クリーニングブレード
【課題】広い温度環境下、長期停止後における良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とすることを特徴とするクリーニングブレード。
【解決手段】トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とすることを特徴とするクリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の静電転写プロセスを利用した画像形成装置に用いられるクリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
電子写真複写機やレーザービームプリンターは、感光ドラム上に形成された静電潜像上にトナーを付着させて、これを複写機に転写させて複写を行うものである。その複写後に感光ドラムに残ったトナーを除去する方法の一つにウレタンエラストマーと支持金具（ホルダー）からなるクリーニングブレード方式が実用化されている。
【０００３】
従来、このクリーニングブレードに用いられる材料としては、耐磨耗性等の機械的強度に優れクリープ性（当接応力による永久変形）が少なく、且つオゾンによる劣化が少ないポリエステル系ウレタンエラストマーが用いられてきた。このようなクリーニングブレードの製造方法の一例ではまず、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールを部分的に重合したウレタンエラストマー用プレポリマーと鎖伸長剤からなる硬化剤を混合する。次に、これらの材料を予めホルダーを配置し所定の温度に設定した金型に注入して所定の時間硬化させ、脱型、切断しクリーニングブレードを得る。
【０００４】
また、クリーニングブレードによって残留トナーを完全に除去するためには、感光ドラム外周面上へのブレード部材の接触が常に一定状態に保たれている必要がある。このため、クリーニングブレードと感光ドラムとの位置関係を規制したり、支持金具をバネで加圧したりする方法が一般的に行われている。
【０００５】
しかしながら、従来よりクリーニングブレードに用いられているウレタンエラストマーは、その使用環境により大きく物性が変化することが知られている。そこで、低温でのクリーニング性能を上げるために炭化水素系のポリオールを使用し、またその官能基数を所定範囲に設定することによって、低温クリーニング性能を向上したクリーニングブレードが開示されている（特許文献１）。しかしながら、近年、電子写真複写機、レーザービームプリンターの普及に伴い、低温だけでなく高温も含めたより広い温度環境下（０℃〜４０℃）において使用されるようになってきている。このため、従来の方法を用いてもクリーニング性能を満足できなくなってきている。
【特許文献１】特開平０８−１６６７４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、クリーニングブレードの構成材料がクリーニング性能の温度依存性に大きく影響していることを発見した。また、所定の構成材料を用いてクリーニングブレードを製造することにより、低温や高温環境下でもクリーニング性能が劣化しないクリーニングブレードを得ることができることを発見した。
【０００７】
本発明は上記現状に鑑み、広い温度環境下におけるクリーニング性能が向上し、更に高い機械的強度を有するクリーニングブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
【０００９】
１．トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とする（ポリウレタンエラストマーを含む）ことを特徴とするクリーニングブレード。
【００１０】
２．前記ポリエステルポリオールと前記ポリエーテルポリオールの質量比（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）が、９５：５〜７０：３０であることを特徴とする上記１に記載のクリーニングブレード。
【００１１】
３．前記ポリエーテルポリオールがポリオキシテトラメチレングリコールであり、
前記ポリエステルポリオールがポリブチレンアジペート及びポリヘキシレンアジペートの少なくとも一方であることを特徴とする上記１又は２に記載のクリーニングブレード。
【００１２】
４．前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が１０００〜３０００、
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が６５０〜５０００であることを特徴とする上記１〜３の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【００１３】
５．前記ポリウレタンエラストマーが国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、動的粘弾性測定におけるｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下であることを特徴とする上記１〜４の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、より広い温度環境下でクリーニング性能が向上し、高い機械的強度を有するクリーニングブレードを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明のクリーニングブレードは、ポリイソシアネート、ポリオール（ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール）、鎖伸長剤、及び必要に応じて触媒を含有する液状組成物を構成材料として用いる。これらの構成材料をクリーニングブレード用成形型に注入し硬化させ、脱型した後、所定の寸法に切断することによって、本発明のクリーニングブレードを製造することができる。このポリエーテルポリオール中に含まれるエーテル結合はポリエステルポリオール中に含まれるエステル結合またはウレタン結合に比べて、凝集エネルギーが低く低温でのクリーニング性能が向上するものと考えられる。また、このポリエーテルポリオールに加えて機械的特性及び高温耐性に優れるポリエステルポリオールを併用することで、両者の特性を合わせもち、さらにポリウレタンエラストマーの構造が多様化することによって、広い温度領域で良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードとすることできる。
以下、本発明のクリーニングブレードの構成材料を説明する。
【００１６】
（ポリイソシアネート）
