説明

クリンカ処理方法

【課題】近年クリンカの土壌改良材として利用ニーズが高くなったことから、灰処理設備の一部を改良することにより、クリンカの品質を改善し、クリンカの有効利用の拡大を図る。
【解決手段】ボイラー1の下部に設けたクリンカホッパ2にクリンカを堆積し、冷却後ポンプによる循環水流輸送によりクリンカをクリンカ脱水槽5まで移送する一方、ボイラー1からの排ガスを受容する脱硫装置冷却塔7からの排水を、新たに設けた排水汚泥処理装置18により単独処理することで、上記クリンカ脱水槽5からの灰沈殿槽11に供給しない手段をとり、フッ素等が付着・品質低下していたクリンカを有効利用可能とするシステムとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭火力発電所における石炭燃焼に伴い発生するクリンカ(燃え殻)の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭燃焼に伴い多量の石炭灰(フライアッシュ)と燃え殻(クリンカ)が発生する。フライアッシュの大部分は、セメント混和材、海砂代替材として有効利用されているが、ボイラーの炉底から排出されるクリンカは、品質が土壌への利用基準に満たないため、現在ではほとんどが埋立処分されている。
即ち、クリンカの性状は、フッ素等の濃度が土壌に使用するための基準より高く、一部のセメント混和材や試験研究用を除き有効利用できないのが現状である。
【0003】
現状、クリンカは、図2に示す通り、ボイラー1の下部に設けたクリンカホッパ2に堆積し、冷却後ジェットパルジョンポンプ(JPP)による循環水流輸送により配管4を通してクリンカ脱水槽5まで移送し、脱水後コンベア6により船積みしている。
クリンカ脱水槽5から配管10を介して排水を受けるとともに別に工業用水を受ける灰沈殿槽11が設けてあり、この灰沈殿槽11の上澄み水を配管13を介して貯水槽12に供給し、この貯水槽12とJPP3との間に配管14を設け、この配管14中に配したポンプ15により貯水層12からJPP3に給水する。
また、ボイラー1からの排ガスを受容する脱硫装置冷却塔7内の水質を維持する目的で冷却塔循環配管8中に配した排水シックナ9から一定量を抜き出し、排水シックナ9と上記灰沈殿槽11との間の配管16を介してポンプ17により灰沈殿槽11に中和剤を含む水を供給してクリンカ脱水槽5からの排水中に含まれるスラッジ分の処理を実施している。
【0004】
ボイラーの燃料として使用されている石炭には、フッ素、ホウ素等の微量元素が含まれているが、フッ素は揮発性が高いため、燃焼ガスとしてボイラーの火炉から煙道に排出される。
煙道には脱硫装置が設置されており、フッ素は脱硫装置内の冷却塔循環水と接触し、吸収され、結果として冷却塔7内の循環水はフッ素濃度が高くなる。
クリンカ処理系統では、この冷却塔循環水を抜き出し、上記した通りスラッジ処理を実施しているが、抜き出し水中のフッ素によりクリンカの品質が低下していると推定されるから、この抜き出し水の水質性状を分析した。その分析結果、抜き出し水のフッ素の値が高いことから、これによりクリンカの品質が低下すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、近年クリンカの土壌改良材として利用ニーズが高くなったことから、灰処理設備の一部を改良することにより、クリンカの品質を改善し、クリンカの有効利用の拡大を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明のクリンカ処理方法は、ボイラーの下部に設けたクリンカホッパにクリンカを堆積し、冷却後ポンプによる循環水流輸送によりクリンカをクリンカ脱水槽まで移送する一方、ボイラーからの排ガスを受容する脱硫装置冷却塔からの排水を、別に設けた排水汚泥処理装置により単独処理することで,上記クリンカ脱水槽からの灰沈殿槽に供給しない手段をとり、フッ素等が付着・品質低下し埋立処分していたクリンカを有効利用可能するシステムとしたことを特徴とする。
そうした中でクリンカ処理系統の硬質スケールからフッ素等が析出し水質低下が認められたため,上記クリンカ脱水槽からの排水を受ける沈殿槽及びこの灰沈殿槽からの上澄み水を受ける貯水槽の槽内面のスケールをサンドブラストにより除去を行ったことを特徴とする。
上記脱硫装置冷却塔からの排水を排水汚泥処理装置によりスラッジの分離をし、上澄み排水を排水処理することも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクリンカ処理方法は、ボイラーの下部に設けたクリンカホッパにクリンカを堆積し、冷却後ポンプによる循環水流輸送によりクリンカをクリンカ脱水槽まで移送する一方、ボイラーからの排水ガスを受容する脱硫装置冷却塔からの排水を、上記クリンカ脱水槽からの灰沈殿槽に供給しない手段をとり、クリンカ脱水槽内のクリンカに脱硫装置冷却塔からの排水に含まれるフッ素、ホウ素等の微量元素が堆積することなく、クリンカへのフッ素、ホウ素等の微量元素の堆積をおさえ、従前埋立処理していたクリンカを土壌への利用基準値を満足でき、有効利用可能となった。
