説明

クリーニングシステム

【課題】メンテナンス性に優れ、フィルムなどの薄い被クリーニング材上に付着する異物を除去するような場合でも、被クリーニング材がローラ表面に張り付くのを回避する。
【解決手段】被クリーニング材Sの表面S1にクリーニングローラ11を接触させ、被クリーニング材Sの表面S1上に付着する塵埃などの異物Tを静電気を利用して取り除く。クリーニングローラ11は、芯金11aと、芯金11aの外側に設けられる円筒状の円筒状の内層部11bと、その内層部11bの外側に設けられる円筒状の外層部11cとを備え、外層部11cは50°以上の硬度(JIS−A)を有しかつ内層部11bよりも高抵抗である。クリーニングローラ11の外層部11cを形成する材料としては、被クリーニング材Sの表面上に付着する異物Tを静電気により吸着する電荷を帯電し得るものが選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルム、シートなどの薄い被クリーニング材の表面に付着する異物も除去することができるクリーニングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス基板や、貼り合わせフィルムなどの薄い被クリーニング材の表面上に付着する塵埃などの異物を除去するクリーニングシステムとしては、粘着ローラを用い、それの粘着力を利用して前記異物を除去するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−168188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような粘着ローラでは、平均径1μm以下の異物を取り除くことができず、また粘着ローラの表面(粘着層)に一旦付着した塵埃などの異物を完全に除去するのが困難であり、メンテナンス性に劣る。また、被クリーニング材に粘着ローラをある程度圧力を加えて押し付け、異物を粘着除去するようにしているので、被クリーニング材が例えばフィルムであると、前記異物を除去するだけでなく、フィルムがローラ表面に張り付くおそれがある。
【0004】
そこで、発明者は、電子写真技術を応用し、被クリーニング材から塵埃などの異物を除去する際に、接触帯電によりクリーニングローラの外周面に、前記異物を静電気により吸着する電荷を帯電させれば、前記被クリーニング材から前記クリーニングローラにより前記異物を除去することができることに着想し、本発明をなしたものである。
【0005】
この発明は、メンテナンス性に優れ、フィルム、シートなどの薄い被クリーニング材上の異物(塵埃など)を除去するような場合でも、被クリーニング材がローラ表面に張り付くのを回避して前記異物を除去できるクリーニングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、被クリーニング材の表面に接触しつつ回転しながら前記被クリーニング材に対し相対移動するクリーニングローラを備え、前記被クリーニング材の表面上に付着する塵埃などの異物を前記クリーニングローラによって静電気を利用して取り除くクリーニングシステムであって、前記クリーニングローラは、導電性を有する芯棒と、この芯棒の外側に設けられる円筒状の内層部と、その内層部の外側に設けられる円筒状の外層部とを備え、前記外層部は50°以上の硬度(JIS−A)を有しかつ前記内層部よりも高抵抗であり、前記クリーニングローラの外層部を形成する材料は、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を吸着する電荷を帯電し得るものであることを特徴とする。ここで、外層部の硬度を50°以上とするのは、50°未満であれば、被クリーニング材がフィルムなどの薄いものである場合には、それをクリーニングローラが巻き込むんでしまうおそれがあるからである。また、内層部および外層部を形成する材料は、金属を除く材料(例えば高分子材料)から選択される。前記外層部の硬度は60°以上がより好ましい。
【0007】
なお、 本明細書において、「高抵抗」とは、電気抵抗が高いことを意味する。また、前記外層部の硬度は、外層部を形成する材料で成形された厚さ2mmの平板を用いて測定されるものである。
【0008】
