クレーンの制御方法
【課題】吊荷の残留振動をより効果的に抑制することのできるクレーンの制御方法を提供する。
【解決手段】ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、当該運搬過程において、運搬開始位置から目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で線対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行う。
【解決手段】ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、当該運搬過程において、運搬開始位置から目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で線対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン運転時の吊荷に振れ(荷振れ)を抑制するクレーンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダム工事のコンクリート打設設備では、例えば図1に示すように、コンクリート混練プラント101からトランスファーカー102により運ばれた生コンクリートをクレーン(例えば、ダム用タワークレーン)Cのブーム105の先端からワイヤ104を介して吊り下げられたバケット(吊荷の一例)103に受けた後、ワイヤ104を巻き上げることによってバケット103を吊り上げる。
【0003】
なお、ダム用タワークレーンは、ブーム105の旋回および起伏とバケット103の巻き上げ下げにより生コンクリートを所定の位置まで運搬する大型の荷役機械である。
【0004】
次いで、クレーンCのブーム105を旋回させて、バケット103をダム堤体200の打設面上の目的地点の上まで搬送する。
【0005】
そして、前記バケット103が目的地点の所定の高さになるまでワイヤ104を巻降ろした後、バケット103のゲートを開いて、バケット103内の生コンクリートをダム堤体200の目的地点に打設する。
【0006】
このコンクリートの打設には、クレーンCの操作者の他に、生コンクリート混練プラント101側と前記目的地点にも作業者が必要である。
【0007】
ところで、上述のようなクレーンCでは、作業の安全を確保するために、バケット103ができるだけ振れないようにブーム105を旋回させて、目的地点上でワイヤ104により吊り下げられたバケット103が振れないようにしたいという要請がある。
【0008】
さらに、工期を短縮し、コストを低廉化するために、クレーンCの旋回動作をできるだけ速くしたいという要請もある。
【0009】
そのため、前記2つの要請を満たすためには、クレーンCのブーム105の旋回、起伏およびワイヤの巻上げ、巻降ろしの操作に熟練を要するという事情があった。
【0010】
しかしながら、建設業界においては、上述のような高度な操作が可能な熟練者が少なくなってきているという実情がある。
【0011】
また、クレーン操作の熟練者を養成するのには時間とコストを要するという問題もある。
【0012】
一方で、上述のようなコンクリートの打設には、クレーンCの操作者のみならず、そのクレーンCの動きに追従して作業を行う作業者(コンクリート混練プラント側と目的地点側)が必要である。
【0013】
そのため、上述の操作の熟練の程度によって定まるクレーンCのサイクルタイムの長短が、工期や人件費等のコストに及ぼす影響は非常に大きい。
【0014】
特に、上述のようなダム工事にあっては、1日に膨大な量の生コンクリートを打設するので、クレーンCのサイクルタイムの長短が及ぼず影響は一層重大となる。
【0015】
ここで、クレーンCの旋回運動の加速時には、旋回方向の加速度とブーム方向の遠心力が吊荷に作用するため吊荷は円弧状の軌跡を描くこととなる。
【0016】
したがって、吊荷は2次元的な運動になり円錐振り子としてのモデル化が必要になる。 上述のように、コンクリート打設のサイクルタイムの短縮は重要な課題であり、それを向上させるには打設位置での残留振動の発生を抑制することが必要になるが、2次元的な振れであるため振れの抑制は難しい課題である。
【0017】
ところで、クレーンにおける残留振動を抑制する技術は種々提案されている。
【0018】
例えば、特許第3241591号公報には、旋回自在かつ起伏自在なブームを有するブーム式クレーンにより、吊荷をワイヤで吊り下げながら運搬開始地点から目的地点に運搬するクレーンの制御方法において、ブームの旋回の加速開始から加速終了までの間にワイヤが巻上げまたは巻降ろされ、加速開始時の前記ワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期と加速終了時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期との平均値の整数倍の時間の間、ブームを加速旋回させると共に、この加速旋回区間のみでブームの起伏を行い、起伏動作終了時のブームの旋回半径が目的地点の旋回半径になるようにし、次に、目的地点の旋回半径を維持した状態で、ブームを加速終了時の旋回角速度で等速で旋回させ、その後、ブームの旋回の減速開始から減速終了までの間にワイヤが巻上げまたは巻降ろされ、減速開始時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期と減速終了時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期との平均値の整数倍の時間の間、ブームを減速しながら旋回させて、吊荷を目的地点に停止させるクレーンの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3241591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、前記従来技術によってもクレーンのブームを旋回させる場合における吊荷の残留振動を十分には抑制することが難しいことが判明した。
【0021】
そこで、本発明は、吊荷の残留振動をより効果的に抑制することのできるクレーンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係るクレーンの制御方法は、ブームを旋回させてワイヤで吊った吊荷を運搬開始位置から目標位置まで運搬するクレーンについて、前記ブームの旋回に伴なう前記目標位置における前記吊荷の残留振動を収束させる振れ止め制御を行うクレーンの制御方法であって、前記ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、当該運搬過程において、前記運搬開始位置から前記目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明に係るクレーンの制御方法は、請求項1に記載の発明について、前記等角速度区間における旋回速度に基づいて前記旋回加速、減速パターンを一義的に決定することを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明に係るクレーンの制御方法は、請求項2に記載の発明について、前記ブームのX軸からの角度をα、前記旋回速度をdα/dt、振り子のX軸からの方向角をΨ、吊荷の振れ角をθ、B点(ブームの先端)とO点(旋回中心)の水平距離でクレーンの旋回半径をr、吊荷ロープ長をlとした場合に、
【0025】
当該αを次式に代入して、
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
前記旋回加速、減速パターンを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0030】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、運搬開始位置から目標位置までの旋回速度(旋回角度)をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができるという優れた効果を奏することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、等角速度区間における旋回速度に基づいて旋回加速、減速パターンを一義的に決定することができるので、効率的に旋回加速、減速パターンを得ることができるという効果がある。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、ブームのX軸からの角度αまたは旋回速度dα/dtを代入するだけで、容易かつ迅速に旋回加速、減速パターンを求めることができ、効率的に残留振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】施工状態のクレーンCを示す説明図である。
【図2】運搬開始位置(S)から目標位置(E)までの移動状態を示す説明図である。
【図3】運搬開始位置(S)から目標位置(E)までのコンクリートバケットの位置を示す説明子である。
【図4】タワークレーンのモデルを示す説明図である。
【図5】モデル1、2のX方向、Y方向の応答の比較を示すグラフである。
【図6】図2を座標変換した運搬開始位置(S)から目標位置(E)までの移動状態を示す説明図である。
【図7】旋回の加速パターンを示す説明図である。
【図8】振り子の応答パターンを示す説明図である(図においてXT*、YT*はブーム先端からのXおよびY方向の振り子の変位である。)
【図9】振り子に作用する加速度と振り子の応答を示す説明図である。
【図10】XおよびY方向の変位および旋回の加速度を示すグラフである。
【図11】ブーム先端の振り子の支点に作用する加速度を示すグラフである。
【図12】C1−3およびC2−4のブーム先端からの振り子の変位を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の一形態に係るブーム式のクレーンの駆動制御装置のブロック図である。
【図14】クレーンCの運搬動作を示す概略図である。
【図15】クレーンCを上方から見た平面図である。
【図16】算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るクレーンの制御方法の説明を行う前に、本発明が完成されるまでの経緯等について説明する。
【0036】