上記ポリイソシアネートとしては、４，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（ＭＤＩ）が好ましいが、特に制限されるものではなく以下のポリイソシアネートも使用できる。例えば、イソホロンジイソシアネート、４，４’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート、オルトトルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、ジメチルジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上併用して用いてもよい。
【００１７】
（ポリオール）
また、本発明ではクリーニングブレードの構成材料としてポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなるポリオールを用いる必要がある。ポリエーテルポリオールはエーテル結合を有するため、エステル結合またはウレタン結合に比べて凝集エネルギーが低く低温での変形性が少ない。しかし、ポリエーテルポリオールは高温領域での変形性が大きくこのポリエーテルポリオールを用いたクリーニングブレードは高温でのクリーニング性能が悪くなる。
【００１８】
これに対して、ポリエステルポリオールは機械的強度が高く高温での変形性が少ないが低温での変形性が大きい。そこで、本発明では、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなるポリオールを用いることにより低温から高温までの広い温度領域で劣化が少なく優れたクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得ることができる。また、広い温度領域において機械的強度が大きなクリーニングブレードを得ることができる。
【００１９】
（ポリエーテルポリオール）
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく以下のポリエーテルポリオールを使用できる。例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、エチレンオキサイド／プロピレンオキサイドコポリマー、ポリジメチルシロキサンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし二種類以上併用しても良い。
【００２０】
本発明に使用されるポリエーテルポリオールとしては、低温特性および力学的特性を考えると、ポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
【００２１】
本発明に使用されるポリエーテルポリオールの数平均分子量は６５０〜５０００であることが好ましい。数平均分子量が６５０より低い場合、機械的強度が低くなる場合がある。逆に、数平均分子量が５０００を超える場合、機械的強度が高くなりすぎ、また材料の粘度上昇により作業性が低下する場合があり、あまり好ましくない。
【００２２】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は６５０〜２０００であることがより好ましく、６５０〜１０００であることが更に好ましい。数平均分子量がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードの低温変形性を効果的に抑制し、低温での機械的強度を高く保って低温でのクリーニングブレード特性の劣化を効果的に防止することができる。
【００２３】
なお、数平均分子量はテトラヒドロフランにより溶解する成分をＧＰＣ法により以下に示す条件で測定した値を表す。
ＧＰＣ装置：東ソー株式会社製 ＨＬＣ−８１２０ＧＰＣ
ＣＯＬＵＭＮ：東ソー株式会社製 ＴＳＫ−ＧＥＬ
Ｇ−５０００ＨＸＬ
Ｇ−４０００ＨＸＬ
Ｇ−３０００ＨＸＬ
Ｇ−２０００ＨＸＬ
溶 媒 ： テトラヒドロフラン
溶媒濃度 ： ０．５質量％
流 速 ： １．０ｍｌ／ｍｉｎ
（ポリエステルポリオール）
本発明で用いるポリエステルポリオールとしては、多塩基性有機酸とポリオールから製造され水酸基を末端基とする、ヒドロキシポリエステルポリオールが好ましい。
【００２４】
上記多塩基性有機酸としては、特に限定するものではなく、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸等の飽和脂肪酸や、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸や、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族酸等のジカルボン酸が挙げられる。また、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸無水物や、テレフタル酸ジメチル等のジアルキルエステル等を用いることもできる。さらに、不飽和脂肪酸の二量化によって得られるダイマー酸を用いることができる。これらは単独でも良いし、二種類以上併用しても良い。
【００２５】
上記多塩基性有機酸とともに用いるポリオールとしては、特に限定されるわけではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、１，６−ヘキシレングリコール等のジオールや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、へキサントリオール、グリセリン等のトリオールや、ソルビトール等のヘキサオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【００２６】
そして、本発明において、上記ジイソシアネートと共に用いられるポリオールとしては、上記一連のもののなかでも、ジカルボン酸とジオールから得られるポリエステルポリオールが好適に用いられる。特に、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。最適には、ポリブチレンアジペートである。ポリブチレンアジペートを用いることによって、広い温度範囲にわたって優れた機械的強度を有するクリーニングブレードとすることができる。
【００２７】
本発明で使用されるポリエステルポリオールの数平均分子量は１０００〜３０００が好ましく、１５００〜２８００がより好ましく、２０００〜２６００が更に好ましい。数平均分子量がこれらの範囲内に存在することによってポリエステルポリオール間等の相互作用により効果的にクリーニングブレードの高温での変形及び機械的強度の劣化を抑制することができる。なお、数平均分子量は上記ポリエーテルポリオールと同様の方法によって測定することができる。
【００２８】
