した。また、圧壊荷重は、JIS Z 8841に準拠して測定した。
【表2】

【0028】
実施例1,2,3の製造方法は、いずれもロータリーキルンによる原料の安定した焼成運転が可能であった。また、表2に示されているように、クリンカの吸水率は5.0%以下であり、圧壊荷重は500N以上で、良質なものであった。また、製品歩留りも、80%程度と高いものであった。
一方、比較例の製造方法は、初期において好ましい焼成運転が行なえたが、その後粉化や融着を繰り返し、立て直しに時間を要し、長時間の安定運転ができず、製品歩留りは20%と非常に低いものであった。そのため、上記物性の測定は行なわなかった。
【0029】
以上、本発明の実施例を比較例と共に記載したが、本発明は、何ら既述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内で、種々の変更が可能であることは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成に際して液相と固相とが適度に共存する焼成温度域の幅が狭いリサイクル資源の粉末を主原料とした焼成原料をロータリーキルンによって焼成し、クリンカを製造するクリンカの製造方法であって、前記焼成原料中に、10〜50質量%の難溶融性粒子を存在させた状況下で焼成を行なうことを特徴とする、クリンカの製造方法。
【請求項2】
上記難溶融性粒子の溶融温度(液相化温度)が、上記主原料の溶融温度(液相化温度)より100℃以上高いことを特徴とする、請求項1に記載のクリンカの製造方法。
【請求項3】
上記主原料の平均粒子径が20〜30μmであり、上記難溶融性粒子の平均粒子径が100〜300μmであることを特徴とする、請求項1に記載のクリンカの製造方法。
【請求項4】
上記難溶融性粒子が、石英粒子を主体とした砂、電炉のスラグ、炭化珪素、グラファイト、砕石ダストのいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のクリンカの製造方法。
【請求項5】
上記焼成原料の水硬率(HM)が、0.05〜1.1であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のクリンカの製造方法。

【公開番号】特開2008−126181(P2008−126181A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316307(P2006−316307)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】