このようにすれば、クリーニングローラの外層部が、内層部よりも高抵抗で、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を吸着し得る電荷を帯電し得る材料からなるので、ローラ表面(外層部)の誘電率を高めて、被クリーニング材に付着する異物を、前記ローラ表面に静電気を利用して吸着させ、被クリーニング材の表面から除去することができる。
【0009】
このように、ローラ表面に異物を静電気により吸着しているだけであるので、クリーニングローラの外周面を水やアルコールで拭くことにより残存異物を前記ローラ表面から容易に取り除くことができ、粘着ローラをクリーニングローラとして利用したクリーニングシステムに比べて、メンテナンス性が優れる。
【0010】
しかも、前記クリーニングローラは外層部を50°以上の高硬度とし、ローラ表面硬度を高めているので、ローラ表面の粘着性を低下させることができる。よって、被クリーニング材がフィルム、シートなどの薄物であっても、薄物である被クリーニング材のローラへの巻き付きを防止して、被クリーニング材表面のクリーニングを実施することができる。
【0011】
さらに、従来の粘着ローラは低硬度にするために軟化剤、オイルなどを添加する必要があるため、粘着ローラ表面にそれら添加剤のブリードが生じるという問題があるが、前記クリーニングローラは外層部を50°以上の高硬度とし、低硬度にする必要がないので、前記粘着ローラに生じるブリードの問題を改善する上で有利である。
【0012】
この場合、請求項2に記載のように、前記内層部は前記外層部よりも低硬度であることが望ましい。
【0013】
このようにすれば、内層部を外層部よりも低硬度とすることができるので、外層部が50°以上の硬度を有していても、ローラ全体としての硬度を従来のローラと同様の低硬度に維持して、ニップ幅を確保することができ、また、異物を噛み込んで被クリーニング材が損傷するという事態の発生を回避することができる。
【0014】
この場合、請求項3に記載のように、前記内層部は導電性を有する弾性材料で形成され、前記外層部はアクリル混合ウレタンあるいはフッ素混合ウレタンで形成されている構成とすればよい。
【0015】
このようにすれば、誘電性の高いウレタンをローラ外周面に用いる場合において誘電極性を調整することができ、アクリル混合ウレタンであればマイナスに帯電しやすい異物が、フッ素混合ウレタンであればプラスに帯電しやすい異物が、被クリーニング材から除去されやすくなる。
【0016】
請求項4に記載のように、前記外層部を形成する材料には、誘電フィラーが混合されていることが望ましい。
【0017】
このようにすれば、誘電フィラーが混合されていることで、ローラ表面の静電容量が高められ、クリーニングローラに対し相対移動する被クリーニング材との接触ないし摩擦帯電などによりローラ表面に必要とする電荷が保持されやすくなり、前記ローラ表面に異物を吸着させ、被クリーニング材上から除去する上で有利となる。
【0018】
請求項5に記載のように、前記クリーニングローラの芯棒に、ローラ外周面に前記異物を静電気により吸着する電荷を帯電させ得る電圧が印加されていることが望ましい。
【0019】
このようにすれば、ローラ外周面に異物を吸着する電荷を帯電させる電圧が印加されていることで、ローラ表面に前記異物を吸着するのに必要とされる高い電位が保持されやすくなる。よって、前記ローラ表面に異物を静電気により吸着させ、被クリーニング材上から除去する上で有利となる。
【0020】
請求項6に記載のように、前記クリーニングローラは、前記内層部が導電性を有する一方、前記外層部が絶縁性を有し、前記被クリーニング材を挟んで、前記クリーニングローラとは反対側にガイドローラが配置され、前記ガイドローラは、導電性を有する芯棒と、前記芯棒の外側に導電性を有する内層部と、前記内層部の外側に絶縁性を有する外層部とを備え、前記ガイドローラの芯棒および前記クリーニングローラの芯棒に対し、前記両芯棒のいずれか一方が他方よりも電位が高くなるように電圧を印加することを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、2本のローラが被クリーニング材を挟んで対向しており、被クリーニング材がクリーニングローラ及びガイドローラが接触する位置において電界強度が最も高くなる。そして、与えられた電界に応じて被クリーニング材上の帯電異物がクリーニングローラに吸着され、除去される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、クリーニングローラの外層部が、内層部よりも高抵抗で、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を静電気により吸着し得る電荷を帯電し得る材料からなるので、前記ローラ表面に、塵埃などの異物を静電気にて吸着させ、被クリーニング材の表面から除去することができる。
