説明

クリーンルーム用フィルム

【課題】 本発明は、クリーンルーム内を清浄に保ち且つクリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となるアウトガスの発生量を低減させたクリーンルーム用フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のクリーンルーム用フィルムは、エチレン−α−オレフィン共重合体及び帯電防止剤を含有してなるクリーンルーム用フィルムであって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.88〜0.93g/cm3であると共に、上記帯電防止剤の含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppmで、且つ、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の0〜10ppmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの仕切り、壁及びカーテンなどの用途に用いられるクリーンルーム用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハーのような精密な製品は、その製造工程において、塵埃が混入してしまうと歩留まりが低下してしまうため、塵埃を遮断したクリーンルーム或いはクリーンブース(以下、まとめて「クリーンルーム」という)内で製造されている。上記クリーンルームには、その清浄性を維持する目的で塵埃の混入を防ぐための仕切り、壁及びカーテンなどが設けられている。
【0003】
上記クリーンルームの仕切り、壁及びカーテンなどとして用いられるフィルム(シート)としては、従来、ポリ塩化ビニルを主成分とするフィルムが多く用いられてきた。このようなフィルムとしては、例えば、特許文献1に、塩化ビニル系樹脂100重量部あたり、可塑剤20〜80重量部を含む樹脂組成物をシート化し、このシートの少なくとも片面に、真空下、プラズマ重合性を有しない不活性ガスのプラズマと、プラズマ重合性を有する有機化合物とを接触させて、シート表面に有機化合物重合体の皮膜を形成してなる塩化ビニル系樹脂製カーテンが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の塩化ビニル系樹脂製カーテンは、カーテン中に含有されている可塑剤が揮発又は分解してアウトガスが発生し、クリーンルーム内に放出されてしまうため、クリーンルーム内で製造される製品が可塑剤より放出されたアウトガスによって汚染され、製品の歩留まりが低下してしまうという問題が生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−225131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記クリーンルームの仕切り、壁及びカーテンなどに用いられるクリーンルーム用フィルムとして、ポリエチレンを主成分とするフィルムが用いられるようになったが、通常、ポリエチレン系フィルムは酸化防止剤を含有しており、この酸化防止剤が揮発又は分解してアウトガスが発生し、クリーンルーム内に放出されてしまうため、クリーンルーム内で製造される製品が酸化防止剤より放出されたアウトガスによって汚染され、製品の歩留まりが低下してしまうという問題が生じた。
【0007】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クリーンルーム内を清浄に保ち且つクリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となるアウトガスの発生量を低減させたクリーンルーム用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のクリーンルーム用フィルムは、エチレン−α−オレフィン共重合体及び帯電防止剤を含有してなるクリーンルーム用フィルムであって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.88〜0.93g/cm3であると共に、上記帯電防止剤の含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppmで、且つ、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の0〜10ppmであることを特徴とする。
【0009】
上記クリーンルーム用フィルムは、エチレン−α−オレフィン共重合体からなり、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。そして、上記エチレン−α−オレフィン共重合体のなかでも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0010】
ここで、上記直鎖状低密度ポリエチレンとは、エチレンと少量のα−オレフィンからなる、線状の直鎖に短鎖分岐を有する構造の直鎖状のエチレン−α−オレフィン共重合体であり、含有されるα−オレフィンの炭素数が3〜10の直鎖状低密度ポリエチレンが特に好ましく用いられる。
【0011】
なお、上記エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
【0012】
そして、上記エチレン−α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン含有量は、少ないと、クリーンルーム用フィルムの弾性が高くなりすぎて、フィルムの風合いが損なわれることがある一方、多いと、クリーンルーム用フィルム同士が密着しやすくなって、作業性が低下することがあるので、1.0〜10.0重量%が好ましく、3.0〜8.0重量%がより好ましい。
【0013】
又、上記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、小さいと、クリーンルーム用フィルムの機械的強度及び耐久性が低下する一方、大きいと、クリーンルーム用フィルムが硬くなりすぎて、フィルムの風合いが損なわれるので、0.88〜0.93g/cm3に限定され、0.89〜0.92g/cm3が好ましい。なお、本発明における合成樹脂の密度とは、JIS K6760に準拠して測定された値をいう。
【0014】