まず、従来においては、クレーンの熟練操縦者が特別な旋回操作によって吊荷の残留振れを抑えることに着目し、オペレータの操作を力学的に表現しそれに基づいた制御方法を構築していた。すなわち、旋回の加速終了後に意図的に振れを発生させ、その振れのタイミングを見計らい減速することにより目標位置で残留振動の発生を抑制する制御方法であった。
【0037】
また、他の従来技術では、トラッククレーンを対象として旋回および起伏操作によって生じる吊荷の振れ止めにファジー制御を適用している。
【0038】
さらに他の従来技術では、ブームの起伏および旋回操作を同時に行う場合を対象として吊荷の位置決めおよび振れ止め制御に、起伏方向と旋回方向に独立した制御器を用いる分散制御系が適用できることを提案している。
【0039】
なお、この従来技術では、吊り荷ロープ長が変動する場合の吊荷の位置決め制御、振れ止め制御にゲインスケジュールド制御が有効で、シミュレーションおよび実験により残留振動を抑制できることが確認されている。
【0040】
また、他の従来技術では、旋回クレーンを対象として、ブームの旋回運動により生じる振れを抑制させる旋回軌道を吊荷の振動周期に着目して誘導し、振れ止めすることを提案している。
【0041】
さらに他の従来技術では、旋回クレーンの旋回、起伏、巻き上げ下げ同時運動による直線搬送方式での残留振動の振れ止めの制御と吊荷の移動に関する最短時間制御問題を取り扱い、搬送時間の短縮と残留振動の抑制が可能であることを提案している。
【0042】
ところで、これらの従来技術では、ブームの旋回操作によって発生する振れの抑制にフィードバック制御が適用可能であることを前提にして制御方法が提案されている。
【0043】
しかしながら、フィードバック制御は、システムのコスト、計測機器の故障等を考慮すると現場ではオープンループ制御による運転が必要な場合も多かった。
【0044】
そこで、本発明者は、目標位置での残留振動が発生しないオープンループ制御について鋭意研究した。
【0045】
ここで、実機(クレーンC)への適用を考えると、旋回と巻き上げ(下げ)の操作を同時に行い、目標位置で残留振動を抑制する制御方法が必要になる。
【0046】
吊り荷ロープ長が変動する場合には、吊り荷ロープ長が変動しない場合の残留振動を抑制する旋回の加速パターンを変換する制御方法を考えている。
【0047】
したがって、本発明ではタワークレーンのダイナミクスに関する基礎的な解析とそれに基づく目標位置での残留振動を抑制する加速パターンの提案を目的として吊り荷ロープ長は一定とするものとする。
【0048】
次に、本実施の形態に係るクレーンの制御方法に関連して、タワークレーンのモデル化と運動方程式について説明する。
【0049】
まず、タワークレーンの概要について述べる。
【0050】
タワークレーンCを示す図1において、rは旋回半径、lは吊り荷ロープ長である。
【0051】
ブーム105の旋回によりロープ104の支点は円弧状の軌跡を描くため、コンクリートバケット103は旋回方向の加速度、遠心力およびコリオリ力の影響を受けて2次元的な振動になる。
【0052】
したがって、目標位置での残留振動の発生を抑制することが非常に難しくなる。
【0053】
次いで、タワークレーンの運転方法について述べる。
【0054】
図2および図3に運転方法の概要を示す。なお、図3は図2のブーム先端の円弧状の軌道を展開したものである。
【0055】
クレーンの運転はS点の運搬開始位置からP点で旋回が定常速度になるように旋回を加速する。
【0056】
その後、定常速度で運転し目標位置に近づいた時にQ点で減速を開始しE点のコンクリート打設位置で停止させ、コンクリート打設終了後再びS点に復帰する。
【0057】
SP間の加速領域、QE間の減速領域では旋回方向の加速度および遠心力がコンクリートバケットに作用する。
【0058】
また、PQ間の旋回の等速区間では遠心力が作用する。
【0059】
運転方法は、図3に示すように旋回を加速、定常速度、減速領域に分けたオープンコントロールとし、目標位置で残留振動が発生しない旋回の加速パターンを導出する。
【0060】
次に、モデル化について述べる。
【0061】
図2に示すタワークレーンを図4に示すようにモデル化する。
【0062】
本発明者は、実機クレーンの振動実験およびシミュレーションから、クレーン本体およびブームは剛体、吊り荷は質点、ロープは質量を無視し剛体として取り扱うことができることを確認している。
【0063】
ここで、B点をブーム先端、C点をコンクリートバケットとする。また、O点の旋回中心を原点としてダム軸方向をX軸とした。
【0064】
また、Ψは振り子のX軸からの方向角、θは吊り荷の振れ角、αはブームのX軸からの角度(旋回角度)、rはB点とO点の水平距離でクレーンの旋回半径、lは吊り荷ロープ長である。
【0065】
また、これ以降、コンクリートバケットを「振り子」、コンクリート打設位置を「目標位置」と呼ぶこととする。
【0066】
次に、本発明に適用される運動方程式について説明する。
【0067】
図4に示すブーム先端の座標を(XB、YB、ZB)、振り子の座標を(XC、YC、ZC)とすると振り子の座標は次のようになる。
【0068】
【数3】
【0069】
【数4】
【0070】
数1、数2を時間で微分して求めたラグランジュの運動方程式から振り子の長さlが一定の円錐振り子の運動方程式は数5、数6のように導くことができる。
【0071】
【数5】
【0072】
【数6】
【0073】
ここで、振り子の振れ角θは微小としてsinθ≒θ、cosθ≒1とし、ブーム105の起伏速度は非常に小さいためd2ZB/dt2≒0とした。
【0074】
図4に示すように振り子の支点はブーム先端であることから振り子に作用する外力はブーム先端から与えられる。ブーム先端の座標は次のようになる。
【0075】
【数7】
【0076】
【数8】
【0077】
数7、数8を時間で微分して旋回動作により発生するブーム先端のXおよびY方向の加速度d2XB/dt2、d2YB/dt2を旋回半径rを一定として求めると次のようになる。
【0078】
【数9】
【0079】
【数10】
【0080】
次いで、数9、数10を前出の数5、数6に代入し振り子の応答を求める。
【0081】
ここで、数5、数6において振り子の長さlが変化しないため、lを規準長さとし、X=lX*、t=Tt*(T=√(l/g))とおくと、数5、数6は無次元化されて数11、数12になる。
【0082】
【数11】
【0083】
【数12】
【0084】
また、X方向、Y方向のブーム先端の加速度を表す数9、数10は無次元化されて数13、数14になる。
【0085】
【数13】
【0086】
【数14】
【0087】
次いで、数13および数14を数11および数12に代入すると次のようになる。
【0088】
【数15】
【0089】
【数16】
【0090】
そして、本実施の形態において、目標位置到達後の残留振動を抑える制御方法の算出には無次元化された数15、数16を使用する。
【0091】
次に、目標位置での残留振動の抑制方法を簡便に取り扱うため、振り子を円弧状の軌道を描くブームの先端で支持されているXおよびY方向に振動する単振り子とみなす。
【0092】
図4からX方向およびY方向の変位をXT=XC−XB、YT=YC−YBとし、無次元量X*T=XT/l、Y*T=YT/lを導入すると、振り子の無次元運動方程式は次のようになる。
【0093】
【数17】
【0094】
【数18】
【0095】
ここで、X*T、Y*Tの2乗項、3乗項は非常に小さいため無視すると次のようになる。
【0096】
【数19】
【0097】
【数20】
【0098】
なお、これ以降、前出の数15、数16で表されるモデルをモデル1、前出の数19、数20で表されるモデルをモデル2と呼ぶこととする。
【0099】
次に、各モデルの応答の比較について述べる。
【0100】
目標位置で残留振動が生じない旋回の加速パターンを数21、数22の簡便なモデルを使って検討するため、モデル1およびモデル2の応答を比較する。
【0101】
旋回の加速度d2α/dt*2をモデル1に、数13、数14から求めたd2XB/dt2、d2YB/dt2をモデル2に入力した場合の振り子のX方向、Y方向の応答の比較を図5に示す。
【0102】
そして、モデル1の場合には、振り子の長さl、振り子の振れ角θ、振り子のX軸からの方向角ψを数5、数6に代入してXおよびY方向の変位を求めた。
【0103】
振り子の運動の始点と終点の位置をX軸の周りに対称としているため、X方向およびY方向の振幅はt*=9.51において線対称および点対称になっている。
【0104】
XおよびY方向ともにモデル1とモデル2の振幅は重なっており、振り子の長さが変化しない場合には、モデル2を適用して目標位置での残留振動の抑制方法を検討できることが分かる。
【0105】
次に、振り子の振れ止め方法と軌道予測について述べる。
【0106】
まず、加速パターンの提案について説明する。
【0107】
ここで、図2に示すようにコンクリート運搬の開始位置S点と目標位置E点が与えられた場合を考える。
【0108】
S点とE点がX軸で対称になるように図2に示す∠EOSの2等分線の方向を新たなX軸(図2ではX’)に設定する(図6参照)。
【0109】
変換された運搬開始位置から目標位置までの旋回およびブーム先端のX方向、Y方向の加速度に関して図7に示すようなパターンを考える。
【0110】
ここで、加速終了時刻をT*P、減速の開始時刻をT*Q、減速に終了時刻すなわち運搬時間をT*Eとする。
【0111】
S点からP点までの加速時間T*A=T*PとQ点からE点までの減速時間T*D=T*E−T*Qを等しくし、時刻が1/2T*Eの時、ブーム先端が図6のO’点を通りQ点で減速を始めE点で旋回が停止するようにする。
【0112】
なお、本実施の形態において、記号「*」は、無次元量を表すものとする。
【0113】
したがって、旋回の加速パターンは時刻1/2TE*において点対称になる。
【0114】
旋回に図7(a)の実線のような加速パターンが与えられた時に数21、数22のブーム先端の加速度(d2X*B/dt*2)、(d2Y*B/dt*2)は数13、数14から図7(b)のようになる。
【0115】
ブーム先端の(d2X*B/dt*2)、(d2Y*B/dt*2)は、運搬開始位置と目標位置をX軸において対称にしているため時刻1/2T*EにおいてX方向の加速度は対称に、Y軸方向の加速度は点対称になる。
【0116】
このような旋回の加速パターンを利用すれば、図8に示すように目標位置において残留振動を抑制できる。