本発明のクリーニングブレードは、ポリオールとしてポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを含む。これらのポリオールの配合比率は質量比で（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）＝９５：５〜７０：３０であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの質量比が５未満であると低温クリーニング性能の向上が見られない場合がある。また、ポリエーテルポリオールの質量比が３０を超えるとポリエステルポリオールとの分離が発生し、均一なブレードを作成することができない場合がある。
【００２９】
これらポリオールの配合比率は質量比で、（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）＝９０：１０〜８５：１５であることがより好ましい。ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの配合比率をこれらの範囲内に設定することによって、クリーニングブレードの低温特性、高温特性、機械的強度の点から最適化することができる。
【００３０】
（鎖伸長剤）
上記鎖伸長剤としては、従来公知のものであれば特に限定されるものではなく、例えば１，４−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキサンジオール、１，４−シクロへキサンジオール、１，４−シクロへキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、１，２，６−へキサントリオール等の分子量３００以下のポリオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上併用して用いてもよい。
【００３１】
（触媒）
また、本発明のポリウレタンエラストマーを製造する際には触媒を用いても良い。触媒としては、三級アミン等のアミン系化合物、有機金属化合物等が挙げられる。触媒を用いることにより、硬化反応速度が速くなり、成形サイクルが短縮されることにより、クリーニングブレードの製造効率が短縮される。
【００３２】
上記三級アミン触媒としては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’−テトラメチル−１，３−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミンや、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコールや、エトキシル化アミンや、エトキシル化ジアミンや、ビス（ジエチルエタノールアミン）アジペート等のエステルアミンや、トリエチルジアミンや、Ｎ，Ｎ’−ビス−（ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体や、Ｎ−メチルホルマリン、Ｎ−（２−ヒドロキシプロピル）−ジメチルホルマリン等のモルホリン誘導体や、Ｎ，Ｎ’−ジエチル−２−メチルピペラジン、Ｎ，Ｎ’−ジエチル−２−メチルピペラジン、Ｎ，Ｎ’−ビス−（２−ヒドロキシプロピル）−２−メチルピペラジン等のピペラジン誘導体が挙げられる。
【００３３】
上記有機金属触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル錫錫ジラウレート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等が挙げられる。
【００３４】
（硬度及びｔａｎδ）
また、本発明におけるポリウレタンエラストマー（クリーニングブレード）は、国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、かつ動的粘弾性測定における温度−損失正接ｔａｎδ曲線のピーク温度が−１０℃以下であることが好ましい。国際ゴム硬さ及びｔａｎδのピーク温度がこれらの範囲内にあることによって、広い温度範囲にわたってクリーニングブレードの静的弾性及び動的弾性を高く維持することができる。
【００３５】
すなわち、硬度が６５°より低い場合、クリーニング不良がおきやすくなる。逆に８０°より高い場合、感光ドラムを傷つける恐れがあるため、あまり好ましくない。また、ｔａｎδのピーク温度が−１０℃より高い場合、低温でのクリーニング性能が十分でない。ｔａｎδのピーク温度は、より好ましくは−３０〜−１０℃である。
【００３６】
なお、本発明では構成材料の一つであるポリオールとしてポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合体を使用することで、上記範囲の国際ゴム硬さ及びｔａｎδを有するクリーニングブレードを得ることができる。
【００３７】
（クリーニングブレードの製造方法）
本発明のクリーニングブレードは、上記各材料を用い、常法に準じて製造することができる。具体的には、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法に準じて製造できる。
【００３８】
本発明では、プレポリマー法に準じて例えば次のようにしてクリーニングブレードを製造する。まず、クリーニングブレード成形型を準備する。次に上記イソシアネートとポリオール（ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール）を準備し、両者を適宜の配合割合で配合し、適宜の反応条件で部分的に重合したポリウレタンゴム用プレポリマーを調整する。一方、鎖伸長剤と触媒を準備し、これらを適宜の配合割合で配合し、適宜の混合条件で混合して硬化剤を調整する。次に、上記ポリウレタンゴム用プレポリマーおよび硬化剤を適宜の配合割合で配合して混合し、この混合液をクリーニングブレード成形型に注入し、反応硬化させる。次いで硬化物を脱型し、所定の寸法に切断することにより、クリーニングブレードを製造することができる。
【００３９】
（電子写真装置）
図２は本発明のクリーニングブレードを備えた、電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成を示す。図２において、１はドラム状の電子写真感光体であり、軸を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体１は、回転過程において、一次帯電手段３によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、ついで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段（図示していない）からの露光光４を受ける。こうして感光体１の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【００４０】