また、上記クリンカ脱水槽からの排水を受ける灰沈殿槽、及びこの灰沈殿槽からの上澄み水を受ける貯水槽の槽内面のスケールをサンドブラストにより除去することを特徴とするから、クリンカへのフッ素,ホウ素等の微量元素の堆積をより有効におさえ、クリンカを土壌への利用基準値より一層満足でき、より一層有効利用可能となった。
さらに、上記脱硫装置冷却塔からの排水を排水汚泥処理装置によりスラッジの分離をし、上澄み排水を排水処理することも特徴とするから、脱硫装置冷却塔からの排水を有効に排水処理できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に本発明のクリンカ処理方法の処理系統図を示してあり、図2に示した従前の処理系統図と同一の符号を付した構成は同一の構成である。
即ち、クリンカは図1に示す通り、ボイラー1の下部に設けたクリンカホッパ2に堆積し、冷却後ジェットパルジョンポンプ(JPP)による循環水流輸送により配管4を通してクリンカ脱水槽5まで移送し、脱水後排水して次の工程に移行する。
クリンカ脱水槽5から配管10を介して排水を受けるとともに別に工業用水を受ける灰沈殿槽11が設けてあり、この灰沈殿槽11の上澄み水を配管13を介して貯水槽12に供給し、この貯水槽12とJPP3との間に配管14を設け、この配管14中に配したポンプ15により貯水層12からJPP3に給水する。
また、ボイラー1からの排ガスを受容する脱硫装置冷却塔7内の水質を維持する目的で冷却塔循環配管8中に配した排水シックナ9から一定量を抜き出し、本発明では、この抜き出した排水を灰沈殿槽11に供給することなく、新たに設けた排水汚泥処理装置18に供給し、この排水汚泥処理装置18でスラッジの分離をし、上澄み水を排水処理装置19に排水処理するようにしてある。排水汚泥処理装置18は、装置内で排水を移動させ、移動中にスラッジを沈殿分離するようにした。
【0009】
本発明のクリンカ処理方法によれば、脱硫装置冷却塔7からの排水が灰沈殿槽11に供給されないから、排ガス中のフッ素、ホウ素等の微量元素がクリンカに堆積することがないから、従前方法に比しフッ素等はかなり減少したが、依然として基準値を満足するまでにはいたらなかった。
そこで、クリンカ処理系統の硬質スケールからフッ素等が析出し水質低下が認められたため,沈殿槽・貯水槽内面のスケールをサンドブラストにより除去を実施した結果、基準値を満足することができ、有効利用可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明クリンカ処理方法の処理系統図。
【図2】従前のクリンカ処理方法の処理系統図。
【符号の説明】
【0011】
1 ボイラー
2 クリンカホッパ
3 ジェットパルジョンポンプ
4 配管
5 クリンカ脱水槽
6 コンベア
7 脱硫装置冷却塔
8 冷却塔循環配管
9 排水シックナ
10 配管
11 灰沈殿槽
12 貯水槽
13 配管
14 配管
15 ポンプ
16 配管
17 ポンプ
18 排水汚泥処理装置
19 排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラーの下部に設けたクリンカホッパにクリンカを堆積し、冷却後ポンプによる循環水流輸送によりクリンカをクリンカ脱水槽まで移送する一方、ボイラーからの排ガスを受容する脱硫装置冷却塔からの排水を別に設けた排水汚泥処理装置により単独処理することで、上記クリンカ脱水槽からの灰沈殿槽に供給しない手段をとり、フッ素等が付着・品質低下し埋立て処分していたクリンカを有効利用可能にするシステムとしたことを特徴とするクリンカ処理方法。
【請求項2】
上記クリンカ脱水槽からの排水を受ける灰沈殿槽、及びこの灰沈殿槽からの上澄み水を受ける貯水槽の槽内面のスケールをサンドブラストにより除去することを特徴とする上記請求項1に記載のクリンカ処理方法。
【請求項3】
脱硫冷却塔からの排水を排水汚泥処理装置によりスラッジの分離をし、上澄み排水を排水処理することを特徴とする上記請求項1又は2に記載のクリンカ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−30880(P2009−30880A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195500(P2007−195500)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】