【0117】
加速パターンの設定は運動方程式の数値積分を使った収束計算により可能である。
【0118】
しかしながら、この方法は収束時間が長くなり実用的ではない。
【0119】
そこで、次に、畳み込み積分を使った加速パターンの設定方法について述べる。
【0120】
畳み込み積分を使った振り子の軌道予測については、旋回の加速パターンを調整することにより、目標位置における残留振動を抑制する方法を考える。
【0121】
振り子の長さが変わらない場合の応答は数21、数22で近似できるため、畳み込み積分を適用することにより解析的に応答を求めることができる。
【0122】
また、運動方程式を積分して振り子の応答を求めることもできる。
【0123】
しかしながら、実機(クレーンC)への実装を考慮すると加速パターンを短時間で設定することが必要になるため、畳み込み積分を使って応答を求め短時間で目標位置での残留振動を発生させない旋回の加速パターンを求めることとした。
【0124】
また、減速領域での振り子の応答は時刻1/2T*Eにおいて加速領域の応答に対し、X方向には対称、Y方向には点対称になるため減速領域の応答の算定方法については説明を割愛する。
【0125】
旋回の加速度をa*=d2α/dt*2、旋回速度をu*=dα/dt*として数13、数14を数19、数20に代入すると次のようになる。
【0126】
【数21】
【0127】
【数22】
【0128】
数21、数22の右辺の入力は旋回加速度と旋回による遠心力から構成され、時間に関して線形には変化しない。
【0129】
加速領域、定常速度領域および減速領域の応答は上式畳み込み積分を適用することにより求めることができる。
【0130】
次に、加速領域について述べる。
【0131】
SP間の加速領域では旋回が加速中であるため、旋回速度はu*=a*t*になり数21、数22の畳み込み積分は次のようになる。
【0132】
【数23】
【0133】
ここに、fx=r*a*sinα+r*a*2τ*2cosαである。
【0134】
また、Y*は
【0135】
【数24】
【0136】
のように表せ、fy=r*a*cosα+r*a*2τ*2sinαである。
【0137】
また、数23、数24のαは次のように表せる。
【0138】
【数25】
【0139】
ここに、βは図6における∠O’OSである。
【0140】
数25より、sinおよびcos関数を2次の精度まで、テイラー展開すると次のようになる。
【0141】
【数26】
【0142】
【数27】
【0143】
上式を数23、数24に代入して積分を行うと、旋回の加速中のXおよびY方向の変位は次のようになる。
【0144】
【数28】
【0145】
【数29】
【0146】
次に、定常速度領域について説明する。
【0147】
PQ間の定常速度運転時では、一定の旋回速度をu*S=dα/dt*とおくと振り子には次のような遠心力が作用する。
【0148】
【数30】
【0149】
ここで、数23、数24において、旋回の加速度はa*=0となり、定常速度区間が始まる時刻を0とすると、XおよびY方向の変位は次のようになる。
【0150】
【数31】
【0151】
【数32】
【0152】
なお、数31、数32のαはP点の位置の時刻を0としているため次のようになる。
【0153】
【数33】
【0154】
ここに、γは図6における∠O’OPである。
【0155】
数33より、sin関数およびcos関数を2次の精度までテイラー展開すると次のようになる。
【0156】
【数34】
【0157】
【数35】
【0158】
上式を数31、数32に代入して積分を行うとXおよびY方向の変位は次のようになる。
【0159】
【数36】
【0160】
【数37】
【0161】
また、定常速度領域の変位は、定常速度領域が始まる時刻の変位および速度の初期値を0として、数36、数37から求めた変位と、加速領域の最終時刻の変位と速度を初期値とする自由振動の変位を加算したものである。
【0162】
ここで、加速終了時刻の変位および速度X*f、v*fとするとX*axとνxを使って次のように表せる。
【0163】
【数38】
【0164】
【数39】
【0165】
ここに、X*axは自由振動の振幅、νxは位相を表している。
【0166】
数38、数39より、自由振動の位相は次のようになる。
【0167】
【数40】
【0168】
このことから、加速終了後の定常速度領域での自由振動は次のように表せる。
【0169】
【数41】
【0170】
同様な方法により、y方向の変位は次のようになる。
【0171】
【数42】
【0172】
したがって、定常速度領域の振り子の変位は数36、数37に数41、数42の自由振動の変位を加算することにより求めることができる。
【0173】
次に、旋回加速パターンと振れ止め効果について述べる。
【0174】
旋回加速パターンの導出法は、下記の通りである。
【0175】
目標位置に到達した時に、残留振動を発生させない加速パターンを数28、数29、数36、数37、数41、数42を適用して、加速度を既知として次の手順で加速時間、運搬時間および旋回速度を求める。
1)d2α/dt*2を設定する。
2)振り子の固有周期のほぼ整数倍とする運搬時間T*Eを仮定する。
3)加速時間T*Aを仮定する。
4)加速時間および減速時間を等しくするため、定常速度の時間T*ST=T*E−2T*Aを求める。
5)数28、数29にT*Aを代入し加速終了時刻T*Pの応答を求める。
6)数36、数37、数41、数42にT*STを代入し、定常速度終了時刻T*Qの応答を求める。
7)T*PとT*QでのX方向およびY方向の変位および速度が等しくなるまで、すなわち、X方向とY方向の応答が時刻1/2T*Eにおいて、それぞれ対称および点対称になるまで前記の手順2)〜7)を繰り返してT*E、T*Aを決める。
8)減速終了時刻T*Eにおいて振り子の振れが抑制されていることを確認する。
9)加速時間から旋回速度が決定される。
【0176】
以上で述べた繰り返し計算は、短時間で実行できるため実用的である。
【0177】
ここで、図13〜図16を参照して、本実施の形態に係るクレーンCの構成例について説明する。
【0178】
図13は、本発明の実施の一形態に係るブーム式のクレーンの駆動制御装置の要部ブロック図である。また、クレーンは、駆動制御装置を除き図1に示すコンクリート打設設備に用いたクレーンCと同一の構成をしている。なお、同一構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0179】
図13において、11は運搬開始地点、目的地点の3次元座標等のデータを入力するデータ入力部、12はデータ入力部11の出力に基づいて、図1に示すブーム105の旋回角度、起伏角度等を演算する演算部、13は演算部12の出力に基づいて、ブーム5の旋回・起伏等を制御するマイクロコンピュータ等で構成される制御部、14は制御部13の制御信号に基づいてブーム105を旋回させる駆動手段としてのブーム旋回モータ、15は制御部13の制御信号に基づいて、ブーム105を起伏させるブーム起伏モータ、16は制御部13の制御信号に基づいて、図1に示す吊荷としてのバケット103を吊り下げるワイヤ104の巻上げ/巻降ろしを行うワイヤ巻取りモータである。
【0180】
データ入力部11、演算部12、制御部13、ブーム旋回モータ14、ブーム起伏モータ15およびワイヤ巻取りモータ16で駆動制御装置300を構成している。
【0181】
また、図14はクレーンCの運搬動作におけるブーム先端の軌跡とバケットの軌跡を示す概略図である。
【0182】
また、図15はクレーンCの旋回動作(旋回中心O、旋回角度θ)を上方から見た平面図である。
【0183】
図14、図15に示すように、駆動制御装置300は、加速移動区間と等速移動区間および減速移動区間でブーム105の旋回と起伏およびワイヤ104の巻上げ/巻降ろしの制御を行う。
【0184】
まず、加速移動区間では、コンクリート混練プラント101よりバンカー線30に沿って運搬されたトランスファーカー102の生コンクリートをバケット103に移し換えた後、バケット103を地切り高さ(例えば、数m)まで吊り上げる。
【0185】
そして、運搬開始地点としての第1の地点Sにバケット103を停止させた状態から、ブーム105を一定の旋回角加速度で加速しながら旋回させると共に、ブーム105を起伏角度φ1からφ2まで起立させると共に、バケット103の吊り長さがL1からL2(<L1 )になるまでワイヤ巻取りモータ16によりワイヤ104を巻上げる。
【0186】
このとき、ブーム起伏モータ15によりブーム105を起立させることによって、ブーム105先端の旋回半径が小さくなり、後述する第2の地点Eすなわち目的地点でブーム105先端の旋回半径になるようにする。
【0187】
次に、等速移動区間では、吊り長さL2のまま、一定の旋回角速度でブーム105を旋回させる。
【0188】
この等速移動区間でバケット103の吊り長さをL2とすることによって、障害物40を避ける。
【0189】
次に、図16のフローチャートを参照して、駆動制御装置300で実行される算出処理の処理手順について説明する。
【0190】
この処理が開始されると、まずステップS10で、d2α/dt*2を設定してステップS11に移行する。
【0191】
ステップS11では、振り子の固有周期のほぼ整数倍とする運搬時間T*Eを仮定してステップS12に移行する。
【0192】
ステップS12では、加速時間T*Aを仮定してステップS13に移行する。
【0193】
ステップS13では、加速時間および減速時間を等しくするために、定常速度の時間T*ST=T*E−2T*Aを求めてステップS14に移行する。
【0194】
ステップS14では、前出の数28、数29にT*Aを代入して加速終了時刻T*Pの応答を求めてからステップS15に移行する。
【0195】
ステップS15では、前出の数36、数37、数41、数42にT*STを代入して、定常速度終了時刻T*Qの応答を求めてからステップS16に移行する。
【0196】
ステップS16では、T*PとT*QでのX方向およびY方向の変位および速度が等しくなるまで、すなわち、X方向とY方向の応答が時刻1/2T*Eにおいて、それぞれ対称および点対称になるまで前記ステップS11〜16の処理を繰り返してT*E、T*Aを決めてステップS17に移行する。
【0197】
ステップS17では、減速終了時刻T*Eにおいて振り子の振れが抑制されていることを確認して処理を終了する。
【0198】