このようにして形成された静電潜像は、ついで、現像手段５によりトナー現像される。現像されたトナー現像像は、図示していない給紙部から感光体１と転写手段６との間に感光体１の回転と同期条件下に給紙された転写材７に、転写手段６により順次、転写されていく。
【００４１】
像転写を受けた転写材７は、感光体面から分離されて像定着手段８へ導入されて像定着を受けることにより複写物（コピー）として装置外へプリントアウトされる。
【００４２】
像転写後の感光体１の表面は、本発明のクリーニングブレードを備えたクリーニング手段９によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【００４３】
近年、電子写真装置には様々な特性が要求されるようになってきており、その一つとして使用可能温度も幅広く要求されている。本発明のクリーニングブレードはこのような幅広い温度領域下でも安定したクリーニング性能を発揮することができ、例えば０〜４０℃で好適に使用でき、５〜３０℃でより好適に使用できる。
【実施例】
【００４４】
次に本発明の実施例および比較例を示す。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【００４５】
（実施例１，２，比較例１，２）
表１に示す組成のポリウレタンゴム用プレポリマー（ポリエステルポリオール）と、ポリエーテルポリオールと鎖伸長剤を同表に示した割合で混合し、１３０℃に熱したクリーニングブレード成形型に注入した。次いで、この硬化物を脱型し、所定の寸法（長さ３３０ｍｍ、幅１０．３ｍｍ、厚さ１．６ｍｍ）に切断したクリーニングブレードを作成した。
【００４６】
このように作成したクリーニングブレードについて、ｔａｎδのピーク温度の測定、低温環境下での画像評価を行った。なお、上記の評価は以下のようにして行った。
【００４７】
［国際ゴム硬さ］
作成したクリーニングブレードの国際ゴム硬さはウォーレス（Ｈ．Ｗ．ＷＡＬＬＡＣＥ）社製の硬度計を用い、ＪＩＳ Ｋ ６２５３に基づいて行った。結果を表１に示す。
【００４８】
［ｔａｎδピーク温度の測定］
ｔａｎδのピーク温度の測定は、セイコーインスツルメンツ社製ＤＭＳ６１００を使用し、測定周波数１０Ｈｚで、−３０℃から２℃／分で昇温させてクリーニングブレードの温度−ｔａｎδ曲線を測定した。この温度−ｔａｎδ曲線においてｔａｎδが最大値を示す温度をピーク温度とした。結果を表１に示す。
【００４９】
［低温環境下でのクリーニング性］
作成したクリーニングブレードをＬＡＳＥＲ ＳＨＯＴ ＬＢＰ−２７１０（キヤノン社製）用トナーカートリッジに組み込んで、１０℃の環境下に１２時間放置した後、１０℃で実際に画像を出力し、クリーニング不良を観察した。ここでクリーニング性が良好なもの（縦スジが発生しないもの）は○とし、不良（縦スジ）が発生したものを×とした。結果を表１に示す。
【００５０】
【表１】
【００５１】
なお、表１中のポリイソシアネートの含量、ポリエーテルポリオールの含量、ポリエステルポリオールの含量、鎖伸長剤の含量の欄中の数字は（質量部）を表す。
【００５２】
また、上記各構成材料としては以下のものを用いた。
ポリイソシアネート（ＭＤＩ）：ミリオネートＭＴ、日本ポリウレタン工業（株）社製
ポリエーテルポリオール：ＰＴＧ−６５０ＳＮ、保土ヶ谷化学（株）社製
ポリエステルポリオール：ニッポラン４０１０、日本ポリウレタン工業（株）社製
１，４−ブタンジオール（鎖伸長剤）：三菱化学（株）社製
テトラメチレングリコール（鎖伸長剤）：三菱ガス化学（株）社製
表１の結果よりポリイソシアネート、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを用いて製造したクリーニングブレードとすることによって、低温及び高温クリーニング特性に優れたものとできることが判明した。
【００５３】
更に、上記方法に従って動的粘弾性を測定した結果を図１に示す。図１より、実施例１、２では−１０℃以下に、比較例１、２では−１０℃を超える温度に明確なピークを有することが分かる。硬度が６５〜８０°（ＩＲＨＤ）かつｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下のクリーニングブレードとすることによって、優れた低温クリーニング性を有することができることが判明した（実施例１，２）。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】実施例１，２及び比較例１，２のクリーニングブレードの温度−ｔａｎδ曲線を示す図である。縦軸はｔａｎδを示し、横軸は温度（℃）を示す。
【図２】本発明のクリーニングブレードを備えた電子写真装置の一例を示す図である。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の静電転写プロセスを利用した画像形成装置に用いられるクリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
電子写真複写機やレーザービームプリンターは、感光ドラム上に形成された静電潜像上にトナーを付着させて、これを複写機に転写させて複写を行うものである。その複写後に感光ドラムに残ったトナーを除去する方法の一つにウレタンエラストマーと支持金具（ホルダー）からなるクリーニングブレード方式が実用化されている。
【０００３】
従来、このクリーニングブレードに用いられる材料としては、耐磨耗性等の機械的強度に優れクリープ性（当接応力による永久変形）が少なく、且つオゾンによる劣化が少ないポリエステル系ウレタンエラストマーが用いられてきた。このようなクリーニングブレードの製造方法の一例ではまず、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールを部分的に重合したウレタンエラストマー用プレポリマーと鎖伸長剤からなる硬化剤を混合する。次に、これらの材料を予めホルダーを配置し所定の温度に設定した金型に注入して所定の時間硬化させ、脱型、切断しクリーニングブレードを得る。
【０００４】
また、クリーニングブレードによって残留トナーを完全に除去するためには、感光ドラム外周面上へのブレード部材の接触が常に一定状態に保たれている必要がある。このため、クリーニングブレードと感光ドラムとの位置関係を規制したり、支持金具をバネで加圧したりする方法が一般的に行われている。
【０００５】