本発明のクリーンルーム用フィルムは、フィルム同士を熱融着して継ぎ合わせることにより、大きなサイズのクリーンルーム用フィルムとし、これをクリーンルームの壁やカーテンなどの用途に用いることがある。この際、クリーンルーム用フィルムを熱融着させる際の温度が高温であると、後述のような、クリーンルーム用フィルム中に含有される帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が、揮発したり分解したりしてアウトガスを発生し、このアウトガスがクリーンルーム内に放出されて、クリーンルーム内で製造される製品を汚染してしまうことがある。よって、上記クリーンルーム用フィルムとしては、低温で熱融着できるものが好ましい。
【0015】
このようにクリーンルーム用フィルムを低温で熱融着できるものにするために、クリーンルーム用フィルムを構成するエチレン−α−オレフィン共重合体として、融点が125℃以下のものを用いることが好ましく、120℃以下のものを用いるのがより好ましい。なお、本発明における合成樹脂の融点とは、JIS K7121に準拠して測定された温度をいう。なお、上記クリーンルーム用フィルムに2種以上のエチレン−α−オレフィン共重合体を含有させる場合、最も融点の高いエチレン−α−オレフィン共重合体の融点が上記温度以下であることが好ましい。
【0016】
又、上記クリーンルーム用フィルムを低温で熱融着できるものにするために、クリーンルーム用フィルムに、上記エチレン−α−オレフィン共重合体よりも融点の低い、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン系樹脂(以下、「低融点ポリオレフィン系樹脂」という)を含有させるのが好ましい。なお、本発明において、エチレン−α−オレフィン共重合体と、これ以外のポリオレフィン系樹脂との間において融点を比較するにあたって、エチレン−α−オレフィン共重合体又はこれ以外のポリオレフィン系樹脂の何れか或いは双方が2種以上用いられている時は、エチレン−α−オレフィン共重合体については、エチレン−α−オレフィン共重合体の融点のうち最も低い融点を基準とし、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン系樹脂については、ポリオレフィン系樹脂の融点のうち最も高い融点を基準とする。
【0017】
上記低融点ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。なお、上記低融点ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
又、上記低融点ポリオレフィン系樹脂の融点は、高いと、クリーンルーム用フィルムを熱融着させる際の温度が高温になって、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が、揮発又は分解してアウトガスを発生し、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されてしまうことがあるので、125℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。なお、上記クリーンルーム用フィルムに、2種以上の低融点ポリオレフィン系樹脂を含有させる場合、最も融点の高い低融点ポリオレフィン系樹脂の融点が上記温度以下であることが好ましい。
【0019】
そして、上記低融点ポリオレフィン系樹脂の密度は、小さいと、クリーンルーム用フィルムの機械的強度及び耐久性が低下することがある一方、大きいと、クリーンルーム用フィルムが硬くなりすぎて、フィルムの風合いが損なわれてしまうことがあるので、0.88〜0.93g/cm3が好ましく、0.89〜0.92g/cm3がより好ましい。
【0020】
又、上記クリーンルーム用フィルムに低融点ポリオレフィン系樹脂を含有させる場合、クリーンルーム用フィルム中の低融点ポリオレフィン系樹脂の含有量は、クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。これは、低融点ポリオレフィン系樹脂の含有量が少ないと、クリーンルーム用フィルムを熱融着させる際の温度が高温になって、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が、揮発又は分解してアウトガスを発生し、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されてしまうことがある一方、低融点ポリオレフィン系樹脂の含有量が多いと、クリーンルーム用フィルムの機械的強度及び耐久性が低下することがあるからである。
【0021】
なお、上記クリーンルーム用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、エチレン−α−オレフィン共重合体や低融点ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分が含有されていてもよい。
【0022】
本発明のクリーンルーム用フィルムは、フィルムが帯電することによって、フィルム表面に塵や埃を付着してしまうのを防ぐために帯電防止剤が含有される。上記帯電防止剤としては、特に限定されないが、界面活性剤として用いられているものが好ましく、例えば、リン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステルやジグリセリン脂肪酸エステルなどの脂肪酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの高級アルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのアルキルフェノール系界面活性剤などのノニオン界面活性剤などが挙げられ、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0023】
又、上記帯電防止剤の分子量は、小さいと、帯電防止剤がクリーンルーム用フィルムの表面にブリードアウトして、クリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となったり、クリーンルーム用フィルムの外観が損なわれることがあるので、200以上が好ましく、300〜1000がより好ましい。
【0024】