これにより、運搬開始位置から目標位置までの旋回速度(旋回角度)をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができる。
【0199】
また、等角速度区間における旋回速度に基づいて旋回加速、減速パターンを一義的に決定することができるので、効率的に旋回加速、減速パターンを得ることができる。
【0200】
また、旋回速度(ブームのX軸からの角度)αを代入するだけで、容易かつ迅速に旋回加速、減速パターンを求めることができ、効率的に残留振動を抑えることができる。
【0201】
次に、上述のような数値計算による振れ止め効果の検証について述べる。
【0202】
本実施の形態に係るクレーンの制御方法の有効性を検証するために行ったシミュレーションの条件および上述の方法により求めた、加速時間T*A、定常速度の時間T*ST、減速時間T*D、運搬開始位置から目標位置までの旋回角度αTOTおよび固有周期に対する運搬時間の比を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
また、タワークレーンは旋回半径により旋回速度の最大値が規定されていること、および振り子の長さから決まる振り子の固有周期を考慮して旋回の加速度d2α/dt*2を以下のように設定した。
【0205】
対象としているクレーンCの旋回速度は、旋回半径が50mの場合で約0.042radian/sである。
【0206】
振り子の長さを50mとして固有周期で旋回の運転速度になるまで加速すると仮定した場合に、旋回の加速度はd2α/dt*2=0.015になる。
【0207】
したがって、旋回の加速度がd2α/dt*2=0.009〜0.021の場合について検討した。
【0208】
なお、図6に示す∠QOP≧が1.5(C2−3、C2−4、C3−2、C3−3)を超える場合は、前述した2次の精度のテイラー展開では誤差が大きくなるため3次の精度まで考慮し加速パターンを求めるとよい。
【0209】
表1におけるC1のケースは前述の手順でT*Eを6πと仮定し、旋回の加速度d2α/dt*2の違いによる比較である。
【0210】
C2、C3は旋回の加速度をd2α/dt*2=0.015、d2α/dt*2=0.018と設定してT*Eを8π、10π、12π、14πと仮定した場合の比較である。
【0211】
通常、タワークレーンを使った作業では、旋回角度αTOT=πで目標位置に運搬することができる。
【0212】
C2−4、C3−3は旋回角度がπを超える場合でも目標位置において残留振動が発生しないことの確認を目的としたケースである。
【0213】
ここで、走行クレーンの加速パターンとの相違について述べる。
【0214】
表1におけるC1−1での加速時間は6.92、C1−5では7.03であり、加速時の加速度が大きくなるとともに、加速時間は長くなっている。
【0215】
また、運搬時間の固有周期に対する比は加速時の加速度が大きくなると小さくなる傾向がある。
【0216】
一方、加速度を等しくして旋回角度を大きくしたC2、C3のケースでは、旋回角度が大きくなるとともに運搬時間は長くなり、加速時間は短くなっている。
【0217】
走行クレーンの場合には、図9に示すように入力(d2XB/dt2)*が時間に関して線形に減少(増加)した後、入力を一定とし、その後入力を線形に増加(減少)させる場合、入力を以下のように設定すると残留振動は発生しない。
【0218】
すなわち、入力を線形に変化させる時間および運搬時間を固有周期の整数倍とし、運搬時間の1/2T*Eで対称(折り返して等しく)に設定すると運搬終了時刻以降の残留振動は発生しない。
【0219】
走行クレーンの入力が線形に変化する時間および入力が一定の場合を旋回クレーンでは加速、減速時間および定常速度の時間と呼ぶ。
【0220】
しかしながら、旋回クレーンの場合には走行クレーンとは異なり加速および減速時間は固有周期の整数倍にはなっていない。
【0221】
このことは以下のように説明できる。すなわち、数28および数29の右辺の第2項以降があるため振り子の固有周期の整数倍の加速時間で加速しても残留振動が発生する。
【0222】
ここで、以上のことを詳しく説明するために便宜的に、数21および数22において遠心力を表す右辺2項を取り除き、さらに旋回の効果を
【0223】
【数43】
のようにおいて取り除く。このとき、数28およ数29の右辺の第2項以降が存在しなくなり、走行クレーンと同様に固有周期の整数倍の加速時間で加速すると残留振動は発生しない。
【0224】
すなわち、タワークレーンのような旋回クレーンでは、数21、数22においてcosα(t*)、sinα(t*)で表されるように、旋回により加速方向が平面内で変化するため、数21、数22の右辺で示される旋回加速度と旋回による遠心力から構成され入力は時間に関して線形に変化せず、固有周期の整数倍の加速時間で加速しても残留振動が発生するため、本実施の形態で示すような特別な加速パターンを導出する必要がある。
【0225】
次に、加速パターンと振り子の応答について述べる。
【0226】
実機のタワークレーンの自動運転に対応するためには、S点からE点までの旋回角度がπまで変化する場合について、残留振動が発生しないことを確認しておく必要がある。
【0227】
旋回角度が1.26、2.34、3.18とした場合のXおよびY方向の変位および旋回の加速度を図10に、ブーム先端の振り子の支点に作用する加速度を図11に示す。
【0228】
図10から減速終了後の目標位置での残留振動は生じていない。
【0229】
表1におけるC2−4のケースでは、時刻21.17において、X方向の変位は対称、Y方向の変位は点対称、旋回の加速パターンは点対称になっている。
【0230】
図11から、C1−3、C2−4において、旋回が始まる時のブームの初期角度βはC1−3で−0.63、C2−4で−1.59である。
【0231】
したがって、XおよびY方向の加速度は−r*(d2α/dt*2)sinα、−r*(d2α/dt*2)cosαの影響を受けるためX方向ではC2−4が、Y方向ではC1−3のケースが大きくなる。
【0232】
X方向の加速度は、運搬時間T*Eの1/2の時刻において対称、Y方向の加速度は同時刻において点対称になるように加速されている。
【0233】
運搬時間は、それぞれC1−3で19.09、C2−2で30.43、C2−4で42.34である。
【0234】
次に、振り子の軌跡について述べる。
【0235】
前出の表1におけるC1−3およびC2−4のブーム先端からの変位を図12に示す。
【0236】
振り子の軌道は両ケースともにX軸で対称になっている。加速中のX方向の無次元最大変位はC1−3で0.017、C2−4で−0.03で、振り子の長さを50mとするとC1−3で0.85m、C2−4で1.5m程度である。
【0237】
旋回の開始時には図11からC2−4ではX方向の加速度がY方向の加速度より大きいため、X方向の変位が大きくなっている。
【0238】
また、旋回とともにY方向の加速度が大きくなりY方向の変位が大きくなる軌道を示している。
【0239】
加速が終了し定常速度になった時にはX方向の変位は正になり、振り子はブーム先端より外側の軌道を通り目標位置において残留振動が抑制されていることが分かる。
【0240】
以上述べたように、本実施の形態に係るクレーンの制御方法によれば、運搬開始位置から目標位置までの運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返して等しく)になる旋回加速パターンを入力することにより、運搬開始位置から目標位置までの旋回角度をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができるという優れた効果を奏することができる。
【0241】
また、畳み込み積分を利用した応答計算を使用するため短時間で加速パターンの導出が可能であり、目標位置が様々に変化する実機への実装が容易であるという利点もある。
【0242】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0243】
また、プログラムを用いる場合には、ネットワークを介して提供し、或いはCD−ROM等の記録媒体に格納して提供することが可能である。
【0244】
即ち、画像処理プログラムを含む所定のプログラムを記録媒体としてのハードディスク等の記憶装置に記録する場合に限らず、当該所定のプログラムを次のようにして提供することも可能である。
【0245】
例えば、所定のプログラムをROMに格納しておき、CPUが、この所定のプログラムをこのROMから主記憶装置へローディングして実行するようにしてもよい。
【0246】
また、前記所定のプログラムを、DVD−ROM、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、フレキシブルディスク、などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明によるクレーンの制御方法は、ダムの施工に適用されるタワークレーンやその他のクレーンに適用することができる。
【符号の説明】
【0248】
101 コンクリート混練プラント
102 トランスファーカー
103 コンクリートバケット
104 ワイヤ(ロープ)
105 ブーム
200 ダム堤体
300 駆動制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン運転時の吊荷に振れ(荷振れ)を抑制するクレーンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダム工事のコンクリート打設設備では、例えば図1に示すように、コンクリート混練プラント101からトランスファーカー102により運ばれた生コンクリートをクレーン(例えば、ダム用タワークレーン)Cのブーム105の先端からワイヤ104を介して吊り下げられたバケット(吊荷の一例)103に受けた後、ワイヤ104を巻き上げることによってバケット103を吊り上げる。
【0003】
なお、ダム用タワークレーンは、ブーム105の旋回および起伏とバケット103の巻き上げ下げにより生コンクリートを所定の位置まで運搬する大型の荷役機械である。
【0004】
次いで、クレーンCのブーム105を旋回させて、バケット103をダム堤体200の打設面上の目的地点の上まで搬送する。
【0005】