しかしながら、従来よりクリーニングブレードに用いられているウレタンエラストマーは、その使用環境により大きく物性が変化することが知られている。そこで、低温でのクリーニング性能を上げるために炭化水素系のポリオールを使用し、またその官能基数を所定範囲に設定することによって、低温クリーニング性能を向上したクリーニングブレードが開示されている（特許文献１）。しかしながら、近年、電子写真複写機、レーザービームプリンターの普及に伴い、低温だけでなく高温も含めたより広い温度環境下（０℃〜４０℃）において使用されるようになってきている。このため、従来の方法を用いてもクリーニング性能を満足できなくなってきている。
【特許文献１】特開平０８−１６６７４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、クリーニングブレードの構成材料がクリーニング性能の温度依存性に大きく影響していることを発見した。また、所定の構成材料を用いてクリーニングブレードを製造することにより、低温や高温環境下でもクリーニング性能が劣化しないクリーニングブレードを得ることができることを発見した。
【０００７】
本発明は上記現状に鑑み、広い温度環境下におけるクリーニング性能が向上し、更に高い機械的強度を有するクリーニングブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
【０００９】
１．トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とする（ポリウレタンエラストマーを含む）ことを特徴とするクリーニングブレード。
【００１０】
２．前記ポリエステルポリオールと前記ポリエーテルポリオールの質量比（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）が、９５：５〜７０：３０であることを特徴とする上記１に記載のクリーニングブレード。
【００１１】
３．前記ポリエーテルポリオールがポリオキシテトラメチレングリコールであり、
前記ポリエステルポリオールがポリブチレンアジペート及びポリヘキシレンアジペートの少なくとも一方であることを特徴とする上記１又は２に記載のクリーニングブレード。
【００１２】
４．前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が１０００〜３０００、
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が６５０〜５０００であることを特徴とする上記１〜３の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【００１３】
５．前記ポリウレタンエラストマーが国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、動的粘弾性測定におけるｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下であることを特徴とする上記１〜４の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、より広い温度環境下でクリーニング性能が向上し、高い機械的強度を有するクリーニングブレードを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明のクリーニングブレードは、ポリイソシアネート、ポリオール（ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール）、鎖伸長剤、及び必要に応じて触媒を含有する液状組成物を構成材料として用いる。これらの構成材料をクリーニングブレード用成形型に注入し硬化させ、脱型した後、所定の寸法に切断することによって、本発明のクリーニングブレードを製造することができる。このポリエーテルポリオール中に含まれるエーテル結合はポリエステルポリオール中に含まれるエステル結合またはウレタン結合に比べて、凝集エネルギーが低く低温でのクリーニング性能が向上するものと考えられる。また、このポリエーテルポリオールに加えて機械的特性及び高温耐性に優れるポリエステルポリオールを併用することで、両者の特性を合わせもち、さらにポリウレタンエラストマーの構造が多様化することによって、広い温度領域で良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードとすることできる。
以下、本発明のクリーニングブレードの構成材料を説明する。
【００１６】
（ポリイソシアネート）
上記ポリイソシアネートとしては、４，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（ＭＤＩ）が好ましいが、特に制限されるものではなく以下のポリイソシアネートも使用できる。例えば、イソホロンジイソシアネート、４，４’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート、オルトトルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、ジメチルジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上併用して用いてもよい。
【００１７】
（ポリオール）
また、本発明ではクリーニングブレードの構成材料としてポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなるポリオールを用いる必要がある。ポリエーテルポリオールはエーテル結合を有するため、エステル結合またはウレタン結合に比べて凝集エネルギーが低く低温での変形性が少ない。しかし、ポリエーテルポリオールは高温領域での変形性が大きくこのポリエーテルポリオールを用いたクリーニングブレードは高温でのクリーニング性能が悪くなる。
【００１８】
これに対して、ポリエステルポリオールは機械的強度が高く高温での変形性が少ないが低温での変形性が大きい。そこで、本発明では、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなるポリオールを用いることにより低温から高温までの広い温度領域で劣化が少なく優れたクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得ることができる。また、広い温度領域において機械的強度が大きなクリーニングブレードを得ることができる。
【００１９】
（ポリエーテルポリオール）
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく以下のポリエーテルポリオールを使用できる。例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、エチレンオキサイド／プロピレンオキサイドコポリマー、ポリジメチルシロキサンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし二種類以上併用しても良い。