そして、上記クリーンルーム用フィルム中における帯電防止剤の含有量は、少ないと、クリーンルーム用フィルムの帯電防止性が不十分になる一方、多いと、クリーンルーム用フィルムの表面に帯電防止剤がブリードアウトして、クリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となったり、クリーンルーム用フィルムの外観が損なわれるので、クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppmに限定され、900〜4000ppmが好ましい。なお、上記クリーンルーム用フィルムの一面或いは両面に後述する表面フィルムやその他のフィルムが積層一体化されている場合、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤の含有量は、クリーンルーム用フィルム以外のフィルムに含有される帯電防止剤及び樹脂成分の重量を考慮せずに計算するものとする。
【0025】
更に、本発明のクリーンルーム用フィルムに、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤を含有させる場合、これらの合計含有量はクリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の10ppm以下に限定されるが、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が全く含有されないのが好ましい。これは、上記クリーンルーム用フィルム中における酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の含有量が多いと、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が揮発又は分解して発生するアウトガスの発生量が多くなり、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されてしまうからである。なお、上記クリーンルーム用フィルムの一面或いは両面に後述する表面フィルムやその他のフィルムが積層一体化されている場合、クリーンルーム用フィルム中の酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量は、クリーンルーム用フィルム以外のフィルムに含有される酸化防止剤、滑剤、無機充填剤及び樹脂成分の重量を考慮せずに計算するものとする。
【0026】
そして、上記酸化防止剤としては、従来からフィルムに用いられているものであればよく、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオプロピオネートなどのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0027】
又、上記滑剤としては、従来からフィルムに用いられているものであればよく、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0028】
更に、上記無機充填剤としては、従来からフィルムに用いられているものであればよく、例えば、炭酸マグネシウム、マグネシウム珪酸塩、酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0029】
そして、上記クリーンルーム用フィルムの表面固有抵抗値(Ω)は、大きいと、クリーンルーム用フィルムに塵埃が付着しやすくなることがあるので、1.0×1013Ω以下が好ましく、1.0×1012Ω以下がより好ましい。
【0030】
又、上記クリーンルーム用フィルムの厚さは、薄いと、クリーンルーム用フィルムの機械的強度及び耐久性が低下することがある一方、厚いと、クリーンルーム用フィルムの柔軟性が不足して、クリーンルーム用フィルムを巻き取って保存できなくなることがあるので、70〜300μmが好ましく、90〜200μmがより好ましい。
【0031】
以上、クリーンルーム用フィルムが単層からなる場合について説明してきたが、本発明のクリーンルーム用フィルムは、低温で熱融着できるものにする目的で、クリーンルーム用フィルムの一面又は両面に低融点ポリオレフィン系樹脂からなる表面フィルムを積層一体化させて、複数層からなるクリーンルーム用フィルムとしてもよい。なお、上記表面フィルムを構成する低融点ポリオレフィン系樹脂は、上記と同様のものが用いられる。
【0032】
又、上記表面フィルム中における帯電防止剤の含有量は、少ないと、クリーンルーム用フィルムの帯電防止性が低下することがある一方、多いと、クリーンルーム用フィルムの表面に帯電防止剤がブリードアウトして、クリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となったり、クリーンルーム用フィルムの外観が損なわれることがあるので、表面フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppmであることが好ましく、900〜4000ppmであることがより好ましい。
【0033】
そして、上記表面フィルム中における酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量は、表面フィルムを構成する樹脂成分の全重量の10ppm以下であることが好ましいが、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が全く含有されないのがより好ましい。これは、上記表面フィルム中における酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の含有量が多いと、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が揮発又は分解して発生するアウトガスの発生量が多くなり、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されてしまうことがあるからである。
【0034】
又、上記表面フィルムの厚さは、薄いと、クリーンルーム用フィルムを熱融着させる際の温度が高温になって、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が、揮発又は分解してアウトガスを発生し、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されてしまうことがある一方、厚いと、クリーンルーム用フィルムの柔軟性が不足して、クリーンルーム用フィルムを巻き取って保存できなくなることがあるので、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
【0035】