そして、前記バケット103が目的地点の所定の高さになるまでワイヤ104を巻降ろした後、バケット103のゲートを開いて、バケット103内の生コンクリートをダム堤体200の目的地点に打設する。
【0006】
このコンクリートの打設には、クレーンCの操作者の他に、生コンクリート混練プラント101側と前記目的地点にも作業者が必要である。
【0007】
ところで、上述のようなクレーンCでは、作業の安全を確保するために、バケット103ができるだけ振れないようにブーム105を旋回させて、目的地点上でワイヤ104により吊り下げられたバケット103が振れないようにしたいという要請がある。
【0008】
さらに、工期を短縮し、コストを低廉化するために、クレーンCの旋回動作をできるだけ速くしたいという要請もある。
【0009】
そのため、前記2つの要請を満たすためには、クレーンCのブーム105の旋回、起伏およびワイヤの巻上げ、巻降ろしの操作に熟練を要するという事情があった。
【0010】
しかしながら、建設業界においては、上述のような高度な操作が可能な熟練者が少なくなってきているという実情がある。
【0011】
また、クレーン操作の熟練者を養成するのには時間とコストを要するという問題もある。
【0012】
一方で、上述のようなコンクリートの打設には、クレーンCの操作者のみならず、そのクレーンCの動きに追従して作業を行う作業者(コンクリート混練プラント側と目的地点側)が必要である。
【0013】
そのため、上述の操作の熟練の程度によって定まるクレーンCのサイクルタイムの長短が、工期や人件費等のコストに及ぼす影響は非常に大きい。
【0014】
特に、上述のようなダム工事にあっては、1日に膨大な量の生コンクリートを打設するので、クレーンCのサイクルタイムの長短が及ぼず影響は一層重大となる。
【0015】
ここで、クレーンCの旋回運動の加速時には、旋回方向の加速度とブーム方向の遠心力が吊荷に作用するため吊荷は円弧状の軌跡を描くこととなる。
【0016】
したがって、吊荷は2次元的な運動になり円錐振り子としてのモデル化が必要になる。 上述のように、コンクリート打設のサイクルタイムの短縮は重要な課題であり、それを向上させるには打設位置での残留振動の発生を抑制することが必要になるが、2次元的な振れであるため振れの抑制は難しい課題である。
【0017】
ところで、クレーンにおける残留振動を抑制する技術は種々提案されている。
【0018】
例えば、特許第3241591号公報には、旋回自在かつ起伏自在なブームを有するブーム式クレーンにより、吊荷をワイヤで吊り下げながら運搬開始地点から目的地点に運搬するクレーンの制御方法において、ブームの旋回の加速開始から加速終了までの間にワイヤが巻上げまたは巻降ろされ、加速開始時の前記ワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期と加速終了時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期との平均値の整数倍の時間の間、ブームを加速旋回させると共に、この加速旋回区間のみでブームの起伏を行い、起伏動作終了時のブームの旋回半径が目的地点の旋回半径になるようにし、次に、目的地点の旋回半径を維持した状態で、ブームを加速終了時の旋回角速度で等速で旋回させ、その後、ブームの旋回の減速開始から減速終了までの間にワイヤが巻上げまたは巻降ろされ、減速開始時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期と減速終了時のワイヤの吊り長さに基づく吊荷の振り子運動の周期との平均値の整数倍の時間の間、ブームを減速しながら旋回させて、吊荷を目的地点に停止させるクレーンの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3241591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、前記従来技術によってもクレーンのブームを旋回させる場合における吊荷の残留振動を十分には抑制することが難しいことが判明した。
【0021】
そこで、本発明は、吊荷の残留振動をより効果的に抑制することのできるクレーンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係るクレーンの制御方法は、ブームを旋回させてワイヤで吊った吊荷を運搬開始位置から目標位置まで運搬するクレーンについて、前記ブームの旋回に伴なう前記目標位置における前記吊荷の残留振動を収束させる振れ止め制御を行うクレーンの制御方法であって、前記ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、当該運搬過程において、前記運搬開始位置から前記目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明に係るクレーンの制御方法は、請求項1に記載の発明について、前記等角速度区間における旋回速度に基づいて前記旋回加速、減速パターンを一義的に決定することを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明に係るクレーンの制御方法は、請求項2に記載の発明について、前記ブームのX軸からの角度をα、前記旋回速度をdα/dt、振り子のX軸からの方向角をΨ、吊荷の振れ角をθ、B点(ブームの先端)とO点(旋回中心)の水平距離でクレーンの旋回半径をr、吊荷ロープ長をlとした場合に、
【0025】
当該αを次式に代入して、
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
前記旋回加速、減速パターンを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0030】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、運搬開始位置から目標位置までの旋回速度(旋回角度)をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができるという優れた効果を奏することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、等角速度区間における旋回速度に基づいて旋回加速、減速パターンを一義的に決定することができるので、効率的に旋回加速、減速パターンを得ることができるという効果がある。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、ブームのX軸からの角度αまたは旋回速度dα/dtを代入するだけで、容易かつ迅速に旋回加速、減速パターンを求めることができ、効率的に残留振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】施工状態のクレーンCを示す説明図である。
【図2】運搬開始位置(S)から目標位置(E)までの移動状態を示す説明図である。
【図3】運搬開始位置(S)から目標位置(E)までのコンクリートバケットの位置を示す説明子である。
【図4】タワークレーンのモデルを示す説明図である。
【図5】モデル1、2のX方向、Y方向の応答の比較を示すグラフである。
【図6】図2を座標変換した運搬開始位置(S)から目標位置(E)までの移動状態を示す説明図である。
【図7】旋回の加速パターンを示す説明図である。
【図8】振り子の応答パターンを示す説明図である(図においてXT*、YT*はブーム先端からのXおよびY方向の振り子の変位である。)
【図9】振り子に作用する加速度と振り子の応答を示す説明図である。
【図10】XおよびY方向の変位および旋回の加速度を示すグラフである。
【図11】ブーム先端の振り子の支点に作用する加速度を示すグラフである。
【図12】C1−3およびC2−4のブーム先端からの振り子の変位を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の一形態に係るブーム式のクレーンの駆動制御装置のブロック図である。
【図14】クレーンCの運搬動作を示す概略図である。
【図15】クレーンCを上方から見た平面図である。
【図16】算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るクレーンの制御方法の説明を行う前に、本発明が完成されるまでの経緯等について説明する。
【0036】
まず、従来においては、クレーンの熟練操縦者が特別な旋回操作によって吊荷の残留振れを抑えることに着目し、オペレータの操作を力学的に表現しそれに基づいた制御方法を構築していた。すなわち、旋回の加速終了後に意図的に振れを発生させ、その振れのタイミングを見計らい減速することにより目標位置で残留振動の発生を抑制する制御方法であった。
【0037】
また、他の従来技術では、トラッククレーンを対象として旋回および起伏操作によって生じる吊荷の振れ止めにファジー制御を適用している。
【0038】
さらに他の従来技術では、ブームの起伏および旋回操作を同時に行う場合を対象として吊荷の位置決めおよび振れ止め制御に、起伏方向と旋回方向に独立した制御器を用いる分散制御系が適用できることを提案している。
【0039】
なお、この従来技術では、吊り荷ロープ長が変動する場合の吊荷の位置決め制御、振れ止め制御にゲインスケジュールド制御が有効で、シミュレーションおよび実験により残留振動を抑制できることが確認されている。
【0040】
また、他の従来技術では、旋回クレーンを対象として、ブームの旋回運動により生じる振れを抑制させる旋回軌道を吊荷の振動周期に着目して誘導し、振れ止めすることを提案している。
【0041】
さらに他の従来技術では、旋回クレーンの旋回、起伏、巻き上げ下げ同時運動による直線搬送方式での残留振動の振れ止めの制御と吊荷の移動に関する最短時間制御問題を取り扱い、搬送時間の短縮と残留振動の抑制が可能であることを提案している。
【0042】
ところで、これらの従来技術では、ブームの旋回操作によって発生する振れの抑制にフィードバック制御が適用可能であることを前提にして制御方法が提案されている。
【0043】
しかしながら、フィードバック制御は、システムのコスト、計測機器の故障等を考慮すると現場ではオープンループ制御による運転が必要な場合も多かった。
【0044】
そこで、本発明者は、目標位置での残留振動が発生しないオープンループ制御について鋭意研究した。
【0045】
ここで、実機(クレーンC)への適用を考えると、旋回と巻き上げ(下げ)の操作を同時に行い、目標位置で残留振動を抑制する制御方法が必要になる。