【００２０】
本発明に使用されるポリエーテルポリオールとしては、低温特性および力学的特性を考えると、ポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
【００２１】
本発明に使用されるポリエーテルポリオールの数平均分子量は６５０〜５０００であることが好ましい。数平均分子量が６５０より低い場合、機械的強度が低くなる場合がある。逆に、数平均分子量が５０００を超える場合、機械的強度が高くなりすぎ、また材料の粘度上昇により作業性が低下する場合があり、あまり好ましくない。
【００２２】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は６５０〜２０００であることがより好ましく、６５０〜１０００であることが更に好ましい。数平均分子量がこれらの範囲内にあることによって、クリーニングブレードの低温変形性を効果的に抑制し、低温での機械的強度を高く保って低温でのクリーニングブレード特性の劣化を効果的に防止することができる。
【００２３】
なお、数平均分子量はテトラヒドロフランにより溶解する成分をＧＰＣ法により以下に示す条件で測定した値を表す。
ＧＰＣ装置：東ソー株式会社製 ＨＬＣ−８１２０ＧＰＣ
ＣＯＬＵＭＮ：東ソー株式会社製 ＴＳＫ−ＧＥＬ
Ｇ−５０００ＨＸＬ
Ｇ−４０００ＨＸＬ
Ｇ−３０００ＨＸＬ
Ｇ−２０００ＨＸＬ
溶 媒 ： テトラヒドロフラン
溶媒濃度 ： ０．５質量％
流 速 ： １．０ｍｌ／ｍｉｎ
（ポリエステルポリオール）
本発明で用いるポリエステルポリオールとしては、多塩基性有機酸とポリオールから製造され水酸基を末端基とする、ヒドロキシポリエステルポリオールが好ましい。
【００２４】
上記多塩基性有機酸としては、特に限定するものではなく、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸等の飽和脂肪酸や、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸や、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族酸等のジカルボン酸が挙げられる。また、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸無水物や、テレフタル酸ジメチル等のジアルキルエステル等を用いることもできる。さらに、不飽和脂肪酸の二量化によって得られるダイマー酸を用いることができる。これらは単独でも良いし、二種類以上併用しても良い。
【００２５】
上記多塩基性有機酸とともに用いるポリオールとしては、特に限定されるわけではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、１，６−ヘキシレングリコール等のジオールや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、へキサントリオール、グリセリン等のトリオールや、ソルビトール等のヘキサオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【００２６】
そして、本発明において、上記ジイソシアネートと共に用いられるポリオールとしては、上記一連のもののなかでも、ジカルボン酸とジオールから得られるポリエステルポリオールが好適に用いられる。特に、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。最適には、ポリブチレンアジペートである。ポリブチレンアジペートを用いることによって、広い温度範囲にわたって優れた機械的強度を有するクリーニングブレードとすることができる。
【００２７】
本発明で使用されるポリエステルポリオールの数平均分子量は１０００〜３０００が好ましく、１５００〜２８００がより好ましく、２０００〜２６００が更に好ましい。数平均分子量がこれらの範囲内に存在することによってポリエステルポリオール間等の相互作用により効果的にクリーニングブレードの高温での変形及び機械的強度の劣化を抑制することができる。なお、数平均分子量は上記ポリエーテルポリオールと同様の方法によって測定することができる。
【００２８】
本発明のクリーニングブレードは、ポリオールとしてポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを含む。これらのポリオールの配合比率は質量比で（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）＝９５：５〜７０：３０であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの質量比が５未満であると低温クリーニング性能の向上が見られない場合がある。また、ポリエーテルポリオールの質量比が３０を超えるとポリエステルポリオールとの分離が発生し、均一なブレードを作成することができない場合がある。
【００２９】
これらポリオールの配合比率は質量比で、（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）＝９０：１０〜８５：１５であることがより好ましい。ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの配合比率をこれらの範囲内に設定することによって、クリーニングブレードの低温特性、高温特性、機械的強度の点から最適化することができる。
【００３０】
（鎖伸長剤）
上記鎖伸長剤としては、従来公知のものであれば特に限定されるものではなく、例えば１，４−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキサンジオール、１，４−シクロへキサンジオール、１，４−シクロへキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、１，２，６−へキサントリオール等の分子量３００以下のポリオールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上併用して用いてもよい。
【００３１】
（触媒）
また、本発明のポリウレタンエラストマーを製造する際には触媒を用いても良い。触媒としては、三級アミン等のアミン系化合物、有機金属化合物等が挙げられる。触媒を用いることにより、硬化反応速度が速くなり、成形サイクルが短縮されることにより、クリーニングブレードの製造効率が短縮される。
【００３２】