【0023】
しかも、前記クリーニングローラは外層部を50°以上の高硬度とし、ローラ表面硬度を高めているので、ローラ表面の粘着性を低下させ、被クリーニング材がフィルム、シートなどの薄物であっても、薄物である被クリーニング材のローラへの巻き付きを防止し、クリーニングを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0025】
図1は本発明に係るクリーニングシステムの一例による、塵埃などの異物を静電気を利用して除去する原理の説明図である。
【0026】
図1に示すように、クリーニングシステム1は、被クリーニング材Sの表面S1に接触しつつ回転しながら前記被クリーニング材に対し相対移動するクリーニングローラ11(帯電体)を備え、このクリーニングローラ11によって被クリーニング材Sの表面S1上に付着する塵埃などの異物T(導体あるいは誘電体)を静電気を利用して取り除くものである。このクリーニングシステム1においては、具体的には図示していないが、クリーニングローラ11が配置されている部位までは、クリーニング前の被クリーニング材Sが第1の搬送手段(図示せず)によって搬入され、クリーニング後の被クリーニング材Sが第2の搬送手段(図示せず)によって搬出されるようになっている。なお、このように被クリーニング材Sが搬送される場合だけでなく、逆に、静止状態に支持されている被クリーニング材Sに対しクリーニングローラ11が移動して、表面S1がクリーニングされるようにすることもできるのはもちろんである。
【0027】
クリーニングローラ11は、導電性を有する芯金11a(芯棒)と、芯金11aの外側に設けられる円筒状の内層部11bと、その内層部11bの外側に設けられ内層部11bよりも高抵抗の材料からなる薄い円筒状の外層部11c(例えば、厚さ30μm程度)とを備え、二層構造となっている。ここで、外層部11cの厚さとしては、2〜500μm(より好ましくは、5〜50μm)が好ましい。これは、外層部11cの厚さが2μm未満ではローラ表面(外層部表面)に電荷が帯電しにくい傾向にある一方、500μmを超える厚さにするのは工業的に効率的でないからである。なお、芯金11aに代えて、導電性を有するカーボン材や合成樹脂複合材等からなる芯棒を用いることもできる。芯棒の体積抵抗としては、107Ωcm以下が望ましい。
【0028】
内層部11bに用いている材料は、外層部11cよりも低硬度あるいは略同一の硬度とされる。内層部11bに用いている材料の電気特性としては、外層部11cよりも低抵抗であれば特に限定されるものではなく、誘電性を有するものであっても導電性を有するものであってもかまわないが、表面抵抗が1010〜1012Ω/□程度であることが好ましい。ただし、芯棒11aよりは高抵抗であることが好ましい。具体的には、導電性を有する弾性材料である、例えばカーボン(導電材)を含むポリエステル系ウレタン等を内部層11bに用いることができる。
【0029】
外層部11cに用いている材料は、50°以上(望ましくは50°以上100°以下、より望ましくは55°以上100°以下、さらに望ましくは65°以上100°以下)の硬度を有する。また、外層部11cは内層部11bよりも高抵抗である。外層部11cは望ましくは108Ω/□以上の表面抵抗、より望ましくは1010Ω/□以上の表面抵抗、さらに望ましくは1011Ω/□以上の表面抵抗を有し、絶縁性を有する。
【0030】
このようなクリーニングローラ11の外層部11bを形成する材料は、被クリーニング材Sの表面S1上に付着する塵埃などの異物Tを静電気により吸着する電荷を帯電し得るものが選択される。つまり、異物Tに帯電される電荷に対し電位差が生じるようなものであればよく、異物Tに対して、帯電序列がプラス側あるいはマイナス側になるものが選択される。
【0031】
なお、被クリーニング材S上に付着している異物に、どのような電荷が帯電するかは、通常、被クリーニング材の種類によっても変わり得るが、被クリーニング材の種類に応じて、外層部11bに用いる材料を選択することができる。
【0032】