【0046】
吊り荷ロープ長が変動する場合には、吊り荷ロープ長が変動しない場合の残留振動を抑制する旋回の加速パターンを変換する制御方法を考えている。
【0047】
したがって、本発明ではタワークレーンのダイナミクスに関する基礎的な解析とそれに基づく目標位置での残留振動を抑制する加速パターンの提案を目的として吊り荷ロープ長は一定とするものとする。
【0048】
次に、本実施の形態に係るクレーンの制御方法に関連して、タワークレーンのモデル化と運動方程式について説明する。
【0049】
まず、タワークレーンの概要について述べる。
【0050】
タワークレーンCを示す図1において、rは旋回半径、lは吊り荷ロープ長である。
【0051】
ブーム105の旋回によりロープ104の支点は円弧状の軌跡を描くため、コンクリートバケット103は旋回方向の加速度、遠心力およびコリオリ力の影響を受けて2次元的な振動になる。
【0052】
したがって、目標位置での残留振動の発生を抑制することが非常に難しくなる。
【0053】
次いで、タワークレーンの運転方法について述べる。
【0054】
図2および図3に運転方法の概要を示す。なお、図3は図2のブーム先端の円弧状の軌道を展開したものである。
【0055】
クレーンの運転はS点の運搬開始位置からP点で旋回が定常速度になるように旋回を加速する。
【0056】
その後、定常速度で運転し目標位置に近づいた時にQ点で減速を開始しE点のコンクリート打設位置で停止させ、コンクリート打設終了後再びS点に復帰する。
【0057】
SP間の加速領域、QE間の減速領域では旋回方向の加速度および遠心力がコンクリートバケットに作用する。
【0058】
また、PQ間の旋回の等速区間では遠心力が作用する。
【0059】
運転方法は、図3に示すように旋回を加速、定常速度、減速領域に分けたオープンコントロールとし、目標位置で残留振動が発生しない旋回の加速パターンを導出する。
【0060】
次に、モデル化について述べる。
【0061】
図2に示すタワークレーンを図4に示すようにモデル化する。
【0062】
本発明者は、実機クレーンの振動実験およびシミュレーションから、クレーン本体およびブームは剛体、吊り荷は質点、ロープは質量を無視し剛体として取り扱うことができることを確認している。
【0063】
ここで、B点をブーム先端、C点をコンクリートバケットとする。また、O点の旋回中心を原点としてダム軸方向をX軸とした。
【0064】
また、Ψは振り子のX軸からの方向角、θは吊り荷の振れ角、αはブームのX軸からの角度(旋回角度)、rはB点とO点の水平距離でクレーンの旋回半径、lは吊り荷ロープ長である。
【0065】
また、これ以降、コンクリートバケットを「振り子」、コンクリート打設位置を「目標位置」と呼ぶこととする。
【0066】
次に、本発明に適用される運動方程式について説明する。
【0067】
図4に示すブーム先端の座標を(XB、YB、ZB)、振り子の座標を(XC、YC、ZC)とすると振り子の座標は次のようになる。
【0068】
【数3】
【0069】
【数4】
【0070】
数1、数2を時間で微分して求めたラグランジュの運動方程式から振り子の長さlが一定の円錐振り子の運動方程式は数5、数6のように導くことができる。
【0071】
【数5】
【0072】
【数6】
【0073】
ここで、振り子の振れ角θは微小としてsinθ≒θ、cosθ≒1とし、ブーム105の起伏速度は非常に小さいためd2ZB/dt2≒0とした。
【0074】
図4に示すように振り子の支点はブーム先端であることから振り子に作用する外力はブーム先端から与えられる。ブーム先端の座標は次のようになる。
【0075】
【数7】
【0076】
【数8】
【0077】
数7、数8を時間で微分して旋回動作により発生するブーム先端のXおよびY方向の加速度d2XB/dt2、d2YB/dt2を旋回半径rを一定として求めると次のようになる。
【0078】
【数9】
【0079】
【数10】
【0080】
次いで、数9、数10を前出の数5、数6に代入し振り子の応答を求める。
【0081】
ここで、数5、数6において振り子の長さlが変化しないため、lを規準長さとし、X=lX*、t=Tt*(T=√(l/g))とおくと、数5、数6は無次元化されて数11、数12になる。
【0082】
【数11】
【0083】
【数12】
【0084】
また、X方向、Y方向のブーム先端の加速度を表す数9、数10は無次元化されて数13、数14になる。
【0085】
【数13】
【0086】
【数14】
【0087】
次いで、数13および数14を数11および数12に代入すると次のようになる。
【0088】
【数15】
【0089】
【数16】
【0090】
そして、本実施の形態において、目標位置到達後の残留振動を抑える制御方法の算出には無次元化された数15、数16を使用する。
【0091】
次に、目標位置での残留振動の抑制方法を簡便に取り扱うため、振り子を円弧状の軌道を描くブームの先端で支持されているXおよびY方向に振動する単振り子とみなす。
【0092】
図4からX方向およびY方向の変位をXT=XC−XB、YT=YC−YBとし、無次元量X*T=XT/l、Y*T=YT/lを導入すると、振り子の無次元運動方程式は次のようになる。
【0093】
【数17】
【0094】
【数18】
【0095】
ここで、X*T、Y*Tの2乗項、3乗項は非常に小さいため無視すると次のようになる。
【0096】
【数19】
【0097】
【数20】
【0098】
なお、これ以降、前出の数15、数16で表されるモデルをモデル1、前出の数19、数20で表されるモデルをモデル2と呼ぶこととする。
【0099】
次に、各モデルの応答の比較について述べる。
【0100】
目標位置で残留振動が生じない旋回の加速パターンを数21、数22の簡便なモデルを使って検討するため、モデル1およびモデル2の応答を比較する。
【0101】
旋回の加速度d2α/dt*2をモデル1に、数13、数14から求めたd2XB/dt2、d2YB/dt2をモデル2に入力した場合の振り子のX方向、Y方向の応答の比較を図5に示す。
【0102】
そして、モデル1の場合には、振り子の長さl、振り子の振れ角θ、振り子のX軸からの方向角ψを数5、数6に代入してXおよびY方向の変位を求めた。
【0103】
振り子の運動の始点と終点の位置をX軸の周りに対称としているため、X方向およびY方向の振幅はt*=9.51において線対称および点対称になっている。
【0104】
XおよびY方向ともにモデル1とモデル2の振幅は重なっており、振り子の長さが変化しない場合には、モデル2を適用して目標位置での残留振動の抑制方法を検討できることが分かる。
【0105】
次に、振り子の振れ止め方法と軌道予測について述べる。
【0106】
まず、加速パターンの提案について説明する。
【0107】
ここで、図2に示すようにコンクリート運搬の開始位置S点と目標位置E点が与えられた場合を考える。
【0108】
S点とE点がX軸で対称になるように図2に示す∠EOSの2等分線の方向を新たなX軸(図2ではX’)に設定する(図6参照)。
【0109】
変換された運搬開始位置から目標位置までの旋回およびブーム先端のX方向、Y方向の加速度に関して図7に示すようなパターンを考える。
【0110】
ここで、加速終了時刻をT*P、減速の開始時刻をT*Q、減速に終了時刻すなわち運搬時間をT*Eとする。
【0111】
S点からP点までの加速時間T*A=T*PとQ点からE点までの減速時間T*D=T*E−T*Qを等しくし、時刻が1/2T*Eの時、ブーム先端が図6のO’点を通りQ点で減速を始めE点で旋回が停止するようにする。
【0112】
なお、本実施の形態において、記号「*」は、無次元量を表すものとする。
【0113】
したがって、旋回の加速パターンは時刻1/2TE*において点対称になる。
【0114】
旋回に図7(a)の実線のような加速パターンが与えられた時に数21、数22のブーム先端の加速度(d2X*B/dt*2)、(d2Y*B/dt*2)は数13、数14から図7(b)のようになる。
【0115】
ブーム先端の(d2X*B/dt*2)、(d2Y*B/dt*2)は、運搬開始位置と目標位置をX軸において対称にしているため時刻1/2T*EにおいてX方向の加速度は対称に、Y軸方向の加速度は点対称になる。
【0116】
このような旋回の加速パターンを利用すれば、図8に示すように目標位置において残留振動を抑制できる。
【0117】
加速パターンの設定は運動方程式の数値積分を使った収束計算により可能である。
【0118】
しかしながら、この方法は収束時間が長くなり実用的ではない。
【0119】
そこで、次に、畳み込み積分を使った加速パターンの設定方法について述べる。
【0120】
畳み込み積分を使った振り子の軌道予測については、旋回の加速パターンを調整することにより、目標位置における残留振動を抑制する方法を考える。
【0121】
振り子の長さが変わらない場合の応答は数21、数22で近似できるため、畳み込み積分を適用することにより解析的に応答を求めることができる。
【0122】
また、運動方程式を積分して振り子の応答を求めることもできる。
【0123】
しかしながら、実機(クレーンC)への実装を考慮すると加速パターンを短時間で設定することが必要になるため、畳み込み積分を使って応答を求め短時間で目標位置での残留振動を発生させない旋回の加速パターンを求めることとした。
【0124】
また、減速領域での振り子の応答は時刻1/2T*Eにおいて加速領域の応答に対し、X方向には対称、Y方向には点対称になるため減速領域の応答の算定方法については説明を割愛する。
【0125】
旋回の加速度をa*=d2α/dt*2、旋回速度をu*=dα/dt*として数13、数14を数19、数20に代入すると次のようになる。
【0126】
【数21】
【0127】
【数22】
【0128】
数21、数22の右辺の入力は旋回加速度と旋回による遠心力から構成され、時間に関して線形には変化しない。
【0129】
加速領域、定常速度領域および減速領域の応答は上式畳み込み積分を適用することにより求めることができる。
【0130】
次に、加速領域について述べる。
【0131】
SP間の加速領域では旋回が加速中であるため、旋回速度はu*=a*t*になり数21、数22の畳み込み積分は次のようになる。
【0132】
【数23】
【0133】
ここに、fx=r*a*sinα+r*a*2τ*2cosαである。
【0134】
また、Y*は