更に、上記表面フィルムを積層一体化してなるクリーンルーム用フィルムの全体厚さは、薄いと、クリーンルーム用フィルムの機械的強度及び耐久性が低下することがある一方、厚いと、クリーンルーム用フィルムの柔軟性が不足して、クリーンルーム用フィルムを巻き取って保存できなくなることがあるので、70〜300μmが好ましく、90〜200μmがより好ましい。
【0036】
又、上記表面フィルムを積層一体化してなるクリーンルーム用フィルムの表面固有抵抗値(Ω)は、上述と同じ理由により、1.0×1013Ω以下が好ましく、1.0×1012Ω以下がより好ましい。
【0037】
次に、本発明のクリーンルーム用フィルムの製膜方法について説明する。単層のクリーンルーム用フィルムの製膜方法としては、特に限定されず、例えば、押出機に、上述のようなエチレン−α−オレフィン共重合体及び帯電防止剤並びに必要に応じて添加する酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤からなる樹脂組成物を供給し、溶融混練させた後、この溶融状態の樹脂組成物をフィードブロックに供給し、フィードブロックの先端に配設されたTダイ又はサーキュラーダイから押出製膜する方法が挙げられ、Tダイを用いて押出製膜するのが好ましい。
【0038】
更に、表面フィルムが積層一体化されてなる複数層のクリーンルーム用フィルムを製膜する方法としては、特に限定されないが、例えば、クリーンルーム用フィルムの層数分の押出機を用意し、1機の押出機に、上述の樹脂組成物を供給する一方、残余の押出機を表面フィルム用の押出機として、低融点ポリオレフィン系樹脂及び帯電防止剤並びに必要に応じて添加する酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤からなる樹脂組成物を供給し、それぞれの押出機内で溶融混練させた後、これら溶融状態の樹脂組成物をフィードブロックに供給し、フィードブロックの先端に配設されたTダイ又はサーキュラーダイから共押出製膜する方法が挙げられ、Tダイを用いて共押出製膜するのが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明のクリーンルーム用フィルムは、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の含有量を低減し、或いは、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤を含有させていないことから、クリーンルーム用フィルムから酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の揮発又は分解に伴って発生するアウトガスがほとんど発生しない。従って、本発明のクリーンルーム用フィルムにより形成されたクリーンルームによれば、クリーンルーム内で製造される製品は、アウトガスにより汚染されることがほとんどないので、製品の品質及び製造効率を大きく向上させることができる。
【0040】
又、上記クリーンルーム用フィルムは、帯電防止剤を含有してなることから、クリーンルーム用フィルムが帯電し、その表面に塵埃を付着させてしまうようなことがほとんどない。従って、本発明のクリーンルーム用フィルムによれば、クリーンルーム用フィルムの表面に付着した塵埃がクリーンルーム内に混入するようなことはほとんどなく、清浄性に優れたクリーンルームを形成することができる。
【0041】
そして、上記クリーンルーム用フィルムは、エチレン−α−オレフィン共重合体からなるため、熱融着性(ヒートシール性)に優れている。よって、本発明のクリーンルーム用フィルムは、フィルム同士を熱融着によって継ぎ合わせることにより、所望の大きさのクリーンルーム用フィルムを容易に得ることができるので、クリーンルームの壁やカーテンなどの大型のフィルムが必要とされる用途にも好適に用いられる。
【0042】
又、上記クリーンルーム用フィルムは、エチレン−α−オレフィン共重合体からなるため、低温で熱融着させることができる。従って、本発明のクリーンルーム用フィルムによれば、フィルム同士を熱融着させる際に、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤からアウトガスが発生して、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されるようなことがほとんどなく、製品の歩留まりを向上することができる。
【0043】
更に、上記クリーンルーム用フィルムは、低融点ポリオレフィン系樹脂を含有させたり或いは、クリーンルーム用フィルムに低融点ポリオレフィン系樹脂からなる表面フィルムを積層一体化させることにより、より低温で熱融着させることのできるクリーンルーム用フィルムにすることができる。このような低温で熱融着させることのできるクリーンルーム用フィルムによれば、フィルム同士を熱融着させる際に、クリーンルーム用フィルム中の帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤からアウトガスが発生して、クリーンルーム内で製造される製品が汚染されるようなことがほとんどなく、製品の歩留まりをより向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
押出機に、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が含有されていない直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ニポロンL」、エチレン含有量:92重量%、α−オレフィン含有量:8重量%、密度:0.920g/cm3、融点:120℃)100重量部と、帯電防止剤であるジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製 商品名「ポエムDL」、分子量:348、ノニオン界面活性剤、10重量%マスターバッチ)1重量部(1000ppm)を供給し、押出機内で溶融混練させた後、この溶融状態の樹脂組成物を押出機からフィードブロックへ供給し、フィードブロックの先端に配設されたTダイより押出製膜することにより、厚さ150μmのクリーンルーム用フィルムを得た。
【0046】
(実施例2)