本発明におけるクリーニングローラ11の外層部11cを形成する材料の好ましい例としては、ウレタン樹脂が挙げられ、さらにはアクリル混合ウレタンあるいはフッ素混合ウレタンが挙げられる。ここで、「アクリル混合ウレタン」とは、アクリル樹脂(例えば、メタクリル酸ーメタクリル酸メチル共重合体からなる主鎖にアミノエチル基がグラフトされてなるグラフト化合物)とウレタン樹脂(例えば、ポリエステルポリウレタンまたはポリエーテルポリウレタン)との混合物からなるものであり、「フッ素混合ウレタン」とは、ポリウレタンを主成分とし、フッ素基(例えば、炭素を主体とする重合体に担持され、ポリウレタンと共重合体を構成するもの、炭素を主体とする重合体に担持され、かつイソシアネート基(例えば、多官能のブロックイソシアネート)を含有する共重合体)を有する合成樹脂である。
【0033】
前記したクリーニングローラ11によれば、クリーニングローラ11が、クリーニングの対象とする被クリーニング材Sに付着する異物Tに接触することで、静電誘導により異物Tにクリーニングローラ11の外周面とは異なる電荷が帯電され、塵埃などの異物との間に引力が発生し、前記異物が外層部11bの表面に静電気により吸着され、被クリーニング材の表面から異物が除去される。
【0034】
また、外層部11cおよび内層部11bをともに誘電体とする場合には、図2に示すように、外層部11cにおける表面電荷密度は比較的小となり、外層部11cを誘電体、内層部11bを導電体とする場合には、図3に示すように、外層部11cにおける表面電荷密度は比較的大となる。
【0035】
続いて、クリーニングローラの性能についての試験結果について説明する。ここで、実施例1〜9は内層部がカーボン(導電材)を40vol%含むポリエステル系ウレタンで構成され、実施例10,11は内層部がカーボンを含まないポリエステル系ウレタンで構成される。実施例1〜11は外層部が熱可塑性ポリウレタンで構成され、実施例2〜実施例11はそれぞれ外層部が表1,2に記載の添加剤を含む。実施例13は内層部がブチルゴム外層部が熱可塑性ポリウレタンで構成されるものであり、実施例14は外層部が導電材を含まないものである。ただし、「フッ素」はウレタン・フッ素共重合体を、「アクリル」はアミノエチル化アクリルポリマーを、シリコンアクリルはシリコン・アクリル共重合体樹脂を意味する。尚、実施例3の外層部は、熱可塑性ポリウレタンとアクリル樹脂(アミノエチル化アクリルポリマー)とを60:40の割合で混合したものである。
【0036】
比較例1は外層部がないもので便宜的に内層部として記載したカーボンを含むポリエステル系ウレタンのみの単層構造のローラであり、比較例2は同様にブチルゴムのみの単層構造のローラ、比較例3は外層部導電材として、カーボン40phrおよびイオン導電性の機能性帯電防止剤(例えば三光化学工業株式会社製サンコノールMEK−10R)1phrを添加したものである。比較例4〜6は外層部がないもので硬度を変化させたものである。なお、前記実施例および前記比較例のローラの寸法としては、全て外径40mmφ、芯金を除いた部分の長さを250mmとした。
(ローラ硬度ー粘着性試験)
PICMAタックテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、PETフィルムに対する付着力を測定した。ここで、テスト条件は、幅15mm、加圧力500g、圧着時間10s、引き剥がし速度100cm/minとした。ここで、各硬度はJIS−A硬度で、内層硬度および外層硬度は厚さ2mmのシートを作製して、ローラ硬度は所定構造のローラを作製して、それぞれ測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
この表1に示す結果より、内層部硬度よりも外層部硬度を高硬度とし、ローラ全体としてのローラ硬度は低硬度(つまり内層硬度と同程度)に維持したまま、ローラの表面硬度(外層部硬度)を高めることで、ローラ表面の付着力(タック力)が低下することが分かる。
(ウエス拭き取り洗浄試験)
水あるいはアルコール(エタノール)を含ませた布ウエスを、異物が付着したローラ表面に対し一往復させ、水あるいはアルコール(エタノール)で拭いた、水洗浄後、アルコール洗浄後の残留異物を比較した。
【0039】
【表2】

【0040】