上記三級アミン触媒としては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’−テトラメチル−１，３−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミンや、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコールや、エトキシル化アミンや、エトキシル化ジアミンや、ビス（ジエチルエタノールアミン）アジペート等のエステルアミンや、トリエチルジアミンや、Ｎ，Ｎ’−ビス−（ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体や、Ｎ−メチルホルマリン、Ｎ−（２−ヒドロキシプロピル）−ジメチルホルマリン等のモルホリン誘導体や、Ｎ，Ｎ’−ジエチル−２−メチルピペラジン、Ｎ，Ｎ’−ジエチル−２−メチルピペラジン、Ｎ，Ｎ’−ビス−（２−ヒドロキシプロピル）−２−メチルピペラジン等のピペラジン誘導体が挙げられる。
【００３３】
上記有機金属触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル錫錫ジラウレート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等が挙げられる。
【００３４】
（硬度及びｔａｎδ）
また、本発明におけるポリウレタンエラストマー（クリーニングブレード）は、国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、かつ動的粘弾性測定における温度−損失正接ｔａｎδ曲線のピーク温度が−１０℃以下であることが好ましい。国際ゴム硬さ及びｔａｎδのピーク温度がこれらの範囲内にあることによって、広い温度範囲にわたってクリーニングブレードの静的弾性及び動的弾性を高く維持することができる。
【００３５】
すなわち、硬度が６５°より低い場合、クリーニング不良がおきやすくなる。逆に８０°より高い場合、感光ドラムを傷つける恐れがあるため、あまり好ましくない。また、ｔａｎδのピーク温度が−１０℃より高い場合、低温でのクリーニング性能が十分でない。ｔａｎδのピーク温度は、より好ましくは−３０〜−１０℃である。
【００３６】
なお、本発明では構成材料の一つであるポリオールとしてポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合体を使用することで、上記範囲の国際ゴム硬さ及びｔａｎδを有するクリーニングブレードを得ることができる。
【００３７】
（クリーニングブレードの製造方法）
本発明のクリーニングブレードは、上記各材料を用い、常法に準じて製造することができる。具体的には、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法に準じて製造できる。
【００３８】
本発明では、プレポリマー法に準じて例えば次のようにしてクリーニングブレードを製造する。まず、クリーニングブレード成形型を準備する。次に上記イソシアネートとポリオール（ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール）を準備し、両者を適宜の配合割合で配合し、適宜の反応条件で部分的に重合したポリウレタンゴム用プレポリマーを調整する。一方、鎖伸長剤と触媒を準備し、これらを適宜の配合割合で配合し、適宜の混合条件で混合して硬化剤を調整する。次に、上記ポリウレタンゴム用プレポリマーおよび硬化剤を適宜の配合割合で配合して混合し、この混合液をクリーニングブレード成形型に注入し、反応硬化させる。次いで硬化物を脱型し、所定の寸法に切断することにより、クリーニングブレードを製造することができる。
【００３９】
（電子写真装置）
図２は本発明のクリーニングブレードを備えた、電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成を示す。図２において、１はドラム状の電子写真感光体であり、軸を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体１は、回転過程において、一次帯電手段３によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、ついで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段（図示していない）からの露光光４を受ける。こうして感光体１の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【００４０】
このようにして形成された静電潜像は、ついで、現像手段５によりトナー現像される。現像されたトナー現像像は、図示していない給紙部から感光体１と転写手段６との間に感光体１の回転と同期条件下に給紙された転写材７に、転写手段６により順次、転写されていく。
【００４１】
像転写を受けた転写材７は、感光体面から分離されて像定着手段８へ導入されて像定着を受けることにより複写物（コピー）として装置外へプリントアウトされる。
【００４２】
像転写後の感光体１の表面は、本発明のクリーニングブレードを備えたクリーニング手段９によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【００４３】
近年、電子写真装置には様々な特性が要求されるようになってきており、その一つとして使用可能温度も幅広く要求されている。本発明のクリーニングブレードはこのような幅広い温度領域下でも安定したクリーニング性能を発揮することができ、例えば０〜４０℃で好適に使用でき、５〜３０℃でより好適に使用できる。
【実施例】
【００４４】
次に本発明の実施例および比較例を示す。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【００４５】
（実施例１，２，比較例１，２）
表１に示す組成のポリウレタンゴム用プレポリマー（ポリエステルポリオール）と、ポリエーテルポリオールと鎖伸長剤を同表に示した割合で混合し、１３０℃に熱したクリーニングブレード成形型に注入した。次いで、この硬化物を脱型し、所定の寸法（長さ３３０ｍｍ、幅１０．３ｍｍ、厚さ１．６ｍｍ）に切断したクリーニングブレードを作成した。
【００４６】
このように作成したクリーニングブレードについて、ｔａｎδのピーク温度の測定、低温環境下での画像評価を行った。なお、上記の評価は以下のようにして行った。
【００４７】
［国際ゴム硬さ］
作成したクリーニングブレードの国際ゴム硬さはウォーレス（Ｈ．Ｗ．ＷＡＬＬＡＣＥ）社製の硬度計を用い、ＪＩＳ Ｋ ６２５３に基づいて行った。結果を表１に示す。
【００４８】
［ｔａｎδピーク温度の測定］
ｔａｎδのピーク温度の測定は、セイコーインスツルメンツ社製ＤＭＳ６１００を使用し、測定周波数１０Ｈｚで、−３０℃から２℃／分で昇温させてクリーニングブレードの温度−ｔａｎδ曲線を測定した。この温度−ｔａｎδ曲線においてｔａｎδが最大値を示す温度をピーク温度とした。結果を表１に示す。