【0135】
【数24】
【0136】
のように表せ、fy=r*a*cosα+r*a*2τ*2sinαである。
【0137】
また、数23、数24のαは次のように表せる。
【0138】
【数25】
【0139】
ここに、βは図6における∠O’OSである。
【0140】
数25より、sinおよびcos関数を2次の精度まで、テイラー展開すると次のようになる。
【0141】
【数26】
【0142】
【数27】
【0143】
上式を数23、数24に代入して積分を行うと、旋回の加速中のXおよびY方向の変位は次のようになる。
【0144】
【数28】
【0145】
【数29】
【0146】
次に、定常速度領域について説明する。
【0147】
PQ間の定常速度運転時では、一定の旋回速度をu*S=dα/dt*とおくと振り子には次のような遠心力が作用する。
【0148】
【数30】
【0149】
ここで、数23、数24において、旋回の加速度はa*=0となり、定常速度区間が始まる時刻を0とすると、XおよびY方向の変位は次のようになる。
【0150】
【数31】
【0151】
【数32】
【0152】
なお、数31、数32のαはP点の位置の時刻を0としているため次のようになる。
【0153】
【数33】
【0154】
ここに、γは図6における∠O’OPである。
【0155】
数33より、sin関数およびcos関数を2次の精度までテイラー展開すると次のようになる。
【0156】
【数34】
【0157】
【数35】
【0158】
上式を数31、数32に代入して積分を行うとXおよびY方向の変位は次のようになる。
【0159】
【数36】
【0160】
【数37】
【0161】
また、定常速度領域の変位は、定常速度領域が始まる時刻の変位および速度の初期値を0として、数36、数37から求めた変位と、加速領域の最終時刻の変位と速度を初期値とする自由振動の変位を加算したものである。
【0162】
ここで、加速終了時刻の変位および速度X*f、v*fとするとX*axとνxを使って次のように表せる。
【0163】
【数38】
【0164】
【数39】
【0165】
ここに、X*axは自由振動の振幅、νxは位相を表している。
【0166】
数38、数39より、自由振動の位相は次のようになる。
【0167】
【数40】
【0168】
このことから、加速終了後の定常速度領域での自由振動は次のように表せる。
【0169】
【数41】
【0170】
同様な方法により、y方向の変位は次のようになる。
【0171】
【数42】
【0172】
したがって、定常速度領域の振り子の変位は数36、数37に数41、数42の自由振動の変位を加算することにより求めることができる。
【0173】
次に、旋回加速パターンと振れ止め効果について述べる。
【0174】
旋回加速パターンの導出法は、下記の通りである。
【0175】
目標位置に到達した時に、残留振動を発生させない加速パターンを数28、数29、数36、数37、数41、数42を適用して、加速度を既知として次の手順で加速時間、運搬時間および旋回速度を求める。
1)d2α/dt*2を設定する。
2)振り子の固有周期のほぼ整数倍とする運搬時間T*Eを仮定する。
3)加速時間T*Aを仮定する。
4)加速時間および減速時間を等しくするため、定常速度の時間T*ST=T*E−2T*Aを求める。
5)数28、数29にT*Aを代入し加速終了時刻T*Pの応答を求める。
6)数36、数37、数41、数42にT*STを代入し、定常速度終了時刻T*Qの応答を求める。
7)T*PとT*QでのX方向およびY方向の変位および速度が等しくなるまで、すなわち、X方向とY方向の応答が時刻1/2T*Eにおいて、それぞれ対称および点対称になるまで前記の手順2)〜7)を繰り返してT*E、T*Aを決める。
8)減速終了時刻T*Eにおいて振り子の振れが抑制されていることを確認する。
9)加速時間から旋回速度が決定される。
【0176】
以上で述べた繰り返し計算は、短時間で実行できるため実用的である。
【0177】
ここで、図13〜図16を参照して、本実施の形態に係るクレーンCの構成例について説明する。
【0178】
図13は、本発明の実施の一形態に係るブーム式のクレーンの駆動制御装置の要部ブロック図である。また、クレーンは、駆動制御装置を除き図1に示すコンクリート打設設備に用いたクレーンCと同一の構成をしている。なお、同一構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0179】
図13において、11は運搬開始地点、目的地点の3次元座標等のデータを入力するデータ入力部、12はデータ入力部11の出力に基づいて、図1に示すブーム105の旋回角度、起伏角度等を演算する演算部、13は演算部12の出力に基づいて、ブーム5の旋回・起伏等を制御するマイクロコンピュータ等で構成される制御部、14は制御部13の制御信号に基づいてブーム105を旋回させる駆動手段としてのブーム旋回モータ、15は制御部13の制御信号に基づいて、ブーム105を起伏させるブーム起伏モータ、16は制御部13の制御信号に基づいて、図1に示す吊荷としてのバケット103を吊り下げるワイヤ104の巻上げ/巻降ろしを行うワイヤ巻取りモータである。
【0180】
データ入力部11、演算部12、制御部13、ブーム旋回モータ14、ブーム起伏モータ15およびワイヤ巻取りモータ16で駆動制御装置300を構成している。
【0181】
また、図14はクレーンCの運搬動作におけるブーム先端の軌跡とバケットの軌跡を示す概略図である。
【0182】
また、図15はクレーンCの旋回動作(旋回中心O、旋回角度θ)を上方から見た平面図である。
【0183】
図14、図15に示すように、駆動制御装置300は、加速移動区間と等速移動区間および減速移動区間でブーム105の旋回と起伏およびワイヤ104の巻上げ/巻降ろしの制御を行う。
【0184】
まず、加速移動区間では、コンクリート混練プラント101よりバンカー線30に沿って運搬されたトランスファーカー102の生コンクリートをバケット103に移し換えた後、バケット103を地切り高さ(例えば、数m)まで吊り上げる。
【0185】
そして、運搬開始地点としての第1の地点Sにバケット103を停止させた状態から、ブーム105を一定の旋回角加速度で加速しながら旋回させると共に、ブーム105を起伏角度φ1からφ2まで起立させると共に、バケット103の吊り長さがL1からL2(<L1 )になるまでワイヤ巻取りモータ16によりワイヤ104を巻上げる。
【0186】
このとき、ブーム起伏モータ15によりブーム105を起立させることによって、ブーム105先端の旋回半径が小さくなり、後述する第2の地点Eすなわち目的地点でブーム105先端の旋回半径になるようにする。
【0187】
次に、等速移動区間では、吊り長さL2のまま、一定の旋回角速度でブーム105を旋回させる。
【0188】
この等速移動区間でバケット103の吊り長さをL2とすることによって、障害物40を避ける。
【0189】
次に、図16のフローチャートを参照して、駆動制御装置300で実行される算出処理の処理手順について説明する。
【0190】
この処理が開始されると、まずステップS10で、d2α/dt*2を設定してステップS11に移行する。
【0191】
ステップS11では、振り子の固有周期のほぼ整数倍とする運搬時間T*Eを仮定してステップS12に移行する。
【0192】
ステップS12では、加速時間T*Aを仮定してステップS13に移行する。
【0193】
ステップS13では、加速時間および減速時間を等しくするために、定常速度の時間T*ST=T*E−2T*Aを求めてステップS14に移行する。
【0194】
ステップS14では、前出の数28、数29にT*Aを代入して加速終了時刻T*Pの応答を求めてからステップS15に移行する。
【0195】
ステップS15では、前出の数36、数37、数41、数42にT*STを代入して、定常速度終了時刻T*Qの応答を求めてからステップS16に移行する。
【0196】
ステップS16では、T*PとT*QでのX方向およびY方向の変位および速度が等しくなるまで、すなわち、X方向とY方向の応答が時刻1/2T*Eにおいて、それぞれ対称および点対称になるまで前記ステップS11〜16の処理を繰り返してT*E、T*Aを決めてステップS17に移行する。
【0197】
ステップS17では、減速終了時刻T*Eにおいて振り子の振れが抑制されていることを確認して処理を終了する。
【0198】
これにより、運搬開始位置から目標位置までの旋回速度(旋回角度)をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができる。
【0199】
また、等角速度区間における旋回速度に基づいて旋回加速、減速パターンを一義的に決定することができるので、効率的に旋回加速、減速パターンを得ることができる。
【0200】
また、旋回速度(ブームのX軸からの角度)αを代入するだけで、容易かつ迅速に旋回加速、減速パターンを求めることができ、効率的に残留振動を抑えることができる。
【0201】
次に、上述のような数値計算による振れ止め効果の検証について述べる。
【0202】
本実施の形態に係るクレーンの制御方法の有効性を検証するために行ったシミュレーションの条件および上述の方法により求めた、加速時間T*A、定常速度の時間T*ST、減速時間T*D、運搬開始位置から目標位置までの旋回角度αTOTおよび固有周期に対する運搬時間の比を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
また、タワークレーンは旋回半径により旋回速度の最大値が規定されていること、および振り子の長さから決まる振り子の固有周期を考慮して旋回の加速度d2α/dt*2を以下のように設定した。
【0205】
対象としているクレーンCの旋回速度は、旋回半径が50mの場合で約0.042radian/sである。
【0206】
振り子の長さを50mとして固有周期で旋回の運転速度になるまで加速すると仮定した場合に、旋回の加速度はd2α/dt*2=0.015になる。
【0207】
したがって、旋回の加速度がd2α/dt*2=0.009〜0.021の場合について検討した。
【0208】
なお、図6に示す∠QOP≧が1.5(C2−3、C2−4、C3−2、C3−3)を超える場合は、前述した2次の精度のテイラー展開では誤差が大きくなるため3次の精度まで考慮し加速パターンを求めるとよい。
【0209】
表1におけるC1のケースは前述の手順でT*Eを6πと仮定し、旋回の加速度d2α/dt*2の違いによる比較である。