この表2に示す結果より、実施例1〜9および13については、水やアルコールでローラ表面を拭いて洗浄した場合に、水の場合でもアルコールの場合でも、異物が確実に除去されることが分かる。よって、水洗浄後もアルコール洗浄後も、残留異物がなく、メンテナンス性に優れる。これは、ローラ表面の付着力が、粘着力ではなく、静電気的な吸着力であることから、簡単に除去できるものと考えられる。
(フィルム張り付き試験)
平板上に静電したPETフィルム(厚さ100μm,50μm)の上を、ローラに1kgの荷重をかけて転がし、フィルムの巻き付きの有無を調べた。
【0041】
【表3】

【0042】
この表3に示す結果より、表面硬度が小さくなると(表2参照)、フィルムの、ローラへの巻き付きがあることが分かる。
(異物除去性能試験1−ローラ表面電位測定試験)
PETフィルム上に異物(平均径10μm、1μm、0.5μmの微粒子)を散布し、1kgの荷重をかけたローラを転がし、異物除去試験を行った。また、このときのローラ外周面の表面電位を測定した。
【0043】
【表4】

【0044】
この表4の結果より、外層部の抵抗値が変化すると、異物除去性能が変化することが分かる。つまり、内層部の抵抗値に対して外層部の抵抗値が小さいと、径が0.5μm、1μmの異物の除去ができず、径が10μmの異物の除去が困難になる。
【0045】
高誘電率の添加剤(例えばチタン酸バリウムεs=1200、酸化チタンεs=83〜183など)を混合することにより(表1,2参照)、外層部の誘電性が高められる。
(イオン化ポテンシャルーローラ表面電位測定試験)
光電子分光装置AC-1(理研計器株式会社)を用いて、ローラ外周面のイオン化ポテンシャルを測定した。また、1kgの荷重をかけたローラをPETフィルム上に転がしたときのローラ外周面の表面電位を測定した。ここで、フッ素はウレタン・フッ素共重合体を、アクリルはアミノエチル化アクリルポリマーである。
【0046】
【表5】

【0047】
この表5の結果より、ローラ外周面の帯電性を、添加剤の添加により制御できることが分かる。
(異物除去性能試験2)
PETフィルム上に異物としての毛(人間の髪の毛:長さ300μm)、アクリル樹脂(100μm大)、スチレン樹脂(100μm大)、テフロン(100μm大)を散布し、1kgの荷重をかけたローラを転がし、異物除去試験を行った。
【0048】
【表6】

【0049】
物質の帯電極性により電位差が生じやすい物質と生じにくい物資が存在し、クリーニング性が異なることが分かる。
(異物除去性能試験3)
PETフィルム上に異物としての毛(人間の髪の毛:300μm)、アクリル樹脂(100μm大)、スチレン樹脂(100μm大)、テフロン(100μm大)を散布し、1kgの荷重をかけたローラを転がし、異物除去試験を行った。ただし、このとき、ローラ芯金に外部電源を用い、+1kV、−1kVの電圧を印加しつつ行った。また、ローラ帯電性を測定した。結果を前記異物除去性能試験2の結果と対比して、次の表7に示す。
【0050】
【表7】

【0051】
外部からの電圧の印加を行うことにより、異物との間に安定した電位差を生じ、高いクリーニング性を有するシステム設計が可能となる。
【0052】
また、外部からの印加する電圧の符号が摩擦帯電により生じる符号と逆極性である場合に、吸着した異物を放出できることが分かる(表7の*参照)。
(損傷試験)
PETフィルム上にガラス粉を散布し、5kgの荷重をかけたローラを転がし、PETフィルムについた傷を確認した。
【0053】
【表8】

【0054】
表8より、比較例4〜6のウレタン単層のローラにおいて硬度を高くすると傷が生じるが、実施例1では、低硬度の内層部の外側にそれよりも高硬度の外層部を設けていても、ローラ全体としては低硬度を維持することができ、傷の発生を防止できることが分かる。
【0055】
前記実施の形態では、クリーニングローラ11を被クリーニング材Sの表面S1に接触させ、表面S1側をクリーニングするようにしているだけであるが、裏面S2側だけのクリーニングするようにしてもよいし、また表面S1側だけのクリーニングだけでよい場合には、図4に示すように、被クリーニング材Sを挟んで、クリーニングローラ11とは反対側にガイドローラ21を配置することも可能である。この場合、ガイドローラ21は、芯金21aと、この芯金21aの外側に導電性を有する内層部21bと、この内層部21bの外側に絶縁性を有する外層部21cとを備える。ガイドローラ21の芯金21a、内層部21bおよび外層部21cは、例えばクリーニングローラの芯金11a、内層部11bおよび外層部11cと実質的に同一の材料を用いてそれぞれ形成することができ、内外層部ガイドローラ21の芯金21aの電位が、クリーニングローラ11の芯金11aの電位より低くなるように、あるいはその逆になるように、各芯金21a,11aに電圧が印加されている。