【００４９】
［低温環境下でのクリーニング性］
作成したクリーニングブレードをＬＡＳＥＲ ＳＨＯＴ ＬＢＰ−２７１０（キヤノン社製）用トナーカートリッジに組み込んで、１０℃の環境下に１２時間放置した後、１０℃で実際に画像を出力し、クリーニング不良を観察した。ここでクリーニング性が良好なもの（縦スジが発生しないもの）は○とし、不良（縦スジ）が発生したものを×とした。結果を表１に示す。
【００５０】
【表１】
【００５１】
なお、表１中のポリイソシアネートの含量、ポリエーテルポリオールの含量、ポリエステルポリオールの含量、鎖伸長剤の含量の欄中の数字は（質量部）を表す。
【００５２】
また、上記各構成材料としては以下のものを用いた。
ポリイソシアネート（ＭＤＩ）：ミリオネートＭＴ、日本ポリウレタン工業（株）社製
ポリエーテルポリオール：ＰＴＧ−６５０ＳＮ、保土ヶ谷化学（株）社製
ポリエステルポリオール：ニッポラン４０１０、日本ポリウレタン工業（株）社製
１，４−ブタンジオール（鎖伸長剤）：三菱化学（株）社製
テトラメチレングリコール（鎖伸長剤）：三菱ガス化学（株）社製
表１の結果よりポリイソシアネート、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを用いて製造したクリーニングブレードとすることによって、低温及び高温クリーニング特性に優れたものとできることが判明した。
【００５３】
更に、上記方法に従って動的粘弾性を測定した結果を図１に示す。図１より、実施例１、２では−１０℃以下に、比較例１、２では−１０℃を超える温度に明確なピークを有することが分かる。硬度が６５〜８０°（ＩＲＨＤ）かつｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下のクリーニングブレードとすることによって、優れた低温クリーニング性を有することができることが判明した（実施例１，２）。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】実施例１，２及び比較例１，２のクリーニングブレードの温度−ｔａｎδ曲線を示す図である。縦軸はｔａｎδを示し、横軸は温度（℃）を示す。
【図２】本発明のクリーニングブレードを備えた電子写真装置の一例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とすることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項２】
前記ポリエステルポリオールと前記ポリエーテルポリオールの質量比（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）が、９５：５〜７０：３０であることを特徴とする請求項１に記載のクリーニングブレード。
【請求項３】
前記ポリエーテルポリオールがポリオキシテトラメチレングリコールであり、
前記ポリエステルポリオールがポリブチレンアジペート及びポリヘキシレンアジペートの少なくとも一方であることを特徴とする請求項１又は２に記載のクリーニングブレード。
【請求項４】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が１０００〜３０００、
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が６５０〜５０００であることを特徴とする請求項１〜３の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【請求項５】
前記ポリウレタンエラストマーが国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、動的粘弾性測定におけるｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下であることを特徴とする請求項１〜４の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【請求項１】
トナー担持体に当接し、前記トナー担持体上に残留したトナーを清掃除去するクリーニングブレードであって、
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなるポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタンエラストマーを主成分とすることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項２】
前記ポリエステルポリオールと前記ポリエーテルポリオールの質量比（ポリエステルポリオール）：（ポリエーテルポリオール）が、９５：５〜７０：３０であることを特徴とする請求項１に記載のクリーニングブレード。
【請求項３】
前記ポリエーテルポリオールがポリオキシテトラメチレングリコールであり、
前記ポリエステルポリオールがポリブチレンアジペート及びポリヘキシレンアジペートの少なくとも一方であることを特徴とする請求項１又は２に記載のクリーニングブレード。
【請求項４】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が１０００〜３０００、
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が６５０〜５０００であることを特徴とする請求項１〜３の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【請求項５】
前記ポリウレタンエラストマーが国際ゴム硬さ６５〜８０°（ＩＲＨＤ）、動的粘弾性測定におけるｔａｎδのピーク温度が−１０℃以下であることを特徴とする請求項１〜４の何れか１項に記載のクリーニングブレード。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００７−１３３０８３（Ｐ２００７−１３３０８３Ａ）
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３２４９２１（Ｐ２００５−３２４９２１）
【出願日】平成１７年１１月９日（２００５．１１．９）
【出願人】（３９３００２６３４）キヤノン化成株式会社 (640)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月９日（２００５．１１．９）
【出願人】（３９３００２６３４）キヤノン化成株式会社 (640)
【Ｆターム（参考）】
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