押出機に、何れも酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が含有されていない、直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ニポロンL」、エチレン含有量:92重量%、α−オレフィン含有量:8重量%、密度:0.920g/cm3、融点:120℃)80重量部及び低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ペトロセン」、密度:0.920g/cm3、融点:110℃)20重量部と、帯電防止剤であるジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製 商品名「ポエムDL」、分子量:348、ノニオン界面活性剤、10重量%マスターバッチ)1重量部(1000ppm)を供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、厚さ150μmのクリーンルーム用フィルムを得た。
【0047】
(実施例3)
2機の押出機がフィードブロックを介して一のTダイに接続されてなる2層共押出装置を用意し、この共押出装置の一方の押出機に、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が含有されていない直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ニポロンL」、エチレン含有量:92重量%、α−オレフィン含有量:8重量%、密度:0.920g/cm3、融点:120℃)100重量部及び帯電防止剤であるジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製 商品名「ポエムDL」、分子量:348、ノニオン界面活性剤、10重量%マスターバッチ)1重量部(1000ppm)を供給した。
【0048】
一方、他方の押出機を表面フィルム用の押出機として、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤が含有されていない低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ペトロセン」、密度:0.920g/cm3、融点:110℃)100重量部及び帯電防止剤であるジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製 商品名「ポエムDL」、分子量:348、ノニオン界面活性剤、10重量%マスターバッチ)1重量部(1000ppm)を供給した。そして、上記2機の押出機の樹脂組成物をそれぞれ溶融混練させた後、溶融状態の樹脂組成物を押出機からフィードブロックへ供給し、フィードブロックの先端に配設されたTダイより押出製膜することにより、厚さ120μmのクリーンルーム用フィルムの一面に、厚さ30μmの表面フィルムが積層一体化されてなる全厚さ150μmのクリーンルーム用フィルムを得た。
【0049】
(比較例1)
押出機に、更に、酸化防止剤0.05重量部(500ppm)を供給したこと以外は、実施例1と同様の要領で、厚さ150μmのクリーンルーム用フィルムを得た。
【0050】
(比較例2)
帯電防止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の要領で、厚さ150μmのクリーンルーム用フィルムを得た。
【0051】
上記のようにして得られたクリーンルーム用フィルムの表面固有抵抗値、及び、このクリーンルーム用フィルムにより形成されたクリーンルーム内で製造される製品の汚染物質付着量を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0052】
(表面固有抵抗値)
JIS K6911に準拠して、クリーンルーム用フィルムの表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
【0053】
(汚染物質付着量)
シリコンウェハーをシャーレ内に配置し、このシャーレの開口部をクリーンルーム用フィルムで覆い被せることにより密封し、この密封したシャーレを40℃の温度条件下にて1週間放置した。そして、1週間放置した後のシャーレよりシリコンウェハーを取り出し、この1週間放置後のシリコンウェハーの重量を計測して、1週間放置前のシリコンウェハーの重量との差よりシリコンウェハーに付着した汚染物質の重量を算出した。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α−オレフィン共重合体及び帯電防止剤を含有してなるクリーンルーム用フィルムであって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.88〜0.93g/cm3であると共に、上記帯電防止剤の含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppmで、且つ、酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量が、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の全重量の0〜10ppmであることを特徴とするクリーンルーム用フィルム。
【請求項2】
エチレン−α−オレフィン共重合体よりも融点の低い、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン系樹脂を、上記クリーンルーム用フィルムを構成する樹脂成分の10〜50重量%含有してなることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルーム用フィルム。
【請求項3】
エチレン−α−オレフィン共重合体よりも融点の低い、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン系樹脂からなる表面フィルムがクリーンルーム用フィルムの一面又は両面に積層一体化されており、上記表面フィルム中に帯電防止剤が上記表面フィルムを構成する樹脂成分の全重量の500〜5000ppm含有され、且つ、上記表面フィルム中に含有される酸化防止剤、滑剤及び無機充填剤の合計含有量が、上記表面フィルムを構成する樹脂成分の全重量の0〜10ppmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーンルーム用フィルム。

【公開番号】特開2008−69273(P2008−69273A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249440(P2006−249440)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】