【0056】
この場合には、2本のローラ11,21が被クリーニング材Sを挟んで対向しており、被クリーニング材Sがクリーニングローラ11及びガイドローラ21が接触する位置において電界強度が最も高くなり、与えられた電界に応じて被クリーニング材S上の帯電異物がクリーニングローラ11の外周面に静電気により吸着され、被クリーニング材S上から効果的に除去される。
【0057】
また、図5に示すように、クリーニングローラ11の、被クリーニング材Sとは反対側に転写ローラ31を設け、クリーニングローラ11に付着した異物を、転写ローラ31に転写させるようにすることも可能である。なお、転写ローラ31は、芯金41aと、この芯金41aの外側に導電性を有する内層部41bと、この内層部41bの外側に絶縁性を有する外層部41cとを備える。この転写ローラ31の芯金31a、内層部31bおよび外層部31cも、例えば、クリーニングローラの芯金11a、内層部11bおよび外層部11cと実質的に同一の材料を用いてそれぞれ形成することができ、外層部31cへの添加剤の添加などにより、外層部31cの外周面が、クリーニングローラ11の外周面に付着する異物を静電気により吸着する電荷を帯電し得るようになっている。つまり、転写ローラ31の外周面と、クリーニングローラ11の外周面との間には、クリーニングローラ11の外周面に付着している異物を転写ローラ31の外周面に転写(移動)させ得る程度の電位差が生じるようになっている。よって、クリーニングローラ11の外周面に付着する異物が、クリーニングローラ11の回転により転写ローラ31付近に到達すると、クリーニングローラ11から転写ローラ31に転写(移動)することになり、クリーニングローラ11の外周面から異物が除去され、クリーニングローラ11は外周面に異物を吸着していないことが維持されることになる。
【0058】
この場合、図5において鎖線で示すように、被クリーニング材Sの裏面S2側に、表面S1側のクリーニングローラ11や転写ローラ31に対応して、裏面S2側をクリーニングするためのクリーニングローラ11や転写ローラ31を設け、被クリーニング材Sの表裏面S1,S2を同時にクリーニングすることも可能である。尚、裏面側にクリーニングローラ11や転写ローラ31を設けない場合には、前述したガイドローラを設けるようにすることも可能である。
【0059】
図5に示すクリーニングシステムは、具体的には、例えば図6に、クリーニングローラと転写ローラとを有する場合の一例を示す構造とすることができる。つまり、クリーニングローラ11と転写ローラ21とによって構成されるクリーニング部Wの上流側に、複数本の丸ベルト25a、駆動ローラ25bおよび従動ローラ25cによってクリーニング前の被クリーニング材S(例えば帯状のフィルム)を搬送する上流側ベルトコンベヤ25が配置され、下流側に、複数本の丸ベルト26a、駆動ローラ26bおよび従動ローラ26cによってクリーニング後の被クリーニング材Sを搬送する下流側ベルトコンベヤ26が配置されている。なお、丸ベルト26aを用いるのは、被クリーニング材Sとの接触部分を少なくして、異物の付着を回避するためである。クリーニング部Wおよびコンベヤ25,26の駆動系の具体的な構成は図示を省略している。
【0060】
さらに、図7に示すように、クリーニングローラ11の上流側には、帯電ローラ41を設け、異物Tに帯電される電荷に対して一定の電位差を有する電荷(つまり、異物を静電気により吸着し得る電荷)を、クリーニングローラ11の外周面(外層部)に予め帯電させ、クリーニングローラ11の外周面が所定の電荷を帯電するのをアシストするように構成することも可能である。なお、帯電ローラ41は、電圧が印加される芯金41aと、この芯金41aの外側に導電性を有する内層部41bと、この内層部41bの外側に絶縁性を有する外層部41cとを備える。この帯電ローラ41の芯金41a、内層部41bおよび外層部41cも、例えばクリーニングローラの芯金11a、内層部11bおよび外層部11cと実質的に同一の材料を用いてそれぞれ形成することができ、芯金11aに所定の電圧を印加することで、外層部41cの外周面にクリーニングローラ11の外周面を接触させることで、クリーニングローラ11の外周面に対し、異物を静電気により吸着し得る電荷を帯電させるようになっている。