【0210】
C2、C3は旋回の加速度をd2α/dt*2=0.015、d2α/dt*2=0.018と設定してT*Eを8π、10π、12π、14πと仮定した場合の比較である。
【0211】
通常、タワークレーンを使った作業では、旋回角度αTOT=πで目標位置に運搬することができる。
【0212】
C2−4、C3−3は旋回角度がπを超える場合でも目標位置において残留振動が発生しないことの確認を目的としたケースである。
【0213】
ここで、走行クレーンの加速パターンとの相違について述べる。
【0214】
表1におけるC1−1での加速時間は6.92、C1−5では7.03であり、加速時の加速度が大きくなるとともに、加速時間は長くなっている。
【0215】
また、運搬時間の固有周期に対する比は加速時の加速度が大きくなると小さくなる傾向がある。
【0216】
一方、加速度を等しくして旋回角度を大きくしたC2、C3のケースでは、旋回角度が大きくなるとともに運搬時間は長くなり、加速時間は短くなっている。
【0217】
走行クレーンの場合には、図9に示すように入力(d2XB/dt2)*が時間に関して線形に減少(増加)した後、入力を一定とし、その後入力を線形に増加(減少)させる場合、入力を以下のように設定すると残留振動は発生しない。
【0218】
すなわち、入力を線形に変化させる時間および運搬時間を固有周期の整数倍とし、運搬時間の1/2T*Eで対称(折り返して等しく)に設定すると運搬終了時刻以降の残留振動は発生しない。
【0219】
走行クレーンの入力が線形に変化する時間および入力が一定の場合を旋回クレーンでは加速、減速時間および定常速度の時間と呼ぶ。
【0220】
しかしながら、旋回クレーンの場合には走行クレーンとは異なり加速および減速時間は固有周期の整数倍にはなっていない。
【0221】
このことは以下のように説明できる。すなわち、数28および数29の右辺の第2項以降があるため振り子の固有周期の整数倍の加速時間で加速しても残留振動が発生する。
【0222】
ここで、以上のことを詳しく説明するために便宜的に、数21および数22において遠心力を表す右辺2項を取り除き、さらに旋回の効果を
【0223】
【数43】
のようにおいて取り除く。このとき、数28およ数29の右辺の第2項以降が存在しなくなり、走行クレーンと同様に固有周期の整数倍の加速時間で加速すると残留振動は発生しない。
【0224】
すなわち、タワークレーンのような旋回クレーンでは、数21、数22においてcosα(t*)、sinα(t*)で表されるように、旋回により加速方向が平面内で変化するため、数21、数22の右辺で示される旋回加速度と旋回による遠心力から構成され入力は時間に関して線形に変化せず、固有周期の整数倍の加速時間で加速しても残留振動が発生するため、本実施の形態で示すような特別な加速パターンを導出する必要がある。
【0225】
次に、加速パターンと振り子の応答について述べる。
【0226】
実機のタワークレーンの自動運転に対応するためには、S点からE点までの旋回角度がπまで変化する場合について、残留振動が発生しないことを確認しておく必要がある。
【0227】
旋回角度が1.26、2.34、3.18とした場合のXおよびY方向の変位および旋回の加速度を図10に、ブーム先端の振り子の支点に作用する加速度を図11に示す。
【0228】
図10から減速終了後の目標位置での残留振動は生じていない。
【0229】
表1におけるC2−4のケースでは、時刻21.17において、X方向の変位は対称、Y方向の変位は点対称、旋回の加速パターンは点対称になっている。
【0230】
図11から、C1−3、C2−4において、旋回が始まる時のブームの初期角度βはC1−3で−0.63、C2−4で−1.59である。
【0231】
したがって、XおよびY方向の加速度は−r*(d2α/dt*2)sinα、−r*(d2α/dt*2)cosαの影響を受けるためX方向ではC2−4が、Y方向ではC1−3のケースが大きくなる。
【0232】
X方向の加速度は、運搬時間T*Eの1/2の時刻において対称、Y方向の加速度は同時刻において点対称になるように加速されている。
【0233】
運搬時間は、それぞれC1−3で19.09、C2−2で30.43、C2−4で42.34である。
【0234】
次に、振り子の軌跡について述べる。
【0235】
前出の表1におけるC1−3およびC2−4のブーム先端からの変位を図12に示す。
【0236】
振り子の軌道は両ケースともにX軸で対称になっている。加速中のX方向の無次元最大変位はC1−3で0.017、C2−4で−0.03で、振り子の長さを50mとするとC1−3で0.85m、C2−4で1.5m程度である。
【0237】
旋回の開始時には図11からC2−4ではX方向の加速度がY方向の加速度より大きいため、X方向の変位が大きくなっている。
【0238】
また、旋回とともにY方向の加速度が大きくなりY方向の変位が大きくなる軌道を示している。
【0239】
加速が終了し定常速度になった時にはX方向の変位は正になり、振り子はブーム先端より外側の軌道を通り目標位置において残留振動が抑制されていることが分かる。
【0240】
以上述べたように、本実施の形態に係るクレーンの制御方法によれば、運搬開始位置から目標位置までの運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返して等しく)になる旋回加速パターンを入力することにより、運搬開始位置から目標位置までの旋回角度をどのように変えても、目標位置での残留振動を抑えることができるという優れた効果を奏することができる。
【0241】
また、畳み込み積分を利用した応答計算を使用するため短時間で加速パターンの導出が可能であり、目標位置が様々に変化する実機への実装が容易であるという利点もある。
【0242】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0243】
また、プログラムを用いる場合には、ネットワークを介して提供し、或いはCD−ROM等の記録媒体に格納して提供することが可能である。
【0244】
即ち、画像処理プログラムを含む所定のプログラムを記録媒体としてのハードディスク等の記憶装置に記録する場合に限らず、当該所定のプログラムを次のようにして提供することも可能である。
【0245】
例えば、所定のプログラムをROMに格納しておき、CPUが、この所定のプログラムをこのROMから主記憶装置へローディングして実行するようにしてもよい。
【0246】
また、前記所定のプログラムを、DVD−ROM、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、フレキシブルディスク、などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明によるクレーンの制御方法は、ダムの施工に適用されるタワークレーンやその他のクレーンに適用することができる。
【符号の説明】
【0248】
101 コンクリート混練プラント
102 トランスファーカー
103 コンクリートバケット
104 ワイヤ(ロープ)
105 ブーム
200 ダム堤体
300 駆動制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを旋回させてワイヤで吊った吊荷を運搬開始位置から目標位置まで運搬するクレーンについて、前記ブームの旋回に伴なう前記目標位置における前記吊荷の残留振動を収束させる振れ止め制御を行うクレーンの制御方法であって、
前記ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、
当該運搬過程において、前記運搬開始位置から前記目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行うことを特徴とするクレーンの制御方法。
【請求項2】
前記等角速度区間における旋回速度に基づいて前記旋回加速、減速パターンを一義的に決定することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの制御方法。
【請求項3】
前記ブームのX軸からの角度をα、前記旋回速度をdα/dt、振り子のX軸からの方向角をΨ、吊荷の振れ角をθ、B点(ブームの先端)とO点(旋回中心)の水平距離でクレーンの旋回半径をr、吊荷ロープ長をlとした場合に、
当該αを次式に代入して、
【数44】
【数45】
前記旋回加速、減速パターンを算出することを特徴とする請求項2に記載のクレーンの制御方法。
【請求項1】
ブームを旋回させてワイヤで吊った吊荷を運搬開始位置から目標位置まで運搬するクレーンについて、前記ブームの旋回に伴なう前記目標位置における前記吊荷の残留振動を収束させる振れ止め制御を行うクレーンの制御方法であって、
前記ブームの旋回半径を一定として、加速区間、等角速度区間、減速区間の順で旋回させる運搬過程を有し、
当該運搬過程において、前記運搬開始位置から前記目標位置までに要する運搬時間の1/2の時刻で対称(折り返した場合に等しくなる対称関係)となるように座標変換を行った旋回加速、減速パターンに基づいて、旋回速度の加減速制御を行うことを特徴とするクレーンの制御方法。
【請求項2】
前記等角速度区間における旋回速度に基づいて前記旋回加速、減速パターンを一義的に決定することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの制御方法。
【請求項3】
前記ブームのX軸からの角度をα、前記旋回速度をdα/dt、振り子のX軸からの方向角をΨ、吊荷の振れ角をθ、B点(ブームの先端)とO点(旋回中心)の水平距離でクレーンの旋回半径をr、吊荷ロープ長をlとした場合に、
当該αを次式に代入して、
【数44】
【数45】
前記旋回加速、減速パターンを算出することを特徴とする請求項2に記載のクレーンの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−1324(P2012−1324A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138367(P2010−138367)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】
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