この場合も、被クリーニング材Sの裏面S2側に、表面S1側のクリーニングローラ11、転写ローラ31および帯電ローラ41に対応して、裏面S2側をクリーニングするためのクリーニングローラ11、転写ローラ31および帯電ローラ41を設け、被クリーニング材Sの表裏面S1,S2を同時にクリーニングすることも可能であるし、前述したガイドローラを設けるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るクリーニングシステムの一例による、塵埃などの異物を静電気を利用して除去する原理の説明図である。
【図2】外層部および内層部をともに誘電体とした場合のイメージ図である。
【図3】外層部を誘電体、内層部を導電体とした場合のイメージ図である。
【図4】クリーニングローラに対しガイドローラを用いる場合の説明図である。
【図5】クリーニングローラに対し転写ローラを用いる場合の説明図である。
【図6】搬送系も含むクリーニングシステム全体の概略構成図である。
【図7】クリーニングローラに対し転写ローラ及び帯電ローラを用いる場合の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
S 被クリーニング材
T 異物
1 クリーニングシステム
11 クリーニングローラ
11a 芯金
11b 内層部
11c 外層部
21 ガイドローラ
21a 芯金
21b 内層部
21c 外層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クリーニング材の表面に接触しつつ回転しながら前記被クリーニング材に対し相対移動するクリーニングローラを備え、前記被クリーニング材の表面上に付着する塵埃などの異物を前記クリーニングローラによって静電気を利用して取り除くクリーニングシステムであって、
前記クリーニングローラは、導電性を有する芯棒と、この芯棒の外側に設けられる円筒状の内層部と、その内層部の外側に設けられる円筒状の外層部とを備え、前記外層部は50°以上の硬度(JIS−A)を有しかつ前記内層部よりも高抵抗であり、
前記クリーニングローラの外層部を形成する材料は、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を静電気により吸着する電荷を帯電し得るものであることを特徴とするクリーニングシステム。
【請求項2】
前記内層部は前記外層部よりも低硬度であることを特徴とする請求項1記載のクリーニングシステム。
【請求項3】
前記内層部は導電性を有する弾性材料で形成され、前記外層部はアクリル混合ウレタンあるいはフッ素混合ウレタンで形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のクリーニングシステム。
【請求項4】
前記外層部を形成する材料には、誘電フィラーが混合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクリーニングシステム。
【請求項5】
前記クリーニングローラの芯棒に、ローラ外周面に前記異物を静電気により吸着する電荷を帯電させ得る電圧が印加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニングシステム。
【請求項6】
前記クリーニングローラは、前記内層部が導電性を有する一方、前記外層部が絶縁性を有し、
前記被クリーニング材を挟んで、前記クリーニングローラとは反対側にガイドローラが配置され、
前記ガイドローラは、導電性を有する芯棒と、前記芯棒の外側に導電性を有する内層部と、前記内層部の外側に絶縁性を有する外層部とを備え、
前記ガイドローラの芯棒および前記クリーニングローラの芯棒に対し、前記両芯棒のいずれか一方が他方よりも電位が高くなるように電圧を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−99565(P2010−99565A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271797(P2008−271797)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】